(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221129BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 535
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2018233259
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】内山 由宇多
(72)【発明者】
【氏名】藤代 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅彦
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194444(JP,A)
【文献】特開2017-032771(JP,A)
【文献】特開2016-212259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、
シートを前記現像剤像形成部に向けて搬送する搬送部と、
シートに接して加熱する加熱部、前記加熱部を加熱するヒータ、および、前記加熱部との間でシートを挟む加圧部を有し、シートに現像剤像を定着させる定着器と、
シートの幅方向における前記加熱部の中央部の温度である第1検知温度を検知する第1温度検知部と、
シートの幅方向における前記加熱部の端部の温度である第2検知温度を検知する第2温度検知部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1検知温度に基づいて前記加熱部の温度がシートに現像剤像を定着する定着温度となるように前記ヒータに通電する第1加熱制御と、
前記第1検知温度に基づいて前記加熱部の温度が前記定着温度となるように前記ヒータに通電する第2加熱制御であって、前記ヒータへの単位時間あたりの通電量の下限値を、前記第1加熱制御よりも大きくする第2加熱制御と、を実行可能であり、
前記第1加熱制御を開始してからシートが前記定着器に到達する前の所定のタイミングで、前記第2検知温度が前記定着温度よりも低い第1温度以下であるか否かを判定し、前記第2検知温度が前記第1温度より高い場合には、前記第1加熱制御を継続し、前記第2検知温度が前記第1温度以下である場合には、シートが前記定着器に到達する前に前記第1加熱制御から前記第2加熱制御に切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検知温度が前記定着温度よりも低い第2温度未満の場合には前記定着器を回転駆動させず、前記第1検知温度が前記第2温度以上となった場合に前記定着器を回転駆動させる回転制御を実行可能であり、
前記所定のタイミングは、前記定着器の回転駆動を開始してからシートが前記定着器に到達する前のタイミングであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1検知温度が前記定着温度よりも低い第3温度以上となった場合にシートを前記現像剤像形成部に向けて搬送する搬送制御を実行可能であり、
前記所定のタイミングは、シートの搬送を開始してから当該シートが前記定着器に到達する前のタイミングであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2加熱制御を実行している場合、シートが前記加熱部と前記加圧部との間にある間は前記第2加熱制御を継続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数のシートに連続して画像を形成する場合において、前記第2加熱制御に切り替えた後は、所定枚数目のシートの定着が完了した場合に、前記第2加熱制御から前記第1加熱制御に切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1加熱制御および前記第2加熱制御において、前記定着温度から前記第1検知温度を減算した差分に応じたデューティ比で前記加熱部の温度を制御し、前記デューティ比を、前記差分が大きいほど大きくし、
前記第1加熱制御において、前記デューティ比の下限値を0%とし、
前記第2加熱制御において、前記デューティ比の下限値を0%よりも大きくすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1加熱制御において、前記定着温度よりも前記第1検知温度が高い場合には、前記デューティ比を0%とし、
前記第2加熱制御において、前記定着温度よりも前記第1検知温度が高い場合には、前記デューティ比を0%よりも大きくすることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ヒータは、シートの幅方向において前記加熱部のシートに接する領域の全体を加熱することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2温度検知部は、シートの幅方向において前記加熱部のシートに接する領域の外側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、シートの幅方向における端部に画像があることを条件として、前記第2加熱制御を実行することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2加熱制御において、前記ヒータへの単位時間あたりの通電量の下限値を、前記第2検知温度が低いほど大きくすることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに現像剤像を定着させる定着器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱ローラ、加圧ローラおよび加熱ローラを加熱するヒータを有し、シートに現像剤像を定着させる定着器と、加熱ローラの中央部の温度を検知するセンターサーミスタと、加熱ローラの端部の温度を検知するサイドサーミスタとを備える画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1)。