(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ラインガイド機構及び旋回装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20221129BHJP
B23Q 1/70 20060101ALI20221129BHJP
B23B 19/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B23Q1/00 E
B23Q1/70
B23B19/00
(21)【出願番号】P 2018182672
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 善昭
(72)【発明者】
【氏名】若杉 直矢
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-073170(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100710(WO,A1)
【文献】特開2006-136974(JP,A)
【文献】特開2013-176836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00 - 1/76
B23Q 9/00 - 9/02
B23B 1/00 - 25/06
H02G 3/00 - 3/04
H02G 3/22 - 3/40
H02G 11/00 - 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転規制されて配置される第一案内筒と、
前記第一案内筒の中心軸線と同軸で直列配置され、前記中心軸線の回りに回転可能に配置される第二案内筒と、
第一円筒部材及び前記第一円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第一突状部材を有し、前記直列配置される第一案内筒及び第二案内筒のうち、前記第一案内筒の開放端側に一体もしくは別体で設けられる第一仕切り部材と、
第二円筒部材及び前記第二円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第二突状部材を有し、前記直列配置される第一案内筒及び第二案内筒のうち、前記第二案内筒の開放端側に一体もしくは別体で設けられる第二仕切り部材と、
第三円筒部材及び前記第三円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第三突状部材を有し、前記第一仕切り部材と前記第二仕切り部材との間に配置される第三仕切り部材と、
前記第一仕切り部材の前記第一円筒部材
に連結され、
前記第二仕切り部材の前記第二円筒部材及び前記第三仕切り部材の前記第三円筒部材
を回転可能に
支持する支柱部材と、
を備え、
ラインを、前記第一案内筒の内周と前記第一仕切り部材の前記第一突状部材で仕切られる区画に通し、さらに前記第一案内筒の内周もしくは前記第二案内筒の内周と前記第三仕切り部材の前記第三突状部材で仕切られる区画に通し、さらに前記第二案内筒の内周と前記第二仕切り部材の前記第二突状部材で仕切られる区画に通した状態で、前記第二案内筒の回転に応じて案内する、ラインガイド機構。
【請求項2】
前記第一案内筒の中心軸線方向の長さは、前記第二案内筒の中心軸線方向の長さと同一となるように形成される、請求項1に記載のラインガイド機構。
【請求項3】
前記ラインガイド機構は、前記支柱部材に対する前記第三仕切り部材の回転可能角度を制限する角度制限機構、を備える、請求項1又は2に記載のラインガイド機構。
【請求項4】
前記第三仕切り部材は、金属で形成され、前記第三突状部材の表面は、摩擦係数を下げる処理が施される、請求項1-3の何れか一項に記載のラインガイド機構。
【請求項5】
前記第三突状部材は、樹脂で形成される、請求項1-3の何れか一項に記載のラインガイド機構。
【請求項6】
前記第一案内筒及び前記第二案内筒は、金属で形成され、前記第一案内筒及び前記第二案内筒の各内周面は、摩擦係数を下げる処理が施される、請求項1-5の何れか一項に記載のラインガイド機構。
【請求項7】
前記第一案内筒及び前記第二案内筒は、樹脂で形成される、請求項1-5の何れか一項に記載のラインガイド機構。
【請求項8】
前記第三突状部材は、前記支柱部材に対し軸受を介して回転可能に支持される、請求項1-7の何れか一項に記載のラインガイド機構。
【請求項9】
工作物の加工用の回転工具を有する主軸装置を備える旋回本体部と、
前記旋回本体部を旋回軸線回りで回転可能に支持する固定本体部と、
前記旋回本体部の旋回軸線上に配置される請求項1-8の何れか一項に記載のラインガイド機構と、
を備える旋回装置であって、
前記第一案内筒は、前記固定本体部に連結され、
前記第二案内筒は、前記旋回本体部に連結される、旋回装置。
【請求項10】
前記ラインは、前記旋回本体部の内部下方において余裕長を持って弛んだ状態となっている、請求項9に記載の旋回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインガイド機構及び旋回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、旋回装置(旋回主軸装置)を備える工作機械が記載されている。この旋回装置は、旋回軸を45度に傾斜させた状態で回転可能に支持する固定本体部と、旋回軸と共に回転可能な旋回本体部と、旋回軸回りで旋回本体部に支持される主軸装置とを備える。旋回装置は、主軸装置を旋回軸回りで旋回させて垂直姿勢と水平姿勢の間で旋回割出しを行う。
