(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】板はんだおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20221129BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221129BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20221129BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20221129BHJP
H01L 25/07 20060101ALN20221129BHJP
H01L 25/18 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
H05K3/34 505A
H05K3/34 507C
H01L21/60 321E
B23K1/00 330E
B23K3/06 P
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2018216470
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】外薗 洋昭
(72)【発明者】
【氏名】多田 慎司
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238757(JP,A)
【文献】特開2017-174848(JP,A)
【文献】実公昭48-020514(JP,Y1)
【文献】特開2012-234710(JP,A)
【文献】特開平03-095881(JP,A)
【文献】特開昭59-008391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H01L 21/60
B23K 1/00
B23K 3/06
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、
前記接合用はんだ部を連結する連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有
し、前記連結部が連結する前記接合用はんだ部の体積により前記切断部の位置が異なることを特徴とする板はんだ。
【請求項2】
半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、
前記接合用はんだ部を連結する連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記複数の接合用はんだ部の内、少なくとも2つの接合用はんだ部は、それぞれの表面が同一平面上にないことを特徴とする板はんだ。
【請求項3】
前記連結部は、前記切断部に向かって前記連結部の幅が狭くなることを特徴とする請求項1または2に記載の板はんだ。
【請求項4】
前記連結部は、前記切断部に切り欠け溝を有することを特徴とする請求項3に記載の板はんだ。
【請求項5】
前記連結部は、四角柱であり、一部に前記連結部の幅が狭い切断部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の板はんだ。
【請求項6】
前記連結部は、第1の接合用はんだ部と、前記第1の接合用はんだ部より体積の小さな第2の接合用はんだ部とを連結し、
前記連結部の前記切断部は、前記連結部の中央より前記第1の接合用はんだ部側に位置することを特徴とする請求項
1に記載の板はんだ。
【請求項7】
前記連結部は、前記連結部の幅が最も広い部分の幅に対する前記切断部の幅の比は0.3以上0.6以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の板はんだ。
【請求項8】
前記連結部は、前記連結部の幅が最も広い部分の幅が0.1mm以上1mm以下であり、かつ、前記切断部の幅が0.1mm以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の板はんだ。
【請求項9】
前記連結部は、前記接合用はんだ部の側面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い第2の切断部を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の板はんだ。
【請求項10】
板はんだを用いて、積層基板上の導電性板と半導体素子とを接合して、前記積層基板に前記半導体素子を搭載する第1工程と、
前記半導体素子と、外部に信号を取り出す金属端子とを電気的に接続する第2工程と、
封止樹脂を注入し、前記半導体素子と前記積層基板のおもて面とを内部に封入する第3工程と、
を含み、
前記板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記連結部が連結する前記接合用はんだ部の体積により前記切断部の位置が異なることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
板はんだを用いて、積層基板上の導電性板と半導体素子とを接合して、前記積層基板に前記半導体素子を搭載する第1工程と、
前記半導体素子と、外部に信号を取り出す金属端子とを電気的に接続する第2工程と、
封止樹脂を注入し、前記半導体素子と前記積層基板のおもて面とを内部に封入する第3工程と、
を含み、