この技術では、センターサーミスタの出力信号に基づいて加熱ローラの温度が定着温度となるようにヒータへ供給する電力を制御し、また、サイドサーミスタの出力信号に基づいて加熱ローラの端部の温度が上限温度を超えた場合にヒータへの電力供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱ローラのような加熱部は、画像形成装置が設置される環境などの要因で、端部の昇温が中央部よりも遅くなる場合がある。そうすると、定着器でシートに現像剤像を定着させる際に加熱部の中央部の温度が定着に適した温度であっても、加熱部の端部の温度が定着に適した温度に達していない場合があり、シートの端部において定着不良が発生する可能性が懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、シートの端部の定着不良を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、シートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、シートを現像剤像形成部に向けて搬送する搬送部と、シートに接して加熱する加熱部、加熱部を加熱するヒータ、および、加熱部との間でシートを挟む加圧部を有し、シートに現像剤像を定着させる定着器と、シートの幅方向における加熱部の中央部の温度である第1検知温度を検知する第1温度検知部と、シートの幅方向における加熱部の端部の温度である第2検知温度を検知する第2温度検知部と、制御部と、を備える。
制御部は、第1検知温度に基づいて加熱部の温度がシートに現像剤像を定着する定着温度となるようにヒータに通電する第1加熱制御と、第1検知温度に基づいて加熱部の温度が定着温度となるようにヒータに通電する第2加熱制御であって、ヒータへの単位時間あたりの通電量の下限値を、第1加熱制御よりも大きくする第2加熱制御と、を実行可能である。
制御部は、第1加熱制御を開始してからシートが定着器に到達する前の所定のタイミングで、第2検知温度が定着温度よりも低い第1温度以下であるか否かを判定し、第2検知温度が第1温度より高い場合には、第1加熱制御を継続し、第2検知温度が第1温度以下である場合には、シートが定着器に到達する前に第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。
【0007】
このような構成によれば、加熱部の端部の昇温が遅い場合には、ヒータへの単位時間あたりの通電量を大きくする第2加熱制御が実行されるので、シートが定着器に到達する前に加熱部の端部を定着可能な温度範囲に加熱することができる。これにより、シートの端部の定着不良を抑制することができる。
【0008】
前記した画像形成装置において、制御部は、第1検知温度が定着温度よりも低い第2温度未満の場合には定着器を回転駆動させず、第1検知温度が第2温度以上となった場合に定着器を回転駆動させる回転制御を実行可能であり、所定のタイミングは、定着器の回転駆動を開始してからシートが定着器に到達する前のタイミングである構成とすることができる。
【0009】
定着器を回転駆動させると熱が加圧部に奪われて加熱部の端部の温度が上がりにくくなるので、定着器を回転駆動させた後に第1加熱制御から第2加熱制御に切り替えることで、加熱部の端部を効果的に定着可能な温度範囲に加熱することができる。これにより、シートの端部の定着不良を効果的に抑制することができる。
【0010】
前記した画像形成装置において、制御部は、第1検知温度が定着温度よりも低い第3温度以上となった場合にシートを現像剤像形成部に向けて搬送する搬送制御を実行可能であり、所定のタイミングは、シートの搬送を開始してから当該シートが定着器に到達する前のタイミングである構成とすることができる。
【0011】
前記した画像形成装置において、制御部は、第2加熱制御を実行している場合、シートが加熱部と加圧部との間にある間は第2加熱制御を継続する構成とすることができる。
【0012】
これによれば、シートが加熱部と加圧部との間にある間は熱がシートに奪われるので、この間、ヒータへの単位時間あたりの通電量が大きい第2加熱制御を継続することで、加熱部の温度が下がるのを抑制することができる。これにより、定着不良を抑制することができる。
【0013】
前記した画像形成装置において、制御部は、複数のシートに連続して画像を形成する場合において、第2加熱制御に切り替えた後は、所定枚数目のシートの定着が完了した場合に、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える構成とすることができる。
【0014】
これによれば、複数のシートに連続して画像を形成する場合には、途中で加熱部の端部が定着可能な温度範囲に維持された状態となるので、第2加熱制御からヒータへの単位時間あたりの通電量の下限値が小さい第1加熱制御に切り替えることで、加熱部が必要以上に加熱されるのを抑制することができる。
【0015】
前記した画像形成装置において、制御部は、第1加熱制御および第2加熱制御において、定着温度から第1検知温度を減算した差分に応じたデューティ比で加熱部の温度を制御し、デューティ比を、差分が大きいほど大きくし、第1加熱制御において、デューティ比の下限値を0%とし、第2加熱制御において、デューティ比の下限値を0%よりも大きくする構成とすることができる。
【0016】
前記した画像形成装置において、制御部は、第1加熱制御において、定着温度よりも第1検知温度が高い場合には、デューティ比を0%とし、第2加熱制御において、定着温度よりも第1検知温度が高い場合には、デューティ比を0%よりも大きくする構成とすることができる。
【0017】
前記した画像形成装置において、ヒータは、シートの幅方向において加熱部のシートに接する領域の全体を加熱する構成とすることができる。
【0018】
前記した画像形成装置において、第2温度検知部は、シートの幅方向において加熱部のシートに接する領域の外側に配置されている構成とすることができる。
