IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】基地局管理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/08 20090101AFI20221129BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20221129BHJP
   H04W 52/04 20090101ALI20221129BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20221129BHJP
   H04W 92/12 20090101ALI20221129BHJP
【FI】
H04W16/08
H04W52/02
H04W52/04
H04W88/12
H04W92/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019016069
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123909
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 和紀
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
(72)【発明者】
【氏名】三栗谷 純一
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/046150(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/098403(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/115356(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第1925107(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部と、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部とを備え、
前記通信部は、前記ターゲット基地局における単位時間当たりの端末の登録要求数を前記ターゲット基地局から取得し、
前記処理部は、前記ターゲット基地局の送信出力を通常送信出力よりも小さな所定の出力値に設定した状態で、前記登録要求数が所定値未満であるか否かを判定し、前記登録要求数が所定値未満である場合に、前記ターゲット基地局の送信出力を1段階上げるための前記第1起動時制御情報、および前記隣接基地局の送信出力を1段階下げるための前記第2起動時制御情報を前記通信部から送信する、
ことを特徴とする基地局管理装置。
【請求項2】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部
と、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部とを備え、
前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報はそれぞれ、送信出力の変更を完了するまでの時間である変更完了時間を含み、
前記処理部は、前記ターゲット基地局を停止した後に起動する場合に、前記ターゲット基地局を停止する前の所定期間において前記ターゲット基地局に登録されていた端末の数の代表値が大きいほど、前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報に含まれる変更完了時間を長く設定する、

ことを特徴とする基地局管理装置。
【請求項3】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部
と、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部とを備え、
前記通信部は、前記隣接基地局における単位時間当たりの端末の登録要求数を前記隣接基地局から取得し、
前記処理部は、前記ターゲット基地局を停止する際に、
前記登録要求数が所定値未満であるか否かを判定し、前記登録要求数が所定値未満である場合に、前記ターゲット基地局に対して、前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に減少させるための第1停止時制御情報を前記通信部から送信するとともに、前記隣接基地局に対して、前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な減少に同期して前記隣接基地局の送信出力を増加させるための第2停止時制御情報を前記通信部から送信する、
ことを特徴とする基地局管理装置。
【請求項4】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部
と、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部と、
前記隣接基地局それぞれの最大カバーエリアを示す情報と、各基地局に登録された端末の緯度および経度を示す端末位置情報とを記憶する記憶部とを備え、
前記処理部は、前記ターゲット基地局を停止する際に、
前記記憶部を参照して、前記記憶部に記憶された隣接基地局の中から、前記ターゲット基地局に登録された端末が最大カバーエリアに含まれる隣接基地局を特定し、
前記ターゲット基地局に対して、前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に減少させるための第1停止時制御情報を前記通信部から送信し、前記特定した隣接基地局に対して、前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な減少に同期して前記隣接基地局の送信出力を増加させるための第2停止時制御情報を前記通信部から送信する、
ことを特徴とする基地局管理装置。
【請求項5】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部
と、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部と、
前記ターゲット基地局における送信出力別のカバーエリアを示す情報と、各基地局に登録された端末の緯度および経度を示す端末位置情報とを記憶する記憶部とを備え、
前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報はそれぞれ、一定の値の送信出力を保持する時間である出力保持時間を含み、
前記処理部は、前記ターゲット基地局を起動する期間において、前記記憶部を参照して、前記ターゲット基地局の送信出力を1段階上げた場合に、新たにカバーエリアに含まれる端末の数を算出し、前記算出した端末の数が多いほど、前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報に含まれる出力保持時間を長く設定する、
ことを特徴とする基地局管理装置。
【請求項6】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信ステップと、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を送信し、前記隣接基地局に対して、前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を送信する処理ステップとを、
基地局管理装置として動作するコンピュータに実行させるための、プログラムであって、
前記通信ステップは、前記ターゲット基地局における単位時間当たりの端末の登録要求数を前記ターゲット基地局から取得し、
前記処理ステップは、前記ターゲット基地局の送信出力を通常送信出力よりも小さな所定の出力値に設定した状態で、前記登録要求数が所定値未満であるか否かを判定し、前記登録要求数が所定値未満である場合に、前記ターゲット基地局の送信出力を1段階上げるための前記第1起動時制御情報、および前記隣接基地局の送信出力を1段階下げるための前記第2起動時制御情報を送信する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信ステップと、
前記ターゲット基地局を起動する期間に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を送信し、前記隣接基地局に対して、前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を送信する処理ステップとを、
基地局管理装置として動作するコンピュータに実行させるための、プログラムであって、
前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報はそれぞれ、送信出力の変更を完了するまでの時間である変更完了時間を含み、
前記処理ステップは、前記ターゲット基地局を停止した後に起動する場合に、前記ターゲット基地局を停止する前の所定期間において前記ターゲット基地局に登録されていた端末の数の代表値が大きいほど、前記第1起動時制御情報および前記第2起動時制御情報に含まれる変更完了時間を長く設定する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局管理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて、端末は基地局からの制御信号を受信することで、基地局に接続する。このとき、特定の基地局に多数の端末が偏って接続され、トラフィックが増大(無線通信が輻輳)した場合、該当エリア内に存在する端末は、基地局に接続し難くなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の基地局の状態に応じて、その基地局以外の設定の最適化を行う無線通信システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/104143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信システムの基地局を制御する場合、例えば、基地局を再起動した直後には、その基地局に端末からのリクエスト(位置登録リクエストなど)が集中し、基地局の負荷が高くなるため、無線通信システムに輻輳が発生する可能性が高くなる。そのため、基地局の再起動を考慮し、再起動の対象となる基地局と、その他の基地局との処理の同期をとりながら輻輳を十分に防止することのできる技術が望まれている。
【0006】
本発明は、基地局の再起動時などに輻輳を十分に防止することのできる基地局管理装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基地局管理装置は、ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信部と、前記ターゲット基地局を起動する際に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を前記通信部から送信し、前記隣接基地局に対して前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を前記通信部から送信する処理部とを備える。
【0008】
本発明のプログラムは、ターゲット基地局および前記ターゲット基地局の隣接基地局との情報通信を行う通信ステップと、前記ターゲット基地局を起動する際に、前記ターゲット基地局に対して前記ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させるための第1起動時制御情報を送信し、前記隣接基地局に対して、前記ターゲット基地局における送信出力の段階的な増加に同期して前記隣接基地局の送信出力を段階的に減少させるための第2起動時制御情報を送信する処理ステップとを、基地局管理装置として動作するコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基地局の再起動時などに輻輳を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る基地局管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る基地局の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、隣接基地局情報を説明するための模式図である。
