(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】インク補給容器およびインク補給システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/175 115
B41J2/175 501
B41J2/175 153
B41J2/175 141
B41J2/175 169
(21)【出願番号】P 2019009974
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石澤 卓
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118453(JP,A)
【文献】特開2017-222152(JP,A)
【文献】特開2018-069717(JP,A)
【文献】特表2002-502335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の
側面を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に
前記第1側壁の全体を囲うように配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備えるインク補給容器。
【請求項2】
請求項1に記載のインク補給容器であって、
前記第2側壁と交差し、前記第1底面よりも下方に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2底面を備えるインク補給容器。
【請求項3】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備え、
前記第1側壁と前記第2側壁との間隔が一定ではない、インク補給容器。
【請求項4】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備え、
前記第1側壁の横断面形状が円形であり、前記第2側壁の横断面形状が多角形である、インク補給容器。
【請求項5】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備え、
前記第1側壁と前記第2側壁とをつなぐ補強リブを備えるインク補給容器。
【請求項6】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備え、
前記第1側壁と前記第2側壁との間に、情報表示部材を備える、インク補給容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口は、スリット弁を備える、インク補給容器。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク出口の周囲の少なくとも一部に、前記インクが補給されるインクタンクに対応して設けられた凹部に嵌まる凸部を有する、インク補給容器。
【請求項9】
インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、
前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、
前記インク収容部に連通するインク出口と、
前記第1側壁の外側に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、
を備え、
前記インク出口の周囲の少なくとも一部に、前記インクが補給されるインクタンクに対応して設けられた凹部に嵌まる凸部を有し、
前記凸部が前記凹部に嵌まった状態で前記インクタンクの正面側に位置する面に、前記インク収容部内の前記インクを視認するためのインク視認部を備える、インク補給容器。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のインク補給容器と、
前記インク出口から前記インクが補給されるインク入口を備えるインクタンクと、
を備えるインク補給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インク補給容器およびインク補給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等に備えられたインクタンクにインクを補給するインク補給容器に関し、例えば、特許文献1には、容器の底にカバーを設けることにより、容器の底が二重構造になっている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された容器では、底部は二重構造になっているものの、側面は二重構造になっていない。そのため、インクをインクタンクに補給する際に、利用者が、容器の側面を強く押した場合、インクが勢いよく容器のインク出口から飛び出し、周囲を汚す可能性があった。また、容器の落下の態様次第では、容器の側面に損傷が生じ、容器からインクが漏れ出す可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本開示の一形態によれば、インク補給容器が提供される。このインク補給容器は、インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、前記第1底面に交差し、前記インク収容部の側面を画定する第1側壁と、前記インク収容部に連通するインク出口と、前記第1側壁の外側に前記第1側壁の全体を囲うように配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2側壁と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】記録装置の概略構成を透視状態で模式的に示す斜視図。
【
図6】キャップが取り付けられた状態にあるインク補給容器の側面図。
【
図7】キャップが取り外された状態にあるインク補給容器の斜視図。
【
図12】カバーと容器本体部との接続構造を示す部分断面図。
【
図13】インク補給作業直前の状態を示す一部破断側面図。
【
図14】インク補給作業中の状態を示す一部破断側面図。
【
図15】インク補給容器の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断側面図。
【
図16】第2実施形態におけるインク補給容器を模式的に示す斜視図。
【
図17】第3実施形態におけるインク補給容器を説明するための断面図。
【
図18】第4実施形態におけるインク補給容器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、記録装置21の第1実施形態の概略構成を透視状態で模式的に示す斜視図である。
図1は、記録装置21における筐体22内を透視した状態で簡略的に図示している。記録装置21は、媒体に対してインクを吐出することによって、媒体に画像等の記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。
図1には、互いに直交するX方向、Y方向、および、Z方向を示している。X方向およびY方向は、水平方向に平行な方向であり、Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。X方向のことを左右方向ともいい、+X方向は右方向、-X方向は左方向である。Y方向のことを前後方向ともいい、+Y方向は前方向、-Y方向は後方向である。Z方向のことを上下方向ともいい、+Z方向は上方向、-Z方向は下方向である。
【0008】
記録装置21は、左右方向を長手方向とする直方体形状の筐体22を備えている。筐体22内における後方寄りの下部には、左右方向を長手方向とする支持台23が、その上面を略水平方向に沿わせるようにして設けられている。媒体の一例である用紙Pは、この支持台23の上面に支持されつつ、搬送方向となる前方に向けて搬送される。筐体22内における支持台23の上方位置には、左右方向に沿って延びるガイド軸24が架設され、そのガイド軸24にはインクを吐出する記録ヘッド25を下面側に備えたキャリッジ26が支持されている。キャリッジ26は、左右方向に貫通する支持孔27にガイド軸24が挿通された状態で、そのガイド軸24に対して左右方向への往復移動自在に支持されている。
【0009】