【0003】
旋回装置を備える工作機械では、旋回装置から主軸装置に電気や油気圧等の供給が必要であるため、電気を通す電気配線路や油気圧等を通す流体配管路等のラインが設けられる。このようなラインは、旋回装置の旋回運動で所定の許容範囲を超えてねじれた場合は、破断や破損が生じるおそれがある。そこで、ラインは、所定の許容範囲を超えてねじれないように、例えば、特許文献2に記載の旋回運動に対応した巻取り型のガイドに収容されて保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-1206号公報
【文献】特表2015-502862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のガイドにおいて、旋回軸の旋回可能角度を大きくするためには、ガイドの直動範囲を大きくとる(収容面積を大きくする)必要があり、旋回装置が大型化する。また、ガイドの運動を安定させるためには、複雑形状なガイド板が必要となり、部品点数の増大や組付け工数の増加によりコスト高となる傾向にある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シンプルで小型な構成のラインガイド機構及び当該ラインガイド機構を備える旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るラインガイド機構は、回転規制されて配置される第一案内筒と、前記第一案内筒の中心軸線と同軸で直列配置され、前記中心軸線の回りに回転可能に配置される第二案内筒と、第一円筒部材及び前記第一円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第一突状部材を有し、前記直列配置される第一案内筒及び第二案内筒のうち、前記第一案内筒の開放端側に一体もしくは別体で設けられる第一仕切り部材と、第二円筒部材及び前記第二円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第二突状部材を有し、前記直列配置される第一案内筒及び第二案内筒のうち、前記第二案内筒の開放端側に一体もしくは別体で設けられる第二仕切り部材と、第三円筒部材及び前記第三円筒部材に対し放射状に突設される少なくとも2つの第三突状部材を有し、前記第一仕切り部材と前記第二仕切り部材との間に配置される第三仕切り部材と、前記第一仕切り部材の前記第一円筒部材に連結され、前記第二仕切り部材の前記第二円筒部材及び前記第三仕切り部材の前記第三円筒部材を回転可能に支持する支柱部材と、を備える。
【0008】
そして、ラインを、前記第一案内筒の内周と前記第一仕切り部材の前記第一突状部材で仕切られる区画に通し、さらに前記第一案内筒の内周もしくは前記第二案内筒の内周と前記第三仕切り部材の前記第三突状部材で仕切られる区画に通し、さらに前記第二案内筒の内周と前記第二仕切り部材の前記第二突状部材で仕切られる区画に通した状態で、前記第二案内筒の回転に応じて案内する。
【0009】
このラインガイド機構においては、第二案内筒の回転角度を大きくしても円筒状の第一案内筒内及び第二案内筒内においてラインを案内できる。すなわち、ラインガイド機構においては、第二案内筒が回転軸線回りに回転すると、第二案内筒の第二突状部材がラインを押し、さらに当該ラインが第三仕切り部材の第三突状部材を押して回転軸線回りに螺旋状に旋回してラインを案内する。このように、シンプルで小型なラインガイド機構に構成できる。
【0010】
本発明に係る旋回装置は、工作物の加工用の回転工具を有する主軸装置を備える旋回本体部と、前記旋回本体部を旋回軸線回りで回転可能に支持する固定本体部と、前記旋回本体部の旋回軸線上に配置される上記ラインガイド機構と、を備える旋回装置であって、前記第一案内筒は、前記固定本体部に連結され、前記第二案内筒は、前記旋回本体部に連結される。
【0011】
これによれば、上述の理由によりシンプルで小型なラインガイド機構に構成できるので、旋回本体部の回転角度を大きくしても、旋回装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の旋回装置として旋回主軸装置を備える工作機械の斜視図である。
【
図2B】旋回装置における主軸の旋回範囲を旋回軸線方向から見た図である。
【
図4A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の第一、第二案内筒を中心軸線方向から見た図である。
【
図5A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の第一、第二仕切り部材を中心軸線方向から見た図である。
【
図6A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の第二支柱部材を中心軸線方向から見た図である。
【
図7A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の第三支柱部材を中心軸線方向から見た図である。
【
