IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図1
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図2
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図3
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図4
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図5
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図6
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図7
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図8
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図9
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図10
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図11
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図12
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図13
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図14
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図15
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図16
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図17
  • 特許-表示装置及びそれを備える車両 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】表示装置及びそれを備える車両
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20221129BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221129BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221129BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018197631
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020064030
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 公博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 航介
(72)【発明者】
【氏名】中村 昂章
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179350(WO,A1)
【文献】特開2003-092838(JP,A)
【文献】特開2007-074891(JP,A)
【文献】特開2011-257213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の劣化度を表示するように構成された表示部を備え、
前記劣化度は、前記二次電池の初期の満充電容量に対する現時点での満充電容量の比率で示される容量維持率であり、
前記表示部は、
前記容量維持率が第1レベルよりも高い場合に、前記容量維持率を表示せずに前記容量維持率とは異なる第1の情報を表示するように構成され、かつ、
前記容量維持率が前記第1レベルより低い第2レベルよりも低い場合に、前記容量維持率を表示せずに前記容量維持率とは異なる第2の情報を表示するように構成される、表示装置。
【請求項2】
前記第1の情報は、前記二次電池は劣化していないことを示す通知である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の情報は、前記二次電池の交換を促す通知である、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記容量維持率を表示する場合に、前記容量維持率の表示を段階的に変化させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
二次電池と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表示装置とを備え、
前記表示装置は、前記二次電池の前記容量維持率を表示する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及びそれを備える車両に関し、特に、二次電池の劣化度を表示する表示装置及びそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5672778号公報には、バッテリ(二次電池)の満充電状態における電力容量としての満充電容量の値を表示する表示装置が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5672778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池は、時間の経過とともに満充電容量の低下や内部抵抗の上昇等が生じ、経時劣化することが知られている。二次電池の劣化度がユーザに対して表示される場合、表示の仕方によっては、二次電池の劣化に対するユーザの不安を掻き立てるおそれがある。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、二次電池の劣化度を、できるだけユーザに不安感を与えることなく表示する表示装置及びそれを備える車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、二次電池の劣化度を表示するように構成された表示部を備える。表示部は、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、劣化度を表示しないように構成され、又は、劣化度が第1レベルより高い第2レベルよりも高い場合に、劣化度を表示しないように構成される。
【0007】
二次電池の劣化については、一般的に、製造直後の初期段階において劣化の進行が速く、その後、劣化進行ペースが安定する劣化特性を有する場合が多い。たとえば、二次電池が車両の動力源(駆動用電源)として用いられる場合、二次電池が製造されてから車両に搭載されてユーザにより車両(二次電池)の使用が開始されるまでは、一般的にタイムラグ(たとえば数週間や数ヶ月)がある。この期間は、上述のように二次電池の劣化の進行が速いので、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で二次電池の劣化度がユーザに対して表示されると、この時点で既に二次電池の劣化が進行していることにユーザが不安感を覚える可能性がある。上記の表示装置によれば、劣化度が第1レベルよりも低い場合に劣化度が表示されないので、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で既に二次電池の劣化が進行しているとの不安感をユーザに与えるのを抑制することができる。
【0008】
