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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/405 20071001AFI20221129BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20221129BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20221129BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20221129BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20221129BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20221129BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20221129BHJP
   F16H 57/02 20120101ALI20221129BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60K6/405
B60K6/26 ZHV
B60K6/36
B60K6/48
B60K6/547
B60K17/04 G
B60K17/06 E
F16H57/02
H02K7/116
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018239450
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100266
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203999(JP,A)
【文献】特開2016-55653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/405
B60K 6/26
B60K 6/36
B60K 6/48
B60K 6/547
B60K 17/04
B60K 17/06
F16H 57/02
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源に連結される第1のケースと、前記動力源と反対側から前記第1のケースに連結される第2のケースとを有し、前記第1のケースと前記第2のケースの内部に、前記動力源から動力が伝達される変速機構と、前記変速機構から動力が伝達されるディファレンシャル装置とを収容する変速機ケースと、
前記変速機ケースの上部に取付けられたモータと、
前記モータの動力を前記変速機構に伝達する減速機構と、
前記減速機構を収容する減速機ケースとを備えたハイブリッド車両用駆動装置であって、
前記減速機ケースは、前記第2のケースに一体に形成され、前記減速機構を取り囲むケース部と、前記ケース部に接合されたカバー部とを有し、
前記ケース部は、前記第2のケースの上壁から上方に延び、前記モータと前記減速機構との間に位置する側壁部を有し、
前記側壁部は、前記モータの外径と同等の外径を有し、前記モータが連結される円盤状のモータ取付部を有し、
前記モータ取付部の外周部に、前記モータを前記モータ取付部に締結する複数の締結部が設けられていることを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記減速機構は、前記モータから前記変速機構に動力を伝達する動力伝達経路上に複数の回転軸を有し、
前記側壁部は、前記回転軸を回転自在に支持する軸受を保持する複数の筒状の軸受保持部を有し、
前記複数の軸受保持部の少なくとも1つは、前記モータ取付部と前記上壁とを連絡する前記側壁部の部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第2のケースは、複数の締結具によって前記第1のケースに締結されるフランジ部を有し、
前記フランジ部に、前記締結具が挿入される複数のボス部が前記フランジ部に沿って設けられており、
前記複数のボス部の少なくとも1つは、前記側壁部に連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両用動力伝達装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このハイブリッド車両用動力伝達装置は、電動モータの駆動力を減速する減速機構と、減速機構で減速された駆動力を左右の駆動輪に配分するディファレンシャル装置と、ディファレンシャル装置を収容する変速機ケースとを備えている。
【0003】
電動モータは、複数のボルトによって変速機ケースの上部に取付けられている。減速機構を収容する減速機ケースは、複数のボルトによって変速機ケースに取付けられている。
【0004】
電動モータのモータハウジングには円筒部が形成されている。減速機ケースには円筒部に差し込まれる円筒部が形成されており、それぞれの円筒部が相互に差し込まれることにより、モータハウジングと減速機ケースが連結されている(特許文献1の図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-203999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のハイブリッド車両用動力伝達装置にあっては、変速機ケースに別体の減速機ケースを取付ける構造となっているので、例えば、変速機ケースと減速機ケースとを複数のシール部材によってシールする必要があり、減速機ケースの構造が複雑になるおそれがある。
【0007】