図5図5は、送信出力情報を説明するための模式図である。
図6図6は、送信出力変更時間情報を説明するための模式図である。
図7図7は、無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図8図8は、再起動対象基地局が再起動を行うまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。
図9図9は、隣接基地局の送信出力が最大送信出力に到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。
図10図10は、無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図11図11は、再起動対象基地局の送信出力が通常送信出力に到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。
図12図12は、隣接基地局の送信出力が通常送信出力に到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。
図13A図13Aは、各カバーエリアが段階的に変化する動作を説明するための模式図である。
図13B図13Bは、各カバーエリアが段階的に変化する動作を説明するための模式図である。
図13C図13Cは、各カバーエリアが段階的に変化する動作を説明するための模式図である。
図13D図13Dは、各カバーエリアが段階的に変化する動作を説明するための模式図である。
図14図14は、再起動対象基地局が再起動する場合の、基地局管理装置の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図15図15は、再起動対象基地局が再起動する場合の、再起動対象基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図16図16は、再起動対象基地局が再起動する場合の、隣接基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図17図17は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、基地局管理装置の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図18図18は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、再起動対象基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図19図19は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、隣接基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
図20A図20Aは、再起動対象基地局を停止させる際の出力変更パターンの一例を示している。
図20B図20Bは、再起動対象基地局を停止させる際の出力変更パターンの一例を示している。
図21A図21Aは、再起動対象基地局の登録端末数がしきい値未満の出力変更パターンを示す模式図である。
図21B図21Bは、再起動対象基地局の登録端末数がしきい値以上の出力変更パターンを示す模式図である。
図22図22は、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図23図23は、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図24図24は、端末の位置情報を用いて、隣接基地局を選別する方法の一例を説明するための模式図である。
図25図25は、再起動対象基地局の停止時における、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図26図26は、再起動対象基地局の再起動後における、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図27図27は、第5実施形態に係る無線通信システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。
【0012】
[第1実施形態]
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す模式図である。
【0013】
図1に示すように、無線通信システム1は、第1端末10-1と、第2端末10-2と、第3端末10-3と、第4端末10-4と、第5端末10-5と、第6端末10-6と、基地局管理装置100と、第1基地局200-1と、第2基地局200-2と、第3基地局200-3とを含む。第1カバーエリア300-1は、第1基地局200-1と、通信可能なエリアである。第2カバーエリア300-2は、第2基地局200-2と、通信可能なエリアである。第3カバーエリア300-3は、第3基地局200-3と、通信可能なエリアである。なお、図1では、6台の端末と、3台の基地局とが示されているが、これは例示であり、本発明を限定するものではない。また、以下において、第1基地局200-1から第3基地局200-3を総称して、基地局200と呼ぶこともある。
【0014】
基地局管理装置100と、第1基地局200-1から第3基地局200-3は、IP(Internet Protocol)ネットワークなどのネットワークNWに接続されている。図1に示す例では、単一の基地局管理装置100が、第1基地局200-1から第3基地局200-3の複数の基地局を管理している。しかしながら、これは例示であり、本発明では、基地局管理装置100は複数存在していてもよい。また、第1基地局200-1から第3基地局200-3の少なくとも1つの基地局が基地局管理装置100の機能を備えていてもよい。すなわち、基地局管理装置100と基地局200とは一体の装置であってもよい。
【0015】
[基地局管理装置]
図2を用いて、基地局管理装置の構成について説明する。図2は基地局管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
図2に示すように、基地局管理装置100は、通信部110と、処理部120と、記憶部130とを備える。基地局管理装置100には、入力装置140と、表示装置150とが接続されている。
【0017】
通信部110は、基地局管理装置100の外部の機器との間で情報通信を行う。通信部110は、IPネットワークなどのネットワークNWを介して、外部の機器との間で情報通信を行う。通信部110は、例えばLAN(Local Area Network)機能等を備えたネットワークIF(Interface)回路で構成されている。
【0018】
処理部120は、基地局管理装置100の各部を制御する。処理部120は、外部からの要求の基づいた処理を実行する。処理部120は、必要に応じて外部へ要求や処理の結果などを出力する。処理部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されている。この場合、ROMには、CPUが各部を制御するためのプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出し、RAMにデータ領域を確保して実行することで、基地局管理装置100の各部を制御する。処理部120は、所定の精度で現在時刻(現在日時)を取得する計時機能を備える。
【0019】
記憶部130は、各種のデータを記憶する。記憶部130は、例えば、隣接基地局情報、送信出力情報、送信出力変更時間情報を記憶する。記憶部130は、処理部120が各部を制御するためのプログラムを記憶してもよい。記憶部130は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成されている。記憶部130は、その他の半導体メモリなどで構成されてもよい。
【0020】
入力装置140は、基地局管理装置100に対する、システム管理者などのユーザからの各種の操作を受け付ける。入力装置140に特に制限はないが、キーボード及びマウスなどで構成される。
【0021】
表示装置150は、各種の情報を表示する。表示装置150は、システム管理者などのユーザに対して基地局管理装置100から出力された情報を提示する。表示装置150に特に制限はないが、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含むディスプレイである。表示装置150には、入力装置140としてのタッチパネルが設けられてもよい。
【0022】
図2に示す例では、入力装置140と、表示装置150とは、基地局管理装置100に直接接続されているが、これは例示であり、本発明を限定するものではない。例えば入力装置140と、表示装置150とは、基地局管理装置100とネットワークで接続された外部の管理端末(管理用パソコン)に接続されていてもよい。この場合、入力装置140が受け付けた操作は、管理端末を介して、基地局管理装置100に入力される。基地局管理装置100から出力された情報は、管理端末を介して、表示装置150に入力される。
【0023】
[基地局]
図3を用いて、基地局の構成について説明する。図3は、基地局の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図3に示すように、基地局200は、通信部210と、処理部220と、送信出力制御部230と、受信部240と、送信部250と、アンテナ260とを備える。
【0025】
通信部210は、基地局200の外部の機器との間で情報通信を行う。通信部210は、IPネットワークなどのネットワークNWを介して、外部の機器との間で情報通信を行う。通信部210は、例えばLAN機能等を備えたネットワークIF回路で構成されている。
【0026】
処理部220は、基地局200の各部を制御する。処理部220は、外部からの要求に基づいた処理を実行する。処理部220は、必要に応じて外部へ要求や処理の結果などを出力する。処理部220は、例えばCPU、RAM、ROMなどで構成されている。この場合、ROMには、CPUが各部を制御するためのプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出し、RAMにデータ領域を確保して実行することで、基地局200の各部を制御する。処理部220は、所定の精度で現在時刻(現在日時)を取得する計時機能を備える。また、各々の基地局200の処理部220が取得する時刻、および基地局管理装置100の処理部120が取得する時刻は、時間差が所定値未満になるように同期していることが望ましい。例えば、NTP(Network Time Protocol)を用いて各装置の時刻を同期させる。あるいは、基地局200および基地局管理装置100がGPS(Global Positioning System)信号の受信機能を備えるようにし、GPS信号をもとに時刻を同期させてもよい。
【0027】
送信出力制御部230は、送信部250を制御する。送信出力制御部230は、送信部250を制御して、電波の送信出力(送信電力)の制御を行う。
【0028】
受信部240は、アンテナ260を介して、外部の端末から送信された電波の受信を行う。送信部250は、送信出力制御部230の制御に従って、アンテナ260を介して、外部の端末に電波を送信する。
【0029】
[基地局管理装置が保持するデータ]
図4と、図5と、図6とを用いて、基地局管理装置100の記憶部130が保持するデータについて説明する。図4は、隣接基地局情報を説明するための模式図である。図5は、送信出力情報を説明するための模式図である。図6は、送信出力変更時間情報を説明するための模式図である。
【0030】