或いは、劣化度を表示するだけでは劣化が進んだ場合に二次電池の交換タイミングを判断できないユーザが想定される。上記の表示装置によれば、劣化度が第2レベルよりも高い場合に劣化度が表示されなくなるので、劣化度が表示されなくなったことをもって、二次電池の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【0009】
表示部は、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、劣化度を表示しないように構成され、かつ、劣化度が第2レベルよりも高い場合に、劣化度を表示しないように構成されてもよい。
【0010】
これにより、たとえば、二次電池が車両の動力源(駆動用電源)として用いられる場合、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で既に二次電池の劣化が進行しているとの違和感をユーザが覚えるのを抑制することができるとともに、劣化が進んだ場合に、二次電池の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【0011】
表示部は、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、二次電池は劣化していないことを示す通知を表示するように構成されてもよい。
【0012】
劣化度が表示されないことに不安感を覚えるユーザも想定されるところ、この表示装置によれば、二次電池は劣化していないことが明示されるので、上記の不安感をユーザが覚えるのを抑制することができる。
【0013】
表示部は、劣化度が第2レベルよりも高い場合に、二次電池の交換を促す通知を表示するように構成されてもよい。
【0014】
これにより、明示的に二次電池の交換をユーザに促すことができる。
表示部は、劣化度を表示する場合に、劣化度の表示を段階的に変化させてもよい。
【0015】
演算部により算出された劣化度が逐次表示されると、劣化度の逐次上昇に不安を感じるユーザも想定されるところ、この表示装置によれば、劣化度の表示を段階的に変化させるので、劣化度の表示を逐次変化させる場合に比べて、ユーザが感じ得る上記不安を抑制することができる。
【0016】
また、本開示の表示装置は、二次電池の劣化度を表示するように構成された表示部を備える。表示部は、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、劣化度が第1レベル以上の場合に対して劣化度の表示態様を変更するように構成され、又は、劣化度が第1レベルより高い第2レベルよりも高い場合に、劣化度が第2レベル以下の場合に対して劣化度の表示態様を変更するように構成される。
【0017】
この表示装置によれば、劣化度が第1レベルよりも低い場合に劣化度の表示態様が変更されるので、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で既に二次電池の劣化が進行しているとの不安感をユーザに与えるのを抑制することができる。或いは、この表示装置によれば、劣化度が第2レベルよりも高い場合に劣化度の表示態様が変更されるので、劣化度の表示態様が変更されたことをもって、二次電池の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【0018】
また、本開示の表示装置は、二次電池の劣化度を表示するように構成された表示部を備える。表示部は、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、二次電池は劣化していないことを示す通知をさらに表示するように構成され、又は、劣化度が第1レベルより高い第2レベルよりも高い場合に、二次電池の交換を促す通知をさらに表示するように構成される。
【0019】
この表示装置によれば、劣化度が第1レベルよりも低い場合に、二次電池は劣化していないことを示す通知がさらに表示されるので、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で既に二次電池の劣化が進行しているとの不安感をユーザに与えるのを抑制することができる。或いは、この表示装置によれば、劣化度が第2レベルよりも高い場合に、二次電池の交換を促す通知がさらに表示されるので、二次電池の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【0020】
また、本開示の車両は、二次電池と、二次電池の劣化度を表示する上述の表示装置とを備える。
【0021】
この車両によれば、ユーザが車両の使用を開始する時点(納車時)で既に二次電池の劣化が進行しているとの不安感をユーザに与えるのを抑制することができる。また、劣化度が第2レベルよりも高い場合に、車両に搭載された二次電池の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の表示装置及び車両によれば、二次電池の劣化度を、できるだけユーザに不安感を与えることなく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施の形態1に従う表示装置が適用される車両の構成例を示すブロック図である。
図2】メインバッテリの経時的な劣化を示す劣化カーブの一例を示した図である。
図3】メインバッテリのSOC及び電池温度の散布図である。
図4図3に示す散布図から得られたあるSOC範囲での電池温度のヒストグラムである。
図5】メインバッテリの使用領域の定義例を説明する図である。
図6】電池使用履歴データの蓄積処理を説明するためのフローチャートである。
図7】メインバッテリの劣化度を表示部に表示する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】容量維持率が上限値よりも高い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図9】容量維持率が上限値以下であり、かつ、下限値以上である場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図10】容量維持率が下限値よりも低い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図11】実施の形態2における劣化度の表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態2において、容量維持率が上限値よりも高い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図13】実施の形態2において、容量維持率が下限値よりも低い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図14】実施の形態3における劣化度の表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図15】実施の形態3において、容量維持率が上限値よりも高い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図16】実施の形態3において、容量維持率が下限値よりも低い場合における表示部の表示状態の一例を示す図である。
図17】メインバッテリの劣化度が車両の外部で表示される構成例を示すブロック図である。
図18】メインバッテリの劣化度が車両の外部で算出される構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態1に従う表示装置が適用される車両の構成例を示すブロック図である。図1を参照して、車両100は、メインバッテリ10と、昇圧コンバータ22と、インバータ23と、モータジェネレータ25と、伝達ギヤ26と、駆動輪27と、コントローラ30とを備える。
【0026】
メインバッテリ10は、車両100の駆動電源(すなわち動力源)として車両100に搭載される。すなわち、車両100は、メインバッテリ10を車両駆動電源とする電気自動車或いはハイブリッド自動車である。ハイブリッド自動車は、車両100の動力源として、メインバッテリ10の他に図示しないエンジンや燃料電池等を備える車両である。電気自動車は、車両100の動力源としてメインバッテリ10のみを備える車両である。
