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特許7183713電力変換装置、電源システム、及び、電力変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置、電源システム、及び、電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20221129BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221129BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02M7/48 R
H02J3/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018209097
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020078134
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 俊明
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207808(JP,A)
【文献】特開2018-148664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02M 7/48
H02J 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と系統連系する電力変換装置であって、
前記商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、
を備え、
前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入
前記制御部はさらに、前記第1の無効電力の前回値からの変化量が0以外の値であるとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する、電力変換装置。
【請求項2】
商用電力系統と系統連系する電力変換装置であって、
前記商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、
を備え、
前記直流電源から前記交流電路に電力を供給する場合において、前記第2の無効電力は進相無効電力であり、
前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入するとともに前記有効電力を低減する、電力変換装置。
【請求項3】
商用電力系統と系統連系する電力変換装置であって、
前記商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、
を備え、
前記交流電路から蓄電池である前記直流電源に充電電力を供給する場合において、前記第2の無効電力は遅相無効電力であり、
前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入するとともに前記有効電力を低減する、電力変換装置。
【請求項4】
直流電源と、
前記直流電源と接続され、商用電力系統と系統連系する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置と、を有する電源システム
【請求項5】
商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部を有する電力変換装置についての、その制御方法であって、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御するとともに、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、前記交流電路の電圧
変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求め、
記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入
さらに、前記第1の無効電力の前回値からの変化量が0以外の値であるとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項6】
商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部を有する電力変換装置についての、その制御方法であって、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御するとともに、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、前記交流電路の電圧
変動抑制用の有効電力及び前記直流電源から前記交流電路に電力を供給する場合における進相無効電力である第2の無効電力を求め、
前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入するとともに前記有効電力を低減する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部を有する電力変換装置についての、その制御方法であって、
前記電力変換部のスイッチング動作を制御するとともに、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、前記交流電路の電圧
