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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】携帯機
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20221129BHJP
   B60R 25/25 20130101ALI20221129BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E05B49/00 R
E05B49/00 J
B60R25/25
H04Q9/00 301B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019017233
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020125590
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中村 和成
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012585(JP,A)
【文献】特開2014-163105(JP,A)
【文献】特開2006-193917(JP,A)
【文献】特許第5352730(JP,B1)
【文献】特開2013-063672(JP,A)
【文献】特開2019-010918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のユーザーによって携帯されて、前記車両に搭載された無線通信機(10)と通信する携帯機(100)であって、
前記ユーザーの身体的な特徴を含んだ身体情報を取得する身体情報取得部(111)と、
前記ユーザーから読み取った前記身体情報から定まる認証用データと、正規の前記ユーザーの前記身体情報から定まる正規データとに基づいて、認証を実行する身体情報認証部(112)と、
前記身体情報認証部で認証に成功した場合に、認証に成功したことを示す身体認証結果を記憶する記憶部(106)と、
前記身体情報認証部で認証に成功してからの経過時間を計測する計時部(113)と、
前記無線通信機から、前記身体認証結果の送信要求を受信する受信部(103)と、
前記送信要求を受信したときの前記経過時間が送信可能時間内であるか否かを判断する経過時間判断部(116)と、
前記経過時間判断部が前記送信可能時間内であると判断した場合に、前記記憶部に記憶されている身体認証結果を送信する送信部(102)と、
前記送信可能時間を変更する送信可能時間変更部(114)と、
前記送信可能時間の設定値を長く又は短くする場所を示すマップと、
前記携帯機の位置を取得する位置取得部と、を備え
前記送信可能時間変更部は、前記マップを用いて、前記送信可能時間の設定値を前記携帯機が存在している位置に応じた値に変更する携帯機。
【請求項2】
前記送信可能時間変更部は、ユーザーの設定操作に基づいて、前記送信可能時間を変更する請求項に記載の携帯機。
【請求項3】
前記送信可能時間変更部は、前記携帯機が使用される状態であることが検出できている場合には、前記携帯機が使用される状態であることが検出できていない場合よりも、前記送信可能時間を長くする、請求項に記載の携帯機。
【請求項4】
前記送信可能時間変更部は、前記身体認証結果を送信した後、前記車両のドアロックの解錠を示す解錠信号を受信した場合には、前記送信可能時間を延長する、請求項に記載の携帯機。
【請求項5】
前記経過時間判断部は、前記経過時間が前記送信可能時間に到達した場合には、その旨を報知する、請求項1~のいずれか1項に記載の携帯機。
【請求項6】
前記経過時間判断部は、前記経過時間が前記送信可能時間に達した後に前記送信要求を受信した場合には、前記経過時間が前記送信可能時間を超過している旨を報知する、請求項1~のいずれか1項に記載の携帯機。
【請求項7】
車両(1)のユーザーによって携帯されて、前記車両に搭載された無線通信機(10)と通信する携帯機(100)であって、
前記ユーザーの身体的な特徴を含んだ身体情報を取得する身体情報取得部(111)と、
前記ユーザーから読み取った前記身体情報から定まる認証用データを記憶する記憶部(106)と、
前記身体情報を読み取ってからの経過時間を計測する計時部(113)と、
前記無線通信機から、前記認証用データの送信要求を受信する受信部(103)と、
前記送信要求を受信したときの前記経過時間が送信可能時間内であるか否かを判断する経過時間判断部(116)と、
前記経過時間判断部が前記送信可能時間内であると判断した場合に、前記記憶部に記憶されている前記認証用データを送信する送信部(102)と、