【0019】
前記した画像形成装置において、制御部は、シートの幅方向における端部に画像があることを条件として、第2加熱制御を実行する構成とすることができる。
【0020】
これによれば、シートの端部で定着不良が発生するおそれがある場合に第2加熱制御を実行することができるので、シートの端部の定着不良を効果的に抑制することができる。
【0021】
前記した画像形成装置において、制御部は、第2加熱制御において、ヒータへの単位時間あたりの通電量の下限値を、第2検知温度が低いほど大きくする構成とすることができる。
【0022】
これによれば、加熱部の端部の昇温が遅いほど、ヒータへの単位時間あたりの通電量を大きくして、加熱部の端部を定着可能な温度範囲に加熱することができるので、シートの端部の定着不良をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シートの端部の定着不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】ヒータを制御するための構成を示す図である。
【
図3】定着器、第1温度検知部および第2温度検知部をシートの搬送方向および幅方向に直交する方向から見た図である。
【
図4】第1加熱制御においてデューティ比を設定するためのテーブル(a)と、第2加熱制御においてデューティ比を設定するためのテーブル(b)である。
【
図7】変形例に係る、第2加熱制御において第2検知温度に応じたデューティ比を設定するためのテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1は、本体筐体2と、シート供給部3と、露光装置4と、現像剤像形成部5と、定着器8と、第1温度検知部9Cと、第2温度検知部9S(
図3参照)と、第1シート検知部11と、第2シート検知部12と、制御部100とを備えている。
【0026】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、紙などのシートSが収容されるシートトレイ31と、圧板32と、シートSを現像剤像形成部5に向けて搬送する搬送部33とを備えている。搬送部33は、ピックアップローラ33A、分離パッド33B、第1搬送ローラ33C、レジストレーションローラ33Rなどを備えている。シート供給部3は、シートトレイ31内のシートSを圧板32によりピックアップローラ33Aに寄せ、ピックアップローラ33Aと分離パッド33Bにより1枚ずつ分離して送り出し、第1搬送ローラ33Cとレジストレーションローラ33Rにより現像剤像形成部5に向けて搬送する。
【0027】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4は、光源装置から出射された画像データに基づく光ビーム(一点鎖線参照)を感光体61の表面で高速走査することで、感光体61の表面を露光する。
【0028】
現像剤像形成部5は、シートSに現像剤像を形成する機器であり、露光装置4の下方に配置されている。現像剤像形成部5は、プロセスカートリッジとして、本体筐体2の前部に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される。現像剤像形成部5は、感光体カートリッジ6と、現像カートリッジ7とから構成されている。
【0029】
感光体カートリッジ6は、円筒状の感光体ドラムである感光体61と、コロナ帯電器である帯電器62と、転写ローラ63とを備えている。現像カートリッジ7は、感光体カートリッジ6に対して着脱自在であり、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、乾式トナーからなる現像剤を収容する収容部74と、アジテータ75とを備えている。
【0030】
現像剤像形成部5は、感光体61の表面を帯電器62により一様に帯電する。その後、感光体61の表面が露光装置4から出射された光ビームにより露光されることで、感光体61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、収容部74内の現像剤は、アジテータ75により攪拌されながら、供給ローラ72に供給され、供給ローラ72から現像ローラ71に供給される。そして、現像剤は、現像ローラ71の回転に伴って、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0031】
現像剤像形成部5は、現像ローラ71上に担持された現像剤を、現像ローラ71から感光体61上に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体61上に現像剤像が形成される。その後、シートSが感光体61と転写ローラ63との間を通過することで、感光体61上の現像剤像がシートS上に転写される。
【0032】
定着器8は、シートSに現像剤像を定着させる機器であり、現像剤像形成部5の後方に配置されている。定着器8は、加熱部81と、加圧部82と、ヒータ83とを有している。
加熱部81は、金属からなる円筒状の加熱ローラである。加熱部81は、加圧部82との間を搬送されるシートSに接してシートSを加熱するように構成されている。
【0033】
加圧部82は、芯金の周囲に弾性層を有する加圧ローラである。加圧部82は、加熱部81に接触して押圧された状態で配置され、加熱部81との間でシートSを挟む。
ヒータ83は、加熱部81を加熱する熱源である。ヒータ83は、フィラメント83A(
図2参照)を有するハロゲンヒータとして構成されており、輻射熱によって加熱部81を加熱する。ヒータ83は、加熱部81の内側に配置されている。
【0034】
定着器8は、本体筐体2内に設けられたモータMを駆動させることで回転駆動する。一例として、定着器8は、モータMから駆動力が入力されることで、加熱部81が回転駆動するとともに、加熱部81の回転駆動に伴って加圧部82が従動回転する。
【0035】
