(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】光源装置及び測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20221129BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20221129BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01S7/484
H05K9/00 U
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2019011446
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新村 康介
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205851(JP,A)
【文献】特開2002-279782(JP,A)
【文献】特開2011-159704(JP,A)
【文献】特開2002-304758(JP,A)
【文献】特開平10-144988(JP,A)
【文献】特開2007-147664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源チップ(21)と、
前記光源チップを収容するケース(33)と、
前記ケースが取り付けられる基板(25)と、
前記基板の少なくとも一部を覆う電磁シールド板(27)と、
前記ケース及び前記電磁シールド板に当接する熱伝導部材(29)と、
を備え、
前記熱伝導部材は、前記ケースと、前記電磁シールド板との間に取り付けられて
おり、
前記熱伝導部材の外周面の少なくとも一部は黒色であり、
前記ケースは、前記基板と前記電磁シールド板とに挟まれている光源装置(7)
。
【請求項2】
請求項1
に記載の光源装置であって、
前記熱伝導部材の外周面の少なくとも一部では、前記光源チップが照射する光に対する反射率が5%以下である光源装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の光源装置であって、
前記熱伝導部材は、前記光源チップが照射する光の照射範囲(59)の外に位置する光源装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の光源装置であって、
前記ケースの表面のうち、前記電磁シールド板に対向する表面に、前記電磁シールド板の方向に突出する堤部をさらに備え、
前記堤部は、前記熱伝導部材よりも、前記光源チップが照射する光の照射方向の側の位置にあり、
前記熱伝導部材が前記照射方向に移動しようとした場合、前記熱伝導部材は前記堤部に当接する光源装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の光源装置を備える測距装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光源装置及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源チップを備える光源装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源装置として、光源チップと、ケースと、基板と、を備えるものがある。光源チップはケースに収容される。ケースは基板に取り付けられる。上記の光源装置は、光源チップが発生する熱を十分に放熱することが困難であった。光源チップが発生する熱を十分に放熱できないと、光源チップの温度が上昇する。その結果、光源チップの光出力が低下したり、光源チップが劣化したりする。本開示の1つの局面は、光源チップの温度上昇を抑制できる光源装置及び測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、光源チップ(21)と、前記光源チップを収容するケース(33)と、前記ケースが取り付けられる基板(25)と、前記基板の少なくとも一部を覆う電磁シールド板(27)と、前記ケース及び前記電磁シールド板に当接する熱伝導部材(29)と、を備える光源装置(7)である。
【0006】
本開示の1つの局面である光源装置は、光源チップから、光源装置の外部への放熱経路として、第1放熱経路と、第2放熱経路とを備える。第1放熱経路は、ケース、熱伝導部材、及び電磁シールド板を順次通る放熱経路である。第2放熱経路は、ケース、及び基板を順次通る放熱経路である。
【0007】
本開示の1つの局面である光源装置は、第1放熱経路と、第2放熱経路とを備えることにより、光源チップの温度上昇を抑制することができる。その結果、本開示の1つの局面である光源装置は、光源チップの光出力低下及び劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2におけるIII-III断面での光源装置7の断面図である。
【
図4】光源ユニット23のうち、メタルリッド37を除く部分の平面図である。
【
図5】光源チップ駆動回路19、光源ユニット23、及び基板25の側断面図である。
【
図6】第1放熱経路63及び第2放熱経路65を表す説明図である。
【
図7】第2実施形態における光源ユニット23の構成を表す側断面図である。
【
図8】第2実施形態における本体部55の構成を表す平面図である。
【
図9】第2実施形態におけるケース33の構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.測距装置1の構成
測距装置1の構成を
図1に基づき説明する。測距装置1は、例えば、車両に搭載される。測距装置1は、測距装置1から対象物3までの距離を測定する。対象物3は、例えば、車両の周囲に存在する物標である。
【0010】
測距装置1は、制御部5と、光源装置7と、照射光学系9と、受光光学系11と、フォトダイオード(以下ではPDとする)13と、増幅部15と、測距部17と、を備える。光源装置7は、光源チップ駆動回路19と、光源チップ21と、を備える。
【0011】