前記板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記複数の接合用はんだ部の内、少なくとも2つの接合用はんだ部は、それぞれの表面が同一平面上にないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程では、リードフレームまたは配線基板を用いて、前記半導体素子と前記金属端子とを、電気的に接続し、
前記板はんだが、前記リードフレームまたは前記配線基板と、前記半導体素子とを接合し、および前記リードフレームまたは前記配線基板と、前記金属端子とを接合することを特徴とする請求項
10または11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板はんだおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を中心として、パワー半導体モジュールが電力変換装置に広く用いられるようになっている。パワー半導体モジュールは1つまたは複数のパワー半導体チップを内蔵して変換接続の一部または全体を構成するパワー半導体デバイスである。
【0003】
図23は、従来のパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
図23に示すように、パワー半導体モジュールは、パワー半導体チップ101と、絶縁基板102と、導電性板103と、放熱板104と、金属端子105と、放熱ベース110と、ワイヤ111と、を備える。パワー半導体チップ101は、IGBTまたはダイオード等のパワー半導体チップであり、導電性板103上にはんだ109で接合されている。セラミック基板等の絶縁基板102のおもて面に銅などの導電性板103が備えられ、裏面に銅などの放熱板104が備えられたものを積層基板と称する。積層基板は、放熱ベース110にはんだ109で接合されている。外部に信号を取り出す金属端子105は、導電性板103上にはんだ109で接合されている。ワイヤ111は、パワー半導体チップ101と金属端子105とを電気的に接続している。なお、図示はしていないが、これらの部材は、1台の半導体装置に複数搭載されている。パワー半導体モジュールは、端子ケース(不図示)が接着され、金属端子105が貫通して外部に突き出ている蓋(不図示)を取り付け、積層基板102の沿面および基板上のパワー半導体チップ101を絶縁保護する封止樹脂(不図示)が、端子ケース内に充填されている。
【0004】
はんだ109を用いて、パワー半導体チップ101、金属端子105等を接合する半導体装置の製造方法に関して、接合方法には大きく2方式がある。一つは、板はんだを複数箇所の接合部に複数並べたのち、酸化膜を還元できる水素(H2)、またはギ酸(CH2O2)雰囲気にて加熱し、接合する方法である。もう一つは、酸化膜を還元する溶媒を含んだペースト状のはんだを、複数箇所に塗布したのち、窒素(N2)などの不活性ガス雰囲気下にて加熱し、接合する方法である。
【0005】
積層基板上の導電性板は、パワー半導体チップや金属端子等を接続するために、所定の形状(パターン)にエッチング等で加工される。また、放熱性を向上するために、厚い(例えば、1~5mm)金属層を用いられることがある。しかし、エッチング処理を利用する製造方法では、導電性板が厚いことで長い製造時間を要し、コストアップとなる。このため、薄い金属層が絶縁板上に形成された基板上に厚い金属パターンを配置し、接合材として板はんだを用いて複数の金属パターンを基板に接合することが考えられる。この際、複数のはんだランドが複数のタイバーにより接続して一体化されているはんだ板を用いることで、少ない工数で複数のはんだランドをそれぞれ複数の金属板片上に載せることができる技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、板はんだによる接合プロセスは、接合箇所毎に板はんだを並べ、その上に半導体チップなどの被接合部材を搭載する。そのため、この個数よって作業時間が変化する。また、配置ずれや未実装により接合不良となる場合がある。一方、ペースト状のはんだは、スクリーン印刷工法により複数箇所に一括供給が可能であるが、溶媒の洗浄が必要となるため板はんだに比べて作業コスト、洗浄液の廃液処理、新液購入等ランニングコストがかかる。
【0008】
また、板はんだを用いる方法で、板はんだを連結部でつなぎ、複数の板はんだを一工程で複数の被接合部材を搭載する技術がある。しかしながら、連結部を有する板はんだを用いても、切断される場所が一様ではないという課題がある。
【0009】
例えば、連結部でつながれた板はんだの体積が同じでも、切断される個所が異なり、半導体チップが動いてしまう場合がある。また、導電性板上に半導体チップを板はんだで接合する例を示すと、半導体チップの大きさによって板はんだの面積および体積は異なる場合がある。早く加熱される板はんだに近い連結部の方が早く切断されるので、早く加熱された板はんだ上の半導体チップが動いてしまう場合がある。つまり、板はんだを加熱していくと、小さい体積の板はんだは早く加温され、溶解するが、大きな体積の板はんだは熱容量が大きいためまだ溶解しない段階である。大きな体積の板はんだが溶解しないうちに、連結部が溶けてしまうと、小さな板はんだ上の半導体チップが動いてしまう。これにより、半導体チップが導電性板に接合されずに、半導体装置が導電不良となるおそれがある。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、板はんだの形状を変化させることにより、作業工数およびランニングコストを削減し、半導体チップ等の被接合部材が動かないように高い位置精度を実現する板はんだおよび半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる板はんだは、次の特徴を有する。