【0027】
メインバッテリ10は、複数の電池モジュール11を含む組電池(バッテリパック)20によって構成される。各電池モジュール11は、リチウムイオン二次電池に代表される、再充電可能な二次電池セルを含んで構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池の他、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。
【0028】
バッテリパック20には、電流センサ15、温度センサ16、電圧センサ17、及び電池監視ユニット18が設けられる。電池監視ユニット18は、たとえば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって構成される。以下では、電池監視ユニット18を監視ECU18とも称する。
【0029】
電流センサ15は、メインバッテリ10の入出力電流(以下、電池電流Ibとも称する。)を検出する。温度センサ16は、メインバッテリ10の温度(以下、電池温度Tbとも称する。)を検出する。なお、温度センサ16は、複数個配置してもよい。この場合には、複数の温度センサ16による検出温度の加重平均値、最高値、又は最低値を電池温度Tbとして用いたり、特定の温度センサ16による検出温度を電池温度Tbとして用いたりすることができる。電圧センサ17は、メインバッテリ10の出力電圧(以下、電池電圧Vbとも称する。)を検出する。
【0030】
監視ECU18は、電流センサ15、温度センサ16、及び電圧センサ17の各検出値を受けて、電池電圧Vb、電池電流Ib、及び電池温度Tbをコントローラ30へ出力する。或いは、監視ECU18は、内蔵されたメモリ(図示せず)に、電池電圧Vb、電池電流Ib、及び電池温度Tbのデータを記憶することも可能である。
【0031】
さらに、監視ECU18は、電池電圧Vb、電池電流Ib、及び電池温度Tbの少なくとも一部を用いて、メインバッテリ10の充電状態(SOC:State Of Charge)を算出する機能を有する。SOCは、メインバッテリ10の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で示したものである。SOCの算出機能は、コントローラ30(後述)に持たせることも可能である。
【0032】
メインバッテリ10は、システムメインリレー21a,21bを経由して昇圧コンバータ22に接続される。昇圧コンバータ22は、メインバッテリ10の出力電圧を昇圧する。昇圧コンバータ22は、インバータ23と接続されており、インバータ23は、昇圧コンバータ22からの直流電力を交流電力に変換する。
【0033】
モータジェネレータ(三相交流モータ)25は、インバータ23からの交流電力を受けることにより、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータジェネレータ25によって生成された運動エネルギは、駆動輪27に伝達される。一方で、車両100を減速させたり停止させたりするとき、モータジェネレータ25は、車両100の運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータジェネレータ25で生成された交流電力は、インバータ23によって直流電力に変換され、昇圧コンバータ22を通じてメインバッテリ10に供給される。これにより、回生電力をメインバッテリ10に蓄えることができる。このように、モータジェネレータ25は、メインバッテリ10との間での電力の授受(すなわちメインバッテリ10の充放電)を伴って、車両100の駆動力又は制動力を発生するように構成される。
【0034】
なお、昇圧コンバータ22は、省略することができる。また、モータジェネレータ25として直流モータを用いるときには、インバータ23を省略することができる。
【0035】
なお、動力源としてエンジン(図示せず)がさらに搭載されるハイブリッド自動車として車両100が構成される場合には、モータジェネレータ25の出力に加えて、エンジンの出力を車両走行のための駆動力に用いることができる。或いは、エンジン出力によって発電するモータジェネレータ(図示せず)をさらに搭載して、エンジン出力によってメインバッテリ10の充電電力を発生させることも可能である。
【0036】
コントローラ30は、たとえば電子制御ユニット(ECU)によって構成され、制御部31と、記憶部32とを含んで構成される。記憶部32には、制御部31を動作させるためのプログラムや各種データが記憶される。なお、記憶部32については、制御部31によるデータの読出及び書込を可能として、コントローラ30の外部に設けることも可能である。
【0037】
コントローラ30は、システムメインリレー21a,21b、昇圧コンバータ22、及びインバータ23の動作を制御する。コントローラ30は、スタートスイッチ(図示せず)がオフからオンに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオフからオンに切り替えたり、昇圧コンバータ22及びインバータ23を動作させたりする。また、コントローラ30は、スタートスイッチがオンからオフに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオンからオフに切り替えたり、昇圧コンバータ22やインバータ23の動作を停止させたりする。
【0038】
車両100は、表示部35をさらに備える。表示部35は、コントローラ30からの制御指令に応じて、車両100のユーザに対して所定の情報を表示するように構成される。具体的には、表示部35は、少なくともメインバッテリ10のSOC及び劣化度(後述)をユーザに対して表示する。
【0039】
SOCは、現在の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で示すものであるから、メインバッテリ10の劣化が進行してメインバッテリ10の満充電容量そのものが低下すると、同じSOC値(たとえばSOC=100%)であっても、実際の蓄電量(Wh)(Ahでもよい。以下同じ。)は低下していることとなる。そのため、この実施の形態1では、メインバッテリ10の状態を示すデータとして、メインバッテリ10のSOCとともにメインバッテリ10の劣化度が表示部35によりユーザに提示される。表示部35は、たとえば、液晶パネルを用いたタッチパネルディスプレイによって構成することができる。
【0040】
車両100は、外部電源40によってメインバッテリ10を充電するための外部充電機能をさらに具備するように構成されてもよい。この場合、車両100は、充電器28及び充電リレー29a,29bをさらに備える。
【0041】
外部電源40は、車両の外部に設けられた電源であり、外部電源40としては、たとえば商用交流電源を適用することができる。充電器28は、外部電源40からの電力をメインバッテリ10の充電電力に変換する。充電器28は、充電リレー29a,29bを経由してメインバッテリ10に接続されている。充電リレー29a,29bがオンであるとき、外部電源40からの電力によってメインバッテリ10を充電することができる。
【0042】
外部電源40及び充電器28は、たとえば、充電ケーブル45によって接続可能である。すなわち、充電ケーブル45の装着時に、外部電源40及び充電器28が電気的に接続されることにより、メインバッテリ10を外部電源40を用いて充電することができる。或いは、外部電源40と充電器28との間で、非接触に電力が伝送されるように車両100が構成されてもよい。たとえば、外部電源側の送電コイル(図示せず)及び車両側の受電コイル(図示せず)を経由して、電力を伝送することによって、外部電源40によりメインバッテリ10を充電することができる。
【0043】
