(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221129BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221129BHJP
E06B 3/70 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E06B5/16
C03C27/12 C
E06B3/70 D
(21)【出願番号】P 2018193339
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桑原 英一郎
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152581(JP,A)
【文献】特開2015-209632(JP,A)
【文献】特開2014-029104(JP,A)
【文献】特開2017-214749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54-3/88
5/00-5/20
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス板と前記複数のガラス板の間に挟まれた樹脂層とを有するガラス積層体と、
前記ガラス積層体の周縁部を収容する収容溝を有し、前記ガラス積層体を支持する支持枠と、
を備える合わせガラスであって、
前記ガラス積層体は、前記ガラス積層体の周縁部の端面と前記収容溝の底面との間に空間を隔てた状態で、前記支持枠に支持されるものであり、
前記支持枠は、熱により前記空間を埋めるように膨張する遮熱部を前記収容溝内に有
し、
前記合わせガラスを設置した状況下において、前記ガラス積層体の周縁部のうち、鉛直上方に位置する部位を上縁部とし、鉛直下方に位置する部位を下縁部とし、前記上縁部及び前記下縁部を接続する部位を側縁部としたとき、
前記支持枠は、前記ガラス積層体の前記上縁部を支持する上枠と、前記ガラス積層体の前記下縁部を支持する下枠と、前記ガラス積層体の前記側縁部を支持する側枠と、を有し、
前記遮熱部は、前記側枠の前記収容溝内に配置され、前記下枠の前記収容溝内に配置されない
合わせガラス。
【請求項2】
前記ガラス積層体の前記側縁部の端面を被覆する被覆部を備える
請求項
1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記下枠は、前記収容溝と前記下枠の外部とを接続する接続孔を有する
請求項
2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記接続孔は、前記下枠の長手方向において、中央部よりも端部寄りの位置に対をなすように配置される
請求項
3に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数枚の耐熱ガラス板が樹脂層を介して接着された合わせガラスと、合わせガラスの端面を封止する耐熱テープと、を備える安全防火ガラスが記載されている。この安全防火ガラスは、耐熱テープにより、火災時に溶融した樹脂層が非加熱側に漏出することを抑制し、非加熱側で火炎が発生することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような合わせガラスは、当該合わせガラスの周縁部を支持する支持枠との関係で、遮炎性能をさらに高めることが望まれている。本発明の目的は、遮炎性能を向上できる合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する合わせガラスは、複数のガラス板と前記複数のガラス板の間に挟まれた樹脂層とを有するガラス積層体と、前記ガラス積層体の周縁部を収容する収容溝を有し、前記ガラス積層体を支持する支持枠と、を備える合わせガラスであって、前記ガラス積層体は、前記ガラス積層体の周縁部の端面と前記収容溝の底面との間に空間を隔てた状態で、前記支持枠に支持されるものであり、前記支持枠は、熱により前記空間を埋めるように膨張する遮熱部を前記収容溝内に有する。
【0006】