定着器8は、シートSを加熱部81と加圧部82との間を通過させることにより、シートS上に転写された現像剤像をシートSに定着する。現像剤像が定着されたシートSは、第2搬送ローラ23と排出ローラ24により排出トレイ22上に排出される。
【0036】
制御部100は、定着器8やモータMなど、レーザプリンタ1の各部を制御する装置であり、単一または複数の電気回路で構成されている。制御部100は、レーザプリンタ1の各部に制御信号や駆動電圧を出力することで、各部の制御を実行する。
図2に示すように、制御部100は、CPU110、ROM120、RAM130、ヒータコントローラ140、スイッチング回路150などを備えている。
【0037】
CPU110は、レーザプリンタ1の各部の動作タイミングを指令したり、ヒータコントローラ140に定着器8の目標温度としての指令値を送ったりする処理を行う。
ROM120には、レーザプリンタ1の各部を制御するためのプログラムや各種設定情報などのデータが記憶されている。
RAM130は、CPU110が各種のプログラムを実行する際の作業領域や、データの一時的な記憶領域として利用される。
【0038】
ヒータコントローラ140は、定着器8の目標温度と、第1温度検知部9Cが検知した温度とに基づき、スイッチング回路150のデューティ比を設定する。本実施形態において、CPU110とヒータコントローラ140は、単一の半導体素子として集積されている。
スイッチング回路150は、設定されたデューティ比で交流電圧をスイッチングすることで、ヒータ83に通電する。
【0039】
図3に示すように、第1温度検知部9Cは、シートSの幅方向における加熱部81の中央部の温度である第1検知温度Tcを検知するセンサである。シートSの幅方向は、レーザプリンタ1におけるシートSの搬送方向に直交する方向である。以下では、シートSの幅方向を単に「幅方向」という。
【0040】
第1温度検知部9Cは、幅方向において加熱部81のシートSに接する領域(以下、「シート接触領域」という。)CA内であって、幅方向におけるシート接触領域CAの中央付近に配置されている。また、レーザプリンタ1が幅の異なる複数種類のシートSを搬送可能であるとき、第1温度検知部9Cは、レーザプリンタ1で搬送可能な最小の幅のシートSが加熱部81に接する領域内に配置されている。また、第1温度検知部9Cは、加熱部81の表面との間に所定の間隔をあけた非接触の状態で加熱部81の表面に対向して配置されている。第1温度検知部9Cは、加熱部81の表面温度に応じた信号を制御部100に出力する。
【0041】
なお、制御部100が第1温度検知部9Cからの出力信号に基づいて取得する第1検知温度Tcは、第1温度検知部9Cからの出力信号に線形に対応したものでなく、加熱部81の実際の表面温度に対応するよう補正した温度であってもよい。例えば、第1検知温度Tcは、第1温度検知部9Cの出力を、加熱部81の加熱開始からの経過時間によって補正した温度であってもよい。
【0042】
一例として、制御部100は、以下のような式により、第1検知温度Tc(補正値)を取得することができる。
Tc=a(t)×TcS+b(t)
ここで、TcSは、第1温度検知部9Cが検知した温度、具体的には、第1温度検知部9Cの出力信号である。また、a(t)は、補正係数であり、b(t)は、補正項である。補正係数a(t)および補正項b(t)は、それぞれ、加熱部81の加熱開始からの時間tの関数である。
【0043】
第2温度検知部9Sは、幅方向における加熱部81の端部の温度である第2検知温度Tsを検知するセンサである。第2温度検知部9Sは、幅方向において加熱部81のシート接触領域CAの外側に配置されている。また、第2温度検知部9Sは、加熱部81の表面に接触した状態で、幅方向において加熱部81の一方の端部の表面に対向して配置されている。第2温度検知部9Sは、第2検知温度Tsに応じた信号を制御部100に出力する。なお、制御部100が第2温度検知部9Sからの出力信号に基づいて取得する第2検知温度Tsについても、第1検知温度Tcと同様に、補正した温度であってもよい。
【0044】
第1温度検知部9Cおよび第2温度検知部9Sとしては、例えば、温度に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを用いることができる。
【0045】
ヒータ83は、加熱部81の内側に1つ配置され、幅方向において加熱部81のシート接触領域CAの全体を加熱するように設けられている。具体的には、ヒータ83は、フィラメント83Aが密に巻かれた、幅方向に並ぶ複数の発熱部83Bを有し、複数の発熱部83Bを含む発熱領域83Cが幅方向において加熱部81のシート接触領域CAの全体にわたって設けられている。
【0046】
加圧部82は、幅方向において、加熱部81のシート接触領域CAおよびヒータ83の発熱領域83Cよりも大きくなっている。これにより、シート接触領域CAの端部では、ヒータ83によって加熱された加熱部81の熱が加圧部82に奪われるため、シート接触領域CAの中央よりも温度の上昇が遅くなる場合がある。第2温度検知部9Sは、幅方向において、加熱部81のシート接触領域CAの外側であって、加圧部82の端よりも内側に配置されている。第2検知温度Tsは、加熱部81のシート接触領域CAの端部の温度と、加圧部82の端部の温度とに関連する温度である。
【0047】
図1に示すように、第1シート検知部11は、レジストレーションローラ33Rから感光体61と転写ローラ63の間に向けて搬送されるシートSを検知するセンサである。第1シート検知部11は、シートSの搬送方向において、レジストレーションローラ33Rよりも下流側であって、感光体61よりも上流側に配置されている。また、第1シート検知部11は、感光体61よりもレジストレーションローラ33Rの近くに配置されている。
【0048】
第2シート検知部12は、加熱部81と加圧部82の間から第2搬送ローラ23に向けて搬送されるシートSを検知するセンサである。第2シート検知部12は、シートSの搬送方向において、加熱部81よりも下流側であって、第2搬送ローラ23よりも上流側に配置されている。また、第2シート検知部12は、第2搬送ローラ23よりも加熱部81の近くに配置されている。