前記送信可能時間を変更する送信可能時間変更部(114)と
前記送信可能時間を長く又は短くする場所を示すマップと、
前記携帯機の位置を取得する位置取得部と、を備え、
前記送信可能時間変更部は、前記マップを用いて、前記送信可能時間を前記携帯機が存在している位置に応じた値に変更する、携帯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両のユーザーに携帯されて、車両に搭載された無線通信機と通信する携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に乗り込む度に鍵を取り出してドアロックを解錠する煩わしさを解消するために、パッシブエントリと呼ばれる技術が開発されて、現在では広く使用されている。このパッシブエントリと呼ばれる技術では、車両に搭載した無線通信機と、車両のユーザーが携帯する電子キーなどの携帯機とが無線通信することによって、携帯機が正規の携帯機であるか否かを認証する。
【0003】
ところが、車両から遠い所にある携帯機と車両との間で電波が中継されて、不正な方法によって認証される可能性がある。その結果、正規の携帯機を携帯していない第三者により車両ドアロックが解錠されてしまう虞が生じる。
【0004】
そこで、指紋などの身体情報を用いて認証する機器を車両に搭載しておき、携帯機の認証に加えて、身体情報を用いた認証(以下、身体認証)も行うことで、車両の盗難を防止しようとする技術が提案されている。また、携帯機に身体認証の機能を搭載することも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-115439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の提案技術のように、携帯機の認証の都度、身体認証も必要としてしまうと、ユーザーに対して鍵の操作の代わりに、身体認証のための動作を強いることになるので、利便性を損なってしまうという問題があった。
【0007】
本開示は、従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、利便性の低下を抑制しつつ、身体認証を利用することによって高い防犯性能を実現することが可能な携帯機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
上述した問題を解決する携帯機に係る1つの開示は、
車両(1)のユーザーによって携帯されて、車両に搭載された無線通信機(10)と通信する携帯機(100)であって、
ユーザーの身体的な特徴を含んだ身体情報を取得する身体情報取得部(111)と、
ユーザーから読み取った身体情報から定まる認証用データと、正規のユーザーの身体情報から定まる正規データとに基づいて、認証を実行する身体情報認証部(112)と、
身体情報認証部で認証に成功した場合に、認証に成功したことを示す身体認証結果を記憶する記憶部(106)と、
身体情報認証部で認証に成功してからの経過時間を計測する計時部(113)と、
無線通信機から、身体認証結果の送信要求を受信する受信部(103)と、
送信要求を受信したときの経過時間が送信可能時間内であるか否かを判断する経過時間判断部(116)と、
経過時間判断部が送信可能時間内であると判断した場合に、記憶部に記憶されている身体認証結果を送信する送信部(102)と、
送信可能時間を変更する送信可能時間変更部(114)と、
送信可能時間の設定値を長く又は短くする場所を示すマップと、
携帯機の位置を取得する位置取得部と、を備え
送信可能時間変更部は、マップを用いて、送信可能時間の設定値を携帯機が存在している位置に応じた値に変更する。
【0010】
この携帯機は、送信要求を受信したときの経過時間が送信可能時間内であれば身体認証結果を送信するが、経過時間が送信可能時間を超えていれば身体認証結果を送信しない。これにより、ユーザーが携帯機を使用する予定がないときには、仮に不正な者の操作により車両から送信された送信要求を携帯機が受信したとしても、身体認証結果を送信してしまうことが抑制される。したがって、高い防犯性能を実現できる。
【0011】
一方、携帯機を使用する正規のユーザーは、携帯機を使用するときに送信可能時間を経過しないようなときに予め身体情報を認証しておけば、応答要求を受信したときに身体認証結果が送信される。したがって、利便性の低下も抑制される。
【0012】
また、上記開示の携帯機では身体認証結果を送信するが、次の2つの携帯機に係る開示のように、身体認証結果に代えて、身体情報から定まる認証用データを送信することもできる。
【0014】
また、上述した問題を解決する携帯機に係るさらに別の開示は、
車両(1)のユーザーによって携帯されて、車両に搭載された無線通信機(10)と通信する携帯機(100)であって、
