(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
(21)【出願番号】P 2019003706
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-011135(JP,A)
【文献】特開2001-030739(JP,A)
【文献】実開昭59-058617(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291468(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0312030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に向かう空調風が流れる空気通路(2a)が内部に設けられている空調ケース(2)と、
前記空気通路に設けられ、空気を冷却して冷風を生成する冷却器(6)と、
前記空気通路に設けられ、空気を加熱して温風を生成する加熱器(7、8)と、
空調風の流れにおいて、前記冷却器よりも下流、かつ前記加熱器よりも下流に設けられ、回転軸(43)を中心に回動する板状のドア本体(44)を用いて前記空気通路を流れる空調風の量を調整するドア装置(45)と、
前記空気通路に設けられ、前記ドア本体の先端部分の厚さ寸法よりも大きな前記回転軸の周方向長さを有し、前記ドア本体の先端部分との間に空調風が通過可能な隙間を形成可能なドア対向面(70、270)とを備え、
前記ドア対向面は、第1ドア対向面(71、271)と第2ドア対向面(72、272)とを備え、
前記空調ケースは、前記第1ドア対向面及び前記第2ドア対向面と交差して設けられ、前記第1ドア対向面と前記第2ドア対向面とを連結する連結面(81、281)を備え、
前記第2ドア対向面は、前記第1ドア対向面よりも前記回転軸に対して径方向の外側に位置しており、
前記空調ケースは、
前記車室内に吹き出すための空調風が流れる上方開口部(21、31)と、
前記上方開口部よりも下方に設けられ、前記車室内に吹き出すための空調風が流れる下方開口部(41、131、141)とを備え、
前記上方開口部と連通して前記空気通路に設けられ、冷風と温風とを混合するための上方混合空間(17a)と、
前記下方開口部と連通して前記空気通路に設けられ、冷風と温風とを混合するための下方混合空間(17b)とを備え、
前記空気通路は、前記上方混合空間と前記下方混合空間とをつなぐ混合通路(18)を備え、
前記ドア装置は、前記混合通路に設けられ、前記混合通路を流れる空調風の量を調整している車両用空調装置。
【請求項2】
前記第2ドア対向面(72)の前記周方向長さ(W2a)は、前記第1ドア対向面(71)の前記周方向長さ(W1a)よりも大きい請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ケースは、前記ドア本体と接触して前記空気通路を閉じるための接触面(75)を備え、
前記接触面は、前記第2ドア対向面よりも前記第1ドア対向面に近い位置に設けられている請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ドア装置において、前記ドア本体の停止位置には、前記ドア本体の先端部分が前記第1ドア対向面と対向する位置である第1中間位置と、前記空気通路を閉じる位置である全閉位置と、前記空気通路を最も大きく開く位置である全開位置とを有し、
前記第1中間位置から前記全閉位置に至るまでの前記ドア本体の回動距離(Lc1)は、前記第1中間位置から前記全開位置に至るまでの前記ドア本体の回動距離(Lo1)よりも小さい請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第2ドア対向面は、前記第1ドア対向面とは異なる部品に形成されている請求項1から
請求項4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記ドア対向面(270)は、前記回転軸の周方向に沿って延びている曲面形状である請求項1から
請求項5のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のエアミックスドアを制御することで空調風の温度や風量を調整可能な車両用空調装置を開示している。エアミックスドアは、冷風通路の開度を調整する冷風エアミックスドアと温風通路の開度を調整する温風エアミックスドアとを備えている。冷風エアミックスドアは、冷風のバイパス通路を開閉する冷風バイパスドアを備えている。冷風バイパスドアは、平板状のものであって、回転軸と一体に回動する板ドアである。ここで、バイレベルモードにおいて、冷風バイパス通路を開くことで、フェイス吹き出し口から吹き出される空調風とフット吹き出し口から吹き出される空調風との温度差を大きくする構成が開示されている。従来技術として挙げられた先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、全閉状態と全開状態との2つの状態において、冷風バイパスドアは、空調ケースに設けられた規制部材と接触して停止位置を維持している。一方、全閉状態と全開状態との間の状態において、冷風バイパスドアは、規制部材と接触していない。このため、冷風バイパスドアの停止位置を全閉状態と全開状態との間の位置で安定して維持しにくい。言い換えると、冷風バイパスドアの停止位置に誤差が生じやすく、バイパス通路を流れる冷風の風量を安定して調整することが困難であった。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、車両用空調装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される1つの目的は、空調風の流量を安定して調整可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された車両用空調装置は、車室内に向かう空調風が流れる空気通路(2a)が内部に設けられている空調ケース(2)と、空気通路に設けられ、空気を冷却して冷風を生成する冷却器(6)と、空気通路に設けられ、空気を加熱して温風を生成する加熱器(7、8)と、空調風の流れにおいて、冷却器よりも下流、かつ加熱器よりも下流に設けられ、回転軸(43)を中心に回動する板状のドア本体(44)を用いて空気通路を流れる空調風の量を調整するドア装置(45)と、空気通路に設けられ、ドア本体の先端部分の厚さ寸法よりも大きな回転軸の周方向長さを有し、ドア本体の先端部分との間に空調風が通過可能な隙間を形成可能なドア対向面(70、270)とを備え、ドア対向面は、第1ドア対向面(71、271)と第2ドア対向面(72、272)とを備え、空調ケースは、第1ドア対向面及び第2ドア対向面と交差して設けられ、第1ドア対向面と第2ドア対向面とを連結する連結面(81、281)を備え、第2ドア対向面は、第1ドア対向面よりも回転軸に対して径方向の外側に位置しており、空調ケースは、車室内に吹き出すための空調風が流れる上方開口部(21、31)と、上方開口部よりも下方に設けられ、車室内に吹き出すための空調風が流れる下方開口部(41、131、141)とを備え、上方開口部と連通して空気通路に設けられ、冷風と温風とを混合するための上方混合空間(17a)と、下方開口部と連通して空気通路に設けられ、冷風と温風とを混合するための下方混合空間(17b)とを備え、空気通路は、上方混合空間と下方混合空間とをつなぐ混合通路(18)を備え、ドア装置は、混合通路に設けられ、混合通路を流れる空調風の量を調整している。
【0007】
開示された車両用空調装置によると、車両用空調装置は、第1ドア対向面と第2ドア対向面とを備え、第2ドア対向面は、第1ドア対向面よりも径方向の外側に位置している。このため、第1ドア対向面に対してドア本体を対向させた第1中間状態と、第2ドア対向面に対してドア本体を対向させた第2中間状態とにおいて、ドア対向面とドア本体との間に形成される隙間の大きさを異ならせることができる。したがって、ドア装置の開状態において、第1中間状態と第2中間状態との開度の異なる2つの状態の少なくともどちらかを用いて空調風の流量を調整することができる。よって、空調風の流量を安定して調整可能な車両用空調装置を提供することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両用空調装置の内部構成を示す断面図である。
