(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】吐出状態検出装置、吐出状態検出方法およびインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 301
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2019051372
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 康範
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-110804(JP,A)
【文献】特開2019-022949(JP,A)
【文献】特開2011-126059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光領域の波長の光が照射された場合に蛍光発光するインクが吐出部から吐出される記録媒体に対して、紫外光領域の波長の光を照射光として照射する照射部と、
前記紫外光領域から可視光領域にわたる感度を有し、前記照射光に基づく前記記録媒体を介した光を受光する受光部と、
前記受光部により受光される光の強度、および、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれるか否かに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する検出部と、
を備える吐出状態検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記受光部により受光される光の強度、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれるか否か、および、前記インクに蛍光染料が含まれるか否かに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する、
請求項1に記載の吐出状態検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記記録媒体が蛍光増白剤を含む場合、前記インクより前記記録媒体を介して受光される光の強度が高く、前記記録媒体が蛍光増白剤を含まず、前記インクが蛍光染料を含む場合、前記記録媒体より前記インクを介して受光される光の強度が高く、前記記録媒体が蛍光増白剤を含まず、前記インクが蛍光染料を含まない場合、前記インクより前記記録媒体を介して受光される光の強度が高いことを示す判定基準情報に基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する、
請求項2に記載の吐出状態検出装置。
【請求項4】
前記記録媒体の余白部に紫外光領域の波長の光を第2照射光として照射する第2照射部と、
前記第2照射光に基づく前記余白部を介した光を受光する第2受光部と、
をさらに備え、
前記検出部は、前記第2受光部により受光された光の強度に基づいて、前記記録媒体に前記蛍光増白剤が含まれるか否かについて判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項5】
前記受光部により受光される光の強度は、前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられた複数箇所に対して前記照射光がそれぞれ照射された場合に前記受光部により受光される各光の強度の平均値である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項6】
前記インクは、白インクである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項7】
前記インクは、透明インクである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項8】
前記照射部は、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれ、前記記録媒体を介して受光される光の強度が閾値より大きい場合、前記記録媒体を介して受光される光の強度が前記閾値より小さい場合と比べて、前記照射光の強度を低下させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項9】
前記照射部は、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれない場合、前記インクに含まれる蛍光染料の量に応じて、前記照射光の強度を増大させる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置。
【請求項10】
紫外光領域の波長の光が照射された場合に蛍光発光するインクが吐出部から吐出される記録媒体に対して、紫外光領域の波長の光を照射光として照射し、
前記紫外光領域から可視光領域にわたる感度を有し、前記照射光に基づく前記記録媒体を介した光を受光し、
受光部により受光される光の強度、および、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれるか否かに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する、
吐出状態検出方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の吐出状態検出装置と、前記吐出部とを備える、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出状態検出装置、吐出状態検出方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドに複数個配列されたノズルから記録媒体上にインクを吐出させて、この記録媒体に画像を形成する。このインクジェット記録装置では、ノズルが詰まりや吐出機構の故障(インクの吐出不良)が発生する場合がある。
【0003】
