(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】燃料ホルダ
(51)【国際特許分類】
G21F 5/012 20060101AFI20221129BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G21F5/012
G21C19/32 040
(21)【出願番号】P 2019055358
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000165697
【氏名又は名称】原子燃料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】井坂 浩順
(72)【発明者】
【氏名】河野 智美
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-081815(JP,A)
【文献】特許第6040335(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/012
G21C 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する2個の壁面部を有する第1半割体及び第2半割体と、頂部と、底部とで燃料集合体を収容する収容空間が形成される収容殻と、
前記第1半割体及び前記第2半割体を互いに開閉可能に連結する連結手段と、
前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時に開放不能に係止する係止手段と、を備える燃料ホルダであって、
前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時の互いの位置を規制する位置規制手段を更に備え
、
前記位置規制手段は、前記第1半割体及び前記第2半割体の2個の前記壁面部の端辺のうち、前記連結手段により連結されていない側の自由辺に設けられた突き受け部又は突き止め部であり、
前記突き受け部は、凹部形状に形成され、前記第1半割体及び前記第2半割体の一方に設けられ、
前記突き止め部は、前記突き受け部に嵌合可能な凸部形状に形成され、前記第1半割体及び前記第2半割体の他方に設けられ、
前記突き受け部及び突き止め部は、互いに直接当接する、
ことを特徴とする燃料ホルダ。
【請求項2】
前記係止手段は、出没自在な係止ピンと、前記係止ピンが嵌入される係止穴を含み、
前記係止ピンは、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの一方に取り付けられた係止ホルダの穴に挿入され、
前記係止穴は、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの他方に取り付けられた係止ブロックに形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料ホルダ。
【請求項3】
前記係止ピンは、前記係止ブロックに対向しない反対側の先端が先細りの円錐状に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料ホルダ。
【請求項4】
直交する2個の壁面部を有する第1半割体及び第2半割体と、頂部と、底部とで燃料集合体を収容する収容空間が形成される収容殻と、
前記第1半割体及び前記第2半割体を互いに開閉可能に連結する連結手段と、
前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時に開放不能に係止する係止手段と、を備える燃料ホルダであって、
前記係止手段は、出没自在な係止ピンと、前記係止ピンが嵌入される係止穴を含み、
前記係止穴は、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの他方に取り付けられた係止ブロックに形成され、
前記係止ピンは、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの一方に取り付けられた係止ホルダの穴に挿入されるとともに、前記係止ブロックに対向しない反対側の先端が先細りの円錐状
の後端テーパ部として形成され
、
前記係止ピンには、前記係止ピンを操作するための操作手段が設けられ、
前記係止ホルダには、前記操作手段をガイドする溝が設けられ、
前記係止ピンは、前記係止ピンを前記係止穴に係止した状態で前記後端テーパ部よりも後側が前記溝から露出しない長さに形成される
