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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/22 20060101AFI20221129BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20221129BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F02D41/22
F02M61/16 W
F02D45/00 374
F02D45/00 376
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019030575
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020133551
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】大久保 信哉
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-112735(JP,A)
【文献】特開2016-098720(JP,A)
【文献】特表2007-506038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/22
F02M 61/16
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1駆動対象(8)及び第2駆動対象(9)を含む複数の駆動対象を駆動制御する電子制御装置(1)であって、
前記複数の駆動対象ごとに駆動指令パルスを出力するマイコン(2)と、
前記複数の駆動対象を駆動制御する期間が時間的に重なることがないように、前記駆動指令パルスが入力される度に前記駆動指令パルスに対応した前記駆動対象を駆動制御する回路制御部(21)、故障の検出を有効又は無効と設定するための故障検出設定が有効とされていることを条件として前記駆動対象毎に故障を検出する故障検出部(22)、前記故障検出部により検出される前記駆動対象毎の故障状態と前記故障検出設定とを記憶するレジスタ(24)、を有する駆動制御部(3)と、
を備え、
正常動作中には前記レジスタに前記複数の駆動対象の前記故障検出設定が有効と記憶されており、
前記故障検出部が前記複数の駆動対象のうち1つ以上の前記第2駆動対象の前記故障状態を開放故障と検出することで前記回路制御部が前記開放故障と検出された前記第2駆動対象と共に当該第2駆動対象に並列接続された前記第1駆動対象を含む複数の駆動対象を駆動制御不能とする場合、前記マイコンは、前記複数の駆動対象のうち正常に駆動制御可能な前記第1駆動対を制御するときには、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障検出設定を前記有効から無効に書き換えた(S6)後、前記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障の状態を正常として書き換える(S7)ことで前記故障検出部により故障検出処理が実行されずに前記開放故障が無視され、前記マイコンが、前記書き換えられた前記第2駆動対象の前記故障の状態を参照して正常と判定し前記正常に駆動制御可能な前記第1駆動対象に対する前記駆動指令パルスを出力する電子制御装置。
【請求項2】
前記マイコンが前記正常に駆動制御可能な前記第1駆動対象に対する前記駆動指令パルスを出力する前に
記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障検出設定を前記有効から無効に書き換え(S6、S8)後、前記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障の状態を正常として書き換える(S7)ことで前記故障検出部により故障検出処理が実行されずに前記開放故障が無視され、前記マイコンが、前記書き換えられた前記第2駆動対象の前記故障の状態を参照して正常と判定する請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障の状態を正常として書き換えた(S7)後、前記マイコンが、前記正常に駆動制御可能な前記第1駆動対象に対する前記駆動指令パルスを出力完了した後に、前記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障検出設定を前記無効から有