筐体22内においてガイド軸24の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー28と従動プーリー29とがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー28にはキャリッジモーター30の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー28と従動プーリー29との間には一部がキャリッジ26に連結された無端状のタイミングベルト31が巻き掛けられている。キャリッジモーター30の駆動によりキャリッジ26がタイミングベルト31を介してガイド軸24にガイドされつつ用紙Pに対する走査方向となる左右方向に沿って往復移動するときに、支持台23上を前方に搬送される用紙Pに対してキャリッジ26の下面側の記録ヘッド25から用紙Pに対してインクが吐出される。
【0010】
筐体22の前面側において支持台23の前方側となる位置には、筐体22内で支持台23上を搬送されるときに記録ヘッド25からのインクの吐出により記録を行われた用紙Pを前方側に排出する矩形の排出口32が開口している。排出口32には、筐体22内から排出される用紙Pを支持可能な矩形板状の排出トレイ33が、排出方向である前方への出没自在に設けられている。排出口32内において、排出トレイ33の下側には記録に用いる複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な給紙カセット34が前後方向への挿抜自在に装着されている。
【0011】
筐体22における前面であって排出口32よりも左右方向の端部側、本実施形態では右端部側、となる位置には、前面と上面が矩形状で右側面が直角三角形状をなす開閉扉35が、その下端に設けられた左右方向に沿う回転軸36を回転中心として前後方向への開閉動作自在に設けられている。この開閉扉35の前面には、矩形状の透明部材からなる窓部37が形成されており、ユーザーは開閉扉35を閉じた状態で筐体22の内部、特に開閉扉35の前面の裏側、を視認できるようになっている。
【0012】
記録装置21の筐体22内において、開閉扉35の裏側となる位置、すなわち前面寄りで、且つ、端部寄り、本実施形態では右端部寄り、となる位置には、記録ヘッド25に対してインクを供給するインク供給ユニット40が収容されている。インク供給ユニット40は、複数、本実施形態では5つ、のインクタンク41~45を含んで一体的に取り扱い可能とされた構造体であり、後で述べるように、各インクタンク41~45にはインクが補給可能とされている。
【0013】
図2は、記録装置21の筐体22内に備えられたインク供給ユニット40を示す斜視図である。
図3は、記録装置21の筐体22内に備えられたインク供給ユニット40の平面図である。インク供給ユニット40は、前後方向に長い略箱形状の5つのインクタンク41~45と、各インクタンク41~45の後面側から引き出された5つのインク供給チューブ46と、それらのインクタンク41~45を一括にした状態で組み付けられる直方体形状のインク補給用アダプター47を含んで構成されている。このインク補給用アダプター47は、全てのインクタンク41~45が厚さ方向を左右方向にして横並びに配置された状態において、全てのインクタンク41~45の上部前半部分に切欠形成された段差部48に組み付けられることで、インクタンク41~45と一体化されている。なお、
図1に示すように、インクタンク41~45から引き出されたインク供給チューブ46は、キャリッジ26内に形成された図示していないインク流路に接続され、そのインク流路を介して記録ヘッド25に接続されている。尚、インク補給用アダプター47は、インクタンク41~45を覆う筐体22の一部を構成するものであってもよく、また、インクタンク41~45と一体的に形成されていてもよい。
【0014】
図4は、
図3における4-4線矢視の一部破断面図である。
図5は、
図3における5-5線矢視の一部破断面図である。インクタンク41~45は、その内部にインクIKを貯留可能なインク貯留室49を有している。本実施形態の場合、その横並び方向で右端に位置するインクタンク41のインク貯留室49にはブラックインクが貯留される。そして、横並び方向で右端のインクタンク41よりも左側に並ぶ他の各インクタンク42~45のインク貯留室49にはブラック以外のカラー、例えば、シアン、マゼンタ、イエローなどのインクが貯留される。また、インクタンク41~45において筐体22の前面の窓部37を介して視認可能とされる前壁部には、インク貯留室49内のインクIKの液面を視認可能とする透明樹脂で形成された視認部50が設けられている。そして、その視認部50には、インク貯留室49内に貯留されるインクIKの液面の上限の目安を示す上限マーク51と下限の目安を示す下限マーク52が記されている。上限マーク51が示す目安は、例えば、インクをインク入口53から溢れさせずに注入可能なインク量の目安である。下限マーク52が示す目安は、例えば、利用者にインクの補給を促す目安である。
【0015】
図4に示すように、インクタンク41~45において段差部48の水平部分の上側には外部からインク貯留室49内へのインクの流入を可能とするインク入口53が設けられている。インク入口53は、インク貯留室49の内部と外部とを連通する流路54,55を有して鉛直上方に向けて延びる針56を含んで構成されている。針56の流路54,55は、各々の先端開口が針56を中心とする放射方向に並んで配置された2つの流路54,55からなる。2つの流路54,55のうち一方の流路54であり本実施形態では後ろ側の流路54は、他方の流路55であり本実施形態では前側の流路55よりも、その先端開口の高さが低く且つその流路の断面積が大きく形成されている。なお、インク貯留室49内の後方寄り下部には、インク貯留室49内のインクIKの残量を検出するための残量センサー57が設けられている。尚、残量センサー57は設けられていなくてもよい。
【0016】
図2~
図5に示すように、インク補給用アダプター47は、その上面58が針56の延びる方向と交差、好ましくは直交する方向に沿う水平な面とされ、その上面58には下面59まで上下方向に貫通する貫通孔60がインク入口形成部として形成されている。この貫通孔60は、針56が中央に配置される円孔形状のインク入口53と、インク入口53の前後に連なる前後一対の矩形孔部からなり、その下側の開口はインクタンク41~45において針56を上方に向けて突設した段差部48の水平部分により塞がれている。
【0017】
貫通孔60において、インク入口53を中心とする放射方向でインク入口53の外側となる領域には、下側の開口を塞がれた前後一対の矩形孔部により、針56の延びる方向である上側に開口する前後一対の凹部61が、インク入口53を中心として点対称となるように鉛直下方を深さ方向として窪み形成される。すなわち、インクタンク41~45に一体化されたインク補給用アダプター47において針56を含むインク入口53の外側となる領域には、インク入口53を中心として点対称をなす複数、本実施形態では前後で対をなす2つ、の凹部61が形成されることになる。なお、この場合において、円孔形状のインク入口53の中心に配置される針56の先端は、インク入口53と凹部61とが含まれる貫通孔60の開口縁となるインク補給用アダプター47の上面58よりも、インク貯留室49側に位置している。すなわち、インク補給用アダプター47の上面58は、針56の延びる方向において該針56の先端よりも外側の位置で該針56が延びる方向と交差する方向に延びている。その一方、インク補給用アダプター47の下面59は、左右方向へ横並びにした複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にして上側から係合するタンク係合部として機能する。
【0018】
インク補給用アダプター47の上面58のうち、各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、特定の色に着色されている。具体的には、その貫通孔60のインク入口53を介してインクが流入されるインクタンク41~45のインク貯留室49に貯留されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給用アダプター47における各貫通孔60の上側の開口縁の周辺部分は、その貫通孔60のインク入口53とインク貯留室49が連通するインクタンク41~45が内部に貯留しているインクに関わる情報を外部に示す第1部分として機能している。因みに、ブラックインクを貯留するインクタンク41のインク貯留室49と連通するインク入口53が配置される貫通孔60の上側開口の周辺部分はブラックに着色される。
【0019】
