(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電池式燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/26 20060101AFI20221129BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20221129BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F23N5/26 101H
F23K5/00 301D
F23N5/24 101A
(21)【出願番号】P 2018220488
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】苔口 和也
(72)【発明者】
【氏名】森部 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】大西 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】本下 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】亀山 弘貴
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300452(JP,A)
【文献】特開2015-048966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24 - 5/26
F23K 5/00
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
報知部と、
電池が装着される電池装着部と、
ガス流量を調節するための流量調節弁と、
前記流量調節弁を駆動するステッピングモータと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電池装着部に装着されている電池の電圧が所定の閾値以下であるときに、前記ステッピングモータの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合、前記報知部により、電池電圧の低下に基づく報知を行
い、
前記電池装着部に装着されている電池の電圧が、他の閾値以下であるときに、前記報知部により、電池の交換を促す報知を行い、
前記所定の閾値は、前記他の閾値よりも高く設定されている、
ことを特徴とする電池式燃焼装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の電池式燃焼装置において、
前記制御部は、前記電池装着部に装着されている電池の電圧が前記所定の閾値を超えるときに、前記ステッピングモータの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合、前記ステッピングモータに故障が生じたと判定する、
ことを特徴とする電池式燃焼装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の電池式燃焼装置において、
前記制御部は、前記ステッピングモータに故障が生じたと判定したことに基づいて、前記報知部により、前記故障を報知する、
ことを特徴とする電池式燃焼装置。
【請求項4】
請求項
1ないし3の何れか一項に記載の電池式燃焼装置において、
前記電池式燃
焼装置は、ガスコンロである、
ことを特徴とする電池式燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を電源として用いる電池式燃焼装置に関し、たとえば、電池式のガスコンロに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池を電源として燃焼制御を行う電池式燃焼装置が知られている。たとえば、以下の特許文献1には、電池を電源として用いたガスコンロが記載されている。このガスコンロでは、ガス流量を調節するための流量調節弁が、ステッピングモータによって駆動される。燃焼動作時に流量調節弁が駆動されると、ステッピングモータの回転位置が、目標のガス流量に対応する回転位置からずれているか否かが判別される。ステッピングモータの回転位置が目標の回転位置からずれていると、ステッピングモータを目標の回転位置へと回転させる制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の電池式燃焼装置では、燃焼動作を適切に行うために、ステッピングモータにおける故障の有無が継続的に監視される。ステッピングモータに故障が生じた場合、燃焼動作が停止され、ステッピングモータに故障が生じたことの報知が行われる。これに応じて、メンテナンスマンにより、ステッピングモータの検査が行われ、適宜、ステッピングモータの交換等の対応がとられる。
【0005】
