(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】端子および端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/50 20060101AFI20221129BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01R4/50 A
H01R4/18 Z
(21)【出願番号】P 2019065858
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭32-005148(JP,B1)
【文献】実開平05-023422(JP,U)
【文献】特開2005-129447(JP,A)
【文献】米国特許第06749456(US,B1)
【文献】米国特許第04413872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/50
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を有する電線と接続される端子であって、
端子本体と、スライド部と、を備え、
前記端子本体は、前記電線の芯線を挟む挟持部を有し、
前記スライド部は、前記挟持部が設けられた領域に外嵌された状態で仮係止位置と本係止位置との間を前後方向にスライド移動可能とされ、前記スライド部内に前記芯線が後方から挿入されるようになっており、
前記スライド部は、前記本係止位置で前記挟持部を押圧することで前記芯線が前記挟持部によって第1方向から挟持される加圧部と、
前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向と交差する第2方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第2接触部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向
および前記第2方向のいずれにも交差する方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第1接触部と
、を有する、端子。
【請求項2】
前記芯線が挿通される挿通部は、前記第2接触部と、前記第2接触部の両側から前記第2接触部よりも前記芯線側に突出する一対の前記第1接触部と、を有する形状とされている、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記挿通部は、前記第2接触部と前記第2接触部に連なる一対の前記第1接触部によって弧状に構成され、前記挿通部は、前記芯線の両側に一対配されている、請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記スライド部は、一対の前記挿通部の後縁から後方に向けて拡径する一対の誘い込み部を備える、請求項2または請求項3に記載の端子。
【請求項5】
芯線を有する電線と接続される端子であって、
端子本体と、スライド部と、を備え、
前記端子本体は、前記電線の芯線を挟む挟持部を有し、
前記スライド部は、前記挟持部が設けられた領域に外嵌された状態で仮係止位置と本係止位置との間を前後方向にスライド移動可能とされ、前記スライド部内に前記芯線が後方から挿入されるようになっており、
前記スライド部は、前記本係止位置で前記挟持部を押圧することで前記芯線が前記挟持部によって第1方向から挟持される加圧部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第1接触部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向と交差する第2方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第2接触部と、を有し、
前記第1接触部は、前記スライド部の周壁のうち前記第1方向に対向する一対の壁から前記第1方向に突出して一対設けられ、前記第2接触部は、前記スライド部の周壁のうち前記第2方向に対向する一対の壁から前記第2方向に突出して一対設けられている
、端子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子と、前記電線と、を備えた、端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端末から露出する芯線に端子が接続された端子付き電線が知られている。このような端子として、例えば、電線の端末から露出する芯線に外側から圧着する圧着部を備えるものがある。
【0003】