ユーザーの身体的な特徴を含んだ身体情報を取得する身体情報取得部(111)と、
ユーザーから読み取った身体情報から定まる認証用データを記憶する記憶部(106)と、
身体情報を読み取ってからの経過時間を計測する計時部(113)と、
無線通信機から、認証用データの送信要求を受信する受信部(103)と、
送信要求を受信したときの経過時間が送信可能時間内であるか否かを判断する経過時間判断部(116)と、
経過時間判断部が送信可能時間内であると判断した場合に、記憶部に記憶されている認証用データを送信する送信部(102)と、
送信可能時間を変更する送信可能時間変更部(114)と
送信可能時間を長く又は短くする場所を示すマップと、
携帯機の位置を取得する位置取得部と、を備え、
送信可能時間変更部は、マップを用いて、送信可能時間を携帯機が存在している位置に応じた値に変更する。
【0015】
上記別の開示に係る携帯機でも、経過時間が送信可能時間を超えていれば、携帯機はデータを送信しない点は、最初の開示に係る携帯機と同じである。したがって、最初の開示に係る携帯機と同様、高い防犯性能を実現しつつ、利便性の低下も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】パッシブエントリシステムの作動概要を説明する図である。
図2】携帯機100の内部構成を示す図である。
図3】認証装置20の内部構成を示す図である。
図4図2の身体情報認証部112が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5】応答信号を送信する処理の流れを示すフローチャートである。
図6】車両1の盗難を防止できることを説明する図である。
図7】第2実施形態の携帯機200の内部構成を示す図である。
図8】第2実施形態の認証装置1020の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
[システム概要]
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、車両1のユーザーが、携帯機100を携帯して車両1に近付くことによって、パッシブエントリが実現される様子が例示されている。なお、携帯機100は、パッシブエントリシステムが備える専用の電子キーであるものとして説明する。ただし、これとは異なり、スマートフォンなどの多機能携帯端末を携帯機100として用いることもできる。
【0018】
携帯機100は、指紋などの身体情報を読み取る身体情報読取器100dを備えており、車両1のユーザーは携帯機100を携帯する際に、身体情報読取器100dを用いて携帯機100に身体情報を読み取らせる。図1(a)では、車両1のユーザーが自宅を出る際に、携帯機100に身体情報を読み取らせている。携帯機100に身体情報を読み取らせた後は、その携帯機100は、例えばポケットに入れてもよいし、鞄の中にしまっても構わない。
【0019】
携帯機100に読み取らせる身体情報としては、車両1のユーザーを識別可能な情報であれば、指紋に限らず様々な情報とすることができる。たとえば、身体情報を、顔の形状とすることもできるし、瞳の虹彩の形状とすることもできる。さらには、形状に限らず、声紋を身体情報として取得してもよい。携帯機100に搭載する身体情報読取器100dには、身体情報として読み取る内容に応じた機器が採用される。
【0020】
携帯機100には、予め正規データが記憶されている。正規データは、正規のユーザーの身体情報から定まるデータであり、たとえば、その身体情報の特徴量を示すデータである。身体情報を読み取った際には、読み取った身体情報が正規のユーザーの身体情報であるかを確認する身体認証を、その正規データを用いて行う。そして、認証に成功した場合には、認証成功を示す身体認証結果を記憶しておく。
【0021】
図1(b)に示したように、車両1には、無線通信機10および携帯機100を認証する認証装置20が搭載されている。無線通信機10には、LF帯の電波(以下、LF波)を送信し、RF帯の電波(以下、RF波)を受信する車載アンテナ10aが接続されている。なお、図および明細書では、図示および説明を簡略化するため、LF波の送信とRF波の受信とを1つの車載アンテナ10aで行うものとして説明する。ただし、LF波による送信とRF波による受信とは、それぞれ専用のアンテナで分担することができる。
【0022】