効に書き換える(S12)ことで、前記故障検出部による前記第2駆動対象の故障検出処理を有効として前記故障検出部により前記第2駆動対象の故障を検出させる請求項2記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記マイコンは、前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障の状態を正常として書き換えた(S7)後、前記マイコンが、前記正常に駆動制御可能な前記第1駆動対象に対する前記駆動指令パルスを複数回出力完了した後に、前記マイコンは前記開放故障が検出された前記第2駆動対象の前記故障検出設定を前記無効から有効に書き換える(S12)ことで、前記故障検出部による前記第2駆動対象の故障検出処理を有効として前記故障検出部により前記第2駆動対象の故障を検出させる請求項2記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエンジンECUは、燃料噴射用のインジェクタ等の駆動対象を制御するため、高度な処理を可能にするASICを活用している。ASICは、マイコンから入力される駆動指令パルスに対応して駆動対象を駆動制御する回路制御機能と、接続された駆動対象の故障を検出する故障検出機能を有する。複数の駆動対象を駆動制御する期間が時間的に重なることがない場合、コスト削減のため共通の回路制御部に両駆動対象を並列接続して制御する構成を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-71384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術欄にて説明した構成では、少なくとも何れかの駆動対象に異常が発生した場合、回路制御部は、異常を検知した両駆動対象の電流駆動制御を安全のため強制停止させることになる。例えば、地絡故障や天絡故障が生じた場合、両駆動対象の制御回路に悪影響が生じるため、両駆動対象に対する電流駆動を強制停止すると良い。他方、開放故障が生じた場合、正常側の駆動対象の制御回路には何ら悪影響はないものの、この場合も正常側の駆動対象が強制停止されることになり、正常側の駆動対象を駆動制御できなくなってしまう。
【0005】
例えば、直列4気筒エンジンでは、4つのインジェクタを2つの回路制御部により制御する構成を採用しているが、何れか1つのインジェクタに開放故障が生じた場合、2つのインジェクタの駆動制御が不能となるため、残りの2つのインジェクタしか駆動制御できなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、複数の駆動対象を駆動制御するときに、一方の駆動対象が開放故障した場合であっても、正常側の駆動対象を駆動制御できるようにした電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、マイコン(2)が、第1駆動対象及び第2駆動対象を含む複数の駆動対象ごとに駆動指令パルスを出力すると、駆動制御部(3)の回路制御部(21)は、複数の駆動対象を駆動制御する期間が時間的に重なることがないよう駆動指令パルスが入力される度に駆動指令パルスに対応した駆動対象を駆動制御する。駆動制御部(3)の故障検出部(22)は、故障の検出を有効又は無効と設定するための故障検出設定が有効とされていることを条件として駆動対象毎に故障を検出する。駆動制御部(3)のレジスタ(24)は、故障検出部により検出される駆動対象毎の故障状態と故障検出設定とを記憶する。
【0008】
故障検出部が、複数の駆動対象のうち1つ以上の第2駆動対象(9)の故障状態を開放故障と検出することで、回路制御部が開放故障と検出された第2駆動対象と共に当該第2駆動対象に並列接続された第1駆動対象を含む複数の駆動対象を駆動制御不能としている場合であっても、マイコンは複数の駆動対象のうち正常に駆動制御可能な第1駆動対象(8)を制御するときには、開放故障が検出された第2駆動対象の故障検出部による故障検出設定を有効から無効に書き換えた後、マイコンが開放故障が検出された第2駆動対象の故障の状態を正常として書き換えることで故障検出部により故障検出処理が実行されなくなり、故障検出部は開放故障を無視する。マイコンが正常に駆動制御可能な第1駆動対象(8)を制御するときに、書き換えられた第2駆動対象の故障の状態を参照して正常と判定し第1駆動対象の駆動指令パルスを出力すれば、回路制御部は、駆動指令パルスに対応した第1駆動対象を正常に駆動制御できる。この結果、一方の第2駆動対象が開放故障した場合であっても、正常側の第1駆動対象を駆動制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】燃料噴射制御システムの電気的構成図