ことを特徴とする燃料ホルダ。
【請求項5】
前記係止ピンは、前記係止ブロック側の先端が先細りの円錐状に形成されている、
ことを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項に記載の燃料ホルダ。
【請求項6】
前記連結手段及び前記係止手段の少なくとも一方は、前記収容殻の外面から突出しないように設けられている、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の燃料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料集合体を収容する燃料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOX燃料など原子炉用の核燃料集合体を輸送する場合、核燃料集合体を燃料ホルダに収容し、この燃料ホルダを輸送容器に設けられた複数のロジメント穴に挿入し、輸送している(特許文献1及び2参照)。この燃料ホルダは、断面視L字状の蓋体と、断面視L字状の容器本体とが、連結手段で開閉可能に連結されて構成されており、蓋体は、閉鎖時に開放不能になるように係止手段で容器本体に係止されている。
【0003】
燃料ホルダに核燃料集合体を収容する場合、まず、燃料ホルダを頂部が上方になるように、起立した状態に設置し、蓋体を開放する。蓋体の開放後に、核燃料集合体を収容し、蓋体を再度閉鎖する。そして、蓋体が開放不能になるように、蓋体を容器本体に係止する。
【0004】
この核燃料集合体の収容作業は、現在、作業員が行っているが、作業時間の短縮や被爆の低減のために、収容作業の一部又は全部を、遠隔操作装置(例えば、ロボットなど)で行うことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3080895号公報
【文献】特許第6040335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料ホルダの蓋体及び容器本体は、5m程度と長く、また、5mm厚程度の薄い板材で形成されているため、燃料ホルダは、溶接、曲げ加工、打抜加工などの材料加工による歪を有している。
【0007】
このような歪や加工精度により、核燃料集合体を輸送容器に挿入する時(又は抜出す時)に、蓋体を閉鎖しただけでは、係止手段が設計どおりの位置に来ないことがあり、例えば、蓋体を容器本体にある程度押し付けたり、蓋体を開放側に引っ張ったりする必要がある。しかしながら、蓋体を押し付け過ぎても、引っ張り過ぎても、係止手段の位置が一致しないため、遠隔操作装置だけでは、収容作業時の閉鎖動作が困難であった。
【0008】
また、係止手段による係止状態を解除する場合にも、係止手段が設計どおりの位置でないと、係止ピンが撓むことがあるため、係止ピンを係止穴から所定の力で引き抜くことができず、遠隔操作装置だけでは、取出作業時の開放動作も困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、係止手段の係止作業又は解除作業を容易にする燃料ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る1つの態様は、直交する2個の壁面部を有する第1半割体及び第2半割体と、頂部と、底部とで燃料集合体を収容する収容空間が形成される収容殻と、前記第1半割体及び前記第2半割体を互いに開閉可能に連結する連結手段と、前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時に開放不能に係止する係止手段と、を備える燃料ホルダであって、前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時の互いの位置を規制する位置規制手段を更に備えるものである。
(2)上記(1)の態様において、前記位置規制手段は、前記第1半割体又は前記第2半割体のうち一方の前記壁面部の内面に設けられた突き当て部であり、前記突き当て部は、閉鎖時に前記第1半割体又は前記第2半割体のうち他方の前記壁面部の内面に直接当接してもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記位置規制手段は、前記第1半割体及び前記第2半割体の2個の前記壁面部の端辺のうち、前記連結手段により連結されていない側の自由辺に設けられた突き受け部又は突き止め部であり、前記突き受け部及び突き止め部は、互いに直接当接してもよい。
