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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】微粉炭吹き込み方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20221129BHJP
   C21B 7/00 20060101ALI20221129BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C21B5/00 319
C21B7/00 308
C21B7/00 310
F27D3/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018172223
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020045504
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】安西 修
(72)【発明者】
【氏名】玉木 康介
(72)【発明者】
【氏名】羽場 隆介
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048611(JP,A)
【文献】特開2004-035913(JP,A)
【文献】特開2018-095338(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0048811(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0136318(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00-5/06
C21B 7/00-9/16
C21B 11/00-15/04
B65G 53/00-53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流輸送される微粉炭が分配器によって支管に分岐され、羽口を通じて高炉内へ吹き込まれ、ここで前記支管のそれぞれに支管流量調整弁および支管流量計が設置されている、微粉炭吹き込み方法において、
前記支管流量計によって計測された平常運転時の微粉炭の吹き込み量を1.0とした場合、
前記支管流量計によって計測された微粉炭の吹き込み量が0.7以上~1.0以下の場合には、前記支管流量調整弁の弁開度を、前記支管流量調整弁での圧力損失が予め規定された範囲内になるように、30%以上60%以下に設定し、
前記支管流量計によって計測された微粉炭の吹き込み量が0.0以上~0.7未満の場合には、前記支管流量調整弁の弁開度を100%となるように設定する
ことを特徴とする、微粉炭吹き込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉のPCI(Pulverized Coal Injection:微粉炭吹き込み)において、微粉炭供給配管の詰まりを解消できる微粉炭吹き込み方法に関するものであり、特に微粉炭の高炉への供給を継続した状態で微粉炭供給配管の詰まりを解消できる微粉炭吹き込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の主たる還元材はコークスであるが、羽口から補助還元材料として微粉炭(Pulverized Coal:PC)を吹込むことにより高生産性、高効率化が促進されてきた。一般的に、微粉炭吹き込み(PCI)装置は、石炭を所定の粒度に粉砕した後、粉砕した微粉炭を搬送ガスに乗せて主配管を通じて供給し、分配器により羽口数に応じて分岐させた支管(分岐支管)を通して高炉内へ吹き込む。羽口の数は、高炉のサイズや形状によって異なるが、大型化された高炉では約30~40におよぶこともある。その約30~40におよぶ羽口は、炉内の還元反応バランスを考慮して、高炉本体の下部で、円周方向に均等に配置されることが一般的である。微粉炭(PC)の供給分岐支管の数は、羽口の数が数十に応じた数であり、羽口が数十であれば、PC供給分岐支管の数も数十におよぶ。
【0003】
当然のことながら、高炉内では安定的にバランスのとれた還元反応条件となるように、微粉炭(PC)が安定的に継続して高炉に吹き込まれることが望まれる。しかしながら、羽口の数が数十におよび、またそれに連なるPC供給分岐支管の数も数十におよぶため、微粉炭(PC)吹き込み状況は分岐支管ごとに差異が生じていることがあり、その結果として高炉内の還元反応条件にバラツキを生じることがあり得る。また、実際の操業では、微粉炭(PC)やあるいは微粉炭内に混在している木片、ウエス、ビニール、糸くず等の異物が、微粉炭吹き込み装置の配管やノズル等で詰まることがしばしばあり、これが配管ごとの吹き込み状況の差異を生む一因となっている。このような詰まりは、高炉の安定操業に大きな悪影響を及ぼすため、詰まりが生じた系統の吹き込みラインからの吹き込みを停止し、逆洗パージガスや順洗パージガス等を詰まり部に吹き込んで、詰まりを解消することが行われてきた。
