(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H01R13/629
(21)【出願番号】P 2019039491
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 直孝
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045930(JP,A)
【文献】特開2018-063918(JP,A)
【文献】特開2017-059428(JP,A)
【文献】特開2018-195400(JP,A)
【文献】特開2002-343497(JP,A)
【文献】特開2017-188390(JP,A)
【文献】特開2009-245608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、ハウジングと、カバーと、レバーと、結束バンドと、を備えたレバー式コネクタであって、
前記レバーは、前記ハウジングに対して回動可能に取り付けられ、前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回動可能とされ、
前記カバーは、前記ハウジングから引き出された前記電線をその引き出し方向とは異なる方向に曲げて導出させる電線導出部と、前記電線を前記電線導出部に固定させる電線固定部と、を備え、
前記電線固定部は、前記カバーの内部側に位置する第1側壁と、前記カバーの外部側に位置する第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁の間に配された底壁と、を備え、
前記レバーを前記嵌合完了位置から前記嵌合開始位置に回動させると前記レバーの側壁が前記第1側壁を通過して前記第2側壁に向けて移動し、前記嵌合開始位置において前記レバーの
側壁が前記第2側壁に当接することで前記レバーの回り止めが行われ、
前記底壁は、前記結束バンドが挿通される一対のバンド挿通孔を有する、レバー式コネクタ。
【請求項2】
前記レバーは、一対のアーム部と、前記一対のアーム部の端部同士を連結する連結部と、を備え、
前記嵌合開始位置において前記一対のアーム部の側縁が前記第2側壁の両側部に当接する、請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクタハウジングと、電線カバーと、レバーと、を備えて構成されたレバー式コネクタが記載されている。レバーは、コネクタハウジングに回動可能に取り付けられている。レバーは、初期位置と嵌合位置との間で回動し得るようになっている。レバーは、初期位置にあるとき、上下方向に起立した姿勢をとり、嵌合位置にあるとき、前端側が後端側より高くなるように傾斜した姿勢をとる。
【0003】
電線カバーは、コネクタハウジングの上面を覆うようにコネクタハウジングに取り付けられている。電線カバーは、その内部に導入された電線の向きを変えて外部へ導出する導出部を有している。電線カバーの導出部には、電線を固定するための結束バンドが装着されるバンド装着凹部が設けられている。バンド装着凹部は、電線カバーの導出部から電線の導出方向に突出して設けられている。バンド装着凹部は、電線カバーの内部側に位置する第1側壁と、電線カバーの外部側に位置する第2側壁と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレバー式コネクタでは、初期位置においてレバーが第1側壁に当接することでレバーの回り止めが行われているため、バンド装着凹部がレバーの側縁から突出した姿勢となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレバー式コネクタは、電線と、ハウジングと、カバーと、レバーと、結束バンドと、を備えたレバー式コネクタであって、前記レバーは、前記ハウジングに対して回動可能に取り付けられ、前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間を回動可能とされ、前記カバーは、前記ハウジングから引き出された前記電線をその引き出し方向とは異なる方向に曲げて導出させる電線導出部と、前記電線を前記電線導出部に固定させる電線固定部と、を備え、前記電線固定部は、前記カバーの内部側に位置する第1側壁と、前記カバーの外部側に位置する第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁との間に配された底壁と、を備え、前記嵌合開始位置において前記レバーの一部が前記第2側壁に当接することで前記レバーの回り止めが行われ、前記底壁は、前記結束バンドが挿通される一対のバンド挿通孔を有する。