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの態様において、前記係止手段は、出没自在な係止ピンと、前記係止ピンが嵌入される係止穴を含み、前記係止ピンは、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの一方に取り付けられた係止ホルダの穴に挿入され、前記係止穴は、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの他方に取り付けられた係止ブロックに形成されてもよい。
(5)上記(4)の態様において、前記係止ピンは、前記係止ブロックに対向しない反対側の先端が先細りの円錐状に形成されてもよい。
(6)本発明に係る別の1つの態様は、直交する2個の壁面部を有する第1半割体及び第2半割体と、頂部と、底部とで燃料集合体を収容する収容空間が形成される収容殻と、前記第1半割体及び前記第2半割体を互いに開閉可能に連結する連結手段と、前記第1半割体及び前記第2半割体の閉鎖時に開放不能に係止する係止手段と、を備える燃料ホルダであって、前記係止手段は、出没自在な係止ピンと、前記係止ピンが嵌入される係止穴を含み、前記係止穴は、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの他方に取り付けられた係止ブロックに形成され、前記係止ピンは、前記第1半割体又は前記第2半割体のうちの一方に取り付けられた係止ホルダの穴に挿入されるとともに、前記係止ブロックに対向しない反対側の先端が先細りの円錐状に形成されているものである。
(7)上記(4)から(6)までのいずれか1つの態様において、前記係止ピンは、前記係止ブロック側の先端が先細りの円錐状に形成されてもよい。
(8)上記(1)から(7)までのいずれか1つの態様において、前記連結手段及び前記係止手段の少なくとも一方は、前記収容殻の外面から突出しないように設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、係止手段の係止作業又は解除作業を容易にする燃料ホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の燃料ホルダを装着した輸送容器を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の燃料ホルダを示す説明図である。
【
図3】燃料ホルダの連結手段及び係止手段を示す
図2のB-B線で切断した拡大断面図である。
【
図5】燃料ホルダの位置規制手段を示す
図2のC-C線で切断した拡大断面図である。
【
図6】位置規制手段の位置規制要領を示す説明図である。
【
図11】変形例1の燃料ホルダの係止手段及び位置規制手段を示す
図2のD-D線で切断した拡大断面図に相当する図である。
【
図12】変形例1の位置規制手段の位置規制要領を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態の燃料ホルダ1を装着した輸送容器100を示す断面図である。
燃料ホルダ1は、
図1に示すように、輸送容器100に設けられた矩形のロジメント穴101に装着され、輸送される。この燃料ホルダ1には、原子炉用の核燃料、例えば混合酸化物燃料(MOX燃料)などの燃料集合体(図示なし)が収容されている。なお、輸送容器100は、輸送時は横倒しにされ、燃料ホルダ1の挿入又は抜出時は鉛直方向に縦にされる。
【0015】
図2は、本発明に係る実施形態の燃料ホルダ1を示す説明図であり、(a)正面図、(b)下面図、(c)右側面図、(d)左側面図である。
【0016】
また、燃料ホルダ1は、
図2に示すように、燃料集合体を収容する収容殻2を備えている。この収容殻2は、第1半割体10及び第2半割体20と、頂部30と、底部40とで、燃料集合体を収容する収容空間を形成している。なお、収容殻2を構成する、第1半割体10、第2半割体20、頂部30、底部40などの材質は、収容する燃料集合体の寸法や重量による必要強度、耐熱性などを考慮して適宜選択されるが、通常、SUS304などのステンレス鋼や耐熱ニッケル基合金などである。
【0017】
第1半割体10は、5mm程度の厚みの一枚の板材から折曲加工により形成された断面L字状のものであり、直交する2個の壁面部11,12を有する(