また、減速機ケースが電動モータの振動を抑制する構造となっていないので、電動モータの振動を抑制するために、例えば、電動モータを変速機ケースに固定するための頑丈なブラケットが必要になる。このため、動力伝達装置の重量が増大することや電動モータの支持構造が複雑になるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、減速機ケースによって変速機ケースに連結されるモータを有するハイブリッド車両用駆動装置において、減速機ケースの構造を簡素化しつつ、モータの振動を抑制できるハイブリッド車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動力源に連結される第1のケースと、前記動力源と反対側から前記第1のケースに連結される第2のケースとを有し、前記第1のケースと前記第2のケースの内部に、前記動力源から動力が伝達される変速機構と、前記変速機構から動力が伝達されるディファレンシャル装置とを収容する変速機ケースと、前記変速機ケースの上部に取付けられたモータと、前記モータの動力を前記変速機構に伝達する減速機構と、前記減速機構を収容する減速機ケースとを備えたハイブリッド車両用駆動装置であって、前記減速機ケースは、前記第2のケースに一体に形成され、前記減速機構を取り囲むケース部と、前記ケース部に接合されたカバー部とを有し、前記ケース部は、前記第2のケースの上壁から上方に延び、前記モータと前記減速機構との間に位置する側壁部を有し、前記側壁部は、前記モータの外径と同等の外径を有し、前記モータが連結される円盤状のモータ取付部を有し、前記モータ取付部の外周部に、前記モータを前記モータ取付部に締結する複数の締結部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、減速機ケースによって変速機ケースに連結されるモータを有するハイブリッド車両用駆動装置において、減速機ケースの構造を簡素化しつつ、モータの振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置の左側面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置の平面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置のスケルトン図である。
図4図4は、図1のIV-IV方向矢視断面図である。
図5図5は、図2のV-V方向矢視断面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置のレフトケースの外側面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置のレフトケースの斜視図である。
図8図8は、図5のVIII-VIII方向矢視断面図である。
図9図9は、図6のIX-IX方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両用駆動装置は、動力源に連結される第1のケースと、動力源と反対側から第1のケースに連結される第2のケースとを有し、第1のケースと第2のケースの内部に、動力源から動力が伝達される変速機構と、変速機構から動力が伝達されるディファレンシャル装置とを収容する変速機ケースと、変速機ケースの上部に取付けられたモータと、モータの動力を変速機構に伝達する減速機構と、減速機構を収容する減速機ケースとを備えたハイブリッド車両用駆動装置であって、減速機ケースは、第2のケースに一体に形成され、減速機構を取り囲むケース部と、ケース部に接合されたカバー部とを有し、ケース部は、第2のケースの上壁から上方に延び、モータと減速機構との間に位置する側壁部を有し、側壁部は、モータの外径と同等の外径を有し、モータが連結される円盤状のモータ取付部を有し、モータ取付部の外周部に、モータをモータ取付部に締結する複数の締結部が設けられている。
【0013】
これにより、一実施の形態に係るハイブリッド車両用駆動装置は、減速機ケースによって変速機ケースに連結されるモータを有するハイブリッド車両用駆動装置において、減速機ケースの構造を簡素化しつつ、モータの振動を抑制できる。
【実施例
【0014】
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1から図9は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両用駆動装置を示す図である。
【0016】
図1から図9において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のハイブリッド車両用駆動装置の上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、ハイブリッド車両用駆動装置の高さ方向が上下方向である。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、車体2を備えており、車体2は、ダッシュパネル3によって前側のエンジンルーム2Aと後側の車室2Bとに仕切られている。エンジンルーム2Aにはハイブリッド車両用駆動装置(以下、単に駆動装置という)4が設置されており、駆動装置4は、前進6速、後進1速の変速段を有する。
【0018】
図2において、駆動装置4は、変速機ケース5を備えており、変速機ケース5は、ライトケース6およびレフトケース7を有する。
【0019】
ライトケース6にはエンジン8が連結されている。エンジン8は、クランク軸9を有し(図3参照)、クランク軸9は、車両1の幅方向に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン8は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両1は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。本実施例のエンジン8は、内燃機関から構成されており、本発明の動力源を構成する。