【0004】
特許文献1は、詰まり解消のための逆洗ラインおよび詰まりの発生を検出する装置を、あらかじめ微粉炭吹き込み配管に設けておくことを提案している。吹込管内での詰まりの発生が検出されると、直ちに逆洗ラインで詰まりを解消するとしている。具体的には、微粉体自体はかなりの高温状態で搬送されるため、微粉炭が搬送される分岐配管の温度に着目した検出手段や紛体流量計により、詰まりを検出するとしている。そして、詰まり検出手段によって分岐支管の詰まりが検出されたならば、当該詰まりの生じている分岐支管の供給入側弁(分配器出口弁)および供給出側弁(高炉入口弁)を閉弁させたうえで、詰まり解消のための逆洗用ガス吹込管よりN2 ガスを詰まりの生じている分岐支管に供給して、分岐支管に詰まった微粉炭を除去している。図1および図2は、それぞれ、特許文献1の通常吹き込み状態と、詰まりが発生して逆洗を行っている状態を、模式的に示したものである。図中の黒色で表示されたバルブは、閉状態であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-320726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、特許文献1のように、高炉へのPC分岐支管で詰まりが生じると、当該詰まりの生じた分岐支管でのPC供給を停止したうえで、詰まりを解消するためパージ操作を行うことが一般的であった。この場合、詰まりが解消するまでは、当該分岐支管ラインからは、高炉内へPCおよび搬送用ガス等の供給ができない。これは、高炉内の還元反応バランスに少なからず影響を与え得る。高炉において、羽口の数、およびPC供給ラインは、複数あり、数十におよぶこともあるが、それらが継続的に安定してPCおよび搬送用ガスを高炉内へ供給することにより、高炉内の還元反応バランスを保った運転が可能である。ところが、PC供給ラインのいずれか一つにおいて通常どおりにPC等の供給がされていない状態になると、その羽口からはPCおよび搬送用ガス等が供給されず、その羽口において大幅な熱量変動を生じ、ひいては炉内の還元反応バランスが変動し、高炉から排出される銑鉄の製品品質に影響がおよぶことがあり得る。
【0007】
上記の状況に鑑みて、本願発明は、高炉での微粉炭吹き込みにおいて、微粉炭の高炉への供給を継続した状態で微粉炭供給配管の詰まりを解消し、高炉において安定的かつ継続的にバランスのとれた還元反応条件を維持できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により以下の態様が提供される。
【0009】
[1]気流輸送される微粉炭が分配器によって支管に分岐され、羽口を通じて高炉内へ吹き込まれ、ここで前記支管のそれぞれに支管流量調整弁および支管流量計が設置されている、微粉炭吹き込み方法において、
前記支管流量計で前記微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりが確認された場合に、前記支管流量調整弁の開度を全開とすることを特徴とする、微粉炭吹き込み方法。
[2]平常運転時において、前記支管流量調整弁の開度を、前記支管流量調整弁での圧力損失が予め規定された範囲内になるように、設定し、
前記支管から前記羽口への微粉炭吹き込み量を、前記支管流量計を用いて、監視し、
前記微粉炭吹き込み量が、平常運転時の目標微粉炭吹き込み量と等しくなるように、前記支管流量調整弁の弁開度を調整することを特徴とする、[1]に記載の微粉炭吹き込み方法。
[3]さらに、前記微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりが解消された後、前記支管流量調整弁の開度を、前記支管流量調整弁での圧力損失が予め規定された範囲内になるように、設定することを含む、[1]または[2]に記載の微粉炭吹き込み方法。
[4]前記支管での前記微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりが、前記微粉炭吹き込み量が予め規定された判定基準を下回ったことにより、確認される、[1]から[3]のいずれか1つに記載の微粉炭吹き込み方法。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、高炉での微粉炭吹き込みにおいて、微粉炭の高炉への供給を継続した状態で微粉炭供給配管の吹き込み量低下及び/または詰まりを解消し、高炉において安定的かつ継続的にバランスのとれた還元反応条件を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術による、微粉炭の通常吹き込み状態を、模式的に示したものである。
図2】従来技術による、微粉炭の詰まりが発生して逆洗を行っている状態を、模式的に示したものである。
図3】本発明例による、微粉炭の吹き込み状態における気体の流れを模式的に表現したものである。