図2】地絡故障の説明図
図3】天絡故障の説明図
図4】開放故障の説明図
図5】第1駆動対象の駆動指令パルスの出力前イベントの処理内容を説明するフローチャート
図6】第1駆動対象の駆動指令パルスの出力完了イベントの処理内容を説明するフローチャート
図7】通常時の故障状態、故障検出設定を示すタイミングチャート
図8】第2駆動対象の開放故障発生時における故障状態、故障検出設定を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の駆動対象を駆動制御する電子制御装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。まず図1を参照し、電子制御装置1の構成を説明する。
電子制御装置1は、マイコン2、駆動制御部3、上流スイッチング素子4、第1下流スイッチング素子5、第2下流スイッチング素子6、及び電流検出抵抗7を備え、外部に接続された第1駆動対象8及び第2駆動対象9を駆動制御する。第1駆動対象8及び第2駆動対象9は、例えばソレノイド式のインジェクタを適用できる。
【0011】
マイコン2は、演算コア11、ROM12、RAM13、割込処理部14、タイマユニット15、及び第1周辺I/O16を内部バス17によって接続して構成される。駆動制御部3は、回路制御部21、故障検出部22、電流検出部23、レジスタ24、及び第2周辺I/O25を内部バス26により接続して構成される。
【0012】
マイコン2と駆動制御部3とは第1周辺I/O16及び第2周辺I/O25の間の通信バス31を通じて通信データを入出力可能になっている。また、マイコン2は、第1周辺I/O16及び第2周辺I/O25を通じて専用の通信線32により駆動制御部3に駆動指令パルスを出力可能になっている。
【0013】
マイコン2のROM12には、マイコン2の制御プログラムが記憶されており、マイコン2はROM12に記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を行う。RAM13には、各駆動対象8、9の故障状態や故障検出設定を記憶する記憶領域(ワークエリア)が確保されている。マイコン2には、1つ以上の演算コア11が組み込まれており、演算コア11は各駆動対象8、9の駆動タイミングを演算し、駆動指令パルスのオン/オフの出力タイミングをタイマユニット15にセットする。また、マイコン2は、第2周辺I/O25及び第1周辺I/O16を通じて駆動制御部3の故障検出部22により検出された故障状態を取得可能になっている。またマイコン2は、駆動制御部3の故障検出部22による故障検出設定を有効・無効の何れかに書換可能に構成されている。
【0014】
周辺機能としてマイコン2に実装されるタイマユニット15は、所定タイミングごとにカウントアップするフリーランタイマを内蔵する。タイマユニット15は、事前に指定された駆動指令パルスの出力タイミングとフリーランタイマとがコンペアマッチしたときに駆動指令パルスをオン又はオフする。タイマユニット15は、事前に指定されたイベントタイミングとフリーランタイマとがコンペアマッチしたときに、割込処理部14に対して割込要因を送信し、出力前イベントや出力完了イベントを発行する。割込処理部14は割込要因を受信すると、演算コア11に対し割込通知を行う。
【0015】
図1に示すように、第1駆動対象8及び第2駆動対象9は並列接続されている。上流スイッチング素子4及び第1下流スイッチング素子5は、第1駆動対象8に流す電流をオン・オフ制御するための電子部品である。上流スイッチング素子4及び第2下流スイッチング素子6は、第2駆動対象9に流す電流をオン・オフ制御するための電子部品である。
【0016】
上流スイッチング素子4は、バッテリ電圧を駆動対象8、9に通電するためのスイッチング素子、及び、バッテリ電圧よりも高い昇圧電圧を駆動対象8、9に通電するためのスイッチング素子を並列接続して構成されるが、ここでは簡略化して図示している。この図1には、バッテリ又は昇圧電源による電源V0を第1駆動対象8及び第2駆動対象9に供給する回路形態を図示している。
【0017】
