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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H01R13/533 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019003686
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020113449
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 侑希
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】林 昭宏
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162495(WO,A1)
【文献】特開2018-010787(JP,A)
【文献】特開2007-258010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
B60L 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子を保持するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに収容された蓄熱材と、
を有し、
前記コネクタハウジングは、前記蓄熱材を収容する収容凹部を備え、
前記収容凹部は、長手方向と短手方向とを有する形状であって、前記蓄熱材と前記端子とが前記端子の長さ方向に沿って互いに平行に延在するように、前記蓄熱材を収容する前記収容凹部は、前記収容凹部のうち前記長手方向に平行な部分が前記端子の長さ方向に平行に延在するコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングは、前記収容凹部を閉止する蓋部材を備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記収容凹部を区画する区画壁を有する、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記区画壁は、前記端子の中心を通る直線に沿って放射状に形成されている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジングは、前記端子を保持する端子保持部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に組付けられ、前記端子保持部に挿入されて前記端子を押える端子押え部を有するリテーナとを備え、
前記蓄熱材は、前記リテーナに収容される、
請求項2~4の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジング本体は、前記リテーナが固定される筒部を備え、
前記リテーナは、基部と、前記基部から前記ハウジング本体に向かって延び、前記端子保持部と前記筒部との間に挿入される有底筒状の挿入部と、前記基部から前記ハウジング本体とは逆方向に延び、前記端子に接続された電線が挿通される電線保持部と、前記電線保持部を囲む包囲壁部と、前記電線保持部から前記包囲壁部まで延びる隔壁部とを備え、
前記収容凹部は、前記挿入部と前記包囲壁部と前記隔壁部と前記電線保持部とにより形成される、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングは、車両に取り付けられ、充電用コネクタが嵌合されるものである、請求項1~6の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
複数の前記端子は第1の方向に沿って配列され、
前記区画壁は、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って延びるように形成されている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタハウジングは、
前記端子を保持するハウジング本体と、
前記ハウジング本体が取着されるシェルと、
を備え、
前記蓄熱材は前記ハウジング本体に収容される、
請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記コネクタハウジングの前記シェルは、車両に搭載された機器のケースに固定されるものである、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
端子と、
前記端子を保持するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに収容された蓄熱材と、
を有し、
前記コネクタハウジングは、前記蓄熱材を収容する収容凹部と、前記収容凹部を閉止する蓋部材とを備え
