(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/76 20060101AFI20221129BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A01D34/76 C
A01D34/78 Z
(21)【出願番号】P 2018204516
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】中山 亜維
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030323(JP,A)
【文献】特開2011-200189(JP,A)
【文献】特開平09-201126(JP,A)
【文献】特開平05-015232(JP,A)
【文献】特開2018-007615(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168218(JP,U)
【文献】特開2015-149965(JP,A)
【文献】特開2007-116957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0196425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/76
A01D 34/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に設けられる駆動源と、
前記駆動源の駆動力により駆動する刃物と、
前記本体部から後方に延び、作業者によって操作される操作部を有するハンドル部と、
前記駆動源の駆動を制御する制御部と、
前記本体部に対して自由に相対回転可能
であり、前記作業者が前記ハンドル部を介して前記本体部を押して移動させることで回転する車輪部と、
前記本体部が
前進する方向に移動している作業状態であるか
、前記本体部が後退している、又は、前記本体部が停止している非作業状態であるかを検知する検知部と、を有し、
前記制御部は
、前記操作部が操作された状態で
、かつ前記本体部が前記非作業状態であることを前記検知部が検知すると、
前記操作部が操作された状態で、かつ前記本体部が前記作業状態であることを前記検知部が検知しているときの前記駆動源の回転数よりも、前記駆動源の回転数を低下させる、芝刈機。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であっても、前記本体部が前記非作業状態であることを前記検知部が検知すると、前記駆動源の駆動を停止する、請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記検知部は、前記車輪部の回転方向を検知し、
前記非作業状態は、前記本体部が後退する方向に前記車輪部が回転している状態、又は、前記車輪部の回転が停止している状態である、請求項1または2に記載の芝刈機
【請求項4】
前記車輪部は、第1の車輪と、前記第1の車輪よりも外径の小さい第2の車輪と、を含み、
前記検知部は、前記第2の車輪の回転方向を検知する、請求項3に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記車輪部は、前輪である第1の車輪と、後輪である第2の車輪と、を有し、
前記検知部は、前記第2の車輪の回転方向を検知する、請求項3又は4に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記本体部は、前記第2の車輪の回転軸方向両端の少なくとも一部を覆うハウジングを有し、
前記ハウジングは、前記第2の車輪に対向して前記検知部を有する、請求項4又は5に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記車輪部は、磁石を有し、
前記検知部は、前記磁石の発生する磁界を検知するホール素子を含む、請求項1乃至6の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記駆動源はブラシレスモータであり、
前記制御部は、前記ブラシレスモータに電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御するコンピュータと、を含む、請求項1乃至7の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項9】