【0049】
第1シート検知部11および第2シート検知部12は、例えば、搬送されるシートSに押されて揺動する揺動レバーと、揺動レバーの揺動を検知する光センサとを備えて構成されている。本実施形態において、第1シート検知部11および第2シート検知部12は、シートSによって揺動レバーが倒されているときには制御部100にON信号を出力し、揺動レバーが倒されていないときには制御部100にOFF信号を出力する(具体的には、ON信号を出力しない)。
【0050】
制御部100は、第1加熱制御と、第2加熱制御と、回転制御と、搬送制御とを実行可能である。
第1加熱制御および第2加熱制御は、第1温度検知部9Cから取得した第1検知温度Tcに基づいて加熱部81の温度が定着温度Tfとなるようにヒータ83に通電する制御である。
【0051】
定着温度Tfは、シートSに現像剤像を定着するための加熱部81の温度制御の目標温度である。定着器8は、加熱部81の温度が定着温度Tfを含む所定の温度範囲内の温度となっていればシートSへの現像剤像の定着が可能である。一例として、定着温度Tfは、200℃である。なお、本明細書で示す具体的な数値は一例である。
【0052】
制御部100は、第1加熱制御および第2加熱制御において、定着温度Tfから第1検知温度Tcを減算した差分ΔTに応じたデューティ比でヒータ83への通電を実行して加熱部81の温度を制御する。制御部100は、第1加熱制御および第2加熱制御において、デューティ比を、差分ΔTが大きいほど大きくする。
【0053】
制御部100は、第2加熱制御において、ヒータ83への単位時間あたりの通電量の下限値を、第1加熱制御よりも大きくする。具体的には、制御部100は、第2加熱制御において、デューティ比の下限値を、第1加熱制御よりも大きくする。
【0054】
一例として、制御部100は、第1加熱制御を実行する場合には、
図4(a)に示すようなテーブルに基づいてデューティ比を設定し、第2加熱制御を実行する場合には、
図4(b)に示すようなテーブルに基づいてデューティ比を設定する。
【0055】
例えば、制御部100は、第1加熱制御において、
図4(a)に示すテーブルに基づき、差分ΔTが0℃以上かつ2℃未満以上の場合、デューティ比を30%に設定し、差分ΔTが10℃以上かつ12℃未満の場合、デューティ比を60%に設定する。また、制御部100は、第2加熱制御において、
図4(b)に示すテーブルに基づき、差分ΔTが0℃以上かつ2℃未満以上の場合、デューティ比を40%に設定し、差分ΔTが10℃以上かつ12℃未満の場合、デューティ比を60%に設定する。
【0056】
制御部100は、
図4(a)に示すように、第1加熱制御において、デューティ比の下限値を0%とする。詳しくは、制御部100は、第1加熱制御において、
図4(a)に示すテーブルに基づき、差分ΔTが0℃未満の場合、すなわち、定着温度Tfよりも第1検知温度Tcが高い場合には、デューティ比を下限値の0%とする。
【0057】
一方、制御部100は、
図4(b)に示すように、第2加熱制御において、デューティ比の下限値を0%よりも大きくする。具体的には、制御部100は、第2加熱制御において、デューティ比の下限値を40%とする。詳しくは、制御部100は、第2加熱制御において、
図4(b)に示すテーブルに基づき、差分ΔTが4℃未満の場合には、デューティ比を下限値の40%とする。さらに言えば、制御部100は、第2加熱制御において、定着温度Tfよりも第1検知温度Tcが高い場合には、デューティ比を0%よりも大きくする、具体的には、40%とする。
【0058】
なお、制御部100は、第2加熱制御において、第1検知温度Tcが定着温度Tfよりも所定温度以上高くなった場合には、加熱部81が過剰に加熱されるのを防止するため、例えば、ヒータ83への通電を停止する。
【0059】
回転制御は、第1加熱制御を開始した後、第1検知温度Tcが第2温度Tth2未満の場合には定着器8を回転駆動させず、第1検知温度Tcが第2温度Tth2以上となった場合に定着器8を回転駆動させる制御である。具体的には、制御部100は、第1加熱制御を開始した後、第1検知温度Tcが第2温度Tth2に到達するまでは加熱部81と加圧部82を回転駆動させずに加熱部81を加熱し、第1検知温度Tcが第2温度Tth2に到達した後はモータMを駆動させて加熱部81と加圧部82を回転駆動させながら加熱部81を加熱する。第2温度Tth2は、定着温度Tfよりも低い温度であり、予め設定されている。一例として、第2温度Tth2は、100℃である。
【0060】
搬送制御は、第1加熱制御を開始した後、第1検知温度Tcが第3温度Tth3以上となった場合にシートSを現像剤像形成部5に向けて搬送する制御である。具体的には、制御部100は、第1加熱制御を開始した後、第1検知温度Tcが第3温度Tth3以上となった場合、図示しないクラッチ機構によりモータMからの駆動力をピックアップローラ33Aに伝達してピックアップローラ33Aを回転駆動させることでシートSを現像剤像形成部5に向けて送り出し、レジストレーションローラ33Rなどにより現像剤像形成部5に向けて搬送する。第3温度Tth3は、第2温度Tth2よりも高く、かつ、定着温度Tfよりも低い温度であり、予め設定されている。一例として、第3温度Tth3は、150℃である。
【0061】
制御部100は、レーザプリンタ1に印刷の指示や印刷すべき画像データを含む印刷ジョブが入力されると、第1加熱制御を開始する。そして、制御部100は、所定のタイミングで、第2温度検知部9Sから取得した第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下であるか否かを判定する。
【0062】
所定のタイミングは、第1加熱制御を開始してからシートSが定着器8に到達する前のタイミングである。詳しくは、所定のタイミングは、回転制御において定着器8の回転駆動を開始してからシートSが定着器8に到達する前のタイミングである。より詳しくは、所定のタイミングは、搬送制御においてシートSの搬送を開始してから当該シートSが定着器8に到達する前のタイミングである。