変動抑制用の有効電力及び前記交流電路から蓄電池である前記直流電源に充電電力を供給する場合における遅相無効電力である第2の無効電力を求め、
前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入するとともに前記有効電力を低減する、
電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、電源システム、及び、電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置(パワーコンディショナ)には、商用電力系統の停電時に、停電を検出して自己を商用電力系統から解列するため、単独運転検出機能が設けられている(日本電機工業会JEM1498より)。一方、商用電力系統の電圧が上昇している場合に、電力変換装置が、自己から見て商用電力系統への進相無効電力を増大させることで電圧上昇を抑制することも考えられている。単独運転検出は迅速に行われる必要があるので、短時間で繰り返し行われている。一方、電圧上昇抑制は、比較的長い周期で行われている。単独運転検出と同時に電圧上昇抑制が行われると、両者の制御が干渉して正常動作しない場合があり得る。そこで、このような干渉の恐れがあるときは、一時的に電力変換装置を停止させる制御を行うことも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-180123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電力変換装置を例え短時間でも停止させると、発電効率が悪くなる。かかる課題に鑑み、本発明は、停止を回避しつつ、単独運転検出と電圧変動抑制との相互干渉を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【0006】
本発明の一表現に係る電力変換装置は、商用電力系統と系統連系する電力変換装置であって、前記商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、を備え、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する。
【0007】
また、本発明の一表現に係る電源システムは、直流電源と、前記直流電源と接続され、商用電力系統と系統連系する電力変換装置と、を有する電源システムであって、前記電力変換装置は、前記商用電力系統に繋がる交流電路と前記直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、を備え、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する。
【0008】
また、本発明の一表現に係る電力変換装置の制御方法は、商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部を有する電力変換装置についての、その制御方法であって、前記電力変換部のスイッチング動作を制御するとともに、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求め、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力変換装置の停止を回避しつつ、単独運転検出と電圧変動抑制との相互干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、電力変換装置の一例と、その入出力回路とを示す回路図である。
図2図2は、制御部における制御機能を示す制御ブロック線図である。
図3図3は、電圧変動(上昇)抑制用の制御の第1例を示すフローチャートである。
図4図4は、電圧変動(上昇)抑制用の制御の第2例を示すフローチャートである。
図5図5は、電圧変動(下降)抑制用の制御の第3例を示すフローチャートである。
図6図6は、電圧変動(下降)抑制用の制御の第4例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0012】
(1)本開示は、商用電力系統と系統連系する電力変換装置であって、前記商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、を備え、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する、電力変換装置である。
【0013】
このような電力変換装置では、制御部により電圧変動抑制の動作が行われているとき同時に、単独運転検出の動作を行おうとすると、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する場合がある。そこで、このような場合に制御部は、第2の無効電力の現在値を一定に保持して、第1の無効電力を注入する。これによって、電圧変動抑制機能を抑制し当該機能と単独運転検出機能との干渉を避け、電力変換装置を運転したまま、単独運転検出を行うことができる。
【0014】
(2)また、(1)の電力変換装置において、前記第1の無効電力の前回値からの変化量と、前記第2の無効電力の前回値からの変化量とに関して、一方の変化量が進み方向であって他方の変化量が遅れ方向である場合、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入するようにしてもよい。
このような場合に、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する。そこで、このような場合に、制御部は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。
