(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】取水ゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/26 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
E02B7/26 Z
(21)【出願番号】P 2019020048
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 悠人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 直人
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一幸
(72)【発明者】
【氏名】善 幸生
(72)【発明者】
【氏名】河原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】諸住 悟
(72)【発明者】
【氏名】常松 弘章
(72)【発明者】
【氏名】南 誠人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 暢
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-273400(JP,A)
【文献】特開2001-271331(JP,A)
【文献】実公昭48-000908(JP,Y1)
【文献】特開2004-285804(JP,A)
【文献】特開2004-028852(JP,A)
【文献】実開昭58-010928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降して水路を開閉可能な扉体と、
前記扉体から上方に延び、外周に雄ねじ部が形成された軸体と、
前記軸体の雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が内周側に形成され、前記軸体の中心軸の軸回り方向に回転すると共に当該回転によって前記中心軸の軸線方向に直動するハンドルと、
前記ハンドルを回転させて前記扉体を昇降させる際に、前記扉体の荷重が前記軸体を介して印加される前記ハンドルの下端に当接して当該ハンドルを支持可能な支持部材と、
前記ハンドルに吊り下げられ、前記扉体が上昇して開いた状態から前記ハンドルを回転させて前記扉体が下降して閉じた状態になるまでの間は前記支持部材に当接し、前記扉体が閉じた状態から更に前記ハンドルを回転させて当該ハンドルの下端が前記支持部材から離隔した状態では前記支持部材から上方に離隔している、吊下げ部材と、を備える
取水ゲート。
【請求項2】
前記軸体の外周には、前記扉体の閉状態において少なくとも一部が露出される表示が形成されている
請求項1に記載の取水ゲート。
【請求項3】
前記表示は、塗装部分である
請求項2に記載の取水ゲート。
【請求項4】
前記吊下げ部材は、変形可能である
請求項1~3のいずれか1項に記載の取水ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
取水ゲートは、スピンドルロッドと、扉体と、ハンドル(昇降機構)と、を備える。スピンドルロッドは、上下方向に延び外周に雄ねじ部が形成される。扉体は、スピンドルロッドの下端に固定される。ハンドルは、スピンドルロッドの雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部を有し、回転させることでスピンドルロッドを昇降させる。スピンドルロッドには、刻印が施される。当該刻印により、扉体の上下位置が目視で視認可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の取水ゲートでは、スピンドルロッドに刻印を施しているが、当該刻印が外側から視認しにくくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたもので、扉体が閉状態となっていることが容易に視認することができる取水ゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る取水ゲートは、昇降して水路を開閉可能な扉体と、前記扉体から上方に延び、外周に雄ねじ部が形成された軸体と、前記軸体の雄ねじ部に噛み合う雌ねじ部が内周側に形成され、前記軸体の中心軸の軸回り方向に回転すると共に当該回転によって前記中心軸の軸線方向に直動するハンドルと、前記ハンドルを回転させて前記扉体を昇降させる際に、前記扉体の荷重が前記軸体を介して印加される前記ハンドルの下端に当接して当該ハンドルを支持可能な支持部材と、前記ハンドルから吊り下げられ、前記扉体が上昇して開いた状態から前記ハンドルを回転させて前記扉体が下降して閉じた状態になるまでの間は前記支持部材に当接し、前記扉体が閉じた状態から更に前記ハンドルを回転させて当該ハンドルの下端が前記支持部材から離隔した状態では前記支持部材から上方に離隔している、吊下げ部材と、を備える。
【0007】
