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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20221129BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20221129BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N21/47 Z
G01N21/59 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019056241
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159716
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247797(US,A1)
【文献】特開2014-119418(JP,A)
【文献】特表2016-525344(JP,A)
【文献】国際公開第2014/210223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 21/47
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の検出対象物質と結合する第1の抗体が固定されている第1の領域と、前記第1の領域以外の第2の領域とからなり、前記第1の領域と前記第2の領域とが互いに重ならないよう市松状に配置される反応領域が形成されている分析用基板と、
前記第1及び前記第2の領域に前記第1の検出対象物質を反応させ、反応により捕捉された前記第1の検出対象物質に対してカウント対象物質を結合させた前記分析用基板に対してレーザ光を照射し、前記分析用基板からの反射光を受光し、受光レベル信号を生成する光ピックアップと、
前記受光レベル信号から前記カウント対象物質を示すパルス信号を抽出し、前記パルス信号内のパルス数をカウントする信号処理回路と、
前記光ピックアップに対し前記分析用基板上を走査するように制御する制御部と、
を備え、
前記信号処理回路は、前記第1の領域を走査する期間に相当する第1のゲート信号及び前記第2の領域を走査する期間に相当する第2のゲート信号を生成し、前記第1のゲート信号及び前記パルス信号に基づいて前記第1の領域における第1のカウント値を算出し、前記第2のゲート信号及び前記パルス信号に基づいて前記第2の領域における第2のカウント値を算出する第1の演算部を有し、
前記制御部は、前記第1及び前記第2のカウント値に基づいて前記反応領域における相対カウント値を算出する第2の演算部を有す
分析装置。
【請求項2】
前記第2の演算部は、前記第1のカウント値を前記第2のカウント値で除算して前記相対カウント値を算出する請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
記第1のカウント値は、複数の前記第1の領域におけるカウント値を合算して算出され、前記第2のカウント値は、複数の前記第2の領域におけるカウント値を合算して算出される請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記カウント対象物質は、さらに第2の検出対象物質とも結合し、
前記第2の領域は、前記第2の検出対象物質と結合する第2の抗体が固定されている第3の領域と、前記第3の領域以外の領域である第4の領域とからなり、
前記第1、前記第3、及び前記第4の領域に前記第1の検出対象物質及び前記第2の検出対象物質を反応させ、反応により捕捉された前記第1の検出対象物質及び前記第2の検出対象物質に対してカウント対象物質を結合させた前記分析用基板において、
前記第1の演算部は、前記第1のカウント値と、前記第3の領域における第3のカウント値と、前記第4の領域における第4のカウント値とを算出し、
前記第2の演算部は、前記第1のカウント値、前記第3のカウント値、及び前記第4のカウント値のうちの少なくとも2つのカウント値に基づいて前記相対カウント値を算出す
請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
第1の検出対象物質と結合する第1の抗体が固定されている第1の領域と前記第1の領域以外の第2の領域とからなり、前記第1の領域と前記第2の領域とが互いに重ならないよう市松状に配置される反応領域に対して、前記第1の検出対象物質を反応させ、反応により捕捉された前記第1の検出対象物質に対してカウント対象物質を結合させた分析用基板において、