【
図2】空調ケースにおける各開口部の位置関係を示す構成図である。
【
図3】全閉状態の温風ミックスドアを示す拡大図である。
【
図4】全開状態の温風ミックスドアを示す拡大図である。
【
図5】第1中間状態の温風ミックスドアを示す拡大図である。
【
図6】第2中間状態の温風ミックスドアを示す拡大図である。
【
図7】温風ミックスドアの第1中間状態からの回動距離を示す拡大図である。
【
図8】車両用空調装置の制御に関するブロック図である。
【
図9】第2実施形態における第1中間状態の温風ミックスドアを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0011】
第1実施形態
図1において、車両用空調装置1は、車両に搭載されている。車両は、例えばガソリン駆動のエンジンを搭載した自動車である。ただし、車両としては、走行用モータを搭載した電気自動車や、エンジンとモータの両方を搭載したハイブリッド自動車なども採用可能である。車両用空調装置1は、空気を送風する送風ユニットと空気温度を調整する空調ユニットを備えている。車両用空調装置1は、取り込まれた空気の温度を調整して車室内に吹き出す装置である。言い換えると、車両用空調装置1は、車室内の暖房運転や冷房運転や除湿運転などの空調運転を行う装置である。
【0012】
車両用空調装置1は、内部に空気が流れる空気通路2aが形成されている空調ケース2を備えている。空調ケース2の内部には、蒸発器6とヒータコア7とヒータ装置8とが収納されている。ヒータコア7は、空調風の流れにおいて蒸発器6よりも下流に位置している。ヒータ装置8は、空調風の流れにおいてヒータコア7よりも下流に位置している。蒸発器6は、内部に冷媒が流れており、冷媒が液体から気体に気化する際の気化熱を周囲の空気から奪うことで空気を冷却する熱交換器である。蒸発器6は、冷風を生成する冷却器の一例を提供する。ヒータコア7は、内部に高温のエンジン冷却水が流れており、エンジン冷却水の熱を用いて周囲の空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア7は、温風を生成する加熱器の一例を提供する。ヒータ装置8としては、電気式ヒータや燃焼式ヒータなどの様々な加熱装置を利用可能である。ヒータ装置8としては、正の温度係数を有する電気式ヒータであるPTCヒータを用いることが好ましい。ヒータ装置8は、温風を生成する加熱器の一例を提供する。
【0013】
車両用空調装置1は、前席に着座している乗員に向けた空調運転を実施可能である。車両用空調装置1は、車両のフロントウィンドウに吹き出される空調風をダクト内に吸い込むためのデフロスタ開口部21を備えている。デフロスタ開口部21から吸い込まれた空調風は、ダクトを通ってデフロスタ吹き出し口からフロントウィンドウの車室内側に吹き出されることとなる。車両用空調装置1は、前席の前方上部に吹き出される空調風をダクト内に吸い込むためのフェイス開口部31を備えている。フェイス開口部31から吸い込まれた空調風は、ダクトを通ってフェイス吹き出し口から車室内に吹き出されることとなる。車両用空調装置1は、前席の前方下部に吹き出される空調風をダクト内に吸い込むためのフット開口部41を備えている。フット開口部41から吸い込まれた空調風は、ダクトを通ってフット吹き出し口から車室内に吹き出されることとなる。
【0014】
車両用空調装置1は、後席に着座している乗員に向けた空調運転を実施可能である。車両用空調装置1は、後席の前方上部に吹き出される空調風をダクト内に吸い込むためのリアフェイス開口部131を備えている。リアフェイス開口部131から吸い込まれた空調風は、ダクトを通ってリアフェイス吹き出し口から吹き出されることとなる。車両用空調装置1は、後席の前方下部に吹き出される空調風をダクト内に吸い込むためのリアフット開口部141を備えている。リアフット開口部141から吸い込まれた空調風は、ダクトを通ってリアフット吹き出し口から吹き出されることとなる。
【0015】
空気通路2aは、第1冷風通路15aと第2冷風通路15bと第1温風通路16aと第2温風通路16bとを備えている。第1冷風通路15aと第2冷風通路15bとは、ヒータコア7やヒータ装置8を経由せずに空調風を流すための通路であって、蒸発器6で冷却された冷風が通過することとなる。第1温風通路16aと第2温風通路16bとは、ヒータコア7やヒータ装置8を経由して空調風を流すための通路であって、ヒータコア7やヒータ装置8で加熱される温風が通過することとなる。第2温風通路16bを流れた温風は、ヒータコア7とヒータ装置8との両方によって加熱される。このため、第2温風通路16bを流れた温風は、第1温風通路16aを流れた温風よりも温度を高くしやすい。各通路15a、15b、16a、16bは、上下方向において上から第1冷風通路15a、第1温風通路16a、第2温風通路16b、第2冷風通路15bの順に並んで設けられている。
【0016】
各通路15a、15b、16a、16bの下流側には、冷風と温風とを混合させる混合空間17が形成されている。混合空間17においては、冷風と温風とが混合されることで、空調風の温度が冷風の温度と温風の温度との間の温度となる。ただし、混合空間17における空調風の温度は均一ではない。混合空間17において、第1冷風通路15aや第2冷風通路15bに近い位置は、温度が低くなりやすい。一方、混合空間17において、第1温風通路16aや第2温風通路16bに近い位置は、温度が高くなりやすい。また、各通路15a、15b、16a、16bから離れた下流に向かうほど、温風と冷風との混合が進んで空調風の温度が均一な温度に近づきやすい。
【0017】
混合空間17は、温風ミックスドア45によって上下に分割されている。混合空間17において、温風ミックスドア45よりも上方の空間は、上方混合空間17aである。混合空間17において、温風ミックスドア45よりも下方の空間は、下方混合空間17bである。上方混合空間17aと下方混合空間17bとは、混合通路18によってつながっている。温風ミックスドア45は、混合通路18に設けられている。温風ミックスドア45はドア装置の一例を提供する。
【0018】
上方混合空間17aは、第1冷風通路15aを通過した冷風と第1温風通路16aを通過した温風とを積極的に混合する空間である。上方混合空間17aは、デフロスタ開口部21およびフェイス開口部31と連通している。上方混合空間17aには、温風トンネル50が設けられている。温風トンネル50は、第1温風通路16aを通過した温風を温度の高い状態を維持しながらデフロスタ開口部21に向けて導く部材である。デフロスタ開口部21は、上方開口部の一例を提供する。フェイス開口部31は、上方開口部の一例を提供する。
【0019】
下方混合空間17bは、第2冷風通路15bを通過した冷風と第2温風通路16bを通過した温風とを積極的に混合する空間である。下方混合空間17bは、フット開口部41、リアフェイス開口部131およびリアフット開口部141と連通している。フット開口部41は、下方開口部の一例を提供する。リアフェイス開口部131は、下方開口部の一例を提供する。リアフット開口部141は、下方開口部の一例を提供する。
【0020】
車両用空調装置1は、第1エアミックスドア12aと第2エアミックスドア12bとを備えている。第1エアミックスドア12aと第2エアミックスドア12bとは、蒸発器6よりも下流であって、ヒータコア7やヒータ装置8よりも上流に位置している。第2エアミックスドア12bは、第1エアミックスドア12aよりも下方に位置している。
【0021】