板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備える。前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記連結部が連結する前記接合用はんだ部の体積により前記切断部の位置が異なる。上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる板はんだは、次の特徴を有する。板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備える。前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記複数の接合用はんだ部の内、少なくとも2つの接合用はんだ部は、それぞれの表面が同一平面上にない。
【0012】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、前記切断部に向かって前記連結部の幅が狭くなることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、前記切断部に切り欠け溝を有することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、四角柱であり、一部に前記連結部の幅が狭い切断部を有することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、第1の接合用はんだ部と、前記第1の接合用はんだ部より体積の小さな第2の接合用はんだ部とを連結し、前記連結部の前記切断部は、前記連結部の中央より前記第1の接合用はんだ部側に位置することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、前記連結部の幅が最も広い部分の幅に対する前記切断部の幅の比は0.3以上0.6以下であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、前記連結部の幅が最も広い部分の幅が0.1mm以上1mm以下であり、かつ、前記切断部の幅が0.1mm以上であることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる板はんだは、上述した発明において、前記連結部は、前記接合用はんだ部の側面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い第2の切断部を有することを特徴とする。
【0021】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、板はんだを用いて、積層基板上の導電性板と半導体素子とを接合して、前記積層基板に前記半導体素子を搭載する第1工程を行う。次に、前記半導体素子と、外部に信号を取り出す金属端子とを電気的に接続する第2工程を行う。次に、封止樹脂を注入し、前記半導体素子と前記積層基板のおもて面とを内部に封入する第3工程を行う。前記板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記連結部が連結する前記接合用はんだ部の体積により前記切断部の位置が異なる。上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、板はんだを用いて、積層基板上の導電性板と半導体素子とを接合して、前記積層基板に前記半導体素子を搭載する第1工程を行う。次に、前記半導体素子と、外部に信号を取り出す金属端子とを電気的に接続する第2工程を行う。次に、封止樹脂を注入し、前記半導体素子と前記積層基板のおもて面とを内部に封入する第3工程を行う。前記板はんだは、半導体装置の部材同士間の接合に用いられる板状の複数の接合用はんだ部と、前記接合用はんだ部を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記接合用はんだ部の表面側の前記連結部の面に、前記連結部の中で幅が狭い切断部を有し、前記複数の接合用はんだ部の内、少なくとも2つの接合用はんだ部は、それぞれの表面が同一平面上にない。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程では、リードフレームまたは配線基板を用いて、前記半導体素子と前記金属端子とを、電気的に接続し、前記板はんだが、前記リードフレームまたは前記配線基板と、前記半導体素子とを接合し、および前記リードフレームまたは前記配線基板と、前記金属端子とを接合することを特徴とする。
【0023】
上述した発明によれば、接合用はんだ部が連結部で連結されているため、少ない工数で、パワー半導体チップ等の被接合部材に搭載可能となる。また、連結部は、接合用はんだ部の表面側の面に、連結部の中で幅が狭い切断部を有する。これにより、板はんだが溶解するときに切断部で切断されやすくなり、パワー半導体チップ等の被接合部材が動くことを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる板はんだおよび半導体装置の製造方法によれば、板はんだの形状を変化させることにより、作業工数およびランニングコストを削減し、半導体チップ等の被接合部材が動かないように高い位置精度を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる下部板はんだを示す上面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる下部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す上面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる下部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる下部板はんだでパワー半導体チップおよび金属端子を絶縁基板に接合した構成を示す上面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる下部板はんだでパワー半導体チップおよび金属端子を絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。