【0063】
本実施形態において、制御部100は、搬送制御を開始してピックアップローラ33AによりシートSを現像剤像形成部5に向けて送り出した後、第1シート検知部11がレジストレーションローラ33Rから感光体61と転写ローラ63の間に向けて搬送されるシートSを検知したタイミング、具体的には、第1シート検知部11がON信号を制御部100に出力したタイミングで、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下であるか否かを判定する。
【0064】
制御部100は、第2検知温度Tsが第1温度Tth1より高い場合には、第1加熱制御を継続する。また、制御部100は、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下である場合には、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。具体的には、制御部100は、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下となったときに第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。このため、制御部100は、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下である場合には、シートSが定着器8に到達する前に第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。
【0065】
第1温度Tth1は、定着温度Tfよりも低い温度であり、予め設定されている。一例として、第1温度Tth1は、120℃である。
【0066】
制御部100は、複数のシートSに連続して画像を形成する場合において、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替えた後は、所定枚数目のシートSの定着が完了した場合に、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える。具体的には、制御部100は、複数のシートSに連続印刷を行う場合において、第2加熱制御に切り替えた後は、1枚目のシートSの定着が完了した場合に、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える。
【0067】
より具体的には、制御部100は、加熱部81と加圧部82との間から排出される1枚目のシートSが第2シート検知部12の揺動レバーを倒すことで第2シート検知部12が制御部100にON信号を出力し、その後、当該1枚目のシートSが排出トレイ22に向けて搬送されることによって第2シート検知部12の揺動レバーの揺動が解除されて第2シート検知部12が制御部100にOFF信号を出力した場合に、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える。
【0068】
制御部100は、シートSが定着器8に到達する前に第1加熱制御から第2加熱制御に切り替え、当該シートSが定着器8を通過した後に第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える。このため、制御部100は、第2加熱制御を実行している場合において、シートSが加熱部81と加圧部82との間にある間は第2加熱制御を継続する。
【0069】
本実施形態において、制御部100は、第1加熱制御を開始したときの第1検知温度Tc0が所定の温度閾値Tth0以下であることを条件として、第2加熱制御を実行する。すなわち、制御部100は、第1加熱制御を開始したときの第1検知温度Tc0が温度閾値Tth0よりも高い場合には、第2加熱制御を実行しない。温度閾値Tth0は、第2温度Tth2よりも低い温度であり、予め設定されている。一例として、温度閾値Tth0は、50℃である。
【0070】
また、本実施形態において、制御部100は、
図3に示すように、シートSの幅方向における端部SEに形成すべき画像があることを条件として、第2加熱制御を実行する。すなわち、制御部100は、シートSの端部SEに形成すべき画像がない場合には、第2加熱制御を実行しない。一例として、端部SEは、幅方向において、シートSの端から20mmの部分である。制御部100は、シートSの端部SEに形成すべき画像があるか否かの情報を印刷ジョブに含まれる画像データから取得する。
【0071】
次に、制御部100の動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
図5に示すように、印刷ジョブが入力されると(START)、制御部100は、印刷開始時の第1検知温度Tc0を取得するとともに(S101)、第1加熱制御を開始する(S102)。
【0072】
次に、制御部100は、第1検知温度Tcが第2温度Tth2以上となったか否かを判定する(S103)。そして、第1検知温度Tcが第2温度Tth2以上となった場合(S103,Yes)、制御部100は、モータMを駆動させて定着器8を回転駆動させる(S104)。
【0073】
次に、制御部100は、第1検知温度Tcが第3温度Tth3以上となったか否かを判定する(S105)。そして、第1検知温度Tcが第3温度Tth3以上となった場合(S105,Yes)、制御部100は、圧板32および搬送部33を駆動させ、現像剤像形成部5に向けてシートSの搬送を開始する(S106)。
【0074】
次に、制御部100は、第1シート検知部11でシートSを検知したか否かを判定する(S107)。そして、第1シート検知部11でシートSを検知した場合(S107,Yes)、制御部100は、印刷開始時の第1検知温度Tc0が温度閾値Tth0以下であるか否かを判定する(S108)。
【0075】