各スイッチング素子4~6は、駆動対象8、9に大電流を流す場合にはMOSFETを用いるが、バイポーラトランジスタ等のスイッチング素子を用いても良い。第1駆動対象8及び第2駆動対象9の上流には、上流スイッチング素子4が設置されており、第1駆動対象8及び第2駆動対象9の下流には第1下流スイッチング素子5及び第2下流スイッチング素子6が設置されている。上流スイッチング素子4と第1下流スイッチング素子5とが同時にオンしている間、第1駆動対象8に電流が流れる。上流スイッチング素子4と第2下流スイッチング素子6とが同時にオンしている間、第2駆動対象9に電流が流れる。したがって、第1下流スイッチング素子5又は第2下流スイッチング素子6の何れかがオンされることによって第1駆動対象8及び第2駆動対象9に対し選択的に通電できる。
【0018】
駆動制御部3は、例えばASICにより構成される。レジスタ24は、第1駆動対象8及び第2駆動対象9の故障状態を保存する故障状態レジスタ、並びに、故障検出設定の有効又は無効を保存する故障検出設定レジスタを備える。故障状態レジスタは、第1駆動対象8、第2駆動対象9ごとに設けられており、それぞれ正常又は異常を示す識別符号を記憶するが、異常を示すときには地絡故障、天絡故障、開放故障の何れであるかを示す識別符号を記憶する。
【0019】
地絡故障は、駆動対象8又は9の上流もしくは下流がグランド電位に短絡する故障を示す。図2に示す例は、第2駆動対象9の上流にて地絡故障した場合を示している。この場合、第1駆動対象8には通電できないため、第1駆動対象8も第2駆動対象9も駆動制御できない。
【0020】
天絡故障は、駆動対象8又は9の上流もしくは下流が電源V0に短絡する故障を示している。図3に示す例は、第1駆動対象8及び第2駆動対象9の上流が電源V0に天絡故障した場合を示している。この場合、回路制御部21が、上流スイッチング素子4をオフ制御してもオン制御した場合と比較して、各部が同電位となることから、第1駆動対象8も第2駆動対象9も駆動制御できない。
【0021】
開放故障は、断線により第1駆動対象8又は第2駆動対象9の接続が開放される故障を示している。図4に示す例は、第2駆動対象9の接続端子が開放している場合の例を示している。この場合、第1駆動対象8にとっては回路的に何ら悪影響はないため、第1駆動対象8の電流駆動制御は回路的に可能である。このため本形態では、このような条件下にて第1駆動対象8を駆動制御する形態を示す。
【0022】
前述の故障が生じていないときには、通常、回路制御部21は、マイコン2から駆動指令パルスが入力される度に駆動指令パルスに対応した第1駆動対象8又は第2駆動対象9を駆動制御する。具体的には、回路制御部21は、マイコン2から入力される駆動指令パルスがオンの間、対象となる駆動対象8又は9の下流スイッチング素子5又は6をオン制御しつつ、上流スイッチング素子4をオン・オフ制御する。これにより、回路制御部21は、第1駆動対象8及び第2駆動対象9を駆動制御する期間を時間的に互いに重ならないようにすることが可能である。本形態では、回路制御部21は、第1駆動対象8及び第2駆動対象9に同時に通電制御することはない。
【0023】
レジスタ24中の故障状態レジスタに異常である旨が保存されている場合、駆動指令パルスがオン入力されても、回路制御部21は、上流スイッチング素子4、下流スイッチング素子5及び6をオフのまま維持するように構成されている。電流検出部23は、電流検出抵抗7にかかる電位差から第1駆動対象8又は第2駆動対象9に流れる電流値を計測し、回路制御部21にフィードバックする。
【0024】
駆動制御部3の故障検出部22は、第1駆動対象8及び第2駆動対象9の故障を検出する機能を備えており、マイコン2から故障検出設定が有効とされていることを条件として駆動対象8、9毎の故障を検出する。故障検出設定が無効とされているときには、故障検出部22は駆動対象8、9の故障検出処理を実行しない。故障検出部22は、各駆動対象8、9の上流・下流の端子電位を入力して故障を検出するように構成され、各駆動対象8、9の上流・下流の端子電位と上流スイッチング素子4、第1下流スイッチング素子5及び第2下流スイッチング素子6のオン・オフ状態とに基づいて、第1駆動対象8又は第2駆動対象9が故障しているか否かを検出する。
【0025】
本形態に特徴的な作用、動作を説明する。以下、マイコン2が第1駆動対象8を制御するときに実行される処理内容を説明する。
<第1駆動対象8の駆動指令パルスの出力前イベント>
マイコン2が、クランク角センサやカム角センサ等の各種センサのセンサ信号に基づいて第1駆動対象8を制御するときに、駆動制御部3に駆動指令パルスを出力する。マイコン2は、駆動指令パルスの出力タイミングをセットするときに、図5に示す出力前イベントを実行する。
【0026】