前記分析用基板に対してレーザ光を照射し、前記分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成し、
前記受光レベル信号から前記カウント対象物質を示すパルス信号を抽出し、前記パルス信号内のパルス数をカウントし、
前記第1の領域において前記パルス数をカウントした第1のカウント値と、前記第2の領域において前記パルス数をカウントした第2のカウント値とを算出し、
第2の演算部が、前記第1及び第2のカウント値に基づいて前記反応領域における相対カウント値を算出す
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原、抗体等の生体物質を分析するための分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。
【0003】
特許文献1には、複数のウェルを有する分析用ユニットを用いて、分析用基板上に抗体を固定し、この抗体に検出対象物質を結合させ、この検出対象物質に検出対象物質を標識する微粒子を結合させることにより、検出対象物質をサンドイッチ法で捕捉した反応領域を形成し、反応領域における微粒子をカウントすることにより、検出対象物質を間接的に定量する定量方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-58242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の定量方法を用いて免疫検定の分析をおこなう場合、複数の抗体をそれぞれ異なる反応領域に固定し、それぞれの抗体が固定された反応領域ごとの微粒子の数をカウントし、得られたカウント値の比率(相対カウント値)を求めることにより検出対象物質がどの抗体に結合するかを求めている。しかしながら、上記の分析方法は分析用基板上の反応領域において抗体が均一に固定されている状態であるという仮定で成り立つ。ところが、抗体の固定の状態が不均一である状況が発生すると、相対カウント値の精度が低下してしまい、分析の精度が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、それぞれの反応領域において抗体の固定の状態が不均一である場合においても、免疫検定による分析を精度よく行うことができる分析装置及び分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の検出対象物質と結合する第1の抗体が固定されている第1の領域と、前記第1の領域以外の第2の領域とからなり、前記第1の領域と前記第2の領域とが互いに重ならないよう市松状に配置される反応領域が形成されている分析用基板と、前記第1及び前記第2の領域に前記第1の検出対象物質を反応させ、反応により捕捉された前記第1の検出対象物質に対してカウント対象物質を結合させた前記分析用基板に対してレーザ光を照射し、前記分析用基板からの反射光を受光し、受光レベル信号を生成する光ピックアップと、前記受光レベル信号から前記カウント対象物質を示すパルス信号を抽出し、前記パルス信号内のパルス数をカウントする信号処理回路と、前記光ピックアップに対し前記分析用基板上を走査するように制御する制御部とを備え、前記信号処理回路は、前記第1の領域を走査する期間に相当する第1のゲート信号及び前記第2の領域を走査する期間に相当する第2のゲート信号を生成し、前記第1のゲート信号及び前記パルス信号に基づいて前記第1の領域における第1のカウント値を算出し、前記第2のゲート信号及び前記パルス信号に基づいて前記第2の領域における第2のカウント値を算出する第1の演算部を有し、前記制御部は、前記第1及び前記第2のカウント値に基づいて前記反応領域における相対カウント値を算出する第2の演算部を有する分析装置を提供する。
【0008】
本発明は、第1の検出対象物質と結合する第1の抗体が固定されている第1の領域と前記第1の領域以外の第2の領域とからなり、前記第1の領域と前記第2の領域とが互いに重ならないよう市松状に配置される反応領域に対して、前記第1の検出対象物質を反応させ、反応により捕捉された前記第1の検出対象物質に対してカウント対象物質を結合させた分析用基板において、前記分析用基板に対してレーザ光を照射し、前記分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成し、前記受光レベル信号から前記カウント対象物質を示すパルス信号を抽出し、前記パルス信号内のパルス数をカウントし、前記第1の領域において前記パルス数をカウントした第1のカウント値と、前記第2の領域において前記パルス数をカウントした第2のカウント値とを算出し、第2の演算部が、前記第1及び第2のカウント値に基づいて前記反応領域における相対カウント値を算出する分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分析装置及び分析方法によれば、相対カウント値を用いた分析方法において、同一条件で形成された反応領域ごとに検出対象物質の補足状態が異なる場合であっても検出対象物質を精度よく分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の分析装置の一例を示す構成図である。