【発明の効果】
【0007】
電線固定部がレバーの側縁から突出しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態におけるレバー式コネクタの後方斜視図であって、レバーが嵌合開始位置に位置する状態を説明する図である。
【
図2】
図2は、レバーが嵌合開始位置に位置する状態におけるレバー式コネクタの背面図である。
【
図3】
図3は、レバーが嵌合完了位置に位置する状態におけるレバー式コネクタの後方斜視図である。
【
図4】
図4は、レバーが嵌合開始位置に位置する状態におけるレバー式コネクタの側面図である。
【
図5】
図5は、レバーが嵌合完了位置に位置する状態におけるレバー式コネクタの側面図である。
【
図6】
図6は、レバーが収納位置に位置する状態におけるレバー式コネクタの側面図である。
【
図7】
図7は、収納位置においてカバーを取り外した状態におけるレバー式コネクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のレバー式コネクタは、電線と、ハウジングと、カバーと、レバーと、結束バンドと、を備えたレバー式コネクタであって、前記レバーは、前記ハウジングに対して回動可能に取り付けられ、前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間を回動可能とされ、前記カバーは、前記ハウジングから引き出された前記電線をその引き出し方向とは異なる方向に曲げて導出させる電線導出部と、前記電線を前記電線導出部に固定させる電線固定部と、を備え、前記電線固定部は、前記カバーの内部側に位置する第1側壁と、前記カバーの外部側に位置する第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁との間に配された底壁と、を備え、前記嵌合開始位置において前記レバーの一部が前記第2側壁に当接することで前記レバーの回り止めが行われ、前記底壁は、前記結束バンドが挿通される一対のバンド挿通孔を有する。
レバーが嵌合完了位置から嵌合開始位置に回動されると、レバーの一部が第2側壁に当接することでレバーの回り止めが行われる。嵌合開始位置において電線固定部はレバーから突出していないため、その分だけカバーを小型化できる。
電線固定部に結束バンドを巻き付ける溝を形成しようとすると、溝の外周側に底壁が残らないため、電線固定部の強度低下の一因となる。電線固定部にバンド挿通孔を設けることなく、外周にそのまま結束バンドを巻いてしまうと、レバーを嵌合開始位置に回動させる際にレバーと結束バンドが接触し、嵌合作業性の低下が懸念される。レバーと結束バンドを接触させないためには電線固定部を細くする必要があり、電線固定部の強度が低下してしまう。そこで、電線固定部に一対のバンド挿通孔を設けるようにすれば、少なくともバンド挿通孔の周囲に底壁が残り、電線固定部を細くしなくてよいため、電線固定部の強度低下を回避できる。
【0010】
(2)前記レバーは、一対のアーム部と、前記一対のアーム部の端部同士を連結する連結部と、を備え、前記嵌合開始位置において前記一対のアーム部の側縁が前記第2側壁の両側部に当接する構成とすることが好ましい。
一対のアーム部の側縁が第2側壁の両側部に当接するから、レバーの回り止めを確実に行うことができる。
【0011】
(3)前記レバーの前記連結部は、前記アーム部の先端部同士を連結する先端側連結部と、前記アーム部の基端部同士を連結する基端側連結部と、を備え、前記先端側連結部は、前記嵌合完了位置において前記ハウジングの側方領域ではなく後方領域に配されている構成とすることが好ましい。
先端側連結部がハウジングの側方領域に配されていないため、例えば一対のレバー式コネクタを左右対称に近づけて配置し、先端側連結部同士が近づくようにレバーを回動させた際に、先端側連結部同士が干渉することを回避できる。
【0012】
(4)前記レバーは、前記先端側連結部が前記ハウジングの後方領域ではなく側方領域に配される収納位置に回動可能とされている構成とすることが好ましい。
先端側連結部がハウジング後方領域に配されていないため、例えば端子をハウジングの内部に挿入する際に、先端側連結部が邪魔にならず、レバーをハウジングに組み付けた状態で端子をハウジングの内部に挿入できる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のレバー式コネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
