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  • 特許-排気浄化装置を有する車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】排気浄化装置を有する車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20221129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221129BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221129BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20221129BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221129BHJP
   F02D 9/06 20060101ALI20221129BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F01N3/24 R ZAB
B01D53/94 222
F01N3/08 A
F01N3/20 B
F01N3/28 301C
F02D9/06 A
F02D45/00 364A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019049595
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020153245
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 義久
(72)【発明者】
【氏名】西方 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】村澤 直人
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179740(JP,A)
【文献】特開2007-230302(JP,A)
【文献】特開2006-248519(JP,A)
【文献】特開2007-246009(JP,A)
【文献】特開2014-189065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/28
F02D 45/00
F02D 9/06
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気浄化装置を有する車両であって、
エンジンと、
前記排気浄化装置に設けられたNOx吸蔵還元型触媒と、
前記NOx吸蔵還元型触媒を再生するために前記エンジンをリッチ制御しているときに、第1の負荷のトルクを下げることを示す操作信号が入力された場合、前記エンジンの燃料噴射量を維持したまま、前記エンジンの余剰発生トルクを前記第1の負荷以外の負荷に分配する、制御部と、
を具備する車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作信号による前記トルクの減少量を算出し、当該減少量に相当する前記余剰発生トルクを前記第1の負荷以外の負荷に分配する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1の負荷は、車両の走行駆動系であり、
前記第1の負荷以外の負荷は、車両の発電系を含む、
請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1の負荷は、車両の走行駆動系であり、
前記第1の負荷以外の負荷は、エキゾーストブレーキを含み、前記余剰発生トルクに応じて前記エキゾーストブレーキのスロットルの開閉を制御する、
請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気中の窒素化合物(NOx)を還元浄化する触媒として、NOx吸蔵還元型触媒(Lean NOx Trap:以下「LNT」と称する)が知られている。LNTは、排気がリーン雰囲気のときに排気中に含まれるNOxを吸蔵すると共に、排気がリッチ雰囲気のときに排気中に含まれる炭化水素で吸蔵していたNOxを還元浄化により無害化して放出する。このため、触媒のNOx吸蔵量が所定量に達したなどの所定条件が成立した場合には、NOx吸蔵能力を回復させるべく、排気をリッチ状態にする所謂LNT再生(「NOxパージ」、「リッチスパイク」とも呼ばれている)を定期的に行う必要がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-202425号公報
【文献】特開2007-16713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のLNT再生中は、エンジンがリッチ制御され、排気がリッチ状態に保たれる。しかしながら、LNT再生中に、ドライバーによってアクセルを戻すなどの操作が行われると、燃料噴射量が減少し、リッチ状態がリーン方向に遷移する。これにより、LNT再生が中断されたり、もしも中断されなかったとしてもLNT再生効率が低下したりする。よって、別のタイミングで新たにLNT再生を行うことが必要となる。この結果、LNT再生の頻度が増加するといった不都合が生じる。
【0005】
また、LNT再生中にドライバーの操作により燃料噴射量が減少すると、ラムダセンサーによる安定したλ検出が困難になり、LNT浄化率の診断精度も低下する問題がある。
【0006】
本発明の目的は、LNTを再生するためにエンジンをリッチ制御しているときに、エンジンのトルクを下げる要求があった場合でも、LNT再生の中断や効率低下、LNT浄化率の診断精度の低下を防止できる、排気浄化装置を有する車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、
排気浄化装置を有する車両であって、
エンジンと、
前記排気浄化装置に設けられたNOx吸蔵還元型触媒と、