第1エアミックスドア12aは、第1冷風通路15aを閉じることで、空調風が第1冷風通路15aを通過せず、第1温風通路16aを通過する状態とすることができる。あるいは、第1エアミックスドア12aは、第1温風通路16aを閉じることで、空調風が第1温風通路16aを通過せず、第1冷風通路15aを通過する状態とすることができる。第1エアミックスドア12aは、第1冷風通路15aと第1温風通路16aとを同時に一部分開くことで、空調風が第1冷風通路15aと第1温風通路16aとを同時に通過する状態とすることができる。この時、第1冷風通路15aを開く量と第1温風通路16aを開く量との割合を調整することで、全体として冷風の風量と温風の風量とを調整して必要な温度の空調風とすることができる。
【0022】
第2エアミックスドア12bは、第2冷風通路15bを閉じることで、空調風が第2冷風通路15bを通過せず、第2温風通路16bを通過する状態とすることができる。あるいは、第2エアミックスドア12bは、第2温風通路16bを閉じることで、空調風が第2温風通路16bを通過せず、第2冷風通路15bを通過する状態とすることができる。第2エアミックスドア12bは、第2冷風通路15bと第2温風通路16bとを同時に一部分開くことで、空調風が第2冷風通路15bと第2温風通路16bとを同時に通過する状態とすることができる。この時、第2冷風通路15bを開く量と第2温風通路16bを開く量との割合を調整することで、全体として冷風の風量と温風の風量とを調整して必要な温度の空調風とすることができる。
【0023】
図2は、空調ケース2の概略構成を示す正面図であって、空調ケース2におけるデフロスタ開口部21とフェイス開口部31とフット開口部41とリアフェイス開口部131とリアフット開口部141とのおおよその位置関係を示している。
【0024】
フェイス開口部31は、センターフェイス開口部31aとサイドフェイス開口部31bとを備えている。センターフェイス開口部31aは、車室内の中央部から前席の上部に向けて吹き出される空調風が流れる開口である。言い換えると、センターフェイス開口部31aは、センターフェイス吹き出し口に向けて流れる空調風を吸い込むセンターフェイス吸い込み口である。センターフェイス開口部31aは、空調ケース2の2箇所に設けられている。2つのセンターフェイス開口部31aは、左右方向に互いに隣り合って配置されている。
【0025】
サイドフェイス開口部31bは、車室内の側方部から前席の上部に向けて吹き出される空調風が流れる開口部である。言い換えると、サイドフェイス開口部31bは、サイドフェイス吹き出し口に向けて流れる空調風を吸い込むサイドフェイス吸い込み口である。サイドフェイス開口部31bは、空調ケース2の2箇所に設けられている。2つのサイドフェイス開口部31bは、2つ並んだセンターフェイス開口部31aの並び方向における両外側に配置されている。言い換えると、フェイス開口部31は、4つの開口部が左右方向に並んで構成されている。4つ並んだ開口部のうち内側に位置している2箇所の開口部がセンターフェイス開口部31aであり、外側に位置している2箇所の開口部がサイドフェイス開口部31bである。
【0026】
フェイス開口部31は、4つの開口部で構成されていなくてもよい。例えば、開口部を1つだけ設けて、開口部の内部を複数に仕切ることでセンターフェイス吹き出し口とサイドフェイス吹き出し口とのそれぞれの吹き出し口に空調風を送ってもよい。言い換えると、フェイス開口部31は、4つよりも少ない数の開口部で構成してもよい。あるいは、左右方向に並んだ4つの開口部を上下方向に2段設けて、8つの開口部を用いてセンターフェイス吹き出し口とサイドフェイス吹き出し口とから吹き出される空調風の風量や風向を細かく調整可能な構成としてもよい。言い換えると、フェイス開口部31は、4つよりも多い数の開口部で構成してもよい。
【0027】
フット開口部41は、空調ケース2の下部であって、空調ケース2の左右方向の側面を構成する左側面と右側面とのそれぞれに1箇所ずつ設けられている。リアフェイス開口部131は、空調ケース2の下部であって、空調ケース2の左右方向における真ん中の位置を含む中央寄りに設けられている。リアフット開口部141は、空調ケース2の下面において、左右方向に互いに離間して2箇所に設けられている。言い換えると、空調ケース2において、フット開口部41よりも左右方向の中央寄りにリアフット開口部141が形成されている。さらに、リアフット開口部141よりも左右方向の中央寄りにリアフェイス開口部131が形成されている。
【0028】
リアフェイス開口部131は、第2冷風通路15bと前後方向に対向して略同じ高さに設けられている。リアフェイス開口部131は、第2温風通路16bと前後方向に対向しておらず、第2温風通路16bよりも下方にずれた位置に設けられている。このため、リアフェイス開口部131は、温風よりも冷風を積極的に吸い込みやすい構成である。
【0029】
図1において、車両用空調装置1は、デフロスタ開口部21を開閉するデフロスタドア22を備えている。デフロスタドア22は、デフロスタ開口部21を閉じる閉状態とデフロスタ開口部21を開く開状態との2つの状態に切り替え可能である。デフロスタドア22の開状態においては、デフロスタ開口部21に吸い込まれる空調風が最も多い全開状態と、デフロスタ開口部21に吸い込まれる空調風が全開状態よりも少なく閉状態よりも多い小開状態とを備えている。
【0030】
車両用空調装置1は、フェイス開口部31を開閉するフェイスドア32を備えている。フェイスドア32は、フェイス開口部31を閉じる閉状態とフェイス開口部31を開く開状態との2つの状態に切り替え可能である。フェイスドア32の開状態においては、フェイス開口部31に吸い込まれる空調風が最も多い全開状態と、フェイス開口部31に吸い込まれる空調風が全開状態よりも少なく閉状態よりも多い小開状態とを備えている。車両用空調装置1は、リアフェイス開口部131を開閉するリアフェイスドア132を備えている。リアフェイスドア132は、フェイスドア32と連動しており、フェイスドア32の開度とリアフェイスドア132の開度とが等しい開度となるように構成されている。ただし、フェイスドア32とリアフェイスドア132とを連動させず、互いに独立して開度を制御するようにしてもよい。
【0031】
車両用空調装置1は、フット開口部41を開閉するフットドア42を備えている。フットドア42は、フット開口部41を閉じる閉状態とフット開口部41を開く開状態との2つの状態に切り替え可能である。フットドア42の開状態においては、フット開口部41に吸い込まれる空調風が最も多い全開状態と、フット開口部41に吸い込まれる空調風が全開状態よりも少なく閉状態よりも多い小開状態とを備えている。車両用空調装置1は、リアフット開口部141を開閉するリアフットドア142を備えている。リアフットドア142は、フットドア42と連動しており、フットドア42の開度とリアフットドア142の開度とが等しい開度となるように構成されている。ただし、フットドア42とリアフットドア142とを連動させず、互いに独立して開度を制御するようにしてもよい。
【0032】
フェイス吹き出し口とリアフェイス吹き出し口とフット吹き出し口とリアフット吹き出し口とには、開閉自在なシャッターが設けられている。シャッターは、乗員の手動操作によって、吹き出し口から吹き出される空調風の風量や風向を調整する部品である。例えば、乗員がフェイス吹き出し口のシャッターを閉じている場合、フェイスドア32の開閉制御によらず、フェイス吹き出し口からは空調風が吹き出されないこととなる。シャッターは、グリルと呼ばれることもある。
【0033】
車両用空調装置1は、混合通路18を開閉する温風ミックスドア45を備えている。温風ミックスドア45は、混合通路18を閉じる閉状態と混合通路18を開く開状態との2つの状態に切り替え可能である。温風ミックスドア45の開状態においては、混合通路18を通過可能な空調風が最も多い全開状態と、混合通路18を通過可能な空調風が全開状態よりも少なく閉状態よりも多い小開状態とが含まれる。温風ミックスドア45は、混合通路18の開度を調整することで、上方混合空間17aの空調風の温度と下方混合空間17bの空調風の温度を制御している。すなわち、上方混合空間17aの空調風の温度と下方混合空間17bの空調風の温度との温度差が大きすぎる場合には、温風ミックスドア45の開度を大きくして上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間を通過する空調風の量を増やす。一方、上方混合空間17aの空調風の温度と下方混合空間17bの空調風の温度との温度差が小さすぎる場合には、温風ミックスドア45の開度を小さくして上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間を通過する空調風の量を減らす。