前記コネクタハウジングは、前記端子を保持する端子保持部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に組付けられ、前記端子保持部に挿入されて前記端子を押える端子押え部を有するリテーナとを備え、
前記蓄熱材は、前記リテーナに収容され
前記ハウジング本体は、前記リテーナが固定される筒部を備え、
前記リテーナは、基部と、前記基部から前記ハウジング本体に向かって延び、前記端子保持部と前記筒部との間に挿入される有底筒状の挿入部と、前記基部から前記ハウジング本体とは逆方向に延び、前記端子に接続された電線が挿通される電線保持部と、前記電線保持部を囲む包囲壁部と、前記電線保持部から前記包囲壁部まで延びる隔壁部とを備え、
前記収容凹部は、前記挿入部と前記包囲壁部と前記隔壁部と前記電線保持部とにより形成される、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車等の車両は、搭載された蓄電装置を充電するための充電用コネクタを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような車両は、充電用コネクタと蓄電装置との間を接続する部材として、各種のハーネスやハーネスを接続する端子接続部を含む各種のコネクタを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-26273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上述の車両では、搭載された蓄電装置の大容量化や充電時間の短縮などのため、大電流化が求められている。すると、通電によってコネクタの端子接続部における発熱によってコネクタの温度上昇が大きくなる。このため、充電用コネクタ等の端子接続部を有するコネクタにおいて、通電時における温度上昇を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、通電時の温度上昇を抑制可能としたコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するコネクタは、端子と、前記端子を保持するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容された蓄熱材と、を有する。
この構成によれば、コネクタは、その使用時に流れる大きな電流により発熱する。蓄熱材は、端子にて発生する熱を吸収するため、端子等の急激な温度上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコネクタによれば、通電時の温度上昇を抑制可能としたコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態のコネクタの斜視図。
図2】第一実施形態のコネクタの側面図。
図3図2に示すコネクタの3-3線断面図。
図4】第一実施形態のコネクタの背面図。
図5図2に示すコネクタの5-5線断面図。
図6】第二実施形態のコネクタの斜視図。
図7】第二実施形態のコネクタの平面図。
図8図7に示すコネクタの8-8線断面図。
図9図7に示すコネクタの9-9線断面図。
図10】変更例のコネクタの分解斜視図。
図11】変更例のコネクタの側面図。
図12図11に示すコネクタの12-12線断面図。
図13】変更例のコネクタの背面図。
図14図11に示すコネクタの14-14線断面図。
図15】変更例のコネクタの斜視図。
図16】変更例のコネクタの平面図。
図17図16に示すコネクタの17-17線断面図。
図18図16に示すコネクタの18-18線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0010】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を図1から図5に従って説明する。
図1から図5に示す車両側コネクタ1は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されている蓄電装置を充電するためのものである。図2に示すように、車両側コネクタ1は、車両91に対して図示しない例えばボルト等の締結部材によって固定されている。車両側コネクタ1は、図1等に示す電線80を介して図示しない蓄電装置に接続される。図2及び図3に示すように、車両側コネクタ1には、相手側コネクタとして充電器側コネクタ95が図2において左側から接続される。この図2及び図3に示す左側は車両91の外側である。図2及び図3に示す左右方向は充電器側コネクタ95の挿抜方向である。以下の説明において、図2の左側を前方、図2の右側を後方、図2の上側を上方、図2の下側を下方とする。また、図3の上側を右方、下側を下方とする。
【0011】
図3に示すように、車両側コネクタ1は、コネクタハウジング10、複数(本実施形態では2本)の車両側端子50、蓄熱材60を備えている。コネクタハウジング10は、ハウジング本体20、リテーナ30を有している。