ハンドルを回転させて扉体を下降させる途中の状態では、扉体の荷重は軸体及びハンドルを介して支持部材で支持される。この状態では、吊下げ部材は支持部材に当接している。扉体が下端まで下降して閉状態になった状態においても、吊下げ部材は支持部材に当接する。しかし、ハンドルを更に回転させて支持部材から上昇して離隔される状態では、吊下げ部材が支持部材から離隔する。即ち、吊下げ部材が支持部材から離隔していれば、扉体が閉状態となっているため、吊下げ部材の視認によって扉体が閉状態であることが容易に認識することができる。
【0008】
取水ゲートの望ましい態様として、前記軸体の外周には、前記扉体の閉状態において少なくとも一部が露出される表示が形成されている。
【0009】
ハンドルを回転させて扉体を下降させている途中の状態では、表示がハンドルに隠れて視認しにくい場合がある。ハンドルを更に回転させて扉体が閉状態となるとき、表示の少なくとも一部が露出されるため、扉体が閉状態となっていることが容易に視認することができる。
【0010】
取水ゲートの望ましい態様として、前記表示は、塗装である。
【0011】
これによれば、塗装は、軸体の外周に容易に施すことができるため、簡単な作業で表示を設けることができる。
【0012】
取水ゲートの望ましい態様として、前記吊下げ部材は、変形可能である。
【0013】
これによれば、ハンドルを回転させる際に、吊下げ部材が支持部材に当たった場合でも、吊下げ部材の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吊下げ部材によって、扉体が全閉状態となったことが容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体を下降して閉じている途中の状態を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体が閉じた状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体を閉じた後にハンドルを更に回転させて上昇している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0017】
また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体を下降して閉じている途中の状態を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る取水ゲート1は、扉体10と、軸体20と、ハンドル30と、支持部材40と、吊下げ部材50と、を備える。
【0019】
扉体10は、上下方向に移動して水路11を開閉可能である。水路11は、農業用水路及びダム貯水池などの水12が流れる流路である。
図1のように、扉体10が上昇して開状態となると水路11に水12が流れる。扉体10が下端の位置まで下降して閉状態となると、水路11の水12が堰き止められる。扉体10は、矩形状の板状部材である。
【0020】
軸体20は、扉体10の上端10aから上方に向けて延びている。即ち、軸体20の中心軸AXは、上下方向に沿って延びている。軸体20の下端20bは、扉体10の幅方向の中央部の上端10aに固定される。軸体20の外周には、上下方向の全長に亘って雄ねじ部20aが設けられる。軸体20の外周には、表示21が施される。表示21は、例えば塗装部分22である。雄ねじ部20aの表面を粗く加工して塗装を施すことにより、塗装部分22が剥がれにくくなっている。
【0021】
ハンドル30は、軸体20の中心軸AX回りに回転可能である。ハンドル30の径方向中央部には、貫通孔31が設けられ、貫通孔31の内周面には雌ねじ部32が設けられている。雌ねじ部32は、軸体20の雄ねじ部20aと噛み合う。従って、ハンドル30を回転させると、ハンドル30は軸体20の中心軸AXの軸回り方向に回転すると共に当該回転によって中心軸AXの軸線方向に直動する。
【0022】
支持部材40は、矩形状の枠体である。支持部材40は、下部41と、側部42と、上部43と、ハンドル受け部44と、を有する。
【0023】
下部41は、幅方向に延びる。側部42は、下部41の幅方向の端部から上方に延びる。上部43は、側部42の上端から幅方向に延びる。ハンドル受け部44は、上部43の幅方向中央部の上面43aに設けられる。ハンドル受け部44は、円環状の部位であり、径方向中央部に上下方向に貫通する貫通孔45が設けられる。なお、ハンドル受け部44の貫通孔45に対応する上部43の部位にも貫通孔43bが設けられる。
【0024】
このように、軸体20は、上部43の貫通孔43b及びハンドル受け部44の貫通孔45を貫通して上下方向に延びている。また、支持部材40は、ハンドル30を回転させて扉体10を昇降させる際にハンドル30に作用する扉体10の荷重を支持可能である。即ち、ハンドル30の径方向中央部の下端は、ハンドル受け部44に当接する。ハンドル30は、軸体20と噛み合っているため、扉体10の荷重は軸体20及びハンドル30を介してハンドル受け部44に印加される。つまり、ハンドル30には下向きの荷重が印加され、当該荷重はハンドル受け部44を含む支持部材40で支持される。
【0025】