【0015】
(3)また、(1)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1の無効電力の前回値からの変化量が0以外の値であるとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持するようにしてもよい。
これにより、第1の無効電力が第2の無効電力と干渉する場合はもちろん、干渉しない場合も含めて、制御部は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。
【0016】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの電力変換装置において、前記直流電源から前記交流電路に電力を供給する場合において、前記第2の無効電力は進相無効電力であり、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持するとともに前記有効電力を低減するようにしてもよい。
これにより、直流電源から交流電路に電力を供給する電力変換の場合に、有効電力を低減することにより、交流電路の電圧上昇を抑制することができる。
【0017】
(5)また、上記(1)~(3)のいずれかの電力変換装置において、前記交流電路から蓄電池である前記直流電源に充電電力を供給する場合において、前記第2の無効電力は遅相無効電力であり、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持するとともに前記有効電力を低減するようにしてもよい。
これにより、交流電路から直流電源に充電電力を供給する電力変換の場合に、有効電力を低減することにより、交流電路の電圧低下を抑制することができる。
【0018】
(6)一方、本開示は、直流電源と、前記直流電源と接続され、商用電力系統と系統連系する電力変換装置と、を有する電源システムであって、前記電力変換装置は、前記商用電力系統に繋がる交流電路と前記直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部のスイッチング動作を制御し、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部、及び、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部を含む制御部と、を備え、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記制御部は、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する、電源システムである。
【0019】
このような電源システムの電力変換装置では、制御部により電圧変動抑制の動作が行われているとき同時に、単独運転検出の動作を行おうとすると、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する場合がある。そこで、このような場合に制御部は、第2の無効電力の現在値を一定に保持して、第1の無効電力を注入する。これによって、電圧変動抑制機能を抑制し当該機能と単独運転検出機能との干渉を避け、電力変換装置を運転したまま、単独運転検出を行うことができる。
【0020】
(7)また、本開示は、商用電力系統に繋がる交流電路と直流電源との間に設けられ、直流から交流又はその逆の電力変換を行う電力変換部を有する電力変換装置についての、その制御方法であって、前記電力変換部のスイッチング動作を制御するとともに、前記交流電路の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、前記交流電路の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求め、前記第1演算部が前記第2の無効電力と干渉する前記第1の無効電力を注入しようとするとき、前記第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で前記第1の無効電力を注入する、電力変換装置の制御方法である。
【0021】
このような電力変換装置の制御方法では、電圧変動抑制の動作が行われているとき同時に、単独運転検出の動作を行おうとすると、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する場合がある。そこで、このような場合に、第2の無効電力の現在値を一定に保持して、第1の無効電力を注入する。これによって、電圧変動抑制機能を抑制し当該機能と単独運転検出機能との干渉を避け、電力変換装置を運転したまま、単独運転検出を行うことができる。
【0022】
[実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る電力変換装置及びその制御方法について、図面を参照して説明する。
【0023】
《電力変換装置の構成例》
図1は、電力変換装置100の一例と、その入出力回路とを示す回路図である。まず、主回路要素から説明すると、電力変換装置100は、電力変換部50として、DC/DCコンバータ1及びインバータ2を備えている。電力変換装置100の直流側(図の左側)には、直流電源3(例えば、蓄電池、太陽光発電パネル等)が接続されている。また、電力変換装置100の交流側(図の右側)には、交流電路4が接続されている。
なお、直流電源3と電力変換装置100とで、電源システムを構成している。
【0024】