図8A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の第一、第二羽部材を中心軸線方向から見た図である。
【
図9A】
図3の旋回装置に備わるラインガイド機構の軸受を中心軸線方向から見た図である。
【
図10】第一、第二案内筒及び第一、第二仕切り部材におけるラインの配置を中心軸線方向から見た図である。
【
図11】第一、第二案内筒及び第一、第二羽部材におけるラインの配置を中心軸線方向から見た図である。
【
図12A】旋回本体部の旋回前のラインガイド機構におけるラインの状態を径方向から見た図である。
【
図12B】旋回本体部の旋回後のラインガイド機構におけるラインの状態を径方向から見た図である。
【
図13A】旋回本体部の旋回前のラインガイド機構の第一仕切り部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図13B】旋回本体部の旋回前のラインガイド機構の第一羽部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図13C】旋回本体部の旋回前のラインガイド機構の第二羽部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図13D】旋回本体部の旋回前のラインガイド機構の第二仕切り部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図14A】旋回本体部の旋回後のラインガイド機構の第一仕切り部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図14B】旋回本体部の旋回後のラインガイド機構の第一羽部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図14C】旋回本体部の旋回後のラインガイド機構の第二羽部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図14D】旋回本体部の旋回後のラインガイド機構の第二仕切り部材におけるラインの状態を回転軸線方向から見た図である。
【
図15】工作機械の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図16A】ラインを通した従来のガイドを径方向から見た断面図である。
【
図16B】ラインを通した従来のガイドを
図16Aの状態から中心軸線回りに回転させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.旋回装置を備える工作機械の構成)
本実施形態の旋回装置として旋回主軸装置を備える工作機械を例に挙げて説明する。
図1に示すように、工作機械1は、5軸マシニングセンタであり、ベッド11、コラム12、サドル13、旋回装置20、スライドテーブル14及びターンテーブル15を備える。ベッド11は、ほぼ矩形状からなり、床上に配置される。ベッド11上には、コラム12が起立して設けられる。
【0014】
コラム12の側面には、サドル13がX軸線方向に移動可能に設けられる。サドル13の側面には、主軸装置30が取り付けられる旋回装置20がY軸線方向に移動可能に設けられる。また、ベッド11上には、スライドテーブル14がZ軸線方向に移動可能に設けられる。スライドテーブル14上には、ターンテーブル15がY軸線回り(B軸)に回転可能に設けられる。ターンテーブル15には、図略の工作物が治具を介して固定される。
【0015】
図2A及び
図3に示すように、旋回装置20は、旋回軸21、旋回本体部22及び固定本体部23を備える。本例の旋回装置20は、固定本体部23に対して旋回軸21を旋回本体部22と共に回転させる。そして、
図2Bに示すように、主軸装置30の姿勢(回転軸線Rの向き)を水平方向(旋回本体部22の旋回軸線Dの回転角度θが0度)から垂直方向(旋回本体部22の旋回軸線Dの回転角度θが180度)までの間で変化させて主軸装置30の旋回割出しを行う装置である。
【0016】
図3に示すように、旋回軸21は、略中空円筒状の旋回軸本体21A、中空円筒状の回転スリーブ24及び中空円筒状の固定スリーブ25を有し、旋回軸線DがZ軸線に対し45度傾斜するように固定本体部23内に配置される。旋回軸本体21Aは、固定本体部23内で図略のモータ及び減速機構により回転駆動可能に支持される。回転スリーブ24は、旋回軸本体21Aの内周に同軸(旋回軸線D)で挿入され、旋回軸本体21Aと共に回転可能に設けられる。固定スリーブ25は、回転スリーブ24の内周に同軸(旋回軸線D)で嵌入され、固定本体部23に固定され回転規制される。
【0017】
図2Aに示すように、旋回本体部22は、旋回軸線D方向に見たときに旋回本体部22よりも径方向に大きいフランジ部22Aを備える。すなわち、フランジ部22Aは、旋回本体部22の旋回軸21側の開口周縁部から径方向外側に張り出すように一体的に設けられる。
図3に示すように、旋回本体部22は、フランジ部22Aと略同径の円盤部材40を介して旋回軸21の下端に旋回軸線D回りに回転可能に設けられる。
【0018】
さらに、
図2Aに示すように、旋回本体部22には、主軸装置30が主軸31の回転軸線Rを旋回軸21の旋回軸線Dに対し45度傾斜させた状態で旋回軸線D回りに旋回可能に支持される。主軸31の先端側には、回転工具32が着脱可能に取り付けられ、主軸31の後端側には、主軸31の図略の回転用モータのモータ軸が連結される。