図2(d)参照)。この壁面部11,12は、頂部30側に上部ガイド80を有する。
【0018】
上部ガイド80は、側面視で円弧状又は頂部30側が高いテーパ状に板バネで形成されている。この上部ガイド80は、輸送容器100のロジメント穴101の内面に対して燃料ホルダ1を付勢することで、燃料ホルダ1をロジメント穴101に固定し、輸送中などの振動よる位置ズレを防止している。このとき、第1半割体10は、輸送時にロジメント穴101の上方側となるように、挿入装着される。逆に、第2半割体20は、輸送時にロジメント穴101の下方側となるように、挿入装着される。
【0019】
つぎに、第2半割体20は、第1半割体10と同じく、5mm程度の厚みの一枚の板材から折曲加工により形成された断面L字状のものであり、直交する2個の壁面部21,22を有する(
図2(d)参照)。この第2半割体20には、頂部30及び底部40が取付けられる。なお、第2半割体20の壁面部21,22には、ロジメント穴101の頂面に当接する図示されないトップフランジが、上部ガイド80よりも頂部30側に設けられている。
【0020】
ここで、第1半割体10及び第2半割体20の壁面部11,12,21,22には、複数の放熱窓70が穿設されている。この放熱窓70は、燃料ホルダ1に収容した燃料集合体の核分裂による崩壊熱を外部に放出するためのものであり、正方形、長方形あるいは平行四辺形などの四角形の開口に穿設されている。
【0021】
なお、放熱窓70は、少なくとも頂部30側及び底部40側の外面の周縁端が面取りされているが、内面も含めた残りの周縁端も、面取りされている方が好ましい。
【0022】
また、頂部30側又は底部40側に最も近い放熱窓70は、頂部30及び底部40を結ぶ軸方向に長い長方形の開口に穿設されるとよい。放熱窓70の開口面積は、崩壊熱などから演算により設定されるため、小さくすることはできないが、放熱窓70を、頂部30及び底部40を結ぶ軸方向に長い長方形の開口とすることで、燃料ホルダ1の頂部30及び底部40を結ぶ軸方向の強度、すなわち座屈強度を高めることができる。そのため、燃料ホルダ1の挿入方向に直交する方向の放熱窓70の周囲が、外側に膨らんで変形するようなことが起こらない。
【0023】
頂部30は、燃料ホルダ1の上方を閉止するもので、燃料ホルダ1を縦置きする際に用いられるアイボルトやフックなどの吊下治具(図示なし)が頂面に設けられる。この頂部30は、溶接により第2半割体20に取付けられる。
【0024】
底部40は、例えば、第1半割体10側の下端付近の側面に下部ローラ60を有する。この下部ローラ60は、輸送容器100のロジメント穴101の内面に対して燃料ホルダ1を付勢することで、燃料ホルダ1をロジメント穴101に片寄せ固定(固縛)し、輸送中などの振動による位置ズレを防止している。
【0025】
つぎに、連結手段3及び係止手段4について説明する。
図3は、燃料ホルダ1の連結手段3及び係止手段4を示す
図2のB-B線で切断した拡大断面図である。
図4は、連結手段3を示す説明図であり、(a)正面図、(b)右側面図である。
【0026】
図3に示すように、第1半割体10及び第2半割体20は、連結手段3により互いに開閉可能に連結されている。また、第1半割体10及び第2半割体20は、輸送中などに燃料ホルダ1が開かない(開放されない)ように、係止手段4により互いに係止されている。つまり、係止手段4の作動中は、第1半割体10及び第2半割体20は互いに開放不能になっている。
【0027】
第1半割体10と第2半割体20とを連結する連結手段3には、
図4に示す、いわゆる蝶番(以降「蝶番3」とする。)が用いられる。この蝶番3は、収容殻2の外面から突出しないように設けられている。すなわち、壁面部11,21は、蝶番3の羽板の厚み分と等しいかそれ以上の深さで座繰り加工されて、蝶番3が皿ボルトなどにより取付けられている。このように蝶番3を設けることで、壁面部11,21の外面から突出することがない。
【0028】
一方、第1半割体10と第2半割体20とを係止する係止手段4は、連結手段3の対角に設けられている。なお、係止手段4の詳細構造については後述する。
【0029】
ここで、燃料ホルダ1は、第1半割体10及び第2半割体20の閉鎖時の互いの位置を規制する位置規制手段5を更に備えている。
図5は、燃料ホルダ1の位置規制手段5を示す
図2のC-C線で切断した拡大断面図である。
図6は、位置規制手段5の位置規制要領を示す説明図であり、(a)閉鎖状態、(b)開放状態である。なお、