認証装置20は、無線通信機10を介して車載アンテナ10aから、携帯機100に応答を要求する応答要求信号を一定周期で周囲に向かって送信している。また、携帯機100には、LF波を受信して、RF波を送信するアンテナ100aが搭載されている。このため、図1(b)に示したように、車両1のユーザーが携帯機100を携帯して車両1に近付いていくと、携帯機100が応答要求信号を受信可能となる。そして、車両1からの応答要求信号を受信した携帯機100は、その応答要求信号に対する応答信号を送信する。なお、携帯機100のアンテナ100aも、LF波の受信とRF波の送信とを、1つのアンテナ100aで行うものとして説明する。ただし、LF波の受信とRF波の送信とを、それぞれ専用のアンテナで分担してもよい。
【0023】
車両1の認証装置20は、車載アンテナ10aおよび無線通信機10を介して応答信号を受信すると、車両1の周辺に携帯機100が存在することを認識する。応答要求信号および応答信号は、詳しくは、一連の信号であり、幾度かの信号の送受信を通じて、携帯機100が正規の携帯機であるかどうかを確認する信号である。応答信号には、携帯機100が正規のものであることを認証するためのキー認証コードが含まれていることに加えて、身体認証に成功したことを示す身体認証結果も含まれている。この応答信号の送信を要求する応答要求信号は、身体認証結果の送信を要求する送信要求であると言える。
【0024】
本実施形態では、身体認証結果を含む応答信号を送信することができる時間(以下、送信可能時間)が設定されている。身体情報を読み取った時点からの経過時間が送信可能時間を超えていれば、携帯機100は応答要求信号を受信しても、応答信号すなわち身体認証結果を、車両1に送信しない。
【0025】
車両1の認証装置20は、応答信号を無線通信機10から取得すると、応答信号に含まれているキー認証コードを照合することに加え、応答信号に身体認証結果が含まれているかどうかを確認する。キー認証コードの照合ができたことに加えて、身体認証結果が含まれていることが確認できたら、車両ドアロックを解錠する。
【0026】
このように、携帯機100は、携帯機100に身体情報を読み取らせてから送信可能時間内であれば、一般的な携帯機を用いる場合と同様に、パッシブエントリを実現することができる。その一方で、送信可能時間が経過した後は、車両1から応答要求信号を受信しても応答信号を送信しない。このため、リレーアタックなどの不正な方法によって認証されて、車両1が盗難される虞を回避することが可能となる。
【0027】
[携帯機100の構成]
図2には、携帯機100の内部構成を示している。携帯機100は、上述した身体情報読取器100dの他に、無線通信部101、報知部104、設定スイッチ105、記憶部106、振動センサ107、制御部110を備えている。
【0028】
無線通信部101は、送信部102と受信部103とを備えている。送信部102は、制御部110から入力された信号を、変調および増幅等してアンテナ100aから電波として送信する。受信部103は、アンテナ100aが受信した電波を、増幅および復調等して車両信号を取り出し、その車両信号を制御部110に入力する。
【0029】
報知部104は、音、光、振動のいずれか1種類以上により、携帯機100を使用する者に情報を提供する部分である。この報知部104には、スピーカ、表示灯、振動体を用いることができる。設定スイッチ105は、送信可能時間を変更する際に、ユーザーが操作するスイッチである。
【0030】
記憶部106は、書き込み可能になっており、正規データが記憶されている。正規データは、正規のユーザーの身体情報から定まるデータであり、たとえば、その身体情報の特徴量を示すデータである。記憶部106には、他に、送信可能時間と、携帯機100が正規の携帯機であることを示すキー認証コードも記憶されている。また、記憶部106には、身体情報の認証に成功した場合には、そのことを示す身体認証結果も記憶される。振動センサ107は、携帯機100に生じる振動を検出するセンサである。
【0031】
制御部110は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、制御部110は、CPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。ROMには、汎用的なコンピュータを制御部110として機能させるためのプログラムが格納されている。CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、制御部110は、身体情報取得部111、身体情報認証部112、計時部113、送信可能時間変更部114、車両信号取得部115、経過時間判断部116、応答信号生成部117として機能する。これらの機能が実行されることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。
【0032】
身体情報取得部111は、身体情報読取器100dに接続されており、身体情報読取器100dが読み取った身体情報を取得する。身体情報取得部111は、読み取った身体情報を身体情報認証部112に出力する。