印刷開始時の第1検知温度Tc0が温度閾値Tth0以下である場合(S108,Yes)、制御部100は、シートSの端部SEに形成すべき画像があるか否かを判定する(S109)。そして、シートSの端部SEに画像がある場合(S109,Yes)、制御部100は、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下であるか否かを判定する(S110)。第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下である場合(S110,Yes)、制御部100は、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える(S111)。
【0076】
なお、ステップS108において印刷開始時の第1検知温度Tc0が温度閾値Tth0より高い場合(No)、ステップS109においてシートSの端部SEに画像がない場合(No)、また、ステップS110において第2検知温度Tsが第1温度Tth1より高い場合(No)、制御部100は、第1加熱制御でシートSの定着を行い、ステップS115に進む。
【0077】
ステップS111で第1加熱制御から第2加熱制御に切り替えた後、制御部100は、連続印刷を行うか否かを判定する(S112)。そして、連続印刷を行う場合(S112,Yes)、制御部100は、1枚目のシートSの定着が完了したか否かを判定する(S113)。そして、1枚目のシートSの定着が完了した場合(S113,Yes)、制御部100は、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替え(S114)、第1加熱制御で2枚目以降のシートSの定着を行う。
【0078】
なお、ステップS112において連続印刷を行わない場合(No)、制御部100は、第2加熱制御でシートSの定着を行う。
【0079】
そして、ステップS115において印刷が終了した場合(Yes)、制御部100は、処理を終了する(END)。
【0080】
次に、制御部100の動作について、タイムチャートを参照しながら説明する。
図6に示すように、時刻t0において、印刷ジョブが入力されると、制御部100は、第1加熱制御を開始する。これにより、加熱部81の温度(第1検知温度Tcおよび第2検知温度Ts)が上昇していく。
【0081】
その後、時刻t1において、第1検知温度Tcが第2温度Tth2に到達すると、制御部100は、定着器8を回転駆動させる。なお、定着器8が回転駆動することで、加熱部81の熱が加圧部82に移動しやすくなるため、加熱部81の温度上昇の勾配は若干小さくなる。
【0082】
その後、時刻t2において、第1検知温度Tcが第3温度Tth3に到達すると、制御部100は、現像剤像形成部5に向けてシートSの搬送を開始する。
【0083】
その後、時刻t3において、現像剤像形成部5に向けて搬送されるシートSが第1シート検知部11の揺動レバーを倒すと、第1シート検知部11がON信号を出力する。このとき、制御部100は、印刷開始時(時刻t0)の第1検知温度Tc0が温度閾値Tth0以下であって、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下であるので、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替える。第2加熱制御が実行されると、デューティ比の下限値は40%に設定される。
【0084】
その後、時刻t4において、1枚目のシートSの定着が完了し、1枚目のシートSが第2シート検知部12を通過して第2シート検知部12の揺動レバーの揺動が解除され、第2シート検知部12がOFF信号を出力すると、制御部100は、第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える。その後、制御部100は、第1加熱制御で2枚目以降のシートSの定着を行う。
【0085】
ここで、時刻t3~t4において、仮に、第1加熱制御が実行されると、デューティ比が二点鎖線で示すように40%未満と小さくなるので、ヒータ83により加熱部81を十分に加熱することができず、加熱部81の端部の温度が二点鎖線で示すように十分に上がらない可能性がある。本実施形態では、時刻t3~t4において、第2加熱制御を実行することで、デューティ比が最低でも40%に維持されるので、ヒータ83により加熱部81を十分に加熱することができ、加熱部81の端部の温度を上げることができる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下と加熱部81の端部の昇温が遅い場合には、デューティ比を大きくする第2加熱制御が実行されるので、シートSが定着器8に到達する前に加熱部81の端部を定着可能な温度範囲に加熱することができる。これにより、シートSの端部SEの定着不良を抑制することができる。
【0087】
また、定着器8を回転駆動させると熱が加圧部82に奪われて加熱部81の端部の温度が上がりにくくなるが、定着器8を回転駆動させた後に第1加熱制御から第2加熱制御に切り替えることで、加熱部81の端部を効果的に定着可能な温度範囲に加熱することができる。これにより、シートSの端部SEの定着不良を効果的に抑制することができる。
【0088】
また、シートSが加熱部81と加圧部82との間にある間は熱がシートSに奪われるので、この間、デューティ比が大きい第2加熱制御を継続することで、加熱部81の温度が下がるのを抑制することができる。これにより、定着不良を抑制することができる。
【0089】
また、連続印刷を行う場合には、途中で加熱部81の端部が定着可能な温度範囲に維持された状態となるので、1枚目のシートSの定着が完了した後に第2加熱制御からデューティ比の下限値が小さい第1加熱制御に切り替えることで、印刷中に加熱部81が必要以上に加熱されるのを抑制することができる。
【0090】
また、シートSの端部SEに画像があることを条件として第2加熱制御を実行することで、シートSの端部SEで定着不良が発生するおそれがある場合に第2加熱制御を実行することができる。これにより、シートSの端部SEの定着不良を効果的に抑制することができる。
【0091】