【0034】
図3において、フットドア42と温風ミックスドア45とは、連続して一体に形成されている。言い換えると、フットドア42と温風ミックスドア45とは、共通の回転軸43を中心に回動している。温風ミックスドア45は、回転軸43を中心にドア本体44が回動する板ドアである。ドア本体44は、回転軸43の径方向に沿って延びるように設けられている板状の部品であって、複数の凹凸を有している。温風ミックスドア45は、ドア本体44の先端部分にゴム製のパッキンを備えている。温風ミックスドア45は、ドア本体44に対して交差する方向に延びるガイドリブを備えている。
【0035】
空調ケース2は、全閉状態から全開状態までの間の所定の開度で温風ミックスドア45と対向するドア対向面70を備えている。ドア対向面70は、ドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きな回転軸43の周方向長さを有している。ここで、ドア対向面70における回転軸43の周方向長さについて以下に説明する。回転軸43を中心とした円のうち、ドア対向面70において回転軸43に近い方の端部を通過する円を基準円とする。ドア対向面70において回転軸43から遠い方の端部と回転軸43の中心とを結ぶ直線と基準円とが交差する点を交差点とする。ドア対向面70における回転軸43の周方向長さとは、基準円の円周上の長さであって、基準円が通過するドア対向面70の端部から交差点までの長さのことである。
【0036】
ドア対向面70は、回転軸43の径方向よりも回転軸43の周方向に近い角度に傾斜して延びる面である。ドア対向面70と温風ミックスドア45とが回転軸43の径方向に対向した場合には、ドア対向面70とドア本体44の先端部分との間には、隙間が形成されることとなる。言い換えると、ドア対向面70は、ドア本体44の先端部分との間に隙間が形成可能である。空調風は、ドア対向面70とドア本体44との間に形成された隙間を通過して流れることができる。
【0037】
ドア対向面70は、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを備えている。第2ドア対向面72は、第1ドア対向面71よりも回転軸43の径方向外側に位置している。言い換えると、第2ドア対向面72から回転軸43までの距離は、第1ドア対向面71から回転軸43までの距離よりも大きい。このため、空調ケース2には、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とによって段差が形成された状態である。
【0038】
第1ドア対向面71の周方向長さW1a及び第2ドア対向面72の周方向長さW2aは、ドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きい。第2ドア対向面72の周方向長さW2aは、第1ドア対向面71の周方向長さW1aよりも大きい。また、第1ドア対向面71の傾斜角度は、第2ドア対向面72の傾斜角度よりも回転軸43の周方向に近い角度である。
【0039】
空調ケース2は、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを連結する連結面81を備えている。連結面81の傾斜角度は、回転軸43の周方向よりも回転軸43の径方向に近い角度である。言い換えると、連結面81は、第1ドア対向面71及び第2ドア対向面72と交差して延びる面である。
【0040】
第1ドア対向面71を提供する部品と第2ドア対向面72を提供する部品とは、別の部品である。第2ドア対向面72と連結面81とは、連続した1つの一体部品に形成されている。第1ドア対向面71が形成されている部品である空調ケース2に対して、第2ドア対向面72と連結面81とが形成されている部品を固定することで、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを適切な位置関係としている。ただし、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを別の部品としなくてもよい。例えば、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを連続した1つの一体部品に形成してもよい。これによると、車両の走行時の振動などによって、第1ドア対向面71を提供する空調ケース2から第2ドア対向面72を提供する部品が脱落してしまうことを防ぎやすい。また、車両用空調装置1の部品点数を減らすことができる。
【0041】
第1ドア対向面71において、一方の端部は、連結面81と連続しており、他方の端部は、第1温風通路16aを形成する通路面の一部と連続している。第1ドア対向面71の傾斜角度は、この通路面の傾斜角度に比べて、回転軸43の周方向に近い角度である。第2ドア対向面72において、一方の端部は、連結面81と連続しており、他方の端部は、上方混合空間17aを形成する壁面の一部と連続している。
【0042】
図3における温風ミックスドア45は、ドア本体44が全閉位置まで回動した全閉状態である。全閉位置は、ドア本体44の先端部分をなすパッキンが空調ケース2の一部である接触面75と接触する位置である。全閉状態においては、ドア本体44と接触面75との間に隙間が形成されていない。このため、ドア本体44と接触面75との間に空調風の流路が形成されず、上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間を空調風が行き来できない。したがって、第1温風通路16aを流れた温風と第2温風通路16bを流れた温風とが混合されない。全閉状態においては、第1温風通路16aを流れた温風が空調ケース2の上部に設けられたデフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれることとなる。一方、第2温風通路16bを流れた温風は、空調ケース2の下部に設けられたフット開口部41やリアフェイス開口部131やリアフット開口部141に吸い込まれることとなる。
【0043】
図4における温風ミックスドア45は、ドア本体44が全開位置まで回動した全開状態である。全開位置は、ドア本体44の先端部分をなすパッキンが空調ケース2と接触しておらず、ドア本体44の流路抵抗が小さな位置である。全開状態においては、ドア本体44とドア対向面70との間に大きな隙間が形成されている。このため、ドア本体44とドア対向面70との間を空調風が通過できる。全開状態においては、上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間において、空調風が行き来でき、第1温風通路16aを流れた温風と第2温風通路16bを流れた温風とが混合される。特に、冷風よりも温度が高い温風は、冷風よりも密度が小さくなるため、下方混合空間17bから上方混合空間17aに流れ込みやすい。全開状態においては、第2温風通路16bを流れた温風の一部が空調ケース2の上部に設けられたデフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれることとなる。ここで、ヒータ装置8の温度をヒータコア7よりも高く設定することで、第1温風通路16aを流れた温風の温度よりも第2温風通路16bを流れた温風の温度を高くすることができる。したがって、デフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれる空調風の温度を、温風ミックスドア45の全閉状態よりも高くしやすい。
【0044】