【0033】
身体情報認証部112は、身体情報取得部111から身体情報が入力されると、その身体情報が正規のユーザーの身体情報であるかどうかを確認する認証を実行する。認証には、身体情報から定まる認証用データと正規データとを用いる。認証用データは、たとえば、身体情報から抽出できる特徴量である。また、身体情報そのものを認証用データとしてもよい。身体情報認証部112は、取得した身体情報が正規のユーザーの身体情報であると判断した場合には、認証に成功したことを示す身体認証結果を記憶部106に記憶する。
【0034】
計時部113は、身体情報認証部112で認証に成功し、身体認証結果が記憶部106に記憶されてからの経過時間を計測する。
【0035】
送信可能時間変更部114は、記憶部106に記憶されている送信可能時間を、ユーザーが行う設定スイッチ105の操作に基づいて変更する。さらに、送信可能時間変更部114は、経過時間判断部116が実際に判断を行う際にも送信可能時間を変更することがある。
【0036】
送信可能時間変更部114は、携帯機100が使用される状態であることが検出された場合、経過時間判断部116が実際に判断に用いる送信可能時間を延長する。使用される状態は、使用中である状態および一定時間内に使用される可能性がある状態のいずれかである。
【0037】
本実施形態では、過去一定時間内に振動センサ107により振動が検出されている場合に、携帯機100が使用される状態であるとする。過去一定時間内に振動が検出されていれば、携帯機100がユーザーあるいは車両1とともに移動している状態であると考えることができる。この状態であれば、携帯機100が使用される可能性があるからである。また、送信可能時間変更部114は、解錠信号が受信部103から入力された場合にも、経過時間判断部116の判断に用いる送信可能時間を延長する。なお、経過時間判断部116の判断に用いる送信可能時間を延長する場合には、記憶部106に記憶されている送信可能時間は、そのままとする。
【0038】
車両信号取得部115は、受信部103により入力される車両信号を取得する。車両信号は、車両1から送信される信号であり、応答要求信号が含まれる。車両信号には、他に、車両ドアロックを解錠したことを示す解錠信号がある。車両信号取得部115は、応答要求信号を経過時間判断部116に出力し、解錠信号を送信可能時間変更部114に出力する。
【0039】
経過時間判断部116は、車両信号取得部115から応答要求信号が入力された場合、記憶部106に身体認証結果が記憶されており、かつ、経過時間が送信可能時間内であるかどうかを確認する。記憶部106に身体認証結果が記憶されており、かつ、経過時間が送信可能時間内であれば、応答信号生成部117に応答信号の生成を指示する。一方、経過時間が送信可能時間を超えている場合には、報知部104から、経過時間が送信可能時間を経過していることを報知する。つまり、経過時間が送信可能時間に達した後に応答要求信号を受信した場合には、経過時間が送信可能時間を経過していることを報知する。また、経過時間判断部116は、応答要求信号を取得する前であっても、経過時間が送信可能時間を経過した場合には、そのことを報知部104から報知する。
【0040】
応答信号生成部117は、経過時間判断部116から応答信号の生成を指示された場合に、応答信号を生成し、生成した応答信号を無線通信部101の送信部102に入力する。送信部102は、応答信号が入力されると、その応答信号を変調等してアンテナ100aから電波として送信する。
【0041】
[認証装置20の構成]
図3は、認証装置20の構成を示している。図3に示すように、認証装置20は、記憶装置21と制御装置30とを備えている。記憶装置21には、携帯機100のキー認証コードを照合するための照合データが記憶されている。また、記憶装置21には、正規データも記憶されている。
【0042】
制御装置30は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、認証装置20は、CPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。ROMには、汎用的なコンピュータを認証装置20として機能させるためのプログラムが格納されている。CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、認証装置20は、車両信号生成部31、応答信号取得部32、コード認証部33として機能する。
【0043】
制御装置30は、車内LAN40を介して解錠装置41、駆動力源制御装置42などと接続されている。解錠装置41は、車両ドアロックを施錠および解錠する装置である。駆動力源制御装置42は、車両1に搭載された駆動力源を制御する制御装置である。駆動力源は、エンジンおよびモータの一方または両方である。