図5に示すように、マイコン2は、出力前イベントにおいて駆動制御部3と通信することで、S1において第1駆動対象8と第2駆動対象9の故障状態レジスタをリードし、故障状態レジスタをクリア指示する。マイコン2は、S2においてリードした値を、RAM13の故障状態記憶領域(「故障状態RAM領域」と図示)にストアする。なお、各駆動対象8、9の開放故障、地絡故障、天落故障の何れかの故障状態が継続している場合には、マイコン2が故障状態レジスタをクリア指示したとしても、回路制御部21は、レジスタ24中の故障状態レジスタの値を再び故障状態に書き戻す。
【0027】
マイコン2は、S3においてRAM13の故障状態記憶領域を参照し、第1駆動対象8の故障状態が正常と記憶されているか、異常(開放故障、地絡故障、天絡故障)と記憶されているかを判定する。マイコン2は、何らかの異常(開放故障、地絡故障、天絡故障)と記憶されていれば、駆動指令パルスをセットすることなく処理を終了する。
【0028】
また、マイコン2は、第1駆動対象8の故障状態が正常と記憶されているときには、S4において第2駆動対象9の故障状態を確認する。マイコン2は、第2駆動対象9の故障状態が「正常」として記憶されていれば、通常通り、S8において駆動指令パルスの出力タイミングをタイマユニット15にセットする。これにより、タイマユニット15が駆動指令パルスの出力タイミングにコンペアマッチしたことを確認すれば、駆動指令パルスは駆動制御部3に出力されることになる。
【0029】
このように、第1駆動対象8も第2駆動対象9も異常が生じておらず正常動作する場合、図7のタイミングチャートに示すように、マイコン2のRAM13の第1駆動対象8、第2駆動対象9の各故障状態記憶領域には「正常」である旨が記憶される。また、第1駆動対象8、第2駆動対象9の各故障検出設定領域(故障検出設定RAM領域と図示)にも「有効」である旨が記憶される。また、駆動制御部3内の第1駆動対象8、第2駆動対象9の各故障状態レジスタには「正常」である旨が記憶され、故障検出設定レジスタにも「有効」である旨が記憶される。
【0030】
また図8に示すように、あるタイミングt0において第2駆動対象9に開放故障が生じると、故障検出部22は、第2駆動対象9の端子電位を検出し、各スイッチング素子4~6のオン・オフ状態に基づいて開放故障である旨を判定し、レジスタ24中の第2駆動対象9の故障状態レジスタに「開放故障」である旨を記憶させる。
なお、駆動制御部3の回路制御部21は、このタイミングt0以降、たとえ第1駆動対象8、第2駆動対象9の何れかの駆動指令パルスがマイコン2から入力されても、第2駆動対象9の故障状態レジスタに何らかの異常(開放故障、地絡故障、天絡故障)であることが記憶されていれば、各スイッチング素子4~6をオフ制御することで駆動制御を強制停止することになる。
【0031】
マイコン2は、図5のS4において第2駆動対象9の故障状態が地絡故障又は天絡故障による異常と判定したときには、第1駆動対象8の電流駆動制御は不可能であるため、マイコン2は、第1駆動対象8の駆動指令パルスの出力時間タイミングをセットすることなく処理を終了する。
【0032】
マイコン2は、図5のS4において第2駆動対象9の故障状態が開放故障による異常と判定したときには、図5のS5~S7の処理を実行した後に、S8において駆動指令パルスの出力タイミングをタイマユニット15にセットする。
図8のタイミングt0においては、レジスタ24中の第2駆動対象9の故障状態レジスタに「開放故障」と記憶されている。このため、駆動指令パルスの出力前イベントにおいて、マイコン2が、図5のS4において第2駆動対象9の故障状態が開放故障による異常であると判定すると、マイコン2は、S5において第2駆動対象9のRAM13の故障検出設定記憶領域を「有効」から「無効」に書き換えセットする。図8のタイミングt1参照。その後、マイコン2は、図5のS6において駆動制御部3との通信によりレジスタ24内の第2駆動対象9の故障検出設定レジスタも「有効」から「無効」に書き換えセットする。図8のタイミングt1参照。
【0033】
次に、マイコン2は、図5のS7において駆動制御部3のレジスタ24中の故障状態レジスタを再度リードし、第1駆動対象8及び第2駆動対象9(特に第2駆動対象9)の故障状態レジスタをクリアすることで「正常」に書き換える。図8のタイミングt1参照。これにより、たとえ第2駆動対象9に開放故障が発生していても、故障検出部22は無視するようになる。
【0034】
そしてマイコン2は、S8において第1駆動対象8の駆動指令パルスの出力タイミングをタイマユニット15にセットする。これにより、タイマユニット15がタイマによりコンペアマッチしたことを確認すれば、マイコン2は、第1駆動対象8の駆動指令パルスを駆動制御部3に出力することになる。