このように、外部電源40から交流電力が供給される場合には、充電器28は、外部電源40からの供給電力(交流電力)を、メインバッテリ10の充電電力(直流電力)に変換する機能を有するように構成される。或いは、外部電源40がメインバッテリ10の充電電力を直接供給する場合には、充電器28は、外部電源40からの直流電力をメインバッテリ10へ伝達するだけでよい。車両100の外部充電の態様については、特に限定されるものではない。
【0044】
車両100は、メインバッテリ10の充放電を伴って走行する。さらに、車両100が外部充電機能を有する場合には、車両100の停車中にメインバッテリ10が充電される。このようなメインバッテリ10の充放電に伴って、メインバッテリ10は経時的に劣化する。
【0045】
図2は、メインバッテリ10の経時的な劣化を示す劣化カーブの一例を示した図である。図2において、横軸は、メインバッテリ10或いは車両100の製造時からの経過時間(年)を示し、縦軸は、メインバッテリ10の容量維持率(%)を示す。
【0046】
メインバッテリ10の容量維持率は、たとえばメインバッテリ10の新品時(製造時)の満充電容量(Wh)(Ahでもよい。以下同じ。)に対する現時点での満充電容量の百分率で定義され、メインバッテリ10の劣化度を定量的に評価し得るパラメータの一つである。上記の定義により、容量維持率が高いほどメインバッテリ10の劣化度は低く、容量維持率が低いほどメインバッテリ10の劣化度は高くなることが理解される。
【0047】
図2を参照して、上述のように、二次電池の劣化については、一般的に、製造直後の初期段階において劣化の進行が速く、その後、劣化進行ペースが安定する劣化特性を有する場合が多い。メインバッテリ10も、そのような劣化進行ペースを有するものであり、製造時点(時刻0)直後の初期段階において、劣化カーブの傾きが大きくなっている。
【0048】
時刻t0は、車両100の納車タイミングであり、すなわち、ユーザによる車両100の使用開始タイミングである。メインバッテリ10が製造されてから車両100に搭載されて時刻t0においてユーザにより車両100(メインバッテリ10)の使用が開始されるまでは、一般的にタイムラグ(たとえば数週間や数ヶ月)がある。この期間は、メインバッテリ10の劣化の進行が速いので、ユーザが車両100の使用を開始する時点(時刻t0)でメインバッテリ10の劣化度(容量維持率C0(C0<100%))がユーザに対して表示されると、この時点で既にメインバッテリ10の劣化が進行していることにユーザが違和感を覚える可能性がある。
【0049】
そこで、この実施の形態1に従う車両100では、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、すなわちメインバッテリ10の容量維持率が上限値C1よりも高い場合には、メインバッテリ10の劣化度(容量維持率)が表示部35に表示されない。この場合、表示部35には、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージが表示される。劣化度の下限値すなわち容量維持率の上限値C1には、たとえばC1=80%を設定することができる。
【0050】
そして、劣化度が下限値以上になると、すなわち容量維持率が上限値C1以下になると、劣化度(容量維持率)が表示部35に表示される。これにより、車両100が納車された時点で既にメインバッテリ10の劣化が進行しているためにユーザが違和感を覚えるのを抑えることができる。
【0051】
また、メインバッテリ10の劣化が進行している場合に、ユーザに対して劣化度が具体的に表示されると、ユーザはメインバッテリ10の劣化状態を確認できる一方で、たとえば、1トリップの走行距離が短いユーザ等には、メインバッテリ10をまだ交換しなくてもよいと思わせてしまう可能性がある。メインバッテリ10の劣化が進行している場合、SOCが十分な値を示していても実際の蓄電量(Wh)が大きく低下している可能性があり、蓄電量が不意に枯渇する可能性がある。
【0052】
そこで、この実施の形態1に従う車両100では、メインバッテリ10の劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合、すなわちメインバッテリ10の容量維持率が下限値C2よりも低い場合にも、メインバッテリ10の劣化度(容量維持率)が表示部35に表示されない。この場合、表示部35には、メインバッテリ10の交換を促すメッセージが表示される。これにより、メインバッテリ10の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させて、メインバッテリ10の交換をユーザに促すことができる。なお、劣化度の上限値すなわち容量維持率の下限値C2には、たとえばC2=30%を設定することができる。
【0053】
以下、図3図5を用いて、メインバッテリ10の劣化度推定方法の一例について説明し、その後、図6図7を用いて、表示部35の表示制御について説明する。
【0054】
図3は、メインバッテリ10のSOC及び電池温度Tbの散布図である。図3において、横軸は、SOC(%)を示し、縦軸は、電池温度Tb(℃)を示す。
【0055】
図3を参照して、所定のタイミング(たとえば1時間毎)で監視ECU18により取得されるメインバッテリ10の電池使用履歴データについて、電池温度Tb及びSOC(%)の組み合わせが散布図の各プロット点として得られる。この散布図は、メインバッテリ10がこれまでにどのような温度及びSOCで使用されてきたかの傾向を示している。車両100のこれまでの使用条件によって、図3に示された散布図は異なったものとなる。
【0056】
図4は、図3に示した散布図から得られたあるSOC範囲での電池温度Tbのヒストグラムである。図4には、一例として、図3においてSOCが70~80(%)の範囲の電池使用履歴データを用いて、電池温度Tbの10(℃)刻みの範囲毎の頻度分布が示される。このように、SOC(%)の範囲毎に図4と同様の頻度分布を求めることができる。
【0057】
さらに、各SOC範囲の出現頻度を求めることができるので、各SOC範囲において、当該出現頻度と、図4と同様の電池温度範囲毎の頻度分布との乗算に従って、SOC範囲及び電池温度範囲の組み合わせによって定義される使用領域毎の発生確率を求めることができる。
【0058】
図5は、メインバッテリ10の使用領域の定義例を説明する図である。図5を参照して、5(%)刻みのm個(m:2以上の自然数)のSOC範囲と、5(℃)刻みのn個(n:2以上の自然数)電池温度範囲との組み合わせによって、n×m個の使用領域R11~Rmnを定義することができる。
【0059】
上述のように、m個のSOC範囲のそれぞれの出現確率を求めるとともに、各SOC範囲において、5(℃)刻みの電池温度範囲に対する頻度分布を求めることができる。したがって、各SOC範囲の出現確率及び当該SOC範囲における各電池温度範囲の出現頻度の積に従って、使用領域R11~Rmnのそれぞれに対応する発生頻度P11~Pmnを算出することができる。発生頻度P11~Pmnの総和は1.0となる。
【0060】
二次電池は、一般的に、高温かつ高SOC状態が継続すると、時間経過に対する劣化の進行速度が上昇することが知られている。このような二次電池の特性を反映して、使用領域R11~Rmnのそれぞれにおいて、メインバッテリ10が当該領域で単位時間(たとえば1時間)使用されたときの単位劣化進行度を予め定めることができる。ここでは、単位劣化進行度は、単位時間毎の容量維持率の低下量(%/h)で示される。このようにして、記憶部32には、使用領域R11~Rmnのそれぞれに対応して、単位劣化進行度C11~Cnmが予め格納されている。
【0061】
さらに、メインバッテリ10の使用開始からの累計時間Tt(h)を用いると、使用領域R11~Rmnのそれぞれでの使用時間がTt・P11~Tt・Pmnで示される。そして、使用領域R11~Rmnのそれぞれでの、単位劣化進行度C11~Cnmとの使用時間との積を合計すると、現時点でのメインバッテリ10の劣化度パラメータRを、下記(1)式によって算出できる。