図2】反応領域における検出対象物質捕捉領域とブランク領域との位置関係の一例を示す図である。
図3】検出対象物質捕捉領域において検出対象物質が抗体と微粒子とによって分析用基板上にサンドイッチ法で捕捉されている状態を模式的に示す図である。
図4】一実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図5】基準位置検出信号と計測ゲート信号GSと受光レベル信号と微粒子パルス信号との関係の一例を示す図である。
図6】反応領域における複数の検出対象物質捕捉領域を示す図である。
図7】反応領域における複数のブランク領域を示す図である。
図8】反応領域の検出対象物質捕捉領域におけるカウント値の面内分布の比較例を示す図である。
図9】反応領域のブランク領域におけるカウント値の面内分布の比較例を示す図である。
図10】反応領域の検出対象物質捕捉領域におけるカウント値の面内分布の比較例を示す図である。
図11】反応領域のブランク領域におけるカウント値の面内分布の比較例を示す図である。
図12】反応領域の検出対象物質捕捉領域及びブランク領域におけるカウント値の面内分布の実施例を示す図である。
図13】反応領域の検出対象物質捕捉領域及びブランク領域におけるカウント値の面内分布の実施例を示す図である。
図14】反応領域における検出対象物質捕捉領域とブランク領域との位置関係の一例を示す図である。
図15】反応領域における検出対象物質捕捉領域とブランク領域との位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を用いて、一実施形態の分析装置の構成例を説明する。分析装置1は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6と、ガイド軸7と、光ピックアップ8と、光ピックアップ駆動回路9と、信号処理回路10と、制御部20とを備える。
【0012】
分析用基板30は、分析用基板30上に形成されている反応領域40が下向きになるようにターンテーブル2上に載置される。分析用基板30は、例えば円板形状を有する光ディスクである。クランパ3は、ターンテーブル2に対して離隔する方向及び接近する方向に駆動される。分析用基板30は、クランパ3とターンテーブル2とによって保持される。
【0013】
ターンテーブル駆動部4は、ターンテーブル2を分析用基板30及びクランパ3と共に、回転軸C2回りに回転駆動させる。ターンテーブル駆動部4としてスピンドルモータを用いてもよい。ターンテーブル駆動回路5はターンテーブル駆動部4を制御する。例えば、ターンテーブル駆動回路5は、ターンテーブル2が分析用基板30及びクランパ3と共に一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動部4を制御する。
【0014】
基準位置検出センサ6は、分析用基板30の外周部の近傍に配置されている。基準位置検出センサ6は、例えばフォトリフレクタ等の光センサである。基準位置検出センサ6は、分析用基板30が回転している状態で、分析用基板30の外周部に検出光6aを照射し、分析用基板30からの反射光を受光する。
【0015】
基準位置検出センサ6は、分析用基板30の切欠き部31を検出して基準位置検出信号KSを生成し、信号処理回路10へ出力する。基準位置検出信号KSは、例えば切欠き部31が基準位置検出センサ6の検出位置、即ち検出光6aが照射される位置に到達すると立ち上がってオン状態となり、通過すると立ち下がってオフ状態となるパルス信号である。
【0016】
即ち、基準位置検出センサ6は、分析用基板30の回転周期及びトラック毎に基準位置を検出する。基準位置検出センサ6として透過型の光センサを用いてもよい。この場合、基準位置検出センサ6は、分析用基板30に検出光6aを照射し、切欠き部31を通過する検出光6aを受光することにより、分析用基板30の回転周期及びトラック毎に基準位置を検出する。
【0017】