前記NOx吸蔵還元型触媒を再生するために前記エンジンをリッチ制御しているときに、第1の負荷のトルクを下げることを示す操作信号が入力された場合、前記エンジンの燃料噴射量を維持したまま、前記エンジンの余剰発生トルクを前記第1の負荷以外の負荷に分配する、制御部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LNTを再生するためにエンジンをリッチ制御しているときに、エンジンのトルクを下げる要求があった場合でも、LNT再生の中断や効率低下、LNT浄化率の診断精度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の車両の要部構成図
図2】LNT再生時におけるラムダセンサーの検出結果を示す波形図
図3】実施の形態の動作の説明に供する波形図であり、図3AはLNT再生モード信号を示す図、図3Bはエンジンの燃料噴射量を示す図、図3Cはアクセルの踏込量を示す図、図3DはLNTに導入される排気ガスの空燃比を示す図、図3Eは分配される余剰発生トルクを示す図、図3Fは走行駆動系のトルクを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態の車両の要部構成図である。
【0012】
本実施の形態の車両1は、例えばトラック等であり、ディーゼルエンジン10が搭載されている。ただし、本発明は、ディーゼルエンジンがされた車両に限らず、ガソリンエンジンが搭載された車両にも適用可能である。
【0013】
車両1は、排気浄化装置100を有する。排気浄化装置100は、エンジン10の排気ガス中のNOxを吸蔵することで排気ガスを浄化する。
【0014】
エンジン10は、例えば、燃焼室、燃焼室内で燃料を噴射する燃料噴射装置を有する。エンジン10での燃料噴射は、エンジンECU(Electronic Control Unit)11によって制御される。エンジン10は、燃焼室内で、燃料と空気の混合気を燃焼及び膨張させて、トルクTQ0を発生する。エンジン10には、燃焼室内に空気を導入する吸気管20と、燃焼室から排出される燃焼後の排気ガスを、車両の外部に排出する排気管30と、が接続されている。
【0015】
排気浄化装置100は、LNT(Lean NOx Trap)101、DPF(Diesel Particulate Filter)102、SCR(Selective Catalytic Reduction)103及び浄化装置ECU110を有する。また、実際上、排気浄化装置100は、尿素水噴射装置などの他の構成も有するが、図1ではこれらの構成は省略されている。
【0016】
LNT101は、排気ガスの空燃比がリーンな状態においては、排気ガス中のNOxを吸蔵する。そして、LNT101は、排気ガスの空燃比がリッチな状態において、当該吸蔵したNOxを排気ガス中のCO又はHC等と反応させて、窒素等の無害なガスに還元して放出する。
【0017】
LNT101は、飽和状態に近づくとNOxを吸蔵し得る効率が低下する。そのため、LNT101のNOxの吸蔵状態は、浄化装置ECU110によって監視されており、定期的に、LNT101の再生(「NOxパージ」、「リッチスパイク」とも呼ばれている)が実行される。この再生は、エンジンECU11によってエンジン10の燃料噴射量が多くされるのに伴い排気ガスがリッチ状態とされ、これにより吸蔵状態のNOxが還元されることで行われる。
【0018】
DPF102は、排気に含まれる粒子状物質を捕集する。
【0019】
SCR103は、尿素水噴射装置(図示せず)から供給される尿素水が加水分解したアンモニアを吸着すると共に、当該吸着したアンモニアによって排気ガス中からNOxを選択的に還元浄化する。
【0020】
浄化装置ECU110は、排気浄化装置100の動作を制御する。また、ECU110は、LNT101の上流側に設けられたラムダセンサー121、LNT101の下流側に設けられたラムダセンサー122や、図示しない他のセンサーからセンサー情報を取得し、当該センサー情報に基づいて、排気管30を通流する排気ガスの状態、LNT101の状態、DPF102の状態、及びSCR103の状態等を検出する。
【0021】
また、浄化装置ECU110は、LNT101のNOxの吸蔵状態の情報に基づいてLNT再生のタイミングを決定し、LNT再生モード信号をエンジンECU11に送る。エンジンECU11は、LNT再生モード信号を入力すると、LNT再生を実現するために燃料噴射量を多くするリッチ制御を行う。
【0022】
さらに、車両1は、車両全体を制御するメインECU130を有する。メインECU130は、エンジンECU11及び浄化装置ECU110と通信することで、これらを制御し及びこれらから情報を取得する。また、メインECU130には、アクセル信号S1が入力される。メインECU130及びエンジンECU11は、アクセル信号S1によって示されるドライバーのアクセル踏込量に応じて、エンジン10の燃料噴射量を制御する。
【0023】
また、メインECU130は、エンジン10によって発生されたトルクTQ0を、車両1の走行駆動系140や、それ以外の負荷150に分配する制御を行う。それ以外の負荷150には、オルタネーター151やエキゾーストブレーキ152などが含まれる。メインECU130は、決定したオルタネーター151への分配トルクTQ2に応じて、オルタネーター151での発電量を制御する。メインECU130は、決定したエキゾーストブレーキ152への分配トルクTQ3に応じて、エキゾーストブレーキ152のスロットルの開閉を制御する。車両1がハイブリッド車の場合には、それ以外の負荷150にモーター発電機を含め、モーター発電機にトルクを分配してもよい。
【0024】
因みに、エンジンECU11、浄化装置ECU110及びメインECU130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力ポート、及び出力ポート等を含んで構成されている。ECU11、110、130各機能は、例えば、CPUがROM、RAM等に記憶された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、当該機能は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路によっても実現できることは勿論である。