図5における温風ミックスドア45は、第1中間位置まで回動した第1中間状態である。第1中間位置は、ドア本体44の先端部分をなすパッキンが第1ドア対向面71と対向する位置である。第1中間状態においては、ドア本体44と第1ドア対向面71との間に、わずかな隙間が形成されている。このため、ドア本体44と第1ドア対向面71との間を空調風が通過できる。第1中間状態においては、上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間において、空調風がわずかに行き来でき、第1温風通路16aを流れた温風と第2温風通路16bを流れた温風とが混合される。第1中間状態においては、第2温風通路16bを流れた温風の一部が空調ケース2の上部に設けられたデフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれることとなる。したがって、ヒータ装置8の出力を高めて、デフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれる空調風の温度を、温風ミックスドア45の全閉状態よりもわずかに高くしやすい。
【0045】
第1ドア対向面71の周方向長さW1aは、ドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きい。このため、第1ドア対向面71の中央とドア本体44の先端部分とが対向する位置以外にも、第1中間位置が存在することとなる。言い換えると、ドア本体44の先端部分の停止位置が、第1ドア対向面71の中央から周方向にわずかにずれた場合であっても、第1ドア対向面71の中央と対向している場合と同程度の隙間量となる停止位置は、第1中間位置である。
【0046】
図6における温風ミックスドア45は、第2中間位置まで回動した第2中間状態である。第2中間位置は、ドア本体44の先端部分をなすパッキンが第2ドア対向面72と対向する位置である。第2中間状態においては、ドア本体44と第2ドア対向面72との間に、隙間が形成されている。このため、ドア本体44と第2ドア対向面72との間を空調風が通過できる。第2中間状態においては、上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間において、空調風が行き来でき、第1温風通路16aを流れた温風と第2温風通路16bを流れた温風とが混合される。第2中間状態においては、第2温風通路16bを流れた温風の一部が空調ケース2の上部に設けられたデフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれることとなる。したがって、ヒータ装置8の出力を高めて、デフロスタ開口部21やフェイス開口部31に吸い込まれる空調風の温度を、温風ミックスドア45の全閉状態よりも高くしやすい。
【0047】
第2中間状態においてドア本体44と第2ドア対向面72との間に形成される隙間の大きさは、第1中間状態においてドア本体44と第1ドア対向面71との間に形成される隙間の大きさよりも大きい。したがって、第2中間状態においては、第1中間状態よりも多くの温風を上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間で混合させることができる。上方混合空間17aと下方混合空間17bとの間での混合は、全開状態において最も積極的に行われ、続いて第2中間状態、第1中間状態の順に混合される風量が減り、全閉状態では、混合されない状態となる。
【0048】
第2ドア対向面72の周方向長さW2aは、ドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きい。このため、第2ドア対向面72の中央とドア本体44の先端部分とが対向する位置以外にも、第2中間位置が存在することとなる。言い換えると、ドア本体44の先端部分の停止位置が、第2ドア対向面72の中央から周方向にわずかにずれた場合であっても、第2ドア対向面72の中央と対向している場合と同程度の隙間量となる停止位置は、第2中間位置である。
【0049】
図7は、温風ミックスドア45の全閉位置と第1中間位置と全開位置との3つの停止位置を同時に示している。第1中間位置から全閉位置までの回動距離Lc1は、第1中間位置から全開位置までの回動距離Lo1よりも小さい。したがって、第1中間位置から全開位置にドア本体44を回動させる場合に比べて、第1中間位置から全閉位置にドア本体44を回動させる場合の方が素早く回動を完了させることができる。ただし、回動距離Lc1は、回動距離Lo1よりも大きくてもよい。あるいは、回動距離Lc1は、回動距離Lo1と同じ大きさでもよい。
【0050】
接触面75は、第2ドア対向面72よりも第1ドア対向面71に近い位置に配されている。したがって、全閉位置から全開位置に回動するまでの間には、第1中間位置を経由した後に第2中間位置を経由することとなる。一方、全開位置から全閉位置に回動するまでの間には、第2中間位置を経由した後に、第1中間位置を経由することとなる。よって、全閉状態から全開状態までの間において、混合通路18を通過可能な風量を段階的に調整することができる。ただし、接触面75を第1ドア対向面71よりも第2ドア対向面72に近い位置に配してもよい。
【0051】
図8は、車両用空調装置1における制御システムを示す図である。この明細書における制御装置(ECU)は、電子制御装置(Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置は、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。
【0052】
制御装置は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアのプロセッサである少なくとも1つのハードウェアプロセッサを含む。ハードウェアプロセッサは、以下の(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
【0053】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0054】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0055】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0056】
制御装置と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
【0057】
この開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部及びその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部及びその手法は、1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0058】
図8において、車両用空調装置1を制御する空調制御部90は、空調用センサ91と空調用スイッチ92と接続されている。空調用センサ91は、外気温センサや内気温センサや日射量センサや蒸発器温度センサなどからなるセンサである。外気温センサは、車外の温度を測定するセンサである。内気温センサは、車室内の温度を測定するセンサであって、車室内の前方における内気温を測定する温度センサと、車室内の後方における内気温を測定する温度センサとの2つの温度センサを有している。日射量センサは、車両が受けている日射量を測定するセンサである。蒸発器温度センサは、蒸発器6の表面温度を測定する温度センサである。空調制御部90は、空調用センサ91から空調に用いる各種の情報を取得する。
【0059】
空調用センサ91は、空調風の吹き出し口に設けられたシャッターの開閉状態を検知するシャッターセンサを備えている。シャッターセンサには、例えば、接触の有無を検知可能なタッチセンサを用いることができる。この場合、シャッターの閉状態においては、タッチセンサが接触状態であることを検知し、シャッターの開状態においては、タッチセンサが接触状態にないことを検知することでシャッターの開閉状態を検知することができる。