【0020】
レフトケース7は、エンジン8と反対側、すなわち、左側からライトケース6に連結されている。本実施例のライトケース6は、本発明の第1のケースを構成し、レフトケース7は、本発明の第2のケースを構成する。
【0021】
ライトケース6の外周縁にはフランジ部6F(図8参照)が形成されている。図7図8において、レフトケース7の外周縁にはフランジ部7Fが形成されている。
【0022】
図6図7に示すように、フランジ部7Fにはボルト23A(図1参照)が挿入される複数のボス部7fが設けられており、ボス部7fは、フランジ部7Fに沿って設けられている。
【0023】
フランジ部6Fにはボス部7fに合致する複数の図示しないボス部が形成されており、ボルト23Aをフランジ部6Fのボス部とフランジ部7Fのボス部7fに締結することにより、ライトケース6とレフトケース7が締結されて一体化される。本実施例のボルト23Aは、本発明の締結具を構成する。
【0024】
ライトケース6にはクラッチ10(図3参照)が収容されている。レフトケース7には、図3に示す入力軸11、前進用出力軸12、後進用出力軸13、終減速機構14およびディファレンシャル装置15が収容されている。入力軸11、前進用出力軸12および後進用出力軸13は、平行に設置されている。
【0025】
図3において、入力軸11は、クラッチ10を介してエンジン8に連結されており、クラッチ10を介してエンジン8の動力が伝達される。図3図4において、入力軸11は、1速段用の入力ギヤ16A、2速段用の入力ギヤ16B、3速段用の入力ギヤ16C、4速段用の入力ギヤ16D、5速段用の入力ギヤ16Eおよび6速段用の入力ギヤ16Fを有する。
【0026】
入力ギヤ16A、16Bは、入力軸11に固定されており、入力軸11と一体で回転する。入力ギヤ16Cから入力ギヤ16Fは、入力軸11に相対回転自在に設けられている。
【0027】
前進用出力軸12は、1速段用の出力ギヤ17A、2速段用の出力ギヤ17B、3速段用の出力ギヤ17C、4速段用の出力ギヤ17D、5速段用の出力ギヤ17E、6速段用の出力ギヤ17Fおよび前進用のファイナルドライブギヤ17Gを有し、出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fは、同一の変速段を構成する入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fに噛み合っている。
【0028】
出力ギヤ17A、17Bは、前進用出力軸12に相対回転自在に設けられている。出力ギヤ17Cから出力ギヤ17Fおよびファイナルドライブギヤ17Gは、前進用出力軸12に固定されており、前進用出力軸12と一体で回転する。
【0029】
1速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Aおよび出力ギヤ17Aを介して前進用出力軸12に伝達される。2速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Bおよび出力ギヤ17Bを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0030】
出力ギヤ17Aと出力ギヤ17Bの間において前進用出力軸12上には第1の同期装置18が設けられている。
【0031】
第1の同期装置18は、シフト操作によって1速段にシフトされると、1速段の出力ギヤ17Aを前進用出力軸12に連結し、シフト操作によって2速段にシフトされると、2速段用の出力ギヤ17Bを前進用出力軸12に連結する。これにより、出力ギヤ17Aまたは出力ギヤ17Bは、前進用出力軸12と一体で回転する。
【0032】
入力ギヤ16Cと入力ギヤ16Dの間において入力軸11上には第2の同期装置19が設けられている。
【0033】
第2の同期装置19は、シフト操作によって3速段にシフトされると、入力ギヤ16Cを入力軸11に連結し、シフト操作によって4速段にシフトされると、入力ギヤ16Dを入力軸11に連結する。これにより、入力ギヤ16Cまたは入力ギヤ16Dが入力軸11と一体で回転する。
【0034】
3速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Cおよび出力ギヤ17Cを介して前進用出力軸12に伝達される。4速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Dおよび出力ギヤ17Dを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0035】
このように入力軸11上に設けられた第2の同期装置19は、入力ギヤ16Cと出力ギヤ17Cからなる1つの変速ギヤ組と、入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dからなる1つの変速ギヤ組との中から1つの変速ギヤ組を選択し、入力軸11から選択された変速ギヤ組を介して前進用出力軸12に動力を伝達させる。
【0036】
入力ギヤ16Eと入力ギヤ16Fの間において入力軸11上には第3の同期装置20が設けられている。
【0037】
第3の同期装置20は、シフト操作によって5速段にシフトされると、入力ギヤ16Eを入力軸11に連結し、シフト操作によって6速段にシフトされると、入力ギヤ16Fを入力軸11に連結する。これにより、入力ギヤ16Eまたは入力ギヤ16Fが入力軸11と一体で回転する。
【0038】