【0044】
車両信号生成部31は、車両1から携帯機100へ送信する信号である車両信号を生成する。車両信号には、前述したように、応答要求信号と解錠信号とが含まれる。応答要求信号は、無線通信機10が携帯機100と通信していない状態において、周期的に生成する。解錠信号は、解錠装置41が車両ドアロックを解錠したことを、解錠装置41から車内LAN40を通じて取得した場合に生成する信号である。
【0045】
応答信号取得部32は、携帯機100が送信し、無線通信機10が受信した応答信号を、無線通信機10から取得する。応答信号取得部32は、応答信号を取得した場合に、その応答信号に含まれているキー認証コードをコード認証部33へ出力する。
【0046】
コード認証部33は、キー認証コードを応答信号取得部32から取得した場合、そのキー認証コードと、記憶装置21に記憶されている照合コードとを用いて、コード認証を行う。そして、コード認証に成功した場合には、解錠装置41あるいは駆動力源制御装置42に作動許可信号を出力する。
【0047】
コード認証部33が解錠装置41へ作動許可信号を出力するのは、携帯機100が車両1の外にあると認識できた場合である。携帯機100が車両1の外にあるかどうかの判断は、車外に送信した応答要求信号に携帯機100が応答したか、車内に向けて送信した応答要求信号に携帯機100が応答したかにより判断する。
【0048】
解錠装置41に作動許可信号が出力された後、車両1のドアノブに設けられたアンロックセンサにユーザーが触れると、解錠装置41は車両1のドアロックを解錠する。駆動力源制御装置42に作動許可信号が出力された後、ユーザーにより、プッシュスタートボタンの押下などの駆動力源始動操作がされると、駆動力源が始動可能な状態になる。駆動力源が始動可能な状態は、アクセルペダルが踏み込まれたときに、駆動力源が始動を開始できる状態である。
【0049】
[身体情報認証部112が実行する処理の流れ]
図4を用いて、身体情報認証部112が実行する処理の流れを説明する。ステップ(以下、ステップを省略)S11では、身体情報取得部111から身体情報が入力されたか否かを判断する。この判断結果がNOであれば図4に示す処理を終了する。S11の判断結果がYESであればS12へ進む。
【0050】
S12では、入力された身体情報から特徴量を抽出する。特徴量は、たとえば身体情報が指紋であれば、その指紋を他の指紋と形状的に識別することが可能な特徴を表す数値である。S13では、記憶部106から正規データを読み出す。S14では、S12で抽出した特徴量と、S13で読み出した正規データとを比較して、身体情報取得部111が取得した身体情報が正規のユーザーの身体情報であるかどうかを確認する認証を実行する。
【0051】
S15では、認証に成功したか否かを判断する。認証に成功していない場合には、S16を実行することなく図4の処理を終了する。一方、認証に成功した場合にはS16に進む。S16では、認証に成功したことを示す身体認証結果を記憶部106に記憶する。
【0052】
[応答信号を送信する処理]
図5を用いて、応答信号を送信する際の処理を説明する。図5において、S21、S22、S26は経過時間判断部116が実行し、S23~S25は送信可能時間変更部114が実行し、S27は応答信号生成部117が実行する。
【0053】
S21では、応答要求信号が車両信号取得部115から入力されたか否かを判断する。S21の判断結果がNOであれば図5に示す処理を終了し、S21の判断結果がYESであればS22へ進む。
【0054】
S22では、記憶部106に身体認証結果が記憶されているか否かを判断する。S22の判断結果がNOである場合は図5に示す処理を終了し、S22の判断結果がYESであればS23に進む。
【0055】
S23では、携帯機100が使用される状態であるか否かを判断する。携帯機100が使用される状態であればS25へ進み、携帯機100が使用される状態ではない場合にはS24へ進む。
【0056】
S24では、解錠信号を受信したか否かを判断する。解錠信号を受信した場合にもS25に進む。S25では、記憶部106に記憶されている送信可能時間を、一定時間延長する。したがって、携帯機100が使用される状態である場合、および、解錠情報を受信した場合には、送信可能時間を延長することになる。これらの状態で送信可能時間を延長することで、経過時間が送信可能時間を超えてしまっているために応答信号を送信されないということが抑制される。その結果、ユーザーが車両ドアロックを解錠しようとした場合や、駆動力源を作動させようとした場合などに、ユーザーが意図した作動が行わないということが抑制される。
【0057】