図4】本発明例による、微粉炭の詰まりを解消するパージを行っている状態における気体の流れを模式的に表現したものである。
図5】参考例による、微粉炭の詰まりを解消するパージを行っている状態における気体の流れを模式的に表現したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施態様について説明する。
一般的な微粉炭吹き込み(PCI)装置では、石炭を所定の粒度に粉砕した後、粉砕した微粉炭を搬送ガスに乗せて主配管に吹き込み、分配器により羽口数に応じて分岐させた支管(分岐支管)およびそれに連なる羽口を通して高炉内へ吹き込む。本発明による、微粉炭吹き込み(PCI)装置は、支管(分岐支管)のそれぞれに支管流量計および支管流量調整弁が設置されている。
支管流量計により、支管から羽口への微粉炭吹き込み量を測定することができ、運転中にその吹き込み量が適切な範囲に維持されているかどうか、適切な範囲から逸脱していないかを監視することができる。
支管流量調整弁は、その弁開度を調整することができ、それにより支管での微粉炭吹き込み量を調整することが可能である。
なお、平常運転時に吹込み量が安定している場合は、支管での微粉炭吹き込み量を調整する必要はなく、支管流量調整弁の開度を一定として操業することができる。
【0013】
概して、粒度調整された微粉炭のみを吹き込む場合、支管内での吹き込み量の低下や詰まりは生じない。しかしながら、実際の微粉炭吹き込みでは、微粉炭やあるいは微粉炭内に混在している木片、ウエス、ビニール、糸くず等の異物が、支管(分岐支管)で詰まることがしばしばある。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、詰まりが成長する機構として、微小な異物が支管内に堆積し、それを起点にさらに微粉炭やその他の異物の堆積が続き、堆積が大きくなり、支管内の流量を低下させて、結果として詰まりが生じることが考えられる。
【0014】
本発明者は、鋭意検討の結果、支管内で生じた微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりを解消するために、以下の着想を得た。すなわち、支管内で微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりが生じた際に、流量調整弁の開度を全開にする。これにより、流量調整弁での圧力損失が低下し、微粉体またはそれを吹き込む気流が流れやすくなり、流量(吹き込み量)が増加し、ひいては支管内の詰まりを解消するように作用させることができる。全開にする前の流量調整弁の開度範囲は特に限定されるものではない。ただし、開度が小さすぎると平常運転時の圧力損失が大きくなりすぎることがある。圧力損失が大きくなると、タンク圧力が過度に上昇することがあり、また同一の弁操作でも制御対象(吹き込み量)の変化量が大きくなって微調整が困難なことがある。そのため、弁開度は30%以上、好ましくは40%以上としてもよい。一方、開度が大きすぎると、流量低下や詰まり発生時に全開にした場合の圧力ポテンシャルが十分でなく、流量低下や詰まりが解消しにくいことがあるので、弁開度を60%以下、好ましくは50%以下としてもよい。
【0015】
さらに、高炉の平常運転時において、微粉炭の吹き込み量が、平常運転時の目標微粉炭吹き込み量と等しい量になっているかを支管流量計で監視し、その範囲を逸脱しそうな兆候があれば、支管流量調整弁の開度を調整してもよい。別の言い方をすると、微粉炭吹き込み量の目標値と実績値の差異に応じて弁開度を調整してもよい。これにより、微粉炭の吹き込み量が、平常運転時の目標微粉炭吹き込み量と等しくなるように、制御される。その結果、平常運転時に、微粉炭供給量は一定であり、高炉内では安定した還元反応条件が維持される。
【0016】
なお、前述のとおり、平常運転時に吹込み量が安定している場合は、このような制御を行わず、支管流量調整弁の開度を一定として操業してもよい。平常運転時の吹き込み量が安定しているかどうかは、操業条件に応じて適宜判断されるものである。微粉炭の吹き込み量が、平常運転時の目標微粉炭吹き込み量を基準として、所定時間内に±30%以上、好ましくは±20%以上、より好ましくは±10%以上の変動をする場合に、吹き込み量が安定していないと判断して、支管流量調整弁の開度を調整する制御を行ってもよい。吹き込み量の変動を測定する所定時間とは、運転状況に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではなく、数分間~数十分(例えば1分以上30分以下)の範囲から選択してもよい。
【0017】
平常運転時において、支管に設置された流量調整弁での圧力損失が予め規定した範囲内になるように、流量調整弁の開度を設定しておくことができる。(この開度設定は、平常運転時に、支管流量調整弁の開度を一定とする場合、支管流量調整弁の開度を調整する場合のいずれでも適用可能である。)開度設定に応じて、流量調整弁で圧力損失が生じ、その圧力損失が大きいほど、流量調整弁以降の支管では微粉体またはそれを吹き込むための気流は流れにくくなる。逆に、流量調整弁の開度を開けていくと、圧力損失は小さくなり、微粉体または気流は流れやすくなり、流量(吹き込み量)が増加する。そのため、支管内で微粉炭の吹き込み量低下及び/または詰まりが生じた際に、流量調整弁の開度を全開にすることにより、圧力損失が低下し、微粉体またはそれを吹き込む気流が流れやすくなり、流量(吹き込み量)が増加し、ひいては支管内の詰まりを解消するように作用させることができる。