前記本体部に着脱自在に設けられるとともに、前記駆動源に電力を供給するバッテリパックを有する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項10】
前記制御部は、前記非作業状態であっても、前記操作部が操作されると所定の仮駆動時間は前記駆動源を駆動する、請求項1乃至9の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項11】
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であっても、前記本体部が所定時間継続して前記非作業状態である場合に、前記駆動源の駆動を停止する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項12】
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であり、前記本体部が作業状態である場合に、前記本体部の移動速度に応じて前記駆動源の回転数を変更する、請求項1乃至11の何れか一項に記載の芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がハンドル部を把持して前進させながら芝刈り作業を行う芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の芝刈機においては、本体から延びるハンドルにレバーが設けられ、作業者がレバーを操作することで刈刃モータのオン/オフが切り替えられる。また、本体には、本体に対して相対回転可能な車輪が設けられており、作業者はレバーを操作しながら、ハンドルを把持して本体を押すことで、本体が車輪の回転により前進し、芝刈り作業を行う。
【0003】
下記特許文献1はブラシレスモータで刈刃を回転駆動する芝刈機を示す。この場合、車輪の駆動力を有さずに車輪が本体に対して空転する構成であり、本体の駆動方向を芝刈機自身が検知していないため、本体の前進・後退に関わらず、レバーが操作されている間は刈刃モータが駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載したように、特に車輪の駆動力を有さずに車輪が本体に対して空転する構成の芝刈機においては、本体の駆動方向を芝刈機自身が検知していないため、本体の前進・後退に関わらず、レバーが操作されている間は刈刃モータが駆動する。一方で、本体が停止及び後退している間は、作業者が芝刈機の位置を移動させているだけであり芝刈り作業を意図してはいないため、この期間に刈刃モータを駆動する必要はなく、電力を浪費していることになる。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、非作業時におけるエネルギー消費を低減した芝刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は芝刈機である。この芝刈機は、
本体部に設けられる駆動源と、
前記駆動源の駆動力により駆動する刃物と、
前記本体部から後方に延び、作業者によって操作される操作部を有するハンドル部と、
前記駆動源の駆動を制御する制御部と、
前記本体部に対して自由に相対回転可能であり、前記作業者が前記ハンドル部を介して前記本体部を押して移動させることで回転する車輪部と、
前記本体部が前進する方向に移動している作業状態であるか、前記本体部が後退している、又は、前記本体部が停止している非作業状態であるかを検知する検知部と、を有し、
前記制御部は、前記操作部が操作された状態で、かつ前記本体部が前記非作業状態であることを前記検知部が検知すると、前記操作部が操作された状態で、かつ前記本体部が前記作業状態であることを前記検知部が検知しているときの前記駆動源の回転数よりも、前記駆動源の回転数を低下させる。
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であっても、前記本体部が前記非作業状態であることを前記検知部が検知すると、前記駆動源の駆動を停止してもよい。
【0008】
前記検知部は、前記車輪部の回転方向を検知し、前記非作業状態は、前記本体部が後退する方向に前記車輪部が回転している状態、又は、前記車輪部の回転が停止している状態とするとよい。
【0009】
前記車輪部は、第1の車輪と、前記第1の車輪よりも外径の小さい第2の車輪と、を含み、前記検知部は、前記第2の車輪の回転方向を検知してもよい。
【0010】
前記車輪部は、前輪である第1の車輪と、後輪である第2の車輪と、を有し、前記検知部は、前記第2の車輪の回転方向を検知してもよい。