ガイド軸7は、分析用基板30と平行に、かつ、分析用基板30の半径方向に沿って配置されている。光ピックアップ8は、ガイド軸7に支持されている。光ピックアップ8は対物レンズ81を有する。光ピックアップ駆動回路9は、光ピックアップ8の駆動を制御する。光ピックアップ駆動回路9は、光ピックアップ8をガイド軸7に沿って移動させたり、光ピックアップ8の対物レンズ81を上下方向に移動させたりする。光ピックアップ8は、ガイド軸7に沿って、ターンテーブル2の回転軸C2に直交する方向であり、分析用基板30の半径方向に、かつ、分析用基板30と平行に駆動する。
【0018】
光ピックアップ8は、分析用基板30に向けてレーザ光82を照射する。レーザ光82は、対物レンズ81によって分析用基板30の反応領域40が形成されているトラック領域32に集光される。分析用基板30を回転させた状態で、光ピックアップ8を分析用基板30の半径方向に駆動させる。光ピックアップ8は、分析用基板30からの反射光を受光する。光ピックアップ8は、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号JSを生成し、信号処理回路10へ出力する。
【0019】
制御部20は、ターンテーブル駆動回路5、光ピックアップ駆動回路9、及び信号処理回路10を制御する。制御部20は、ターンテーブル駆動回路5を制御して、ターンテーブル2を例えば一定の線速度で回転させたり、停止させたりする。制御部20は、光ピックアップ駆動回路9を制御して、光ピックアップ8を分析用基板30の半径方向の目標位置まで移動させたり、レーザ光82がトラック領域32に集光されるように対物レンズ81の上下位置を調整したりする。制御部20は、計測パラメータSPを信号処理回路10へ出力する。制御部20として、コンピュータ機器またはCPU(Central Processing Unit)を用いてもよい。
【0020】
信号処理回路10は、例えばカウンタであり、部分領域カウント値演算部11(第1の演算部)を有する。制御部20は、相対カウント値演算部21(第2の演算部)を有する。部分領域カウント値演算部11及び相対カウント値演算部21の演算処理については後述する。
【0021】
図2に示すように、反応領域40は、分析用基板30上に検出対象物質の特定の抗原と反応する抗体A(第1の抗体)が固定されている複数の検出対象物質捕捉領域41(第1の領域)と、検出対象物質の特定の抗原とは反応しない抗体Bが固定されている複数のブランク領域42(第2の領域または検出対象物質非捕捉領域)とを有する。第2の領域とは、反応領域40において第1の領域以外の領域である。
【0022】
複数の検出対象物質捕捉領域41と複数のブランク領域42とは、互いに重なり合わないように、かつ、反応領域40内において均等に分散して形成されている。図2には、検出対象物質捕捉領域41とブランク領域42とがトラック方向(図2における左右方向)及びトラック方向と直交する方向(図2における上下方向)に交互に形成されている状態を示している。
【0023】
例えば、抗体Aを含む溶液が分析用基板30上の検出対象物質捕捉領域41に対応する領域に塗布された状態で、分析用基板30をインキュベートすることにより、分析用基板30上の複数の検出対象物質捕捉領域41を形成することができる。抗体Bを含む溶液が分析用基板30上のブランク領域42に対応する領域に塗布された状態で、分析用基板30をインキュベートすることにより、分析用基板30上の複数のブランク領域42を形成することができる。
【0024】
図3に示すように、検出対象物質捕捉領域41には、分析用基板30上に抗体Aが固定され、その抗体Aによって検出対象物質43(第1の検出対象物質)が捕捉され、検出対象物質43の特定の抗原と反応する抗体が固定された微粒子44が捕捉されている。微粒子44は、検出対象物質43を標識するカウント対象物質である。即ち、検出対象物質捕捉領域41では、検出対象物質43が抗体Aと微粒子44とによって分析用基板30上にサンドイッチ法で捕捉されている。第1の検出対象物質(検出対象物質43)は、抗体Aと反応する抗原が表面に発現しているエクソソームである。
【0025】
ブランク領域42には、検出対象物質43とは反応しない抗体Bが固定されているため、検出対象物質43は分析用基板30上に結合しないが、一部の微粒子44が分析用基板30上に結合する場合がある。
【0026】
図4に示すフローチャート、及び図5図7を用いて、一実施形態の分析方法のうち、相対カウント値を算出すまでの一例を説明する。図4において、制御部20は、ステップS1にて、分析用基板30が例えば一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動回路5を制御し、ターンテーブル駆動部4にターンテーブル2を回転駆動させる。
【0027】