【0012】
ハウジング本体20は、絶縁性を有する合成樹脂製である。ハウジング本体20は、嵌合部21、フランジ部22、筒部23、端子収容部24、端子保持部25を有している。
嵌合部21は、充電器側コネクタ95が挿入されるものである。嵌合部21は、前端が開口した有底円筒状であり、円筒状のフード部21aと、フード部21aの後端を閉塞する奥壁部21bとを有している。
【0013】
フランジ部22は、フード部21aの外周面から外側に向かって突出している。図1に示すように、フランジ部22は、概略四角形の板状である。フランジ部22には、フランジ部22を前後方向に貫通する複数の取付孔22aを有している。取付孔22aには、図示しない締結部材が挿通され、これらの締結部材によって車両側コネクタ1は図2に示す車両91に固定される。
【0014】
筒部23は、フランジ部22から後方に向かって延びている。筒部23は、概略円筒状である。図1及び図2に示すように、本実施形態の車両側コネクタ1において、筒部23は、嵌合部21に対して、下方向にずれている。
【0015】
図3に示すように、端子収容部24は、奥壁部21bから前方に向かって延びている。端子収容部24は、概略円筒状である。2つの端子収容部24は、車両側コネクタ1の左右方向に並んで設けられている。
【0016】
端子保持部25は、奥壁部21bの後方に設けられている。端子保持部25は、端子収容部24の内径よりも大きな内径の概略円筒状である。2つの端子保持部25は、2つの端子収容部24と、同軸状に設けられている。端子保持部25の内部は、端子収容部24の内部と連通している。端子収容部24及び端子保持部25には、車両側端子50が挿入されている。つまり、端子収容部24及び端子保持部25は、車両側端子50を収容する端子収容筒を構成する。
【0017】
車両側端子50は、雌型端子であり、充電器側コネクタ95の充電器側端子96が挿入される。車両側端子50は、外周面から外側に向かって突出する張出部51を有している。この張出部51は奥壁部21bの後面に当接する。車両側端子50は、張出部51より後方に電線接続部52を有している。本実施形態において、電線接続部52は、円筒状であり、内部に電線80の芯線81が挿入されている。電線接続部52は、例えば圧着により、電線80の芯線81を接続されている。
【0018】
図1から図3に示すように、リテーナ30は、筒部23の後端に取り付けられている。リテーナ30は、図3に示す車両側端子50を抜け止めする。リテーナ30は、合成樹脂製である。
【0019】
図3に示すように、リテーナ30は、基部31、周壁32、端子押え部33、電線保持部34を有している。基部31は円形の板状である。周壁32は、基部31の周縁部から前方に突出している。周壁32は、ハウジング本体20の筒部23の外側に配設される。周壁32とハウジング本体20の筒部23の外側面には、互いに係合する図示しない係合部が形成されている。リテーナ30は、周壁32の係合部と筒部23の係合部を係合することにより、筒部23の後端に取り付けられている。
【0020】
端子押え部33は、基部31から前方に突出している。端子押え部33は、ハウジング本体20の端子保持部25に対応する位置に設けられている。本実施形態において、端子押え部33は、円筒状に形成されている。端子押え部33は、端子保持部25の内面と車両側端子50の外面との間に挿入される。そして、端子押え部33の先端は、車両側端子50の張出部51に当接し、車両側端子50を後方から抜け止めする。
【0021】
電線保持部34は、基部31から後方に突出している。電線保持部34は、端子押え部33に対応する位置に設けられている。本実施形態において、電線保持部34は、円筒状に形成されている。電線保持部34は、端子押え部33と同一径にて形成されている。電線保持部34の内部と端子押え部33の内部とは互いに連通している。電線保持部34には電線80が挿通される。
【0022】
なお、本実施形態のリテーナ30は、図4及び図5に示すように、複数の信号線保持部35を有している。図は省略しているが、本実施形態の車両側コネクタ1は、複数の信号用端子を備えている。信号用端子は、充電装置との間の通信に用いられる。信号用端子は上述の車両側端子50と同様に、ハウジング本体20に収容され、リテーナ30が有する端子保持部によって抜け止めされている。リテーナ30の信号線保持部35には、信号用端子に接続された信号線が挿通される。
【0023】
包囲壁部36は、基部31から後方に突出している。包囲壁部36は、円筒状に形成されている。包囲壁部36は、一対の電線保持部34及び複数の信号線保持部35を一括して包囲する。
【0024】