なお、交流電路4の2線は通常、単相3線の電圧線(U線,W線)である。実際には、電力変換装置100内で中間電位(0V)の中性線(O線)を作り出し、単相3線の商用電力系統7と3線接続することが多いが、ここでは簡略化して図示している。
交流電路4には、需要家の負荷5が接続される。また、交流電路4には連系リレー6が設けられている。連系リレー6は、商用電力系統7と接続されている。
【0025】
なお、ここでは、直流電源3からDC/DCコンバータ1までの直流系統は1系統である最も簡素な例を示しているが、これに限らず、複数系統が存在し、DCバス8にて互いに並列に接続される回路構成であってもよい。
【0026】
直流電源3とDC/DCコンバータ1との間には、直流側コンデンサ9が設けられている。DC/DCコンバータ1は、直流リアクトル10と、ローサイドのスイッチング素子Q1と、ハイサイドのスイッチング素子Q2とを図示のように接続して構成されている。各スイッチング素子Q1,Q2にはそれぞれ、逆並列にダイオードd1,d2が接続されている。DC/DCコンバータ1は、昇圧チョッパとして動作するか又は逆方向に降圧チョッパとして動作することもできる。
【0027】
なお、図示のスイッチング素子Q1,Q2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。他のスイッチング素子Q3~Q6についても同様である。但し、IGBTに代えてMOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のスイッチング素子を使用することもできる。
【0028】
DCバス8の2線間には、中間コンデンサ11が設けられている。DCバス8にはインバータ2が接続されている。インバータ2は、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6を備えている。スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6にはそれぞれ、逆並列にダイオードd3,d4,d5,d6が接続されている。インバータ2の交流側には、交流リアクトル12及び交流側コンデンサ13が設けられている。
【0029】
計測・制御に関する要素については、まず、電圧センサ14は、直流側コンデンサ9の両端電圧を検出し、検出出力を制御部20に送る。電流センサ15は、DC/DCコンバータ1に流れる電流を検出し、検出出力を制御部20に送る。電圧センサ16は、DCバス8の2線間の電圧を検出し、検出出力を制御部20に送る。電流センサ17は、交流リアクトル12に流れる電流を検出し、検出出力を制御部20に送る。電圧センサ18は、交流電路4の2線間の電圧を検出し、検出出力を制御部20に送る。
【0030】
制御部20は、各センサからの検出出力に基づいて、スイッチング素子Q1~Q6を制御する。また、制御部20は、連系リレー6の開閉を制御する。電力変換装置100の通常運転時は、連系リレー6は閉路している。商用電力系統7が停電し、電力変換装置100が単独運転の状態となったことを検出したときは、制御部20は、連系リレー6を開路する。
制御部20は例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部20の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0031】
なお、上記電力変換装置100は、双方向性があり、直流から交流への電力変換の他、直流電源3が蓄電池である場合には、交流から直流への電力変換を行って蓄電池を充電することもできる。
【0032】
《通常の制御の一例》
通常運転時は、前述のように、制御部20は、各センサからの検出出力に基づいて、スイッチング素子Q1~Q6を制御することにより電力変換装置100の系統連系運転を行うことができる。
【0033】
電力変換装置100が、商用電力系統7と、その交流電圧の絶対値のピーク値より低い電圧の直流電源3との間に設けられている場合、好ましい既知の制御の一例としては、交流半サイクル内で、交流の位相に応じて、DC/DCコンバータ1及びインバータ2の一方にスイッチング動作を行わせ、他方は休止させる期間を生じさせる。そして、制御部20は、交流電力の電圧、交流リアクトル12を流れる電流及び交流リアクトル12のインピーダンスによる電圧変化、中間コンデンサ11及び交流側コンデンサ13をそれぞれ流れる無効電流、並びに、直流電力の電圧に基づいて、DC/DCコンバータ1の電流指令値を、交流電力の電流と同期するように設定する。また、交流電力の電圧として、商用電力系統7の交流電圧検出値に基づいて抽出した基本波に、検出や制御系の遅れを考慮して位相を補足した電圧を用いることができる。
【0034】
このような電力変換装置100では、制御部20により、交流半サイクル内で、交流の位相に応じて、DC/DCコンバータ1及びインバータ2の一方にスイッチング動作を行わせ、他方は休止させる期間を生じさせる、という「最小スイッチング変換方式」を実行することができる。この方式を高い変換効率で実現すべく、交流電力の電圧、交流リアクトル12を流れる電流及び交流リアクトル12のインピーダンスによる電圧変化、中間コンデンサ11及び交流側コンデンサ13をそれぞれ流れる無効電流、並びに、直流電力の電圧に基づいて、制御部20は、DC/DCコンバータ1の電流指令値を、交流電力の電流と同期するように設定する。
【0035】
そして、交流電力の電圧として、商用電力系統7の交流電圧検出値(電圧センサ18が検出する交流電圧)に基づいて抽出した基本波に、検出や制御系の遅れを考慮して位相を補足した電圧を用いることで、電圧位相に対する制御の遅延を抑制し、また、商用電力系統7の系統電圧の擾乱の影響を排除して、安定した、歪の少ない交流電流を得ることができる。