【0062】
R=1.0-Tt・(P11・C11+…+Pmn・Cmn) …(1)
劣化度パラメータRは、現時点における容量維持率の推定値に相当する。メインバッテリ10の新品時にはR=1.0(すなわち、容量維持率100(%))である。式(1)による劣化度パラメータRに対して、「1.0-R」が、初期状態からの満充電容量の低下率(すなわち「劣化度」)に相当することが理解される。以下では、劣化度パラメータRを用いてメインバッテリ10の劣化度を推定するが、劣化度パラメータRが小さい値であるほど、メインバッテリ10の劣化度は高いことになる。
【0063】
さらに、電池負荷(Ib2)の履歴データを用いて、充放電サイクルによる劣化度推定をさらに組み合わせるように、上記(1)式を変形することも可能である。コントローラ30は、このような劣化度パラメータRの算出によって、メインバッテリ10について現時点での劣化度を推定することができる。なお、図3図5では劣化度推定処理の一例を説明したに過ぎず、過去の電池使用履歴データに基づいて、現在の劣化度を定量的に推定するための劣化度パラメータを算出可能であれば、任意の手法を用いて劣化度を推定することができる。
【0064】
図6は、電池使用履歴データの蓄積処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに従う処理は、コントローラ30によって実行することができる。
【0065】
図6を参照して、コントローラ30は、前回の電池使用履歴データの送信から一定時間(たとえば1時間)が経過したかどうかを判定する(ステップS10)。たとえば、コントローラ30に内蔵された図示しないタイマによって、電池使用履歴データの前回収集時からの経過時間を測定することができる。
【0066】
一定時間が経過するまでの間は(ステップS10においてNO)、コントローラ30は、当該タイマによる計時を継続する(ステップS30)。なお、コントローラ30は、監視ECU18を経由して、メインバッテリ10の電池電流Ib、電池電圧Vb及び電池温度Tb、並びにSOCを任意のタイミングで取得することができる。
【0067】
ステップS10において一定時間が経過したと判定されると(ステップS10においてYES)、コントローラ30は、メインバッテリ10の電池使用履歴データを記憶部32に蓄積する(ステップS20)。たとえば、電池使用履歴データとして、電池温度Tb、SOCの現在値、及び電池負荷を示す電池電流Ibの二乗値(IB2)のデータが蓄積される。さらに、ステップS20では、電池使用履歴データを蓄積することに応じて、タイマによるカウント値がクリアされる。
【0068】
なお、電池使用履歴データは、一定時間経過毎の各タイミングにおける瞬時値データとすることができる。或いは、電池温度Tb、SOC、及び電池負荷等が、当該一定時間内で統計処理されたデータ(たとえば、平均値)を、電池使用履歴データとして記憶部32に格納してもよい。
【0069】
なお、図6に示される処理は、車両100の走行時(スタートスイッチのオン時)及び非走行時(スタートスイッチのオフ時)を通じて実行される。すなわち、車両100の駐車による放置時、及び車両100の外部充電時においても図6の処理が実行されており、メインバッテリ10の使用時間には、車両100の走行時間及び非走行時間の両方が含まれる。
【0070】
図7は、メインバッテリ10の劣化度を表示部35に表示する処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに従う処理も、コントローラ30によって実行することができる。
【0071】
図7を参照して、コントローラ30は、所定の劣化度更新タイミングが到来したかどうかを判定する(ステップS110)。たとえば、劣化度更新タイミングは、一定周期(たとえば所定月数毎)で到来するように設定することができる。たとえば、図6に示される処理が所定回数実行される毎に劣化度更新タイミングの到来を検知するように、ステップS110による判定を実行することができる。
【0072】
ステップS110において劣化度更新のタイミングが到来すると(ステップS110においてYES)、コントローラ30は、上記の式(1)を用いて、記憶部32に記憶された電池使用履歴データからメインバッテリ10の現在の劣化度(容量維持率)を算出する(ステップS120)。
【0073】
次いで、コントローラ30は、算出されたメインバッテリ10の容量維持率が上限値C1(図2)以下であるか否か(すなわち、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)以上であるか否か)を判定する(ステップS130)。容量維持率の上限値C1には、上述のように、たとえばC1=80%が設定される。
【0074】
容量維持率が上限値C1よりも高い場合(すなわち、劣化度が下限値よりも低い場合)(ステップS130においてNO)、コントローラ30は、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージを表示するように表示部35を制御する(ステップS140)。
【0075】
図8は、容量維持率が上限値C1よりも高い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。すなわち、この図8では、メインバッテリ10の劣化度が下限値よりも低い場合における表示部35の表示状態の一例が示されている。図2では、期間L1(時刻0~t1)における表示状態の一例が示されている。
【0076】
図8を参照して、表示部35の領域36には、メインバッテリ10の現在のSOCが示される。SOCの上限値(たとえば100%)から下限値(たとえば0%)までのSOC値が所定数のセグメントに分割されて表示される。この例では、10個のセグメントを用いてSOC値が表示される。なお、メインバッテリ10の過充電及び過放電は、メインバッテリ10の劣化を促進することから、領域36に表示されるSOCの上限は100%よりも低い値としてもよく(たとえば90%)、領域36に表示されるSOCの下限は0%よりも高い値としてもよい(たとえば10%)。
【0077】
表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が示され得るところ(点線)、容量維持率が上限値C1よりも高い場合(劣化度が下限値よりも低い場合)には、容量維持率(劣化度)は表示されずに、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージが表示される。一例として、領域37には「良好」の文字が表示され、メインバッテリ10の状態が良好である(劣化していない)ことが表示される。
【0078】
再び図7を参照して、ステップS130において、メインバッテリ10の容量維持率が上限値C1以下(すなわち、劣化度が下限値以上)であると判定されると(ステップS130においてYES)、コントローラ30は、容量維持率が下限値C2(図2)以上であるか否か(すなわち、劣化度が上限値(第2レベル)以下であるか否か)を判定する(ステップS150)。容量維持率の下限値C2には、上述のように、たとえばC2=30%が設定される。
【0079】
容量維持率が下限値C2以上である場合(すなわち、劣化度が上限値以下である場合)(ステップS150においてYES)、コントローラ30は、ステップS120において算出されたメインバッテリ10の劣化度(容量維持率)を表示するように表示部35を制御する(ステップS160)。
【0080】
図9は、容量維持率が上限値C1以下であり、かつ、下限値C2以上である場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。すなわち、この図9では、メインバッテリ10の劣化度が下限値以上であり、かつ、上限値以下である場合における表示部35の表示状態の一例が示されている。図2では、期間L2(時刻t1~t2)における表示状態の一例が示されている。
【0081】