制御部20は、ステップS2にて、基準位置検出センサ6から分析用基板30に向けて検出光6aを照射させる。制御部20は、ステップS3にて、光ピックアップ8から分析用基板30に向けてレーザ光82を照射させる。なお、制御部20は、ステップS2の後にステップS3を実行してもよいし、ステップS3の後にステップS2を実行してもよいし、ステップS2とステップS3とを同時に実行してもよい。
【0028】
図2に示すk番目のトラックTRk上をレーザ光82が走査する場合について説明する。制御部20は、ステップS4にて、光ピックアップ駆動回路9を制御し、分析用基板30のトラックTRkにレーザ光82が照射されるように光ピックアップ8を移動させる。基準位置検出センサ6は、ステップS5にて、切欠き部31を検出することにより基準位置検出信号KSを生成し、信号処理回路10へ出力する。
【0029】
光ピックアップ8は、ステップS6にて、分析用基板30からの反射光を受光する。光ピックアップ8は、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号JSを生成し、信号処理回路10へ出力する。制御部20は、ステップS7にて、計測パラメータSPを信号処理回路10へ出力する。計測パラメータSPは、複数の計測ゲート信号GSを生成するための計測パラメータであり、反応領域40の数、切欠き部31から各反応領域40までの距離に相当する時間、及び各トラックにおける計測ゲート信号GSのタイミング及びゲート幅等の計測情報を含む。
【0030】
信号処理回路10は、基準位置検出センサ6から基準位置検出信号KSを取得し、光ピックアップ8から受光レベル信号JSを取得し、制御部20から計測パラメータSP及びトラック情報を取得する。トラック情報TFは、上記のステップS4においてレーザ光82が照射される目的のトラック(測定対象のトラック)の情報(例えばトラック番号またはトラック位置等の情報)を含む。ここでは、信号処理回路10は、制御部20からトラックTRkの情報を取得することになる。
【0031】
図5の(a)~(e)の縦軸は信号レベルを示し、横軸は時間軸を示している。図5の(a)は、基準位置検出信号KSを示している。信号処理回路10は、ステップS8にて、基準位置検出信号KSとトラック情報とに基づいて、測定対象のトラックTRにおける位相SAを取得する。位相SAは、トラックごとに予め設定されている。信号処理回路10は、トラックごとに設定された位相SAをテーブル形式のデータとして記憶する記憶部を有していてもよい。信号処理回路10は、トラック情報から現在測定しているトラックのトラック番号またはトラック位置を認識し、そのトラックに対応する位相SAを取得することができる。
【0032】
さらに、信号処理回路10は、基準位置検出信号KSと位相SAとに基づいて、計測ゲート信号GSを生成する。例えば、信号処理回路10は、トラックTRkにおける位相SAkを取得し、基準位置検出信号KSと位相SAkとに基づいて、計測ゲート信号GSkを生成する。
【0033】
図5の(b)に示すように、信号処理回路10は、トラックTRkにおける位相SAkaを取得し、基準位置検出信号KSと位相SAkaとに基づいて、トラックTRkにおける検出対象物質捕捉領域41を測定するための計測ゲート信号GSka(第1のゲート信号)を生成する。計測ゲート信号GSkaは、トラックTRkにおいて、レーザ光82が検出対象物質捕捉領域41に到達した時点で立ち上がり、検出対象物質捕捉領域41を通過した時点で立ち下がるゲートパルス信号である。即ち、計測ゲート信号GSkaのパルス幅PWaは、レーザ光82が検出対象物質捕捉領域41上を走査する期間に相当する。
【0034】
図5の(d)に示すように、信号処理回路10は、トラックTRkにおける位相SAkbを取得し、基準位置検出信号KSと位相SAkbとに基づいて、トラックTRkにおけるブランク領域42を測定するための計測ゲート信号GSkb(第2のゲート信号)を生成する。計測ゲート信号GSkbは、トラックTRkにおいて、レーザ光82がブランク領域42に到達した時点で立ち上がり、ブランク領域42を通過した時点で立ち下がるゲートパルス信号である。即ち、計測ゲート信号GSkbのパルス幅PWbは、レーザ光82がブランク領域42上を走査する期間に相当する。
【0035】
図5の(c)に示すように、信号処理回路10は、ステップS9にて、計測ゲート信号GSkaの立ち上がり時点から立ち下がり時点までの期間(パルス幅PWaに相当する)に、光ピックアップ8から出力された受光レベル信号JSから微粒子パルス信号BSa(第1の検出信号)を抽出し、微粒子パルス信号BSa内のパルス数をカウントする。微粒子パルス信号BSaは、計測ゲート信号GSkaの立ち上がり時点から立ち下がり時点までの期間の間に受光レベル信号JSから抽出されたパルス群である。検出対象物質捕捉領域41に捕捉されている検出対象物質43(微粒子44)は、微粒子パルス信号BSa内のパルス数に基づいてカウントされることになる。つまり、信号処理回路10は、検出対象物質43(エクソソーム)を標識する微粒子44をカウントすることによって検出対象物質43をカウントしている。