測距装置1は、以下のようにして、測距装置1から対象物3までの距離を測定する。制御部5は、光源チップ駆動回路19に発光制御信号を送る。光源チップ駆動回路19は、発光制御信号に応じて、光源チップ21に光源チップ駆動電流を流す。光源チップ駆動電流が流れると、光源チップ21は照射光49を照射する。照射光49は、照射光学系9を経て、対象物3に到達する。照射光49の波長は、例えば、850~950nmである。
【0012】
対象物3は、照射光49を反射して反射光を生じさせる。反射光は、受光光学系11を経て、PD13に到達する。PD13は、反射光に応じてPD出力信号を生成する。増幅部15は、PD出力信号を増幅し、受光信号を生成する。制御部5は、増幅部15に対し、PD出力選択信号を送る。測距部17は、受光信号に基づき、測距データを生成する。制御部5は、測距データを受信する。制御部5は、発光制御信号を送った時刻と、測距データを受信した時刻との時間差に基づき、測距装置1から対象物3までの距離を算出する。
【0013】
2.光源装置7の構成
光源装置7の構成を、
図2~
図5に基づき説明する。
図2、
図3に示すように、光源装置7は、光源ユニット23と、基板25と、電磁シールド板27と、熱伝導部材29と、光源チップ駆動回路19と、を備える。
【0014】
図4、
図5に示すように、光源ユニット23は、光源チップ21と、ケース33と、を備える。光源チップ21は、例えば、レーザダイオードである。
ケース33は、光源チップ21を収容する。
図5に示すように、ケース33は、本体部35と、メタルリッド37と、出射窓39と、裏面電極パッド40と、複数の表面電極パッド45と、ビア46と、を備える。
図4及び
図5に示すように、本体部35は、セラミックから成る箱状部材である。本体部35は、第1開口部41及び第2開口部43において開口している。
【0015】
裏面電極パッド40は、本体部35の外周面のうち、基板25に対向する部分に形成されている。複数の表面電極パッド45は、本体部35に形成されている。それぞれの表面電極パッド45は、本体部35の外側に位置する第1部45Aと、本体部35の内部に位置する第2部45Bと、を備える。第2部45Bと光源チップ21とは、複数のワイヤ47により接続している。ビア46の一方の端部は光源チップ21に接し、ビア46の他方の端部は裏面電極パッド40に接する。
【0016】
メタルリッド37は、金属から成る板状部材である。メタルリッド37は、第1開口部41を塞いでいる。出射窓39は、透明なガラスから成る板状部材である。出射窓39は、第2開口部43を塞いでいる。光源チップ21が照射する照射光49は、出射窓39を通り、
図1に示す照射光学系9に向かう。ケース33の内部は密閉されており、不活性ガスが充填されている。
【0017】
図2に示すように、光源ユニット23、及び光源チップ駆動回路19は、基板25に取り付けられている。
図5に示すように、光源ユニット23のうち、裏面電極パッド40が基板25に当接している。
【0018】
図5に示すように、基板25は、その表面に導電層51を備える。導電層51は、例えば、グランドである。光源チップ駆動回路19及び光源チップ21は導電層51と電気的に接続している。光源チップ駆動回路19と第1部45Aとは、複数のワイヤ53により接続している。よって、光源チップ駆動回路19と光源チップ21とは、ビア46、導電層51、ワイヤ53、表面電極パッド45、及びワイヤ47を介して電気的に接続している。
【0019】
電磁シールド板27は金属から成る部材である。
図2に示すように、電磁シールド板27は、本体部55と、側面部57と、フランジ部58と、を備える。本体部55は、矩形の板状部材である。側面部57は、本体部55の4辺にそれぞれ設けられている。側面部57は、本体部55の板厚方向に延びている。フランジ部58は、互いに対向する2つの側面部57に設けられている。それぞれのフランジ部58は、側面部57の下端から外側に向かって延びている。側面部57の下端とは、側面部57における基板25の側の端部である。フランジ部58は基板25と当接する。フランジ部58及び基板25にはそれぞれ孔60が形成されている。その孔60に締結部を刺し通すことで、フランジ部58は基板25に固定される。電磁シールド板27は、光源チップ駆動回路19等が発生するノイズをシールドする。
【0020】
図3に示すように、本体部55は、基板25の一部を覆っている。基板25の一部を覆うとは、基板25の板厚方向から見たとき、基板25の一部と重なることを意味する。基板25のうち、本体部55が覆う部分に、光源ユニット23、及び光源チップ駆動回路19が取り付けられている。光源ユニット23、及び光源チップ駆動回路19は、基板25と本体部55とに挟まれている。
【0021】
図3に示すように、熱伝導部材29は、光源ユニット23と、本体部55との間に取り付けられている。熱伝導部材29は、ケース33及び本体部55に当接している。熱伝導部材29は、ケース33のうち、メタルリッド37と、本体部35との両方に当接している。
【0022】
熱伝導部材29は、固体であってもよいし、ペースト状であってもよい。熱伝導部材29が固体である場合、熱伝導部材29の形状は特に限定されない。熱伝導部材29の形状として、例えば、角柱状、円柱状、板状等が挙げられる。
【0023】
熱伝導部材29が固体である場合、熱伝導部材29の材質として、例えば、シリコン、熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物等が挙げられる。熱伝導性フィラーとして、例えば、セラミックフィラー等が挙げられる。熱伝導部材29がペースト状である場合、熱伝導部材29の材質として、例えば、シリコーン等が挙げられる。シリコーンは、シロキサン結合による主骨格を持つ合成高分子化合物である。
【0024】
熱伝導部材29の外周面は黒色である。熱伝導部材29の外周面では、光源チップ21が照射する照射光49に対する反射率が5%以下である。例えば、照射光49の波長が850~950nmである場合、熱伝導部材29の外周面では、波長が850~950nmの照射光49に対する反射率が5%以下である。
図3に示すように、熱伝導部材29は、照射光49の照射範囲59の外に位置する。照射範囲59とは、照射光49が照射される範囲である。