【0019】
図1に示すように、固定本体部23は、サドル13の側面にY軸線方向に直動可能に設けられる。
図3に示すように、固定本体部23の内部には、ラインとして主軸装置30への電気を通す電気配線路26が設けられる。すなわち、電気配線路26は、固定本体部23の内部から固定スリーブ25の中心孔25eに挿入されるラインガイド機構50を通って旋回本体部22の内部へ至るように設けられる。
【0020】
そして、旋回本体部22の内部には、電気配線路26と接続する配線路接続部27が設けられる。この配線路接続部27は、図略の電気配線により主軸装置30等と接続される。電気配線路26としては、主軸31の回転用モータの駆動用の動力線や旋回本体部22の回転位相角度を検出する図略のロータリーエンコーダの信号線、もしくはレーザ光を通す光ファイバ等がある。
【0021】
さらに、固定本体部23の内部には、ラインとして油気圧を通す流体配管路28が設けられる。すなわち、流体配管路28は、固定本体部23の内部から固定スリーブ25の中心孔25eに挿入されるラインガイド機構50を通って旋回本体部22の内部へ至るように設けられる。
【0022】
そして、旋回本体部22の内部には、流体配管路28と接続する配管路接続部29が設けられる。この配管路接続部29は、図略の流体配管路により主軸装置30等と接続される。なお、クーラントは、旋回装置20の外部に設けられる図略のノズル等を用いて回転工具32等に供給される。
【0023】
(2.ラインガイド機構の構造)
次に、ラインガイド機構50の構造について説明する。
図3に示すように、ラインガイド機構50は、中心軸線が旋回軸線Dと一致するように旋回本体部22及び固定本体部23の内部に配置される。そして、ラインガイド機構50は、貫通させた電気配線路26及び流体配管路28を、旋回本体部22の回転に応じて案内する。
【0024】
ラインガイド機構50は、第一案内筒51と、第二案内筒52と、第一仕切り部材531と、第二仕切り部材532と、第一支柱部材541と、第二支柱部材542と、第三支柱部材543と、第一羽部材551(第三仕切り部材)と、第二羽部材552(第三仕切り部材)とを備える。
【0025】
図4A及び
図4Bに示すように、第一案内筒51は、MCナイロン等の樹脂で成り、一端側にフランジ部51aが形成された中空円筒状に形成される。
図3に示すように、第一案内筒51は、固定スリーブ25の中心孔25eに上方から挿入され、中心軸線C1が旋回軸線Dと一致するように配置される。そして、第一案内筒51のフランジ部51aが、固定スリーブ25と連結される案内筒用部材51bに案内筒用ボルト51cで締結される。すなわち、第一案内筒51は、回転規制されて配置される。
【0026】
図4A及び
図4Bに示すように、第二案内筒52は、第一案内筒51と同一素材、同一形状(第二案内筒52の径及び中心軸線C1方向の長さと第一案内筒51の径及び中心軸線C1方向の長さが同一)となるように形成される。
図3に示すように、第二案内筒52は、固定スリーブ25の中心孔25eに下方から挿入され、中心軸線C1が旋回軸線Dと一致するように配置される。
【0027】
そして、第二案内筒52のフランジ部52aが、回転スリーブ24と連結される円盤部材40及び案内筒用部材52bに案内筒用ボルト52cで締結される。すなわち、第二案内筒52は、第一案内筒51の中心軸線C1と同軸で直列配置され、旋回軸線D回りに回転可能に配置される。
【0028】
図5A及び
図5Bに示すように、同一形状の第一仕切り部材531及び第二仕切り部材532は、樹脂又は金属等でそれぞれ成る。樹脂の場合、低摩擦係数の例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等が用いられる。また、金属の場合、表面は摩擦係数を下げる処理、例えばWPC処理、ショットブラスト処理、DLC処理が施される。
【0029】
そして、第一仕切り部材531は、円筒状の第一円筒部材531a及び第一円筒部材531aの外周に等角度間隔(120度)で放射状に突設される3つの矩形板状の第一突状部材531bを備える。第二仕切り部材532は、円筒状の第二円筒部材532a及び第二円筒部材532aの外周に等角度間隔(120度)で放射状に突設される3つの矩形板状の第二突状部材532bを備える。第一突状部材531b及び第二突状部材532bの各自由端部には、中心軸線C2方向にボルト穴53cがそれぞれ穿孔される。
【0030】
図3に示すように、第一仕切り部材531は、ボルト穴53cに案内筒用ボルト51cが通されて第一案内筒51のフランジ部51aの端面に締結される。すなわち、第一仕切り部材531は、回転規制されて配置される。第二仕切り部材532は、ボルト穴53cに案内筒用ボルト52cが通されて第二案内筒52のフランジ部52aの端面に締結される。すなわち、第二仕切り部材532は、第二案内筒52とともに旋回軸線D回りに回転可能に配置される。
【0031】
第一支柱部材541、第二支柱部材542及び第三支柱部材543は、基本的には同一形状で金属又は樹脂等で成る。
図6A,B及び
図7A,Bは、第二支柱部材542及び第三支柱部材543をそれぞれ示す。第一支柱部材541は、後述する角度制限機構56の2本の第一、第二固定ピン56b,56cを備えていない点のみが第二支柱部材542及び第三支柱部材543と異なる。そこで、