図8のタイミングt1~t2に示すように、第1駆動対象8の駆動指令パルスの出力ウィンドウでは、第2駆動対象9の故障状態レジスタが「正常」と記憶されているため、駆動指令パルスに同期して、第1駆動対象8を正常に駆動制御でき、第1駆動対象8に通電される。この場合、マイコン2が駆動指令パルスを複数回出力すれば、駆動制御部3は、第1駆動対象8のインジェクタから多段噴射できることになる。
【0035】
<第1駆動対象8の駆動指令パルスの出力完了イベント>
マイコン2は、駆動制御部3に駆動指令パルスを出力完了したときには、図6に示す出力完了イベントを実行する。
【0036】
図6に示すように、マイコン2は、第1駆動対象8の出力完了イベントにおいてRAM13内の第2駆動対象9の故障検出設定領域に「有効」と記憶されているか「無効」と記憶されているか判定する。そしてマイコン2は、RAM13内の第2駆動対象9の故障検出設定領域に「有効」と記憶されていれば、何の処理も実行せずに終了する。
他方、マイコン2は、RAM13内の第2駆動対象9の故障検出設定領域に「無効」と記憶されていれば、S11においてRAM13内の第2駆動対象9の故障検出設定領域を「有効」に書き換えセットする。またマイコン2は、S12において駆動制御部3のレジスタ24内の故障検出設定レジスタを「有効」に書き換えセットする。
【0037】
これにより、図8に示す第1駆動対象8の出力ウィンドウの外では、故障検出部22による故障検出処理が有効とされ、故障検出部22が第2駆動対象9の故障を検出でき、第2駆動対象9の故障状態レジスタに「開放故障」と記憶される。図8のタイミングt2参照。
【0038】
なお仮に、マイコン2から第1駆動対象8、第2駆動対象9の何れの駆動指令パルスが入力されても、駆動制御部3の回路制御部21は駆動指令パルスを無視し各スイッチング素子4~6をオフすることで駆動制御を強制停止し続けることになる。このため、マイコン2が、再度故障検出設定レジスタを「無効」にセットしたり故障状態レジスタを「正常」にセットしない限り、駆動指令パルスが入力されても両駆動対象8、9を駆動制御することはない。
【0039】
第1駆動対象8の出力完了イベントにおいて、マイコン2が駆動制御部3と通信することで第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「有効」に書き換える形態を示したが、駆動制御部3は、回路制御部21などを用いて自主的にレジスタ24内の故障検出設定レジスタを「有効」に書き換えても良い。
【0040】
<第2駆動対象9の駆動指令パルスの出力前イベント及び出力完了イベント>
その後、マイコン2は、第2駆動対象9を制御するときには、駆動指令パルスの出力タイミングをセットするため、出力前イベントを実行する。第2駆動対象9の出力前イベントや出力完了イベントの処理内容は、図5及び図6中の「第1駆動対象」と「第2駆動対象」を入れ替えた処理に該当するため、フローチャートの図示を省略している。
【0041】
第2駆動対象9の出力前イベントでは、マイコン2は、図5のS1~S2にて故障状態レジスタの値、すなわち「開放故障」を故障状態記憶領域にストアする。図8のタイミングt3参照。マイコン2は、図5のS3にて第2駆動対象9の故障状態を判定し、「開放故障」であると判定すると図5中の処理を終了する。すなわち、マイコン2は、第2駆動対象9の駆動指令パルスの出力タイミングをタイマユニット15にセットすることなく処理を終了する。これにより、図8のタイミングt3以降では駆動指令パルスを出力することがないため、駆動制御部3は第2駆動対象9を駆動制御することはない。図8の出力ウィンドウBの欄参照。これにより、マイコン2が、第2駆動対象9が開放故障と判定したとした場合、第2駆動対象9を駆動制御することなく、他方の第1駆動対象8のみを駆動制御できるようになる。
【0042】
本実施形態の特徴を以下にまとめる。
例えば、「発明が解決しようとする課題」欄に例示したように、第2駆動対象9の開放故障が発生した場合、第1駆動対象8、第2駆動対象9の何れかの駆動指令パルスがオンであったときに、この状態を無視して両駆動対象8、9の駆動制御を安全のため強制停止させてしまうと、第1駆動対象8を駆動制御できなくなってしまう。
【0043】