上記の端子を電線に圧着するには、例えば以下のようにする。まず、金属板材をプレス加工することにより所定の形状の端子を成形する。続いて、上下方向に相対移動可能な一対の金型のうち下側に位置する下型の載置部に、端子を載置する。続いて、電線の端末から露出された芯線を、端子の圧着部に重ねて載置する。その後、一対の金型の一方又は双方を互いに接近する方向に移動させ、上型の圧着部と、下型の載置部との間で圧着部を挟み付けることにより、圧着部を電線の芯線に圧着する。以上により、電線の端末に端子が接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の圧着部に代えて、芯線を挟んで接続するとした場合、端子本体と、端子本体の後方に配されたスライド部との2部品で端子を構成することがあり得る。この場合、芯線はまずスライド部内に挿入されることになるため、スライド部内に芯線を挿入しやすい構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子は、芯線を有する電線と接続される端子であって、端子本体と、スライド部と、を備え、前記端子本体は、前記電線の芯線を挟む挟持部を有し、前記スライド部は、前記挟持部が設けられた領域に外嵌された状態で仮係止位置と本係止位置との間を前後方向にスライド移動可能とされ、前記スライド部には前記芯線が後方から挿入されるようになっており、前記スライド部は、前記本係止位置で前記挟持部を押圧することで前記芯線が前記挟持部によって第1方向から挟持される加圧部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部に挿入される際に前記第1方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第1接触部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部に挿入される際に前記第1方向と交差する第2方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第2接触部と、を有する、端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、芯線の挿入作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1における端子付き電線の側面図である。
【
図4】
図4は
図3の芯線が挟持される前の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6はスライド部を斜め後方から見た端子の斜視図である。
【
図7】
図7は実施形態2におけるスライド部の斜視図である。
【
図10】
図10は実施形態3におけるスライド部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列記して説明される。
本開示の端子は、
(1)芯線を有する電線と接続される端子であって、端子本体と、スライド部と、を備え、前記端子本体は、前記電線の芯線を挟む挟持部を有し、前記スライド部は、前記挟持部が設けられた領域に外嵌された状態で仮係止位置と本係止位置との間を前後方向にスライド移動可能とされ、前記スライド部内に前記芯線が後方から挿入されるようになっており、前記スライド部は、前記本係止位置で前記挟持部を押圧することで前記芯線が前記挟持部によって第1方向から挟持される加圧部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第1接触部と、前記加圧部の後方に設けられ、前記芯線が前記スライド部内に挿入される際に前記第1方向と交差する第2方向から前記芯線に接触する少なくとも一対の第2接触部と、を有する、端子である。
【0010】
電線の芯線がスライド部内に後方から挿入されると、芯線が少なくとも一対の第1接触部に接触することによって第1方向への移動が規制され、芯線が少なくとも一対の第2接触部に接触することによって第2方向への移動が規制されるため、芯線が真っ直ぐに挿入される。仮に芯線にクセがある場合でも、各接触部によって芯線のクセが矯正されて挿入が行われるため、やはり芯線が真っ直ぐに挿入される。
【0011】
スライド部が仮係止位置にある状態で芯線がスライド部内に真っ直ぐに挿入され、端子本体内に進入すると、挟持部に沿って配される。この状態でスライド部が仮係止位置から本係止位置にスライド移動されると、加圧部によって挟持部が第1方向に押圧され、芯線が挟持部によって第1方向から挟持される。これにより、電線と端子が電気的に接続される。
【0012】
(2)前記芯線が挿通される挿通部は、前記第2接触部と、前記第2接触部の両側から前記第2接触部よりも前記芯線側に突出する一対の前記第1接触部と、を有する形状とされていることが好ましい。
芯線が挿通部に挿通されると、挿通部に接触することによって第1方向および第2方向への移動が規制される。
【0013】