図4は、各基地局の隣接基地局情報を示している。隣接基地局情報とは、ある基地局に隣接する基地局に関する情報である。例えば、「第1基地局200-1の隣接基地局は、第2基地局200-2と、第3基地局200-3である」といったように、対象となる基地局と、その隣接基地局とを対応付けた情報である。隣接基地局は、1つ以上の任意の数であってよい。具体的には、対象となる基地局からの電波を受信可能なエリア(カバーエリア)と、少なくとも一部のエリアが重複するカバーエリアをもつ他の基地局を、隣接基地局とする。
【0031】
図5は、各基地局の送信出力情報を示している。送信出力情報とは、その基地局の定常状態での送信出力である「通常送信出力」と、送信出力を変化させる時の下限である「最小送信出力」と、上限である「最大送信出力」とを意味している。例えば第1基地局200-1でいえば、通常送信出力は「Pn1」、最小送信出力は「Pmin1」、最大送信出力は「Pmax1」である。ここで、Pmin1と、Pmin2と、Pmin3とは異なっていてもよいし、同じであってもよい。Pmax1と、Pmax2と、Pmax3とは異なっていてもよいし、同じであってもよい。例えば、Pmax2と、Pmax3とは、第1基地局200-1の送信出力がPmin1になった場合に、第1基地局200-1の送信出力がPn1の時にカバーできていたエリアをカバーできるように設定される。各送信出力は、具体的な電力値で示されていてもよいし、電力の大きさを示すレベルなどで示されていてもよい。電力の大きさをレベルで示す場合、例えば、Low、Middle、Highなどの3段階で示してよい。また、1から5の5段階の数値で示してもよい。
【0032】
図6は、送信出力変更時間情報を示している。変更時間間隔「t」は、基地局が段階的に変更した送信出力を一定時間保持するときの時間(次に送信出力を変更するまでの時間的な間隔)を意味している。変更時間間隔は、「出力保持時間」あるいは「保持時間」とも呼ばれる。変更完了時間「T」は、基地局が通常送信出力から最大送信出力または最小送信出力に到達するまでの時間を意味している。
【0033】
基地局管理装置100は、図4から図6に示した各情報を第1基地局200-1から第3基地局200-3に送信する。第1基地局200-1から第3基地局200-3は、基地局管理装置100から受信した情報に基づいて送信出力の制御を行う。
【0034】
図7から図9を用いて、任意の基地局(以下、再起動対象基地局)が再起動するときに送信出力を変化させる動作と、再起動対象基地局の隣接基地局が送信出力を変化させる動作について説明する。なお、再起動対象基地局は、ターゲット基地局と呼ばれることもある。
【0035】
まず、図7を用いて、再起動対象基地局が再起動する際の無線システム全体の動作について説明する。図7は、無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。再起動対象基地局は、再起動する際に、停止処理を行った後、起動処理を行う。すなわち、再起動処理は、停止処理と起動処理の2つの処理によって構成される。
【0036】
図7に示すように、基地局の再起動は、システム管理者(ユーザ)が基地局管理装置に基地局の再起動を指示することを基点として行われる。
【0037】
システム管理者は、入力装置140を用いて所定の操作を行うことにより、基地局管理装置100に、特定の基地局の再起動を指示する(ステップS11)。なお、システム管理者は、再起動の指示をする際に、再起動の時刻(日時)を指定してもよい。または、「すぐに再起動する」、「10分後に再起動する」といった指定をしてもよい。システム管理者からこのような具体的に時刻を指定されない指示があった場合であっても、基地局管理装置100は、システム管理者からの指示を再起動処理の開始日時に変換する。なお、再起動処理の開始日時は、出力変更開始日時、停止時の出力変更開始日時、出力変更開始時刻、停止時の出力変更開始時刻などとも呼ばれる。これらは、日付の情報を含んでいても、含んでいなくてもよい。日付を入れなくても、混乱が生じない場合は、日付を省略してもよい。また、日付の情報を含んでいても「時刻」と呼ぶ場合がある。
【0038】
システム管理者が任意の基地局の再起動指示を行うと、基地局管理装置100は、再起動対象基地局へ再起動を指示(メッセージを送信)する(ステップS12)。具体的には、再起動指示には、再起動対象基地局の送信出力を減少させるための情報が含まれている。この情報は、ターゲット基地局の停止時、すなわちターゲット基地局の停止に係る時点において、ターゲット基地局の送信出力を制御するための制御情報であるため、第1停止時制御情報(第1停止制御情報)とも呼ばれる。第1停止時制御情報には、少なくとも、ターゲット基地局の送信出力を段階的に減少させる情報が含まれている。このとき、基地局管理装置100は、図6に図示の送信出力変更時間の情報も再起動対象基地局に送信する。具体的には、第1停止時制御情報には、出力変更開始日時と、変更時間間隔「t」と、変更完了時間「T」とが含まれる。後述するように、これらの情報は、再起動対象基地局の送信出力の変化と、隣接基地局の送信出力の変化とを同期させるために用いられる。さらに、第1停止時制御情報に図5に図示の送信出力情報を含めてもよい。第1停止時制御情報に図5の送信出力情報を含めない場合には、あらかじめ各基地局200にこの情報を記憶させておく。
【0039】
ステップS12と同時に、基地局管理装置100は、隣接基地局へ、再起動開始による送信出力の引き上げを指示(メッセージを送信)する(ステップS13)。ステップS13で送信される送信出力の引き上げ指示は、ターゲット基地局の停止時、すなわちターゲット基地局の停止に係る時点において、隣接基地局の送信出力を制御するための制御情報であるため、第2停止時制御情報(第2停止制御情報)とも呼ばれる。このとき、基地局管理装置100は、図6に図示の送信出力変更時間の情報も隣接基地局に送信する。具体的には、第2停止時制御情報には、出力変更開始日時と、変更時間間隔「t」と、変更完了時間「T」とが含まれる。これらの値は、第1停止時制御情報における値と同じである。すなわち、第1停止時制御情報における出力変更開始日時と、第2停止時制御情報における出力変更開始日は同じ値であり、第1停止時制御情報における変更時間間隔「t」と、第2停止時制御情報における変更時間間隔「t」は同じ値であり、第1停止時制御情報における変更完了時間「T」と、第2停止時制御情報における変更完了時間「T」は同じ値である。このため、ターゲット基地局の送信出力の変化と、隣接基地局の送信出力の変化とを精度よく同期させることができる。なお、変更完了時間「T」の代わりに、出力変更回数「S」を第1停止時制御情報および第2停止時制御情報に含めてもよい。つまり、一定値の出力を時間「t」だけ保持した後、次の出力値に変更する処理を「S」回繰り返せという制御情報を用いてもよい。第1停止時制御情報および第2停止時制御情報は、複数の基地局200の送信出力の変化(変更)を同期させるための「同期情報」あるいは「同期信号」であるといえる。なお、第1停止時制御情報および第2停止時制御情報には、出力変更開始日時を含めることが望ましいが、省略することも可能である。ただし、省略する場合、基地局管理装置100は、ステップS12で第1停止時制御情報を送信する時刻と、ステップS13で第2停止時制御情報を送信する時刻との差(時間差)が所定値未満になるように制御する。あるいは、基地局管理装置100は、ネットワークNWの遅延時間を考慮して、各々の停止時制御情報を送信するタイミングを決定してもよい。例えば、各基地局が停止時制御情報を受信する時間差が所定値未満となるように、ネットワークNWの遅延時間を考慮して、送信(送出)タイミングを決定する。この際、ネットワークNWの遅延時間によっては、ステップS13を先に実行し、ステップS12をその後に実行するケースもあり得る。このように、制御情報を送信するタイミングを制御することにより、出力変更開始日時を省略した場合であっても、複数の基地局200における送信出力の変更を同期させることができる。このため、出力変更開始日時を省略した場合であっても、基地局管理装置100によって送信タイミングを制御された第1停止時制御情報および第2停止時制御情報は、複数の基地局200の送信出力の変化(変更)を同期させるための「同期情報」あるいは「同期信号」であるといえる。出力変更開始日時を省略した場合には、制御情報を受信した基地局において即時に再起動処理(出力変更処理)が開始される。また、第2停止時制御情報に図5に図示の送信出力情報を含めてもよい。
【0040】
基地局管理装置100は、上記の処理が完了したら、システム管理者へ再起動指示に対する応答を返す(ステップS14)。具体的には、基地局管理装置100は、対象の基地局、および隣接基地局に対して再起動処理(送信出力変更処理)を通知したことを示す情報を表示装置150に表示させる。
【0041】
再起動対象基地局は、基地局管理装置100から再起動指示を受けたら、基地局管理装置100へ応答を返す(ステップS15)。
【0042】
隣接基地局は、基地局管理装置100から送信出力引き上げ指示を受けたら、基地局管理装置100へ応答を返す(ステップS16)。
【0043】
なお、基地局管理装置100は、ステップS15と、ステップS16との後に、ステップS14の処理を実行してもよい。または、基地局管理装置100は、ステップS15と、ステップS16との後に、各基地局からの応答を受信したことを示す情報を表示装置150に表示させてもよい。
【0044】
図8と、図9とを用いて、各段階における再起動対象基地局と、隣接基地局の送信出力の時間変化について説明する。図8および図9においては、再起動対象基地局、隣接基地局ともに、最大送信出力はPmax、通常時送信出力はPn、最小送信出力はPmin、変更時間間隔はt、変更完了時間はTとして図示している。時間が0からTまでに送信出力が変化する回数(出力変更回数)をSとすると、SはT/tで表すことができる。
【0045】
図8を用いて、再起動対象基地局が再起動の指示を受けてから、再起動を行うまでの送信出力の時間変化について説明する。図8は、再起動対象基地局が停止処理を行う際の送信出力の時間変化を説明するための模式図である。図8では、再起動対象基地局の出力変更開始日時または再起動指示を基地局管理装置100から受けた時点の時間を「0」として図示している。なお、出力変更開始日時または基地局200が基地局管理装置100から再起動指示を受けた時点をまとめて、処理開始時点と呼ぶこともある。
【0046】
再起動対象基地局の出力変更開始日時または再起動の指示を受ける直前の送信出力は、通常送信出力のPnである。再起動対象基地局は、基地局管理装置100から再起動の指示を受けると、送信出力を(Pn-Pmin)/Sだけ引き下げて、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。
【0047】
再起動対象基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が最小送信出力Pmin
に達していなければ、さらに送信出力を(Pn-Pmin)/Sだけ引き下げて、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。この動作を送信出力が最小送信出力Pminに達するまで繰り返す。
【0048】
再起動対象基地局は、送信出力を最小送信出力Pminにして変更時間間隔tが経過した後、再起動(停止と起動)を実行する。なお、Pminを「0」に設定してもよい。
【0049】
図9を用いて、隣接基地局が送信出力の引き上げの指示を受けてから、送信出力が最大送信出力Pmaxに到達するまでの時間変化について説明する。図9は、隣接基地局の送信出力が最大送信出力Pmaxに到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。図9では、出力変更開始日時または隣接基地局が基地局管理装置100から送信出力の引き上げ指示を受けた時点の時間を0として図示している。
【0050】
処理開始時点の直前までの送信出力は、通常送信出力のPnである。隣接基地局は、送信出力の引き上げ指示を受けると、送信出力を(Pmax-Pn)/Sだけ引き上げて、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。
【0051】