ステッピングモータの故障は、ステッピングモータの駆動状態に基づいて判定され得る。すなわち、ステッピングモータに故障が生じた場合、ステッピングモータは、駆動パルスが供給されても、円滑に動作しない。このため、故障が生じたステッピングモータは、目標の回転位置に応じた駆動パルスが供給されても、目標の回転位置まで回転しない。したがって、ステッピングモータの故障は、たとえば、回転動作時に、ステッピングモータの回転位置が目標の回転位置から大きくずれているか否かによって判別され得る。
【0006】
しかし、その一方で、ステッピングモータの動作は、ステッピングモータに供給される電圧の低下に伴い、不安定となり得る。上記のように、電池が電源として用いられる場合、電池の消耗に伴い、ステッピングモータに供給される電圧が低下する。このため、上記のように、ステッピングモータの回転位置のみによってステッピングモータの故障が判定されると、電池電圧が低下した場合に、誤判定が生じ得る。このような誤判定が生じると、燃焼装置の使用が無駄に制限され続けることとなり、また、無駄なメンテナンス作業がなされることとなってしまう。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、ステッピングモータの故障に適切に対応することが可能な電池式燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る電池式燃焼装置は、報知部と、電池が装着される電池装着部と、ガス流量を調節するための流量調節弁と、前記流量調節弁を駆動するステッピングモータと、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記電池装着部に装着されている電池の電圧が所定の閾値以下であるときに、前記ステッピングモータの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合、前記報知部により、電池電圧の低下に基づく報知を行い、前記電池装着部に装着されている電池の電圧が、他の閾値以下であるときに、前記報知部により、電池の交換を促す報知を行う。前記所定の閾値は、前記他の閾値よりも高く設定されている。
【0009】
上記の構成によれば、ステッピングモータにおける回転位置の位置ずれが、ステッピングモータの故障ではなく、電池電圧の低下により生じた可能性がある場合に、電池電圧の低下に基づく報知が行われる。このため、位置ずれの原因が電池電圧の低下にある場合は、この報知に基づき使用者が電池を交換することにより、ステッピングモータの動作が復旧し得る。よって、燃焼装置の使用が無駄に制限され続けることや、無駄なメンテナンス作業がなされることを、未然に、防ぐことができる。また、電池電圧が、電池の交換を促すための通常の報知制御では検出されない程度の電圧に低下したことにより、ステッピングモータの動作が不安定となったような場合にも、電池電圧の低下に基づく報知が行われ、電池交換の対応がなされ得る。よって、燃焼装置の使用が無駄に制限され続けることや、無駄なメンテナンス作業がなされることを、より確実に、防ぐことができる。
【0012】
本態様に係る電池式燃焼装置において、前記制御部は、前記電池装着部に装着されている電池の電圧が前記所定の閾値を超えるときに、前記ステッピングモータの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合、前記ステッピングモータに故障が生じたと判定するよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、電池電圧が、ステッピングモータの動作が不安定になりにくい電圧にある状態において、ステッピングモータにおける回転位置の位置ずれによってステッピングモータの故障が判定される。よって、ステッピングモータの故障を適切に判定することができる。
【0014】
この場合、前記制御部は、前記ステッピングモータに故障が生じたと判定したことに基づいて、前記報知部により、前記故障を報知するよう構成され得る。
【0015】
このようにステッピングモータの故障が報知されることにより、使用者は、故障に円滑に対応することができる。
【0018】
上記態様に係る電池式燃焼装置は、たとえば、ガスコンロである。
【0019】
この構成によれば、上記態様に基づく効果により、ガスコンロの利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、ステッピングモータの故障に適切に対応することが可能な電池式燃焼装置を提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るガスコンロの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るガスコンロの燃焼系の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るガスコンロの回路ブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る、ステッピングモータの監視制御を示すフローチャートである。