図3に示すように、本実施形態のリテーナ30は、ハウジング本体20の端子保持部25と筒部23との間に挿入される挿入部37を有している。挿入部37は、基部31から前方に突出している。挿入部37は、後方が開口し、前方に底部を有する有底筒状に形成されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、本実施形態のリテーナ30は、さらに、隔壁部38,39及び蓋部材43を有している。隔壁部38,39は、電線保持部34から包囲壁部36まで延びている。本実施形態の隔壁部38は、電線保持部34から上方に向かって包囲壁部36まで延びている。また、本実施形態の隔壁部39は、電線保持部34から下方に向かって包囲壁部36まで延びている。
【0026】
上述した挿入部37と、隔壁部38,39と、電線保持部34と包囲壁部36は、収容凹部40を形成する。収容凹部40には蓄熱材60が収容されている。蓄熱材60は、一時的に熱を貯めることができる。蓄熱材60としては、液体と固体の相変化時の潜熱を利用した材料を用いることができる。また、蓄熱材60としては、使用する温度範囲に融点を持つ材料を用いることができる。蓄熱材60の材料としては、例えば、パラフィン、硫酸ナトリウム10水和物、酢酸ナトリウム3水和物、二酸化バナジウム、等を用いることができる。
【0027】
本実施形態において、収容凹部40には、少なくとも1つの区画壁41が設けられている。本実施形態の車両側コネクタ1を構成するリテーナ30は、各収容凹部40にそれぞれ6つの区画壁41が設けられている。区画壁41は、収容凹部40を複数の区画室42に区画する。上述の蓄熱材60は、各区画室42にそれぞれ収容される。
【0028】
図5に示すように、本実施形態において、各区画壁41は、車両側端子50の中心を通る直線に沿って放射状に形成されている。放射状の区画壁41により、各区画室42に収容された蓄熱材60はそれぞれ、図3に示す端子保持部25と電線保持部34の外周面と接する。このため、各区画室42の蓄熱材60は、端子保持部25と電線保持部34とから発せられる熱を貯める。
【0029】
収容凹部40は、蓋部材43により閉止されている。蓋部材43により、収容凹部40にて液化した蓄熱材60が漏れ出すのを防ぐ。なお、蓋部材43は、各区画室42において、液化した蓄熱材60が流通不能であることが好ましい。蓋部材43は、例えば、超音波溶接、レーザ溶接、等の方法により固着されている。
【0030】
(作用)
次に、上記のように構成された車両側コネクタ1の作用を説明する。
図1に示す充電器側コネクタ95を車両側コネクタに嵌合させ、車両の蓄電装置に対して車外の充電器から、充電器側コネクタ95、車両側コネクタ1を介して蓄電装置に充電電流が供給される。充電時間の短縮のため、大きな充電電流が供給される。この充電電流の供給開始時では、充電器側端子96と車両側端子50との接触部分、車両側端子50、車両側端子50と電線80との接続部分、等において発熱する。このため、車両側端子50全体が熱を持つ。車両側端子50等における熱は、充電開始時に急激に上昇し、所定時間経過すると開始時の最大温度よりも低い温度で推移する。
【0031】
コネクタハウジング10には蓄熱材60が収容されている。本実施形態において、蓄熱材60はリテーナ30に収容されている。蓄熱材60は、一時的に熱を貯めるものであり、車両側端子50等にて発生する熱によって固体から液体に変化することによって潜熱(溶解熱)を一時的に貯める。つまり、蓄熱材60は、車両側端子50にて生じる熱を吸収する。従って、車両側端子50の急激な温度上昇を抑制できる。
【0032】
また、蓄熱材60が熱を吸収することにより、車両側端子50から電線80やコネクタハウジング10等へ伝わる熱量を少なくする。このため、コネクタハウジング10等の急激な温度上昇を抑制できる。また、蓄熱材60を用いることにより、蓄熱材60を用いていない場合の最大温度よりも低い温度とすることができる。
【0033】
リテーナ30は、コネクタハウジング10の筒部23と端子保持部25との間に挿入される挿入部37を有している。また、リテーナ30は、端子保持部25に挿入されて車両側端子50を抜け止めする端子押え部33、車両側端子50に接続された電線80を保持する電線保持部34を有している。さらに、リテーナ30は、電線保持部34から包囲壁部36まで延びる隔壁部38,39を有している。そして、挿入部37、電線保持部34、隔壁部38,39、包囲壁部36により構成された収容凹部40には蓄熱材60が収容されている。
【0034】
そして、充電開始から時間経過すると、車両側端子50の温度は、所定の温度付近で推移するようになる。電線80やコネクタハウジング10は、一時的でも最も高い温度に耐えられるように、電線80の太さやコネクタハウジング10の耐熱性が設定される。本実施形態では、蓄熱材60を用いることにより、電線80やコネクタハウジング10の温度上昇を抑制できる。このため、細い電線80、つまり軽い電線80を用いることができる。
【0035】
車両側コネクタ1のリテーナ30は、電線保持部34から包囲壁部36まで延びる隔壁部38,39を有している。車両側端子50の熱は、リテーナ30の電線保持部34から包囲壁部36に向かって伝達される。隔壁部38,39には蓄熱材60が接している。従って、車両側端子50の熱を蓄熱材60にて吸収し易くなる。このため、車両側端子50や電線80の温度上昇をより抑制できる。