【0011】
前記本体部は、前記第2の車輪の回転軸方向両端の少なくとも一部を覆うハウジングを有し、前記ハウジングは、前記第2の車輪に対向して前記検知部を有してもよい。
【0012】
前記車輪部は、磁石を有し、前記検知部は、前記磁石の発生する磁界を検知するホール素子を含んでもよい。
【0013】
前記駆動源はブラシレスモータであり、前記制御部は、前記ブラシレスモータに電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御するコンピュータと、を含んでもよい。
【0014】
前記本体部に着脱自在に設けられるとともに、前記駆動源に電力を供給するバッテリパックを有してもよい。
【0015】
前記制御部は、前記非作業状態であっても、前記操作部が操作されると所定の仮駆動時間は前記駆動源を駆動してもよい。
【0016】
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であっても、前記本体部が所定時間継続して前記非作業状態である場合に、前記駆動源の駆動を停止してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記操作部が操作された状態であり、前記本体部が作業状態である場合に、前記本体部の移動速度に応じて前記駆動源の回転数を変更してもよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る芝刈機によれば、芝刈機の非作業時におけるエネルギー消費を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】前記芝刈機の本体部の一部を破断して内部構造を示す部分側面図。
【
図4】前記芝刈機の車輪部の回転方向並びに回転速度を検知する検知部を示す部分拡大側面図。
【
図6】前記芝刈機において、本体部の一部を破断して内部構造を示す平面図。
【
図9】前記芝刈機において、商用電源でブラシ付きモータを作動させる場合の制御部を含むブロック図。
【
図10】前記芝刈機において、直流電源としてのバッテリパックでブラシ付きモータを作動させる場合の制御部を含むブロック図。
【
図11】前記芝刈機において、商用電源でブラシレスモータを作動させる場合の制御部を含むブロック図。
【
図12】前記制御部による第1制御例を示すフローチャート。
【
図13】前記制御部による第2制御例を示すフローチャート。
【
図14】前記車輪部の回転方向及び操作部のオン/オフと、刃物ユニットの回転刃回転の時間関係を示すタイムチャート。
【
図15】前記車輪部の回転数(「単位時間当たりの回転数」である。以下同じ。)と回転刃の回転数との時間関係を示すタイムチャート。
【
図16】従来の芝刈機において、商用電源でブラシ付きモータを作動させる場合のブロック図。
【
図17】実施の形態の芝刈機において、直流電源としてのバッテリパックでブラシ付きモータを作動させる場合の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
図1は本発明の実施の形態に係る芝刈機の正面図、
図2は側面図、
図3の本体部の一部を破断して内部構造を示す部分側面図、
図4は前記芝刈機の車輪部の回転方向並びに回転速度を検知する検知部を示す部分拡大側面図、
図5は平面図、
図6は本体部の一部を破断して内部構造を示す平面図、
図7は要部底面図、及び
図8は
図7の部分拡大図である。
【0023】
本実施の形態の芝刈機は、駆動部としての電動モータ20が設けられた本体部1と、芝草を刈り取る刈刃を有する刃物ユニット2と、作業者が把持するハンドル部3と、本体部1に対して自由に相対回転可能な移動用車輪部としての前車輪4及び後車輪5と、刈り取った芝草を捕集する集草ボックス7とを備える。
図17に示すように、本体部1上面の電池パック配置部に、直流電源としてのバッテリパック30が必要に応じて着脱自在に配置される。
【0024】
ハンドル部3は、本体部1に枢支されていて、芝刈り作業時には本体部1からハンドル部3が斜め後方上方に延びる位置に設定される。ハンドル部3に沿って操作部としての操作レバー(トリガ)25が設けられている。操作レバー25はハンドル部3を作業者が把持すると同時に操作可能である。ハンドル部3内を経由して電源コード8が引き出されており、電源コード8の先端の電源プラグ8aを商用電源等の外部電源に接続することで、操作レバー25が操作(押圧)されたときに本体部1に駆動用の電力が供給される。ハンドル部3にはオフ状態を継続させるためのオフロック29が設けられている。オフロック29が操作されてオフ状態にロックされているとき、操作レバー25を操作しても、その操作は有効にならない。オフロック29の解除状態で操作レバー25の操作が有効になる。