【
図7】実施の形態1にかかる上部板はんだを示す上面図である。
【
図8】実施の形態1にかかる上部板はんだを示す側面図である。
【
図9】実施の形態1にかかる上部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図で、リードフレームに接合する例である。
【
図10】実施の形態1にかかる上部板はんだを絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。
【
図11】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である(その1)。
【
図12】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である(その2)。
【
図13】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である(その3)。
【
図14】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である(その4)。
【
図15】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である(その5)。
【
図16】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す側面図である(その1)。
【
図17】実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す側面図である(その2)。
【
図18】実施の形態2にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【
図19】実施の形態2にかかる上部板はんだを示す上面図である。
【
図20】実施の形態2にかかる上部板はんだを示す側面図である。
【
図21】実施の形態2にかかる上部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図である。
【
図22】実施の形態2にかかる上部板はんだを絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。
【
図23】従来のパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる板はんだおよび半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。パワー半導体モジュールにおいては、絶縁基板2の一方の面であるおもて面に銅などの導電性板3、他方の面である裏面には銅などの放熱板4が配置されて積層基板を構成する。積層基板の導電性板3のおもて面には、下部はんだ9aを介して、複数のパワー半導体チップ1が搭載されている。外部に信号を取り出す金属端子5は、導電性板3上に下部はんだ9aで接合されている。さらにパワー半導体チップ1のおもて面には、上部はんだ9bを介して、リードフレーム6が取り付けられ、パワー半導体チップ1と金属端子5を電気的に接続している。パワー半導体モジュールには、導電性板3、金属端子5、リードフレーム6などの金属部材を有する。そして、これらの部材の表面は、封止樹脂7で被覆されている。
【0028】
パワー半導体チップ1は、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等の材料からなる。パワー半導体チップ1は、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を含んでいる。このようなパワー半導体チップ1は、例えば、裏面に主電極としてドレイン電極(または、コレクタ電極)を、おもて面に、主電極としてゲート電極及びソース電極(または、エミッタ電極)をそれぞれ備えている。
【0029】
また、パワー半導体チップ1は、必要に応じて、SBD(Schottky Barrier Diode)、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードを含んでいる。このようなパワー半導体チップ1は、裏面に主電極としてカソード電極を、おもて面に主電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。上記のパワー半導体チップ1は、その裏面側の電極が所定の導電性板3のおもて面に下部はんだ9aにより接合されている。
【0030】