5速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Eおよび出力ギヤ17Eを介して前進用出力軸12に伝達される。6速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Fおよび出力ギヤ17Fを介して前進用出力軸12に伝達される。
【0039】
このように入力軸11上に設けられた第3の同期装置20は、入力ギヤ16Eと出力ギヤ17Eからなる1つの変速ギヤ組と、入力ギヤ16Fと出力ギヤ17Fからなる1つの変速ギヤ組との中から1つの変速ギヤ組を選択し、入力軸11から選択された変速ギヤ組を介して前進用出力軸12に動力を伝達させる。
【0040】
入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dからなる変速ギヤ組と、入力ギヤ16Eおよび出力ギヤ17Eからなる変速ギヤ組とは、入力軸11の軸方向において第2の同期装置19と第3の同期装置20との間に隣接して設置されている。
【0041】
後進用出力軸13にはリバースギヤ22Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bが設けられている。リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13に相対回転自在に設けられており、出力ギヤ17Aに噛み合っている。ファイナルドライブギヤ22Bは、後進用出力軸13に固定されており、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0042】
後進用出力軸13には第4の同期装置21が設けられている。第4の同期装置21は、シフト操作によって後進段にシフトされると、リバースギヤ22Aを後進用出力軸13に連結する。これにより、リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13と一体で回転する。
【0043】
後進段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16A、前進用出力軸12と相対回転する出力ギヤ17Aおよびリバースギヤ22Aを介して後進用出力軸13に伝達される。
【0044】
前進用のファイナルドライブギヤ17Gおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bは、ディファレンシャル装置15のファイナルドリブンギヤ15Aに噛み合っている。これにより、前進用出力軸12の動力および後進用出力軸13の動力は、前進用のファイナルドライブギヤ17Gまたは後進用のファイナルドライブギヤ22Bを経てディファレンシャル装置15に伝達される。
【0045】
ディファレンシャル装置15は、ファイナルドリブンギヤ15Aと、ファイナルドリブンギヤ15Aが外周部に取付けられたデフケース15Bと、デフケース15Bに内蔵された差動機構15Cとを有する。
【0046】
デフケース15Bの右端部には筒状部15bが設けられており(図4参照)、デフケース15Bの左端部には筒状部15c(図5参照)が設けられている。筒状部15b、15cにはそれぞれ左右のドライブシャフト24L、24R(図3参照)のそれぞれの一端部が挿通されている。
【0047】
左右のドライブシャフト24L、24Rの一端部は、差動機構15Cに連結されており、左右のドライブシャフト24L、24Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。ディファレンシャル装置15は、エンジン8の動力を差動機構15Cによって左右のドライブシャフト24L、24Rに分配して駆動輪に伝達する。
【0048】
本実施例の入力軸11、前進用出力軸12、入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fおよび出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fは、本発明の変速機構を構成する。
【0049】
終減速機構14は、前進用のファイナルドライブギヤ17Gおよびファイナルドリブンギヤ15Aから構成されている。前進用出力軸12は、終減速機構14を介してデフケース15Bに連結されている。
【0050】
図1図2において、レフトケース7の上部にはマウント取付部31が設けられている。マウント取付部31は、複数のボス部31Aを有し、ボス部31Aには図示しないボルトによって図示しないマウントブラケットが締結されている。
【0051】
マウントブラケットは、いずれも図示しない左側サイドフレームに設置された弾性体を有するマウント部材に連結されている。これにより、駆動装置4は、マウントブラケットおよびマウント部材を介して左側サイドフレームに弾性的に支持されている。
【0052】
エンジン8は、いずれも図示しないマウントブラケットおよびマウント部材を介して右サイドフレームに弾性的に支持されている。
【0053】
マウント取付部31よりも後側においてレフトケース7の上部にはモータ32が設置されている。
【0054】
図8において、モータ32は、モータケース32Aと、モータケース32Aに回転自在に支持されたモータ軸32Bとを有する。モータケース32Aの内部にはいずれも図示しないロータと、コイルが巻き付けられたステータが収容されており、モータ軸32Bは、ロータと一体に設けられている。
【0055】
モータ32において、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ軸32Bと一体のロータを回転駆動させる。
【0056】
図2において、レフトケース7には減速機ケース25が設けられており、減速機ケース25は、ケース部26およびカバー部27を有する。減速機ケース25には減速機構33(図6参照)が収容されている。
【0057】