図1、
図2に示すように、本実施形態のレバー式コネクタ10は、ハウジング14と、ハウジング14に回動可能に取り付けられるレバー16と、を備えている。
図3に示すように、ハウジング14は相手側ハウジング12に嵌合される。ここで、ハウジング14および相手側ハウジング12の嵌合離脱方向は前後方向とされ、互いの嵌合面側を前側とする。
【0015】
図3に示すように、相手側ハウジング12は、第1フード部18と、第2フード部20と、を備えている。第1フード部18の内部にはハウジング14が嵌合される。第2フード部20の内部にはハウジング14とは異なる他のハウジング(図示せず)が嵌合される。第1フード部18の外周面および第2フード部20の外周面には、複数の突起部22が外方に突出して設けられている。
【0016】
図1に示すように、ハウジング14は直方体状をなしており、ハウジング14には複数のキャビティが前後方向に開口して設けられている。複数のキャビティには図示しない複数の端子がそれぞれ収容されている。複数の端子にはそれぞれ電線24が接続されており、
図2に示すように、電線24はキャビティから後方(
図2のD1の矢線が示す方向)に引き出された後、その引き出し方向とは異なる方向に曲げられて側方(
図1のD2の矢線が示す方向)に引き出されている。ここで、
図4から
図7に示すように、ハウジング14の嵌合方向後方における領域は後方領域R1とされる。また、ハウジング14における側方(
図4から
図7のSの矢線が示す方向)の領域は側方領域R2とされる。
【0017】
ハウジング14の両側面には板状をなす一対のスライダ26が装着されており、
図4においては手前側のスライダ26のみが図示されている。スライダ26は、レバー16の回動に伴って側方にスライド可能とされる。
【0018】
図1に示すように、レバー16は、一対のアーム部28と、一対の連結部30A、30Bと、を備えている。一対のアーム部28は、ハウジング14の両側部に回動可能に取り付けられている。一対の連結部30A、30Bは、一対のアーム部28の先端部同士を連結する先端側連結部30Aと、一対のアーム部28の基端部同士を連結する基端側連結部30Bとを備えて構成されている。
【0019】
レバー16は、嵌合開始位置(
図1、
図4に示すレバー16の位置)と嵌合完了位置(
図3、
図5に示すレバー16の位置)との間を回動可能とされている。また、端子(図示せず)がハウジング14のキャビティに挿入される作業は、レバー16が収納位置(
図6、
図7に示すレバー16の位置)に位置し、且つカバー32がハウジング14から取り外された状態(
図7に示す状態)で行われる。また、レバー16は、収納位置に位置した状態で納入先に出荷される。
【0020】
嵌合開始位置は、ハウジング14が相手側ハウジング12に嵌合される前の状態におけるレバー16の位置とされる。ハウジング14には、嵌合開始位置においてハウジング14が相手側ハウジング12に収容される前にレバー16が嵌合完了位置に向けて回動することを抑制するロック部(図示せず)が設けられている。ハウジング14が相手側ハウジング12における第1フード部18内に収容されるとレバー16のロック部が解除され、レバー16は嵌合完了位置に向けて回動可能となる。
【0021】
嵌合完了位置は、ハウジング14が相手側ハウジング12に嵌合された後の状態におけるレバー16の位置とされる。ここで、一対のスライダ26における内面(図示せず)には、相手側ハウジング12における突起部22が入り込むガイド溝(図示せず)が設けられている。ハウジング14が相手側ハウジング12における第1フード部18内に収容された状態でレバー16が嵌合開始位置から嵌合完了位置に向けて回動すると、スライダ26は側方に変位する。このとき、第1フード部18における突起部22がスライダ26におけるガイド溝(図示せず)の内壁と摺動しつつ、ハウジング14は第1フード部18の内部に案内される。レバー16が嵌合完了位置に到達すると、ハウジング14の嵌合操作は完了となる。
【0022】
図5に示すように、嵌合完了位置においてレバー16の先端側連結部30Aは、ハウジング14における側方領域R2ではなく後方領域R1に配されている。これにより、嵌合完了位置においてレバーの先端側連結部が側方領域に配される構成と比較して、相手側ハウジング12を小型化できる。すなわち、嵌合完了位置においてレバーの先端側連結部が後方領域R1ではなく側方領域R2に配される場合、レバーの先端側連結部が第2フード部側に嵌合される他のレバー式コネクタ(図示せず)に干渉しないように、第1フード部と第2フード部との間の距離を長くとる必要がある。このため、相手側ハウジングが大型化することとなる。したがって、本実施形態の構成とすることで、第1フード部18と第2フード部20との間の距離を短く設定でき、相手側ハウジング12を小型化できる。