隣接基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が最大送信出力Pmaxに達していなければ、さらに送信出力を(Pmax-Pn)/Sだけ引き上げて、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。この動作を送信出力が最大送信出力Pmaxに達するまで繰り返す。
【0052】
隣接基地局は、送信出力が最大送信出力Pmaxに達したら、送信出力の引き上げ処理を終了する。隣接基地局では、送信出力は最大送信出力Pmaxの状態が維持される。
【0053】
なお、基地局管理装置100は、図8に示した再起動対象基地局の送信出力の段階的な減少と、図9に示した隣接基地局の送信出力の段階的な増加と指定する制御データをリアルタイムに各基地局に送信してもよい。例えば、図8において送信出力を1段階減少させるタイミングで、再起動対象基地局に制御データを送信する。また、それと同じタイミングで、図9に示す送信出力を1段階増加させるための制御データを各隣接基地局に送信する。
【0054】
図8および図9に示したように、本実施形態では、再起動対象基地局の送信出力を段階的に下げるとともに、隣接基地局の送信出力を段階的に上げる制御を行う。このような制御を行うことにより、再起動対象基地局に位置登録されていた端末を、順次隣接基地局に位置登録させることができる。このため、端末がどの基地局にも登録されず、通信できない状況になることを低減できる。また、このように送信出力を段階的に変化させることにより、隣接基地局への端末の位置登録が短時間に集中することを防ぐことができる。すなわち、一部の基地局に負荷が集中することを回避することができる。さらに、再起動対象基地局の送信出力を段階的に下げる処理と、隣接基地局の送信出力を段階的に上げる処理とを同期させ、再起動対象基地局に位置登録されていた端末を、より適切に順次隣接基地局に位置登録させることができる。
【0055】
次に、図10から図12を用いて、再起動対象基地局が再起動した後の送信出力を変化させる動作と、隣接基地局が送信出力を変化させる動作について説明する。
【0056】
まず、図10を用いて、再起動対象基地局が再起動した後の無線システム全体の動作について説明する。図10は、無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【0057】
図10に示すように、再起動対象基地局は、再起動が完了したら、起動したことを示す起動完了通知を基地局管理装置100に通知する(ステップS21)。なお、この「再起動の完了」とは、再起動対象基地局が電波の送信が可能になった状態を指す。
【0058】
基地局管理装置100は、起動完了通知を受信したら、受信した時刻をもとに出力変更開始日時を算出し、再起動対象基地局に対して、起動完了による送信出力引き上げを指示する(ステップS22)。例えば、受信した時刻に所定時間(例えば、10秒)を加えた日時を出力変更開始日時(起動時の出力変更開始日時)とする。ステップS22で送信される送信出力の引き上げ指示は、ターゲット基地局の起動時、すなわちターゲット基地局の起動に係る時点において、ターゲット基地局の送信出力を制御するための制御情報であるため、第1起動時制御情報(第1起動制御情報)とも呼ばれる。第1起動時制御情報には、ターゲット基地局の送信出力を段階的に増加させる情報が含まれている。具体的には、第1起動時制御情報には、ステップS22で算出された出力変更開始日時と、変更時間間隔「t」と、変更完了時間「T」とが含まれる。後述するように、これらの情報は、再起動対象基地局の送信出力の変化と、隣接基地局の送信出力の変化とを同期させるために用いられる。さらに、第1起動時制御情報に図5に図示の送信出力情報を含めてもよい。
【0059】
ステップS22と同時に、基地局管理装置100は、隣接基地局へ、起動完了による送信引き下げを指示する(ステップS23)。ステップS23で送信される送信出力の引き下げ指示は、ターゲット基地局の起動時、すなわちターゲット基地局の起動に係る時点において、隣接基地局の送信出力を制御するための制御情報であるため、第2起動時制御情報(第2起動制御情報)とも呼ばれる。具体的には、第2起動時制御情報には、出力変更開始日時と、変更時間間隔「t」と、変更完了時間「T」とが含まれる。これらの値は、第1起動時制御情報における値と同じである。すなわち、第1起動時制御情報における出力変更開始日時と、第2起動時制御情報における出力変更開始日は同じ値であり、第1起動時制御情報における変更時間間隔「t」と、第2起動時制御情報における変更時間間隔「t」は同じ値であり、第1起動時制御情報における変更完了時間「T」と、第2起動時制御情報における変更完了時間「T」は同じ値である。このため、ターゲット基地局の送信出力の変化と、隣接基地局の送信出力の変化とを精度よく同期させることができる。なお、変更完了時間「T」の代わりに、出力変更回数「S」を第1起動時制御情報および第2起動時制御情報に含めてもよい。つまり、一定値の出力を時間「t」だけ保持した後、次の出力値に変更する処理を「S」回繰り返せという制御情報を用いてもよい。第1起動時制御情報および第2起動時制御情報は、複数の基地局200の送信出力の変化(変更)を同期させるための「同期情報」あるいは「同期信号」であるといえる。なお、第1起動時制御情報および第2起動時制御情報には、出力変更開始日時を含めることが望ましいが、省略することも可能である。ただし、省略する場合、基地局管理装置100は、ステップS22で第1起動時制御情報を送信する時刻と、ステップS23で第2起動時制御情報を送信する時刻との差(時間差)が所定値未満になるように制御する。あるいは、基地局管理装置100は、ネットワークNWの遅延時間を考慮して、各々の起動時制御情報を送信するタイミングを決定してもよい。例えば、各基地局が停止時制御情報を受信する時間差が所定値未満となるように、ネットワークNWの遅延時間を考慮して、送信(送出)タイミングを決定する。この際、ネットワークNWの遅延時間によっては、ステップS23を先に実行し、ステップS22をその後に実行するケースもあり得る。このように、制御情報を送信するタイミングを制御することにより、出力変更開始日時を省略した場合であっても、複数の基地局200における送信出力の変更を同期させることができる。このため、出力変更開始日時を省略した場合であっても、基地局管理装置100によって送信タイミングを制御された第1起動時制御情報および第2起動時制御情報は、複数の基地局200の送信出力の変化(変更)を同期させるための「同期情報」あるいは「同期信号」であるといえる。出力変更開始日時を省略した場合には、制御情報を受信した基地局において即時に再起動処理(出力変更処理)が開始される。また、基地局管理装置100は、図5に図示の送信出力情報の情報を隣接基地局に送信してもよい。
【0060】
なお、第1起動時制御情報を「第1制御情報」、第2起動時制御情報を「第2制御情報」、第1停止時制御情報を「第3制御情報」、第2停止時制御情報を「第4制御情報」と呼ぶ場合もある。図7に示すシーケンスにおいて、基地局管理装置100から再起動対象基地局に対して送信する第1停止時制御情報の中に、第1起動時制御情報を含めてもよい。すなわち、再起動対象基地局における停止時の送信出力の変化パターンだけでなく、起動時の送信出力の変化パターンを含めておいてもよい。また、基地局管理装置100から隣接基地局に対して送信する第2停止時制御情報の中に、第2起動時制御情報を含めてもよい。すなわち、再起動対象基地局が停止する際の隣接基地局における送信出力の変化パターンだけでなく、再起動対象基地局が起動する際の隣接基地局における送信出力の変化パターンを含めておいてもよい。
【0061】
再起動対象基地局は、基地局管理装置100から送信出力引き上げ指示を受けたら、基地局管理装置100へ応答を返す(ステップS24)。
【0062】
隣接基地局は、基地局管理装置100から送信出力引き下げ指示を受けたら、基地局管理装置100へ応答を返す(ステップS25)。
【0063】
なお、図10に示す例では、基地局管理装置100が再起動対象基地局から起動完了通知を受信した後に、各基地局に対して、送信出力を変更するための情報を送信しているが、これとは別の方法を用いてもよい。例えば、図7に示すシーケンスにおいて、基地局管理装置100から再起動対象基地局に対して送信する再起動指示の情報の中に、起動後の送信出力変更パターンを含めておいてもよい。すなわち、再起動対象基地局が再起動処理(停止処理)を実行するときに、起動後の送信出力の変化パターンを通知しておいてもよい。なお、再起動情報の中には、起動後の送信出力の変更パターンに加えて、送信出力を変更する時刻(日時)に関する情報を含めてもよい。つまり、再起動対象基地局は、自局の起動処理の進行状況に応じた所定のタイミングで送信出力制御を開始してもよいし、基地局管理装置100から指定された時刻に送信出力制御を開始してもよい。
【0064】
図11と、図12とを用いて、再起動後の段階における再起動対象基地局と、隣接基地局の送信出力の時間変化について説明する。図11および図12においては、再起動対象基地局、隣接基地局ともに、最大送信出力はPmax、通常時送信出力はPn、最小送信出力はPmin、変更時間間隔はt、変更完了時間はTとして図示している。時間が0からTまでに送信出力が変化する回数(出力変更回数)をSとすると、SはT/tで表すことができる。
【0065】
図11を用いて、再起動対象基地局が送信引き上げの指示を受けてから、送信出力が通常送信出力のPnに到達するまでの時間変化について説明する。図11は、再起動対象基地局の送信出力が通常送信出力のPnに到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。図11では、再起動対象基地局の出力変更開始日時または基地局管理装置100から送信出力の引き上げ指示を受けた時点の時間を0として図示している。
【0066】
再起動対象基地局の出力変更開始日時または再起動対象基地局の送信出力の引き上げの指示を受ける直前の送信出力は、最小送信出力のPminである。再起動対象基地局は、基地局管理装置100から送信出力の引き上げの指示を受けると、送信出力をPminに維持したまま変更時間間隔tの間保持する。
【0067】
再起動対象基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力を(Pn-Pmin)/Sだけ引き上げて、その送信出力が通常送信出力のPnに達していなければ、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。再起動対象基地局は、この動作を通常送信出力のPnに達するまで繰り返す。
【0068】
再起動対象基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力を(Pn-Pmin)/Sだけ引き上げて、その送信出力が通常送信出力のPnに達したら、送信出力の引き上げ処理を終了する。これにより、再起動対象基地局の送信出力は、通常送信出力であるPnの状態に維持される。
【0069】
図12を用いて、隣接基地局が送信出力の引き下げの指示を受けてから、送信出力が通常送信出力Pnに到達するまでの時間変化について説明する。図12は、隣接基地局の送信出力が通常送信出力Pnに到達するまでの送信出力の時間変化を説明するための模式図である。図12では、隣接基地局の出力変更開始日時または基地局管理装置100から送信出力の引き下げ指示を受けた時点の時間を0として図示している。
【0070】
隣接基地局の出力変更開始日時または隣接基地局の送信出力の引き下げ指示を受ける直前までの送信出力は、最大送信出力のPmaxである。隣接基地局は、送信出力の引き下げ指示を受けると、送信出力をPmaxの状態で変更時間間隔tの間維持する。
【0071】
隣接基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力を(Pmax-Pn)/Sだけ引き下げて、その送信出力が通常送信出力Pnに到達していなければ、その送信出力を変更時間間隔tの間保持する。この動作を送信出力が通常送信出力Pnに達するまで繰り返す。
【0072】
隣接基地局は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力を(Pmax-Pn)/Sだけ引き下げて、送信出力が通常送信出力Pnに達していたら、送信出力の引き下げ処理を終了する。これにより、隣接基地局では、送信出力は通常送信出力Pnの状態が維持される。