図3において、減速機構33は、モータ32のモータ軸32Bに設けられた第1のドライブギヤ34と、第1の中間軸35と、第2の中間軸36と、前進用出力軸12に設けられた4速段用の出力ギヤ17Dとを備えている。
【0058】
第1の中間軸35には第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドライブギヤ35Bが設けられている。第2の中間軸36には第2のドリブンギヤ36Aおよび第3のドライブギヤ36Bが設けられている。
【0059】
第1のドリブンギヤ35Aは、第1のドライブギヤ34の直径よりも大径に形成されており、第1のドライブギヤ34に噛み合っている。第1のドライブギヤ34および第1のドリブンギヤ35Aは、モータ軸32Bと第1の中間軸35とを連結する第1の減速ギヤ組37を構成する。
【0060】
第2のドライブギヤ35Bは、第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドリブンギヤ36Aの直径よりも小径に形成されており、第2のドリブンギヤ36Aに噛み合っている。第2のドライブギヤ35Bおよび第2のドリブンギヤ36Aは、第1の中間軸35と第2の中間軸36とを連結しており、第2の減速ギヤ組38を構成している。
【0061】
第3のドライブギヤ36Bは、第2のドリブンギヤ36Aの直径と同一径で、かつ、4速段用の出力ギヤ17Dの直径よりも大径に形成されており、4速段用の出力ギヤ17Dに噛み合っている。
【0062】
第3のドライブギヤ36Bおよび出力ギヤ17Dは、第2の中間軸36と前進用出力軸12とを連結しており、第3の減速ギヤ組39を構成している。
【0063】
図5に示すように、第3のドライブギヤ36Bは、その軸心O3が鉛直方向で前進用出力軸12の軸心O4よりも上方で、かつ、レフトケース7の上壁7Bよりも下側に設置されている。
【0064】
このように本実施例の減速機構33において、第3の減速ギヤ組39のドリブンギヤは、複数の変速ギヤ組のうちの4速段用の出力ギヤ17Dから構成されている。
【0065】
図3において、第3の減速ギヤ組39の第3のドライブギヤ36Bは、1組の入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dの半径方向の外側に設置されている。第1の減速ギヤ組37は、1組の入力ギヤ16Eと出力ギヤ17Eの半径方向の外側に設置されている。第2の減速ギヤ組38は、第3の同期装置20の半径方向の外側に設置されている。
【0066】
このように減速機構33は、モータ32から前進用出力軸12に動力を伝達する動力伝達経路上に第1の中間軸35と第2の中間軸36とを有する。そして、減速機構33は、ドライブギヤ34、35B、36Bおよびドリブンギヤ35A、36Aの直径が任意の減速比となるように設定されることにより、モータ32の動力を減速して前進用出力軸12に伝達する。
【0067】
図3において、第1のドリブンギヤ35Aは、第2のドリブンギヤ36Aと第3のドライブギヤ36Bと半径方向に重なり、かつ、第2のドリブンギヤ36Aと第3のドライブギヤ36Bとの間に設置されている。
【0068】
図5において、減速機構33は、モータ軸32Bの軸心O1と第1の中間軸35の軸心O2と第2の中間軸36の軸心O3と前進用出力軸12の軸心O4とを結ぶ第1の仮想線L1がジグザグ形状になるように、モータ軸32B、第1の中間軸35、第2の中間軸36および前進用出力軸12が設置されている。
【0069】
ここで、ジグザグ形状とは、Z字状に直線が何度も折れ曲がっている形態や、直線が前後に何度も折れ曲がっている形態をいう。
【0070】
図5において、ファイナルドリブンギヤ15Aの回転軸15aを通り鉛直方向に延びる第2の仮想線L2を設定した場合に、モータ軸32Bの軸心O1、第1の中間軸35の軸心O2および第2の中間軸36の軸心O3が第2の仮想線L2よりもマウント取付部31側、すなわち、前側に位置するように、モータ32、第1の中間軸35および第2の中間軸36が設置されている。
【0071】
第1の中間軸35は、その軸心O2が前後方向でモータ軸32Bの軸心O1よりもマウント取付部31側、すなわち、モータ軸32Bの軸心O1よりも前側に位置するように設置されている。
【0072】
第2の中間軸36は、その軸心O3が前後方向で第1の中間軸35の軸心O2に対してマウント取付部31から離れる位置、すなわち、第1の中間軸35の軸心O2よりも後側に設置されている。
【0073】
図8において、ケース部26は、周壁部28を有する。周壁部28は、レフトケース7の左側壁7Aに対してライトケース6から離れる方向(左方)に突出しており、上端28uがレフトケース7の上壁7Bよりも上方に延びている。図6に示すように、入力軸11の軸方向から見て周壁部28は、L字形状に形成されており、減速機構33の周囲を取り囲んでいる。
【0074】
図9において、カバー部27は、ボルト23B(図1参照)によって周壁部28の突出方向の先端部28aに接合(締結)されており、周壁部28の開口端を閉塞している。
【0075】
図6図7に示すように、ケース部26は、側壁部29を有する。側壁部29は、カバー部27と反対側、すなわち、ライトケース6側の周壁部28の突出方向の基端部28b(図8図9参照)に設けられている。
【0076】
図6図8において、側壁部29は、レフトケース7の上壁7Bから上方に延びる縦壁部29Aと、周壁部28の突出方向の基端部28b側において縦壁部29Aの下部からレフトケース7の上壁7Bよりも下方に延び、上壁7Bと周壁部28の下部28cとを連結する隔壁部29B(図6参照)とを有する。
【0077】
図8に示すように、入力軸11の軸方向において縦壁部29Aおよび隔壁部29Bからなる側壁部29は、モータ32と減速機構33との間に位置している。
【0078】