図9を参照して、表示部35の領域36には、図8と同様に、メインバッテリ10の現在のSOCが示される。
【0082】
そして、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が示される。具体的には、容量維持率の上限から下限までの容量維持率の値が所定数のセグメントに分割されて表示される。この例では、10個のセグメントを用いて容量維持率の値が表示される。
【0083】
このように、この実施の形態1では、メインバッテリ10の劣化度が表示される場合に、劣化度の表示を段階的に変化させる。すなわち、表示部35は、コントローラ30により算出された劣化度(容量維持率)をそのまま表示するのではなく、所定数(この例では10個)のセグメントにより段階的に劣化度の表示を変化させる。コントローラ30により算出された劣化度が逐次表示されると、劣化度の逐次上昇に不安を感じるユーザも想定されるところ、劣化度の表示を段階的に変化させることにより、劣化度の表示を逐次変化させる場合に比べて、ユーザが感じ得る上記不安を抑制することができる。
【0084】
領域37に表示される容量維持率の上限及び下限は、たとえば、それぞれ100%及び0%としてもよい。この場合、容量維持率が上限値C1(たとえば80%)に達すると、図8に示した「良好」とのメッセージ表示から図9に示される容量維持率の値のセグメント表示に切り替わるとともに、セグメント表示の80%が点灯する表示状態となる。
【0085】
或いは、領域37に表示される容量維持率の上限及び下限は、たとえば、それぞれ図2に示した上限値C1(たとえば80%)及び下限値C2(たとえば30%)としてもよい。この場合、容量維持率が上限値C1(たとえば80%)に達すると、図8に示した「良好」とのメッセージ表示から容量維持率の値のセグメント表示に切り替わるとともに、セグメント表示の全てのセグメントが点灯する表示状態となる。
【0086】
再び図7を参照して、ステップS150において、メインバッテリ10の容量維持率が下限値C2よりも低い(すなわち、劣化度が上限値よりも高い)と判定されると(ステップS150においてNO)、コントローラ30は、メインバッテリ10の交換を促すメッセージを表示するように表示部35を制御する(ステップS170)。
【0087】
図10は、容量維持率が下限値C2よりも低い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。すなわち、この図10では、メインバッテリ10の劣化度が上限値よりも高い場合における表示部35の表示状態の一例が示されている。図2では、期間L3(時刻t2以降)における表示状態の一例が示されている。
【0088】
図10を参照して、表示部35の領域36には、図8図9と同様に、メインバッテリ10の現在のSOCが示される。
【0089】
そして、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が示され得るところ(点線)、容量維持率が下限値C2よりも低い場合(劣化度が上限値よりも高い場合)には、容量維持率(劣化度)は表示されずに、メインバッテリ10の交換を促すメッセージが表示される。一例として、領域37には「電池を交換して下さい」の文字が表示され、メインバッテリ10の交換が必要であることが表示される。
【0090】
なお、上記では、表示部35において、メインバッテリ10のSOCが所定数のセグメントに分割されて表示されるものとしたが、セグメント表示に代えて、又はセグメント表示に加えて、SOCの値そのものを表示してもよい。
【0091】
また、劣化度についても、表示部35において、メインバッテリ10の劣化度が下限値から上限値の範囲に含まれる場合に(容量維持率が上限値C1から下限値C2の範囲に含まれる場合に)、メインバッテリ10の劣化度(容量維持率)が所定数のセグメントに分割されて表示されるものとしたが、セグメント表示に代えて、又はセグメント表示に加えて、劣化度(容量維持率)の値そのものを表示してもよい。
【0092】
さらに、メインバッテリ10の容量維持率に基づいて、メインバッテリ10の満充電時における車両100の航続可能距離(km)を表示してもよい。なお、メインバッテリ10の初期状態における満充電容量と現在の劣化度(容量維持率)とから、現在の満充電容量(kWh)を算出することができるので、たとえば、車両100の平均電費(km/kWh)に現在の満充電容量(kWh)を乗算することによって、メインバッテリ10の満充電時における車両100の航続可能距離(km)を算出することができる。この満充電時における車両100の航続可能距離(km)は、メインバッテリ10の容量維持率に依存するものであり、この航続可能距離(km)も、メインバッテリ10の劣化度を定量的に評価し得るパラメータの一つといえる。
【0093】
以上のように、この実施の形態1によれば、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合に、劣化度が表示部35に表示されないので、ユーザが車両100の使用を開始する時点(納車時)で既にメインバッテリ10の劣化が進行しているとの違和感をユーザが覚えるのを抑制することができる。
【0094】
また、この実施の形態1によれば、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にも、劣化度が表示部35に表示されないので、劣化度が表示されなくなったことをもって、メインバッテリ10の交換タイミングが近づいていることをユーザに認識させることができる。
【0095】
また、この実施の形態1によれば、劣化度が下限値よりも低い場合に、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージが表示部35に明示されるので、劣化度が表示されないことに不安感をユーザが覚えるのを抑制することができる。
【0096】
また、この実施の形態1によれば、劣化度が上限値よりも高い場合に、メインバッテリ10の交換を促すメッセージが表示部35に表示されるので、明示的にメインバッテリ10の交換をユーザに促すことができる。
【0097】
また、この実施の形態1によれば、メインバッテリ10の劣化度が表示部35に表示される場合に、劣化度の表示を段階的に変化させるので、劣化度の表示を逐次変化させる場合に比べて、劣化度の上昇に対してユーザが感じ得る不安を抑制することができる。
【0098】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合に、表示部35に劣化度を表示させず、さらに、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にも、劣化度を表示させないものとしたが、劣化度を表示させないことに代えて、劣化度が下限値以上上限値以下の場合に対して劣化度の表示態様を変更してもよい。
【0099】
実施の形態2に従う表示装置が適用される車両の構成は、図1に示した車両100と同じである。
【0100】
図11は、実施の形態2における劣化度の表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図7に示したフローチャートに対応するものである。
【0101】
図11を参照して、ステップS210~S230,S250の処理は、それぞれ図7に示したステップS110~S130,S150の処理と同じである。そして、ステップS230において、ステップS220で算出されたメインバッテリ10の容量維持率が上限値C1よりも高い(すなわち、劣化度が下限値よりも低い)と判定されると(ステップS230においてNO)、コントローラ30は、メインバッテリ10の劣化度(容量維持率)を点滅させながら表示するように表示部35を制御する(ステップS240)。
【0102】
図12は、実施の形態2において、容量維持率が上限値C1よりも高い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。この図12は、実施の形態1で説明した図8に対応するものである。図12を参照して、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が点滅して表示される。