図4(b)は、実施形態に係る、監視制御において参照されるテーブルの構成を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る、モータエラー処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図5(b)は、実施形態に係る、電池交換を促す報知を行う報知制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の燃焼装置の一実施形態であるガスコンロ1について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る、ガスコンロ1の構成を示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、ガスコンロ1は、コンロ本体2と、コンロ本体2の上部に設置された天板3とを備える。天板3には、3つのコンロ部4a、4b、4cが配置されている。コンロ部4a、4b、4cは、それぞれ、ガスを燃料として燃焼するガスバーナと、鍋等を設置するためのごとくを備える。また、天板3の後部には、左右に並ぶように2つの排気口5が設けられる。
【0026】
コンロ本体2の内部には、中央部にグリル部6が設けられる。グリル部6には、上下にグリルバーナ(図示せず)が設けられ、グリルバーナの燃焼によりグリル調理が行われる。グリル部6から排気口5を通じて排気が行われる。
【0027】
コンロ本体2の正面には、中央部にグリル扉7が設けられる。グリル扉7の裏側にグリル皿(図示せず)が一体的に設けられ、グリル扉7を前方に移動させることで、グリル皿をグリル部6から外部へ引き出すことができる。また、コンロ本体2の正面には、グリル扉7の右側および左側に、それぞれ、コンロ部4a、4b、4c用の操作部8と、グリル部6用の操作部9とが設けられている。
【0028】
操作部8は、3つのコンロ部4a、4b、4cに対応する3つの点火ボタン10a、10b、10cと、カンガルーポケット型の操作パネル11と、を含む。点火ボタン10a、10b、10cは、それぞれに対応するコンロ部4a、4b、4cに点火するとき、および、点火しているコンロ部4a、4b、4cを消火するときに操作される。また、点火ボタン10a、10b、10cを回転させることにより、コンロ部4a、4b、4cのガスバーナに供給されるガスの流量が調節される。
【0029】
操作パネル11には、コンロ部4a、4b、4cに関する所定の設定を入力するための操作キー群11aと、当該操作キー群に対する操作に応じた情報や、コンロ部4a、4b、4cの点火/消灯状態等を表示するための表示部11bが設けられる。表示部11bは、光源に白色LEDを用いた7セグ表示器を備える。7セグ表示器により、たとえば、コンロ部4a、4b、4cに設定されたタイマー時間や、エラーコード等が表示される。この他、操作パネル11には、ガスコンロ1の電源である電池の交換を促すためのランプ11cが設けられている。
【0030】
操作部9は、点火ボタン12と、カンガルーポケット型の操作パネル13と、を含む。点火ボタン12は、グリル部6のグリルバーナに点火するとき、および、点火しているグリルバーナを消火するときに操作される。また、点火ボタン12を回転させることにより、グリル部6のグリルバーナに供給されるガスの流量が調節される。
【0031】
操作パネル13には、グリル部6に関する所定の設定を入力するための操作キー群13aと、当該操作キー群に対する操作に応じた情報や、グリル部6の点火/消灯状態等を表示するための表示部13bが設けられる。表示部13bは、光源に白色LED(Light Emitting Diode)を用いた7セグ表示器を備える。7セグ表示器により、たとえば、グリル部6に設定されたタイマー時間や、エラーコード等が表示される。
【0032】
操作パネル11、13は、下端を軸として前後に回動可能となっている。操作パネル11、13は、
図1に示した第1の状態において、上面の操作キー群および表示部が外部に開放され、これら操作キー群に対する操作入力を受け付けることができる。
【0033】
図1に示した第1の状態から操作パネル11、13が後方に押し込まれると、操作パネル11、13は、前面がコンロ本体2の前面と面一となる第2の状態にロックされる。この第2の状態において、操作パネル11、13上面の操作キー群および表示部は、コンロ本体2内に収納されて外部から遮蔽されるため、操作パネル11、13は、これら操作キー群に対する操作入力を受け付けることができない。操作パネル11、13は、第2の状態において前面が押されることによりロックが解除され、バネ等の弾性力によって前方に回動し、
図1に示す第1の状態に復帰する。
【0034】
コンロ本体2の正面右端には、ガスコンロ1を起動するための電源スイッチ14が設けられている。
【0035】
図2は、ガスコンロ1の燃焼系の構成を示す図である。
【0036】
ガスコンロ1は、燃焼系の構成として、ガスバーナ101~103と、グリルバーナ104、105を備える。
【0037】
ガスバーナ101~103は、それぞれ、コンロ部4a~4cに設置される。グリルバーナ104、105は、グリル部6に設置される。グリルバーナ104は下側のバーナであり、グリルバーナ105は上側のバーナである。