図6A,Bを参照して第二支柱部材542について説明する。
【0032】
第二支柱部材542は、中心軸線C3方向に小径部54aと大径部54bが形成される。小径部54aは、先端側が括れており、括れの外周には、中心軸線C3と直角な方向に貫通するボルト穴54cが穿孔される。大径部54bの端面には、小径部54aの括れ部分より若干大径で中心軸線C3方向に延びる有底穴54dが穿孔される。そして、大径部54bにおける有底穴54dの形成部分の外周には、中心軸線C3と直角な方向に貫通するボルト穴54eが穿孔される。
【0033】
このボルト穴54eの一方側には、支柱部材用ボルト54f(
図3参照)を螺合可能なめねじが切られている。そして、例えば第一支柱部材541の小径部54aの括れ部分が第二支柱部材542の有底穴54dに挿入され、支柱部材用ボルト54fが第二支柱部材542のボルト穴54e及び第一支柱部材541のボルト穴54cに通されて締結される。これにより、第一支柱部材541及び第二支柱部材542の連結が可能となる。及び第二支柱部材542及び第三支柱部材543の連結も同様である。
【0034】
図3に示すように、連結された第一、第二、第三支柱部材541,542,543のうち第一支柱部材541は、大径部54b側が第一仕切り部材531の第一円筒部材531aに対して止め部材54gで連結される。この止め部材54gは、第一支柱部材541の小径部54aと同形状に形成され、止め部材54gの一端側にはボルト穴54cと同形状の穴が形成され、止め部材54gの他端側にはダブルナット54hが螺合可能なめねじが形成される。
【0035】
止め部材54gは、一端側が第一仕切り部材531の第一円筒部材531aの中心穴から第一支柱部材541の大径部54bの有底穴54dに挿入されて支柱部材用ボルト54fで締結される。そして、他端側はダブルナット54hが螺合されて締結される。すなわち、連結された第一、第二、第三支柱部材541,542,543は、回転規制されて配置される。
【0036】
また、連結された第一、第二、第三支柱部材541,542,543のうち第三支柱部材543の小径部54aは、第二仕切り部材532の第二円筒部材532aの中心穴に挿入される。そして、小径部54aのボルト穴54cに支柱部材用ボルト54fが挿入されて締結される。すなわち、第二仕切り部材532は、連結された第一、第二、第三支柱部材541,542,543に対し旋回軸線D回りに回転可能となる。なお、第三支柱部材543の小径部54aは、保護のためキャップ54aaで覆われる。
【0037】
図8A及び
図8Bに示すように、同一形状の第一羽部材551(第三仕切り部材)及び第二羽部材552(第三仕切り部材)は、樹脂又は金属等でそれぞれ成り、円筒状の第三円筒部材55aの外周に等角度間隔(120度)で放射状に配置される3つの矩形板状の第三突状部材55bをそれぞれ備える。樹脂の場合、低摩擦係数の例えばポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等が用いられる。また、金属の場合、表面は摩擦係数を下げる処理、例えばショットピーニング処理、ショットブラスト処理、DLC処理が施される。
【0038】
図3に示すように、第一羽部材551及び第二羽部材552は、連結された第一、第二、第三支柱部材541,542,543のうち第一支柱部材541及び第二支柱部材542における小径部54aに対し、旋回軸線D回りに回転可能にそれぞれ配置される。そして、第一羽部材551及び第二羽部材552の各第三円筒部材55aの内周には、第一支柱部材541及び第二支柱部材542における各小径部54aに対してスムーズな回転が可能なように、
図9A及び
図9Bに示す軸受55cが挿入される。
【0039】
軸受55cは、低摩擦係数の樹脂、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等で形成される。なお、第二仕切り部材532の第二円筒部材532aの内周にも、第三支柱部材543の小径部54aに対してスムーズな回転が可能なように、軸受55cが挿入される。ただし、第一、第二羽部材551,552の各第三円筒部材55aと第一、第二支柱部材541,542との摺動性、第二仕切り部材532の第二円筒部材532aと第三支柱部材543との摺動性が担保されていれば、軸受55cは不要である。
【0040】
角度制限機構56は、
図8A及び
図8Bに示すように、第一羽部材551及び第二羽部材552にそれぞれ設けられる当接ピン56aと、
図6A,6B及び
図7A,7Bに示すように、第一支柱部材541及び第二支柱部材542にそれぞれ設けられる2つの第一、第二固定ピン56b,56cを備える。角度制限機構56は、連結された第一支柱部材541に対する第一羽部材551の回転可能角度、及び連結された第二支柱部材542に対する第二羽部材552の回転可能角度をそれぞれ制限する。
【0041】
具体的には、
図8A及び
図8Bに示すように、当接ピン56aは、第一羽部材551及び第二羽部材552の第三円筒部材55aの端面における一の第三突状部材55bの根本の位置において、中心軸線C4方向に突出するようにそれぞれ設けられる。また、
図6A及び
図6Bに示すように、第一支柱部材541の第一固定ピン56bは、小径部54aにおける第一羽部材551と大径部54bとの間の外周において、第一羽部材551の当接ピン56aと当接可能なように径方向に突出して設けられる。