【0103】
再び図11を参照して、ステップS230において、メインバッテリ10の容量維持率が上限値C1以下(すなわち、劣化度が下限値以上)と判定されると(ステップS230においてYES)、コントローラ30は、容量維持率が下限値C2以上であるか否か(すなわち、劣化度が上限値(第2レベル)以下であるか否か)を判定する(ステップS250)。
【0104】
容量維持率が下限値C2以上である場合(すなわち、劣化度が上限値以下である場合)(ステップS250においてYES)、コントローラ30は、ステップS220において算出されたメインバッテリ10の劣化度(容量維持率)を表示(点灯)するように表示部35を制御する(ステップS260)。
【0105】
一方、ステップS250において、容量維持率が下限値C2よりも低い(すなわち、劣化度が上限値よりも高い)と判定されると(ステップS250においてNO)、コントローラ30は、ステップS240へ処理を進め、メインバッテリ10の劣化度(容量維持率)を点滅させながら表示するように表示部35を制御する。
【0106】
図13は、実施の形態2において、容量維持率が下限値C2よりも低い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。この図13は、実施の形態1で説明した図10に対応するものである。図13を参照して、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が点滅して表示される。
【0107】
なお、特に図示しないが、容量維持率が上限値C1よりも高い場合(ステップS230においてNOの場合)の劣化度の表示の点滅態様(図12)と、容量維持率が下限値C2よりも低い場合(ステップS250においてNOの場合)の劣化度の表示の点滅態様(図13)とは、互いに異なるようにしてもよい。
【0108】
なお、上記においては、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、又は劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合に、劣化度の表示を点滅させることで、劣化度が下限値以上上限値以下の場合に対して劣化度の表示態様を変えるものとしたが、点滅以外の表示態様に変更してもよい。たとえば、劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、又は劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合に、劣化度が下限値以上上限値以下の場合に対して、劣化度の表示色を変えてもよいし、表示の濃淡や大きさ等を変えてもよい。
【0109】
以上のように、この実施の形態2によれば、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、又は劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合に、劣化度が下限値以上上限値以下の場合に対して劣化度の表示態様が異なるので、この実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0110】
[実施の形態3]
上記の実施の形態1では、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、表示部35に劣化度を表示させずに、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージを表示させるものとした。また、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合は、表示部35に劣化度を表示させずに、メインバッテリ10の交換を促すメッセージを表示させるものとした。
【0111】
この実施の形態3では、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合、表示部35に劣化度を表示させつつ、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージも表示させる。また、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合も、表示部35に劣化度を表示させつつ、メインバッテリ10の交換を促すメッセージを表示させる。
【0112】
実施の形態3に従う表示装置が適用される車両の構成も、図1に示した車両100と同じである。
【0113】
図14は、実施の形態3における劣化度の表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートも、図7に示したフローチャートに対応するものである。
【0114】
図14を参照して、ステップS310~S330,S350,S360の処理は、それぞれ図7に示したステップS110~S130,S150,S160の処理と同じである。そして、ステップS330において、ステップS320で算出されたメインバッテリ10の容量維持率が上限値C1よりも高い(すなわち、劣化度が下限値よりも低い)と判定されると(ステップS330においてNO)、コントローラ30は、ステップS320において算出されたメインバッテリ10の劣化度(容量維持率)とともに、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージを表示するように、表示部35を制御する(ステップS340)。
【0115】
図15は、実施の形態3において、容量維持率が上限値C1よりも高い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。この図15は、実施の形態1で説明した図8に対応するものである。図15を参照して、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が表示されるとともに、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージ(たとえば「良好」)が表示される。
【0116】
再び図14を参照して、ステップS330において、メインバッテリ10の容量維持率が上限値C1以下(すなわち、劣化度が下限値以上)と判定されると(ステップS330においてYES)、コントローラ30は、容量維持率が下限値C2以上であるか否か(すなわち、劣化度が上限値(第2レベル)以下であるか否か)を判定する(ステップS350)。
【0117】
容量維持率が下限値C2以上である場合(すなわち、劣化度が上限値以下である場合)(ステップS350においてYES)、コントローラ30は、ステップS360へ処理を進め、ステップS220において算出されたメインバッテリ10の劣化度(容量維持率)が表示部35に表示される。
【0118】
一方、ステップS350において、容量維持率が下限値C2よりも低い(すなわち、劣化度が上限値よりも高い)と判定されると(ステップS350においてNO)、コントローラ30は、ステップS320において算出されたメインバッテリ10の劣化度(容量維持率)とともに、メインバッテリ10の交換を促すメッセージを表示するように、表示部35を制御する(ステップS370)。
【0119】
図16は、実施の形態3において、容量維持率が下限値C2よりも低い場合における表示部35の表示状態の一例を示す図である。この図16は、実施の形態1で説明した図10に対応するものである。図16を参照して、表示部35の領域37には、メインバッテリ10の現在の容量維持率(劣化度)が表示されるとともに、メインバッテリ10の交換を促すメッセージ(たとえば「電池を交換して下さい」)が表示される。
【0120】
以上のように、この実施の形態3によっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