積層基板は、絶縁基板2と、絶縁基板2の裏面に形成された放熱板4と、絶縁基板2のおもて面に形成された導電性板3とを有している。導電性板3は、パワー半導体チップ1や金属端子5等を接続するために、所定の形状(パターン)にエッチング等で加工される。絶縁基板2は、熱伝導性に優れた、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等の高熱伝導性のセラミックスにより構成されている。放熱板4は、熱伝導性に優れた銅、アルミニウム、鉄、銀、または、少なくともこれらの一種を含む合金等の金属により構成されている。導電性板3は、導電性に優れた銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金等の金属により構成されている。このような構成を有する積層基板として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Blazed)基板を用いることができる。積層基板は、パワー半導体チップ1で発生した熱を導電性板3、絶縁基板2および放熱板4を介して半導体装置外部に伝導させることができる。また、積層基板は、金属ベース基板であってもよい。金属ベース基板は、アルミニウムまたは、銅などの金属からなる放熱板4上に樹脂からなる絶縁層、さらにその上に導電性板3を重ねて構成される。
【0031】
封止樹脂7は、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂を用いることができる。更に、密着助剤を含んでいてもよい。また、目的に応じて、無機充填剤として、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ボロン、窒化アルミニウムなどの無機粒子からなるマイクロフィラーやナノフィラーを含んでいても良い。
【0032】
下部はんだ9a、上部はんだ9bは、パワー半導体モジュールの部材同士間の接合に用いられる接合材である。はんだとして、たとえば、スズ銀(Sn-Ag)系、スズアンチモン(Sn-Sb)系、スズ銅(Sn-Cu)系のはんだを用いることができる。
【0033】
実施の形態1のパワー半導体モジュールは、以下のようにして製造される。製造方法では、まず、絶縁基板2のおもて面に導電性板3が設けられ、裏面に放熱板4が設けられた積層基板を用意する。
【0034】
次に、積層基板に設けられた導電性板3のおもて面にパワー半導体チップ1を実装する。具体的には、導電性板3の上に下部板はんだ10とパワー半導体チップ1とを積層し、接合する。同様に、導電性板3上に下部板はんだ10と金属端子5とを積層し、接合する。
【0035】
図2は、実施の形態1にかかる下部板はんだを示す上面図である。
図3は、実施の形態1にかかる下部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す上面図である。
図4は、実施の形態1にかかる下部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図である。その後、加熱して、
図6に示すように各部材ははんだで接合される。下部板はんだ10は、スズ、アンチモン、または銅等を含む鉛フリーはんだを用いた厚さ100μm以上300μm以下のはんだからなり、複数の接合用はんだ部13と連結部12とを有する。なお、板はんだの厚さが100μm未満だと、熱抵抗や電気抵抗は小さくできるが、均一な接合が難しく、また、接合する必要のある領域を完全に接合できない場合がある。また、詳細は以下に示すが、板はんだの厚さが300μmより厚いと、はんだを加熱し接合する際に、板はんだの連結部が溶融・切断されない場合がある。また、300μmより厚いと、電気抵抗が大きくなってしまう。板はんだの厚さは、さらに好ましくは、150μm以上、250μm以下である。板はんだの連結部12は、はんだ接合時に加熱されると、切断され、接合用はんだ部材側に凝集する。板はんだの厚さが150μm以上、250μm以下であれば、凝集部が大きくならず、切断、凝集がより良好に行われる。接合用はんだ部13は、パワー半導体モジュールの部材同士間の接合に用いられる表面を有する薄く平たい板状の形状を有している。そして、上面と下面はほぼ平行の板状である。接合用はんだ部13の表面の形状は、パワー半導体モジュールの部材の形状と1対1または近似する形状である。
【0036】
連結部12は、接合用はんだ部13を連結する部分であり、細長い棒状の形状を有している。連結部12の幅は0.1mm以上1mm以下であり細い方が好ましい。しかし、幅0.1mm未満になると下部板はんだ10を搭載する際に下部板はんだ10の形状が変形し、作業時間に悪影響を与えるため、0.1mm以上が好ましい。また、接合用はんだ部13が所定の位置よりずれてしまうため好ましくない。また、幅1mmを超えると加熱時の溶融の際に凝集しにくくなり未接合不良が発生したり、連結部12が切断されずに連結したままになってしまう。そのため、1mm以下が好ましい。また、
図2には図示されていないが、連結部12は、板はんだの接合用はんだ部13の表面側の面に、連結部12の中で連結部12の幅が狭い切断部を有する。つまり、
図11のように、上面から見て連結部12の中で連結部12の幅が狭い切断部を有する。切断部は、
図11~
図17で詳細に説明する。これにより、下部板はんだ10が溶解するときに切断部で切断されやすくなり、半導体チップ等の被接合部材が動くことを防止できる。
【0037】
このように、実施の形態1にかかる下部板はんだ10は、接合用はんだ部13が連結部12で連結されているため、少ない工数で、下部板はんだ10をパワー半導体チップ1やリードフレーム6に搭載可能となる。
図2は、2つのパワー半導体チップ1と金属端子5を導電性板3に接合するための例である。この場合、従来の製造方法では、2つのパワー半導体チップ1と金属端子5に板はんだを搭載するために3工程を要するが、本発明では一工程で下部板はんだ10を搭載可能となる。