【0038】
ガスバーナ101~103に着火を行うための点火器111~113と、グリルバーナ104、105に着火を行うための点火器114、115が設けられている。また、ガスバーナ101~103が着火したことを検出するための熱電対121~123と、グリルバーナ104、105が着火したことを検出するための熱電対124、125が設けられている。
【0039】
ガスバーナ101~103およびグリルバーナ104、105には、配管130~134を介して、燃料ガス(以下、単に「ガス」という)が供給される。配管130から、4つの配管131~134が分岐し、さらに配管134から2つの配管134a、134bが分岐している。配管131~133が、それぞれ、ガスバーナ101~103に接続され、配管134a、134bが、それぞれ、グリルバーナ104、105に接続されている。
【0040】
配管130には、ガスの導通および遮断を制御するための元ガス電磁弁140が設けられている。また、配管131~134には、それぞれ、ガスの導通および遮断を制御するための安全弁141~144が設けられている。さらに、配管131~134には、それぞれ、ガスの流量を制御するための流量調節弁(以下、「流調弁」という)151~154が設けられている。流調弁151~154は、ステッピングモータ151a~154aによって駆動され、開放量が制御される。この他、配管134bには、ガスの流通を遮断するための閉止電磁弁161が設けられている。
【0041】
元ガス電磁弁140と、安全弁141~144および閉止電磁弁161が開放されることにより、ガスバーナ101~103とグリルバーナ104、105にガスが供給される。ステッピングモータ151a~154aにより流調弁151~154の開放量が調節されることにより、ガスバーナ101~103とグリルバーナ104、105に供給されるガスの量が調節される。グリル部6において、下側のグリルバーナ104のみが用いられる場合、閉止電磁弁161が閉じられる。こうして、コンロ部4a~4cおよびグリル部6において、燃焼動作が行われる。
【0042】
図3は、本実施の形態に係る、ガスコンロ1の回路ブロック図である。
【0043】
ガスコンロ1は、
図1に示した電源スイッチ14の他、電池装着部20と、定電圧回路201と、制御部202とを備えている。電池装着部20には、たとえば、2つの乾電池が装着される。装着された電池20aの電力を、電源スイッチ14を介して各部に供給する。定電圧回路201は、電池20aから供給される電圧V0をもとに一定電圧V1を生成する。定電圧回路201は、たとえば、DC-DCコンバータにより構成される。定電圧回路201がレギュレータにより構成されてもよい。たとえば、定電圧回路201により、3Vの一定電圧V1が生成される。
【0044】
制御部202は、たとえば、マイクロコンピュータにより構成される。制御部202は、内蔵メモリに格納されたプログラムに従って各部を制御する。また、制御部202は、電池20aから供給される電圧V0と定電圧回路201から供給される電圧V1とを比較して、電池20aの電圧を検出する。制御部202は、定電圧回路201により生成される電圧V1によって駆動される。
【0045】
さらに、ガスコンロ1は、点火回路203と、元ガス弁回路204と、閉止弁回路205と、安全弁回路206と、流調弁回路207と、熱電対回路208とを備えている。点火回路203、元ガス弁回路204、閉止弁回路205および安全弁回路206は、それぞれ、制御部202からの制御に応じて、点火器111~114、元ガス電磁弁140、閉止電磁弁161および安全弁141を駆動する。
【0046】
流調弁回路207は、制御部202からの制御に応じて、ステッピングモータ151aを駆動し、流調弁回路207の開放量を変化させる。また、流調弁回路207は、ステッピングモータ151aから回転位置に関する信号を受信し、受信した回転位置に関する信号を処理して、制御部202に送信する。ステッピングモータ151aは、自身の回転位置を検出する構成を備えている。熱電対回路208は、熱電対121の検出値を取得して、制御部202に送信する。
【0047】
なお、安全弁回路206、流調弁回路207および熱電対回路208からなる回路ユニット220は、コンロ部4a~4cおよびグリル部6ごとに設けられている。便宜上、
図3には、コンロ部4aの回路ユニット220のみが図示されている。
【0048】
さらに、ガスコンロ1は、表示回路209と、発光回路210と、発音回路211とを備えている。表示回路209は、制御部202からの制御に応じて、表示器301を駆動する。表示器301は、
図1に示した表示部11b、13bに情報を表示させるためのものである。発光回路210は、制御部202からの制御に応じて、発光器302を駆動する。発光器302は、
図1に示したランプ11cの発光源である。発音回路211は、制御部202からの制御に応じて、発音器303を駆動する。発音器303は、
図1に示したコンロ本体2の内部に設置されている。
【0049】
