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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】乗用作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 49/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B62D49/00 N
B62D49/00 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019056631
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020157809
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久岡 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】綱島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克朋
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347301(JP,A)
【文献】特開2017-001477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 49/00
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の少なくとも左右一側に、丸棒材を屈曲した昇降補助用の把持部材(30)を設ける作業車両において、
ステアリングハンドル(12)のハンドルポスト(12a)を支持するパネルフレーム(28)を備え、
前記パネルフレーム(28)は、前側下部に対して後側上部が後位となる傾斜姿勢の左右フレーム枠(28a,28a)を有し、
前記左右フレーム枠(28a,28a)は主体部(28c)の前側に長手方向に沿い折曲部(28d)を形成し、
前記把持部材(30)は、上端から略垂直状の把持部(30a)、前記把持部(30a)に続く緩傾斜部(30b)、さらに内向水平部(30c)を形成してなり、
前記把持部材(30)の下端側である前記内向水平部(30c)に取付プレート(31)を一体的に設け、
前記取付プレート(31)は、第1プレート部(31a)と前記第1プレート部(31a)に略直交状態で相互に溶着固定された第2プレート部(31b)とからなり、
前記第1プレート部(31a)および前記第2プレート部(31b)前記パネルフレーム(28)の前記主体部(28c)および前記折曲部(28d)に取付けて片持ち支持状態としたことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の乗用作業車両に関し、特に昇降補助用の把持部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農業用トラクタにおいて、把持部材の下端側を走行車体に取付けて片持ち支持状態とすると共に上端面をダッシュカバーのパネルカバー部に接近させた構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-1477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によると、把持部材は、その上端側が車体に連結されない構成であるから、素早く把持動作を行えて上体が不安定状態とならず、また上端側を車体に連結する構成を不要としてダッシュカバーやボンネットなどのデザインに影響しないため外観の意匠価値を損ねない効果がある。
【0005】
しかしながら、把持部材は長尺の丸棒材を数箇所で屈曲し、その下端側は取付プレートを介してフロントアクスルブラケットの一側支持フレーム板に装着される構成であるから、下端固定箇所から上端の把持箇所までの距離が長く、把持部材自体や取付プレートの強度を確保する必要がある。
【0006】
この発明は、上記に鑑み、簡単廉価な構成で強固な把持部材の支持構成を得ようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0008】
第1の本発明は、走行車体(1)の少なくとも左右一側に、丸棒材を屈曲した昇降補助用の把持部材(30)を設ける作業車両において、
ステアリングハンドル(12)のハンドルポスト(12a)を支持するパネルフレーム(28)を備え、
前記パネルフレーム(28)は、前側下部に対して後側上部が後位となる傾斜姿勢の左右フレーム枠(28a,28a)を有し、