【0073】
図11に示した再起動対象基地局の送信出力の段階的な増加と、図12に示した隣接基地局の送信出力の段階的な減少を指定する制御データをリアルタイムに各基地局に送信してもよい。例えば、図11において送信出力を1段階増加させるタイミングで、再起動対象基地局に制御データを送信する。また、それと同じタイミングで、図12に示す送信出力を1段階減少させるための制御データを各隣接基地局に送信する。
【0074】
図11および図12に示したように、再起動対象基地局の送信出力を段階的に上げるとともに、隣接基地局の送信出力を段階的に下げる制御を行う。このような制御を行うことにより、隣接基地局に位置登録されていた端末を、順次、再起動対象基地局に位置登録させることができる。このため、端末がどの基地局にも登録されず、通信できない状況になることを低減できる。また、このように送信出力を段階的に変化させることにより、再起動対象基地局への端末の位置登録が短時間に集中することを防ぐことができる。さらに、再起動対象基地局の送信出力を段階的に上げる処理と、隣接基地局の送信出力を段階的に下げる処理とを同期させ、隣接基地局に位置登録されていた端末を、より適切に順次、再起動対象基地局に位置登録させることができる。すなわち、一部の基地局に負荷が集中することを回避することができる。
【0075】
上述の再起動する際と、再起動後の送信出力の変化はあくまでも一例であり、他のパターンで変化させてもよい。例えば、階段状に変化させるのではなく、滑らか(連続的)に変化させてもよい。
【0076】
図13Aから図13Dを用いて、基地局を再起動して、各カバーエリアが段階的に変化する動作について説明する。図13Aから図13Dは、各カバーエリアが段階的に変化する動作を説明するための模式図である。図13Aから図13Dでは、第1基地局200-1が再起動対象基地局であるものとして説明する。この場合、第2基地局200-2と、第3基地局200-3とは、隣接基地局となる。
【0077】
図13Aは、第1基地局200-1が再起動をする直前のカバーエリアを示している。この場合、第1基地局200-1から第3基地局200-3は、それぞれ、通常送信出力の電波を出力している。この場合、第1基地局200-1の通信可能エリアは、第1カバーエリア300-1である。第2基地局200-2の通信可能エリアは、第2カバーエリア300-2である。第3基地局200-3の通信可能エリアは、第3カバーエリア300-3である。図13Aでは、第1端末10-1から第6端末10-6が第1カバーエリア300-1内に位置している。この場合、第1端末10-1から第6端末10-6は、第1基地局200-1と、通信可能に接続されているものとする。第1基地局200-1を再起動する際には、図13A図13B図13C図13Dの順に各カバーエリアが変化する。
【0078】
図13B図13Aからカバーエリアが1段階変化した様子を示している。第1カバーエリア300A-1は、図13Aに図示の第1カバーエリア300-1よりも狭い。第2カバーエリア300A-2及び第3カバーエリア300A-3は、図13Aに図示の第2カバーエリア300-2及び第3カバーエリア300-3よりも広い。図13Bでは、第3端末10-3と、第4端末10-4とが、第1カバーエリア300A-1から外れている。第3端末10-3と、第4端末10-4とは、第2カバーエリア300A-2と、第3カバーエリア300A-3内に位置している。この場合、第3端末10-3と、第4端末10-4とは、第2基地局200-2または第3基地局200-3と接続する。
【0079】
図13C図13Bからカバーエリアが1段階変化した様子を示している。第1カバーエリア300B-1は、図13Bに図示の第1カバーエリア300A-1よりも狭い。第2カバーエリア300B-2及び第3カバーエリア300B-3は、図13Bに図示の第2カバーエリア300A-2及び第3カバーエリア300A-3よりも広い。図13Cでは、第3端末10-3及び第4端末10-4に加えて、第1端末10-1と、第6端末10-6とが第1カバーエリア300B-1から外れている。第1端末10-1は、第2カバーエリア300B-2内に位置しており、第2基地局200-2と接続する。第6端末10-6は、第3カバーエリア300B-3内に位置しており、第3基地局200-3と接続する。
【0080】
図13D図13Cからカバーエリアが1段階変化した様子を示している。第1カバーエリア300C-1は、図13Cに図示の第1カバーエリア300B-1よりも狭い。第1カバーエリア300C-1は、第1基地局200-1が最小送信出力Pmin1で電波を出力した際のカバーエリアである。第2カバーエリア300C-2及び第3カバーエリア300C-3は、図13Cに図示の第2カバーエリア300B-2及び第3カバーエリア300B-3よりも広い。第2カバーエリア300C-2及び第3カバーエリア300C-3は、それぞれ、第2基地局200-2及び第3基地局200-3が最大送信出力Pmax2及びPmax3で電波を出力した際のカバーエリアである。図13Dでは、第2端末10-2と、第5端末10-5とが、第1カバーエリア300C-1から更に外れている。第2端末10-2と、第5端末10-5とは、第2カバーエリア300C-2及び第3カバーエリア300C-3内に位置している。この場合、第2端末10-2と、第5端末10-5とは、第2基地局200-2又は第3基地局200-3と接続する。その後、第1基地局200-1は、再起動する。
【0081】
図14から図16を用いて、再起動対象基地局が再起動する場合の、基地局管理装置、再起動対象基地局、および隣接基地局の各部の動作について説明する。図14は、再起動対象基地局が再起動する場合の、基地局管理装置の各部の処理の流れを示すフローチャートである。図15は、再起動対象基地局が再起動する場合の、再起動対象基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。図16は、再起動対象基地局が再起動する場合の、隣接基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
図14に示すように、基地局管理装置100では、まず、通信部110は、入力装置140から受けた再起動の指示を処理部120に入力する(ステップS101)。
【0083】
次いで、処理部120は、記憶部130から図4に図示の隣接基地局情報を取得する(ステップS102)。処理部120は、隣接基地局情報を取得することで、第1基地局200-1の隣接基地局が第2基地局200-2と、第3基地局200-3であることを把握する。
【0084】
次いで、処理部120は、記憶部130から図5に図示の送信出力情報を取得する(ステップS103)。ステップS103では、処理部120は、再起動対象基地局である第1基地局200-1と、隣接基地局である第2基地局200-2及び第3基地局200-3の送信出力情報を取得する。
【0085】
次いで、処理部120は、記憶部130から図6に図示の送信出力変更時間情報を取得する(ステップS104)。
【0086】
次いで、処理部120は、記憶部130から取得した各情報と共に、通信部110を介して、再起動対象基地局である第1基地局200-1へ再起動指示(第1停止時制御情報)を通知する(ステップS105)。
【0087】
次いで、処理部120は、記憶部130から取得した各情報と共に、通信部110を介して、隣接基地局である第2基地局200-2と、第3基地局200-3とに送信出力の引き上げ(第2停止時制御情報)を通知する(ステップS106)。そして、基地局管理装置100は、図14の処理を終了する。
【0088】
次に、図15を用いて、再起動対象基地局である第1基地局200-1の各部の処理について説明する。図15のフローチャートに示す処理は、第1停止時制御情報に含まれる変更開始日時が到来したタイミング、もしくは第1基地局200-1が第1停止時制御情報を受信したタイミングで開始される。
【0089】
まず、通信部210は、基地局管理装置100から受信した再起動指示(第1停止時制御情報)を処理部220へ入力する(ステップS201)。
【0090】
次いで、処理部220は、通信部210を介して、再起動指示に対する応答を基地局管理装置100に返信する(ステップS202)。
【0091】
次いで、処理部220は、送信出力制御部230を介して、送信出力を(Pn1-Pmin1)/Sだけ引き下げて、変更時間間隔tのタイマーを開始する(ステップS203)。
【0092】
次に、処理部220は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が最小送信出力であるか否かを判定する(ステップS204)。最小送信出力でない場合(ステップS204のNo)、処理部220はステップS203に進む。一方、最小送信出力である場合(ステップS204のYes)、処理部220はステップS205に進む。
【0093】
次いで、処理部220は、第1基地局200-1の再起動を実行する(ステップS205)。そして、第1基地局200-1は、図15の処理を終了する。なお、この再起動とは、第1基地局200-1を構成する少なくとも一部のコンピュータ等を1旦停止させた後に、起動させる処理である。
【0094】
図15の処理と並行して、第2基地局200-2及び第3基地局200-3は図16の処理を実行する。図16のフローチャートに示す処理は、第2停止時制御情報に含まれる変更開始日時が到来したタイミング、もしくは第2基地局200-2及び第3基地局200-3が第2停止時制御情報を受信したタイミングで開始される。第2基地局200-2及び第3基地局200-3は同様の処理を行っているので、以下では第2基地局200-2の処理について説明し、第3基地局200-3の処理については省略する。
【0095】
まず、通信部210は、基地局管理装置100から受信した送信引き上げの指示(第2停止時制御情報)を処理部220へ入力する(ステップS301)。
【0096】
次いで、処理部220は、通信部210を介して、送信引き上げに対する応答を基地局管理装置100に返信する(ステップS302)。
【0097】
次いで、処理部220は、送信出力制御部230を介して、送信出力を(Pmax2-Pn2)/Sだけ引き上げて、変更時間間隔tのタイマーを開始する(ステップS303)。
【0098】
次に、処理部220は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が最大送信出力であるか否かを判定する(ステップS304)。最大送信出力でない場合(ステップS304のNo)、処理部220はステップS303に進む。一方、最大送信出力である場合(ステップS304のYes)、処理部220は図16の処理を終了する。
【0099】
以上のように、処理対象の基地局200それぞれの送信出力の同期を取りながら段階的に変化させることで、第1基地局200-1から第2基地局200-2または第3基地局200-3へ端末が一斉に移動することによる輻輳を回避することができる。また、第2基地局200-2と第3基地局200-3との送信出力を上げることで、第1基地局200-1の再起動によって、各端末が圏外になることを回避することができる。
【0100】
次に、図13Aから図13Dを用いて、第1基地局200-1の再起動が完了し、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの処理について説明する。
【0101】
第1基地局200-1の再起動が完了した後、各基地局の送信出力が通常送信出力となるまでには、図13D図13C図13B図13Aの順に変化する。すなわち、第1基地局200-1が再起動する場合とは、逆に変化する。なお、図13Aから図13Dの各端末と各基地局の接続関係については、第1基地局200-1を再起動する場合の状況と同じなので説明は省略する。
【0102】