【0038】
次に、パワー半導体チップ1および金属端子5と、導電性板3と、下部板はんだ10との積層体を加熱して、下部板はんだ10を溶融し、パワー半導体チップ1および金属端子5と、導電性板3とを電気的に接続する(下部はんだ接合工程)。この接合プロセスは、従来と同様に酸化膜を還元できる水素、またはギ酸雰囲気にて加熱して、接合する。また、実施の形態1では、板はんだを用いるため、洗浄工程は必要としない。
【0039】
図5は、実施の形態1にかかる下部板はんだでパワー半導体チップおよび金属端子を絶縁基板の導電性板に接合した構成を示す上面図である。
図6は、実施の形態1にかかる下部板はんだでパワー半導体チップおよび金属端子を絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。
図5、
図6に示すように、下部板はんだ10の連結部12は加熱過程(下部はんだ接合工程)で溶融・切断し、切断された箇所よりも片側の接合用はんだ部材側に凝集されるため、接合後に下部板はんだ10の連結部12は無くなる。例えば、
図6において、パワー半導体チップ1と金属端子5とを繋ぐ連結部12が切断されると、パワー半導体チップ1側の連結部12はパワー半導体チップ1の方向に凝集される。このように、下部板はんだ10は、
図6に記載の複数の下部はんだ9aとなる。この際、下部板はんだ10の連結部12が溶融・切断されていることを目視等で確認することが好ましい。
【0040】
図7は、実施の形態1にかかる上部板はんだを示す上面図である。
図8は、実施の形態1にかかる上部板はんだを示す側面図である。
図9は、実施の形態1にかかる上部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図で、リードフレームに接合する例である。
【0041】
絶縁基板2とパワー半導体チップ1を接合した後に、パワー半導体チップ1と、リードフレーム6とを上部板はんだ11で積層する。同様に、金属端子5と、リードフレーム6とを上部板はんだ11で積層する。上部板はんだ11は、下部板はんだ10と同様の形状を有している。ただし、パワー半導体チップ1は、種類によって高さが異なり、パワー半導体チップ1とリードフレーム6も高さが異なる場合がある。このため、上部板はんだ11では、複数の接合用はんだ部13は、少なくとも2つの接合用はんだ部13で、それぞれ積層基板2からの高さが異なり、接合用はんだ部13の表面は、それぞれ同一平面上にない形状となっている。例えば、
図8に示すように、上部板はんだ11では、接合用はんだ部13の表面13aと接合用はんだ部13の表面13bは、それぞれ同一平面上にない形状となっている。
【0042】
次に、
図9に示すように、パワー半導体チップ1および金属端子5と、リードフレーム6と、上部板はんだ11との積層体を加熱して(上部はんだ接合工程)、上部板はんだ11を溶融し、パワー半導体チップ1および金属端子5と、リードフレーム6とを電気的に接続する。
図10は、実施の形態1にかかる上部板はんだを絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。
図10に示すように、上部板はんだ11の連結部12は加熱過程で溶融・切断し、切断された箇所よりも片側の接合部材の電極面に凝集されるため、接合後に上部板はんだ11の連結部12は無くなる。このように、上部板はんだ11は、
図10に記載の複数の上部はんだ9bとなる。この際、上部板はんだ11の連結部12が溶融・切断されていることを目視等で確認することが好ましい。以上のようにして、スイッチング回路を形成したパワー半導体回路部材が組み立てられる。なお、リードフレーム6の上面は、同一平面上になくてもよい。
【0043】
ここでは、下部板はんだ10の加熱と上部板はんだ11の加熱は、別々の工程で行われているが、同じ工程で行うことも可能である。また、それぞれ接合工程の加熱では、下部板はんだ10および上部板はんだ11の連結部12を溶融・切断するため、接合用はんだ部13のはんだの融点より高い温度で行う必要がある。例えば、接合時の加熱温度は、はんだの融点より40℃~80℃程度高い温度で行う。融点より30℃未満だと溶融が均一に行われず、80℃以上にすると、切断が良好に行われない。より好ましくは、40℃以上60℃以下である。この範囲において、切断、凝集がより良好に行われる。板はんだを用いてはんだ接合する場合は、はんだや非接続部材表面の酸化膜を還元できる水素(H2)、またはギ酸(CH2O2)雰囲気にて加熱し、接合する。スズ系のはんだの場合融点は、200~250℃であるため、300℃~330℃程度の温度で行う。なぜならば、水素ガス等の還元力が300℃付近から高くなる。一方で温度が高すぎるとパワー半導体チップの特性が低下するおそれがあるためである。なお、接合部用はんだ部13と連結部12は同じ材料で、一体であることが好ましい。接合用はんだ部13が連結部12により連結されている板はんだの形状にする方法として、板状のはんだ材をプレス加工等によって加工することができるからである。しかし、接合用はんだ部13と連結部12とが異なる材料である場合は、連結部12の融点が接合用はんだ部13より低いことが好ましい。融点が接合用はんだ部13より低いと、連結部12の溶融・切断が容易に起こるからである。
【0044】
次に、樹脂成形用のモールド金型内に、パワー半導体回路部材をセットし、エポキシなどの硬質樹脂からなる封止樹脂7を充填する。封止樹脂7の成形は、トランスファー成形、射出成形でもよい。これにより、
図1に示す実施の形態1にかかるパワー半導体モジュールが完成する。
【0045】