【0042】
そして、第一支柱部材541の第二固定ピン56cは、第一固定ピン56bから反時計回りに60度の位置において、第一羽部材551の当接ピン56aと当接可能なように径方向に突出して設けられる。つまり、第一羽部材551は、第一支柱部材541に対して第一固定ピン56bと第二固定ピン56cの間の60度で回転角度が制限される。
【0043】
また、
図7A及び
図7Bに示すように、第二支柱部材542の第一固定ピン56bは、小径部54aにおける第二羽部材552と大径部54bとの間の外周において、第二羽部材552の当接ピン56aと当接可能なように径方向に突出して設けられる。そして、第二支柱部材542の第二固定ピン56cは、第一固定ピン56bから反時計回りに120度の位置において、第二羽部材552の当接ピン56aと当接可能なように径方向に突出して設けられる。
【0044】
つまり、第二羽部材552は、第二支柱部材542に対して第一固定ピン56bと第二固定ピン56cの間の120度で回転角度が制限される。なお、第二仕切り部材532の回転角度は制限する必要がないため、第三支柱部材543には2つの第一、第二固定ピン56b,56cを設けていない。
【0045】
角度制限機構56の第一、第二固定ピン56b,56cの配置角度は、旋回本体部22の回転角度を回転部材の個数、すなわち第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532の個数で割った角度に設定される。これにより、ラインガイド機構50は、旋回本体部22の回転に追従して回転することになる。
【0046】
本例では、旋回本体部22の回転角度が180度であり、回転部材の個数は3個であるので、第一支柱部材541の第一、第二固定ピン56b,56cの配置角度は60度、第二支柱部材542の第一、第二固定ピン56b,56cの配置角度は120度となる。
【0047】
図10に示すように、第一仕切り部材531は、第一突状部材531bで第一案内筒51の内周を周方向に3つの領域A1-A3に区画し、第二仕切り部材532は、第二突状部材532bで第二案内筒52の内周を周方向に3つの領域A1-A3に区画する。また、
図11に示すように、第一羽部材551は、第三突状部材55bで第一案内筒51の内周を周方向に3つの領域B1-B3に区画し、第二羽部材552は、第三突状部材55bで第二案内筒52の内周を周方向に3つの領域B1-B3に区画する。
【0048】
そして、
図3、
図10及び
図11に示すように、ラインガイド機構50においては、第一仕切り部材531の領域A1-A3から、第一羽部材551の領域B1-B3及び第二羽部材552の領域B1-B3を通って第二仕切り部材532の領域A1-A3にわたって、電気配線路26及び流体配管路28が種類別等で分配して挿通される。
【0049】
例えば、電気配線路26のうち動力線26bは、領域A1,B1,B1,A1に挿入し、油圧や空圧を通す流体配管路28は、領域A2,B2,B2,A2に挿入し、電気配線路26のうち信号線26cは、領域A3,B3,B3,A3に挿入する。このように、電気配線路26は、流体配管路28と離間して配置されるので、流体供給のオンオフによる流体配管路28の振れの影響を受けることはない。
【0050】
また、信号線26cは、動力線26bと離間して配置されるので、ノイズの影響を抑制できる。なお、後述するように電気配線路26及び流体配管路28が緩やかな螺旋を描くように旋回するため、ラインガイド機構50の各領域A1-A3,B1-B3に対する電気配線路26又は流体配管路28の占有率は、40%程度がよい。
【0051】
そして、
図3に示すように、第一仕切り部材531から上方に出ている電気配線路26及び流体配管路28の上端部分は、旋回本体部22に固定されているクランプ部材26a,28aにゆとりを持たせずに接続される。これにより、旋回本体部22が回転して電気配線路26及び流体配管路28が旋回したとき、当該旋回力が電気配線路26及び流体配管路28の上端部分に伝わり難くなる。
【0052】
一方、第二仕切り部材532から下方に出ている電気配線路26及び流体配管路28の下端部分は、弛んだ円弧形状となる長さで配線路接続部27及び配管路接続部29と接続される。電気配線路26及び流体配管路28の下端部分を弛んだ円弧形状とする理由は、当該下端部分は重力により垂れ下がる傾向にあるため、当該下端部分の弛んだ円弧形状を維持できるからである。
【0053】
この円弧形状の半径は、電気配線路26及び流体配管路28の最小曲げ半径の2倍程度の大きさとする。これにより、旋回本体部22が回転したとき、ラインガイド機構50からの電気配線路26及び流体配管路28の出入り分が吸収されるため、電気配線路26及び流体配管路28が引っ張られることはない。
【0054】
(3.ラインガイド機構の動作)
次に、ラインガイド機構50の動作について
図12A、
図12B、
図13A-
図13D及び
図14A-
図14Dを参照して説明する。なお、各図においては、便宜上、1本の動力線26b及び1本の流体配管路28のみを示す。
図12A及び
図13A-
図13Dに示すように、旋回本体部22が回転角度0度に位置するとき、動力線26b及び流体配管路28は、直線状の状態になっているとする。
【0055】