本実施例の側壁部29は、縦壁部29Aおよび隔壁部29Bが一体に形成されており、レフトケース7の上壁7Bを境にして上壁7Bよりも上方に位置する部位が縦壁部29Aを構成し、上壁7Bよりも下方に位置する部位が隔壁部29Bを構成する。
【0079】
図8に示すように、減速機構33は、カバー部27と、周壁部28と、側壁部29によって囲まれる減速機構収容室45に収容されている。
【0080】
図6図7において、縦壁部29Aの上部にはモータ取付部29Cが設けられている。モータ取付部29Cは、モータ32の外径、すなわち、モータケース32Aの外径と同等の外径を有する円盤状に形成されている。
【0081】
モータ取付部29Cの外周部には複数のボス部29mが設けられており、ボス部29mは、モータ取付部29Cの外周部に沿って設けられている。モータ取付部29Cにはボルト23C(図5参照)が挿通され、ボルト23Cがモータケース32Aに形成された図示しないねじ溝に締結されることにより、モータ32がモータ取付部29Cに締結される。本実施例のボス部29mおよびボルト23Cは、本発明の締結部を構成する。
【0082】
図7において、レフトケース7のフランジ部7Fに設けられた複数のボス部7fのうち、モータ取付部29Cの下方に位置する3つのボス部(図7においてモータ取付部29Cと隔壁部29Bの間において符号7fを付している3つのボス部)は、側壁部29のうちの縦壁部29Aに連結されている。
【0083】
図1図5において、モータ32の後方にはモータコネクタ32Cが設けられており、モータコネクタ32Cにはモータ32を駆動するための図示しないパワーケーブルが接続されている。
【0084】
モータ32の上部には冷却水導入管部32aと冷却水排出管部32bが設けられている。冷却水導入管部32aは、モータ32に冷却水を導入し、冷却水排出管部32bは、モータ32を冷却した冷却水をモータ32から排出する。
【0085】
図1図2に示すように、変速機ケース5にはフロントブラケット46Aおよびリヤブラケット46Bが設けられている。フロントブラケット46Aは、モータケース32Aの右端部とライトケース6とを連結しており、モータケース32Aをライトケース6に支持している。
【0086】
リヤブラケット46Bは、モータコネクタ32Cの後端部とライトケース6とを連結しており、モータコネクタ32Cをライトケース6に支持している。このように、モータ32は、モータ取付部29Cと反対側がライトケース6に連結されている。
【0087】
図8において、縦壁部29Aには軸受保持部29a、29bが設けられており、軸受保持部29a、29bは、縦壁部29Aからカバー部27側に筒状に延びている。カバー部27には軸受保持部27a、27bが設けられている。軸受保持部27a、27bは、カバー部27から縦壁部29A側に筒状に延びている。
【0088】
軸受保持部29aには軸受51Aを介してモータ軸32Bと第1のドライブギヤ34の右端側が回転自在に支持されており、軸受保持部27aには軸受51Bを介して第1のドライブギヤ34の左端側が回転自在に支持されている。
【0089】
軸受保持部29bには軸受51Cを介して第1の中間軸35の右端部が回転自在に支持されており、軸受保持部27bには軸受51Dを介して第1の中間軸35の左端部が回転自在に支持されている。
【0090】
図9において、隔壁部29Bには軸受保持部29cが設けられている。軸受保持部29cは、モータ取付部29Cとレフトケース7の上壁7Bとを連絡する側壁部29の部位に設けられている。換言すれば、軸受保持部29cは、隔壁部29Bとレフトケース7の上壁7Bとの連絡部に設けられている。
【0091】
軸受保持部29cは、一端(右端)が閉塞され、他端(左端)が開放された筒状に形成されている。隔壁部29Bと上壁7Bとの連絡部には第3のドライブギヤ36Bが収容されるギヤ用凹部29Hが設けられている。
【0092】
ギヤ用凹部29Hは、軸受保持部29cの開放端側から第2の中間軸36の半径方向の外方に延びる平面部29fと、平面部29fの半径方向の外周部から第2の中間軸36の軸方向に延びる筒状部29gとを有する。
【0093】
カバー部27には軸受保持部27cが設けられており、軸受保持部27cは、カバー部27から隔壁部29B側に筒状に延びている。軸受保持部29cには軸受51Eを介して第2の中間軸36の右端部が回転自在に支持されており、軸受保持部27cには軸受51Fを介して第2の中間軸36の左端部が回転自在に支持されている。
【0094】
すなわち、本実施例の第3のドライブギヤ36Bは、隔壁部29Bとカバー部27とによって回転自在に支持される第2の中間軸36に設置されている。
【0095】
このようにモータ軸32B、第1のドライブギヤ34、第1の中間軸35および第2の中間軸36は、側壁部29とカバー部27とに回転自在に支持されている。本実施例の第1の中間軸35および第2の中間軸36は、本発明の回転軸を構成する。
【0096】
第3のドライブギヤ36Bは、モータ軸32Bを隔壁部29Bに支持する軸受51Aに対して半径方向の外側に設置されている。換言すれば、第3のドライブギヤ36Bと軸受51Aとは、第2の中間軸36の軸方向において同じ位置に設置されている。
【0097】
図8において、ライトケース6の左側壁6Aには筒状の支持部6bが設けられている。支持部6bは、左側壁6Aからレフトケース7と離れる方向に膨出しており、支持部6bは、軸受51K(図4参照)を介してデフケース15Bの右端部に設けられた筒状部15b(図4参照)を回転自在に支持している。
【0098】
カバー部27には筒状の軸受保持部27dが設けられており、軸受保持部27dには軸受51Hを介して前進用出力軸12の左端部が回転自在に支持されている。
【0099】
ライトケース6の左側壁6Aには図示しない筒状の軸受保持部が設けられており、軸受保持部には軸受51I(図4参照)を介して入力軸11の右端部が回転自在に支持されている。