【0018】
予め規定しておく圧力損失の範囲は、吹き込まれる微粉炭やガスの性状や、支管の形状等に起因する詰まりの発生しやすさ、ならびに流量調整弁の弁開度特性等を考慮して、適宜設定することができる。予め規定された圧力損失が得られれば、流量調整弁の開度範囲は特に限定されるものではない。ただし、開度が小さすぎると平常運転時の微粉炭吹き込み量の変動に追随するための開度調整裕度が狭く、制御が困難なことがあるので、弁開度を30%以上、好ましくは40%以上としてもよい。一方、開度が大きすぎると、流量低下や詰まり発生時に全開にした場合の圧力ポテンシャルが十分でなく、流量低下や詰まりが解消しにくいことがあるので、弁開度を60%以下、好ましくは50%以下としてもよい。
【0019】
弁開度、圧力損失および流量との間には、流体特性や配管構成等の影響を受けるものの、一定の相関関係が存在すると考えられる。すなわち、一般的には、弁開度が大きいほど、圧力損失は小さく、流量は大きくなる傾向が認められる。したがって、詰まりを解消するために必要とされる流量の増加分を想定しておき、そのような流量増加が得られるような圧力損失量や弁開度を設定することができる。逆に、支管(分岐支管)に設置された流量調整弁の弁特性(弁開度)から、実現可能な流量の増減を確認しておき、詰まりを解消するための必要とされる流量の増加分が得られるように、弁開度を設定してもよい。平常運転時の流量は、高炉の運転条件に基づいて任意に設定されるものであり、通常のキャリアガス流量として100Nm/h前後(±30%)を採用してもよい。これに対して、流量低下や詰まりを解消するための流量は、平常運転時の流量より多いことが必要であり、多いほど好ましいが、一方で流量低下や詰まりを解消するために必要な流量以上とすることは不要である。そのため、詰まりを解消するための流量は、平常運転時の流量の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上であってもよく、2.0倍以下、好ましくは1.7倍以下であってもよい。
また、流量調整弁での圧力損失を指標とすることができ、全開時に流量を増して、流量低下や詰まりを解消させる観点からはできるだけ圧力損失が大きい方が好ましいが、一方でそのような大きい圧力損失を得るには流量調整弁の耐圧性等を過剰に向上させたり、平常運転時の流量調整範囲が過剰に制限されたりする等、設備や運転上の制約が増す。例えば、吹込みタンク圧力の耐圧上限にかかってしまうため、最大0.2MPa程度しか増加させられない、あるいは、圧力損失を得るために過剰な流速が必要であり、それによって流量調整部の摩耗が進む等の問題がある。上記の観点から、適当平常運転時の流量に対して適切な圧力損失となるように設定することができ、0.01~0.2MPa程度の圧力損失となるように、弁開度を調整してもよい。
【0020】
流量低下や詰まりを解消するために、流量調整弁の開度を全開にする場合、弁はできるだけ迅速に開度を大きくすることが好ましい。全開にする速度が速いほど、流量低下や詰まり解消のためのインパクトが大きくなるためである。流量調整弁の開度調整手法によって決まる弁開度調整速度の最大許容速度で全開にしてもよい。定量的に表現すれば、流量調整弁の開度を全開にするまでの時間が、3秒以内であることが好ましい。さらに好ましくは1秒以内であってもよい。なお、流量調整弁を全開にしてから、数十秒程度(例えば60±10秒)全開状態を維持して、パージガスが十分に通過するように、すなわち詰まりが十分に解消するようにしてもよい。
【0021】
微粉炭を気流輸送するための流体は、高炉内へ搬送される流体であり、高炉内での還元反応条件や微粉炭の性状や輸送量に応じて調製される。微粉炭と輸送のための気流流体の割合(固気比[kg/kg])が調整されてもよい。固気比が高すぎると、流量低下や詰まりが生じやすく、流量低下や詰まり解消のために流量調整弁の開度を全開にして、流量を増加させても、流量低下や詰まりが解消しにくい場合がある。流量低下や詰まりを生じにくくする観点からは、固気比は低い方が安定的な吹込み状況は得られるために好ましい。ただし、固気比が低すぎると、すなわち気流流体の割合が高くなると、配管の圧力損失増加や用役コスト悪化等の課題がある。そのため、固気比(kg/kg)は、3以上~50以下で操業してもよい。
【0022】