旋回本体部22が回転角度0度から回転角度180度に向かって回転を開始すると、ラインガイド機構50において、流体配管路28は、第二仕切り部材532の第二突状部材532bに押圧されて、直線状の状態から緩やかな螺旋を描くように旋回する。そして、動力線26bは、第一羽部材551の第三突状部材55b及び第二羽部材552の第三突状部材55bを旋回本体部22の回転方向に押圧する。
【0056】
このとき第一、第二羽部材551,552及び第二仕切り部材532は、上記押圧力が掛かることになるが、第一、第二、第三支柱部材541,542,543が設けられているため、上記押圧力に対する耐久性は担保される。なお、第一案内筒51の内周と第一羽部材551の自由端とのギャップ、第二案内筒52の内周と第二羽部材552の自由端とのギャップ、及び第二案内筒52の内周と第二仕切り部材532の自由端とのギャップは、動力線26b及び流体配管路28が旋回中に当該ギャップを通り抜けないように、動力線26b及び流体配管路28の外径よりも小さくする。信号線26cも同様である。
【0057】
そして、第一羽部材551の第三突状部材55b、第二羽部材552の第三突状部材55b及び第二仕切り部材532の第二突状部材532bが60度回転すると、第一羽部材551の第三突状部材55bは角度制限機構56により回転停止する。次に、第二羽部材552の第三突状部材55b及び第二仕切り部材532の第二突状部材532bが120度回転すると、第二羽部材552の第三突状部材55bは角度制限機構56により回転停止する。最後に、
図14A-
図14Dに示すように、第二仕切り部材532の第二突状部材532bが180度回転し、旋回本体部22の回転が停止する。
【0058】
これにより、第一仕切り部材531の領域A1-A3は、固定状態にあるが、第一羽部材551の領域B1-B3、第二羽部材552の領域B1-B3及び第二仕切り部材532の領域A1-A3は、徐々にずれて螺旋状になる。そして、
図12Bに示すように、動力線26b及び流体配管路28は、局所的に急激なねじれを生じることはなく、緩やかな螺旋を描くので、破断や破損の発生を低減できる。なお、信号線26cも同様である。
【0059】
その後、旋回本体部22は、回転角度180度から回転角度0度に向かって先ほどとは逆の回転を開始する。ここで、
図16Aに示すように、従来のガイドGでは、旋回軸の旋回角度が例えば0度のときにガイドGの内周を直線状に通るラインLは、
図16Bに示すように、旋回軸が0度から180度に旋回したときにガイドGの内周に引き込まれる。そして、旋回軸が180度から0度に旋回すれば、ガイドGの内周に引き込まれたラインLは
図16Aに示す元の状態に戻るのである。
【0060】
ところが、
図16Cに示すように、ラインLとガイドGの内周との擦れによる摩擦抵抗等によりガイドGの内周に引き込まれたままで屈曲する場合がある。このラインLの屈曲(図の一点鎖線で囲まれた部分)は、曲率をコントロールすることが難しいため、繰り返し大きな屈曲が発生した場合はラインLの破断に繋がるおそれがある。また、摩擦によりラインLの外皮が摩耗するおそれがある。なお、
図16A-
図16Cでは、便宜上、ラインは1本のみ示す。
【0061】
本実施形態のラインガイド機構50では、第一案内筒51、第二案内筒52、第一羽部材551及び第二羽部材552は摩擦係数の低い樹脂で形成され、又は金属で形成され且つ摩擦係数を下げる処理が施されている。これにより、ラインガイド機構50において、動力線26b及び流体配管路28は、上述とは逆動作、すなわち螺旋を解く方向に旋回して直線状の状態に戻る。よって、動力線26b及び流体配管路28は、第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532の内周との擦れによる摩擦抵抗等により、第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532の内周に引き込まれたままで屈曲する事態を抑制でき、想定外の破断を防止できる。信号線26cも同様である。
【0062】
なお、仮に、案内筒を第一案内筒51及び第二案内筒52の2つに分けずに1つにした場合、1つの案内筒において下方における電気配線路26及び流体配管路28の相対回転量は、上方の当該相対回転量よりも大きくなる。よって、電気配線路26及び流体配管路28の擦れによるダメージが大きくなる。そこで、案内筒を第一案内筒51及び第二案内筒52の2つに分けることで、上記相対回転量を小さくして電気配線路26及び流体配管路28の擦れを平均化して、擦れによるダメージを小さくしている。
【0063】
(4.旋回装置を備える工作機械の動作)
次に、旋回装置20を備える工作機械1の工作物に対する加工動作について図を参照して説明する。なお、本例では、主軸装置30の姿勢(回転軸線Rの向き)が水平方向(0度)にあるときに工作物の一側面に孔を穿設し、主軸装置30の姿勢(回転軸線Rの向き)が垂直方向(180度)にあるときに工作物の上面に孔を穿設する加工動作について説明する。
【0064】
工作機械1の制御装置は、ターンテーブル15を回転させて工作物の加工側面を回転工具32側に位置決めし、主軸31の回転用モータを駆動して回転工具32を回転開始する(
図15のステップS1)。そして、旋回軸本体21Aのモータを駆動して旋回本体部22を回転し、主軸装置30を旋回させて回転工具32の回転位相を0度に割出し(
図15のステップS2)、サドル13、旋回装置20及びスライドテーブル14をX,Y,Z軸線方向にそれぞれ直動させて工作物の一側面に孔を穿設する加工を開始する(