凹部61の内面、具体的には上下方向に沿う内側面、において、その凹部61の上側の開口縁よりも底面側、すなわち、段差部48の水平部分側、となる位置には、水平方向に特徴的な凹凸形状を呈する第1凹凸部62が、凹部61の深さ方向、換言すると、インク入口53の中心軸の方向、に沿って延びるように設けられている。第1凹凸部62のことを第1キー構造部ともいう。
図2及び
図3に示すように、第1凹凸部62は、複数、本実施形態では5つあるインクタンク41~45のインク入口53ごとに設けられる。そのため、インク補給用アダプター47において、各インクタンク41~45と上下方向で各々対応する位置に形成された各貫通孔60における矩形の凹部61には、それぞれ貫通孔60ごとに他の貫通孔60の凹部61の内面に設けられた第1凹凸部62とは異なる第1凹凸部62が形成されている。すなわち、これらの第1凹凸部62は、その第1凹凸部62が形成された貫通孔60内のインク入口53に接続されるインク出口65を有するインク補給容器63を識別可能とする識別部として機能するものである。尚、「凹部61の上側の開口縁よりも底面側となる位置」とは、開口縁よりも若干でも底面側に後退した位置であればよいことを意味する。
【0020】
図6は、キャップ68が取り付けられた状態にあるインク補給容器63の側面図である。
図7は、キャップ68が取り外された状態にあるインク補給容器63の斜視図である。
図8は、容器本体部64の内部構造を示す斜視図である。インク補給容器63は、インクタンク41~45と共にインク補給システムを構成し、インク残量が少なくなったインクタンク41~45に対してインクを補給する容器である。インク補給容器63において、下方向とは、インク補給容器63をテーブル等に載置した際に、後述する上面140から、後述する第1底面147を向く方向であり、上方向とは、それとは逆に、後述する第1底面147から、上面140を向く方向である。
【0021】
図7に示すように、インク補給容器63は、その主体となる容器本体部64と、容器本体部64の先端部に設けられ、インク補給容器63内からのインクの流出を可能とするインク出口65が先端に開口形成されたインク出口形成部66と、インク出口形成部66にインク出口65の少なくとも一部を囲むように付加される容器付加部67とを備えている。インク補給容器63を構成する部品のうち、少なくとも容器本体部64は、透明又は半透明の材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリプロピレンを用いることができる。
【0022】
容器本体部64の鉛直方向に垂直な断面は、略多角形である。本実施形態では、容器本体部64の鉛直方向に垂直な断面は、矩形状である。容器本体部64は、全体として、箱状の外形を有している。容器本体部64は、上部に、水平方向に沿った上面140を備え、下部に容器本体部64の底部を覆うカバー141を備える。後述するように、カバー141は、別部材として容器本体部64に取り付けられている。上面140には、インク出口65に連通する開口が形成されている。カバー141の平らな底面には、インク補給容器63を自立させるための複数の突起142が設けられている(
図6参照)。カバー141の底面のことを、第2底面70ともいう。本実施形態では、カバー141は、下面視で略矩形状であり、カバー141の底面には、4つの突起142がその四隅に設けられている(
図10参照)。容器本体部64は、鉛直方向に沿った4つの外壁143を備えている。本実施形態において、外壁143には、カバー141に形成された外壁も含まれる。本実施形態では、隣り合う2つの外壁143が交差する角部は、丸く面取りされている。上面140は、4つの外壁143に交差する。本明細書において、2つの物が「交差する」とは、2つの物が相互に実際に交差する状態と、一方の物の延長部分が他方の物に交差する状態と、相互の延長部分が交差する状態と、のいずれかの状態であることを意味する。
【0023】
図7に示すインク出口65は、インク収容部76(
図8参照)に連通する。本実施形態では、インク出口65の先端に、溝129が形成されている。さらに、インク出口65の先端と、後述する位置決め部73との間には、インク出口形成部66の外周に沿うように環状凸部130が形成されている。溝129を設けることにより、インクタンク41~45に対してインクを補給した後のインク補給容器63を起立させた場合に、インク出口65からインクが垂れる虞を低減できる。さらに、環状凸部130を設けることにより、インク出口65からインクが垂れてしまった場合でも、インクを堰き止めることができる。
【0024】
図7に示すように、インク出口形成部66と容器付加部67とは、容器本体部64の上面140よりも上方に備えられている。インク出口形成部66によって形成されるインク出口65は、その周りの容器付加部67も含めて、キャップ68により覆われることで、インク補給容器63の保管時に外部から隠蔽される。容器付加部67の円筒状をなす下端部の外周面には第1雄ねじ部69が形成される一方、キャップ68の内周面には図示しない雌ねじ部が形成されている。容器付加部67の第1雄ねじ部69にキャップ68に形成された第1雌ねじ部を螺合させることにより、キャップ68はインク補給容器63の先端部に対してインク出口65を覆うように取り付けられる。
【0025】
容器付加部67は、その外面全体が特定の色に着色されている。すなわち、その容器付加部67が付加される容器本体部64内に収容されているインクの色と同色に着色されている。この点で、インク補給容器63における容器付加部67は、そのインク補給容器63が内部に収容しているインクに関わる情報を外部に示す第2部分として機能している。例えば、ブラックインクを収容するインク補給容器63における容器付加部67の外面はブラックに着色される。更に、例えばブラックインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64は、他の色のインクを収容するインク補給容器63の容器本体部64よりも太く形成してもよい。その場合、インク出口形成部66はブラックインク用と他の色のインク用と共通の太さ、形状にしてもよい。
【0026】
インク出口65の周囲の少なくとも一部には、インクが補給されるインクタンク41~45に対応して設けられた凹部61に嵌まる凸部71が備えられている。より具体的には、凸部71は、容器付加部67の外周面に第1雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部よりも上方部分に、インク出口65を中心とする放射方向でインク出口65の外側となる領域に、インク出口65の中心軸の方向に沿って上方に向けて突出するように形成されている。この凸部71は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端を挿入させるときに、インク補給用アダプター47の上面58の凹部61を第1嵌合部として嵌合可能な第2嵌合部として機能する。凸部71は、インク入口53を前後から挟む一対の凹部61と同様に、インク出口65を前後から挟んで対をなすように設けられている。なお、
図7に示すように、凸部71は、インク補給容器63においてインク出口65を中心とする放射方向において、容器本体部64の外壁143よりも内側に位置する。
【0027】
本実施形態では、インク補給容器63の凸部71の先端は、インク出口65の中心軸の方向において、インク出口65よりも突出している。そのため、インク補給時において、ユーザーの手やインク補給容器63の周辺部分にインク出口65が触れる虞を低減でき、インクの付着による汚染の発生を抑制できる。なお、他の実施形態では、凸部71の先端は、インク出口65の中心軸の方向において、インク出口65より突出していなくてもよい。
【0028】
各凸部71の左右方向における外面には、インク補給用アダプター47の凹部61の内面に形成された第1凹凸部62と係合可能な第2凹凸部72が形成されている。第2凹凸部72のことを第2キー構造部ともいう。第2凹凸部72は、凸部71の突出方向、換言するとインク出口65の中心軸の方向、に沿って延びるように設けられており、凸部71を凹部61に嵌合させると共に、第2凹凸部72を第1凹凸部62に係合させたときに、インク補給容器63のインク出口65をインクタンク41~45側のインク入口53に接続させる。
【0029】