【0060】
空調用スイッチ92は、乗員によって操作されるスイッチであって、空調運転のオンオフの切り替えスイッチや、設定温度の切り替えスイッチや、内気モードと外気モードとの切り替えを行うスイッチなどが含まれる。空調用スイッチ92には、複数の吹き出しモードのうち、どのモードで空調運転を行うかを乗員が選択するスイッチが含まれている。ただし、オートモードで空調運転を行う場合には、乗員による操作で吹き出しモードなどを切り替えるのではなく、自動で切り替えが行われる。空調制御部90は、空調用スイッチ92を用いて乗員が設定した温度や風量などの空調設定に基づいて空調運転を行うこととなる。
【0061】
空調制御部90は、第1エアミックスドア12aと第2エアミックスドア12bと接続されている。空調制御部90は、第1エアミックスドア12aの開度を制御することで、第1冷風通路15aを流れる冷風の量と第1温風通路16aを流れる温風の量を調整する。空調制御部90は、第2エアミックスドア12bの開度を制御することで、第2冷風通路15bを流れる冷風の量と第2温風通路16bを流れる温風の量を調整する。
【0062】
空調制御部90は、デフロスタドア22とフェイスドア32とフットドア42と接続されている。空調制御部90は、デフロスタドア22の開閉を切り替えることで、デフロスタ開口部21に吸い込まれる空調風の量を調整している。空調制御部90は、フェイスドア32の開閉を切り替えることで、フェイス開口部31に吸い込まれる空調風の量を調整している。空調制御部90は、フットドア42の開閉を切り替えることで、フット開口部41に吸い込まれる空調風の量を調整している。
【0063】
空調制御部90は、リアフェイスドア132とリアフットドア142と接続されている。空調制御部90は、リアフェイスドア132の開閉を切り替えることで、リアフェイス開口部131に吸い込まれる空調風の量を調整している。空調制御部90は、リアフットドア142の開閉を切り替えることで、リアフット開口部141に吸い込まれる空調風の量を調整している。
【0064】
空調制御部90は、温風ミックスドア45と接続されている。空調制御部90は、温風ミックスドア45の開度を制御することで、混合通路18を流れる温風を含む空調風の量を調整する。空調制御部90は、温風ミックスドア45の開度を全閉状態と第1中間状態と第2中間状態と全開状態との4段階に切り替え可能である。ただし、空調制御部90の制御において、全閉状態に変えて、最も開度の小さな第1中間状態を用いるなどしてもよい。あるいは、全閉状態と第1中間状態と全開状態との3段階に切り替える車種と、全閉状態と第2中間状態と全開状態との3段階に切り替える車種とを、同一の車両用空調装置1を用いて使い分けるようにしてもよい。
【0065】
車両用空調装置1に搭載されている各モードについて以下に説明する。車両用空調装置1は、吹き出し口モードとしてデフロスタモード、フェイスモード、フットモード、バイレベル(B/L)モード、フットデフロスタ(F/D)モードの5つのモードを備えている。ただし、吹き出し口モードの種類は上述のモードに限られない。
【0066】
デフロスタモードは、デフロスタ吹き出し口から空調風を吹き出すモードである。デフロスタモードにおいては、デフロスタドア22が開状態となり、フェイスドア32とフットドア42とリアフェイスドア132とリアフットドア142とは閉状態となる。また、第2温風通路16bを流れた温風をデフロスタ開口部21に連通している上方混合空間17aに流すため、温風ミックスドア45は、全開状態となる。デフロスタモードは、フロントウィンドウの曇りを解消する場合によく用いられる。
【0067】
フェイスモードは、フェイス吹き出し口とリアフェイス吹き出し口とから空調風を吹き出すモードである。フェイスモードにおいては、フェイスドア32とリアフェイスドア132とが開状態となり、デフロスタドア22とフットドア42とリアフットドア142とは閉状態となる。また、フェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度とリアフェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度との温度差を低減するため、温風ミックスドア45は、全開状態となる。フェイスモードは、冷房運転時によく用いられる。フェイスモードにおいて、必ずしもフェイス吹き出し口とリアフェイス吹き出し口との両方の吹き出し口から空調風を吹き出さなくてもよい。例えば、フェイス吹き出し口のみから空調風を吹き出すように構成してもよい。また、フェイス吹き出し口とリアフェイス吹き出し口以外の吹き出し口として車両天井付近から下方に空調風を吹き出す天井吹き出し口を備え、天井吹き出し口から空調風を吹き出す構成としてもよい。
【0068】
フットモードは、主にフット吹き出し口とリアフット吹き出し口とから空調風を吹き出すモードである。フットモードにおいては、フットドア42とリアフットドア142とが開状態となる。一方、フェイスドア32とリアフェイスドア132とは閉状態となり、デフロスタドア22は、わずかに開いた小開状態となる。また、第2温風通路16bを流れた温風をフット開口部41と連通している下方混合空間17bに効率的に流すため、温風ミックスドア45は、全閉状態となる。フットモードは、暖房運転時によく用いられる。フットモードにおいて、必ずしもフット吹き出し口とリアフット吹き出し口との両方の吹き出し口から空調風を吹き出さなくてもよい。例えば、フット吹き出し口のみから空調風を吹き出すように構成してもよい。
【0069】
バイレベル(B/L)モードは、フェイス吹き出し口とリアフェイス吹き出し口とフット吹き出し口とリアフット吹き出し口との各吹き出し口から略等しい量の空調風を吹き出すモードである。バイレベル(B/L)モードにおいては、フェイスドア32とフットドア42とリアフェイスドア132とリアフットドア142とが開状態となり、デフロスタドア22は閉状態となる。また、第2温風通路16bを流れた温風を上方混合空間17aにわずかに流すため、温風ミックスドア45は、第1中間状態となる。すなわち、フェイス開口部31に吸い込まれる空調風の温度とフット開口部41に吸い込まれる空調風の温度との温度差を適切に保つために、混合通路18をわずかに温風が通過可能な状態とする。バイレベル(B/L)モードは、冷房と暖房との中間温度の空調運転時によく用いられる。
【0070】
バイレベル(B/L)モードにおいては、フェイス吹き出し口およびリアフェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度を、フット吹き出し口およびリアフット吹き出し口から吹き出される空調風の温度よりも低くする。言い換えると、乗員の上半身に対して冷風を提供し、乗員の足もとには温風を提供する。これにより、乗員に快適な空調を実感させやすい。この時、フェイス吹き出し口およびリアフェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度と、フット吹き出し口およびリアフット吹き出し口から吹き出される空調風の温度との温度差を適切な温度差に維持する必要がある。適切な温度差とは、例えば10℃から15℃程度の温度差である。
【0071】
バイレベル(B/L)モードにおいて、温風ミックスドア45は、第1中間状態以外の状態としてもよい。例えば、リアフェイスドア132が開いているなどして、第2冷風通路15bを通過した冷風の多くがリアフェイス吹き出し口から吹き出される場合には、フット開口部41やリアフット開口部141に吸い込まれる空調風の温度が高くなりすぎる傾向にある。この場合には、第1中間状態よりも混合通路18を大きく開く第2中間状態にする。これにより、フェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度を高めて、フット吹き出し口やリアフット吹き出し口から吹き出される空調風との温度差を適切に維持しやすい。一方、リアフェイスドア132がフェイスドア32とは連動しておらず、リアフェイスドア132が閉じている場合には、フット開口部41やリアフット開口部141に吸い込まれる空調風の温度が上昇しにくい。この場合には、第2中間状態よりも混合通路18を小さく開く第1中間状態にする。これにより、フェイス吹き出し口から吹き出される空調風の温度が高くなりすぎることなく、フット吹き出し口やリアフット吹き出し口から吹き出される空調風との温度差を適切に維持しやすい。