上記に記載した方法により、微粉炭の吹き込みの供給を継続しながら、支管(分岐支管)での詰まりを解消することが可能である。従来は、流量低下や詰まりを解消するためのパージを行う際に、微粉炭の供給を停止するのが一般的であった。そのため、流量低下や詰まりの解消を行うと、高炉内での還元反応条件が平常運転時とは異なるものとなり、特に、複数ある支管(分岐支管)の一つから微粉炭の供給がなく、その他の支管では微粉炭が供給されているため、高炉内の還元反応バランスに大きく影響する場合がある。本発明により、そのような還元反応条件の変動が小さくなり、還元反応バランスを継続的に安定に保つことができ、これにより製品品質の維持、向上に極めて有用である。
【0023】
流量調整弁を全開にして、支管内での微粉炭の流量低下及び/または詰まりが解消された後は、流量調整弁の開度を、予め規定された圧力損失の範囲になるように設定してもよい。これにより、平常運転時の弁開度に戻すことになり、吹き込み量が安定している場合は流量調整弁を一定開度にすることができ、また、流量調整弁の開度を調整する制御を行う場合は微粉炭の吹き込み量が平常時の目標吹き込み量と等しくするための流量制御を再開できる。これらの結果、高炉内での安定した還元反応条件を継続的に維持することが可能である。
【0024】
支管内で微粉炭の流量低下及び/または詰まりが発生しているかどうかは、一般的に用いられる閉塞判断手法を用いてもよい。本発明では、支管に設置された支管流量計で流量(微粉炭吹き込み量)を監視しているため、監視している現在(または通常時)の流量を平常運転の基準(例えば1.0)として、流量低下の判定基準(例えば0.7)や詰まりの判定基準(例えば0.5)を設定しておき、監視している流量が前記の判定基準を下回った場合、支管内で流量低下及び/または詰まりが生じていると判断してもよい。判定基準は、微粉炭性状、配管構成、高炉還元反応条件等に応じて適宜設定してもよい。平常運転時は、微粉炭吹き込み量が目標値と等しくなるように調整されているため、流量が、平常運転時の目標流量を1.0として、それよりも数割程度(例えば、0.3~0.5)以上、低下した場合に、流量低下や詰まりが生じていると判断してもよい。
【実施例
【0025】
本発明について、以下の実施例を通じて説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0026】
内容積5000m であって、その周囲に40箇所の羽口を有する実規模の高炉を想定して、分配器(ディストリビューター)以降の、羽口までの配管(支管:分岐支管に相当)を用意し、当該配管には上流側から支管流量調整弁、三方弁、支管流量計が設置された。図3~5は、本実施例および参考例での装置構成および気体の流れを模式的に表現したものである。黒色で表示されたバルブは、閉状態であることを意味する。
【0027】
図3は、本実施例による、(通常時における、)微粉炭の吹き込みの状態を示した図である。図3に示すように、微粉炭を気流輸送するための流体として空気を用い、平常運転時を想定した流量として100Nm/h(支管1本あたり)とした。微粉炭の量としては、固気比が7.8kg/kgなるように設定した。吹き込み試験用の微粉炭として、流量低下や詰まりが比較的発生しやすい性状の微粉炭を用いた。さらに、実際の操業で詰まりの原因となったことのある木片、ウエス、ビニール、糸くず等の異物を模擬したものを微粉炭に混合して、吹き込み試験に用いた。これは流量低下や詰まりの発生のしやすさ(またはしにくさ)を加速試験的に評価するためである。
設置した支管流量調整弁で前記の流量を得るための弁開度は、約40%であった。このときの支管流量調整弁での圧力損失は、おおよそ0.1MPaであった。
図4は、本実施例による、微粉炭の詰まりを解消するためのパージを行っている状態を示した図である。図4に示すように、対象となる羽口につながる支管流量調整弁の弁開度を40%から全開(100%)にすると(このとき対象外となる羽口につながる支管流量調整弁の弁解度は40%のままとした)、流量が170Nm/h(支管1本あたり)となり、大幅に流量を増加できることが確認された。
【0028】
支管の流量低下や詰まりを模擬的に再現するために、支管出口(羽口の直前部に相当)に微粉炭による閉塞物を充填した。このときの流量は60Nm/h(支管1本あたり)となった。この流量低下や詰まりを解消するために、図4に示すように、支管流量調整弁の弁開度を瞬時(1秒以内)に40%から全開(100%)にすると、流量は増加し、流量低下や詰まりは解消した。その後、弁開度を平常運転時の開度(40%)まで戻し(図3参照)、微粉炭の流量制御(目標微粉炭吹き込み量と等しくする)を再開した。流量低下や詰まりの解消のために弁開度を全開にし、流量低下や詰まり解消確認後、平常運転時の弁開度に戻し、通常時の微粉炭の供給が開始できるようになるまでの時間は、数十秒以内であった。
【0029】
なお、参考例として、上記と同様の模擬閉塞物で詰まりを生じさせた場合に、図5に示すように、三方弁の流れ方向を変更し、微粉炭の供給を停止して、エアパージを120Nm/h(支管1本あたり)を行った。この場合でも、模擬閉塞物が支管出口から排出され、流量低下や詰まりは解消した。三方弁を切り替えて、エアパージによる詰まり解消を行って、通常時の微粉炭の供給が再開できるようになるには、数分の時間を要した。
図1
図2
図3
図4
図5