上記構成によれば、火災時の熱により遮熱部が膨張することで、遮蔽部がガラス積層体と支持枠との間の空間を埋める。このため、樹脂層が加熱されることで発生するガスなどが、上記空間を通じて、火災の発生する加熱側とは反対側の非加熱側に移動しにくくなる。こうして、合わせガラスは、樹脂層が加熱されることで発生するガスに起因して、非加熱側に火炎が発生することを抑制できる。つまり、合わせガラスは、遮炎性能を向上できる。
【0007】
上記合わせガラスにおいて、前記合わせガラスを設置した状況下において、前記ガラス積層体の周縁部のうち、鉛直上方に位置する部位を上縁部とし、鉛直下方に位置する部位を下縁部とし、前記上縁部及び前記下縁部を接続する部位を側縁部としたとき、前記支持枠は、前記ガラス積層体の前記上縁部を支持する上枠と、前記ガラス積層体の前記下縁部を支持する下枠と、前記ガラス積層体の前記側縁部を支持する側枠と、を有し、前記遮熱部は、前記側枠の前記収容溝内に配置され、前記下枠の前記収容溝内に配置されないことが好ましい。
【0008】
火災時に合わせガラスが加熱されると、樹脂層が溶融する場合がある。この場合、ガラス積層体の収容溝の全周に亘って遮熱部を設けると、溶融した樹脂が火災の発生する加熱側とは反対側の非加熱側に移動しにくくなるものの、溶融した樹脂が複数のガラス板の間に留まった状態で加熱され続けることとなる。そして、溶融した樹脂が複数のガラス板の間で、膨張したり発泡したりすることで、複数のガラス板に負荷が作用するおそれがある。この点、上記構成によれば、合わせガラスは、遮熱部が下枠の収容溝内に配置されないため、溶融した樹脂を複数のガラス板の間から下枠の収容溝に排出できる。その結果、合わせガラスは、上記事態の発生を抑制できる。すなわち、樹脂層が加熱されることで発生するガスなどが、空間を通じて、火災の発生する加熱側とは反対側の非加熱側に適度に移動しにくくなるとともに、溶融した樹脂が複数のガラス板の間で、膨張や発泡することを抑制できる。
【0009】
上記合わせガラスは、前記ガラス積層体の前記側縁部の端面を被覆する被覆部を備えることが好ましい。
遮熱部に溶融した樹脂層が多く吸収されると、遮熱部の遮熱性能が低下する。上記構成によれば、火災時に、樹脂層が溶融したとしても、溶融した樹脂がガラス積層体の側縁部から流れ出ることが抑制される。このため、側枠の収容溝内において、膨張した遮熱部に溶融した樹脂が吸収されにくくなる。その結果、合わせガラスは、遮熱部の遮熱性能が低下することを抑制できる。
【0010】
上記合わせガラスにおいて、前記下枠は、前記収容溝と前記下枠の外部とを接続する接続孔を有することが好ましい。
上記構成によれば、合わせガラスは、火災時に溶融した樹脂を、下枠の接続孔を介して下枠の外部に排出できる。このため、合わせガラスは、下枠の収容溝内に溶融した樹脂が溜まり、溜まった樹脂層が加熱されることで発生するガスなどが、空間を通じて、火災の発生する加熱側とは反対側の非加熱側に移動することを抑制できる。
【0011】
上記合わせガラスにおいて、前記接続孔は、前記下枠の長手方向において、中央部よりも端部寄りの位置に対をなすように配置されることが好ましい。
ガラス積層体の側縁部の端面を被覆部で被覆すると、火災時に溶融した樹脂がガラス積層体の側縁部に沿って下枠まで流下しやすくなる。この点、上記構成によれば、接続孔が下枠の長手方向における中央部よりも端部寄り、すなわち側縁部寄りの位置に配置されるため、合わせガラスは、ガラス積層体の側縁部に沿って流下する溶融した樹脂を効率的に外部に排出できる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の合わせガラスによれば、遮炎性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)はガラス積層体の正面図、(b),(c)はガラス積層体の端面図。
【
図3】(a)は合わせガラスの正面図、(b),(c)は合わせガラスの端面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、合わせガラスの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の合わせガラスは、特定防火設備に使用されることを想定したガラスである。
図1に示すように、合わせガラス10は、ガラス板21,22及び樹脂層23が積層されたガラス積層体20と、ガラス積層体20の端面を被覆する被覆部30(