このようなノズルの目詰まりや吐出機構の故障は、画像のかすれやムラなどを生じさせるため、画質を低下させてしまう。インクの吐出不良を検出するため、インクジェット記録装置には、例えば、記録媒体と有色インク(CMYKインク)との間の読取り濃度差に基づいて、記録媒体と有色インクとを判別することが可能な画像読込みセンサー(インラインセンサー)が搭載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、白紙に有色インクを吐出し、有色インク上に白インクによる検査用パターンを吐出することで、有色インク上に白インクを重ね塗りした状態にして、白インクの吐出不良を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の画像読込みセンサーでは、例えば、白紙上に白インクが塗布された場合、白紙と白インクとの間の読取り濃度差が生じ難く、白紙と白インクとを判別することが困難になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、白色インクの吐出不良を検出するために、白紙に下地としての有色インクを塗布する必要があるため、有色インクの消費量が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、インクの消費量を増加させることなく、記録媒体とインクとを精度良く判別することが可能な吐出状態検出装置、吐出状態検出方法およびインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明における吐出状態検出装置は、
紫外光領域の波長の光が照射された場合に蛍光発光するインクが吐出部から吐出される記録媒体に対して、紫外光領域の波長の光を照射光として照射する照射部と、
前記紫外光領域から可視光領域にわたる感度を有し、前記照射光に基づく前記記録媒体を介した光を受光する受光部と、
前記受光部により受光される光の強度、および、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれるか否かに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する検出部と、
を備える。
【0010】
本発明における吐出状態検出方法は、
紫外光領域の波長の光が照射された場合に蛍光発光するインクが吐出部から吐出される記録媒体に対して、紫外光領域の波長の光を照射光として照射し、
前記紫外光領域から可視光領域にわたる感度を有し、前記照射光に基づく前記記録媒体を介した光を受光し、
受光部により受光される光の強度、および、前記記録媒体に蛍光増白剤が含まれるか否かに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出状態を検出する。
【0011】
本発明におけるインクジェット記録装置は、
上記吐出状態検出装置と、上記吐出部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクの消費量を増加させることなく、記録媒体とインクとを精度良く判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】照射位置と、受光部により受光される光の強度との関係を示す図である。
【
図5】吐出状態検出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態におけるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像記録部20と、排紙部30と、制御部40(
図2を参照)とを備える。
【0015】
インクジェット記録装置1では、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像記録部20に搬送し、画像記録部20で記録媒体Pに画像を記録し、画像が記録された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0016】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像記録部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像記録部20へ搬送する。
【0017】
画像記録部20は、搬送ドラム21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部26とを有する。
【0018】
搬送ドラム21は、円柱面状の外周曲面(搬送面)上に記録媒体Pを保持した状態で
図1の図面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)に延びた回転軸の回りで回転することで記録媒体Pを搬送面に沿った搬送方向に搬送する。搬送ドラム21は、その搬送面上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面に吸い寄せられることで搬送面に保持される。搬送ドラム21は、搬送ドラム21を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターを有し、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0019】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送ドラム21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送ドラム21に引き渡す。
【0020】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように搬送ドラム21の搬送面および記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40(