容器付加部67の第1雄ねじ部69が形成された円筒状の下端部と第2凹凸部72が形成された凸部71との間には、インク出口65の中心軸と交差、好ましくは直交する平面形状の位置決め部73が、インク出口65をその中心軸の方向に見たときインク出口65の放射方向外側に位置するように設けられている。この位置決め部73は、インク補給容器63の外面の一部である容器付加部67の外面の一部を構成する。位置決め部73は、インク出口65の中心軸の方向において凸部71の先端よりも容器本体部64側となる位置に設けられている。
【0030】
図8に示すように、容器本体部64の内部には、円筒状の内壁144が備えられている。内壁144のことを「第1側壁」ともいい、外壁143のことを「第2側壁」ともいう。内壁144および外壁143は、上面140に交差している。内壁144は、インクが収容されるインク収容部76の一部を画定する。これに対して、外壁143には、インク収容部76に収容されたインクは接触しない。本実施形態では、内壁144は円筒状であり、外壁143はその横断面が矩形状であるため、水平方向における内壁144と外壁143の間隔は一定ではない。なお、円筒状の内壁144は、下方ほど内径が大きくなるように形成されている。そのため、アンダーカットが不要となり、インジェクション成形によって低コストに製造を行うことができる。
【0031】
図8に示すように、本実施形態では、外壁143の下部および内壁144の下部は開口されている。外壁143の開口部は、カバー141によって閉塞される。一方、内壁144の開口部145は、
図9,10に示すフィルム部材146が、内壁144の下面である溶着面148に溶着されることにより閉塞される。内壁144および外壁143は、フィルム部材146と交差する関係にある。フィルム部材146および溶着面148は、前述した上面140と平行な位置関係にある。つまり、上面140は、フィルム部材146よりも上方において、フィルム部材146が延びる方向に沿って形成されている。
【0032】
フィルム部材146は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートによって形成されている。フィルム部材146とカバー141との間には、フィルム部材146のたわみを許容するための隙間が形成される。なお、他の実施形態では、フィルム部材146とカバー141との間に隙間は形成されていなくてもよい。フィルム部材146は、インク収容部76の一部を画定する第1底面147を構成する。つまり、本実施形態においてインク収容部76は、下面が第1底面147によって画定され、側面が内壁144によって画定される。そして、インク収容部76の上部は、上面140に形成された開口とインク出口形成部66とを通じてインク出口65に連通する。なお、カバー141によって形成された第2底面70は、第1底面147よりも下方に配置されている。第1底面147には、インク収容部76に収容されたインクが接触するものの、第2底面70にはインクは接触しない。
【0033】
本実施形態では、内壁144と外壁143とは、鉛直方向に沿った平板状の複数の補強リブ149によって接続されている。本実施形態では、対向する2つの外壁143の鉛直方向に沿った中心線同士をつなぐ仮想平面に沿って、補強リブ149が、内壁144と外壁143との間に配置されている。なお、他の実施形態では、インク補給容器63の対向する関係にある鉛直方向に延びる角部同士をつなぐ仮想平面に沿って、補強リブ149が、内壁144と外壁143との間に配置されてもよい。本明細書において、2つの物が「対向する」とは、2つの物の間に他の物が存在しない場合と存在する場合との両方を含む意味である。
【0034】
図9は、インク補給容器63の第1の分解斜視図である。
図10は、インク補給容器63の第2の分解斜視図である。
図11は、インク補給容器63の縦断面図である。
図11には、補強リブ149が存在する位置におけるインク補給容器63の断面を示している。これらの図に示すように、インク補給容器63は、スパウト部150と、弁74と、容器本体部64と、フィルム部材146と、カバー141とが組み付けられることによって構成される。スパウト部150には、インク出口65とインク出口形成部66と容器付加部67(
図7参照)とが一体的に備えられている。
【0035】
インク出口形成部66に形成されたインク出口65内には、そのインク出口65を開閉可能に封止する例えばシリコン膜等の弾性部材からなる弁74が設けられている。弁74は、インク出口65の中心軸の方向において、位置決め部73よりも先端側に設けられている。この弁74には、その中心を交点として等角度間隔で交わる複数のスリット75が設けられており、それらのスリット75がインク出口65の外側から内側に押し広げられることで開弁するように構成されている。すなわち、常閉弁である弁74は、インク出口65内にインク入口53側の針56の先端が挿入されたときに、その針56の先端で内側に押し広げられて開弁する。弁74のことを、スリット弁ともいう。
【0036】
インク出口65内にインク入口53側の針56の先端が挿入されて弁74が開弁したときには、位置決め部73が、インク入口53及び凹部61を含む貫通孔60が形成されたインク補給用アダプター47の上面58に当接し、インク出口65の中心軸方向において弁74をインクタンク41~45に対して位置決めする。この点で、インク補給用アダプター47の上面58は、インクタンク41~45へのインク補給のためにインク補給容器63のインク出口65の弁74が開弁されるときにインク補給容器63の位置決め部73が当接するインクタンク41~45側の一部であって、平面形状の位置決め部73を受け止める受け面として機能する。
【0037】
図11に示すように、インク補給容器63における容器本体部64は、その内部にインクIKを収容可能なインク収容部76を有するボトル形状をなす部材であり、その上端部に設けられた頸部77の外周面には第2雄ねじ部78が形成されている。一方、容器本体部64の上端部に設けられるスパウト部150の下部の内周面には、第2雌ねじ部82が形成されている。この第2雌ねじ部82を、容器本体部64の頸部77に形成された第2雄ねじ部78に螺合させることにより、スパウト部150は容器本体部64の上部に取り付けられる。
【0038】
図12は、カバー141と容器本体部64との接続構造を示す部分断面図である。
図9および
図12に示すように、カバー141は、複数の固定部151を有している。各固定部151は、鉛直方向に伸びる板状部152と、板状部152の先端において外側を向く爪部153とを備える。そして、
図10および
図12に示すように、容器本体部64の外壁143には、複数の係合部154が形成されている。係合部154は、外壁143に貫通孔を形成することにより構成されている。固定部151と係合部154とは、いわゆるスナップフィット構造を構成する。本実施形態では、
図12に示すように、固定部151に設けられた爪部153は、係合部154に外側を向いて係合する。
【0039】
図9および
図12に示すように、カバー141は、カバー141の第2底面70の外周部から上方に向けて立設する係合壁155を有する。係合壁155は、二重構造になっており、内側の壁に固定部151が形成され、内側の壁と外側の壁との間に画定された溝部156に、容器本体部64の外壁143の下端が嵌まる。外壁143の下端は、外壁143の下端が溝部156に嵌まった際に、容器本体部64とカバー141の外表面が同一面となるように、他の部分よりも薄く形成されている。容器本体部64の外壁143の下端が溝部156に嵌まる際には、固定部151が板状部152の弾性によって内側に押し込まれ、その後、係合部154が固定部151の爪部153に対応する位置に移動したときに、爪部153が係合部154に嵌まり、カバー141は、容器本体部64に固定される。カバー141に備えられた係合壁155の外側の壁には、孔部等は設けられていない。そのため、固定部151および係合部154によってカバー141が容器本体部64に一旦、取り付けられると、カバー141を容器本体部64から容易に取り外されにくくなる。
【0040】
図13は、インク補給作業直前の状態を示す一部破断側面図である。
図14は、インク補給作業中の状態を示す一部破断側面図である。
図15は、インク補給容器の位置決め部がインクタンク側の受け面に当接した状態を示す一部破断側面図である。上記のように構成されたインク補給システムの作用について、インク補給容器63を用いてインク供給ユニット40のインクタンク41~45にインクを補給する際の作用に着目して以下説明する。なお、前提として、