(3)前記挿通部は、前記第2接触部と前記第2接触部に連なる一対の前記第1接触部によって弧状に構成され、前記挿通部は、前記芯線の両側に一対配されていることが好ましい。
弧状とは、円弧状以外の曲面形状も含む。
芯線が一対の挿通部の間に挿通されると、弧状の挿通部に接触することによって第1方向および第2方向への移動が規制される。
【0014】
(4)前記スライド部は、一対の前記挿通部の後縁から後方に向けて拡径する一対の誘い込み部を備えることが好ましい。
芯線は一対の誘い込み部に接触することによって一対の挿通部の間に案内される。
【0015】
(5)前記第1接触部は、前記スライド部の周壁のうち前記第1方向に対向する一対の壁から前記第1方向に突出して一対設けられ、前記第2接触部は、前記スライド部の周壁のうち前記第2方向に対向する一対の壁から前記第2方向に突出して一対設けられていることが好ましい。
芯線が一対の第1接触部の間に挿通されると、第1接触部の先端に接触することによって第1方向への移動が規制される。芯線が一対の第2接触部の間に挿通されると、第2接触部の先端に接触することによって第2方向への移動が規制される。
(6)本開示の端子付き電線は、上記端子と、前記電線と、を備えた、端子付き電線である。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の端子付き電線10の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が
図1から
図6を参照しつつ説明される。以下の説明において上下方向(第1方向)は
図1の図示上下方向を基準とし、矢線Zの示す方向を上とする。前後方向は
図1の図示左右方向を基準とし、矢線Yの示す方向を前とする。左右方向(第2方向)は
図2の図示上下方向を基準とし、矢線Xの示す方向を左とする。
【0018】
[電線20]
図1に示すように、電線20は前後方向に延びて配されている。電線20は、芯線21と、芯線21の外周を包囲する絶縁被覆22と、を備える。絶縁被覆22は絶縁性の合成樹脂からなる。本実施形態の芯線21は1本の金属線からなる単芯線とされているが、複数の金属細線が撚り合わせてなる撚線であってもよい。本実施形態の芯線21は銅、又は銅合金からなるが、芯線21を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0019】
[端子30]
端子30は、金属製の端子本体40と、端子本体40に対してスライド移動可能なスライド部50と、を備える。
[端子本体40]
端子本体40はプレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。端子本体40を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態の端子本体40は、銅、又は銅合金からなる。端子本体40の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態の端子本体40にはスズめっきが施されている。
【0020】
図4に示すように、端子本体40は、筒部41と、電線接続部42と、を有する。筒部41の内部には、図示しない相手方端子のタブが挿入可能とされている。電線接続部42は、筒部41の後方に位置している。電線接続部42は電線20と接続される。電線接続部42は、上側挟持部43Aと、下側挟持部43Bと、を備える。
【0021】
筒部41は、前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部41の前端はタブが挿入可能に開口されている。筒部41の内部には、接触片44が配されている。接触片44は弾性変形可能とされている。筒部41内に挿入されたタブは接触片44を押圧して弾性変形させる。弾性変形した接触片44の弾発力によってタブは筒部41の内壁と接触片44との間に挟まれる。これによりタブと端子30とが電気的に接続される。
【0022】
筒部41の後方には角筒状をなす電線接続部42が設けられている。電線接続部42の天井壁(上壁)の後端部には上側挟持部43Aが後方に延びて設けられている。電線接続部42の底壁(下壁)の後端部には下側挟持部43Bが後方に延びて設けられている。上側挟持部43Aと下側挟持部43Bは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持部43Aと下側挟持部43Bの前後方向の長さ寸法は同じに形成されている。同じとは厳密な意味での同じを意味するものではなく、同じとみなされる範囲であれば本開示の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0023】
上側挟持部43Aの下面には上側保持突部45Aが設けられている。上側保持突部45Aは上側挟持部43Aの後端部よりも前方に位置している。下側挟持部43Bの上面には下側保持突部45Bが設けられている。下側保持突部45Bは下側挟持部43Bの後端部に配されている。上側保持突部45Aと下側保持突部45Bとは、前後方向についてずれた位置に設けられている。