【0100】
図4において、カバー部27には筒状の軸受保持部27eが設けられており、軸受保持部27eには軸受51Jを介して入力軸11の左端部が回転自在に支持されている。
【0101】
このように入力軸11および前進用出力軸12は、カバー部27に回転自在に支持されている。すなわち、カバー部27は、モータ軸32B、第1のドライブギヤ34、第1の中間軸35、第2の中間軸36、入力軸11および前進用出力軸12を回転自在に支持している。
【0102】
図4図8において、隔壁部29Bは、レフトケース7の内部を減速機構収容室45とギヤ収容室47とに仕切っている。
【0103】
図4図6において、隔壁部29Bには開口部29hが形成されており、入力軸11および前進用出力軸12は、開口部29hを通して減速機構収容室45とギヤ収容室47とに設置されている。
【0104】
入力ギヤ16A、16B、16Cおよび出力ギヤ17A、17B、17Cは、ギヤ収容室47に設置されており、入力ギヤ16D、16E、16Fおよび出力ギヤ17D、17E、17Fは、減速機構収容室45に設置されている。
【0105】
図4図7において、レフトケース7は、デフ収容壁部7Cを有する。デフ収容壁部7Cは、レフトケース7の左側壁7Aおよび隔壁部29Bよりもライトケース6側に位置している。
【0106】
図8において、ライトケース6の左側壁6Aには筒状の支持部6bが設けられている。支持部6bは、左側壁6Aからレフトケース7と離れる方向に膨出しており、支持部6bは、軸受51K(図4参照)を介してデフケース15Bの右端部に設けられた筒状部15b(図4参照)を回転自在に支持している。
【0107】
図7において、デフ収容壁部7Cには筒状の支持部7cが設けられている。支持部7cは、デフ収容壁部7Cからライトケース6と離れる方向に膨出しており、支持部7cは、軸受51Lを介してデフケース15Bの左端部に設けられた筒状部15cを回転自在に支持している(図5参照)。
【0108】
図8において、ディファレンシャル装置15は、レフトケース7の内部においてライトケース6側、すなわち、エンジン8側の端部に設置されており、左側壁6Aとデフ収容壁部7C(図7参照)に収容されている。
【0109】
図4に示すように、レフトケース7は、入力軸11の軸方向において入力軸11と前進用出力軸12に対向する左側壁7Aと、ディファレンシャル装置15に対向するデフ収容壁部7Cとを有し、左側壁7Aとデフ収容壁部7Cは、入力軸11の軸方向において段違いに形成されている。
【0110】
図7図9において、レフトケース7は、段差壁部7Dを有する。段差壁部7Dは、左側壁7Aとデフ収容壁部7Cとを連絡しており、支持部7cの筒状の形状に沿って湾曲している。
【0111】
図9に示すように、段差壁部7Dは、周壁部28に連絡されており、周壁部28からデフ収容壁部7Cに向かって延びている。段差壁部7Dにはリブ48A、48Bが設けられている。
【0112】
リブ48A、48Bは、デフ収容壁部7Cから左側壁7Aまで延びており、周壁部28と隔壁部29Bとを連結している。
【0113】
図1図2において、モータ32よりも前側のレフトケース7の上部にはシフトユニット41が設置されている。車両1の平面視において、モータ32とシフトユニット41は、マウント取付部31に近づくように、マウント取付部31の前後に設置されている。
【0114】
シフトユニット41は、駆動装置4のシフト操作およびクラッチ操作を行うように駆動される。ここで、シフト操作とは、駆動装置4の変速段を切換える操作をいい、クラッチ操作とは、駆動装置4のクラッチ10を係合(接続)または開放(切断)する操作をいう。
【0115】
図4において、レフトケース7にはシフトアンドセレクト軸42が収容されている。シフトアンドセレクト軸42は、レフトケース7に対して軸心方向に移動自在、かつ回転自在となっており、シフトユニット41によって操作される。
【0116】
シフトユニット41は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、例えば、予めスロットル開度と車速とがパラメータとして設定された変速マップに基づいて、シフトアンドセレクト軸42を操作する。
【0117】
シフトアンドセレクト軸42は、いずれも図示しないシフトヨーク、シフタ軸およびシフトフォーク等からなる変速操作機構を介して第1の同期装置18から第4の同期装置21を操作して変速段の制御を行う。なお、シフトユニット41は、油圧機構やモータ機構等によってシフトアンドセレクト軸42を操作するが、駆動方式は、これら油圧機構やモータ機構等に限定されるものではない。
【0118】
次に、作用を説明する。
車両1の前進時におけるエンジン走行時おいては、エンジン8の動力が入力軸11から所定の変速段を成立する入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fのいずれかを介して出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fのいずれかに伝達される。
【0119】
これにより、前進用出力軸12のファイナルドライブギヤ17Gからファイナルドリブンギヤ15Aに動力が伝達され、エンジン8の動力がディファレンシャル装置15の差動機構15Cによって左右のドライブシャフト24L、24Rに分配されて駆動輪に伝達され、車両1が前進走行する。
【0120】
一方、車両1の前進時におけるモータ走行時においては、第1の同期装置18から第4の同期装置21が中立位置に位置した状態で、モータ32の動力がモータ軸32Bから第1のドライブギヤ34を介して第1のドリブンギヤ35Aに伝達される。
【0121】
次いで、モータ32の動力は、第2のドライブギヤ35B、第2のドリブンギヤ36Aおよび第3のドライブギヤ36Bを介して4速段用の出力ギヤ17Dに伝達される。