吊下げ部材50は、ハンドル30の外周端部から下方に延びる。吊下げ部材50は、変形可能である。例えば、鎖状部材、及び、ひも状部材のように外部荷重が印加された場合に変形し、外部荷重が除去された場合に、変形が元に戻って上下方向に沿って直線状に延びる部材が適用可能である。
【0026】
次いで、扉体10を開閉させる手順を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体が閉じた状態を示す。
図3は、本発明の実施形態に係る取水ゲートの模式図であり、扉体を閉じた後にハンドルを更に回転させて上昇している状態を示す。
【0027】
まず、
図1に示すように、扉体10が下降途中の状態では、軸体20がハンドル30に噛み合っているため、扉体10及び軸体20の荷重がハンドル30に印加される。ハンドル30は、ハンドル受け部44の上端に支持される。従って、扉体10及び軸体20の荷重がハンドル30及びハンドル受け部44を介して支持部材40に印加される。このように、扉体10及び軸体20の荷重が支持部材40で支持される。このとき、軸体20の塗装部分22は、全ての部分が露出している。また、吊下げ部材50の下端部50aは、支持部材40の上部43の上面43aに当接している。
【0028】
そして、
図1の矢印に示す方向にハンドル30を回転させると、扉体10は下降し、
図2に示すように、扉体10の下端10bが支持部材40の下部41の上端に当接する。これによって、扉体10が閉状態となる。このとき、軸体20の塗装部分22は、上端部22aのみ(一部)が露出している。また、吊下げ部材50の下端部50aは、支持部材40の上部43の上面43aに当接している。
【0029】
図3に示すように、ハンドル30を更に回転させるとハンドル30は軸体20に沿って上昇し、ハンドル30の径方向中央部の下端はハンドル受け部44から上方に離隔する。このとき、軸体20の塗装部分22は、ハンドル30で隠れていた部分(
図2に示す)が露出している。また、吊下げ部材50の下端部50aは、支持部材40の上部43の上面43aから上方に離隔している。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る取水ゲート1は、昇降して水路11を開閉可能な扉体10と、扉体10から上方に延び、外周に雄ねじ部20aが形成された軸体20と、軸体20の雄ねじ部20aに噛み合う雌ねじ部が内周側に形成され、軸体20の中心軸の軸回り方向に回転すると共に当該回転によって前記中心軸の軸線方向に直動するハンドル30と、ハンドル30を回転させて扉体10を昇降させる際に、扉体10の荷重が軸体20を介して印加されるハンドル30の下端に当接してハンドル30を支持可能な支持部材40と、ハンドル30から吊り下げられ、扉体10が上昇して開いた状態からハンドル30を回転させて扉体10が下降して閉じた状態になるまでの間は支持部材40に当接し、扉体10が閉じた状態から更にハンドル30を回転させてハンドル30の下端が支持部材40から離隔した状態では支持部材40から上方に離隔している、吊下げ部材50と、を備える。
【0031】
ハンドル30を回転させて扉体10を下降させる途中の状態では、扉体10の荷重は軸体20及びハンドル30を介して支持部材40で支持される。この状態では、吊下げ部材50は支持部材40に当接している。扉体10が下端まで下降して閉状態になった状態においても、吊下げ部材50は支持部材40に当接する。しかし、ハンドル30を更に回転させて支持部材40から上昇して離隔される状態では、吊下げ部材50が支持部材40から離隔する。即ち、吊下げ部材50が支持部材40から離隔していれば、扉体10が閉状態となっているため、吊下げ部材50の視認によって扉体10が閉状態であることが容易に認識することができる。
【0032】
軸体20の外周には、扉体10の閉状態において少なくとも一部が露出される表示21が形成されている。
【0033】
これによれば、ハンドル30を回転させて扉体10を下降させている途中の状態では、表示21がハンドル30に隠れて視認しにくい場合がある。ハンドル30を更に回転させて扉体10が閉状態となるとき、表示21の少なくとも一部が露出されるため、扉体10が閉状態となっていることが容易に視認することができる。
【0034】
表示21は、塗装部分22である。塗装部分22は、軸体20の外周に容易に施すことができるため、簡単な作業で表示21を設けることができる。
【0035】
吊下げ部材50は、変形可能である。これによれば、ハンドル30を回転させる際に、吊下げ部材50が支持部材40に当たった場合でも、吊下げ部材50の損傷を抑制することができる。
【0036】
なお、前記実施形態はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0037】
例えば、吊下げ部材50をハンドル30の外周部に設けたが、吊下げ部材50はハンドル30の内周部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 取水ゲート
10 扉体
11 水路
20 軸体
20a 雄ねじ部
21 表示
22 塗装部分
30 ハンドル
40 支持部材
50 吊下げ部材