図6(b)において、第2半割体20は、実際には円弧状の軌道で開放されている。
【0030】
位置規制手段5は、第1半割体10の壁面部12の内面に設けられた突き当て手段(以降、「突き当て手段5」という。)として形成されている。この突き当て手段5は、複数の係止手段4の近傍に複数の突き当て部15を設けており、遠隔操作装置で第2半割体20を第1半割体10に押し付けても、当接した以上に移動することができないようになっている(
図6参照)。
【0031】
突き当て部15は、閉鎖時に第2半割体20の壁面部22の内面の被当接面22bに直接当接する当接面15bを有する略三角柱状の部材で形成されている。ここで、第2半割体20の壁面部22の内面に別部材を設け、別部材に研削加工(又は切削加工)を施して、被当接面22bを形成してもよい。当接面15b及び被当接面22bに研削加工(又は切削加工)を施すことで、各面の平面度が向上するため、位置規制(位置決め)精度が向上する。
【0032】
なお、突き当て部15は、第2半割体20の内面に設けられ、閉鎖時に第1半割体10の壁面部12に直接当接してもよく、あるいは、連結手段3と同じ側の隅部に設けられてもよい。
【0033】
図3に戻って、係止手段4について再度説明する。
図7は、係止ブロック14を示す説明図であり、(a)正面断面図、(b)右側面図である。
図8は、係止ピン24を示す正面図である。
図9は、係止ホルダ25を示す説明図であり、(a)正面図、(b)右側面図、(c)上面図である。
図10は、係止手段4の係止要領を示す説明図であり、(a)正面図、(b)E-E線で切断した断面図である。
【0034】
係止手段4は、
図10に示すように、第1半割体10に設けられた係止穴14aに、第2半割体20に移動可能に設けられた係止ピン24を係止させることで、第1半割体10及び第2半割体20を係止状態にする。
【0035】
係止穴14aは、壁面部12の内面側に皿ボルトなどにより固定された係止ブロック14に形成されており、係止ピン24の前端24sと対向している。ただし、係止穴14aは、底部40側に位置し、係止ピン24は、頂部30側に位置して、それぞれ対向している。
【0036】
また、係止穴14aは、
図7(a)に示すように、係止ピン24側の第1テーパ穴14a1と、第2テーパ穴14a2と、第1テーパ穴14a1と第2テーパ穴14a2とを接続するストレート穴14a3と、下穴14a4と、から形成されている。
【0037】
このうち、第1テーパ穴14a1は、係止ピン24の前端24sをガイドするもので、60°以上90°以下のテーパ角θ3を有し、第2テーパ穴14a2は、後述する係止ピン24の前端テーパ部24fにおけるテーパ角θ1と等しいテーパ角θ4を有している。
【0038】
一方、係止ピン24は、壁面部22の内面側に皿ボルトなどにより固定された係止ホルダ25に対して移動可能に設けられている。係止ピン24は、
図8に示すように、係止ブロック14側の先端が先細りの円錐状(断面視先細りのテーパ状)の前端テーパ部24fとして形成され、前端24sが球面SRとして形成されている。また、係止ピン24は、係止ブロック14に対向しない反対側の先端が先細りの円錐状(断面視先細りのテーパ状)の後端テーパ部24rとして形成されている。
【0039】
また、係止手段4の解除動作時に係止ピン24が後述する係止ホルダ25の溝28の開口に引っ掛かり難くなるように、係止ピン24は、(好ましくは後端テーパ部24rよりも)後端テーパ部24r側が溝28から露出しないような(視認できない)長さに形成されているとよい。
【0040】
この前端テーパ部24fは、45°以上60°以下のテーパ角θ1を有し、後端テーパ部24rは、45°以上60°以下のテーパ角θ2を有している。なお、テーパ角θ1及びテーパ角θ2は、異なる角度であってもよい。また、係止ピン24には、ボルトなどの操作手段26が取付けられている。
【0041】
係止ホルダ25は、係止ピン24を移動可能(出没自在)に保持する穴25aが形成されており、穴25aの奥側にはコイルバネなどの弾性部材27が設置される(
図10参照)。また、係止ホルダ25には、操作手段26の軸部をガイドする溝28が、壁面部12側から壁面部22に向かって形成されている。くわしくは、溝28は、壁面部22側で、係止ピン24の先端方向(係止穴14aの方向)に向かって延びる溝28aと、壁面部12側で、係止ピン24の先端方向(係止穴14aの方向)に向かって延び、溝28aよりも長い溝28bと、溝28aと溝28bとに連通する溝28cとで形成されている(