【0025】
本体部1に取り付けられた刃物ユニット2は、回転刃10と固定刃14とで芝草を挟むことによって芝草を刈り取る構造となっている。芝草の刈取り高さは、刈高装置9によって調節可能である。本体部1のハウジング1aの内側に取り付けられた電動モータ20の回転は、
図3に示す巻掛け伝動機構6により刃物ユニット2の回転刃10に伝達される。
図3及び
図7に示すように、刃物ユニット2は、回転刃10と、固定刃14と、ブレードホルダ15とを備える。本体部1のハウジング1aの両側面の内側に軸受10bが配置され、回転刃10は、自身の回転軸10aの両側にて軸受10bでハウジング1aに対し回転自在に支持される。
【0026】
移動用車輪部は本体部1aに対し自由に相対回転可能な前車輪4及び後車輪5を有している。前車輪4は、本体部1の両側面の前側に回転自在に取り付けられ、後車輪5は両端面中心から突出した軸部5aでハウジング1aの内側部分を構成するフレーム部1bによって回転自在に支持されている。検知部40は本体部1が作業状態(前進状態)であるか非作業状態(停止又は後退状態)であるかを検知するために設けられている。具体的には、検知部40は車輪部の回転方向並びに回転速度を検知する構成である。車輪部は、後車輪5の一方の端面に複数の永久磁石41を有する。永久磁石41は後車輪5の一方の端面に固定、例えば埋設されている。検知部40は、永久磁石41の磁界を検知するためのホールIC45(1個又は複数個のホール素子を内蔵している)を搭載したセンサ基板46を有している。センサ基板46は、後車輪5と共に永久磁石41が回転したときに、ホールIC45が永久磁石41に近接対向可能なように、後車輪5の端面の少なくとも一部を覆うフレーム部1bに固定されている。
図4の例では永久磁石41は後車輪5の一方の端面に3個設けられている。複数の永久磁石とホールICとの組み合わせで回転速度と回転方向を検知可能な構成である。なお、ホールIC以外の磁気センサを採用することも可能である。
【0027】
図16は従来の芝刈機において、電源プラグ8aが接続された商用電源で電動モータ20としてブラシ付きモータを作動させる場合のブロック図であり、ロータA及びステータStを有するブラシ付きモータM1は、操作レバー25の操作でオン/オフされるスイッチ手段(SW ASS'Y)25a及び過電流検出時にオフとなるサーキットブレーカ(CIRCUIT BREAKER)26の直列回路を介して商用電源が供給される。この場合、操作レバー25の操作中はスイッチ手段25aはオンを継続するため、芝刈り作業を意図していない本体部1の停止及び後退している間もモータM1に通電されることになり、無駄なエネルギー消費が発生する。
【0028】
図9は本実施の形態の芝刈機において、電源プラグ8aが接続された商用電源で電動モータ20としてブラシ付きモータを作動させる場合のブロック図である。ロータA及びステータStを有するブラシ付きモータM1は、操作レバー25の操作でオン/オフされるスイッチ手段(SW ASS'Y)25a、過電流検出時にオフとなるサーキットブレーカ(CIRCUIT BREAKER)26、及びマイコン(マイクロ・コンピュータ)を含む制御部27を備える電力供給経路を介して商用電源が供給される。
【0029】
スイッチ手段25aはレバー操作でオン/オフが切り替わるスイッチを含み、マイクロスイッチ等の機械的なものでも、FET等の半導体スイッチ素子でもよい。サーキットブレーカ26は、モータの過負荷により電流値が閾値を超えた場合に、電源からモータへの電源経路を遮断する機能を有し、電流検出回路と、遮断回路(FET等)と、電流検出回路の検出値をもとに前記遮断回路をオフにするICとを含む。スイッチ手段25a及びサーキットブレーカ26を搭載した基板は、例えばハンドル部3の内部に収納される。制御部27が搭載されたメイン基板は本体部1のハウジング1a内に格納されている。制御部27には検知部40のホールIC45の出力信号が供給される。ホールIC45の出力信号は後車輪5の回転速度と回転方向を示す信号である。
【0030】
図17は本実施の形態の芝刈機において、直流電源としてのバッテリパック30を利用する場合の側面図であり、
図10はこのブロック図である。芝刈機の本体部1は、バッテリパック30の直流電圧を商用電源の交流電圧(例えばAC100V)に変換する変換器35を具備している。電源プラグ8aは変換器35の出力側コンセントに接続される。その他の構成は