図2参照)と、ガラス積層体20の周縁部を収容した状態でガラス積層体20を支持する支持枠40と、を備える。また、合わせガラス10は、ガラス積層体20と支持枠40との隙間を埋めるバックアップ材50及びシーリング材60を備える。
【0015】
本実施形態において、合わせガラス10は、矩形形状をなし、長手方向が鉛直方向となるように設置される。以降の説明では、合わせガラス10の設置状況に従ってガラス積層体20の部位を特定する。詳しくは、
図2に示すように、合わせガラス10を設置した状況下において、ガラス積層体20の周縁部のうち、鉛直上方に位置する部位を「上縁部20U」とし、鉛直下方に位置する部位を「下縁部20L」とし、上縁部20U及び下縁部20Lの端部同士を接続する部位を「側縁部20S」とする。
【0016】
図1及び
図2に示すように、ガラス積層体20は、第1のガラス板21と、第2のガラス板22と、第1のガラス板21及び第2のガラス板22の間に挟まれた樹脂層23と、を有する。
【0017】
第1のガラス板21及び第2のガラス板22は、特定防火設備に要求される防火性能を満たす防火ガラスである。第1のガラス板21及び第2のガラス板22は、例えば、耐熱性結晶化ガラス、ホウケイ酸ガラス及びソーダライムガラスなどで構成すればよい。なお、第1のガラス板21及び第2のガラス板22は、種類の異なるガラスとしてもよい。
【0018】
樹脂層23は、フィルム状をなし、第1のガラス板21及び第2のガラス板22を接着する接着層である。第1のガラス板21及び第2のガラス板22の間に樹脂層23を有することで、第1のガラス板21及び第2のガラス板22が割れた場合でも、ガラス片が飛散しにくくなる。
【0019】
樹脂層23の材料としては、例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂,UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂(PUR)及び熱硬化性ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、樹脂層23の材料は、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂(THV)及びポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)等の熱可塑性樹脂、又は、その他紫外線硬化樹脂でもよい。
【0020】
樹脂層23は、上述した材料の中でも、火災時に第1のガラス板21及び第2のガラス板22の間で発泡しにくく、火災時(溶融時)に第1のガラス板21及び第2のガラス板22の間を流下しやすい粘度となる材料であることが好ましい。また、樹脂層23の酸素指数は、空気中の酸素濃度(21%)よりも大きいことが好ましい。このため、例示した樹脂層23の材料の中では、コスト面も含め、アイオノマー樹脂を樹脂層23の材料とすることがより好ましい。
【0021】
被覆部30は、耐火性のテープである。被覆部30としては、例えば、アルミニウムの膜とガラスクロスとを基材とするアルミガラスクロステープが挙げられる。
図2(a),(b)に示すように、被覆部30は、ガラス積層体20の側縁部20Sの端面に側縁部20Sの長手方向に亘って貼付される。被覆部30は、少なくとも、樹脂層23と、第1のガラス板21と樹脂層23との境界線と、第2のガラス板22と樹脂層23との境界線と、を隙間なく塞ぐように貼付される。一方、
図2(a),(c)に示すように、被覆部30は、ガラス積層体20の上縁部20U及び下縁部20Lの端面には貼付されない。
【0022】
図1及び
図3(a)に示すように、支持枠40は、ガラス積層体20の上縁部20Uを支持する上枠41と、ガラス積層体20の下縁部20Lを支持する下枠42と、ガラス積層体20の側縁部20Sを支持する側枠43と、下枠42に配置されるセッティングブロック44と、側枠43に配置される遮熱部45と、を有する。
【0023】
上枠41、下枠42及び側枠43は、棒状をなし、上枠41、下枠42及び側枠43は、長手方向に沿ってガラス積層体20の周縁部を収容する収容溝46を有する。このため、
図3(b),(c)に示すように、上枠41、下枠42及び側枠43の長手方向と直交する断面形状は略U字状をなしている。下枠42には、収容溝46の底面と下枠42の外部とを接続する一対の接続孔47を有する。一対の接続孔47は、下枠42の長手方向において、中央部よりも端部寄りの位置に配置される。