[変形例]
上記の実施の形態1においては、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合に、劣化度が表示部35に表示されず、さらに、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にも、劣化度が表示部35に表示されないものとしたが、劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合にのみ、劣化度が表示部35に表示されないものとしてもよい。或いは、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にのみ、劣化度が表示部35に表示されないものとしてもよい。
【0121】
劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合にのみ(メインバッテリ10の容量維持率が上限値C1よりも高い場合にのみ)、劣化度が表示部35に表示されないものとする場合、劣化度の表示処理は、図7に示したフローチャートにおいて、ステップS150及びステップS170を含まないものとなる。
【0122】
一方、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にのみ(メインバッテリ10の容量維持率が下限値C2よりも低い場合にのみ)、劣化度が表示部35に表示されないものとする場合、劣化度の表示処理は、図7に示したフローチャートにおいて、ステップS130及びステップS140を含まないものとなる。
【0123】
同様に、上記の実施の形態2においては、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合に、劣化度の表示態様を変更し、さらに、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にも、劣化度の表示態様を変更するものとしたが、劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合にのみ、劣化度の表示態様を変更するようにしてもよい。或いは、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にのみ、劣化度の表示態様を変更するようにしてもよい。
【0124】
同様に、上記の実施の形態3においては、メインバッテリ10の劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合に、表示部35に劣化度を表示しつつメッセージを表示し、さらに、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にも、表示部35に劣化度を表示しつつメッセージを表示するものとしたが、劣化度が下限値(第1レベル)よりも低い場合にのみ、表示部35に劣化度を表示しつつメッセージを表示するようにしてもよい。或いは、劣化度が上限値(第2レベル)よりも高い場合にのみ、表示部35に劣化度を表示しつつメッセージを表示するようにしてもよい。
【0125】
また、上記の各実施の形態においては、メインバッテリ10の劣化度及びメッセージは、車両100の表示部35に表示されるものとしたが、これらの表示は、車両外部のシステムで行なってもよい。
【0126】
図17は、メインバッテリ10の劣化度が車両の外部で表示される構成例を示すブロック図である。図17を参照して、この変形例では、車両100Aは、図1に示した車両100の構成において、表示部35を備えず、通信部50をさらに備える。
【0127】
通信部50は、車両100Aの外部に設けられるサービスツール200との間で通信を実行する機能を有する。サービスツール200との通信は、有線であってもよいし、無線であってもよい。通信部50は、たとえば、車載の通信モジュールによって構成することができる。
【0128】
サービスツール200は、たとえばディーラー等に備えられており、車両100Aから取得されるメインバッテリ10の電池使用履歴データから、メインバッテリ10の劣化度を算出する。車両100Aでは、メインバッテリ10の電池使用履歴データが収集されて記憶部32に蓄積されており、サービスツール200と通信部50との間で通信が確立されると、記憶部32に蓄積されている電池使用履歴データが通信部50によってサービスツール200へ送信される。
【0129】
そして、サービスツール200において、車両100Aから取得された電池使用履歴データから、メインバッテリ10の現在の劣化度が算出される。劣化度は、上記の実施の形態と同様、たとえばメインバッテリ10の現在の容量維持率である。メインバッテリ10の容量維持率は、上記の式(1)を用いて算出することができる。
【0130】
また、上記の実施の形態では、メインバッテリ10の劣化度は、車両100のコントローラ30において算出されるものとしたが、劣化度の算出は、車両外部のサーバで行なってもよい。
【0131】
図18は、メインバッテリ10の劣化度が車両の外部で算出される構成例を示すブロック図である。図18を参照して、この変形例では、車両100Bは、図1に示した車両100の構成において、通信部50Aをさらに備える。
【0132】
通信部50Aは、車両100Bの外部に設けられるサーバ230との間で通信経路210を形成して、無線通信を実行する機能を有する。たとえば、通信部50Aは、車載の無線通信モジュールによって構成することができる。
【0133】
車両100Bは、通信部50Aによる通信経路210を経由して広域通信網220(代表的にはインターネット)に接続することにより、サーバ230との間で双方向のデータ通信が可能である。所定の劣化度更新タイミングが到来すると、車両100Bからサーバ230へメインバッテリ10の電池使用履歴データが送信される。
【0134】
サーバ230は、メインバッテリ10の電池使用履歴データを車両100Bから取得すると、取得された電池使用履歴データからメインバッテリ10の劣化度を算出する。劣化度は、たとえば、上記の実施の形態と同様、メインバッテリ10の現在の容量維持率である。メインバッテリ10の容量維持率は、上記の式(1)を用いて算出することができる。そして、サーバ230は、算出した劣化度(容量維持率)を車両100Bへ送信する。
【0135】
車両100Bにおいて受信された劣化度(容量維持率)は、表示部35に表示されるところ、劣化度が下限値よりも低い場合(容量維持率が上限値C1よりも高い場合)に、メインバッテリ10は劣化していないことを示すメッセージを表示部35に表示する点は、上記の実施の形態1と同じである。また、劣化度が上限値よりも高い場合(容量維持率が下限値C2よりも低い場合)に、メインバッテリ10の交換を促すメッセージを表示部35に表示する点も、上記の実施の形態1と同じである。
【0136】
なお、上記の各実施の形態及び変形例では、表示装置は車両に適用されるものとしたが、本開示に従う表示装置は、車両に適用されるものに限定されるものではなく、二次電池の劣化度が表示されるその他の機器にも適用可能である。
【0137】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
10 メインバッテリ、11 電池モジュール、15 電流センサ、16 温度センサ、17 電圧センサ、18 監視ECU、20 バッテリパック、21a,21b システムメインリレー、22 昇圧コンバータ、23 インバータ、25 モータジェネレータ、26 伝達ギヤ、27 駆動輪、28 充電器、29a,29b 充電リレー、30 コントローラ、31 制御部、32 記憶部、35 表示部、40 外部電源、45 充電ケーブル、50,50A 通信部、100,100A,100B 車両、200 サービスツール、210 通信経路、220 広域通信網、230 サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18