図2に示すように、複数の横並びに配置されたインクタンク41~45のうち一番右側に位置するブラックインクのインクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の下部に記された下限マーク52の高さまで低下しているため、以下においては、このインクタンク41にインク補給する場合について説明するものとする。また、インク補給に用いるインク補給容器63にはブラックインクが十分に収容されているものとし、そのインク補給容器63からは、前もってキャップ68が取り外されているものとする。さらに、そのインク補給容器63の凸部71の外面に形成されている第2凹凸部72の形状はインクタンク41へのインク入口53の前後に位置する凹部61の内面に形成されている第1凹凸部62の形状と一致し、凹部61に対する凸部71の挿入に伴い係合可能であるものとする。
【0041】
インクタンク41へのインク補給を行う際、まずユーザーは、筐体22の開閉扉35を
図1に示す閉鎖状態から回転軸36を中心に前方へ回動させて開放状態とする。すると、インク供給ユニット40は、インクタンク41~45内へのインク入口53が形成されたインク補給用アダプター47の上面58が筐体22の外部に露出し、ユーザーは、所望のインク入口53に対して上方からインク補給容器63のインク出口65を接続することが可能となる。
【0042】
そこで、
図13に示すように、ユーザーは、インク補給に用いるブラックインクを収容したインク補給容器63を上下逆さまにして、インク出口65がインク補給用アダプター47における一番右側の貫通孔60の上方に位置するように保持する。すなわち、そのインク補給容器63のインク出口65の中心軸線をインク補給対象のインクタンク41のインク入口53の中心軸線と位置合わせする。このとき、ユーザーは、手に保持しているインク補給容器63の容器付加部67に着色されている色と、そのときのインク補給対象であるインクタンク41のインク入口53が設けられた貫通孔60の上側の開口縁周辺に着色されている色とを見比べる。そして、それぞれの色が同じであれば、今回のインク補給に適合したインク補給容器63を手に保持していると確認し、インク補給における後続作業に移行する。
【0043】
そして、
図13に示す状態からインク補給容器63を下降させ、そのインク補給容器63の凸部71をインクタンク41と一体的なインク補給用アダプター47の凹部61に挿入する。すると、その凹部61に対する凸部71の挿入状態の実現により、インク入口53の中心軸線に対するインク出口65の中心軸線の一致状態が確保される。なお、この場合において凹部61はインク入口53の中心である針56に対して点対称の位置状態にあるため、凸部71は何れの凹部61に対しても挿入可能とされる。そのため、インク補給容器63をインク出口65の中心軸線を中心にして何度も回転させて凹部61と凸部71との適合した位置関係を確かめる必要もなく、ユーザーは、凹部61に対する凸部71の挿入作業を容易に行い得る。
【0044】
凹部61に凸部71が僅かに挿入された状態から、凸部71を凹部61の深さ方向である下方に向けて更に挿入させると、凸部71の外面の第2凹凸部72が凹部61の内面の第1凹凸部62に係合する。そして、その係合状態を維持しつつ、更に凸部71を凹部61の深さ方向で底面側に向けて挿入すると、インク入口53の針56の先端がインク出口65の弁74の位置にまで至り、その弁74を開弁させる。
【0045】
すなわち、
図14に示すように、針56の先端が弁74に対して、スリット75を下方から上方に、換言すれば、インク出口65の外側から内側に、押し広げることで、弁74を開弁状態とする。その結果、インク補給容器63のインク出口65とインクタンク41のインク入口53の針56とが接続され、インク補給容器63内からインクタンク41内へのブラックインクの補給が行われる。このとき、インク入口53の針56は2つある流路54,55のうち、弁74を開弁させてインク出口65から流出させたインクに対して先に先端開口が触れる一方の流路がインクを流通させるインク流路として機能し、他方の流路が空気を流通させる空気流路として機能する。例えば、ユーザーがインク補給容器63を傾けた状態でインク入口53にインク出口65を接続しようとした場合には、その傾ける方向の違いにより、2つの流路54,55のうちインク流路となる流路も変更になる。
【0046】
なお、凹部61内に凸部71を挿入させた後において第2凹凸部72が第1凹凸部62に係合しない場合、その時点で、ユーザーはブラック以外の他の色のインク補給容器63を間違って挿入しようとしていると認識できる。この場合、もし仮に第1凹凸部62の上端が凹部61の開口縁と同じ高さに位置している構成であると、その第1凹凸部62に対する第2凹凸部72の係合が拒否されるだけでなく、凹部61に対する凸部71の挿入も拒否されるため、ユーザーは、凹部61への凸部71の挿入を何度も試みて、いたずらに無駄な作業時間を費やしてしまうこともある。この点、本実施形態では、第1凹凸部62の高さが凹部61の開口縁よりも低いため、凸部71は凹部61に挿入されるときに凹部61の深さ方向で底面側に誘導され易くなり、作業時間が無駄に長くなることも抑制される。
【0047】
さらに、
図14及び
図15に示すように、インク補給容器63のインク出口65内の弁74をインクタンク41側のインク入口53の針56が開弁させるとき、インク補給容器63の位置決め部73が、インクタンク41側の一部であるインク補給用アダプター47の上面58に当接する。すなわち、インク補給容器63は、この位置決め部73とインク補給用アダプター47の上面58との当接により、弁74がインクタンク41側の針56に対してインク出口65の中心軸の方向において位置決めされた状態で開弁される。
【0048】
また、その際において、位置決め部73はインク出口65の放射方向外側に位置するため、インク補給容器63はインク入口53にインク出口65を接続させた姿勢が安定的に保持される。また、インク補給用アダプター47の上面58にインク補給容器63の位置決め部73が当接したとき、インク入口53における針56の基端が位置するインク入口53の底面とインク補給容器63のインク出口65の先端との間には隙間が存在する。そのため、インク入口53の針56の基端が位置する底面にはインクが溜まり易いが、そのように溜まっているインクがインク出口65の先端に付着してインク補給容器63を汚すことも回避される。
【0049】
そして、インクタンク41に対するインク補給容器63からのインク補給が終了したとき、インクタンク41内のインクの液面高さが視認部50の上限マーク51よりも未だ低い場合には、更に同じブラックのインク補給容器63を用いて上限マーク51まで更に継ぎ足すインク補給を行ってもよい。なお、以上のようなインク補給作業は、ブラックインクのインクタンク41以外の他の色のインクタンク42~45に対する場合も同様に行われる。
【0050】
(1-1)以上で説明した第1実施形態によれば、インク収容部76を画定する内壁144の外側に外壁143が配置されているため、利用者によって容器本体部64の側面が強く押された場合でも、インク収容部76の容積が変化することを抑制できる。従って、インク補給時等において、インク出口65からインクが勢いよく飛び出して周囲を汚す可能性を低減できる。また、インク収容部76を画定する内壁144の外側に外壁143が配置されているため、インク補給容器63が側面から落下した場合にインク収容部76が損傷することを抑制できる。従って、落下等によってインクが漏れ出すことを抑制できる。また、本実施形態では、針56には、2つの流路54,55が備えられており、一方が空気流路として機能し、他方がインク流路として機能するため、インク補給時に気液交換が良好に行われる。従って、インク補給容器63を圧搾しなくてもインクはインク補給容器63からインクタンク41~45に流入する。本実施形態では、容器本体部64の側面が内壁144と外壁143の二重構造になっているため、利用者によってインク補給容器63が無理矢理圧搾されることを抑制できる。
【0051】
(1-2)本実施形態のインク補給容器63は、外壁143と交差し、第1底面147よりも下方に配置され、インクが接触しないカバー141を備えている。そのため、落下等によってインク収容部76が損傷することをより効果的に抑制できる。
【0052】
(1-3)本実施形態のインク補給容器63は、内壁144と外壁143の間隔が一定ではない。そのため、インク補給容器63の設計やデザインの自由度が高まる。
【0053】