【0036】
具体的には、負荷5への出力電流指令値をIa*、交流側コンデンサ13の静電容量をCa、交流電路4の交流電圧をVa、直流電源3側の電圧をVDC、ラプラス演算子をsとする。この場合、制御部20は、電流センサ17に流れるべき交流出力電流指令値Iinv*を、
Iinv*=Ia*+s CaVa ・・・(1)
に設定する。
【0037】
さらに、交流リアクトル12のインピーダンスをZaとするとき、制御部20は、インバータ2の出力端(インバータ2と交流リアクトル12との相互接続箇所)での交流出力電圧指令値Vinv*を、
Vinv*=Va+ZaIinv* ・・・(2)
に設定する。
【0038】
また、制御部20は、電圧VDC、及び、交流出力電圧指令値Vinv*の絶対値のいずれか大きい方を、DC/DCコンバータ1の出力電圧指令値Vo*に設定し、中間コンデンサ11の静電容量をCとするとき、DC/DCコンバータ1の電流指令値Iin*は、
Iin*={(Iinv* × Vinv*)+(s C Vo*)×Vo*}/VDC
・・・(3)
に設定する。そして、交流電圧Vaは、実効値をVa_rms、スイッチング動作の指令をするタイミングの位相をωtとして、
Va=√2 Va_rms×sin(ωt) ・・・(4)
とすることができる。
【0039】
上記のような制御によれば、DC/DCコンバータ1の電流指令値Iin*は、交流電力の電圧、交流リアクトル12を流れる電流と交流リアクトル12のインピーダンスによる電圧変化、中間コンデンサ11や交流側コンデンサ13を流れる無効電流、及び直流電力の電圧を全て反映している。従って、直流電源3の電圧や、交流出力電流が変化したときでも、常に交流出力電流に同期した電力を出力することができる。
【0040】
このような最小スイッチング変換方式の制御によって、DC/DCコンバータ1及びインバータ2は、必要最低限の回数の高周波スイッチングで、直流/交流の変換を行うことができる。その結果、半導体スイッチング素子のスイッチング損失、交流及び直流リアクトルの鉄損が大幅に低減され、高い変換効率を得ることができる。さらに、系統電圧Vaをこのように設定することで、低歪みの交流電流を得ることができる。
【0041】
《単独運転検出及び電圧上昇抑制を含む制御部の機能》
図2は、制御部20における制御機能を示す制御ブロック線図である。図において、制御部20は、電流センサ17から交流リアクトル12(図1)を流れる電流検出値を、電圧センサ18から交流電路4の電圧検出値を、それぞれ、取り込んでいる。基本的には、制御部20は、運転モードに従った制御目標(B1)に基づき、運転モードに従って有効電力演算を行い(B2)、電流指令値を定める(B3)。この電流指令値に基づいて、電流制御部(B4)は、電力変換部50のスイッチング動作を制御する。
【0042】
電圧センサ18により検出された電圧検出値に基づいて、制御部20は、系統周波数の演算を行う(B5)。演算により求めた系統周波数により、制御部20は、単独運転検出部(B6)において、能動的検出(B7)及び受動的検出(B8)を実行する。周波数の所定値以上のずれが確認されれば単独運転検出となる。
【0043】
また、演算により求めた系統周波数(B5)に基づいて、制御部20は、移動平均演算(B9)、周波数偏差演算(B10)及び周波数フィードバック機能無効電力演算(B11)を行う。これら、移動平均演算(B9)、周波数偏差演算(B10)及び周波数フィードバック機能無効電力演算(B11)により、周波数フィードバック部(B12)としての機能が行われている。
【0044】
一方、電圧検出値に基づいて制御部20は、基本波電圧算出(B13)及び高調波電圧算出(B14)を行い、無効電力のステップ注入発生条件の判定(B15)、及び、ステップ注入機能無効電力演算(B16)を行う。これらの処理が、ステップ注入部(B17)としての処理となる。
【0045】
制御部20は、周波数フィードバック部(B12)の演算結果及びステップ注入部(B17)の演算結果に基づいて、単独運転検出用の無効電力注入演算を行う(B18(第1演算部))。一方、電圧検出値に基づいて制御部20は、電圧上昇抑制用の有効電力及び無効電力の演算を行う(B19(第2演算部))。単独運転検出用の無効電力と電圧上昇抑制用の無効電力とは、無効電力注入演算(B20)において合算される。電圧上昇抑制用の有効電力は、運転モードに従った有効電力演算(B2)において合算の対象となる。
【0046】
また、電圧検出値に基づいて制御部20は、電流制御用位相差同期処理(B21)を行い、処理信号を、電流制御部B4に提供する。電流検出信号も、電流制御部B4に提供される。
【0047】
ここで、注目すべきは、単独運転検出用の無効電力注入演算(B18)と、電圧上昇抑制用の有効電力・無効電力演算(B19)とが、演算上、繋がっている点である。具体的には、単独運転検出用の無効電力(B18)の情報が電圧上昇抑制用の無効電力演算(B19)に通知され、相互に干渉するときは、電圧上昇抑制用の無効電力は現在値を一定に保持した状態となる。但し、電圧上昇抑制用の有効電力はそのような制限を受けない。
【0048】
《その他》
なお、以上の説明では、電力変換装置100から商用電力系統7への逆潮流を想定しているが、逆に、直流電源3が蓄電池である場合には商用電力系統7から電力変換装置100を経て直流電源3を充電する順潮流の場合にも同様な考え方を適用することができる。但し、順潮流の場合は、電圧上昇抑制ではなく電圧下降抑制となる。上昇・下降を含めて言えば、電圧変動抑制ということになる。
【0049】
《電圧変動抑制用の制御の例示》