図9と同様である。商用電源の無い所でも、バッテリパック30を電動モータ20の電源として利用することで、芝刈機を作動させることが可能である。
【0031】
図11は本実施の形態の芝刈機において、電動モータ20としてブラシレスモータM2を作動させる場合のブロック図である。この場合、制御部27は、ブラシレスモータM2の回転方向及び回転速度制御のために、マイコンを含む制御回路36に加えて、FET等のスイッチング素子を有するインバータ回路37を有している。スイッチ手段25a、過電流検出時にオフとなるサーキットブレーカ26、及びホールIC45の出力信号はそれぞれ制御回路36に出力される。スイッチ手段25aはレバー操作のオン/オフに関する情報を制御回路36に送る。インバータ回路37のスイッチング素子は制御回路36でオン/オフのタイミングが制御され、インバータ回路37の出力がブラシレスモータM2に供給される。また、インバータ回路37のノイズ抑制のためにコンデンサを含むノイズ抑制回路38がインバータ回路37に付加されている。
【0032】
なお、
図11のブラシレスモータM2を有する回路構成の場合にも、
図10の変換器35を設けておくことで、
図10と同様にバッテリパック30を電源として利用可能である。
【0033】
図9から
図11のブロック図の場合の第1制御例を
図12のフローチャートで説明する。作業者がオフロック29の解除状態で操作レバー25を操作すると、ステップS1でトリガオンとなり、ステップS2で制御部27のマイコンが起動する。そして、ステップS3で後車輪5の回転方向を検知し、ステップS4で正転(本体部1の前進)か否かを判断する。
【0034】
後車輪5が正転している場合(Yes)、検知部40は本体部1が作業状態であると検知し、モータ駆動のステップS5を実行し、電動モータ20が回転して刃物ユニット2の回転刃10が回転する。つまり、芝刈り作業が可能な状態である。
【0035】
ステップS6でトリガオンか否かを判断し、トリガオンである場合(Yes)はステップS3に戻り、ステップS3及びS4の回転方向検知及び正転か否かの判断を行う。ステップS4で後車輪5が停止若しくは逆転(本体部1が後退)していると判断された場合(No)、検知部40は本体部1が非作業状態であると検知し、ステップS7でモータ停止となる。これによって、後車輪5が停止若しくは逆転している場合、つまり芝刈機が停止又は逆転している芝刈りの非作業状態では電動モータ20への通電を停止し、無駄なエネルギー消費を抑えることが可能となる。
【0036】
ステップS6でトリガオンでないと判断された場合(No)も、ステップS7でモータ停止となる。モータ停止後はステップS8でトリガオンか否かを判断し、トリガオンである場合(Yes)はステップS3に戻る。ステップS8でトリガオンでないと判断された場合(No)、ステップS9で所定時間トリガ操作無しか否か判断する。所定時間内にトリガ操作がある場合(No)、ステップS8に戻る。また、所定時間トリガ操作無しの場合(Yes)、ステップS10で制御部27のマイコンを停止し、エンド(動作終了)となる。
【0037】
図12の第1制御例のフローチャートに対応したタイムチャートは、
図14(A),(B),(C)に示され、後車輪5の回転方向が同図(A)で、トリガのオン期間が同図(B)で示される場合、電動モータ20の通電は後車輪5の正転検知時でかつトリガオン期間に限定されるため、刃物ユニット2の回転数(「単位時間当たりの回転数」であり、以下同じ)は同図(C)で示される。但し、
図14(C)は検知部40による正転、停止、逆転の検知時間が無視できるとした場合である。
【0038】
図9から
図11のブロック図の場合の第2制御例を
図13のフローチャートで説明する。作業者がオフロック29の解除状態で操作レバー25を操作すると、ステップS21でトリガオンとなり、ステップS22で制御部27のマイコンが起動する。そして、ステップS23で電動モータ20に通電して所定の仮駆動時間のモータ駆動を行うとともに、ステップS24で後車輪5の回転方向を検知し、ステップS25で正転か否かを判断する。
【0039】
後車輪5が正転している場合(Yes)、検知部40は本体部1が作業状態であると検知し、ステップS26でトリガオンか否かを判断し、トリガオンである場合(Yes)はステップS23に戻り、ステップS23のモータ駆動及びステップS24及びS25の回転方向検知及び正転か否かの判断を行う。従って、後車輪5が正転している間、電動モータ20が回転して刃物ユニット2の回転刃10が回転する。つまり、芝刈り作業が可能な状態である。