【0024】
そして、支持枠40は、上枠41、下枠42及び側枠43がねじなどの連結部材で連結されることにより枠状に構成される。このとき、収容溝46は、支持枠40の周方向に接続される。また、支持枠40は、火災時に軟化したり燃焼したりしないように、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄及び銅などの金属材料により構成されることが好ましい。
【0025】
セッティングブロック44は、下枠42に配置された接続孔47を塞がないように、収容溝46の内部に配置される。セッティングブロック44は、支持枠40にガラス積層体20を支持させる際に、ガラス積層体20を支持する。
【0026】
遮熱部45は、常温でシート状をなし、火災時の熱によって収容溝46内で膨張する熱膨張耐火材である。遮熱部45は、例えば、積水化学工業株式会社製のフィブロック(登録商標)を採用することができる。
図3(b)に示すように、遮熱部45は、側枠43の収容溝46の底面に側枠43の長手方向に亘って設けられる。遮熱部45は、下枠42の収容溝46の底面には設けないことが好ましい。
【0027】
図3(b),(c)に示すように、バックアップ材50は、ガラス積層体20を支持枠40に対して位置決めするための部材である。バックアップ材50は、合わせガラス10の厚さ方向において、ガラス積層体20と支持枠40の収容溝46との間に充填される。また、バックアップ材50は、耐熱性及び断熱性を考慮して、例えば、発泡ポリ塩化ビニル及びセラミックファイバーブランケットなどを含む充填剤とすればよい。
【0028】
シーリング材60は、ガラス積層体20と支持枠40との隙間を埋めるための部材である。シーリング材60は、ガラス積層体20と支持枠40の収容溝46との間にバックアップ材50に重ねて充填される。例えば、シーリング材60は、耐熱性を考慮して、シリコーン系シーリング材とすればよい。
【0029】
そして、
図3(a)~(c)に示すように、支持枠40の収容溝46にガラス積層体20を収容することで、合わせガラス10が構成される。つまり、ガラス積層体20の上縁部20Uは、支持枠40の上枠41の収容溝46に収容され、ガラス積層体20の下縁部20Lは、支持枠40の下枠42の収容溝46に収容され、ガラス積層体20の側縁部20Sは、側枠43の収容溝46に収容される。また、ガラス積層体20は、支持枠40の下枠42のセッティングブロック44に支持された状態で、上枠41、下枠42及び側枠43のバックアップ材50及びシーリング材60によって、支持枠40に対して位置決めされる。このとき、
図3(b)に示すように、ガラス積層体20の側縁部20Sの端面(被覆部30)と側枠43の収容溝46の底面に貼付された遮熱部45とは、向かい合うように配置される。
【0030】
図3(a)に示すように、ガラス積層体20の長手方向における長さは、上枠41の収容溝46の底面から下枠42の収容溝46の底面までの長さよりも短く、ガラス積層体20の短手方向における長さは、一方の側枠43の収容溝46の底面から他方の側枠43の収容溝46の底面までの長さよりも短い。このため、
図3(b)に示すように、ガラス積層体20の側縁部20Sの端面(被覆部30)と側枠43の収容溝46の底面(遮熱部45)との間には、側枠43の長手方向に亘って空間SPを有する。同様に、
図3(c)に示すように、ガラス積層体20の下縁部20Lの端面と下枠42の収容溝46の底面との間には、下枠42の長手方向に亘って空間SPを有する。また、図示を省略するものの、ガラス積層体20の上縁部20Uの端面と上枠41の収容溝46の底面との間には、下枠42の長手方向に亘って空間SPを有する。
【0031】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)合わせガラス10の片側で火災が発生する場合には、合わせガラス10が加熱されることにより、遮熱部45が膨張する。すると、膨張した遮熱部45が、ガラス積層体20と支持枠40の収容溝46との間の空間SPを埋める。このため、樹脂層23が加熱されることでガスが発生したとしても、当該ガスが火災の発生する加熱側とは反対側の非加熱側に移動しにくい。つまり、合わせガラス10は、非加熱側に移動したガスの発火に伴い、非加熱側に火炎が発生することを抑制できる。