図15のステップS3,S4)。
【0065】
このとき、主軸装置30の姿勢(回転軸線Rの向き)は、水平方向(0度)を向いているので、ラインガイド機構50の第一仕切り部材531の第一突状部材531b、第一羽部材551の第三突状部材55b、第二羽部材552の第三突状部材55b及び第二仕切り部材532の第二突状部材532bは、同一の回転角度に位置している。
【0066】
よって、各領域A1-A3,B1-B3,B1-B3,A1-A3は、直線状に連通した形状、すなわち円筒形状を軸線方向に3分割した形状となっているので、各領域A1-A3,B1-B3,B1-B3,A1-A3を通る電気配線路26及び流体配管路28は、略直線状態となっている。
【0067】
制御装置は、加工が終了したか否かを判断し(
図15のステップS5)、本例では加工がまだ終了していないので、ステップS2に戻って旋回軸本体21Aのモータを駆動して旋回本体部22を回転し、主軸装置30を旋回させて回転工具32の回転位相を180度に割出す(
図15のステップS2)。そして、サドル13、旋回装置20及びスライドテーブル14をX,Y,Z軸線方向にそれぞれ直動させて工作物の上面に孔を穿設する加工を開始する(
図15のステップS3,S4)。
【0068】
この回転位相割出中は、第二仕切り部材532の第二突状部材532bは、電気配線路26及び流体配管路28を回転方向に押圧し、電気配線路26及び流体配管路28は、第一羽部材551の第三突状部材55b及び第二羽部材552の第三突状部材55bを回転方向に押圧する。
【0069】
これにより、第一羽部材551の領域B1-B3、第二羽部材552の領域B1-B3及び第二仕切り部材532の領域A1-A3は、徐々にずれて螺旋状になる。よって、電気配線路26及び流体配管路28は、局所的に急激なねじれを生じることはなく、破断や破損の発生を低減できる。
【0070】
一方、ステップS5において、加工が終了した場合は、制御装置は、サドル13、旋回装置20及びスライドテーブル14をX,Y,Z軸線方向にそれぞれ直動させて回転工具32を退避位置に直動させるとともに、旋回本体部22を回転して主軸装置30を旋回させて回転工具32の回転位相を0度に割出す(
図15のステップS6)。この回転位相割出中は、電気配線路26及び流体配管路28は、上述とは逆動作、すなわち螺旋を解く方向に旋回して直線状の状態に戻る。
【0071】
よって、電気配線路26及び流体配管路28は、第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532の内周との擦れによる摩擦抵抗等により、第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532の内周に引き込まれたままで屈曲する事態を抑制でき、想定外の破断を防止できる。そして、主軸31の回転用モータを駆動停止して回転工具32を回転停止し(
図15のステップS7)、全ての処理を終了する。
【0072】
(5.その他)
上述した実施形態では、ラインガイド機構50の第一仕切り部材531、第一羽部材551、第二羽部材552及び第二仕切り部材532は、3つの領域を設ける構成としたが、2つもしくは4つ以上の領域を設ける構成としてもよい。また、2つの羽部材(第一羽部材551及び第二羽部材552)を設ける構成としたが、1つ又は3つ以上の羽部材を設ける構成としてもよい。また、第一突状部材531b、第二突状部材532b及び第三突状部材55bは、板状に形成したが、突出可能であれば棒状等であってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、第一案内筒51及び第一仕切り部材531を別部材で構成し、第二案内筒52及び第二仕切り部材532を別部材で構成したが、第一案内筒51及び第一仕切り部材531を一体で構成し、第二案内筒52及び第二仕切り部材532を一体で構成してもよい。
また、上述した実施形態では、傾斜した旋回軸21を有する旋回装置20にラインガイド機構50を適用する場合を説明したが、水平な旋回軸を有する旋回装置や垂直な旋回軸を有する旋回装置にも同様に適用可能である。また、旋回軸を有するテーブル(トラニオン、チルト)や主軸チルトにも同様に適用可能である。
また、上述した実施形態では、旋回軸21の旋回軸線DがZ軸線に対し45度傾斜する旋回装置20について説明したが、旋回軸の旋回軸線DがZ軸線に対し任意の角度傾斜する旋回装置についても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:工作機械、 20:旋回装置、 21:旋回軸、 22:旋回本体部、 23:固定本体部、 26:電気配線路、 28:流体配管路、 30:主軸装置、 50:ラインガイド機構、 51:第一案内筒、 52:第二案内筒、 531:第一仕切り部材、 532:第二仕切り部材 531a:第一円筒部材、 532a:第二円筒部材、 531b:第一突状部材、 532b:第二突状部材、 541:第一支柱部材、 542:第二支柱部材、 543:第三支柱部材、 551:第一羽部材、 552:第二羽部材、 55a:第三円筒部材、 55b:第三突状部材、 55c:軸受、 56:角度制限機構、 56a:当接ピン、 56b:第一固定ピン、 56c:第二固定ピン、 D:旋回軸線