【0040】
ステップS25で後車輪5が停止若しくは逆転していると判断された場合(No)、検知部40は本体部1が非作業状態であると検知し、ステップS27でモータ停止となる。これによって、後車輪5が停止若しくは逆転している場合、つまり、本体部1の非作業状態(芝刈機が停止又は後退している状態)では電動モータ20への通電を停止し、無駄なエネルギー消費を抑えることが可能となる。
【0041】
モータ停止後はステップS28でトリガオンか否かを判断し、トリガオンである場合(Yes)はステップS24に戻る。ステップS28でトリガオンでないと判断された場合(No)、ステップS29で所定時間トリガ操作無しか否か判断する。
【0042】
また、ステップS26の判断がトリガオンでは無い場合(No)、ステップS31でモータ停止となる。そして、モータ停止後はステップS32でトリガオンか否かを判断し、トリガオンである場合(Yes)はステップS23に戻る。ステップS32でトリガオンでないと判断された場合(No)、ステップS29で所定時間トリガ操作無しか否かの判断を行う。
【0043】
ステップS29の判断において、所定時間内にトリガ操作がある場合(No)、ステップS28に戻る。また、所定時間トリガ操作無しの場合(Yes)、ステップS30で制御部27のマイコンを停止し、エンド(動作終了)となる。
【0044】
図13の第2制御例のフローチャートに対応したタイムチャートは、
図14(A),(B),(D)に示され、後車輪5の回転方向が同図(A)で、トリガのオン期間が同図(B)で示される場合、電動モータ20の通電が、後車輪5の正転検知時でかつトリガオン期間に行われるのに加えて、後車輪5が停止時においてもトリガがオフからオンに切り替わった時点から短時間(仮駆動時間t
1)行われる。従って、刃物ユニット2の動作期間及び回転数は同図(D)で示される。但し、検知部40による正転、停止、逆転の検知時間が無視できるとした場合である。
【0045】
図14(E)は検知部40による正転、停止、逆転の検知時間t
2(数秒以下)を考慮した場合の刃物ユニット2の動作期間及び回転数を示す。例えば本体部1の前進が非常に低速である場合には、後車輪5の回転速度も低速となるため、後車輪5が正転しているにもかかわらず永久磁石41が所定時間ホールIC45により検知されず、後車輪5が停止しているかのように検知部40が誤検出してしまう可能性がある。このような誤検出を抑制するため、後車輪5が低速で正転している場合にも検知部40が正転を検出できる充分な時間として検知時間t
2を設定した。具体的には、トリガがオンかつ後車輪5が正転の状態から、後車輪5が停止しても、所定の検知時間t
2の間は回転刃10が回転し、検知時間t
2の終了後に回転が停止する。逆に、トリガがオンかつ後車輪5が停止した状態から、後車輪5が正転を開始しても、検知時間t
2の間は回転刃10が停止した状態を維持し、検知時間t
2の終了後に回転を開始する。
【0046】
図11に示すように、刃物ユニット2の駆動用にブラシレスモータM2を使用したブロック図の場合、インバータ回路37の周波数制御によって刃物ユニット2の回転数制御を行うことが可能である。
図15は検知部40で検知される後車輪5の回転数と、刃物ユニット2の回転刃10の回転数とを略正比例の関係となるように制御部27で制御する場合のタイムチャートである。このタイムチャートに示すように後車輪5が停止後、しばらくの間、回転刃10は低速で回転するアイドリング運転を行っている。後車輪5の回転速度、すなわち芝刈機の進行速度に略比例させて刃物ユニット2の回転刃10の回転速度を制御することで効率的な芝刈り作業が可能になる。なお、
図9及び
図10のブラシ付きモータM1を使用したブロック図の場合も、ブラシ付きモータM1の供給電圧を増減することで後車輪5の回転数に応じた回転刃10の回転数制御が同様に可能である。また、後車輪5の回転数が増加するほど回転刃10の回転数を増加させる制御と、後車輪5が停止した後に回転刃10がアイドリング運転する制御とは、必ずしも両方を実施する必要は無く、いずれか一方のみ実施する構成としてもよい。
【0047】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0048】
(1) 本実施の形態の芝刈機は、操作部としての操作レバー25が操作された状態であり、かつ本体部1が作業状態(前進する状態)であることを検知部40が検知すると、駆動源としての電動モータ20を駆動し、また、操作レバー25が操作された状態であっても、本体部1が非作業状態(停止又は後退する状態)であることを検知部40が検知すると、電動モータ20の駆動を停止する構成であり、非作業状態での電動モータ20への通電を停止することで無駄なエネルギー消費を抑えることが可能となる。また、バッテリパック30を電源として使用している場合、一充電当たりの作業時間を長くすることができる。