【0024】
上側挟持部43Aの下面、および下側挟持部43Bの上面が、芯線21の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線21の金属表面を露出させるようになっている。この金属表面と上側挟持部43Aおよび下側挟持部43Bとが接触することにより、芯線21と端子本体40とが電気的に接続される。
【0025】
[スライド部50]
スライド部50は前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部50は、切削加工、鋳造、プレス加工等、必要に応じて公知の手法により形成される。スライド部50を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態のスライド部50は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部50の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0026】
スライド部50の断面形状は、端子本体40のうち上側挟持部43Aと下側挟持部43Bが設けられた領域の断面形状と同じか、やや大きく形成されている。これによりスライド部50は端子本体40のうち上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとが設けられた領域の外方に配されるようになっている。
【0027】
スライド部50の天井壁(上壁)の下面には、下方に突出する上側加圧部51Aが設けられている。スライド部50の底壁(下壁)の上面には、上方に突出する下側加圧部51Bが設けられている。
【0028】
図1に示すように、スライド部50の両側壁(左壁および右壁)には仮係止受け部52と本係止受け部53とがそれぞれ設けられている。仮係止受け部52は、スライド部50の前端部寄りの位置に配され、側方に開口されている。本係止受け部53は、仮係止受け部52よりも後方に位置し、側方に開口されている。仮係止受け部52と本係止受け部53は、端子本体40の両側壁(左壁および右壁)に設けられた係止突起46と弾性的に係止可能になっている。
【0029】
端子本体40の係止突起46とスライド部50の仮係止受け部52とが係止した状態では、端子本体40に対してスライド部50が仮係止位置(
図4におけるスライド部50の位置)に保持されている。この状態においては、スライド部50の上側加圧部51Aおよび下側加圧部51Bは、端子本体40の上側挟持部43Aおよび下側挟持部43Bの後端縁よりも後方に離れて位置している。また、この状態においては、上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとの間の間隔は、芯線21の直径よりも大きく設定されている。
【0030】
端子本体40の係止突起46とスライド部50の本係止受け部53とが係止した状態では、端子本体40に対してスライド部50が本係止位置(
図3におけるスライド部50の位置)に保持されている。この状態においては、スライド部50の上側加圧部51Aは、上方から上側挟持部43Aの上面に接触している。また、スライド部50の下側加圧部51Bは、下方から下側挟持部43Bの下面に接触している。
【0031】
上記のように、スライド部50は、端子本体40のうち上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、上記した仮係止位置と本係止位置との間を前後方向にスライド移動可能になっている。
【0032】
スライド部50が端子本体40に対して本係止位置で保持された状態では、上側加圧部51Aが上方から上側挟持部43Aの上面を押圧することによって上側挟持部43Aが下方に変位するようになっている。また、下側加圧部51Bが下方から下側挟持部43Bの下面を押圧することによって下側挟持部43Bが上方に変位するようになっている。
【0033】
これにより芯線21が上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとの間に配され、かつ、スライド部50が端子本体40に対して本係止位置で保持された状態では、芯線21は上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとによって上下方向から挟持されるようになっている。すなわち、上側挟持部43Aは上側加圧部51Aに下方に押圧されることにより芯線21に上方から弾性的に接触し、下側挟持部43Bは下側加圧部51Bに上方に押圧されることにより芯線21に下方から弾性的に接触している。
【0034】