ここで、板はんだの形状を詳細に説明する。
図11~
図15は、実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す上面図である。これらは、下部板はんだ10、上部板はんだ11の実施例である。なお、上部板はんだ11と下部板はんだ10の両方を示すとき、板はんだと称する。
【0046】
図11に示すように、板はんだの連結部12は、板はんだの接合用はんだ部13の表側の連結部12の面に、切断部14を有する。切断部14は、連結部表面から見て連結部12の中で連結部12の幅が狭い部分である。溝状の矩形でもよいが、幅が狭くなる部分と最も狭い部分とを有してもよい。切断部14の幅は、0.1mm以上が好ましい。幅0.1mm未満になると下部板はんだ10を搭載する前に切断される場合があるため、0.1mm以上が好ましい。この狭くなった切断部14において、溶融・切断されやすくなる。
【0047】
切断部14は、例えば、
図11のようなノッチ状(切り欠け溝)である。この切り欠き溝は、テーパー状でもラウンド状でもよい。
図11は、切断部14以外では、幅が同程度で、凡そ平行なのストレート型がある。例えば四角柱の形状をしている。連結部12の幅が最も広い部分、
図11では、連結部12と接合用はんだ部13が接する部分(連結部根本)の幅をW1とする。幅W1に対する切断部14の幅W2の比は0.3以上0.6以下であることが好ましい。つまり、0.3≦W2/W1≦0.6である。この範囲にすることにより、前記加熱温度の範囲において、板はんだが溶解するときに切断部14が切断されやすく凝集もしやすい。この範囲より大きいと切断部で切断されなかったり、また、小さいとハンドリング時に切断してしまったりする。
【0048】
また、切断部14は、連結部12のように、中央付近、つまり、接合用はんだ部13と一方の接合用はんだ部13の間の中央付近に設けられることが好ましい。接合用はんだ部13に近い位置にあると連結部12の中央部分が、溶融されず、残渣(凝集部)が残る場合がある。この残渣により、絶縁距離を保てなくなり、回路がショートする危険性がある。
【0049】
また、
図12、
図13示すように、連結部12は、幅が狭くなる切断部14を有し、切断部14に向かって連結部12の幅が徐々に狭くなる形状であってもかまわない。
図12のようにテーパー状に中央部が狭くなった(絞った)タイプでもよいし、
図13のように、ラウンド状に中央部が狭くなったタイプでもよい。
図12のようにテーパー状に中央部が狭くなった(絞った)タイプや
図13のようにラウンド状の場合は、最も幅の狭い箇所が切断部14となる。このような形状にすることで、板はんだが溶融するときに切断しやすくなり、凝集するときに、凝集がしやすくなる。さらに、テーパー状、ラウンド状に中央部が狭くなった形状でも、切断部14に、さらに、切り欠け溝(ノッチ)17を設けてもよい。切り欠け溝(ノッチ)17のもっとも狭い箇所の幅をW3とすると、切断部14の幅W2に対するW3の比(W3/W2)は0.6以上0.8以下であることが好ましい。
【0050】
また、
図14、
図15に示すように、板はんだの接合用はんだ部13の大きさが異なることがある。例えば、接合するパワー半導体チップ1の大きさが異なるため、接合用はんだ部13の大きさが異なることがある。この場合、
図14のように、ラウンド状に一端がが狭くなったタイプでもよい。
【0051】
また、
図15のように、ストレート型で、切断部14を有するタイプでもよい。この場合、
図15に示すように、切断部14の位置が、体積の大きい方の接合用はんだ部13に近いことが好ましい。大きな体積の接合用はんだ部13から切断部14までの距離をL1とし、小さな体積の接合用はんだ部13から切断部14までの距離をL2とすると、L1<L2が好ましい。これは、板はんだを加熱していくと、小さい体積の接合用はんだ部13は早く加温され、溶解するが、大きな体積の接合用はんだ部13は熱容量が大きいため、まだ溶解しない段階になる。切断部14を連結部12の中央にすると、大きな体積の接合用はんだ部13が溶解しないうちに、切断部14が溶けてしまい、小さい体積の接合用はんだ部13上のパワー半導体チップ1が動いてしまう。
【0052】
このため、
図15のように、大きな体積の接合用はんだ部13側に切断部14を配置すると大きな体積の接合用はんだ部13が溶解するのとほぼ同じに切断部14が切断されるので、適切な位置で板はんだが凝集し、固定され、パワー半導体チップ1が移動することがなくなる。
【0053】
また、切断部14の位置は、接合用はんだ部13の体積比率に応じて決められることが好ましい。例えば、大きな体積の接合用はんだ部13の体積をV1とし、小さな体積の接合用はんだ部13の体積をV2とする。この場合、L1/L2=V2/V1が成り立つようにすることが好ましい。
【0054】
図16、
図17は、実施の形態1にかかる板はんだの連結部を示す側面図である。
図16、
図17に示すように、連結部12は、接合用はんだ部の側面側の面にも、幅(厚さ)が狭い第2切断部15を設けることができる。また、第2切断部15は、切断部14と同じ位置に設けることができる。また、
図17に示すように、連結部12の厚さは、接合用はんだ部13の厚さより薄くすることができる。連結部根本の厚さをD1とし、切断部14の最も薄い厚さをD2とすると、この場合も、上面図における切断部14の幅W2に対するW3の比(W3/W2)と同様に、D2/D1は0.6以上0.8以下であることが好ましい。
【0055】
また、はんだを、実施の形態1の連結部12を有する板はんだの形状にする方法として、金型を用いたプレス加工、または、レーザ加工、ワイヤ放電加工等、エッチングなどの加工方法がある。加熱を要する加工は、加工面が酸化しやすいため、冷間加工が可能なプレス加工が好ましい。