【0025】
図2は、LNT再生時におけるラムダセンサー121、122の検出結果(空燃比λ1、λ2)を示す波形図である。一般に、LNT再生を行うためにエンジン10をリッチ制御しているときに、アクセルペダルを急激に戻したことを示すアクセル信号S1が入力されると、エンジン10の燃料噴射量を減らす制御がなされる。この結果、ラムダセンサー121の検出結果λ1から分かるように、リッチ制御区間(LNT101の再生中)であるにもかかわらず、LNT101に導入される酸素濃度が急激に上昇する。その結果、LNT再生が中断されたり、LNT再生効率が低下したりする問題が生じる。
【0026】
そこで、本実施の形態では、アクセルペダルを急激に戻したことを示すアクセル信号S1が入力された場合でも、エンジン10の燃料噴射量を維持する。この制御は、メインECU130とエンジンECU11が協働して行う。
【0027】
しかし、このようにすると、アクセルペダルが戻されているにもかかわらず、エンジン10では余剰なトルクが発生してしまう。そこで、本実施の形態では、この余剰発生トルクを走行駆動系140以外の負荷150に分配するようになっている。この制御は、メインECU130により行う。
【0028】
具体的には、メインECU130は、燃料噴射量を維持したままとすることに起因する余剰発生トルクを計算し、この余剰発生トルクが消費されるように負荷150を作動させる。
【0029】
これにより、ドライバーによるアクセルペダルの操作に準じた走行を維持させつつ、図2の点線で示したように、リッチ制御区間(LNT101の再生中)においてLNT101に導入される酸素濃度の上昇を抑制でき、LNT再生の中断や、LNT再生効率の低下を防止できる。
【0030】
図3は、本実施の形態の動作の説明に供する波形図である。
【0031】
図3Aに示したように、時点t1において、浄化装置ECU110からエンジンECU11にLNT再生モード信号が送られると、図3Bに示したように、エンジン10の燃料噴射量が急激に増加される。この結果、図3Dに示したように、LNT101に導入される排気ガスの空燃比λ1は急激に減少し、LNT再生が行われる。
【0032】
ここで、時点t2において、アクセルの踏込量が急激に小さくなると(図3C)、従来であれば、図3Bの燃料噴射量も図3Bの一点鎖線で示されるように少なくされ、それに応じて、図3Dの一点鎖線で示されているようにLNT101に導入される排気ガスの空燃比λ1も急激に大きくなる。
【0033】
これに対して、本実施の形態においては、アクセルの踏込量が大きく戻されても(図3C)、図3Bの燃料噴射量は実線で示されるように維持されたままとされ、よって、図3Dの実線で示されているようにLNT101に導入される排気ガスの空燃比λ1も低い値で維持される。この結果、LNT再生が良好な状態で維持される。
【0034】
ここで、アクセルが戻されたにもかかわらず、燃料噴射量を維持したことにより発生する余剰トルクは、図3Eに示したように、アクセルが戻されている間(つまりt2-t3の期間)は、走行駆動系140以外の負荷150であるオルタネーター151及びエキゾーストブレーキ152の作動トルクTQ2、TQ3として分配して消費される。この結果、アクセルが戻されている間(つまりt2-t3の期間)に走行駆動系140に供給されるトルクTQ1は、アクセル操作が反映されたものとなる。つまり、エンジンでの発生トルクTQ0=TQ1+TQ2+TQ3とされる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、LNT101を再生するためにエンジン10をリッチ制御しているときに、走行駆動系140のトルクを下げることを示す操作信号(アクセル信号S1)が入力された場合、エンジン10の燃料噴射量を維持したまま、エンジン10の余剰発生トルクを走行駆動系140の負荷150に分配するようにしたことにより、LNT101を再生するためにエンジン10をリッチ制御しているときに、エンジン10のトルクを下げる要求があった場合でも、LNT再生の中断や効率低下、LNT浄化率の診断精度の低下を防止できるようになる。
【0036】
また、燃料噴射量を維持することにより発生する余剰トルクを、オルタネーター151などの車両の発電系に分配したことにより、例えばフットブレーキを作動させて余剰トルク分を消費させる場合などと比較して、余剰トルクを有効活用できる。同様に、余剰トルクを、エキゾーストブレーキ152に分配したことにより、例えばフットブレーキを作動させて余剰トルク分を消費させる場合などと比較して、余剰トルクを有効活用できる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0038】
上述の実施の形態では、操作信号がアクセル信号S1であり、トルクを下げることが要求される第1の負荷が走行駆動系140である場合について述べたが、本発明はこれに限らず、操作信号及び第1の負荷は、LNT再生を行うためのリッチ制御中に燃料噴射量を減らす必要がある操作信号、及び、その操作信号に応じたトルクが供給される負荷であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、LNT再生機能が搭載された車両に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
10 エンジン
11 エンジンECU(Electronic Control Unit)
20 吸気管
30 排気管
100 排気浄化装置
101 LNT(Lean NOx Trap)
102 DPF(Diesel Particulate Filter)
103 SCR(Selective Catalytic Reduction)
110 浄化装置ECU
121、122 ラムダセンサー
130 メインECU
140 走行駆動系
150 負荷
151 オルタネーター
152 エキゾーストブレーキ
S1 アクセル信号
TQ0~TQ3 トルク
図1
図2
図3