表示器301、発光器302および発音器303は、所定の情報を報知するための報知部300を構成する。
【0050】
この他、ガスコンロ1は、
図1に示した操作キー群11aに対する操作を検出して検出結果を制御部202に送信する回路や、各種センサの検出結果を処理して制御部202に供給する回路を備えている。制御部202以外の各回路部および電子部品には、電池20aから電圧V0が供給される。
【0051】
燃焼動作時には、元ガス弁回路204により元ガス電磁弁140が開放され、さらに、安全弁回路206によって、燃焼対象のバーナに対応する安全弁141が開放される。燃焼対象のバーナにグリルバーナ105が含まれる場合、閉止弁回路205により閉止電磁弁161が開放される。次いで、点火回路203により点火器111~114が駆動され、燃焼対象のバーナに着火が行われる。熱電対回路208により燃焼対象のバーナの着火が検出されると、点火動作が終了される。さらに、点火ボタン10a~10c、12の回動量に対応するガス量となるように、流調弁回路207によって、燃焼対象のバーナに対応するステッピングモータ151a~154aが駆動され、ガス量が調節される。こうして、燃焼対象のバーナにおいて、使用者が所望するガス量(燃焼レベル)で燃焼動作が行われる。
【0052】
ところで、上記構成のガスコンロ1では、燃焼動作を適切に行うために、ステッピングモータ151a~154aにおける故障の有無が継続的に監視される。ステッピングモータ151a~154aに故障が生じた場合、燃焼動作が停止され、ステッピングモータ151a~154aに故障が生じたことの報知が行われる。これに応じて、メンテナンスマンにより、ステッピングモータの検査が行われ、適宜、ステッピングモータの交換等の対応がとられる。
【0053】
しかしながら、ステッピングモータ151a~154aの故障に誤判定が生じると、ガスコンロ1の使用が無駄に制限され続けることとなり、また、無駄なメンテナンス作業がなされることとなってしまう。
【0054】
そこで、本実施形態では、ステッピングモータ151a~154aの故障に、より適切に対応することが可能な制御が行われる。以下、この制御について説明する。
【0055】
図4(a)は、ステッピングモータ151a~154aの監視制御を示すフローチャートである。
図4(b)は、監視制御において参照されるテーブルの構成を示す図である。
【0056】
図4(a)の監視制御は、ステッピングモータ151a~154aごと、すなわち、流調弁151~154ごとに行われる。以下では、便宜上、ステッピングモータ151a(流調弁151)に対して行われる監視制御について説明する。
【0057】
制御部202は、点火ボタン10aの操作に応じて流調弁151が動作した場合に(S11:YES)、ステッピングモータ151aの回転位置が目標の回転位置から所定の許容範囲を超えてずれているか否かを判定する(S12)。
【0058】
具体的には、制御部202は、点火ボタン10aの操作に応じたガス流量となるようにステッピングモータ151aのステップ数を設定し、設定したステップ数だけ、流調弁回路207によってステッピングモータ151aを駆動させる。そして、制御部202は、駆動後のステッピングモータ151aの回転位置を流調弁回路207から取得し、取得した回転位置が、上記ステップ数に応じた目標回転位置から所定の許容範囲を超えてずれているかを判定する。
【0059】
ここで、制御部202は、
図4(b)に示すように、予め、目標ガス流量と、当該目標ガス流量を得るためのステッピングモータ151aの駆動ステップ数と、当該駆動ステップ数で適正にステッピングモータ151aが駆動された場合のステッピングモータ151aの回転位置(目標回転位置)とを対応付けたテーブルを保持している。
【0060】
制御部202は、点火ボタン10aが操作された場合に、当該操作に応じた目標ガス流量Fkに対応する駆動ステップ数Skを、
図4(b)のテーブルから取得し、取得した駆動ステップ数Skだけステッピングモータ151aを駆動させる。そして、制御部202は、
図4(a)のステップS12において、このテーブルから駆動ステップ数Skでステッピングモータ151aを駆動した場合の目標回転位置Dkを取得し、取得した目標回転位置Dkと、流調弁回路207から取得した駆動後のステッピングモータ151aの回転位置とを比較して、ステッピングモータ151aの位置ずれを判定する。
【0061】
流調弁回路207から取得した回転位置と目標回転位置Dkとの間のずれが所定の許容範囲内にある場合(S12:NO)、制御部202は、処理を終了する。他方、流調弁回路207から取得した回転位置と目標回転位置Dkとの間のずれが所定の許容範囲を超える場合(S12:YES)、制御部202は、定電圧回路201から入力される電圧V1と、電池2aから入力される電池電圧V0とを比較して、電池電圧V0を検出し、検出した電池電圧V0が閾値Vth1より高いか否かを判定する(S13)。
【0062】
ここで、閾値Vth1は、ステッピングモータ151aが安定に動作すると想定される電圧の下限値に設定される。この閾値Vth1は、追って説明する電池電圧V0の低下を検知して報知するための報知制御(