図2を参照)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0021】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム21の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム21の搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を記録する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面との間が所定の距離だけ離隔されるように配置される。
【0022】
本実施の形態におけるインクジェット記録装置1では、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の5色のインクにそれぞれ対応する5つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からW,Y,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0023】
各ヘッドユニット24は、記録ヘッド242(
図2を参照、本発明の「吐出部」に対応)を備える。記録ヘッド242には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0024】
記録ヘッド242に含まれるノズルの直交方向についての配置範囲は、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Pのうち画像が記録される領域の直交方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像の記録時には搬送ドラム21の回転軸に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、インクジェット記録装置1は、シングルパス形式のインクジェット記録装置である。
【0025】
記録ヘッド242から吐出されるインクとしては、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するものが用いられる。また、本実施の形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクが用いられる。ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備える。インク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。ヘッドユニット24は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Pに吐出されると、インク滴が記録媒体Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
【0026】
定着部25は、搬送ドラム21の直交方向の幅に亘って配置された発光部を有する。定着部25は、搬送ドラム21に載置された記録媒体Pに対して発光部から紫外線等のエネルギー線を照射することにより記録媒体P上に吐出されたインクに対して所定のエネルギーを付与し、これによりインクを硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向における記録ヘッド242の配置位置から受け渡しドラム261(デリバリー部26)の配置位置までの間において、搬送ドラム21の搬送面と対向して配置される。
【0027】
デリバリー部26は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ262と、記録媒体Pを搬送ドラム21からベルトループ262に受け渡す円筒状の受け渡しドラム261とを有し、受け渡しドラム261により搬送ドラム21からベルトループ262上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ262により搬送して排紙部30に送出する。
【0028】
排紙部30は、デリバリー部26により画像記録部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0029】
図2は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1は、加熱部23と、ヘッドユニット24が有する記録ヘッド駆動部241および記録ヘッド242と、定着部25と、検出ユニット27Aと、制御部40と、搬送駆動部51と、入出力インターフェース52とを備える。
【0030】
記録ヘッド駆動部241は、制御部40の制御に基づいて記録ヘッド242の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、記録ヘッド242のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0031】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
【0032】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0033】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0034】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0035】
記憶部44には、入出力インターフェース52を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)および当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0036】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム21の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム21を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部26を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送ドラム21への供給および搬送ドラム21からの排出を行わせる。