【0049】
(2) 本体部1の作業状態及び非作業状態を検知する検知部40は、本体部1に設けられた車輪部のうち、小径の後車輪5側に設けている。芝刈機を移動したときに大径車輪よりも小径車輪の方が回転数が多くなるから、小径の後車輪5側に設けることで、検知部40の回転方向の検知時間を短くできる。
【0050】
(3) 本体部1は、後車輪5の回転軸方向両端の少なくとも一部を覆うハウジング1aを有し、ハウジング1aは、後車輪5に対向して検知部40のセンサ基板46を有するため、センサ基板46の配置スペースを別途確保する必要が無い。従って、ハウジング1aの大型化を招くことがない。
【0051】
(4) 車輪部は、後車輪5の一方の端面に複数の永久磁石41を有し、検知部40は、永久磁石41の磁界を検知するためのホールIC45(1個又は複数個のホール素子を内蔵)を用いている。従って、検知部40は簡素で安価な構成となっている。
【0052】
(5) 制御部27は、操作レバー25が操作された状態であり、本体部1が作業状態である場合に、本体部1の移動速度に応じて電動モータ20の回転数を変更する制御が可能である。特に、電動モータ20としてブラシレスモータM2を使用する場合、インバータ回路37によって回転数制御が容易であり、
図15のタイムチャートのように、後車輪5の回転数、すなわち芝刈機の進行速度に略比例させて刃物ユニット2の回転刃10の回転数を制御することができる。このため、より効率的な芝刈り作業が可能になる。
【0053】
(6) 制御部27は、本体部1が非作業状態であっても、操作レバー25が操作されると所定の仮駆動時間は電動モータ20を駆動する場合(第2制御例を示す
図13のフローチャートの場合)、トリガオン直後に回転刃10が回転することで、作業者は芝刈機が芝刈り作業可能な状態であることを確認できる。
【0054】
(7) 制御部27は、本体部1が作業状態から非作業状態に変化しても、所定の検知時間t2は回転刃10を回転させるため、後車輪5の回転が非常に低速であるなどの状況においても、検知部40による誤検出を抑制できる。
【0055】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0056】
図12の第1制御例のフローチャートや、
図13の第2制御例のフローチャートでは、制御部27は、操作部としての操作レバー25が操作された状態(トリガオン)で、本体部1が作業状態であることが検知された場合には、直ちに駆動源としての電動モータ20を駆動する制御としたが、前記操作部が操作された状態であり、かつ前記本体部が所定時間継続して前記作業状態である場合に、前記駆動源を駆動する制御であってもよい。
【0057】
図15では後車輪5の回転数の増加に対して回転刃10の回転数を直線的に増加させたが、後車輪5の回転数の増減に対して回転刃10の回転数を階段状に増減させる制御も可能である。
【0058】
図14(C)~(D)のいずれかの制御と、
図15の制御とを組み合わせても良い。例えば、
図14(D)のように後車輪5が停止時においてもトリガがオフからオンに切り替わった時点から仮駆動時間t
1の間は回転刃10が回転する制御と、後車輪5が停止した後に回転刃10がアイドリング運転する制御と、を組み合わせても良い。
【0059】
図15の回転数制御を行わない場合、検知部40は回転方向の検知機能があればよく、回転速度検知機能は省略可能である。また、検知部40はホールIC等の磁気センサ以外の回転センサを利用することもできる。
【0060】
検知部40は、前記本体部1に設けられた車輪部の前進、後退、停止(正転、逆転、停止)が検知可能であれば、車輪部の前車輪側又は後車輪側のどちら側に設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…本体部、1a…ハウジング、2…刃物ユニット、3…ハンドル部、4…前車輪、5…後車輪、7…集草ボックス、10…回転刃、14…固定刃、20…電動モータ、25…操作レバー、25a…スイッチ手段、27…制御部、29…オフロック、30…バッテリパック、35…変換器、36…制御回路、37…インバータ回路、40…検知部、41…永久磁石、45…ホールIC、46…センサ基板、M1…ブラシ付きモータ、M2…ブラシレスモータ。