【0036】
図5の(e)に示すように、さらに、信号処理回路10は、計測ゲート信号GSkbの立ち上がり時点から立ち下がり時点までの期間(パルス幅PWbに相当する)に、光ピックアップ8から出力された受光レベル信号JSから微粒子パルス信号BSb(第2の検出信号)を抽出し、微粒子パルス信号BSb内のパルス数をカウントする。微粒子パルス信号BSbは、計測ゲート信号GSkbの立ち上がり時点から立ち下がり時点までの期間の間に受光レベル信号JSから抽出されたパルス群である。
【0037】
ブランク領域42には、検出対象物質43とは反応しない抗体Bが固定されている。従って、ブランク領域42では、検出対象物質43は分析用基板30上に結合しない。しかし、一部の微粒子44が分析用基板30上に結合する場合がある。
【0038】
図5の(e)に示すように、ブランク領域42において一部の微粒子44が分析用基板30上に結合すると、信号処理回路10は、これら一部の微粒子44を受光レベル信号JSから微粒子パルス信号BSbとして検出する。
【0039】
制御部20、基準位置検出センサ6、光ピックアップ8、または信号処理回路10は、ステップS4~S9の処理を反応領域40における全てのトラックTRで実行し、検出対象物質捕捉領域41ごと及びブランク領域42ごとに合算する。
【0040】
図6に示すように、部分領域カウント値演算部11は、ステップS10にて、反応領域40の全ての検出対象物質捕捉領域41におけるカウント値を合算し、捕捉領域カウント値Ca(第1のカウント値)として算出する。即ち、捕捉領域カウント値Caは、反応領域40の検出対象物質捕捉領域41に捕捉されている微粒子44のカウント値である。以下、捕捉領域カウント値Caを単にカウント値Caとする。部分領域カウント値演算部11は、反応領域40の全ての検出対象物質捕捉領域41におけるカウント値から単位面積当たりの平均値を算出し、この平均値をカウント値Caとしてもよいし、分割した個別の部分領域の面積がすべて同じであれば、1部分領域あたりの平均値としてもよい。
【0041】
図7に示すように、さらに、部分領域カウント値演算部11は、反応領域40の全てのブランク領域42におけるカウント値を合算し、ブランク領域カウント値Cb(第2のカウント値)として算出する。以下、ブランク領域カウント値Cbを単にカウント値Cbとする。部分領域カウント値演算部11は、反応領域40の全てのブランク領域42におけるカウント値から単位面積当たりの平均値を算出し、この平均値をカウント値Cbとしてもよいし、分割した個別のブランク領域の面積がすべて同じであれば、1ブランク領域あたりの平均値としてもよい。さらに、部分領域カウント値演算部11は、カウント値Ca及びCbを相対カウント値演算部21へ出力する。
【0042】
相対カウント値演算部21は、ステップS11にて、カウント値Caをカウント値Cbで除算し、反応領域40における相対カウント値RCを算出する。相対カウント値演算部21は、相対カウント値RCを表示装置等へ出力してもよい。分析装置1は、表示装置を備えていてもよく、外部の表示装置を用いてもよい。分析装置1は、分析用基板30上に形成されている全ての反応領域40について上記のステップS1~S11の処理を実行し、終了する。
【0043】
図8図13を用いて、本実施形態の分析装置及び分析方法の作用効果について説明する。図8図11は比較例を示し、図12及び図13は実施例を示している。図8図13では、説明をわかりやすくするために、反応領域40を正方形として36(6×6)分割された各分割領域におけるカウント値CaまたはCbを示している。
【0044】
図8及び図10は、反応領域40が検出対象物質捕捉領域41のみで形成されている場合の各分割領域におけるカウント値Caを示している。図9及び図11は、反応領域40がブランク領域42のみで形成されている場合の各分割領域におけるカウント値Cbを示している。即ち、比較例では、2つの反応領域40を用いて相対カウント値RCを算出することになる。
【0045】
図8及び図9に示すように、検出対象物質捕捉領域41及びブランク領域42におけるカウント値Ca及びCbの面内分布が均一である場合、相対カウント値RCは10(Ca(100×36)/Cb(10×36))となる。図10図8に対応し、図11図9に対応する。図10及び図11に示すように、検出対象物質捕捉領域41において、右下の一点鎖線で示す領域のカウント値Caが他の領域のカウント値Caの20%であり、ブランク領域42におけるカウント値Cbの面内分布が均一である場合、相対カウント値RCは約7.3(Ca(100×24+20×12)/Cb(10×36))となる。即ち、比較例では、反応領域40におけるカウント値の面内分布によって相対カウント値RCが異なる。