【0037】
入出力インターフェース52は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース52は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、または、これらの組み合わせで構成される。
【0038】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース52を介して画像記録命令(プリントジョブ)および画像データ等を制御部40に供給する。
【0039】
以上の構成によれば、給紙部10に格納された記録媒体Pは、画像記録部20に搬送され、画像記録部20でノズルから吐出されたインクにより画像が記録されて、デリバリー部26により排紙部30に送り出される。しかしながら、ノズル詰まりや吐出機構の故障により、インクが記録媒体P上の所定領域に吐出されない場合がある。ノズル詰まり等は、画質を低下させる原因となるため、ノズルからインクが確実に吐出されているか否かについての検査(ノズル欠検査)を行う必要がある。
【0040】
次に、ノズル欠検査について説明する。ここでは、記録媒体Pを白紙とし、白紙上に白インクが吐出される場合について説明する。白紙には、紫外光領域の波長λuvの光が照射光として照射された場合、蛍光発光作用を生じる蛍光増白剤が含まれる。なお、記録媒体Pとして、蛍光増白剤を含まない白紙が用いられる場合がある。また、白インクには、波長λuvの光が照射光として照射された場合、蛍光発光作用を生じる蛍光染料が含まれる。また、白インクには、波長λuvの光を吸収する成分(例えば、酸化チタン)が含まれる。なお、ノズルから吐出された白インクが白紙上に着弾した場合にドットが記録される領域を「着弾部」という。
【0041】
ノズル欠検査は吐出状態検出装置により行われる。本実施の形態における吐出状態検出装置は、検出ユニット27Aおよび制御部40を備えている。検出ユニット27Aは、照射部27および受光部28を備えている。
【0042】
照射部27および受光部28は、搬送方向における定着部25の配置位置から受け渡しドラム261(デリバリー部26)の配置位置までの間において、搬送ドラム21の搬送面と対向して配置される。
【0043】
照射部27は、制御部40による制御下で動作し、照射光を着弾部に照射する。
【0044】
照射部27は、紫外光領域の波長λuvの中の一つの波長の照射光を着弾部に照射する。
【0045】
受光部28は、照射光に基づく着弾部を介した光を受光できるように配置されている。
【0046】
受光部28は、紫外光領域から可視光領域にわたる光を受光する。受光部28は、例えば、インラインセンサーが用いられる。インラインセンサーは、CCD、CMOS等のイメージラインセンサーにより構成される。
【0047】
受光部28は、制御部40による制御下で動作する。これによって、受光部28は、照射部27によって照射光が着弾部に照射されるタイミングに合わせて、照射光に基づく着弾部を介した光を受光する。
【0048】
次に、受光部28により受光される光の強度について説明する。なお、着弾部に照射される照射光を、紫外光領域の波長λuvの光とする。
【0049】
受光部28により受光される光の強度は、白インクが着弾部に着弾した場合と、白インクが着弾部に着弾しない場合とで異なる。
【0050】
白インクが着弾部に着弾した場合、受光部28により受光される光の強度は、白インクを介した光の強度となる。白インクに含まれる蛍光染料は、波長λuvの光が照射されることで蛍光発光作用を生じる。一方、白インクに含まれる成分(例えば酸化チタン)は、波長λuvの光を吸収する。つまり、白インクを介した光の強度は、蛍光発光作用による上昇分と、光の吸収作用による下降分とを相殺したものとなる。
【0051】
白インクが着弾部に着弾しない場合、受光部28により受光される光の強度は、白紙を介した光の強度となる。白紙に含まれる蛍光増白剤は、波長λuvの光が照射されることで蛍光発光作用を生じる。一方、白紙に蛍光増白剤が含まれない場合、白紙に波長λuvの光が照射されても、蛍光発光作用を生じない。つまり、白紙を介した光の強度は、白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かにより異なる。
【0052】
図3は、照射位置と、受光部28により受光される光の強度との関係を示す図である。
図3の縦軸に、光の強度を輝度[L]として示す。
図3の横軸に照射位置を示す。
【0053】
蛍光増白剤が含まれる白紙に波長λuvの光を照射した場合、白紙を介した光の強度の範囲Lr1、及び、蛍光増白剤が含まれない白紙に波長λuvの光を照射した場合、白紙を介した光の強度の範囲Lr2は、例えば、実験結果やシミュレーションにより求めることが可能である。
【0054】
白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かについて判定するには、白紙の余白部に波長λ
uvの光を照射して、受光部28により受光される光の強度を検出すればよい。白紙の余白部に波長λ
uvの光を照射して、受光部28により受光される光の強度が範囲L
r1内である場合、白紙に蛍光増白剤が含まれることを示す。
図3に示す範囲L
r1内にある光の強度L
a1は、蛍光増白剤が含まれる白紙を介した光の強度を表す。一方、受光部28により受光される光の強度が範囲L
r2内である場合、白紙に蛍光増白剤が含まれないことを示す。
図3に示す範囲L
r2内にある光の強度L
a2は、蛍光増白剤が含まれない白紙を介した光の強度を表す。
【0055】
本実施の形態における吐出状態検出装置は、白紙の余白部に波長λuvの光を第2照射光として照射する第2照射部と、第2照射光に基づく余白部を介した光を受光する第2受光部とを備える。制御部40(検出部)は、第2受光部により受光された光の強度La1,La2に基づいて、白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かについて判定する。なお、本実施の形態では、照射部27は、第2照射部としての機能を有するものとする。また、受光部28は、第2受光部としての機能を有するものとする。