【0056】
以上、説明したように、実施の形態1にかかる板はんだによれば、接合用はんだ部が連結部で連結されているため、少ない工数で、パワー半導体チップ等の被接合部材に搭載可能となる。また、連結部は、板はんだの接合用はんだ部の表面側の面に、連結部の中で連結部の幅が狭い切断部を有する。これにより、板はんだが溶解するときに切断部で切断されやすくなり、パワー半導体チップ等の被接合部材が動くことを防止できる。
【0057】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかるパワー半導体モジュールの構造について説明する。
図18は、実施の形態2にかかるパワー半導体モジュールの構成を示す断面図である。実施の形態2にかかるパワー半導体モジュールが実施の形態1にかかるパワー半導体モジュールと異なる点は、リードフレームの代わりに配線基板8や導通ポスト16を用いていることである。
【0058】
配線基板8は、パワー半導体チップ1の電極を金属端子5に接続する基板であり、絶縁基板およびこの表面に形成された配線パターンを有する回路層(いずれも不図示)を有する。また、導通ポスト16は、パワー半導体チップ1および金属端子5と配線基板8との間に設けられて、それらの間で通電するための導電部材であり、一例として銅、アルミニウム等の導電性金属を用いて円柱状に成形されている。なお、導通ポスト16は、その下端をはんだ等の接合材(上部板はんだ9bに対応)によりパワー半導体チップ1および金属端子5に接続することでそれらの上に立設され、上端をはんだ、ロウ付け、又はカシメにより配線基板8上の配線パターンに接続される。
【0059】
図19は、実施の形態2にかかる上部板はんだを示す上面図である。
図20は、実施の形態2にかかる上部板はんだを示す側面図である。なお、下部板はんだ10は、実施の形態1と同様であるため、図示、説明を省略する。
図19、
図20に示すように実施の形態2にかかる上部板はんだ11は、導通ポスト16を立設するため、接合用はんだ部13の形状は、板はんだの接合用はんだ部13の表面13a側の面に、四角形状S1と円形状S2、S3を有している。
図19の上部板はんだ9bは、例えば、
図18のように四角形状S1および円形状S2上に導通ポスト16が立設され、円形状S2上に金属端子5が立設される。
【0060】
実施の形態2のパワー半導体モジュールは、以下のようにして製造される。製造方法では、まず、実施の形態1と同様に、積層基板に設けられた導電性板3のおもて面にパワー半導体チップ1を実装し、パワー半導体チップ1と、導電性板3とを下部板はんだ10で積層する。同様に、金属端子5と、導電性板3とを下部板はんだ10で積層する。次に、パワー半導体チップ1および金属端子5と、導電性板3と、下部板はんだ10との積層体を加熱して、下部板はんだ10を溶融し、パワー半導体チップ1および金属端子5と、導電性板3とを電気的に接続する。
【0061】
次に、
図21に示すように、パワー半導体チップ1と、配線基板8に設けられた導通ポスト16とを上部板はんだ11で積層する。
図21は、実施の形態2にかかる上部板はんだを絶縁基板に搭載した構成を示す側面図である。同様に、金属端子5と、配線基板8に設けられた導通ポスト16とを上部板はんだ11で積層する。
【0062】
次に、
図22に示すように、パワー半導体チップ1および金属端子5と、配線基板8に設けられた導通ポスト16と、上部板はんだ11との積層体を加熱して、上部板はんだ11を溶融し、配線基板8と導通ポスト16とを介して、パワー半導体チップ1および金属端子5とを電気的に接続する。
図22は、実施の形態2にかかる上部板はんだを絶縁基板に接合した構成を示す側面図である。この後、実施の形態1と同様に、封止樹脂7を充填することにより、
図18に示す実施の形態2にかかるパワー半導体モジュールが完成する。
【0063】
実施の形態2において、板はんだの連結部12は、実施の形態1の板はんだの連結部12と同様の形状を有する。また、実施の形態2の板はんだの形状は、実施の形態1と同様の方法により形成することができる。
【0064】
以上、説明したように、実施の形態2にかかる板はんだによれば、実施の形態1にかかる板はんだと同様の効果を有する。また、配線基板を用いていることより、半導体チップの上面と金属端子とを電気的に接続する工数を削減できる。
【0065】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明の板はんだで接合する部材は、パワー半導体チップ、導電性板、放熱板、金属端子、ブロック等の半導体装置の関わる部材全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかる板はんだおよび半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のパワーコントロールユニットなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1、101 パワー半導体チップ
2、102 絶縁基板
3、103 導電性板
4、104 放熱板
5、105 金属端子
6 リードフレーム
7 封止樹脂
8 配線基板
9、109 はんだ
9a 下部はんだ
9b 上部はんだ
10 下部板はんだ
11 上部板はんだ
12 連結部
13 接合用はんだ部
13a、13b 接合用はんだ部の表面
14 切断部
15 第2切断部
16 導通ポスト
17 切り欠け溝
110 放熱ベース
111 ワイヤ