【0122】
減速機構33は、ドライブギヤ34、35B、36Bおよびドリブンギヤ35A、36Aの直径が任意の減速比となるように設定されているので、モータ32の動力が減速されて前進用出力軸12に伝達される。
【0123】
これにより、前進用出力軸12のファイナルドライブギヤ17Gからファイナルドリブンギヤ15Aに動力が伝達され、車両1が前進走行する。
【0124】
本実施例の駆動装置4は、エンジン8に連結されるライトケース6と、エンジン8と反対側からライトケース6に連結されるレフトケース7とを有する変速機ケース5と、レフトケース7の上部に取付けられたモータ32と、モータ32の動力を前進用出力軸12に伝達する減速機構33と、減速機構33を収容する減速機ケース25とを備えている。
【0125】
減速機ケース25は、レフトケース7に一体に形成され、減速機構33を取り囲むケース部26と、ケース部26に接合されたカバー部27とを有する。これにより、変速機ケース5と減速機ケース25の間のシール部を減少させることができ、減速機ケース25の構造の簡素化を図ることができる。
【0126】
また、本実施例の駆動装置によれば、ケース部26は、レフトケース7の上壁7Bから上方に延び、モータ32と減速機構33との間に位置する側壁部29を有する。
【0127】
側壁部29は、モータ32の外径と同等の外径を有し、モータ32が連結される円盤状のモータ取付部29Cを備えており、モータ取付部29Cの外周部に、モータ32をモータ取付部29Cに締結する複数のボス部29mおよびボルト23Cが設けられている。
【0128】
これにより、減速機ケース25の側壁部29によってモータ取付部29Cをレフトケース7の上壁7Bに強固に連結でき、モータ取付部29Cの剛性を高くできる。これに加えて、モータ32を複数のボルト23Cによって複数のボス部29mに締結することにより、剛性の高いモータ取付部29Cにモータ32を強固に連結できる。このため、モータ32の振動を抑制できる。
【0129】
この結果、減速機ケース25によって変速機ケース5に連結されるモータ32を有するハイブリッド車両用の駆動装置4において、減速機ケース25の構造を簡素化しつつ、モータ32の振動を抑制できる。
【0130】
また、本実施例の駆動装置4によれば、減速機構33は、モータ32から前進用出力軸12に動力を伝達する動力伝達経路上に第1の中間軸35および第2の中間軸36を有する。
【0131】
側壁部29は、第1の中間軸35と第2の中間軸36とを保持する筒状の軸受保持部29a、29bを有し、軸受保持部29bは、モータ取付部29Cとレフトケース7の上壁7Bとを連絡する側壁部29の部位に設けられている。
【0132】
筒状の軸受保持部29a、29bは、平坦面に比べて剛性が高い。このため、軸受保持部29a、29bのうち、軸受保持部29bをモータ取付部29Cとレフトケース7の上壁7Bとを連絡する側壁部29の部位に設けることにより、縦壁部29Aの上壁7B側の剛性を高くできる。
【0133】
これにより、剛性の高いモータ取付部29Cを、縦壁部29Aを介してレフトケース7により一層強固に連結できる。したがって、モータ取付部29Cがレフトケース7に対して変形することをより効果的に抑制でき、モータ32の振動をより効果的に抑制できる。
【0134】
また、本実施例の駆動装置4によれば、レフトケース7は、複数のボルト23Aによってライトケース6に締結されるフランジ部7Fを有する。フランジ部7Fにはボルト23Aが挿入される複数のボス部7fがフランジ部7Fに沿って設けられており、3つのボス部7fが側壁部29の縦壁部29Aに連結されている。
【0135】
ライトケース6のフランジ部6Fに締結されるレフトケース7のフランジ部7Fは、レフトケース7の他の壁部に比べて剛性が高い部位である。このため、フランジ部7Fに設けられた剛性の高いボス部7fを縦壁部29Aに連結することにより、縦壁部29Aの剛性をより一層高くできる。
【0136】
これにより、剛性の高いモータ取付部29Cを、縦壁部29Aを介してレフトケース7により一層強固に連結できる。したがって、モータ取付部29Cがレフトケース7に対して変形することをより効果的に抑制でき、モータ32の振動をより効果的に抑制できる。
【0137】
なお、本実施例のボス部7fのうちの3つのボス部7fが縦壁部29Aに連結されているが、1つ以上のボス部7fが縦壁部29Aに連結されていればよい。
【0138】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0139】
1...ハイブリッド車両、4...駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)、5...変速機ケース、6...ライトケース(第1のケース)、7...レフトケース(第2のケース)、7B...上壁(第2のケースの上壁)、7F...フランジ部、7f...ボス部、8...エンジン(動力源)、11...入力軸(変速機構)、12...前進用出力軸(変速機構)、15...ディファレンシャル装置、16A,16B,16C,16D,16E,16F...入力ギヤ(変速機構)、17A,17B,17C,17D,17E,17F...出力ギヤ(変速機構)、23A...ボルト(締結具)、23C...ボルト(締結部)、25...減速機ケース、26...ケース部、27...カバー部、29...側壁部、29C...モータ取付部、29a,29b,29c...軸受保持部、29m...ボス部(締結部)、32...モータ、33...減速機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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