【0072】
温風ミックスドア45の開度を、リアフェイスドア132の開閉状態以外の情報に基づいて制御してもよい。例えば、リアフェイス吹き出し口のシャッターが乗員の操作によって閉じられている場合には、第2中間状態よりも開度の小さな第1中間状態としてもよい。あるいは、リアフェイス開口部131があらかじめ遮蔽板で遮蔽されている仕様の車種においては、第2中間状態よりも開度の小さな第1中間状態としてもよい。
【0073】
フットデフロスタ(F/D)モードは、フット吹き出し口とリアフット吹き出し口とデフロスタ吹き出し口との各吹き出し口から略等しい量の空調風を吹き出すモードである。フットデフロスタ(F/D)モードにおいては、フットドア42とリアフットドア142とデフロスタドア22とが開状態となり、フェイスドア32とリアフェイスドア132とは閉状態となる。また、第2温風通路16bを流れた温風を上方混合空間17aに向けてわずかに流すため、温風ミックスドア45は、第1中間状態となる。フットデフロスタ(F/D)モードは、フットモードでの暖房運転中にフロントウィンドウが曇ってしまう場合によく用いられる。
【0074】
空調制御部90は、デフロスタドア22とフェイスドア32とフットドア42と温風ミックスドア45とリアフェイスドア132とリアフットドア142との開度を個別に制御可能である。個別に制御する場合、サーボモータの出力を個別に制御することで回動量を調整する。空調制御部90は、デフロスタドア22とフェイスドア32とフットドア42と温風ミックスドア45とリアフェイスドア132とリアフットドア142との開度を連動させて一体に制御可能である。連動させて制御する場合、各ドア22、32、42、45、132、142をギアやワイヤーを用いた連動機構であらかじめつなぎ、各吹き出しモードに対応する停止位置を設定しておく。これにより、例えば、フェイスドア32のサーボモータのみを制御することで、フェイスドア32の開度に連動させて、その他のドア22、42、45、132、142の開度を制御できる。
【0075】
上述した実施形態によると、車両用空調装置1は、第1ドア対向面71と、第1ドア対向面71よりも回転軸43の径方向の外側に位置している第2ドア対向面72とを備えている。このため、ドア本体44を第1ドア対向面71に対向させた第1中間状態と、ドア本体44を第2ドア対向面72と対向させた第2中間状態とで、空調風が通過可能な隙間の大きさを変化させることができる。したがって、隙間の小さな第1中間状態と、第1中間状態よりも隙間の大きな第2中間状態とを適切に選択することで、空調風の流量を安定して調整することができる。
【0076】
ドア対向面70は、ドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きな周方向長さを有している。このため、サーボモータの回転制御や車両の走行振動の影響などによって、ドア本体44の停止位置がわずかにずれた場合であっても、ドア対向面70とドア本体44とが対向した状態を維持しやすい。したがって、第1中間状態や第2中間状態における隙間の大きさを安定して維持しやすい。よって、空調風の流量を安定して調整することができる。
【0077】
通常、空調制御部90によるサーボモータの回動制御では、ドア本体44の停止位置を精度よく調整することが困難であり、同一の制御信号に対してもドア本体44の停止位置にはバラツキが生じる。このため、ドア対向面70がドア本体44の先端部分の厚さ寸法よりも大きな周方向長さを有していることは、サーボモータの回動制御によってドア本体44の停止位置を制御する場合において、特に有用である。
【0078】
空調ケース2は、第1ドア対向面71及び第2ドア対向面72と交差して設けられ、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72とを連結する連結面81を備えている。このため、第1ドア対向面71と第2ドア対向面72との相対的な位置関係を安定して維持しやすい。
【0079】
第2ドア対向面72の周方向長さW2aは、第1ドア対向面71の周方向長さW1aよりも大きい。言い換えると、回転軸43から離れた位置に設けられているドア対向面70ほど、ドア対向面70の周方向長さを大きくしている。このため、第2中間位置にドア本体44が停止している状態として許容される回動角度を広く確保することができる。
【0080】
接触面75は、第2ドア対向面72よりも第1ドア対向面71に近い位置に設けられている。言い換えると、接触面75から第1ドア対向面71までの回転軸43の周方向長さは、接触面75から第2ドア対向面72までの回転軸43の周方向長さよりも小さい。このため、接触面75とドア本体44とが接触している全閉位置から第2中間位置までの回動に比べて、全閉位置から第1中間位置までの回動を素早く行いやすい。また、第2中間位置を経由することなく全閉位置から第1中間位置までドア本体44を回動することができる。したがって、全閉状態と第2中間状態とを切り替える場合に比べて、全閉状態と第1中間状態との切り替えをスムーズに行いやすく、空調風の流量を安定して調整しやすい。
【0081】
第1中間位置から全閉位置に至るまでの回動距離Lc1は、第1中間位置から全開位置に至るまでの回動距離Lo1よりも小さい。このため、第1中間状態と全開状態とを切り替える場合に比べて、第1中間状態と全閉状態との切り替えをスムーズに行いやすい。したがって、全閉状態と第1中間状態との切り替え時に空調風の流量が変化する過渡状態となる時間を短くして、空調風の流量を安定して調整しやすい。
【0082】
温風ミックスドア45は、上方混合空間17aと下方混合空間17bとをつなぐ混合通路18に設けられている。このため、上方混合空間17a内の空調風の温度と下方混合空間17b内の空調風の温度との温度差を温風ミックスドア45の制御によって調整できる。したがって、バイレベル(B/L)モードなどのモードにおいて、フェイス吹き出し口から吹き出される空調風とフット吹き出し口から吹き出される空調風との温度差を適切に保つことができる。
【0083】
空調制御部90は、開状態時に温風よりも冷風を多く取り込やすいリアフェイス開口部131を開閉するリアフェイスドア132の開閉状態に基づいて、温風ミックスドア45のドア本体44の停止位置を制御している。言い換えると、下方混合空間17bなどの所定空間内の空調風の温度を偏らせやすいドアの開閉状態に基づいて、温風ミックスドア45のドア本体44の停止位置を制御している。このため、リアフェイスドア132の開閉状態が切り替えられることにより、下方混合空間17bの空調風の温度が変化することを予測して温風ミックスドア45を制御できる。したがって、温度センサなどを用いて下方混合空間17bにおける空調風の温度を測定して温風ミックスドア45を制御する場合に比べて、フェイス吹き出し口の吹き出し温度とフット吹き出し口の吹き出し温度との温度差を適切に保ちやすい。
【0084】
第2ドア対向面72は、第1ドア対向面71とは異なる部品に形成されている。このため、第2ドア対向面72が形成されている部品の形状を変更することで、第2中間状態における空調風の通過可能な風量を変更することができる。したがって、第1ドア対向面71と連続する一体の部品に第2ドア対向面72が形成されている場合に比べて、第2ドア対向面72の形状自由度を高く確保しやすい。また、第2ドア対向面72が形成されている部品を取り付ける際の取り付け位置や取り付け角度を変更することで、異なる仕様の第2ドア対向面72を提供しやすい。このため、車種ごとに第2ドア対向面72の形状を最適化する場合に、第2ドア対向面72の形成されている部品以外の部品を共通部品として用いることが可能になる。したがって、第2ドア対向面72の形状や位置が異なる車両用空調装置1を製造しやすい。
【0085】