(1-4)本実施形態では、内壁144の横断面形状が円形であり、外壁143の横断面形状が多角形である。そのため、インク収容部76の耐圧性が向上し、さらに、インク補給容器63が転がって高所から落下し、損傷する可能性を低減できる。なお、外壁143の横断面形状は、本実施形態では略矩形であるが、三角形でもよいし、五角形以上の多角形でもよい。
【0054】
(1-5)本実施形態のインク補給容器63は、内壁144と外壁143をつなぐ補強リブ149を備えている。そのため、インク補給容器63の剛性を高めることができるので、利用者によって側面が強く押された場合にインク収容部76の容積が変化してインクが飛び出すことをより効果的に抑制できる。また、インク補給容器63の運搬や販売のために、インク補給容器63を袋に封入して減圧する際に、インク補給容器63が変形することを抑制できる。
【0055】
(1-6)本実施形態のインク補給容器63は、インク出口65にスリット75を有する弁74を備えている。そのため、簡単な構成によってインク出口65からインクをインクタンク41~45に補給できる。また、本実施形態では、容器本体部64が、内壁144と外壁143とを有する二重構造になっているため剛性が高い。そのため、容器本体部64の側面を強く押されることにより、スリット75からインクが漏れることを抑制できる。
【0056】
(1-7)本実施形態のインク補給容器63は、インク出口65の周囲の少なくとも一部に、インクタンク41~45に設けられた凹部61に嵌まる凸部71を有している。そのため、インク補給容器63をインクタンク41に安定して接続することができる。
【0057】
(2-1)本実施形態のインク補給容器63は、インクが収容されるインク収容部76を画定し、下部に開口部145を有する内壁144と、インク収容部76に連通するインク出口65と、開口部145を塞ぐフィルム部材146と、を備える。そのため、利用者によって容器本体部64の側面が強く押された場合においてインク収容部76内のインクが流動しても、その流動をフィルム部材146で受けることができるので、フィルム部材146と内壁144との接合部においてインク補給容器63からインクが漏れることを抑制できる。また、外部温度の影響によりインクの体積が変化した場合には、フィルム部材146によってインク収容部76の容積をインクの体積変化に追従させることができるので、インク補給容器63が破損したり、インクが外部に漏れることを抑制できる。
【0058】
(2-2)本実施形態のインク補給容器63は、フィルム部材146よりも上方に、フィルム部材146が延びる方向に沿って配置された上面140を備えている。そのため、インク補給容器63の製造時において、インク補給容器63を上下逆さまにし、上面58によってインク補給容器63を支えることにより、フィルム部材146を上方から内壁144の溶着面148に容易に接合できる。
【0059】
(2-3)本実施形態のインク補給容器63は、フィルム部材146の下方にカバー141を備えている。そのため、外部からの衝撃等が加わっても、フィルム部材146の損傷を抑制できる。
【0060】
(2-4)本実施形態のインク補給容器63のカバー141は、その周縁部に固定用の爪部153を有しており、内壁144の外周側の外壁143には、爪部153が係合する係合部154が備えられている。本実施形態では、爪部153が係合部154に外側を向いて係合するため、カバー141がインク補給容器63から容易に離脱してしまうことを抑制できる。
【0061】
(2-5)本実施形態のインク補給容器63は、カバー141の下面に、複数の突起142を有している。そのため、インク補給容器63が下方側から落下した場合であっても、突起142によって衝撃を緩和することができるので、インク補給容器63の破損を抑制できる。また、複数の突起142がカバー141の下面に備えられているので、カバー141に歪みが生じた場合でも、インク補給容器63をテーブル等に載置したときにがたつきを抑制できる。
【0062】
(3-1)本実施形態では、インク補給容器63からインクタンク41~45へのインク補給時に、弁74はインクタンク41~45に対して位置決めされた状態で開弁される。そのため、開弁時に弁74が位置ずれした場合に生じる虞のあるインク漏れやインク補給不良等の不具合を抑制でき、インクタンク41~45に対して適切にインクを補給することができる。
【0063】
(3-2)本実施形態では、弁74は、シリコン膜等からなる弾性部材に1つ以上のスリット75が設けられたスリット弁で構成されているため、少ない部品点数で簡単な構造のインク補給容器63を提供できる。
【0064】
(3-3)本実施形態では、インク補給容器63からインクタンク41~45へのインク補給時に、インク補給容器63は位置決め部73がインクタンク41~45側の一部に対してインク出口65の放射方向外側に位置する状態で当接することになるため、安定した姿勢でインク補給を行うことができる。
【0065】
(3-4)本実施形態では、インク補給容器63のインク出口65にインクタンク41~45の針56を挿入させて弁74を開弁させるときには、インクタンク41~45においてインク補給容器63の受け面として機能するインク補給用アダプター47の上面58にインク補給容器63の位置決め部73が当接して弁74と針56との相対的な位置関係を決定する。そのため、弁74を針56により適切に開弁させることができ、インク補給不良の発生を抑制できる。
【0066】
(3-5)本実施形態では、インク補給時において、インクタンク41~45の凹部61にインク補給容器63の凸部71が嵌合しない状態ではインク出口65に針56が挿入されないので、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制することができる。
【0067】
(3-6)本実施形態のインク補給容器63は、インク出口形成部66の外側で、且つ、インク出口65の中心軸の方向で凸部71よりも容器本体部64側となる位置に、位置決め部73を備える。そのため、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制した上で、インク補給容器63のインク出口65に対するインクタンク41~45の針56の挿入具合を適切な位置決め状態で確保できる。
【0068】
(3-7)本実施形態では、インクタンク41~45の針56は、その先端がインク補給容器63の位置決め部73の受け面となるインク補給用アダプター47の上面58よりも外側に突出しないため、針56の先端にインクが付着している場合でも、そのインクがインク補給作業を行うユーザーの手やインク補給容器63に付着する虞を低減できる。
【0069】
(3-8)本実施形態では、インク補給容器63をインクタンク41~45に対して針56の延びる方向から2つの流路54,55が並ぶ放射方向に沿って傾けた状態から接続する場合、2つの流路54,55のうちインク補給容器63のインク出口65が先に近づいた側の一方の流路がインク流路として機能し、他方の流路が空気流路として機能する。そのため、ユーザーは、2つの流路54,55のうち何れの流路をインク流路としてもよいので、インク流路とする流路を迷って選ぶようなこともなく、迅速にインク補給作業を行うことができる。
【0070】
(3-9)本実施形態では、インクタンク41~45の凹部61にインク補給容器63の凸部71を嵌合させると共に、その凹部61の内面の第1凹凸部62に凸部71の外面の第2凹凸部72を係合させることにより、インクタンク41~45に対して適合したインク補給容器63が接続されたことをユーザーは認識できる。そのため、インクタンク41~45とインク補給容器63との不適合な接続を抑制することができる。また、インクタンク41~45の凹部61の内面において凹部61の開口縁よりも底面側となる位置に第1凹凸部62があるため、インク補給容器63は、その凸部71がインクタンク41~45の凹部61の開口側から底面側に誘導され易く、その挿入作業を容易に行うことができる。
【0071】
(3-10)本実施形態では、インクタンク41~45の凹部61の内面に凹部61の深さ方向に沿って延びるように設けられた第1凹凸部62に対してインク補給容器63における凸部71の外面の第2凹凸部72を凹部61への凸部71の嵌合に伴い係合させることができる。その結果、インクタンク41~45のインク入口53に対するインク補給容器63のインク出口65の接続方向を認識し易くできる。
【0072】