【0056】
次に、インクの吐出不良を判定する際に基準となる判定基準について、
図4を参照して説明する。
図4に、白インクが着弾した着弾部を介した光の強度と白インクが着弾しない着弾部を介した光の強度との大小関係の一例を示す。以下、
図4に示す判定基準を「判定テーブル」と呼ぶ。なお、白インクに蛍光染料が含まれるものとする(
図4に示す蛍光染料「有」)。また、着弾部に波長λ
uvの光が照射されて、着弾部を介した光が受光部28により受光されるものとする。
【0057】
白紙に蛍光増白剤が含まれる場合(
図4に示す蛍光増白剤「有」の場合)において、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a1より低い場合(
図3を参照)、光の強度L
b1は、白インクを介した光の強度である。なお、強度L
b1の比較対象は、強度L
a1を中心とする一定の範囲を有する。ここでは、説明を簡単にするため、強度L
b1の比較対象の代表としての強度L
a1を示す。光の強度L
b1が強度L
a1より低い理由は、前述するように、白インクを介した光の強度は、光の吸収作用により低下し、蛍光増白剤が含まれる白紙より白インクを介した光の強度が低くなるためである(白紙>白インク、
図4を参照)。
【0058】
一方、受光部28により受光される光の強度L
b2が強度L
a1と同じように範囲L
r1内である場合(
図3を参照)、光の強度L
bは、白紙を介した光の強度である。
【0059】
白紙に蛍光増白剤が含まれない場合(
図4に示す蛍光増白剤「無」の場合)において、受光部28により受光される光の強度L
b3が強度L
a2より高い場合(
図3を参照)、光の強度L
b3は、白インクを介した光の強度である。なお、強度L
b3の比較対象は、強度L
a2を中心とする一定の範囲を有する。ここでは、説明を簡単にするため、強度L
b3の比較対象の代表としての強度L
a2を示す。光の強度L
b3が強度L
a2より高い理由は、前述するように、白インクを介した光の強度は、光の吸収作用により低下するが、蛍光発光作用により上昇し、蛍光増白剤が含まれない白紙より白インクを介した光の強度が高くなるためである(白インク>白紙、
図4を参照)。
【0060】
一方、受光部28により受光される光の強度L
b4が強度L
a2と同じように範囲L
r2内である場合(
図3を参照)、光の強度L
b4は、白紙を介した光の強度である(
図3を参照)。
【0061】
以上、白インクが着弾部に着弾した場合と白インクが着弾部に着弾しない場合とにおける着弾部を介した光の強度の大小関係について、白インクに蛍光染料が含まれるものとして説明した。しかしながら、蛍光染料が含まれない白インクが用いられる場合がある。
次に、白インクに蛍光染料が含まれない場合(
図4に示す蛍光染料「無」の場合)について、説明する。
【0062】
白インクに蛍光染料が含まれない場合、白紙が蛍光増白剤を含むか否かに拘わらず、白インクより白紙を介した光の強度が高い(白紙>白インク、
図4を参照)。したがって、例えば、受光部28により受光される光の強度L
b5が強度L
a2より低い場合(
図3を参照)、光の強度L
b5は、白インクを介した光の強度である(
図3を参照)。
【0063】
本実施の形態においては、制御部40は、受光部28により受光される光の強度L
bに基づいて、
図4に示す判定テーブルを参照して、白インクの吐出不良を検出する検出部としての機能を有する。
【0064】
制御部40は、白インクに蛍光染料が含まれる場合であって、かつ、白紙に蛍光増白剤が含まれる場合において、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a1と同じように範囲L
r1内である場合、白インクの吐出不良であると判定する。また、制御部40は、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a1より低い場合(白紙>白インク、
図4を参照)、白インクの吐出不良でないと判定する。
【0065】
制御部40は、白インクに蛍光染料が含まれる場合であって、かつ、白紙に蛍光増白剤が含まれない場合において、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a2と同じように範囲L
r2内である場合、白インクの吐出不良であると判定する。また、制御部40は、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a2より高い場合(白インク>白紙、
図4を参照)、白インクの吐出不良でないと判定する。
【0066】
制御部40は、白インクに蛍光染料が含まれない場合であって、かつ、白紙に蛍光増白剤が含まれる場合において、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a1と同じように範囲L
r1内である場合、白インクの吐出不良であると判定する。また、制御部40は、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a1より低い場合(白紙>白インク、
図4を参照)、白インクの吐出不良でないと判定する。
【0067】
制御部40は、白インクに蛍光染料が含まれない場合であって、かつ、白紙に蛍光増白剤が含まれない場合において、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a2と同じように範囲L
r2内である場合、白インクの吐出不良であると判定する。また、制御部40は、受光部28により受光される光の強度L
bが強度L
a2より低い場合(白紙>白インク、
図4を参照)、白インクの吐出不良でないと判定する。
【0068】
次に、白インクの吐出状態検出処理について
図5を参照して説明する。
図5は、白インクの吐出状態検出処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、印刷ジョブの実行に伴って開始される。
【0069】
先ず、ステップS100において、制御部40(検出部)は、白紙の余白部を介して受光される光の強度(