【0025】
3.光源装置7及び測距装置1が奏する効果
(1A)ケース33は基板25に取り付けられている。また、光源装置7は、熱伝導部材29を備える。熱伝導部材29はケース33及び電磁シールド板27に当接する。
【0026】
そのため、
図3及び
図6に示すように、光源装置7は、光源チップ21から、光源装置7の外部61への放熱経路として、第1放熱経路63と、第2放熱経路65とを備える。なお、
図6におけるPは、光源チップ21の発熱量を表す。
【0027】
第1放熱経路63は、本体部35、メタルリッド37、熱伝導部材29、及び電磁シールド板27を順次通る放熱経路を備える。また、第1放熱経路63は、本体部35、熱伝導部材29、及び電磁シールド板27を順次通る放熱経路も備える。第2放熱経路65は、本体部35、裏面電極パッド40、及び基板25を順次通る放熱経路を備える。また、第2放熱経路65は、ビア46、裏面電極パッド40、及び基板25を順次通る放熱経路も備える。
【0028】
光源装置7は、第1放熱経路63と、第2放熱経路65とを備えることにより、光源チップ21の温度上昇を抑制することができる。その結果、光源装置7は、光源チップ21の光出力低下及び寿命劣化を抑制できる。
【0029】
(1B)熱伝導部材29の外周面は黒色である。そのため、照射光49に起因する迷光が熱伝導部材29に入射した場合でも、熱伝導部材29は迷光を反射し難い。その結果、光源装置7における迷光を抑制できる。
【0030】
(1C)熱伝導部材29の外周面では、照射光49に対する反射率が5%以下である。そのため、照射光49に起因する迷光が熱伝導部材29に入射した場合でも、熱伝導部材29は迷光を反射し難い。その結果、光源装置7における迷光を抑制できる。
【0031】
(1D)熱伝導部材29は、照射範囲59の外に位置する。そのため、熱伝導部材29が照射光49を遮ることを抑制できる。
(1E)測距装置1は光源装置7を備える。そのため、測距装置1は、前記(1A)~(1D)の効果を奏する。
<第2実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0032】
前述した第1実施形態では、本体部55のうち、ケース33に対向する面は平坦であった。また、前述した第1実施形態では、ケース33のうち、本体部55に対向する面は平坦であった。これに対し、第2実施形態では、
図7~
図9に示すように、本体部55が堤部67を備え、ケース33が堤部69を備える点で、第1実施形態と相違する。
【0033】
堤部67は、本体部55の下面71のうち、照射方向Aの側の位置に形成されている。下面71とは、本体部55の表面のうち、ケース33に対向する面である。照射方向Aとは、照射光49が進む方向である。堤部67は、ケース33の方向に突出している。
【0034】
堤部69は、ケース33の上面73のうち、照射方向Aの側の位置に形成されている。上面73とは、ケース33の表面のうち、本体部55に対向する面である。堤部69は、本体部55の方向に突出している。
図7に示すように、堤部67及び堤部69は、熱伝導部材29よりも、照射範囲59の側にある。熱伝導部材29が照射範囲59の方向に移動しようとした場合、堤部67及び堤部69に当接することにより、照射範囲59の方向に移動し難い。
【0035】
2.光源装置7及び測距装置1が奏する効果
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0036】
(2A)光源装置7は、堤部67及び堤部69を備える。そのため、熱伝導部材29が照射範囲59の方向に移動することを抑制できる。その結果、光源装置7は、熱伝導部材29が照射光49を遮ることを一層抑制できる。
【0037】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0038】
(1)本体部35の材質は、セラミック以外の材質であってもよい。セラミック以外の材質として、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0039】
(2)メタルリッド37の代わりに、金属以外の材質から成る部材を使用してもよい。金属以外の材質として、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0040】
(3)熱伝導部材29の外周面の一部又は全部は、黒色でなくてもよい。熱伝導部材29の外周面の一部又は全部において、照射光49に対する反射率は5%を超えていてもよい。
(4)光源装置7は、測距装置1以外の用途に使用してもよい。測距装置1以外の用途として、例えば、画像形成装置等が挙げられる。
【0041】
(5)第2実施形態において、光源装置7は、堤部67及び堤部69のうちの一方を備えていなくてもよい。この場合も、光源装置7は、堤部67、又は堤部69により、熱伝導部材29が照射方向Aに移動することを抑制できる。
【0042】
(6)熱伝導部材29と、電磁シールド板27とは一体であってもよい。熱伝導部材29は、電磁シールド板27の一部であってもよい。熱伝導部材29とメタルリッド37とは一体であってもよい。熱伝導部材29はメタルリッド37の一部であってもよい。
【0043】
(7)光源チップ駆動回路19は、ケース33の内部に収容されていてもよい。
(8)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0044】
(9)上述した光源装置7の他、当該光源装置7を構成要素とするシステム、制御部5としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、光源装置7の放熱方法、光源装置7の放熱構造等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…測距装置、7…光源装置、19…光源チップ駆動回路、21…光源チップ、23…光源ユニット、25…基板、27…電磁シールド板、29…熱伝導部材、33…ケース、37…メタルリッド、49…照射光、55…本体部、59…照射範囲、63…第1放熱経路、65…第2放熱経路、67、69…堤部