【0036】
また、リテーナ30は、収容凹部40の内部を区画する複数の区画壁41を有している。各区画壁41により区画された区画室42に蓄熱材60が収容されている。車両側端子50の熱は、区画壁41を介して各区画室42の蓄熱材60に伝達する。従って、車両側端子50の熱を蓄熱材60にて吸収し易くなる。このため、車両側端子50や電線80の温度上昇をより抑制できる。
【0037】
複数の区画壁41は、収容凹部40の内部において、車両側端子50の中心を通る直線に沿って放射状に形成されている。車両側端子50の熱は、区画壁41を介してリテーナ30の外側に向かって伝達される。従って、車両側端子50の熱をリテーナ30の外側に効率よく放熱できる。
【0038】
充電が終了すると、充電器側コネクタ95は、車両側コネクタ1から外される。車両側コネクタ1の蓄熱材60に貯められた熱は、コネクタハウジング10を介して徐々に放熱される。放熱によって蓄熱材60は固化する。充電してないときには、車両側端子50には電流が流れないので、発熱しない。蓄熱材60は、放熱し、凝固する。
【0039】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1-1)車両側コネクタ1は、車両側端子50と、車両側端子50を保持するコネクタハウジング10と、コネクタハウジング10に収容された蓄熱材60とを有している。車両側コネクタ1は、その使用時である充電時に充電器側コネクタ95が嵌合される。車両側端子50は、充電時間の短縮のため、大きな充電電流が流れる。この充電電流の供給開始時では、充電器側端子96と車両側端子50との接触部分、車両側端子50、車両側端子50と電線80との接続部分、等において発熱する。蓄熱材60は、車両側端子50にて発生する熱を吸収するため、車両側端子50等の急激な温度上昇を抑制できる。
【0040】
(1-2)コネクタハウジング10は、蓄熱材60を収容する収容凹部40と、収容凹部40を閉止する蓋部材43とを備える。これにより、蓄熱材60を収容したコネクタハウジング10を提供できる。
【0041】
(1-3)コネクタハウジング10は、収容凹部40を区画する区画壁41を有している。蓄熱材60は、区画壁41により収容凹部40を区画した区画室42に収容される。蓄熱材60を複数の区画室42に収容することにより、蓄熱材60のかたよりを低減し、車両側端子50の熱をより容易に吸収できる。
【0042】
(1-4)複数の区画壁41は、収容凹部40の内部において、車両側端子50の中心を通る直線に沿って放射状に形成されている。車両側端子50の熱は、区画壁41を介してリテーナ30の外側に向かって伝達される。従って、車両側端子50の熱をリテーナ30の外側に効率よく放熱できる。
【0043】
(1-5)蓄熱材60は、コネクタハウジング10を構成し、車両側端子50を抜け止めするリテーナ30に収容される。このため、蓄熱材60を収容する部材を別途設ける必要がなく、部材の増加を抑制できる。
【0044】
(1-6)蓄熱材60を収容する収容凹部40は、電線80が挿通される電線保持部34と、電線保持部34を囲む包囲壁部36と、電線保持部34から包囲壁部36まで延びる隔壁部38,39とにより形成される。このように、リテーナ30の包囲壁部36の内側に収容凹部40を設けることにより、リテーナ30の外側に蓄熱材60を収容する部分を別途設ける場合と比べ、車両側コネクタ1の大型化を抑制できる。
【0045】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態を図6から図9に従って説明する。
図6から図9に示すコネクタ100は、例えば、車両に備えられるインバータ等の機器のケース190に固定される端子台である。
【0046】
コネクタ100は、コネクタハウジング110、機器側端子150を有している。コネクタハウジング110は、ハウジング本体120、シェル130を有している。
シェル130は、ハウジング本体120を収容する収容部131と、機器のケース190に固定されるフランジ部132とを有している。シェル130は、例えば金属製である。
【0047】
ハウジング本体120は、例えば合成樹脂製である。図6に示すように、ハウジング本体120は、ネジ181によりシェル130に固定されている。
ハウジング本体120は、嵌合部121、端子保持部122、ナット保持部123を有している。嵌合部121は、概略筒状に形成され、図示しないケーブル側のコネクタが嵌合される。端子保持部122は、機器側端子150を保持する。機器側端子150は、例えば銅等の金属よりなる。2つの機器側端子150はそれぞれ、長方形の板状に形成されている。図8に示すように、2つの機器側端子150は、左右方向に沿って配列されている。機器側端子150の両端には、挿通孔150a,150bが形成されている。機器側端子150は、挿通孔150a,150bが形成された端部を露出するように、端子保持部122に保持されている。