本実施形態によれば、故障検出部22が、第1駆動対象8の故障状態を開放故障として回路制御部21が、第1駆動対象8及び第2駆動対象9を駆動制御不能な状態とされている場合、マイコン2は、正常に駆動制御可能な第1駆動対象8を制御するときに、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「無効」に書き換えている(図5のS6:図8のt1の「無効」)。これにより、一方の第2駆動対象9が開放故障した場合であっても、正常側の第1駆動対象8を駆動制御できるようになる。
【0044】
また、マイコン2が、正常に駆動制御可能な第1駆動対象8に対する駆動指令パルスを出力する前に、マイコン2が、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「無効」に書き換えるようにしている(図5のS6、S8)。
マイコン2が、駆動制御部3に駆動指令パルスを出力する前に第2駆動対象9の故障検出設定を「無効」に書き換えることで、故障検出部22は第2駆動対象9の故障検出を実行しなくなる。その後、マイコン2が、駆動制御部3に駆動指令パルスを出力することで、駆動制御部3は、回路制御部21により正常に駆動制御可能な第1駆動対象8を駆動制御できる。
【0045】
マイコン2が、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「無効」に書き換えた後、マイコン2が、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障状態レジスタを「正常」として書き換えるようにした。このため、たとえ第2駆動対象9に開放故障が発生していたとしても、故障検出部22は開放故障を無視することになり、第1駆動対象8を駆動制御できる。
【0046】
マイコン2が、正常な第1駆動対象8に対する駆動指令パルスを出力完了した後に、マイコン2は、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「有効」に書き換えるようにしている。また、マイコン2が駆動指令パルスを複数回出力した後に、マイコン2は、開放故障が検出された第2駆動対象9の故障検出設定レジスタを「有効」に書き換えるようにしている(図6のS12:図8のt2)。このため、その後、故障検出部22が第2駆動対象9の故障検出を実行することで、第2駆動対象9の開放故障を正常に検出できる。
【0047】
(他の実施形態)
本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば以下に示す変形又は拡張が可能である。
マイコン2が、出力前イベントと出力完了イベントとの間に駆動指令パルスを複数回出力する多段噴射を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、出力前イベントと出力完了イベントとの間に駆動指令パルスを1回だけ出力する単発噴射に適用しても良い。
【0048】
第1駆動対象8、第2駆動対象9としてソレノイド式のインジェクタに適用した形態を示したが、他の駆動対象に一般化して適用できる。
駆動対象としては、直列4気筒エンジンに燃料噴射するインジェクタを適用できる。直列4気筒エンジンに燃料噴射するときには、駆動対象となる4つのインジェクタが並列接続して構成されることになる。この場合、前述実施形態に示したように制御を実行することで、何れか1本のインジェクタの開放故障が発生した場合であっても、残りの3本のインジェクタを用いて駆動制御可能になる。6気筒エンジンに燃料噴射するインジェクタを駆動制御する電子制御装置にも同様に適用できる。
【0049】
2つの第1駆動対象8、第2駆動対象9を並列接続した形態を説明したが、これに限定するものではなく、3つ以上の駆動対象を並列接続した場合でも適用できる。また、上流スイッチング素子4、下流スイッチング素子5、6を用いた回路形態を示したが、図示した回路形態に限られるものではない。複数の駆動対象8、9が並列接続されており、当該回路制御部21が複数の駆動対象8、9を駆動制御する期間が時間的に重ならなければ前述実施形態に示したように制御することで同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
本開示は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0051】
図面中、1は電子制御装置、2はマイコン、3は駆動制御部、8は第1駆動対象、9は第2駆動対象、21は回路制御部、22は故障検出部、24はレジスタ、を示す。
図1
図2
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図7
図8