図5(b)参照)において設定される閾値Vth2よりも高く設定される。
【0063】
電池電圧V0が閾値Vth1よりも高い場合(S13:YES)、制御部202は、ステッピングモータ151aに故障が生じているとして、ステッピングモータ151aの故障に基づく処理(モータエラー処理)を実行する(S14)。他方、電池電圧が閾値Vth1以下の場合(S13:NO)、制御部202は、ステッピングモータ151aの回転位置のずれが電池電圧の低下(電池の消耗)により生じている可能性があるとして、電池電圧V0の低下に基づく報知を実行する(S15)。
【0064】
ステップS15において、制御部202は、たとえば、発光器302を発光させて、電池交換を促すランプ11cを点灯させる。あるいは、制御部202は、電池電圧V0が低下していることを示すエラーコードを表示器301に表示させてもよく、また、発音器303により、電池電圧V0が低下していることを示す報知音を出力させてもよい。
【0065】
また、ステップS14において、制御部202は、
図5(a)に示すサブルーチンを実行し、安全弁回路206により安全弁141を閉じさせ(S21)、同時に、ステッピングモータ151aに故障が生じたこと報知する(S22)。ステップS22において、制御部202は、たとえば、ステッピングモータ151aに故障が生じたことを示すエラーコードを表示器301に表示させる。このとき同時に、制御部202は、発音器303により、ステッピングモータ151aが故障していることを示す報知音を出力させてもよい。
【0066】
さらに、制御部202は、ステップS21の処理によって安全弁141~144が全て閉塞されたか否かを判定する(S23)。安全弁141~144が全て閉塞された場合(S23:YES)、制御部202は、元ガス弁回路204により、元ガス電磁弁140を閉じさせる(S24)。
【0067】
こうして、
図4(a)のステップS14またはステップS15の処理が行われることにより、処理が終了する。
【0068】
ステップS14の処理が行われた場合、メンテナンスマンによるステッピングモータ151aの検査が行われ、適宜、ステッピングモータ151aが交換される。これにより、ステッピングモータ151aの故障が解消される。また、ステップS15の処理が行われた場合、使用者により、電池20aが交換される。ステップS12で検出された位置ずれの原因が電池の消耗にある場合、この電池交換によって、ステッピングモータ151aの動作が回復する。
【0069】
その後、制御部202は、処理をステップS11に戻して、再び、ステッピングモータ151aの監視制御を実行する。この制御は、ステッピングモータ152a~154aに対しても同様に行われる。
【0070】
図4(a)の監視処理と並行して、制御部202は、電池20aが消耗して電池電圧が低下したことを検知して電池20aの交換を促すための制御を実行する。
【0071】
図5(b)は、電池交換を促す報知を行う報知制御を示すフローチャートである。
【0072】
制御部202は、定電圧回路201から入力される電圧V1と、電池2aから入力される電池電圧V0とを比較して、電池電圧V0を検出し、検出した電池電圧V0が閾値Vth2以下であるか否かを判定する(S31)。ここで、閾値Vth2は、上述の閾値Vth1よりも低く設定される。
【0073】
電池電圧V0が閾値Vth2以下である場合(S31:YES)、制御部202は、電池交換を促す報知を行う(S32)。具体的には、制御部202は、発光器302を発光させて、電池交換を促すランプ11cを点灯させる。このとき同時に、制御部202は、電池電圧V0が低下していることを示すエラーコードを表示器301に表示させてもよく、また、発音器303により、電池電圧V0が低下していることを示す報知音を出力させてもよい。この報知により、使用者は、電池装着部20に装着されている電池20aが新たな電池に交換する。
【0074】
<実施の形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0075】
図4(a)に示したように、制御部202は、電池装着部20に装着されている電池の電圧V0が閾値Vth1以下であるときに(S13:NO)、ステッピングモータ151a~154aの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合(S12:YES)、報知部300により、電池電圧V0の低下に基づく報知を行う(S15)。これにより、ステッピングモータ151a~154aにおける回転位置の位置ずれが、ステッピングモータ151a~154aの故障ではなく、電池電圧V0の低下により生じた可能性がある場合に、電池電圧V0の低下に基づく報知が行われる。このため、位置ずれの原因が電池電圧V0の低下にある場合は、この報知に基づき使用者が電池20aを交換することにより、ステッピングモータ151a~154aの動作が復旧し得る。よって、ガスコンロ1の使用が無駄に制限され続けることや、無駄なメンテナンス作業がなされることを、未然に、防ぐことができる。