図17から図19を用いて、再起動対象基地局が再起動した後、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、基地局管理装置、再起動対象基地局、および隣接基地局の各部の動作について説明する。図17は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、基地局管理装置の各部の処理の流れを示すフローチャートである。図18は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、再起動対象基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。図19は、各基地局の送信出力が通常送信出力に復帰するまでの、隣接基地局の各部の処理の流れを示すフローチャートである。
【0103】
図17に示すように、基地局管理装置100では、まず、通信部110は、入力装置140から受けた起動完了通知を処理部120に入力する(ステップS401)。
【0104】
次いで、処理部120は、記憶部130から図4に図示の隣接基地局情報を取得する(ステップS402)。
【0105】
次いで、処理部120は、記憶部130から図5に図示の送信出力情報を取得する(ステップS403)。
【0106】
次いで、処理部120は、記憶部130から図6に図示の送信出力変更時間情報を取得する(ステップS104)。
【0107】
次いで、処理部120は、記憶部130から取得した各情報と共に、通信部110を介して、再起動対象基地局である第1基地局200-1へ送信出力の引き上げ(第1起動時制御情報)を通知する(ステップS405)。
【0108】
次いで、処理部120は、記憶部130から取得した各情報と共に、通信部110を介して、隣接基地局である第2基地局200-2と、第3基地局200-3とに送信出力の引き下げ(第2起動時制御情報)を指示する(ステップS406)。そして、基地局管理装置100は、図17の処理を終了する。
【0109】
次に、図18を用いて、再起動対象基地局である第1基地局200-1の各部の処理について説明する。図18のフローチャートに示す処理は、第1起動時制御情報に含まれる変更開始日時が到来したタイミング、もしくは第1基地局200-1が第1起動時制御情報を受信したタイミングで開始される。
【0110】
まず、通信部210は、基地局管理装置100から受信した送信出力の引き上げの指示(第1起動時制御情報)を処理部220へ入力する(ステップS501)。
【0111】
次いで、処理部220は、通信部210を介して、送信出力の引き上げの指示に対する応答を基地局管理装置100に返信する(ステップS502)。
【0112】
次いで、処理部220は、送信出力制御部230を介して、送信出力をPmin1に維持して、変更時間間隔tのタイマーを開始する(ステップS503)。
【0113】
次いで、処理部220は、変更時間間隔tが経過したら、送信出力制御部230を介して送信出力を(Pn1-Pmin1)/Sだけ引き上げる(ステップS504)。
【0114】
次に、処理部220は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が通常送信出力であるか否かを判定する(ステップS505)。通常送信出力でない場合(ステップS505のNo)、処理部220はステップS504に進む。一方、通常送信出力である場合(ステップS505のYes)、処理部220は図18の処理を終了する。
【0115】
図18の処理と並行して、第2基地局200-2及び第3基地局200-3は図19の処理を実行する。図19のフローチャートに示す処理は、第2起動時制御情報に含まれる変更開始日時が到来したタイミング、もしくは第2基地局200-2及び第3基地局200-3が第2起動時制御情報を受信したタイミングで開始される。第2基地局200-2及び第3基地局200-3は同様の処理を行っているので、以下では第2基地局200-2の処理について説明し、第3基地局200-3の処理については省略する。
【0116】
まず、通信部210は、基地局管理装置100から受信した送信引き下げの指示(第2起動時制御情報)を処理部220へ入力する(ステップS601)。
【0117】
次いで、処理部220は、通信部210を介して、送信引き下げに対する応答を基地局管理装置100に返信する(ステップS602)。
【0118】
次いで、処理部220は、送信出力制御部230を介して、送信出力をPmax2に維持して、変更時間間隔tのタイマーを開始する(ステップS603)。
【0119】
次いで、処理部220は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力制御部230を介して、送信出力を(Pmax2-Pn2)/Sだけ引き下げる(ステップS604)。
【0120】
次に、処理部220は、変更時間間隔tが経過した後、送信出力が通常送信出力であるか否かを判定する(ステップS605)。通常送信出力でない場合(ステップS605のNo)、処理部220はステップS604に進む。一方、通常送信出力である場合(ステップS605のYes)、処理部220は図19の処理を終了する。そして、第2基地局200-2は、図19の処理を終了する。
【0121】
以上のように、本実施形態は、送信出力を段階的に変化させることで、第1基地局200-1へ端末が一斉に移動することによる輻輳を回避することができる。
【0122】
なお、本実施形態において、図8および図9に示したような再起動対象基地局が停止するときの送信出力制御と、図11および図12に示したような再起動対象基地局が再起動するときの送信出力制御とを両方行っているが、どちらか一方のみを実行してもよい。例えば、ある基地局を再起動ではなく停止させる場合には、再起動対象基地局が起動するときの送信出力制御を省略する。また、今まで起動していなかった基地局を起動させる場合には、再起動対象基地局が停止するときの送信出力制御を省略する。
【0123】
また、本実施形態において、再起動対象基地局の送信出力制御と、隣接基地局の送信出力制御を同時に行っているが、隣接基地局の送信出力制御を省略してもよい。つまり、隣接基地局の送信出力は一定であってもよい。例えば、ある基地局を起動する場合に、その基地局の送信出力を図11に示すように変化させるが、隣接基地局の送信出力は一定であってもよい。隣接基地局の送信出力制御を行った方が、隣接基地局から起動基地局に端末をスムーズに移行させることができるが、隣接基地局の送信出力が一定であっても、起動基地局の輻輳を防止する効果は得られる。
【0124】
[第2実施形態]
次に、本実施形態に係る第2実施形態に係る無線通信システム1について説明する。第2実施形態に係る無線通信ステムの構成は、第1実施形態と同様である。
【0125】
第2実施形態では、基地局管理装置100が、再起動対象基地局に登録された端末の数に応じて、再起動対象基地局および隣接基地局の電力の送信出力の変更パターンを決定する。
【0126】
具体的には、第2実施形態では、基地局管理装置100が、再起動処理を行う前に再起動対象基地局に登録された端末の数が多いほど変更完了時間Tを長くして、電力の送信出力の1回あたりの変化量を小さくする。すなわち、過去(過去の時点)において再起動対象基地局に登録された端末の数が多いほど、送信出力を少しずつ変更するようにする。この端末数としては、再起動処理を行う直前の時点(直近)において起動対象基地局に登録された端末数を用いてもよいし、過去の一定期間(例えば、再起動処理が行われる前の1時間)において起動対象基地局に登録された端末数の代表値(平均値、中央値など)を用いてもよい。
【0127】
上述したように時間0から時間Tまでに送信出力を変化させる回数(出力変更回数)Sは、S=T/tで表すことができる。また、1回の変更あたりの送信出力の変化量は、例えば(Pn-Pmin)/Sまたは(Pmax-Pn)/Sのように決定されるので、Sの値が大きいほど、送信出力の変化量は小さくなる。
【0128】
例えば、再起動処理の前に、再起動対象基地局に登録されている端末数が、しきい値θ(例えば、20台)未満の場合には、T=T1とする。また、しきい値θ以上の場合には、T=T2とする。ここで、T1と、T2とは、T1<T2の関係を満たし、T2はT1よりも大きな値である。またここでは、再起動基地局の端末数に係らず、同じ値のtを使用する。
【0129】
図20Aと、図20Bとを用いて、端末数の違いによる出力変更パターン(出力変化パターン)の違いについて説明する。図20Aと、図20Bは、再起動対象基地局を停止させる際の出力変更パターンの一例を示している。
【0130】
図20Aは、再起動対象基地局の登録端末数が少ない(しきい値未満)の場合の出力変更パターンを示し、図20Bは、再起動対象基地局の登録端末数が多い(しきい値以上)の場合の出力変更パターンを示している。図20Aと、図20Bとに示すように、図20Aは出力変更回数が4回であることに対し、図20Bは出力変更回数が8回である。また、図20Bの方が図20Aよりも、送信出力の変化量は小さい。
【0131】
なお、2種類以上のしきい値を用いて、さらに細かく変更完了時間Tを調整してもよい。例えば、2種類のしきい値θ1、θ2(θ1<θ2)を用いて、再起動対象基地局の端末数がθ1未満の場合には、T=T1とし、θ1以上かつθ2未満の場合には、T=T22とし、θ2以上の場合には、T=T3としてもよい。ここで、T1と、T2と、T3とは、T1<T2<T3の関係を満たす。
【0132】
上述のとおり、再起動基地局に登録された端末数に応じて、再起動基地局および隣接基地局の送信出力の変化量を決定してもよい。このような処理を行うことにより、再起動対象基地局を停止する際に、隣接基地局に過度な負荷がかかる可能性を低減することができる。また、再起動対象基地局を起動する際に、再起動対象基地局に過度な負荷がかかる可能性を低減することができる。
【0133】
また、本実施形態では、再起動対象基地局に登録された端末数に応じて、変更完了時間および変更時間間隔tを設定してもよい。例えば、再起動対象基地局に登録された端末数が、しきい値θ未満の場合には、T=T1とt=t1とを用いる。そして、端末数がしきい値θ以上の場合には、T=4×T1、t=2×t1とする。このような処理を行う場合のターゲット基地局の出力変更パターンの一例を図21Aおよび図21Bに示す。
【0134】
図21Aは、再起動対象基地局の登録端末数が少ない場合(しきい値未満)の出力変更パターンを示す模式図である。図21Bは、再起動対象基地局の登録端末数が多い場合(しきい値以上)の出力変更パターンを示す模式図である。図21Aに示す出力変更パターンの変更時間間隔がt1であり、変更完了時間がT1である。図21Bに示す出力変更パターンの変更時間間隔が2×t1であり、変更完了時間が4×T1である。
【0135】
このように設定すると、端末数が多い場合(しきい値θ以上)の出力変更回数Sは、端末数が少ない場合(しきい値未満の場合)に比べて2倍になり、送信出力の1回あたりの変化量も小さくなる。さらに同じ出力値が持続する時間も2倍になるため、再起動対象基地局および隣接基地局が過負荷になる可能性をより低減できる。つまり、再起動対象基地局に登録された端末の数に応じて、第1停止時制御情報および第2停止時制御情報を設定し、これらによって規定される送信出力の変更パターンを変えることにより、再起動対象基地局および隣接基地局が過負荷になる可能性をより低減できる。送信出力を下げて基地局200に登録される端末の数を減らす場合であっても、基地局200において登録変更処理が発生するため、このような処理は有効である。なお、上述の変更完了時間Tおよび変更時間間隔tの例は一例であり、本発明を限定するものではない。例えばしきい値θ以上の場合に、T=3×T1、t=2×t1にするなど、他の設定を用いてもよい。ただし、端末数が多い場合の出力変更回数が、端末数が少ない場合の出力変更回数よりも少なくならないようにすることが望ましい。
【0136】
なお、再起動対象基地局を起動する際の処理においても、上述の処理と同様の処理を行ってもよい。例えば、過去に再起動対象基地局に登録された端末の数に応じて、図20A図20B図21A図21Bを用いて説明した処理と同様な処理を行い、図11および図12に示した出力変更パターンに対して変更を加えてもよい。すなわち、基地局管理装置100は、再起動対象基地局に登録された端末の数に応じて、第1起動時制御情報および第2起動時制御情報を設定し、これらによって規定される送信出力の変更パターンを変えてもよい。このような処理により、再起動対象基地局および隣接基地局が過負荷になる可能性をより低減できる。