前記左右フレーム枠(28a,28a)は主体部(28c)の前側に長手方向に沿い折曲部(28d)を形成し、
前記把持部材(30)は、上端から略垂直状の把持部(30a)、前記把持部(30a)に続く緩傾斜部(30b)、さらに内向水平部(30c)を形成してなり、
前記把持部材(30)の下端側である前記内向水平部(30c)に取付プレート(31)を一体的に設け、
前記取付プレート(31)は、第1プレート部(31a)と前記第1プレート部(31a)に略直交状態で相互に溶着固定された第2プレート部(31b)とからなり、
前記第1プレート部(31a)および前記第2プレート部(31b)を前記パネルフレーム(28)の前記主体部(28c)および前記折曲部(28d)に取付けて片持ち支持状態としたことを特徴とする作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体1の少なくとも左右一側に、丸棒材を屈曲した昇降補助用の把持部材30を設ける作業車両において、把持部材30の下端側をパネルフレーム28に取付けて片持ち支持状態としたことを特徴とする作業車両とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、本発明に関連する第1の発明において、把持部材30は、上端から略垂直状の把持部30a、把持部30aに続く緩傾斜部30b、さらに内向水平部30cを形成してなり、内向水平部30cに取付プレート31を一体的に設け、取付プレート31をパネルフレーム28に締結固定した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、強度を向上でき、しかもコストダウンに寄与できる。
本発明に関連する第1及び第2の発明によると、把持部材30は、その下端側をパネルフレーム28に取付る構成であるから、従来構成に比較して丸棒材の長さを短くし得て、強度を向上でき、しかもコストダウンに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】トラクタの側面図である。
図2】トラクタの正面図である。
図3】トラクタの平面図である。
図4】トラクタの一部断面した側面図である。
図5】一部を省略したトラクタの左斜め後方斜視図である。
図6】パネルフレーム部拡大斜視図である。
図7】(A)把持部材支持構成を示す展開斜視図、(B)把持部材支持構成を示す一部断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
走行車体1は前輪2L,2R(左右一対の構成のうち、Lは左側を示し、Rは右側を示す、以下同じ)及び後輪3L,3Rを備え、その前部のボンネット4内にエンジン5を搭載し、エンジン5の後部のクラッチハウジング6、前部ミッションケース7及び後部ミッションケース8を連結して剛体構成としている。エンジン5下部のフロントアクスルブラケット9に前後方向に沿う軸心周りに左右側が上下揺動するようにフロントアクスルケース10を支架する。このフロントアクスルケース10の左右端部には車体1のシート11部前方のステアリングハンドル12によって操向連動すべく前記前輪2L,2Rを装着している。フロントアクスルケース10内には前車軸13を備え前輪を伝動する構成である。
【0014】
前記後部ミッションケース8の左右に後輪軸14L,14Rを内装するリヤアクスルケース15L,15Rを装着する。各後車軸14L,14Rの端部には後輪3L,3Rを装着する。
【0015】
前記車体1後部に3点リンク機構16によりロータリ耕耘装置等の作業機(図示せず)を昇降自在に連結している。後部ミッションケース8上には、3点リンク機構16のリフトロッド17を連動して作業機を昇降連動する油圧式のリフトアーム18を備えている。
【0016】
前記シート11は左右後輪フェンダ19L,19R間に亘って設けるシートフロア20の上部に配置される。該シートフロア20の前下部に、搭乗者用のステップフロア21を接続している。搭乗者は走行車体1の左側方からステップフロア21上方の搭乗者空間Sに搭乗すると、正面向きにシート11に腰かけてステアリングハンドル12操作やペダル操作等を行う。
【0017】
前記ステアリングハンドル12のハンドルポスト等を覆うセンターカバー部22と、計器類を備えた操作表示パネル23を支持するパネルカバー部24とをもってダッシュカバー25を構成する。前記フロントアクスルブラケット9は左右の支持フレーム板9L,9Rを適宜に左右連結して枠組み構成してなり、このブラケット9に前記エンジン5を搭載し、さらにこのブラケット9後部には、エンジン5側とシート11やステアリングハンドル12を備えた搭乗者空間部S側とを前後に仕切る仕切板(図示せず)を立設している。
【0018】