図9参照)。
【0042】
このような係止手段4を用いて、第1半割体10と第2半割体20とを係止する場合は、まず操作手段26を溝28a側に位置させ、係止ピン24を引込めた状態にしておく。そして、連結手段3で連結された第1半割体10及び第2半割体20の端面(固定辺11a、21a)とは反対の端面(自由辺12a,22a)同士を突合わせる。その後、操作手段26を遠隔操作装置又は作業員が把持して溝28b側に移動すると、操作手段26が取付けられた係止ピン24は、弾性部材27により付勢されて、突出し始め、係止ブロック14の係止穴14aに嵌入(挿入)され、係止される。
【0043】
このとき、すなわち、第1半割体10及び第2半割体20の係止状態では、操作手段26の頭部は、第2半割体20の外面から突出することがない(
図3参照)。また、係止ピン24は、後端テーパ部24r側に装着された弾性部材27により、前端24s側に付勢されているため、輸送中の振動などにより、係止ピン24が係止穴14aから抜け出るようなことがない。
【0044】
なお、係止穴14aと係止ピン24との係止状態は、相対的な関係であるから、係止ブロック14(係止穴14a)が第2半割体20側に設けられ、係止ピン24が第1半割体10側に設けられてもよい。
【0045】
ところで、上記実施形態の位置規制手段5は、突き当て手段として形成されていたが、変形例1の位置規制手段50は、突き止め手段(以降、「突き止め手段50」という。)として形成されている。
図11は、変形例1の燃料ホルダ1の係止手段4及び位置規制手段50を示す
図2のD-D線で切断した拡大断面図に相当する図である。
図12は、変形例1の位置規制手段50の位置規制要領を示す説明図であり、(a)閉鎖状態、(b)開放状態である。なお、
図12(a)において、第1半割体10を図示せず、
図12(b)において、第1半割体10は、実際には円弧状の軌道で開放されている。
【0046】
突き止め手段50は、第1半割体10及び第2半割体20の2個の壁面部11,12,21,22の端辺11a,12a,21a,22aのうち、連結手段3により連結されていない側(連結手段3により連結された固定辺11a,21aとは異なる側)の自由辺12a,22aに設けられた突き止め部51及び突き受け部52である。
【0047】
この突き止め部51及び突き受け部52は、係止手段4の係止ブロック14及び係止ホルダ25の一部に一体的に直接形成されているが、別部品として形成され、係止手段4に固定されてもよく、あるいは、係止手段4から独立した別部品として形成され、係止手段4の近傍に設けられてもよい。
【0048】
突き受け部52は、例えば、燃料ホルダ1に対する外側の第1突き受け面52aと、内側の第2突き受け面52bと、を有する凹部形状に形成されている。この第1突き受け面52aは、壁面部12が延在する方向を基準面とすると、基準面から40°外側に傾斜しており、第2突き受け面52bは、基準面から50°内側に傾斜しているが、同じ角度で傾斜していてもよく、第1突き受け面52aと第2突き受け面52bとの交差角は、鈍角でも鋭角でもよい。
【0049】
一方、突き止め部51は、第1突き受け面52a及び第2突き受け面52bに嵌合可能な第1突き止め面51a及び第2突き止め面51bを有する凸部形状に形成されている。
【0050】
このように、突き止め部51及び突き受け部52は、突き止められるように互いに直接嵌合又は当接し、嵌合する。ただし、突き止め部51及び突き受け部52の凹部及び凸部の形状は、上述した形状に限らず、嵌合することで、第1半割体10及び第2半割体20の位置規制(位置決め)が可能であれば、半円柱及び半円溝のような関係の形状など他の形状であってもよい。また、突き止め部51と突き受け部52との嵌合状態は、相対的な関係であるから、突き受け部52が第1半割体10(係止ブロック14)側に設けられ、突き止め部51が第2半割体20(係止ホルダ25)側に設けられてもよい。
【0051】
さらに、燃料ホルダ1は、突き当て手段5及び突き止め手段50の両方を、第1及び第2の位置規制手段5,50として備えているものが好ましいが、いずれか一方のみを備えている場合でも、係止手段4の係止作業性を向上させることができる。
【0052】
このような燃料ホルダ1に燃料集合体を収容することで、係止手段4の係止又は解除動作が容易になる。また、燃料集合体を収容した燃料ホルダ1を、輸送容器100に設けられた矩形のロジメント穴101に装着して、燃料集合体を輸送することで、燃料ホルダ1の外面及びロジメント穴101の内面に、接触痕又は傷が付くことがない。