【0137】
[第3実施形態]
次に、本実施形態に係る第3実施形態に係る無線通信システム1について説明する。第3実施形態に係る無線通信ステムの構成は、第1実施形態と同様である。
【0138】
第3実施形態では、再起動対象基地局および隣接基地局の送信出力を変化させるタイミングは、端末の位置登録要求をモニターしながら決定してもよい。位置登録要求のモニターは、例えば送信出力を上げる側の基地局で行う。つまり再起動対象基地局の登録数に応じて再起動対象基地局および隣接基地局の送信出力を変化させるタイミングを決定してもよい。
【0139】
具体的には、基地局管理装置100は、再起動対象基地局が再起動を行うために送信電力を段階的に下げていくとき、つまり、隣接基地局が送信電力を段階的に上げていくとき、隣接基地局での単位時間当たりの位置登録要求数に基づいて、送信電力を変化させるタイミングを決定する。基地局管理装置100は、隣接基地局における単位時間当たりの位置登録要求数が、位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であれば、隣接基地局の送信電力を上げて、基地局の送信出力を下げてもよい。基地局管理装置100は、隣接基地局における単位時間当たりの位置登録要求数が所定値以上の場合は、再起動対象基地局、隣接基地局ともに送信出力を変化させずにそのままの状態を維持する。
【0140】
図22を用いて、再起動対象基地局の停止時における、基地局管理装置の処理について説明する。図22は、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0141】
まず処理部120は、通信部110を介して各々の隣接基地局から、単位時間当たりの位置登録要求数を取得する(ステップS701)。
【0142】
次いで、処理部120は、全ての隣接基地局において、単位時間当たりの位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であるか否かを判定する(ステップS702)。位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であると判定された場合(ステップS702のYes)、処理部120は、ステップS703に進む。一方、位置登録要求数が所定値(しきい値)未満でないと判定された場合(ステップS702のNo)、処理部120は、ステップS704に進む。
【0143】
ステップ703において、処理部120は、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する(ステップS703)。すなわち、処理部120は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信する。または、処理部120は各々の基地局に対して、使用すべき送信電力値を直接指定したメッセージを送信してもよい。本実施形態では、基地局200の送信出力を1段階変化させるために、基地局管理装置100から基地局200に対して、その都度メッセージを送信する。
【0144】
次いで、処理部120は、再起動対象基地局が停止したか否かを判定する(ステップS704)。具体的には、処理部120は、再起動対象基地局が停止直前に、その旨を示すメッセージを基地局管理装置100に送信することにしておき、そのメッセージを受信したか否かを判定する。または、処理部120は、基地局管理装置100から再起動対象基地局に対して、停止したか否かを確認するためのメッセージを送信し、それに対する応答の有無で判定してもよい。再起動対象基地局が停止したと判定された場合(ステップS704のYes)、処理部120は、図22の処理を終了する。一方、再起動対象基地局が停止したと判定されない場合(ステップS704のNo)、処理部120は、ステップS705に進む。
【0145】
次いで、処理部120は、所定時間(例えば10秒間)待機(ウェイト)する(ステップS705)。そして、処理部120は、ステップS701に進み、上述の処理を繰り返す。
【0146】
同様に、基地局管理装置100は、再起動基地局が再起動した後、送信電力を段階的に上げていくときは、再起動基地局での単位時間当たりの位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であれば、再起動基地局の送信電力を上げて、隣接基地局の送信電力を下げてもよい。
【0147】
図23を用いて、再起動対象基地局の再起動後における、基地局管理装置の処理について説明する。図23は、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図23の処理は、基地局管理装置が再起動対象基地局から所定のメッセージを受信したことをトリガーとして開始される。
【0148】
処理部120は、通信部110を介して再起動対象基地局から、単位時間当たりの位置登録要求数を取得する(ステップS801)。
【0149】
次いで、処理部120は、再起動対象基地局において、単位時間当たりの位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であるか否かを判定する(ステップS802)。位置登録要求数が所定値(しきい値)未満であると判定された場合(ステップS802のYes)、処理部120は、ステップS803に進む。一方、位置登録要求数が所定値(しきい値)未満でないと判定された場合(ステップS802のNo)、処理部120は、ステップS804に進む。
【0150】
ステップS803において、処理部120は、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する(ステップS803)。すなわち、処理部120は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信する。または、処理部120は、各々の基地局に対して、使用すべき送信電力値を直接指定したメッセージを送信してもよい。
【0151】
次いで、処理部120は、再起動対象基地局が通常状態(通常出力状態)であるか否かを判定する(ステップS804)。すなわち、処理部120は、再起動対象基地局の出力変更処理が完了したか否かを判定する。具体的には、処理部120は、再起動対象基地局の出力変更処理が完了した場合に、その旨を示すメッセージを基地局管理装置に送信することにしておき、そのメッセージを受信したか否かを判定する。再起動対象基地局が通常状態であると判定された場合(ステップS804のYes)、処理部120は、図23の処理を終了する。一方、再起動対象基地局が通常状態でないと判定された場合(ステップS804のNo)、処理部120は、ステップS805に進む。
【0152】
次いで、処理部120は、所定時間(例えば10秒間)待機(ウェイト)する(ステップS805)。そして、処理部120は、ステップS801に進み、上述の処理を繰り返す。
【0153】
上述の処理を実行することにより、基地局管理装置100は、再起動対象基地局および隣接基地局が、過負荷になる可能性を低減しつつ、必要最低限の時間で再起動対象基地局の停止および起動処理を実行できる。
【0154】
なお、上述の説明において、基地局管理装置100が各基地局の単位時間当たりの位置登録要求数を取得し、判定処理を行っているが、別の方法を用いてもよい。例えば、再起動対象基地局の停止処理において、各々の隣接基地局が、単位時間当たりの位置登録要求数が所定値未満であるか否かを判定してもよい。この場合、所定値未満である場合には、自基地局の送信電力を上げることが可能と判定し、その旨の示すメッセージ(出力増加可能メッセージ)を基地局管理装置100に送信する。基地局管理装置100は、全ての隣接基地局から出力増加可能メッセージを受信した場合に、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する。すなわち、基地局管理装置100は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信する。
【0155】
同様に、再起動対象基地局の出力を上げる過程において、再起動対象基地局が、単位時間当たりの位置登録要求数が所定値未満であるか否かを判定してもよい。この場合、位置登録要求数が所定値未満である場合には、自基地局の送信電力を上げることが可能と判定し、その旨の示すメッセージ(出力増加可能メッセージ)を基地局管理装置100に送信する。基地局管理装置100は、再起動対象基地局から出力増加可能メッセージを受信した場合に、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する。すなわち、基地局管理装置100は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信する。
【0156】
[第4実施形態]
次に、本実施形態に係る第4実施形態に係る無線通信システム1について説明する。第4実施形態に係る無線通信ステムの構成は、第1実施形態と同様である。
【0157】
第4実施形態では、再起動対象基地局に登録された端末の位置情報を用いて、送信電力を変化させる隣接基地局を選別してもよい。
【0158】
具体的には、基地局管理装置100は、各基地局の最大カバーエリア(出力最大値にした場合のカバーエリア)の関する情報(カバーエリアの緯度、経度など)、および各基地局に登録された端末の位置情報(緯度、経度など)を記憶部130に記憶する。そして、基地局管理装置100は、再起動対象基地局が再起動する場合に、再起動対象基地局に登録された端末をカバーできる(ターゲット基地局の代わりに該当端末を圏内にできる)隣接基地局のみを送信電力制御の対象としてもよい。
【0159】
図24を用いて、端末の位置情報を用いて、隣接基地局を選別する方法について説明する。図24は、端末の位置情報を用いて、隣接基地局を選別する方法の一例を説明するための模式図である。
【0160】
図24において、第1基地局200-1は再起動対象基地局であり、第2基地局200-2および第3基地局200-3は、隣接基地局である。第1基地局200-1には、第1端末10-1と、第2端末10-2と、第3端末10-3とが登録されているものとする。第1基地局200-1の再起動処理を行う前において、第1端末10-1から第3端末10-3の3台の端末は、第2基地局200-2の最大の第2カバーエリア300C-2に入っていることが示されている。つまり、第1基地局200-1の第1カバーエリア300-1(ここでは通常カバーエリア)と、第2基地局200-2の最大カバーエリア300C-2とが重なるエリア400-1には3台の端末が存在する。一方、第1基地局200-1の第1カバーエリア300-1と第3基地局200-3の最大カバーエリア300C-3とが重なるエリア400-2には、端末が1台も存在しない。このような状態では、第3基地局200-3の送信出力を最大にしても、第1基地局200-1に登録されている端末が第3基地局200-3に登録されることはないので、第3基地局200-3の送信出力を変更しても無駄となる。このため、第3基地局200-3は送信出力を変更する対象から除外し、第2基地局200-2のみを送信出力を変更する対象とする。
【0161】
また、第4実施形態では、再起動対象基地局に登録された端末の位置情報を用いて、送信電力の変化パターンを変化させてもよい。
【0162】
具体的には、再起動対象基地局が送信出力を下げるときに、再起動対象基地局のカバーエリアに存在する端末が0台になった場合には、即座に停止してもよい。また、隣接基地局の送信出力を現状から上げてもカバーできる端末が0台の場合(送信出力を上げても圏内にできる端末がもうない場合)は、再起動対象基地局の送信電力を段階的に下げることをやめて、即座に停止してもよい。
【0163】
図25を用いて、再起動対象基地局の停止時における。基地局管理装置の処理について説明する。図25は、再起動対象基地局の停止時における、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0164】
処理部120は、記憶部130から各々の基地局のカバーエリアの情報を取得する(ステップS901)。このカバーエリアの情報には、少なくとも最大カバーエリアの情報(緯度、経度など)が含まれているが、送信出力別(最大、通常、最小など)のカバーエリア情報が含まれていてもよい。