スライド部50が端子本体40に対して本係止位置で保持された状態では、上側挟持部43Aの上側保持突部45Aが芯線21を上方から押圧し、下側挟持部43Bの下側保持突部45Bが芯線21を下方から押圧する。この結果、芯線21は、上側保持突部45Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部45Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部45Bによって下方から押圧されることにより、上下方向にずれた段差状に屈曲した状態に保持される。したがって、上側挟持部43Aと下側挟持部43Bに加え、上側保持突部45Aと下側保持突部45Bによっても芯線21と端子30とが電気的に接続される。
【0035】
図6に示すように、スライド部50の後端部寄りの位置には、2つの規制リブ54が左右方向に対向する配置で設けられている。左側の規制リブ54はスライド部50の左側壁から右方に突出し、右側の規制リブ54はスライド部50の右側壁から左方に突出している。規制リブ54は、例えばスライド部50の一部をプレス加工によって叩き出すことで形成されている。
【0036】
規制リブ54は、芯線21に上下方向から接触する2つの第1接触部54Aと、芯線21に左右方向から接触する1つの第2接触部54Bと、を有し、2つの第1接触部54Aと1つの第2接触部54Bとは一体に形成されている。すなわち一対の規制リブ54は、少なくとも一対の第1接触部54Aと、少なくとも一対の第2接触部54Bとを有し、かつ左右対称に配置されている。
図5に示すように後方から見た場合に、第1接触部54Aは上下方向に延びる直線部分とされ、第2接触部54Bは第1接触部54Aよりもスライド部50の側壁側に凹んだ曲線部分とされている。
【0037】
一対の第1接触部54Aの対向面同士は平行に配置されている。一対の第1接触部54Aの対向面間の寸法は、芯線21の直径よりも小さい。したがって、芯線21が上方に移動しようとすると、芯線21が上側の第1接触部54Aの下端部に接触することで上方への移動が規制される。また、芯線21が下方に移動しようとすると、芯線21が下側の第1接触部54Aの上端部に接触することで下方への移動が規制される。
【0038】
第1接触部54Aは、第2接触部54Bの上下両側に連なるように配置されている。第2接触部54Bと一対の第1接触部54Aによって円弧状の挿通部55が構成されている。挿通部55は、
図5に示すように、芯線21の左右両側に一対配され、芯線21の外周に沿う形状とされている。一対の第2接触部54Bの対向面間の最大寸法は、芯線21の直径よりもわずかに大きい。芯線21が左方に移動しようとすると、芯線21が左側の第2接触部54Bに対して接触することで移動が規制される。また、芯線21が右方に移動しようとすると、芯線21が右側の第2接触部54Bに対して接触することで移動が規制される。
【0039】
一対の挿通部55の後方には一対の誘い込み部56が設けられている。一対の誘い込み部56の前縁は一対の挿通部55の後縁に連なっている。誘い込み部56は、挿通部55の後縁から後方に向けて拡径する傾斜面を有している。言い換えると誘い込み部56の傾斜面は、挿通部55の後縁に向かうようにすり鉢状に傾斜している。このため誘い込み部56に接触した芯線21は、前方に向かうと一対の挿通部55の間に誘い込まれる。
【0040】
[電線20と端子30の接続方法]
電線20の芯線21は、公知の手法で絶縁被覆22が皮剥ぎ加工されることにより露出される。電線20の挿入作業は、スライド部50が仮係止位置に保持された状態で行われる。電線20がスライド部50に向けて後方から挿入されると、芯線21の先端が誘い込み部56に接触しながら一対の挿通部55の間へと案内される。
【0041】
一対の挿通部55の間に芯線21が挿入されると、芯線21は挿通部55の第1接触部54Aに接触することで上下方向への移動が規制され、挿通部55の第2接触部54Bに接触することで左右方向への移動が規制される。また、芯線21にクセがある場合には、芯線21が挿通部55を挿通する際に各接触部54A、54Bによって芯線21のクセが矯正される。このようにして挿通部55を通過した芯線21は、真っ直ぐに挿入される。
【0042】
芯線21は、上側加圧部51Aと下側加圧部51Bとの間を通過した後、上側挟持部43Aの後端と下側保持突部45Bの後端とに干渉することなく、上側挟持部43Aの後半分と下側保持突部45Bとの間に進入する。芯線21は、上側挟持部43Aの後半分と下側保持突部45Bとの間を通過した後、上側保持突部45Aの後端に干渉することなく、上側保持突部45Aと下側挟持部43Bの前半分との間に進入する。芯線21は、上側保持突部45Aと下側挟持部43Bの前半分との間を通過した後、端子本体40の後端に干渉することなく、端子本体40の内部に進入し、
図4の状態に至る。
【0043】