以上に実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、制御部100は、第2加熱制御において、ヒータ83への単位時間あたりの通電量の下限値を、第2検知温度Tsが低いほど大きくする構成であってもよい。
【0092】
一例として、
図7に示すように、制御部100は、第1加熱制御から第2加熱制御に切り替えるための判定を行う際に、第2検知温度Tsが100℃以上の場合には、デューティ比の下限値を40%に設定し、第2検知温度Tsが80℃以上かつ100℃未満の場合には、デューティ比の下限値を50%に設定し、第2検知温度Tsが80℃未満の場合には、デューティ比の下限値を55%に設定する構成であってもよい。
【0093】
このような構成よれば、加熱部81の端部の昇温が遅い場合ほど、デューティ比を大きくして、加熱部81の端部を定着可能な温度範囲に加熱することができるので、シートSの端部SEの定着不良をより抑制することができる。
【0094】
また、前記実施形態では、シートSの端部SEに画像があることを条件として第2加熱制御を実行したが、シートの端部の画像の有無に関わらず、第2加熱制御を実行するようにしてもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、第2温度検知部9Sが加熱部81のシート接触領域CAの外側に配置されていたが、第2温度検知部は、例えば、加熱部のシート接触領域内の、幅方向における端部に配置されていてもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、差分ΔTに応じたデューティ比を
図4に示したようなテーブルに基づいて設定したが、例えば、定着温度と第1検知温度との偏差からPI制御やPID制御などの手法を用いてデューティ比(ヒータの操作量)を設定してもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、連続印刷を行う場合において、定着が完了した場合に第2加熱制御から第1加熱制御に切り替える所定枚数目のシートとして、1枚目のシートを例示したが、2枚目以降のシートであってもよい。
【0098】
また、前記実施形態では、第2検知温度Tsが第1温度Tth1以下であるか否かを判定するタイミングが、
図6に示したように、第1シート検知部11がシートSを検知したタイミング(時刻t3)であったが、これに限定されない。例えば、シートSの搬送を開始したタイミング(時刻t2)であってもよいし、定着器8の回転駆動を開始したタイミング(時刻t1)であってもよい。また、時刻t2~t3の間の任意のタイミングであってもよいし、時刻t1~t2の間の任意のタイミングであってもよい。また、時刻t0~t1の間であって、第1加熱制御を開始してから所定時間経過後(第2検知温度がある程度上昇した後)のタイミングであってもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、シートSの搬送を開始させる第3温度Tth3が定着器8の回転駆動を開始させる第2温度Tth2よりも高い温度であったが、第3温度Tth3は、第2温度Tth2と同じ温度であってもよいし、第2温度Tth2よりも低い温度であってもよい。すなわち、レーザプリンタ1は、シートSの搬送を開始するのと同時に定着器8の回転駆動を開始してもよいし、シートSの搬送を開始した後に定着器8の回転駆動を開始してもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、回転制御において、モータMを駆動させることで定着器8を回転駆動させたが、回転制御において、例えば、クラッチ機構によりモータからの駆動力を定着器8に伝達することで定着器8を回転駆動させてもよい。
【0101】
また、前記実施形態では、第1温度検知部9Cおよび第2温度検知部9Sが、加熱部81の温度を検知するように設けられていたが、第1温度検知部や第2温度検知部は、例えば、加圧部やヒータなどの温度を検知するように設けられていてもよい。また、前記実施形態とは逆に、第1温度検知部が接触式のサーミスタであり、第2温度検知部が非接触式のサーミスタであってもよい。また、第1温度検知部や第2温度検知部は、サーミスタ以外の温度センサであってもよい。
【0102】
また、前記実施形態では、加熱部81として加熱ローラを例示したが、加熱部は、例えば、無端状の加熱ベルトを有する加熱ユニットなどであってもよい。また、前記実施形態では、加圧部82として加圧ローラを例示したが、加圧部は、例えば、無端状の加圧ベルトを含む加圧ユニットなどであってもよい。
【0103】
また、前記実施形態では、ヒータ83として、輻射熱を利用するハロゲンヒータを例示したが、ヒータは、例えば、抵抗体の発熱を利用するセラミックヒータやカーボンヒータなどであってもよい。また、ヒータは、加熱部の内側ではなく、加熱部の外側に配置されていてもよい。
【0104】
また、前記実施形態では、画像形成装置として、シートSにモノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、画像形成装置は、例えば、シートにカラーの画像を形成可能に構成されたプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【0105】
また、前記実施形態では、現像剤像形成部5としてプロセスカートリッジを例示したが、これに限定されない。例えば、画像形成装置が、シートにカラーの画像を形成可能であり、配列された複数の感光体を有するプロセスユニットと、複数の感光体に形成された現像剤像をシートに転写するための転写ベルトなどを有する転写ユニットとを備える場合には、現像剤像形成部は、プロセスユニットと転写ユニットを含む構成とすることができる。
【0106】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 レーザプリンタ
5 現像剤像形成部
8 定着器
9C 第1温度検知部
9S 第2温度検知部
33 搬送部
81 加熱部
82 加圧部
83 ヒータ
100 制御部
CA シート接触領域
S シート