【0032】
(2)火災時に合わせガラス10が加熱されると、樹脂層23が溶融する。この場合、ガラス積層体20の収容溝46の全周に亘って遮熱部45を設けると、溶融した樹脂が非加熱側に移動しにくくなるものの、溶融した樹脂が複数のガラス板21,22の間に留まった状態で、加熱され続けることとなる。そして、溶融した樹脂が複数のガラス板21,22の間で、膨張したり発泡したりすることで、複数のガラス板21,22に負荷が作用するおそれがある。この点、本実施形態の合わせガラス10は、遮熱部45が下枠42の収容溝46内に配置されないため、溶融した樹脂を複数のガラス板21,22の間から鉛直下方に排出できる。その結果、合わせガラス10は、上記事態の発生を抑制できる。すなわち、樹脂層23が加熱されることで発生するガスなどが、空間SPを通じて、非加熱側に適度に移動しにくくなるとともに、溶融した樹脂が複数のガラス板21,22の間で、膨張したり発泡したりすることを抑制できる。
【0033】
(3)合わせガラス10は、ガラス積層体20の側縁部20Sの端面が被覆部30で被覆される。このため、火災時に、樹脂層23が溶融したとしても、溶融した樹脂がガラス積層体20の側縁部20Sから流れ出ることが抑制される。このため、膨張した遮熱部45に溶融した樹脂が吸収されにくくなる。その結果、合わせガラス10は、遮熱部45の遮熱性能が低下することを抑制できる。
【0034】
(4)合わせガラス10は、火災時に溶融した樹脂を、下枠42の接続孔47を介して下枠42の外部に排出できる。このため、合わせガラス10は、下枠42の収容溝46内に溶融した樹脂が溜まりにくくなり、非加熱側に火炎が発生することを抑制できる。
【0035】
(5)ガラス積層体20の側縁部20Sの端面を被覆部30で被覆すると、火災時に溶融した樹脂がガラス積層体20の側縁部20Sに沿って流下しやすくなる。この点、合わせガラス10は、接続孔47が下枠42の長手方向における中央部よりも端部寄りの位置に設けられるため、ガラス積層体20の側縁部20Sに沿って流下する溶融した樹脂を効率的に外部に排出できる。
【0036】
(6)樹脂層23として、フッ素樹脂(THV)よりも酸素指数が低いアイオノマー樹脂を用いても、合わせガラス10は上述した点で遮炎性能を確保できる。このため、フッ素樹脂(THV)よりも安価なアイオノマー樹脂を用いることで、合わせガラス10の製造コストが低減される。
【0037】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ガラス積層体20は、例えば、3枚のガラス板と2層の樹脂層とで構成してもよいし、さらに多くのガラス板と樹脂層とで構成してもよい。
【0038】
・第1のガラス板21及び第2のガラス板22の一方のガラス板のみを防火ガラスとしてもよい。
・遮熱部45は、側枠43の収容溝46の底面に設けなくてもよい。遮熱部45は、
図3(b)に示す空間SPを向く面の何れかに設けてもよい。
【0039】
・下枠42の接続孔47の数及び形成位置は任意に変更してもよい。例えば、下枠42には、3以上の接続孔47を設けてもよいし、1つも接続孔47を設けなくてもよい。
・上枠41の収容溝46の底面に遮熱部45を設けてもよい。この場合、ガラス積層体20の上縁部20Uの端面に被覆部30を貼付することが好ましい。
【0040】
・合わせガラス10の各種構成部材の材料は、上記実施形態における材料から変更してもよい。
・合わせガラス10の正面視における形状は矩形形状でなくてもよい。合わせガラス10の形状は、合わせガラス10を設置する開口部の形状に応じて、任意に変更してもよい。
【0041】
・合わせガラス10と他のガラスとを組み合わせて複層ガラスとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…合わせガラス、20…ガラス積層体、20L…下縁部、20S…側縁部、20U…上縁部、21…第1のガラス板、22…第2のガラス板、23…樹脂層、30…被覆部、40…支持枠、41…上枠、42…下枠、43…側枠、44…セッティングブロック、45…遮熱部、46…収容溝、47…接続孔、50…バックアップ材、60…シーリング材、SP…空間。