図3に示すL
a1又は、L
a2)に基づいて、白紙が蛍光増白剤を含むか否かについて判定する。白紙が蛍光増白剤を含む場合(ステップS100:YES)、処理はステップS110に遷移する。白紙が蛍光増白剤を含まない場合(ステップS100:NO)、処理はステップS150に遷移する。
【0070】
次に、ステップS110において、制御部40は、着弾部を介して受光される光の強度Lbを取得する。
【0071】
次に、ステップS120において、制御部40は、着弾部を介して受光される光の強度Lbが、白紙の余白部を介して受光される光の強度La1より小さいか否かについて判定する。強度Lbが強度La1より小さい場合(ステップS120:YES)、処理はステップS130に遷移する。強度Lbが強度La1より小さくない場合(ステップS120:NO)、処理はステップS140に遷移する。
【0072】
ステップS130において、制御部40は、インクの吐出不良でないと判定する。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0073】
ステップS140において、制御部40は、インクの吐出不良であると判定する。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0074】
次に、ステップS150において、制御部40は、白インクが蛍光染料を含むか否かについて判定する。白インクが蛍光染料を含む場合(ステップS150:YES)、処理はステップS160に遷移する。白インクが蛍光染料を含まない場合(ステップS150:NO)、処理はステップS110に遷移する。
【0075】
次に、ステップS160において、制御部40は、着弾部を介して受光される光の強度Lbを取得する。
【0076】
次に、ステップS170において、制御部40は、着弾部を介して受光される光の強度Lbが、白紙の余白部を介して受光される光の強度La2より大きいか否かについて判定する。強度Lbが強度La2より大きい場合(ステップS170:YES)、処理はステップS180に遷移する。強度Lbが強度La2より大きくない場合(ステップS170:NO)、処理はステップS140に遷移する。
【0077】
ステップS180において、制御部40は、インクの吐出不良でないと判定する。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0078】
上記実施の形態における吐出状態検出装置によれば、紫外光領域の波長λuvの光を照射した場合に蛍光発光作用を生じる白インクが記録ヘッド242から吐出された白紙に対して、紫外光領域の波長λuvの光を照射光として照射する照射部27と、紫外光領域から可視光領域にわたる感度を有し、照射光に基づく白紙を介した光を受光する受光部28と、受光部28により受光される光の強度、および、白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かに基づいて、記録ヘッド242によるインクの吐出状態を検出する制御部40と、を備える。これにより、下地としての有色インクを塗布する必要がないため、有色インクの消費量を増加させることなく、白紙と白インクとを精度良く判別することが可能となる。その結果、白インクの吐出不良を検出することが可能となる。
【0079】
なお、上記の実施の形態においては、制御部40は、白紙の余白部を介して受光された光の強度に基づいて、白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かについて判定したが、本発明はこれに限らず、印刷ジョブ毎に設定される用紙の種類が蛍光増白剤の有無に対応している場合、用紙の種類に基づいて、白紙に蛍光増白剤が含まれるか否かについて判定してもよい。
【0080】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、インクの吐出状態の検出は、照射光に基づく一つの着弾部を介した光の強度に基づいて行ったが、本発明はこれに限らず、例えば、複数の着弾部を介した光の強度の平均値に基づいて行うようにしてもよい。なお、複数の着弾部は、例えば、記録媒体Pの搬送方向に沿って設ければよい。光の強度を平均化することにより、SN比を上げることができるため、インクの吐出状態の検出精度を上げることができる。
【0082】
また、例えば、上記実施の形態では、吐出状態の検出を白インクについて行ったが、本発明はこれに限らず、記録媒体Pとの読み取り濃度差が低く、かつ、記録媒体Pとの分光反射率差が生じるインクであればよい。例えば、透明インクでもよい。
【0083】
また、例えば、上記実施の形態では、制御部40は、白紙に蛍光増白剤が含まれ、白紙を介して受光される光の強度が閾値より大きい場合、照射光の強度が閾値以下に低下するように照射部27を制御してもよい。照射光の強度を閾値以下に低下させることで、吐出状態検出装置の消費電力を抑えることが可能となる。
【0084】
また、上記実施の形態では、制御部40は、白紙に蛍光増白剤が含まれない場合、白インクに含まれる蛍光染料の量に応じて照射光の強度が増大するように照射部27を制御してもよい。これにより、白紙を介して受光される光の強度と白インクを介して受光される光の強度との差が閾値より小さい場合、照射光の強度を増大させるこれにより、白紙を介して受光される光の強度と白インクを介して受光される光の強度との差が広くなって、光の強度の大小関係が明確になるため、インクの吐出不良を検出する精度を上げることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 インクジェット記録装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 媒体供給部
20 画像記録部
21 搬送ドラム
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
25 定着部
26 デリバリー部
27A 検出ユニット
27 照射部
28 受光部
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
242 記録ヘッド