【0048】
上述の嵌合部121は、機器側端子150の挿通孔150aに対応する位置に、ナット161を保持している。ナット保持部123は、ハウジング本体120から突出する機器側端子150の挿通孔150bに対応する位置に、ナット162を保持する。機器側端子150は、その挿通孔150bに挿通されるボルトとナット162とにより、機器内部の電線の端部に接続された端子と接続される。
【0049】
嵌合部121には、第1開口部124及び第2開口部125が形成されている。第1開口部124は、嵌合部121にケーブル側のコネクタを差し込むためのものである。第2開口部125は、機器側端子150とコネクタの電線側端子とを接続するボルトと、その作業時に工具を挿入するためのものである。第1開口部124は、嵌合部121に差し込まれるコネクタにより閉止される。第2開口部125は、図示しないキャップをシェル130に固定することにより閉止される。
【0050】
端子保持部122は、収容凹部126を有している。収容凹部126は、機器側端子150の上方において、機器側端子150が突出する側から、コネクタが嵌合される嵌合部121の側に向かって凹設されている。収容凹部126には、蓄熱材160が収容されている。収容凹部126の開口は蓋部材127によって閉止されている。
【0051】
蓄熱材160は、一時的に熱を貯めることができる。蓄熱材160としては、液体と固体の相変化時の潜熱を利用した材料を用いることができる。また、蓄熱材160としては、使用する温度範囲に融点を持つ材料を用いることができる。蓄熱材160の材料としては、例えば、パラフィン、硫酸ナトリウム10水和物、酢酸ナトリウム3水和物、二酸化バナジウム、等を用いることができる。
【0052】
図8に示すように、収容凹部126には、少なくとも1つの区画壁128が形成されている。本実施形態のコネクタ100は、収容凹部126内に7つの区画壁128を有している。区画壁128は、収容凹部126の内部を区画室129に区画する。本実施形態において、区画壁128は、2つの機器側端子150の配列方向と直交する方向に沿って延びるように形成されている。図8に示すように、本実施形態において、2つの機器側端子150は図8の左右方向に沿って配列されている。そして、区画壁128は、上下方向に延びるように形成されている。蓄熱材160は、各区画室129に収容されている。
【0053】
(作用)
次に、本実施形態のコネクタ100の作用を説明する。
図8及び図9に示すように、コネクタハウジング110には蓄熱材160が収容されている。蓄熱材160は、一時的に熱を貯めるものであり、機器側端子150等にて発生する熱によって固体から液体に変化することによって潜熱(溶解熱)を一時的に貯める。つまり、蓄熱材160は、機器側端子150にて生じる熱を吸収する。従って、機器側端子150の急激な温度上昇を抑制できる。
【0054】
また、蓄熱材160が熱を吸収することにより、機器側端子150から電線やコネクタハウジング110等へ伝わる熱量を少なくする。このため、コネクタハウジング110等の急激な温度上昇を抑制できる。また、蓄熱材160を用いることにより、蓄熱材160を用いていない場合の最大温度よりも低い温度とすることができる。
【0055】
通電開始から所定時間経過すると、機器側端子150の温度は、所定の温度付近で推移するようになる。電線やコネクタハウジング110は、一時的でも最も高い温度に耐えられるように、電線の太さやコネクタハウジング110の耐熱性が設定される。本実施形態では、蓄熱材160を用いることにより、電線やコネクタハウジング110の温度上昇を抑制できる。このため、細い電線、つまり軽い電線を用いることができる。
【0056】
コネクタハウジング110は、収容凹部126の内部を区画する複数の区画壁128を有している。各区画壁128により区画された区画室129に蓄熱材160が収容されている。機器側端子150の熱は、区画壁128を介して各区画室129の蓄熱材160に伝達する。従って、機器側端子150の熱を蓄熱材160にて吸収し易くなる。このため、機器側端子150等の温度上昇をより抑制できる。
【0057】
複数の区画壁128は、機器側端子150の配列方向と直交する方向に沿って延びるように形成されている。各機器側端子150の熱は、機器側端子150から区画壁128を介してコネクタハウジング110の上部へと伝達され、コネクタハウジング110の外側に放熱される。従って、機器側端子150の熱をコネクタハウジング110の外部へと効率よく放熱できる。
【0058】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)コネクタ100は、機器側端子150と、機器側端子150を保持するコネクタハウジング110と、コネクタハウジング110に収容された蓄熱材160とを有している。機器側端子150は、コネクタ100の使用時に流れる電流により発熱する。蓄熱材160は、機器側端子150にて発生する熱を吸収するため、機器側端子150等の急激な温度上昇を抑制できる。