ステアリングハンドル12のハンドルポスト12aは、パネルフレーム28によって支持される。このパネルフレーム28は、前側下部に対して後側上部が後位となる傾斜姿勢の左右フレーム枠28a,28aとこれらを連結する連結枠28b等の剛体物にて構成され、その下端側を前記左右支持フレーム9L,9Rに固定支持させている。連結枠28bには、パワーステアリング制御バルブ29を装着し、この制御バルブ29をステアリングハンドル12のステアリングシャフト12bに連動して油路切換すべく構成し、左右前輪2L,2Rのパワーステアリング操舵機構(図示せず)へ圧油給排を制御して、所望の操舵方向に連動できる構成としている。
【0019】
符号38は搭乗者空間Sの搭乗者を保護する安全フレームであり、符号39はクラッチペダルである。
【0020】
前記ダッシュカバー25の左右一側(図例では車体進行方向の左側)に、昇降補助用の把持部材30を設ける。詳細には、長尺の丸棒材を数箇所で屈曲し、上端から略垂直状の把持部30a、これに続く緩傾斜部30b、さらに内向水平部30cを形成してなり、内向水平部30cの内側部に取付プレート31を溶接固定している。すなわち取付プレート31は、第1プレート部31aとこれに直交状態で相互に溶着固定された第2プレート部31bとからなり、このうち第1プレート部31aは、丸棒材の外周ほぼ半周に重合する湾曲部31cとこの湾曲部31cを挟んで上下2か所にボルト挿通孔31d,31dを備え、また第2プレート部31bは、上下2か所にボルト挿通孔31e,31eを備えている。もって、把持部材30の内向水平部30bの基端側所定長さ部分を湾曲部31cに接合させ、基端端面を第2プレート部31bに当接させてそれぞれ溶着によって連結剛体化している。
【0021】
上記のように、プレート部31を一体化した把持部材30は、前記パネルフレーム28の一側(図例では左側)、すなわち、パネルフレーム28のうち左側のフレーム枠28aに連結される。左右フレーム枠28aは主体部28cの前後に長手方向に沿い折曲部28d,28eを形成して補強構造とし、前記第1プレート部31aのボルト挿通孔31d,31dを左側フレーム枠28aの折曲部28dに形成したボルト挿通孔28f,28fに合致させてボルト32a,32a締結し、前記第2プレート部31bのボルト挿通孔31e,31eを左側フレーム枠28aの主体部28cに形成したボルト挿通孔28g,28gに合致させてボルト32b,32b締結する。
【0022】
把持部材30の上端は取付構成を行わず、下端側のみをパネルフレーム28へ装着して所謂片持ち支持状態をとっている。該把持部材30の上端側は、その端面が、前記ダッシュカバー25のうち操作表示パネル23を装着する部分が隆起状となるように中央を膨出成形したパネルカバー部24の側方に接近させて配置される。
【0023】
前記搭乗者用のステップフロア21の側方(図例では左側)には、補助ステップ36を設け、該ステップフロア21への昇降を容易とさせる。なお補助ステップ36は、車体側に一端を連結した角柱形態の横梁部材を延長して下方に折り曲げ、この折り曲げ部下端にステップ面36aを水平状態に溶接固定し、ステップフロア21よりやや下方位置に補助ステップ36を構成できる。
【0024】
上記補助ステップ36は、前記把持部材30よりも車体外側方に位置させる。即ち、前記把持部材30の前記垂直下降部30bは、正面視において、前記ボンネット4の側面と補助ステップ36との間に位置させている。
【0025】
車体1の搭乗者空間Sへの搭乗時は、左手で把持部材30の上部を把持し、左足又は右足で補助ステップ36に乗って、左手で把持部材30を曳きながら上体を上げて右足又は左足をステップフロア21に乗せて乗車を行う。このとき、上体のふらつきを防止するために、左側フェンダ19Lの上面に設ける把持アーム37を把持することでさらに安定良く乗車を行うことができる。降車の場合はこの逆の動作を行うものである。
【0026】
把持部材30は、上端側は車体1に連結しないものであるから、把持の際に連結部材への接触などの制約なく素早く把持動作を行えて上体が不測に不安的状態となることを防止できる。
【0027】
前記左フェンダ19L上の把持アーム37は、上面に前後方向に長く構成して設けるものであるが、把持アーム37の高さと把持部材33の把持部の高さを略同じ高さに設けており、昇降の際、上体を左右に傾斜させることがなく安定して乗車または降車動作を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 走行車体
28 パネルフレーム
30 把持部材
30a 上端把持部
30b 緩傾斜部
30c 内向水平部
31 取付プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7