【0046】
図12は、図8及び図9に対応し、反応領域40が検出対象物質捕捉領域41とブランク領域42とを有して構成され、検出対象物質捕捉領域41及びブランク領域42におけるカウント値Ca及びCbの面内分布が均一である場合を示している。相対カウント値RCは10(Ca(100×18)/Cb(10×18))となる。
【0047】
図13は、図10及び図11に対応し、反応領域40が検出対象物質捕捉領域41とブランク領域42とを有して構成され、反応領域40において、右下の一点鎖線で示す領域のカウント値Ca及びCbが他の領域のカウント値Ca及びCbの20%である場合を示している。相対カウント値RCは10(Ca(100×12+20×6)/Cb(10×12+2×6))となる。即ち、実施例では、反応領域40におけるカウント値の面内分布の影響を低減し、均一な相対カウント値RC、または、比較例よりもばらつきの小さい相対カウント値RCを算出することができる。
【0048】
本実施形態の分析装置及び分析方法では、検出対象物質捕捉領域41とブランク領域42とを有する反応領域40が形成された分析用基板30を用いる。検出対象物質捕捉領域41には、検出対象物質43の特定の抗原と反応する抗体Aが固定されている。ブランク領域42は、検出対象物質43の特定の抗原とは反応しない抗体Bが固定されている領域、または、抗体A及びBが固定されていない領域であり、検出対象物質非捕捉領域とも称される。
【0049】
本実施形態の分析装置及び分析方法によれば、検出対象物質捕捉領域41におけるカウント値Caとブランク領域42におけるカウント値Cbとを取得し、カウント値Caをカウント値Cbで除算することにより、反応領域40におけるカウント値の面内分布の影響を低減し、均一な相対カウント値RC、または、ばらつきの小さい相対カウント値RCを算出することができる。
【0050】
従って、本実施形態の分析装置及び分析方法によれば、それぞれの反応領域で抗体の固定の状態が異なる場合においても、精度よく分析を行うことができる。また、ブランク領域42は、検出対象物質43の特定の抗原とは反応しない抗体Bが固定されているとして記載したが、ブランク領域42には、抗体が固定されていないものとしてもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0052】
図2には、検出対象物質捕捉領域41とブランク領域42とがトラック方向とトラック方向に直交する方向とに交互に形成されている状態の反応領域40を示している。検出対象物質捕捉領域41及びブランク領域42は、図2に示す配置に限定させるものではなく、適宜設定することができる。
【0053】
図14に示すように、反応領域40において検出対象物質捕捉領域41をブランク領域42よりも多く配置してもよく、検出対象物質捕捉領域41及びブランク領域42を行ごとまたは列ごとにシフトさせて配置してもよい。
【0054】
図15に示すように、反応領域40は、分析用基板30上に抗体の異なる複数の検出対象物質捕捉領域41及び45と、複数のブランク領域42とを有していてもよい。複数の検出対象物質捕捉領域45(第3の領域)には、検出対象物質43とは異なる検出対象物質(第2の検出対象物質)の特定の抗原と反応する抗体C(第2の抗体)が固定されている。第2の検出対象物質は、抗体Cと反応する抗原が表面に発現しているエクソソームである。第3の領域とは、第2の領域において抗体Cが固定されている領域である。なお、第2の領域において第3の領域以外の領域を第4の領域とする。即ち、反応領域40には、複数の検出対象物質捕捉領域と複数のブランク領域とが互いに重なり合わないように、かつ、反応領域40内において均等に分散して形成されていればよく、検出対象物質捕捉領域及びブランク領域の数、及び、検出対象物質捕捉領域ごとの抗体の種類は適宜設定することができる。
【0055】
部分領域カウント値演算部11は、ステップS10にて、反応領域40の全ての検出対象物質捕捉領域41におけるカウント値を合算してカウント値Caを算出する。さらに、部分領域カウント値演算部11は、反応領域40の全ての検出対象物質捕捉領域45におけるカウント値を合算してカウント値Cc(第3のカウント値)を算出する。さらに、部分領域カウント値演算部11は、反応領域40の全てのブランク領域42におけるカウント値を合算してカウント値Cbを算出する。さらに、部分領域カウント値演算部11は、各カウント値Ca~Ccを相対カウント値演算部21へ出力する。