【0059】
(2-2)コネクタハウジング110のハウジング本体120は、蓄熱材160を収容する収容凹部126と、収容凹部126を閉止する蓋部材127とを備える。これにより、蓄熱材160を収容したコネクタ100を容易に提供できる。
【0060】
(2-3)ハウジング本体120は、収容凹部126を区画する区画壁128を有している。蓄熱材160は、区画壁128により収容凹部126を区画した区画室129に収容される。この蓄熱材160を複数の区画室129に収容することにより、蓄熱材160のかたよりを低減し、機器側端子150の熱をより容易に吸収できる。
【0061】
(2-4)複数の区画壁128は、機器側端子150の配列方向と直交する方向に沿って延びるように形成されている。機器側端子150の熱は、機器側端子150から区画壁128を介してコネクタハウジング110の上部へと伝達される。従って、機器側端子150の熱をコネクタハウジング110の外側に効率よく放熱できる。
【0062】
(変更例)
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記各実施形態に対し、構成を適宜変更してもよい。
【0063】
図10から図14は、第一実施形態に対する変更例の車両側コネクタ1aを示す。なお、変形例の説明において、第一実施形態と同じ部材については同じ符号を付して説明の全てまたは一部を省略する。
【0064】
この変更例では、リテーナ30の収容凹部40には蓄熱体70が収容されている。蓄熱体70は、ケース71と、ケース71に封入された蓄熱材60とを有している。ケース71は、後方が開口した有底筒状のケース本体72と、ケース本体72の開口を閉止する蓋部材73とを備えている。ケース本体72の内部には、上記実施形態と同様に複数の区画壁74が設けられている。複数の区画壁74は、ケース71の内部を複数の区画室75に区画する。このように、蓄熱体70をリテーナ30の収容凹部40に収容することにより、上記第一実施形態と同じ効果が得られる。更に、蓄熱材60をケース71に収容することにより、蓄熱材60の配設や交換を容易に行うことができる。
【0065】
図15から図18は、第二実施形態に対する変更例のコネクタ100aを示す。なお、変形例の説明において、第二実施形態と同じ部材については同じ符号を付して説明の全てまたは一部を省略する。
【0066】
この変更例では、コネクタハウジング110を構成するハウジング本体120の収容凹部126に蓄熱体170が収容されている。蓄熱体170は、ケース171と、ケース171に封入された蓄熱材160とを有している。ケース171は、後方が開口した有底筒状のケース本体172と、ケース本体172の開口を閉止する蓋部材173とを備えている。ケース本体172の内部には、上記実施形態と同様に複数の区画壁174が設けられている。複数の区画壁174は、ケース171の内部を複数の区画室175に区画する。このように、蓄熱体170を、コネクタハウジング110を構成するハウジング本体120の収容凹部126に収容することにより、上記第二実施形態と同じ効果が得られる。更に、蓄熱材160をケース171に収容することにより、蓄熱材160の配設や交換を容易に行うことができる。
【0067】
・上記各実施形態及びそれらの変更例において、区画壁41,128,74,174の延びる方向を適宜変更してもよい。
・上記各実施形態及びそれらの変更例において、区画壁41,128,74,174の数を適宜変更してもよい。
【0068】
・上記各実施形態及びそれらの変更例において、区画壁41,128,74,174を省略してもよい。
・第一実施形態及びその変更例では、車両側端子50に電線80の芯線81を直接挿入して接続する構成としたが、例えば車両側端子に螺入するネジにより電線の芯線に接続した端子を車両側端子に固定する構成としてもよい。
【0069】
・第二実施形態及びその変更例において、機器側端子150に対して電線をカシメ等によって接続する構成としてもよい。
・上記各実施形態及びそれらの変更例において、車両側端子50を雄型端子とし、充電器側端子96を雌型端子としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両側コネクタ、10…コネクタハウジング、20…ハウジング本体、23…筒部、25…端子保持部、30…リテーナ、33…端子押え部、34…電線保持部、36…包囲壁部、37…挿入部、38…隔壁部、39…隔壁部、40…収容凹部、41…区画壁、60…蓄熱材、70…蓄熱体、71…ケース、74…区画壁、80…電線、91…車両、100…コネクタ、100a…コネクタ、110…コネクタハウジング、120…ハウジング本体、122…端子保持部、126…収容凹部、128…区画壁、130…シェル、160…蓄熱材、170…蓄熱体、171…ケース、174…区画壁。
図1
図2
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