(電力変換装置から商用電力系統への逆潮流(無効電力の向きを考慮する場合))
<制御パターン1の場合>
例えば、単独運転検出用の無効電力を第1の無効電力、電圧上昇抑制用の無効電力を第2の無効電力と考える。この場合、演算の処理において、第1の無効電力の前回値からの変化量と、第2の無効電力の前回値からの変化量とに関して、一方の変化量が進み方向であって他方の変化量が遅れ方向である場合、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する。そこで、制御部20は、第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で第1の無効電力を注入する。これにより、制御部20は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。
【0050】
図3は、電圧変動(上昇)抑制用の制御の第1例を示すフローチャートである。図において、制御部20は、電圧センサ18(図1)の検出出力に基づいて、系統電圧は閾値以上か否かを判定する(ステップS101)。系統電圧が閾値以上である場合は電圧を下げる制御が必要であり、閾値以上でない場合は電圧を下げる制御を行う必要はない。
系統電圧が閾値以上である場合、制御部20は、電圧センサ18(図2)及び電流センサ17(図2)の検出出力に基づいて、力率が下限値より大きいか否かを判定する(ステップS102)。
【0051】
力率が下限値より大きいときは、制御部20は、このタイミングで単独運転検出用の遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS103)。注入しない場合には、単独運転検出との干渉の恐れはないため、制御部20は、有効電力はそのままで、進相無効電力を増加させる(ステップS107)。一方、ステップS102において力率が下限値以下のときは、これ以上無効電力を注入できないので、有効電力を減少させて、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS108)。また、ステップS103において遅れ無効電力を注入するときは、単独運転検出と干渉する恐れがあるので、有効電力を減少させて、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS108)。
【0052】
一方、ステップS101において系統電圧が閾値より低いときは、電圧を下げる必要は無い。そこで、制御部20は、有効電力を抑制しているか否かを判定する(ステップS104)。抑制していない場合は、制御部20は、進相無効電力を注入中か否かを判定する(ステップS105)。注入中であれば、制御部20は、単独運転検出用の進み無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS106)。注入しない場合には、制御部20は、有効電力はそのままで、進相無効電力を減少させる(ステップS110)。一方、ステップS105において進相無効電力を注入中でないときは、何もしなくていいので、有効電力及び進相無効電力を保持する(ステップS109)。また、単独運転検出用の進み無効電力を注入するときは、制御部20は、有効電力及び進相無効電力を保持する(ステップS109)。
【0053】
さらに、ステップS104において有効電力を抑制しているときは、有効電力を優先的に戻したいので、制御部20は、有効電力を増加させ、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS111)。
【0054】
(電力変換装置から商用電力系統への逆潮流(無効電力の向きを考慮しない場合))
<制御パターン2の場合>
前述のように、単独運転検出用の無効電力を第1の無効電力、電圧上昇抑制用の無効電力を第2の無効電力と考えて、無効電力の向きを考えないとすると、制御部20は、第1の無効電力の前回値からの変化量が0以外の値であるとき、第2の無効電力の現在値を一定に保持するようにすればよい。これにより、第1の無効電力が第2の無効電力と干渉する場合はもちろん、干渉しない場合も含めて、制御部20は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。いわば、制御パターン1よりも、若干ラフな制御である。
【0055】
図4は、電圧変動(上昇)抑制用の制御の第2例を示すフローチャートである。図において、制御部20は、電圧センサ18(図1)の検出出力に基づいて、系統電圧は閾値以上か否かを判定する(ステップS201)。系統電圧が閾値以上である場合は電圧を下げる制御が必要であり、閾値以上でない場合は電圧を下げる制御を行う必要はない。
系統電圧が閾値以上である場合、制御部20は、電圧センサ18(図2)及び電流センサ17(図2)の検出出力に基づいて、力率が下限値より大きいか否かを判定する(ステップS202)。
【0056】
力率が下限値より大きいときは、制御部20は、このタイミングで単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS203)。注入しない場合には、単独運転検出との干渉の恐れはないため、制御部20は、有効電力はそのままで、進相無効電力を増加させる(ステップS207)。一方、ステップS202において力率が下限値以下のときは、これ以上無効電力を注入できないので、有効電力を減少させて、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS208)。また、ステップS203において進みもしくは遅れ無効電力を注入するときは、単独運転検出と干渉する恐れがあるので、有効電力を減少させて、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS208)。