【0056】
ブランク領域42には第1及び第2の検出対象物質の特定の抗原とは反応しない抗体Bが固定されている。
【0057】
第1のカウント値(捕捉領域カウント値Ca)とは、抗体Aによって反応領域40上に捕捉されている第1の検出対象物質(検出対象物質43)のカウント値であり、第1の領域(検出対象物質捕捉領域41)のカウント値である。第2のカウント値(ブランク領域カウント値Cb)とは、抗体Bが固定されている領域であり、第2の領域(ブランク領域42)のカウント値である。
【0058】
第3のカウント値(カウント値Cc)とは、抗体Cによって反応領域40上に捕捉されている第2の検出対象物質のカウント値であり、第3の領域(検出対象物質捕捉領域45)のカウント値である。第4の領域のカウント値を第4のカウント値とする。
【0059】
相対カウント値演算部21は、ステップS11にて、カウント値Caをカウント値Cbで除算し、反応領域40において抗体Aと微粒子44とによってサンドイッチ法で捕捉されている検出対象物質43の相対カウント値RCを算出する。さらに、相対カウント値演算部21は、カウント値Ccをカウント値Cbで除算し、反応領域40において抗体Cと微粒子44とによってサンドイッチ法で捕捉されている検出対象物質43とは異なる検出対象物質の相対カウント値RCを算出する。従って、本実施形態の分析装置及び分析方法によれば、1つの反応領域40から複数の検出対象物質を精度よく算出することができる。
【0060】
相対カウント値演算部21は、ブランク領域42におけるカウント値Cbを使用せずに、カウント値Caをカウント値Ccで除算することによって、反応領域40において抗体Aと微粒子44とによってサンドイッチ法で捕捉されている検出対象物質43の相対カウント値RCを算出してもよい。例えば抗体Aが、ある疾患に関連したエクソソームのみに特異的に反応し、抗体Cがエクソソーム全般に特異的に反応する場合、全エクソソーム中の疾患特異エクソソームの割合を評価することが可能である。
【0061】
もちろん、反応領域40が第1の領域と第3の領域のみを有し、2種類の抗体のみを用いた相対評価であってもよい。この場合、抗体Aが固定された検出対象物質捕捉領域41が第1の領域、抗体Cが形成された検出対象物質捕捉領域45が第2の領域となる。即ち、相対カウント値演算部21は、第1のカウント値、第3のカウント値、及び、第4のカウント値のうちの少なくとも2つのカウント値に基づいて反応領域40における相対カウント値RCを算出してもよい。
【0062】
従来技術においては、1つの反応領域において微粒子をカウントしたカウント値が大きい領域と小さい領域とが混在する場合があると、定量結果に影響を及ぼし、精度よく分析することができなかった。カウント値が小さい領域は、例えば反応領域を形成する過程で用いられる溶液の注入または吸引、或いは洗浄等の影響によって、反応領域に捕捉された検出対象物質(例えばエクソソーム)または微粒子が分析用基板から離脱することによって生じる。カウント値が大きい領域は、例えば溶液または洗浄液の残渣等のノイズ成分がカウントされることによって生じていた。本実施形態の分析装置及び分析方法によれば、それぞれの反応領域で抗体の固定の状態が異なる場合においても、精度よく分析を行うことができる。
【0063】
本実施形態では、信号処理回路10が部分領域カウント値演算部11を有し、制御部20が相対カウント値演算部21を有する構成について説明したが、信号処理回路10が部分領域カウント値演算部11と相対カウント値演算部21とを有する構成としてもよく、制御部20が部分領域カウント値演算部11と相対カウント値演算部21とを有する構成としてもよい。また、ブランク領域42は、検出対象物質43の特定の抗原とは反応しない抗体Bが固定されているとして記載したが、ブランク領域42には、抗体が固定されていないものとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 分析装置
8 光ピックアップ
11 部分領域カウント値演算部(第1の演算部)
21 相対カウント値演算部(第2の演算部)
30 分析用基板
40 反応領域
41 検出対象物質捕捉領域(第1の領域)
42 ブランク領域(第2の領域)
43 検出対象物質(第1の検出対象物質)
82 レーザ光
A 抗体(第1の抗体)
B 抗体
C 抗体(第2の抗体)
Ca カウント値(第1のカウント値)
Cb カウント値(第2のカウント値)
JS 受光レベル信号
RC 相対カウント値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15