【0076】
図5(b)に示したように、制御部202は、電池装着部20に装着されている電池20aの電圧V0が、閾値Vth2以下であるときに(S31:YES)、報知部300により、電池の交換を促す報知を行う(S32)。ここで、
図4(a)の監視制御において用いられる閾値Vth1は、
図5(b)の報知制御における閾値Vth2よりも高く設定される。これにより、電池電圧V0が、電池20aの交換を促すための通常の報知制御では検出されない程度の電圧に低下したことにより、ステッピングモータ151a~154aの動作が不安定となったような場合にも、電池電圧V0の低下に基づく報知が行われ、電池交換の対応がなされ得る。よって、ガスコンロ1の使用が無駄に制限され続けることや、無駄なメンテナンス作業がなされることを、より確実に、防ぐことができる。
【0077】
図4(a)に示したように、制御部202は、電池装着部20に装着されている電池20aの電圧V0が閾値Vth1を超えるときに(S13:YES)、ステッピングモータ151a~154aの回転位置と目標回転位置との間に所定の位置ずれが生じたことを検出した場合(S12:YES)、ステッピングモータ151a~154aに故障が生じたと判定してモータエラー処理を実行する(S14)。このように、電池電圧V0が、ステッピングモータ151a~154aの動作が不安定になりにくい電圧にある状態において、ステッピングモータにおける回転位置の位置ずれによってステッピングモータの故障が判定される。よって、ステッピングモータの故障を適切に判定することができる。
【0078】
図5(a)に示したように、制御部202は、ステッピングモータ151a~154aに故障が生じたと判定したことに基づいて、報知部300により、故障を報知する(S22)。このようにステッピングモータ151a~154aの故障が報知されることにより、使用者は、故障に円滑に対応することができる。
【0079】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、
図5(b)に示すように、報知制御において設定される閾値Vth2が1つであったが、閾値Vth2が複数設定され、電池電圧V0がそれぞれの閾値以下となったときの報知形態が互いに異なっていてもよい。たとえば、閾値Vth2aと、閾値Vth2aより低い閾値Vth2aとが設定され、電池電圧V0が閾値Vth2a以下で閾値Vth2bより高い場合は、ランプ11cが点滅し、電池電圧V0が閾値Vth2b以下である場合は、ランプ11cが点灯するように、報知制御が行われてもよい。
【0081】
この場合、
図4(a)における閾値Vth1は、たとえば、閾値Vth2aと同じかそれよりもやや高く設定され得る。あるいは、閾値Vth1が閾値Vth2aと閾値Vth2bとの間に設定され、ステップS15における報知形態を、電池電圧V0が閾値Vth2a以下で閾値Vth2bより高い場合の報知形態に対して相違させてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、閾値Vth1が閾値Vth2より高く設定されたが、閾値Vth1を閾値Vth2と同じ値に設定してもよい。この場合、ステップS15の報知は、
図5(b)の報知制御と同じ閾値を基準に行われるため、ステップS15の処理は省略されてもよい。
【0083】
また、
図4(a)のステップS15の報知処理が行われる場合、さらに、安全弁141~144が閉じられて、ガスコンロ1が停止状態とされてもよい。この場合、さらに元ガス電磁弁140が閉じられてもよい。同様に、
図5(b)のステップS32の報知処理が行われる場合、さらに、安全弁141~144が閉じられて、ガスコンロ1が停止状態とされてもよい。
【0084】
また、電池電圧V0の低下は、ステッピングモータ151a~154aに供給される電圧に基づいて検出されてもよい。また、
図4(a)のステップS15および
図5(b)のステップS32における報知の方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の方法であってもよい。
【0085】
また、ガスコンロ1の構成は、上記実施形態に示された構成に限られるものではなく、適宜種々の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、ガスコンロ1に3つのコンロ部4a、4b、4cが設けられたが、ガスコンロ1に設けられるコンロ部の数はいくつであってもよい。
【0086】
さらに、上記実施の形態では、本発明の電池式燃焼装置の一例としてガスコンロ1が示されたが、本発明は、電池を電源として用いる他の電池式燃焼装置にも適用され得る。流調弁の駆動以外に用いられるステッピングモータが故障の監視対象であってもよい。
【0087】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 ガスコンロ(電池式燃焼装置)
20 電池装着部
20a 電池
151~151 流量調節弁
151a~151d ステッピングモータ
202 制御部
300 報知部