【0057】
一方、ステップS201において系統電圧が閾値より低いときは、電圧を下げる必要は無い。そこで、制御部20は、有効電力を抑制しているか否かを判定する(ステップS204)。抑制していない場合は、制御部20は、進相無効電力を注入中か否かを判定する(ステップS205)。注入中であれば、制御部20は、単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS206)。注入しない場合には、制御部20は、有効電力はそのままで、進相無効電力を減少させる(ステップS210)。一方、ステップS205において進相無効電力を注入中でないときは、何もしなくていいので、有効電力及び進相無効電力を保持する(ステップS209)。また、単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するときは、制御部20は、有効電力及び進相無効電力を保持する(ステップS209)。
【0058】
さらに、ステップS204において有効電力を抑制しているときは、有効電力を優先的に戻したいので、制御部20は、有効電力を増加させ、進相無効電力を現在値に保持する(ステップS211)。
【0059】
(商用電力系統から電力変換装置への順潮流(無効電力の向きを考慮する場合))
<制御パターン1の場合>
図5は、電圧変動(下降)抑制用の制御の第3例を示すフローチャートである。図において、制御部20は、電圧センサ18(図1)の検出出力に基づいて、系統電圧は閾値以下か否かを判定する(ステップS301)。系統電圧が閾値以下である場合は電圧を上げる制御が必要であり、閾値以下でない場合は電圧を上げる制御を行う必要はない。
系統電圧が閾値以下である場合、制御部20は、電圧センサ18(図2)及び電流センサ17(図2)の検出出力に基づいて、力率が下限値より大きいか否かを判定する(ステップS302)。
【0060】
力率が下限値より大きいときは、制御部20は、このタイミングで単独運転検出用の進み無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS303)。注入しない場合には、単独運転検出との干渉の恐れはないため、制御部20は、充電の有効電力はそのままで、遅相無効電力を増加させる(ステップS307)。一方、ステップS302において力率が下限値以下のときは、これ以上無効電力を注入できないので、充電の有効電力を減少させて、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS308)。また、ステップS303において進み無効電力を注入するときは、単独運転検出と干渉する恐れがあるので、充電の有効電力を減少させて、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS306)。
【0061】
一方、ステップS301において系統電圧が閾値より高いときは、電圧を上げる必要は無い。そこで、制御部20は、充電の有効電力を抑制しているか否かを判定する(ステップS304)。抑制していない場合は、制御部20は、遅相無効電力を注入中か否かを判定する(ステップS305)。注入中であれば、制御部20は、単独運転検出用の遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS306)。注入しない場合には、制御部20は、充電の有効電力はそのままで、遅相無効電力を減少させる(ステップS310)。一方、ステップS305において遅相無効電力を注入中でないときは、何もしなくていいので、充電の有効電力及び遅相無効電力を保持する(ステップS309)。また、単独運転検出用の遅れ無効電力を注入するときは、制御部20は、充電の有効電力及び遅相無効電力を保持する(ステップS309)。
【0062】
さらに、ステップS304において充電の有効電力を抑制しているときは、有効電力を優先的に戻したいので、制御部20は、充電の有効電力を増加させ、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS311)。
【0063】
(商用電力系統から電力変換装置への順潮流(無効電力の向きを考慮しない場合))
<制御パターン2の場合>
図6は、電圧変動(下降)抑制用の制御の第4例を示すフローチャートである。図において、制御部20は、電圧センサ18(図1)の検出出力に基づいて、系統電圧は閾値以下か否かを判定する(ステップS401)。系統電圧が閾値以下である場合は電圧を上げる制御が必要であり、閾値以下でない場合は電圧を上げる制御を行う必要はない。
系統電圧が閾値以下である場合、制御部20は、電圧センサ18(図2)及び電流センサ17(図2)の検出出力に基づいて、力率が下限値より大きいか否かを判定する(ステップS402)。
【0064】
力率が下限値より大きいときは、制御部20は、このタイミングで単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS403)。注入しない場合には、単独運転検出との干渉の恐れはないため、制御部20は、充電の有効電力はそのままで、遅相無効電力を増加させる(ステップS407)。一方、ステップS402において力率が下限値以下のときは、これ以上無効電力を注入できないので、充電の有効電力を減少させて、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS406)。また、ステップS403において進みもしくは遅れ無効電力を注入するときは、単独運転検出と干渉する恐れがあるので、充電の有効電力を減少させて、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS408)。