【0023】
図6、
図7に示すように、レバー16が収納位置に位置する状態において、レバー16における先端側連結部30Aは、後方領域R1ではなく側方領域R2に配されている。これにより、カバー32がハウジング14から取り外された状態(
図7に示す状態)で端子がキャビティに後方から挿入される際に、端子が先端側連結部30Aに干渉することが抑制される。したがって、レバー16がハウジング14に組み付けられた状態で端子をハウジング14のキャビティに挿入できる。
【0024】
図1に示すように、カバー32はハウジング14を後方から覆うようにハウジング14に取り付けられている。カバー32の後端部には電線導出部34が設けられている。電線導出部34は側方に開口しつつハウジング14と対向している。電線24は電線導出部34からカバー32の外部に導出される。
【0025】
図1、
図3に示すように、電線導出部34の外周側には、電線24を電線導出部34に固定させる電線固定部36が設けられている。
【0026】
図5に示すように、電線固定部36は、第1側壁38と、第2側壁40と、底壁42とを備えている。第2側壁40はカバー32の側端側(外部側)に位置しており、第1側壁38は、カバー32の内部側に位置している。底壁42は、カバー32の外面に周設される第1側壁38
と第2側壁40との間に配されている。
【0027】
図1、
図3に示すように、底壁42における両側部には結束バンド44が挿通される一対のバンド挿通孔46が開口して設けられている。電線24は、一対のバンド挿通孔46に挿通された結束バンド44に結束されることにより、電線固定部36に固定されている。このようなバンド挿通孔46を設けることによって、電線固定部に結束バンドを巻き付ける溝を形成する構成と比較して、電線固定部36の強度が低下することを抑制できる。すなわち、電線固定部に結束バンドを巻き付ける溝を形成する場合、溝の外周側に底壁が残らないため、電線固定部の強度低下の一因となる。一方、本実施形態のように電線固定部36に一対のバンド挿通孔46を設けるようにすれば、少なくともバンド挿通孔46の周囲に底壁42が残るため、電線固定部36の強度低下を回避できる。
【0028】
図3に示すように、第1側壁38における幅W1は、レバー16における一対のアーム部28間の長さLよりも短く設定されており、第2側壁40における幅W2は、一対のアーム部28間の長さLよりも長く設定されている。これにより、レバー16が嵌合開始位置から嵌合完了位置に向かう方向と逆方向(
図4のD3の矢線が示す方向)に回動されると、アーム部28における側縁28Aは第1側壁38に接触することなく、第2側壁40における両側部40Aに接触する。したがって、レバー16の回り止めを第2側壁40において確実に行うことができる。また、レバーが第1側壁の位置で回り止めされる構成と比較して、電線固定部36のD2方向の長さ分だけカバー32を小型化できる。
【0029】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、
図6、
図7に示すように、収納位置において、レバー16は先端側連結部30Aがハウジング14の図示左側の側方領域R2に配される構成としたが、例えば、図示右側の側方領域に配される構成としても良い。
(2)上記実施形態では、レバー16は一対のアーム部28を備える構成としたが、例えば、アーム部は一つである構成としても良い。
(3)上記実施形態では、電線固定部36は、ハウジング14の側端よりも側方に突出して設けられている構成としたが、側方に突出していない構成としても良い。例えば、第2側壁がハウジング14の側端に設けられることで、さらなるカバーの小型化を図る構成としても良い。
【符号の説明】
【0030】
10:レバー式コネクタ
12:相手側ハウジング
14:ハウジング
16:レバー
18:第1フード部
20:第2フード部
22:突起部
24:電線
26:スライダ
28:アーム部
28A:側縁
30A:先端側連結部
30B:基端側連結部
32:カバー
34:電線導出部
36:電線固定部
38:第1側壁
40:第2側壁
40A:側部
42:底壁
44:結束バンド
46:バンド挿通孔
L:長さ
R1:後方領域
R2:側方領域
W1、W2:幅