【0053】
さらに、輸送容器100の性能維持のため、ロジメント穴101の損傷の状況を確認し、必要に応じて補修又は交換する問題が発生することがない。しかも、輸送中は、燃料ホルダ1が、上部ガイド80及び下部ローラ60によりロジメント穴101の内面に付勢されているため、振動などによる位置ズレが起こらず、表面の損傷を防止することができる。
【0054】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態の燃料ホルダ1は、直交する2個の壁面部11,12,21,22を有する第1半割体10及び第2半割体20と、頂部30と、底部40とで燃料集合体を収容する収容空間が形成される収容殻2と、第1半割体10及び第2半割体20を互いに開閉可能に連結する連結手段3と、第1半割体10及び第2半割体20の閉鎖時に開放不能に係止する係止手段4と、を備える燃料ホルダ1であって、第1半割体10及び第2半割体20の閉鎖時の互いの位置を規制する位置規制手段5,50を更に備えるものである。これにより、第1半割体10及び第2半割体20を閉鎖した時に、係止手段4が設計どおりの適切な位置に存在するため、係止作業を容易にすることができる。なお、係止手段4の係止作業を容易にすることは、係止手段4の解除作業を容易にすることにもつながる。
【0055】
実施形態の位置規制手段5は、第2半割体20の壁面部22の内面に設けられた突き当て部15であり、突き当て部15は、閉鎖時に第1半割体10の壁面部12の内面に直接当接する。これにより、第1半割体10を押し付ける動作だけで、第1半割体10の開閉方向における係止手段4の位置を規制することができる。
【0056】
実施形態の位置規制手段50は、第1半割体10及び第2半割体20の2個の壁面部11,12,21,22の端辺11a,12a,21a,22aのうち、連結手段3により連結されていない側の自由辺12a,22aに設けられた突き止め部51及び突き受け部52であり、突き止め部51及び突き受け部52は、互いに直接当接する。これにより、係止手段4の近傍で位置を規制することができる。また、第1半割体10の開閉方向に交差する方向(あるいは、略直交する方向)における係止手段4の位置を規制することができる。
【0057】
実施形態の係止ピン24は、係止ブロック14側の先端が先細りの円錐状に形成されている。これにより、係止手段4の位置が多少適切でない場合でも、適切な位置に誘導することができる。
【0058】
実施形態の係止ピン24は、係止ブロック14に対向しない反対側の先端が先細りの円錐状に形成されている。これにより、燃料ホルダ1の使用後に、燃料ホルダ1自体が変形して、係止手段4の位置がズレていたとしても、係止手段4の解除作業を容易にすることができる。
【0059】
実施形態では、連結手段3及び係止手段4の少なくとも一方は、収容殻2の外面から突出しないように設けられている。これにより、燃料ホルダ1(収容殻2)から突出する部品は、上部ガイド80及び下部ローラ60だけであるため、これら以外の部品がロジメント穴101の内面に接触することによる、損傷を防止することができる。なお、連結手段3及び係止手段4の両方が、収容殻2の外面から突出しないように設けられると、燃料ホルダ1から突出する部品を更に減らすことができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 燃料ホルダ
2 収容殻
3 連結手段(蝶番)
4 係止手段
5 位置規制手段(突き当て手段)
10 第1半割体
11,12 壁面部、11a 端辺(固定辺),12a 端辺(自由辺)、14 係止ブロック、14a 係止穴、14a1 第1テーパ穴、14a2 第2テーパ穴、14a3 ストレート穴、14a4 下穴、15 突き当て部、15b 当接面
20 第2半割体
21,22 壁面部、21a 端辺(固定辺),22a 端辺(自由辺)、22b 被当接面、24 係止ピン、24f 前端テーパ部、24r 後端テーパ部、24s 前端、25 係止ホルダ、25a 穴、26 操作手段、27 弾性部材、28,28a,28b,28c 溝
30 頂部
40 底部
50 位置規制手段(突き止め手段)
51 突き止め部、51a 第1突き止め面、51b 第2突き止め面、52 突き受け部、52a 第1突き受け面、52b 第2突き受け面、
60 下部ローラ
70 放熱窓
80 上部ガイド
100 輸送容器、101 ロジメント穴