【0065】
一方、ステップS401において系統電圧が閾値より高いときは、電圧を下げる必要は無い。そこで、制御部20は、充電の有効電力を抑制しているか否かを判定する(ステップS404)。抑制していない場合は、制御部20は、遅相無効電力を注入中か否かを判定する(ステップS405)。注入中であれば、制御部20は、単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するか否かを判定する(ステップS406)。注入しない場合には、制御部20は、充電の有効電力はそのままで、遅相無効電力を減少させる(ステップS410)。一方、ステップS405において遅相無効電力を注入中でないときは、何もしなくていいので、制御部20は、充電の有効電力及び遅相無効電力を保持する(ステップS409)。また、単独運転検出用の進みもしくは遅れ無効電力を注入するときは、制御部20は、充電の有効電力及び遅相無効電力を保持する(ステップS409)。
【0066】
さらに、ステップS404において無効電力を抑制しているときは、有効電力を優先的に戻したいので、制御部20は、充電の有効電力を増加させ、遅相無効電力を現在値に保持する(ステップS411)。
【0067】
《開示のまとめ》
本開示に係る電力変換装置100の制御部20は、電力変換部50のスイッチング動作を制御し、交流電路4の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求める第1演算部(B18)、及び、交流電路4の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求める第2演算部(B19)を含み、第1演算部(B18)が第2の無効電力と干渉する第1の無効電力を注入しようとするとき、制御部20は、第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で第1の無効電力を注入する。
【0068】
このような電力変換装置では、制御部20により電圧変動抑制の動作が行われているとき同時に、単独運転検出の動作を行おうとすると、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する場合がある。そこで、このような場合に制御部20は、第2の無効電力の現在値を一定に保持して、第1の無効電力を注入する。これによって、電圧変動抑制機能を抑制し当該機能と単独運転検出機能との干渉を避け、電力変換装置100を運転したまま、単独運転検出を行うことができる。
【0069】
具体的には、例えば、第1の無効電力の前回値からの変化量と、第2の無効電力の前回値からの変化量とに関して、一方の変化量が進み方向であって他方の変化量が遅れ方向である場合、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する。そこで、制御部20は、第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で第1の無効電力を注入する。これにより、制御部20は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。
【0070】
また、制御部20は、第1の無効電力の前回値からの変化量が0以外の値であるとき、第2の無効電力の現在値を一定に保持するようにしてもよい。これにより、第1の無効電力が第2の無効電力と干渉する場合はもちろん、干渉しない場合も含めて、制御部20は、電圧変動抑制機能を一定状態に保持し、単独運転検出を行うことができる。
【0071】
なお、本開示は、直流電源3と、電力変換装置100と、を有する電源システムでもある。また、本開示は、電力変換装置100についての、その制御方法であって、電力変換部50のスイッチング動作を制御するとともに、交流電路4の交流電圧に基づいて、単独運転検出用に注入すべき第1の無効電力を求め、また、交流電路4の電圧変動抑制用の有効電力及び第2の無効電力を求め、第1演算部が第2の無効電力と干渉する第1の無効電力を注入しようとするとき、第2の無効電力の現在値を一定に保持した状態で第1の無効電力を注入する。
【0072】
このような電力変換装置の制御方法によれば、電圧変動抑制の動作が行われているとき同時に、単独運転検出の動作を行おうとすると、第1の無効電力が、第2の無効電力と干渉する場合があるが、このような場合に、第2の無効電力の現在値を一定に保持して、第1の無効電力を注入する。これによって、電圧変動抑制機能を抑制し当該機能と単独運転検出機能との干渉を避け、電力変換装置100を運転したまま、単独運転検出を行うことができる。
【0073】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 DC/DCコンバータ
2 インバータ
3 直流電源
4 交流電路
5 負荷
6 連系リレー
7 商用電力系統
8 DCバス
9 直流側コンデンサ
10 直流リアクトル
11 中間コンデンサ
12 交流リアクトル
13 交流側コンデンサ
14 電圧センサ
15 電流センサ
16 電圧センサ
17 電流センサ
18 電圧センサ
20 制御部
50 電力変換部
100 パワーコンディショナ
d1,d2,d3,d4,d5,d6 ダイオード
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6