S26では、記憶部106に身体認証結果が記憶されてからの経過時間が送信可能時間内か否かを判断する。S26の判断結果がNOであれば図5に示す処理を終了し、その判断結果がYESであればS27に進む。
【0058】
S27では、応答信号を生成する。この応答信号には、キー認証コードおよび身体認証結果が含まれている。S27では、さらに、生成した応答信号を送信部102に出力する。応答信号が送信部102に出力されると、応答信号は電波として送信される。
【0059】
[第1実施形態のまとめ]
以上、説明した第1実施形態のパッシブエントリシステムでは、携帯機100は、応答要求信号を受信したときの経過時間が送信可能時間内である場合(S26:YES)に身体認証結果を含む応答信号を送信する(S27)。
【0060】
一方、経過時間が送信可能時間を超えていれば(S26:NO)、応答要求信号を受信しても応答信号を送信しない。図6に例示したように、車両1のユーザーが帰宅した際に認証を行って車両1のドアロックを施錠した後、玄関先に携帯機100を放置した場合には、やがて送信可能時間を超えてしまう。中継器5を用いて応答要求信号などの電波が中継されても、送信可能時間を超えた後であれば、携帯機100が応答信号を送信することはない。その結果、いわゆるリレーアタックなどの不正な方法で認証が成立してしまい、車両1が盗難される事態を防止することができる。したがって、高い防犯性能を実現できる。
【0061】
一方、携帯機100を使用する正規のユーザーは、携帯機100を使用するときに送信可能時間を経過しないようなときに予め身体情報を認証しておけば、応答要求を受信したとき身体認証結果が送信される。したがって、利便性の低下も抑制される。
【0062】
また、第1実施形態では、送信可能時間変更部114を備えており、送信可能時間をユーザーの設定操作に基づいて変更できる。これにより、ユーザーは、自宅で身体情報の認証をした後、自宅を出て車両1に乗り込む場合を想定した適切な送信可能時間を設定することができる。このように、ユーザーが送信可能時間を変更できるようにすることで、ユーザー別の事情に応じた適切な送信可能時間を設定できるので、ユーザーの利便性の低下をより抑制しつつ、より高い防犯性を実現できる。
【0063】
また、第1実施形態では、携帯機100が使用される状態であると判断した場合には(S23:YES)、送信可能時間を延長する。これにより、携帯機100を携帯して車両1に向かうときには、送信可能時間が延長される。したがって、正規のユーザーが車両1に乗り込むときに応答信号が送信されず、ドアロックが解錠されない事態を抑制できる。また、記憶部106に記憶されている送信可能時間は変更されないので、携帯機100が使用されていないときの送信可能時間は、相対的に短くなる。そのため、正規のユーザーが携帯機100を使用していないときの防犯性能をより高くすることができる。
【0064】
また、第1実施形態の携帯機100は、解錠信号を受信した場合にも(S24:YES)、送信可能時間を延長する。これにより、車両1に乗り込む時点では送信可能時間に達していなかったが、車両1に乗り込んでから駆動力源を始動させようとしたときには送信可能時間を超えており、車両1を走行させることができないという事態を抑制できる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0066】
前述した第1実施形態では、身体情報の認証を携帯機100が行っていたのに対して、第2実施形態では、身体情報の認証を車両側で行う点において、第2実施形態と第1実施形態は相違する。
【0067】
図7に、第2実施形態の携帯機200の内部構成を示す。この携帯機200は、第1実施形態の携帯機100とは、制御部210が実行する機能が一部相違する。具体的には、制御部210は、第1実施形態の制御部110が備えていた身体情報認証部112を備えておらず、代わりに特徴量抽出部212を備える。また、応答信号生成部217が生成する応答信号の内容が、第1実施形態の応答信号生成部117が生成する応答信号とは相違する。
【0068】
特徴量抽出部212は、身体情報取得部111から身体情報が入力された場合に、その身体情報から特徴量を抽出する。そして、抽出した特徴量を記憶部106に記憶する。記憶部106に、身体情報認証結果に代えて特徴量が記憶されるので、応答信号生成部217が生成する応答信号には、身体認証結果に代えて、記憶部106に記憶されている特徴量が含まれる。この特徴量は認証用データである。
【0069】
図8に、第2実施形態の認証装置1020の内部構成を示す。認証装置1020は、制御装置1030が実行する機能が、第1実施形態の制御装置30とは一部相違する。具体的には、制御装置1030は、第1実施形態の制御装置30が備えていた機能に加えて、身体情報認証部1034を備える。また、コード認証部1033が実行する処理が、第1実施形態のコード認証部33と相違する。さらに、第2実施形態では、第1実施形態では携帯機100の記憶部106に記憶されていた正規データが記憶装置21に記憶されている。