(3-11)本実施形態では、インク入口53の放射方向の外側に設けられる凹部61はその深さ方向が鉛直下方に向かう方向であるため、インクタンク41~45のインク入口53にインク補給容器63のインク出口65を接続させた状態において、インク補給容器63のインク出口65からインク収容部76内にインクが戻ることを抑制できる。その結果、インク補給容器63からインクタンク41~45へのインクの補給作業を適切に行うことができる。
【0073】
(3-12)本実施形態では、インク補給容器63は、その凸部71をインクタンク41~45においてインク入口53を中心として点対称に形成された複数の凹部61の何れに嵌合させた場合にも、そのインク補給容器63のインク出口65をインクタンク41~45のインク入口53に接続できる。そのため、インク補給時にはインク補給容器63のインクタンク41~45に対する接続作業を容易に行うことができる。
【0074】
(3-13)本実施形態では、インクタンク41~45におけるインク補給用アダプター47のインク入口53の周辺部分に着色された色はインク貯留室49に貯留しているインクに関わる情報を示す第1部分として機能し、インク補給容器63の容器付加部67に着色された色はインク収容部76に収容しているインクに関わる情報を示す第2部分として機能する。そのため、インク補給容器63をインクタンク41~45に接続してインクの補給を行うときに、補給するインクが適合しているか否かをインクタンク41~45側の第1部分とインク補給容器63側の第2部分とを視認することで容易に確認できる。
【0075】
(3-14)本実施形態では、インク補給容器63の凸部71は、インク出口65を中心とする放射方向でインク収容部76が設けられた容器本体部64の外周面よりも内側に形成されているため、インクタンク41~45のインク入口53にインク補給容器63のインク出口65を接続させるときに、インク補給容器63の凸部71が邪魔になり難くすることができる。
【0076】
(3-15)本実施形態では、インク補給用アダプター47は、複数のインクタンク41~45に対してそれらを一括にした状態で下面59側を係合させた上で、インクタンク41~45ごとのインク入口53に接続可能なインク出口65を有するインク補給容器63を識別可能とする複数の第1凹凸部62を備えている。そのため、インクタンク41~45は汎用的な共通構造とした上で、それら複数のインクタンク41~45を一括状態にしてインク補給用アダプター47のタンク係合部となる下面59を係合させれば、インク補給時にインク補給容器63の誤装着を抑制可能な構造を簡単に実現できる。
【0077】
B.第2実施形態:
図16は、第2実施形態におけるインク補給容器63Bを模式的に示す斜視図である。本実施形態のインク補給容器63Bは、その凸部71がインクタンク41~45側の凹部61に嵌まった状態でインクタンク41~45の正面側に位置する面、すなわち、+Y方向側の面に、インク収容部76内のインクを視認するためのインク視認部157を備えている。
【0078】
本実施形態では、インク視認部157は、容器本体部64を透明または半透明の材料によって構成し、+Y方向側の面以外の面、すなわち、-Y方向側の面、+X方向側の面、および、-X方向側の面、を構成する外壁143に、紙やフィルムなどによって形成されたラベル158を貼付することにより構成されている。
図16には、容器本体部64にラベル158が貼付された位置をハッチングを付して示している。ラベル158には、例えば、インク補給容器63に収容されたインクに関する情報が表示されている。インク視認部157には、インク収容部76内のインク量の目安となる印あるいは目盛りが備えられてもよい。
【0079】
このような第2実施形態のインク補給容器63Bによれば、インクをインク補給容器63からインクタンク41~45に補給する時に、インク補給容器63に備えられたインク収容部76内のインクが減少する様子を、インクタンク41~45の正面側から容易に確認できる。特に、第1実施形態における記録装置21(
図1,2参照)のように、インクタンク41~45の正面側にも視認部50が設けられている場合には、インク補給容器63のインク収容部76からインクが減少する様子と、インクタンク41~45内のインクが増加する様子を、同時に視認することができる。
【0080】
なお、容器本体部64の+Y方向側の面には、その一部にインク視認部157が設けられていればよく、ラベル158は、容器本体部64の+Y方向側の面の一部を覆うように貼付されてもよい。また、+Y方向側の面に貼付されるラベル158の一部または全部が透明になっていれば、+Y方向側の面全体にラベル158が設けられていてもよい。また、インク視認部157は、例えば、容器本体部64のうち、インク視認部157に対応する部分のみが透明又は半透明に構成され、他の部分が、非透明な材料で構成されることによって構成されてもよい。また、容器本体部64のインク視認部157に対応する部分以外の部分が着色されていてもよい。
【0081】
C.第3実施形態:
図17は、第3実施形態におけるインク補給容器63Cを説明するための断面図である。
図17には、容器本体部64の横断面を示している。本実施形態では、補強リブ149と内壁144と外壁143とによって区画される4つの空間に、それぞれ、1つずつ情報表示部材159が配置されている。各情報表示部材159には、例えば、そのインク補給容器63に収容されたインクに関する情報や、その他種々の情報が表示されている。情報表示部材159は、例えば、紙やフィルムによって構成されている。情報表示部材159は、上記空間中に固定されずに配置されていてもよいし、上記空間における内壁144の表面あるいは外壁143の裏面に貼付されていてもよい。
【0082】
このような第3実施形態のインク補給容器63Cによれば、透明または半透明の外壁143を通じて、情報表示部材159に表示された各種の情報を確認することができる。また、外壁143と内壁144との間に形成される空間を効率的に利用できる。
【0083】
なお、本実施形態において、情報表示部材159は、補強リブ149と内壁144と外壁143とによって区画される4つの空間のすべてに配置されていなくてもよく、一部の空間に配置されてもよい。また、容器本体部64に補強リブ149が形成されていない場合には、情報表示部材159は、内壁144と外壁143との間に配置されていればよい。
【0084】
D.第4実施形態:
図18は、第4実施形態におけるインク補給容器63Dの斜視図である。第4実施形態のインク補給容器63Dは、容器本体部64の上下方向におけるサイズが、第1実施形態のインク補給容器63よりも大きい。インク出口65やインク出口形成部66、容器付加部67の形状は、第1実施形態と同じである。このように、インク出口65やインク出口形成部66、容器付加部67の形状が統一されていれば、容器本体部64の大きさは任意に設定可能である。
【0085】
E.他の実施形態:
(E-1)上記実施形態において、インク補給容器63は、凸部71や容器付加部67を備えていなくてもよい。また、第1底面147は、フィルム部材146に限らず、他の部材によって構成されてもよい。
【0086】
(E-2)上記実施形態において、インク補給容器63は、カバー141を備えていなくてもよい。また、カバー141は、スナップフィット構造に限らず、接着材やネジによって容器本体部64に固定されてもよい。
【0087】
(E-3)上記実施形態において、内壁144は、円筒状に限らず、例えば、横断面が多角形の筒状に構成されていてもよい。また、例えば、内壁144の断面が多角形状に構成され、外壁143が円筒状に構成されてもよい。
【0088】
(E-4)上記実施形態において、容器本体部64は、外壁143を備えず、内壁144のみによって側面が構成されてもよい。また、容器本体部64は、内壁144と外壁143に加えて、他の側壁を備えてもよい。
【0089】
(E-5)上記実施形態において、カバー141の下面に、突起142は備えられていなくてもよい。
【0090】
(E-6)上記実施形態において、補強リブ149は、鉛直方向に沿った形状に限らず、鉛直方向に交差するように傾斜していてもよく、また、水平方向に沿った形状でもよい。また、容器本体部64に補強リブ149は備えられていなくてもよい。
【0091】
(E-7)上記実施形態において、インク補給容器63の凸部71が嵌まる各凹部61は、インク補給用アダプター47に設けられている。これに対して、各凹部61は、インクタンク41~45に直接的に設けられてもよい。
【0092】