温風ミックスドア45がフットドア42と一体に形成されている場合を例に説明を行ったが、温風ミックスドア45とフットドア42との軸を別々に設けて、互いに独立して回動させてもよい。
【0086】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、ドア対向面270は、回転軸43の周方向に沿った曲面形状をなしている。また、ドア対向面270は、第1ドア対向面271と第2ドア対向面272に加えて、第3ドア対向面273を備えている。
【0087】
図9において、ドア対向面270は、回転軸43の周方向に沿った曲面形状である。言い換えると、ドア本体44の先端部分が、例えば第1ドア対向面271と対向している第1中間位置においては、ドア本体44の先端部分から第1ドア対向面271までの距離が一定である。第1ドア対向面271の2つの端部は、両方の端部がともに回転軸43を中心とした同一の基準円上に設けられている。第2ドア対向面272と第3ドア対向面273についても第1ドア対向面271と同様に、それぞれの基準円上に2つの端部が位置している。
【0088】
ドア対向面270は、第1ドア対向面271と第2ドア対向面272と第3ドア対向面273との3つの面を有している。ドア本体44の先端部分が第1ドア対向面271と対向している位置は、ドア本体44における第1中間位置である。ドア本体44の先端部分が第2ドア対向面272と対向している位置は、ドア本体44における第2中間位置である。ドア本体44の先端部分が第3ドア対向面273と対向している位置は、ドア本体44における第3中間位置である。
【0089】
空調ケース2は、第1ドア対向面271と第2ドア対向面272とを連結する第1連結面281を備えている。第1連結面281の傾斜角度は、回転軸43の周方向よりも回転軸43の径方向に近い角度である。言い換えると、第1連結面281は、第1ドア対向面271及び第2ドア対向面272と交差して延びる面である。空調ケース2は、第2ドア対向面272と第3ドア対向面273とを連結する第2連結面282を備えている。第2連結面282の傾斜角度は、回転軸43の周方向よりも回転軸43の径方向に近い角度である。言い換えると、第2連結面282は、第2ドア対向面272及び第3ドア対向面273と交差して延びる面である。第1連結面281は、連結面の一例を提供する。
【0090】
ドア対向面270の一部をなす第1ドア対向面271は、回転軸43の径方向において回転軸43から最も近い位置に設けられている。ドア対向面270の一部をなす第3ドア対向面273は、回転軸43の径方向において回転軸43から最も離れた位置に設けられている。ドア対向面270の一部をなす第2ドア対向面272は、回転軸43の径方向において第1ドア対向面271と第3ドア対向面273との間の位置に設けられている。
【0091】
第1ドア対向面271と第2ドア対向面272と第3ドア対向面273とのうち、接触面75に最も近い面は、第1ドア対向面271であり、接触面75から最も遠い面は、第3ドア対向面273である。
【0092】
ドア対向面270の周方向長さは、基準円の円周上の長さであって、ドア対向面270の一方の端部から他方の端部までの沿面長さのことである。第1ドア対向面271の周方向長さW1bは、第2ドア対向面272の周方向長さW2bよりも大きい。第2ドア対向面272の周方向長さW2bは、第3ドア対向面273の周方向長さW3bと略等しい長さである。したがって、第1中間位置に含まれる回動角度の範囲は、第2中間位置に含まれる回動角度の範囲及び第3中間位置に含まれる回動角度の範囲に比べて広い範囲である。
【0093】
上述した実施形態によると、ドア対向面270は、回転軸43の周方向に沿って延びている曲面形状である。このため、第1中間位置の回動範囲内でドア本体44の停止位置がばらついた場合であっても、第1ドア対向面271とドア本体44の先端部分との間に形成される隙間の大きさを一定に保つことができる。したがって、ドア対向面270が回転軸43の周方向に沿って延びていない場合に比べて、ドア対向面270とドア本体44との間に形成される隙間を通過する空調風の量を精度よく調整することができる。
【0094】
ドア対向面270は、第2ドア対向面272よりも回転軸43の径方向の外側に位置している第3ドア対向面273を備えている。このため、対向面の数が2つの場合に比べてより細かく空調風の流量を調整することができる。
【0095】
第1ドア対向面271の周方向長さW1bは、第2ドア対向面272の周方向長さW2bよりも大きな長さである。このため、ドア対向面270とドア本体44との間に形成される隙間の最も小さな第1中間状態となる第1中間位置の回動範囲を、第2中間位置や第3中間位置よりも広く確保することができる。したがって、第1中間位置でドア本体44を停止させるようにサーボモータを制御したにも関わらず、停止位置のバラツキが大きすぎることで第1中間位置から外れた位置でドア本体44が停止してしまうといった事態を抑制しやすい。ここで、第1中間位置から全開状態に近づく方向にドア本体44の停止位置がずれると、第2中間位置となる。第1中間位置と第2中間位置とでは、ドア対向面270とドア本体44との間に形成される隙間の大きさが倍以上異なる。よって、第1中間位置の範囲内にドア本体44を確実に停止させるために、第1ドア対向面271の周方向長さW1bを大きく確保することは重要である。
【0096】
ドア対向面270として、第1ドア対向面271と第2ドア対向面272と第3ドア対向面273との3つの面を備える場合に限られず、さらにドア本体44と対向する対向面の数を増やしてもよい。これによると、ドア対向面270として3つの面を有する場合に比べて、より細かく空調風の流量を調整することができる。
【0097】
他の実施形態
温風ミックスドア45を第1ドア対向面71と第2ドア対向面72との複数の対向面を有するドア装置の一例とする場合について説明を行ったが、温風ミックスドア45以外のドアに対しても適用可能である。また、全閉状態と全開状態との間の状態である中間状態を複数備える構成である温風ミックスドア45のようなドア装置を、車両用空調装置1に複数備えるようにしてもよい。
【0098】
第1中間状態と第2中間状態とを有する車両用空調装置1は、例えば、全閉状態と第1中間状態と第2中間状態と全開状態との4つの状態を適切に切り替えることで、段階的に細かく空調風の流量を制御可能である。このため、乗員に対して適切な空調を提供しやすい。
【0099】
第1中間状態と第2中間状態とを有する車両用空調装置1は、例えば、全閉状態と第1中間状態と全開状態との3つの状態を切り替える第1モードと、全閉状態と第2中間状態と全開状態との3つの状態を切り替える第2モードとを選択可能である。このため、仕様の異なる様々な車両に対応してどちらのモードを使うかを切り替えることで、空調風の流量を制御可能である。したがって、仕様の異なる様々な車両に対して共通部品として車両用空調装置1を用いることができる。
【0100】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【符号の説明】
【0101】
1 車両用空調装置、 2 空調ケース、 2a 空気通路、 6 蒸発器(冷却器)、 7 ヒータコア(加熱器)、 8 PTCヒータ(加熱器)、 17 混合空間、 17a 上方混合空間、 17b 下方混合空間、 18 混合通路(空気通路)、 21 デフロスタ開口部(上方開口部)、 22 デフロスタドア、 31 フェイス開口部(上方開口部)、 32 フェイスドア、 41 フット開口部(下方開口部)、 42 フットドア、 43 回転軸、 44 ドア本体、 45 温風ミックスドア(ドア装置)、 70 ドア対向面、 71 第1ドア対向面、 72 第2ドア対向面、 75 接触面、 81 連結面、 131 リアフェイス開口部(下方開口部)、 132 リアフェイスドア、 141 リアフット開口部(下方開口部)、 142 リアフットドア、 270 ドア対向面、 271 第1ドア対向面、 272 第2ドア対向面、 273 第3ドア対向面、 281 第1連結面(連結面)、 282 第2連結面