【0070】
身体情報認証部1034は、応答信号取得部32から、応答信号に含まれている特徴量を取得する。また、身体情報認証部1034は、記憶装置21から正規データを取得する。そして、特徴量と正規データとを比較して、特徴量が示す身体情報は正規のユーザーの身体情報であるかどうかを確認する認証を実行する。この認証に成功した場合には、認証に成功したことを示す身体認証結果を、コード認証部1033に入力する。
【0071】
コード認証部1033は、第1実施形態のコード認証部33と同様のコード認証を行う。ただし、コード認証に成功しただけでは、作動許可信号を出力しない。コード認証部1033は、コード認証に成功したことに加えて、身体情報認証部1034から認証に成功したことを示す身体認証結果を取得した場合に作動許可信号を出力する。
【0072】
[第2実施形態のまとめ]
第2実施形態では、身体情報の認証を車両側で行うため、応答信号生成部217が生成する応答信号の内容は第1実施形態と相違する。しかし、経過時間が送信可能時間を超えていれば、携帯機200は応答信号を送信しない点は第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同様、高い防犯性能を実現しつつ、利便性の低下も抑制できる。
【0073】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0074】
<変形例1>
送信可能時間変更部114は、送信可能時間を携帯機100が存在している位置に応じて変更してもよい。位置を検出するために、携帯機100は、現在位置を検出する位置検出装置を備える。また、携帯機100が位置検出装置を備えず、他の携帯端末(スマートフォンなど)と近距離無線通信が可能であれば、他の携帯端末から現在位置を取得してもよい。
【0075】
また、携帯機100は、現在位置に応じて送信可能時間が定まるマップ、あるいは、現在位置に応じて記憶部106に記憶されている送信可能時間を可変する程度が定まるマップを備える。そして、そのマップと現在位置とに基づいて、送信可能時間を変更する。
【0076】
このようにすれば、たとえば、マップにおいて、車両盗難が多い地域では送信可能時間が相対的に短くなるようにしておくことで、より高い防犯性能を実現することができる。
【0077】
<変形例2>
実施形態では、過去一定時間内に振動センサ107により振動が検出されている場合に、携帯機100が使用される状態であるとしていた。しかし、これに代えて、あるいは、これに加えて、過去一定時間内に携帯機100の位置が変化している場合に、携帯機100が使用される状態であるとしてもよい。
【0078】
<変形例3>
第2実施形態では、応答信号に、身体情報から抽出した特徴量を含ませて送信していた。この特徴量に代えて身体情報を応答信号に含ませて送信してもよい。
【0079】
<変形例4>
実施形態に記載した制御部110、210、制御装置30、1030及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより実現されてもよい。あるいは、制御部110、210、制御装置30、1030及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、制御部110、210、制御装置30、1030及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0080】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:車両 5:中継器 10:無線通信機 10a:車載アンテナ 20:認証装置 21:記憶装置 30:制御装置 31:車両信号生成部 32:応答信号取得部 33:コード認証部 40:車内LAN 41:解錠装置 42:駆動力源制御装置 100:携帯機 100a:アンテナ 100d:身体情報読取器 101:無線通信部 102:送信部 103:受信部 104:報知部 105:設定スイッチ 106:記憶部 107:振動センサ 110:制御部 111:身体情報取得部 112:身体情報認証部 113:計時部 114:送信可能時間変更部 115:車両信号取得部 116:経過時間判断部 117:応答信号生成部 200:携帯機 210:制御部 212:特徴量抽出部 217:応答信号生成部 1020:認証装置 1030:制御装置 1033:コード認証部 1034:身体情報認証部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8