(E-8)上記実施形態では、インク補給容器63の凸部71が嵌まる各凹部61は、インク補給用アダプター47に設けられている。これに対して、各凹部61は、各インクタンク41~45に対応して設けられていればよく、各インクタンク41~45とは離れた場所に設けられてもよい。離れた場所とは、記録装置21内の他の場所であってもよいし、記録装置21から離れた別の場所でもよい。この場合、各凹部61と、各インクタンク41~45とは、チューブなどの流路部材によって、インクが流通可能に接続される。
【0093】
(E-9)上記実施形態では、インク供給ユニット40は、複数のインクタンク41~45を含む。これに対して、インク供給ユニット40は、複数のインク貯留室49を含む1つのタンクとして構成されてもよい。つまり、インク供給ユニット40は、各インク貯留室49を区画する壁を内部に備えていてもよい。
【0094】
(E-10)上記実施形態において、インク補給容器63は、スリット75が形成された弁74を備えている。しかし、弁74は、このようなスリット弁構造に限られない。例えば、弁74は、弁体とスプリングなどの弾性部材とを備え、弾性部材によって弁体をインク出口65側に備えられた弁座に付勢する構造であってもよい。この場合、針56がインク出口65に挿入されると、針56によって弁体が押し上げられ、インク収容部76から針56に向けてインクが流れる。その他、例えば、インク補給容器63は、弁74を備えず、フィルム部材がインク出口65に設けられていてもよい。この場合、針56がインク出口65に挿入された際に、フィルム部材が破られ、インク収容部76から針56に向けてインクが流れる。
【0095】
(E-11)上記実施形態において、インクタンク41~45が貯留するインクに関わる情報を示すものとしてインクタンク41~45ごとに設けられる第1部分及びそのインク補給容器63が収容するインクに関わる情報を示すものとしてインク補給容器63ごとに設けられる第2部分は、着色情報による以外に文字情報や形状情報などでもよい。また、この第1部分及び第2部分に関する構成はなくてもよい。
【0096】
(E-12)上記実施形態において、容器本体部64の外壁143または内壁144には、インク収容部76内のインクの量を量るための目盛りが形成されていてもよい。
【0097】
(E-13)本開示は、プリンター及びそのインク補給容器に限らず、インク以外の他の液体を消費する任意の液体噴射装置及びそれらの液体噴射装置に用いられる容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置に用いられる容器として本開示は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置。
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置。
(6)潤滑油の噴射装置。
(7)樹脂液の噴射装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体噴射装置。
【0098】
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0099】
F.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0100】
(1)本開示の一形態によれば、インク補給容器が提供される。このインク補給容器は、インクが収容されるインク収容部の一部を画定する第1底面と、前記第1底面に交差し、前記インク収容部の一部を画定する第1側壁と、前記インク収容部に連通するインク出口と、前記第1側壁の外側に配置され、前記インクが接触しない第2側壁と、を備える。
【0101】
このような形態のインク補給容器であれば、インク収容部を画定する第1側壁の外側に第2側壁が配置されているため、利用者によって側面が強く押された場合でも、インク収容部の容積が変化することを抑制できる。従って、インク出口からインクが勢いよく飛び出して周囲を汚す可能性を低減できる。また、インク収容部を画定する第1側壁の外側に第2側壁が配置されているため、インク補給容器が側面から落下した場合にインク収容部が損傷することを抑制できる。従って、落下等によってインクが漏れ出すことを抑制できる。
【0102】
(2)上記形態のインク補給容器は、前記第2側壁と交差し、前記第1底面よりも下方に配置され、前記インク収容部に収容された前記インクが接触しない第2底面を備えてもよい。このような形態であれば、落下等によってインク収容部が損傷することをより効果的に抑制できる。
【0103】
(3)上記形態のインク補給容器において、前記第1側壁と前記第2側壁との間隔が一定でなくてもよい。このような形態であれば、インク補給容器の設計やデザインの自由度が高まる。
【0104】
(4)上記形態のインク補給容器において、前記第1側壁の断面形状が円形であり、前記第2側壁の断面形状が多角形であってもよい。このような形態であれば、インク収容部の耐圧性が向上し、さらに、インク補給容器が転がって高所から落下し、損傷する可能性を低減できる。
【0105】
(5)上記形態のインク補給容器において、前記第1側壁と前記第2側壁とをつなぐ補強リブを備えてもよい。このような形態であれば、インク補給容器の剛性を高めることができるので、利用者によって側面が強く押された場合にインク収容部の容積が変化してインクが飛び出すことをより効果的に抑制できる。
【0106】
(6)上記形態のインク補給容器において、前記第1側壁と前記第2側壁との間に、情報表示部材を備えてもよい。このような形態によれば、第1側壁と第2側壁との間に形成される空間を効率的に利用できる。
【0107】
(7)上記形態のインク補給容器において、前記インク出口は、スリット弁を備えてもよい。このような形態であれば、簡単な構成によってインク出口からインクをインクタンク等に補給できる。
【0108】
(8)上記形態のインク補給容器は、前記インク出口の周囲の少なくとも一部に、前記インクが補給されるインクタンクに対応して設けられた凹部に嵌まる凸部を有してもよい。このような形態であれば、インク補給容器をインクタンクに安定して接続することができる。
【0109】
(9)上記形態のインク補給容器は、前記凸部が前記凹部に嵌まった状態で前記インクタンクの正面側に位置する面に、前記インク収容部内の前記インクを視認するためのインク視認部を備えてもよい。このような形態であれば、インク補給時に、インク収容部内のインクの様子を容易に確認できる。
【0110】
(10)本開示の他の形態によれば、インク補給システムが提供される。このインク補給システムは、上述したいずれかの形態のインク補給容器と、前記インク出口から前記インクが補給されるインク入口を備えるインクタンクと、を備える。このような形態のインク補給システムにおいても、上記形態のインク補給容器と同様の効果を奏する。
【0111】
本開示は、上述したインク補給容器やインクタンクとしての形態に限らず、インク補給容器とプリンターとを備えるシステムや、インク補給方法など、種々の形態として実現可能である。
【符号の説明】
【0112】
21…記録装置、22…筐体、23…支持台、24…ガイド軸、25…記録ヘッド、26…キャリッジ、27…支持孔、28…駆動プーリー、29…従動プーリー、30…キャリッジモーター、31…タイミングベルト、32…排出口、33…排出トレイ、34…給紙カセット、35…開閉扉、36…回転軸、37…窓部、40…インク供給ユニット、41~45…インクタンク、46…インク供給チューブ、47…インク補給用アダプター、48…段差部、49…インク貯留室、50…視認部、51…上限マーク、52…下限マーク、53…インク入口、54,55…流路、56…針、57…残量センサー、58…上面、59…下面、60…貫通孔、61…凹部、62…第1凹凸部、63,63B,63C,63D…インク補給容器、64…容器本体部、65…インク出口、66…インク出口形成部、67…容器付加部、68…キャップ、69…第1雄ねじ部、70…第2底面、71…凸部、72…第2凹凸部、73…位置決め部、74…弁、75…スリット、76…インク収容部、77…頸部、78…第2雄ねじ部、82…第2雌ねじ部、129…溝、130…環状凸部、140…上面、141…カバー、142…突起、143…外壁、144…内壁、145…開口部、146…フィルム部材、147…第1底面、148…溶着面、149…補強リブ、150…スパウト部、151…固定部、152…板状部、153…爪部、154…係合部、155…係合壁、156…溝部、157…インク視認部、158…ラベル、159…情報表示部材