【0165】
次いで、処理部120は、記憶部130から各々の基地局に登録された端末の位置情報(緯度、経度など)を取得する(ステップS902)。処理部120は、例えばGPS(Global Positioning System)信号に基づいて、端末の位置情報を取得する。
【0166】
次いで、処理部120は、通信部110を介して、再起動対象基地局から、再起動対象基地局に現在登録されている端末の数を取得する(ステップS903)。
【0167】
次いで、処理部120は、再起動対象基地局に登録された端末があるか否かを判定する(ステップS904)。つまり、登録された端末の数が1以上であるか否かを判定する。登録された端末があると判定された場合(ステップS904のYes)、処理部120は、ステップS905に進む。一方、登録された端末がないと判定された場合(ステップS904のNo)、処理部120は、ステップS909に進む。
【0168】
ステップS905において、処理部120は、再起動対象基地局に登録された端末を対象にして、隣接基地局の最大カバーエリア内に位置する端末が存在するか否かを判定する(ステップS905)。隣接基地局の最大カバーエリア内に端末が存在すると判定された場合(ステップS905のYes)は、ステップS906に進む。一方、隣接基地局の最大カバーエリア内に端末が存在しないと判定された場合(ステップS905のNo)、処理部120は、ステップS909に進む。
【0169】
ステップS906において、処理部120は、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する(ステップS906)。すなわち、処理部120は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信する。または、処理部120は、各々の基地局に対して、使用すべき送信電力値を直接指定したメッセージを送信してもよい。
【0170】
ステップS907において、処理部120は、再起動対象基地局が停止したか否かを判定する(ステップS907)。再起動対象基地局が停止したと判定された場合(ステップS907のYes)、処理部120は、図25の処理を終了する。一方、再起動対象基地局が停止したと判定されない場合(ステップS907のNo)、処理部120は、ステップS908に進む。
【0171】
ステップS908において、処理部120は、所定時間(例えば10秒間)待機(ウェイト)する(ステップS908)。そして、処理部120は、ステップS902に進み、上述の処理を繰り返す。
【0172】
また、ステップS909において、処理部120は、再起動対象基地局を停止させる(ステップS909)。具体的には、処理部120は、通信部110を介して、再起動対象基地局に、停止許可を示すメッセージを送信する。メッセージを受信したターゲット基地局は、即時に停止する。そして、処理部120は、図25の処理を終了する。このような処理を行うことにより、必要のない送信電力の変更処理を省くことができるので、システム全体の処理が効率化される。
【0173】
同様に端末の位置情報を用いた動作として、基地局管理装置100は、再起動対象基地局が再起動後に送信出力を上げるとき、次に送信電力を上げた場合のカバーエリアにおける端末数を特定して、端末数が多い場合は少しずつ時間をかけて送信電力を上げて、端末数が少ない場合は短時間で送信電力を上げてもよい。つまり、端末の位置情報に基づいてカバーエリアに存在する端末数を算出して、第2実施形態で説明したような手法を用いて端末数に応じて送信出力を変化させてもよい。
【0174】
図26を用いて、再起動対象基地局の再起動後における、基地局管理装置の処理について説明する。図26は、再起動対象基地局の再起動後における、基地局管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0175】
まず、処理部120は、記憶部130から再起動対象基地局のカバーエリアの情報(緯度、経度など)を取得する(ステップS1001)。このカバーエリアの情報には、送信出力別のカバーエリアが含まれている。
【0176】
次いで、処理部120は、記憶部130から各々の基地局に登録された端末の位置情報(緯度、経度)を取得する(ステップS1002)。
【0177】
次いで、処理部120は、通信部110を介して、再起動対象基地局から、再起動対象基地局に現在登録されている端末の数を取得する(ステップS1003)。
【0178】
次いで、処理部120は、再起動対象基地局の送信出力を1段階上げた場合に、登録可能となる端末数(端末増加数)を算出する(ステップS1004)。つまり、処理部120は、再起動対象基地局の送信出力を1段階上げた場合に、カバーエリアが増大する(広がる)領域に位置する端末数を算出する。なお、ステップS1003において、再起動処理前の過去の時点において再起動対象基地局に登録されていた端末数をさらに取得してもよい。そして、この情報を用いて、送信出力を1段階上げた場合に、カバーエリアが増大する領域に位置する端末数を算出してもよい。このような処理は、全ての端末の正確な位置情報が取得できない場合に有効である。
【0179】
次いで、処理部120は、端末増加数が所定値未満であるか否かを判定する(ステップS1005)。所定値未満であると判定された場合(ステップS1005のYes)、処理部120は、ステップS1006に進む。一方、所定値以上であると判定された場合(ステップS1005のNo)、処理部120は、ステップS1007に進む。
【0180】
ステップS1006において、処理部120は、次の変更時間間隔tを比較的小さい値に設定する(ステップS1006)。具体的には、処理部120は、t=t1とする。そして、処理部120は、ステップS1008に進む。
【0181】
ステップS1007において、処理部120は、次の変更時間間隔tを比較的大きい値に設定する(ステップS1007)。具体的には、処理部120は、t=t2とする。このt2は上記のt1より大きく、t1と、t2とはt1<t2の関係を満たす。そして、処理部120は、ステップS1008に進む。
【0182】
次いで、処理部120は、各基地局に出力変更指示(出力変更メッセージ)を送信する(ステップS1008)。すなわち、処理部120は、再起動対象基地局に対しては、送信出力を1段階上げるメッセージを送信し、隣接基地局に対しては、送信出力を1段階下げるメッセージを送信する。このメッセージには、ステップS1006またはステップS1007で設定した変更時間間隔tの情報が含まれる。また、処理部120は、基地局に対して、使用すべき送信電力値と変更時間間隔tを指定したメッセージを送信してもよい。
【0183】
次いで、処理部120は、ターゲット基地局が通常状態(通常出力状態)であるか否かを判定する(ステップS1009)。つまり、処理部120は、ターゲット基地局の出力変更処理が完了したか否かを判定する。具体的には、処理部120は、再起動対象基地局の出力変更処理が完了した場合に、その旨を示すメッセージを基地局管理装置100に送信することにしておき、そのメッセージを受信したか否かを判定する。再起動対象基地局が通常状態であると判定された場合(ステップS1009のYes)、処理部120は、図26の処理を終了する。一方、再起動対象基地局が通常状態でないと判定された場合(ステップS1009のNo)、処理部120は、ステップS1010に進む。
【0184】
次いで、処理部120は、所定時間(例えば10秒間)待機(ウェイト)する(ステップS1010)。そして、処理部120は、ステップS1002に進み、上述の処理を繰り返す。
【0185】
上述の処理を実行することで、基地局管理装置100は、再起動対象基地局が過負荷になることを防止しつつ、ターゲット基地局の再起動に要する時間を必要最小限に抑えることができる。
【0186】
なお、上述の処理では、送信出力を1段階上げた場合にカバーエリアが増大する領域に位置する端末の数に応じて、変更時間間隔tを設定したが、別の方法を用いてもよい。具体的には、端末数の増加数が所定の範囲に収まるように、次の送信出力(送信出力の変更量)を設定してもよい。例えば、所定の範囲を「5台以上かつ10台未満」とし、現在の送信出力がP1(W)である場合、送信出力をP2(W)(P1<P2)にすると、3台の端末の位置登録が見込まれ、P3(W)(P2<P3)にすると7台の端末の位置登録が見込まれる場合、次の送信出力をP3(W)に設定する。送信出力を通常値にしても、所定の範囲に合致する数の端末が存在しない場合には、送信出力を通常値に設定すればよい。
【0187】
[第5実施形態]
図27を用いて、第5実施形態に係る無線通信システムの構成について説明する。図27は、第5実施形態に係る無線通信システムの構成を示す模式図である。
【0188】
図27に示すように、無線通信システム1Aは、第1端末10-1と、第2端末10-2と、第3端末10-3と、第4端末10-4と、第5端末10-5と、第6端末106と、第1基地局200A-1と、第2基地局200A-2と、第3基地局200A-3とを備える。
【0189】
第1実施形態から第4実施形態においては、基地局管理装置100が各基地局に対して、送信出力制御を指示している。第5実施形態においては、基地局管理装置が存在せず、各基地局が相互に情報を交換し、送信出力制御を自律的に行う。
【0190】
第1基地局200A-1から第3基地局200A-3は、図1に図示の基地局管理装置100と同様の図示しない記憶部を備えている。記憶部には、図4から図6に図示した隣接基地局情報、送信出力情報、送信出力変更時間情報を含む各種のデータ記憶されている。ただし、図4の隣接基地局情報は、自基地局に隣接する基地局の情報のみが記録されていればよい。また、図5の送信出力情報は、自基地局の送信出力のみが記録されていればよい。システム管理者が使用する図示しない管理端末がネットワークNWに接続されている。
【0191】
システム管理者が管理端末を操作して、特定の基地局の再起動を指示すると、その指示が再起動対象基地局に通知される。再起動対象基地局は、ネットワークNWから再起動指示情報を受信すると、記憶部から隣接基地局の情報を読み出し、隣接基地局に対して、再起動開始メッセージを送信する。この開始メッセージには、自基地局が停止処理を開始する日時が含まれている。再起動対象基地局は、メッセージを送信後、記憶部から送信出力情報および送信出力変更時間情報を読み出し、それらに従って、図1に図示の基地局管理装置100が制御した方法と同様に、自基地局の送信出力を変化させる。
【0192】
再起動開始メッセージを受信した隣接基地局は、メッセージに含まれる再起動日時が到来すると、記憶部から送信出力情報および送信出力変更時間情報を読み出し、それらに従って、図1に図示の基地局管理装置100が制御した方法と同様に、自基地局の送信出力を変化させる。
【0193】
再起動対象基地局は、再起動対象基地局の再起動が完了した後、記憶部から隣接基地局の情報を読み出し、隣接基地局に対して、再起動完了メッセージを送信する。そして、再起動対象基地局は、記憶部から送信出力情報および送信出力変更時間情報を読み出し、それらに従って、図1に図示の基地局管理装置100が制御した方法と同様に、自基地局の送信出力を変化させる。
【0194】
再起動完了メッセージを受信した隣接基地局は、記憶部から送信出力情報および送信出力変更時間情報を読み出し、それらに従って、図1に図示の基地局管理装置100が制御した方法と同様に、自基地局の送信出力を変化させる。
【0195】
第5実施形態によれば、基地局管理装置を用いることなく、基地局同士を連携させて、各基地局の送信出力を制御することができるので、簡易なシステム構成で、輻輳を防止することができる。
【0196】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0197】
1,1A 無線通信システム
100 基地局管理装置
110,210 通信部
120,220 処理部
130 記憶部
140 入力装置
150 表示装置
200 基地局
230 送信出力制御部
240 受信部
250 送信部
260 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27