芯線21の先端は、筒部41の後端と電線接続部42の前端との間に位置している。筒部41の後端と電線接続部42の前端との間には、上方に開口する開口47が設けられている。芯線21の先端は、
図2に示すように、上方から視認可能となっており、これにより芯線21が挿入途中で干渉することなく無事に挿入できたことを確認できる。
【0044】
次に、スライド部50が仮係止位置から本係止位置に向けて前方に押し込まれると、端子本体40の係止突起46とスライド部50の仮係止受け部52との係止が解除され、スライド部50のスライド移動が許容される。スライド移動の開始とともにスライド部50の側壁が係止突起46に乗り上げて拡開変形する。
【0045】
スライド移動の途中では、スライド部50の上側加圧部51Aが端子本体40の上側挟持部43Aに上方から当接して下方へ押圧し、下側加圧部51Bが下側挟持部43Bに下方から当接して上方へ押圧する。これにより、芯線21が上側挟持部43Aと下側挟持部43Bに上下方向から挟持される。
【0046】
上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとによって芯線21が上下方向から挟まれることにより、芯線21の表面に形成された酸化被膜が剥がされ、芯線21を構成する金属が露出する。この金属と上側挟持部43Aおよび下側挟持部43Bとが接触することにより、電線20の芯線21と端子30とが電気的に接続される。
【0047】
スライド部50が本係止位置に至ると、スライド部50の側壁が弾性的に復帰変形して端子本体40の係止突起46とスライド部50の本係止受け部53とが係止する。これによりスライド部50が本係止位置に保持される。
【0048】
芯線21が上側挟持部43Aと下側挟持部43Bとによって上下方向から挟まれた状態では、芯線21は、上側挟持部43Aの上側保持突部45Aと下側挟持部43Bの下側保持突部45Bとによって前後方向にずれた位置で挟まれることにより、前後方向に延びた状態で、かつ、上下方向に屈曲した状態で保持される。これにより、芯線21を強固に保持することができるので、電線20に引っ張り力が作用した場合に電線20が端子30から外れることはない。このようにして電線20と端子30との保持力を高めることができる。
【0049】
<実施形態2>
本開示の実施形態2が
図7から
図9を参照しつつ説明される。実施形態2は、実施形態1のスライド部50の構成を一部変更したものであって、その他の構成については実施形態1と同じであるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号が用いられる。
【0050】
本実施形態のスライド部150は、
図7に示すように、2つの規制リブ154を備えている。2つの規制リブ154は、
図9に示すように、スライド部150の後端部寄りの位置で、かつ、2つの加圧部51A、51Bの後方の位置に設けられている。2つの規制リブ154は、左右方向に対向する配置で設けられている。左側の規制リブ154はスライド部150の左側壁から右方に突出し、右側の規制リブ154はスライド部150の右側壁から左方に突出している。規制リブ154は、例えばスライド部150の一部をプレス加工によって叩き出すことで形成されている。
【0051】
規制リブ154は、
図8に示すように、芯線21に上下方向から接触する2つの第1接触部154Aと、芯線21に左右方向から接触する1つの第2接触部154Bと、を有し、2つの第1接触部154Aと1つの第2接触部154Bとは一体に形成されている。すなわち一対の規制リブ154は、少なくとも一対の第1接触部154Aと、少なくとも一対の第2接触部154Bとを有し、かつ左右対称に配置されている。後方から見た場合に、第1接触部154Aは上下方向に延びる直線部分とされ、第2接触部154Bは第1接触部154Aよりもスライド部150の側壁側にオフセットされた直線部分とされている。
【0052】
一対の第1接触部154Aの対向面同士は平行に配置されている。一対の第1接触部154Aの対向面間の寸法は、芯線21の直径よりも小さい。したがって、芯線21が上方に移動しようとすると、芯線21が上側の第1接触部154Aの下端部に接触することで上方への移動が規制される。また、芯線21が下方に移動しようとすると、芯線21が下側の第1接触部154Aの上端部に接触することで下方への移動が規制される。
【0053】
第1接触部154Aは、第2接触部154Bの上下両側に連なるように配置されている。第2接触部154Bと一対の第1接触部154Aによって門形の挿通部155が構成されている。挿通部155は、
図8に示すように、芯線21の左右両側に一対配され、芯線21の外周面のうち左右両端における接線方向に延びる形状とされている。一対の第2接触部154Bの対向面同士は平行に配置されている。一対の第2接触部154Bの対向面間の寸法は、芯線21の直径よりもわずかに大きい。芯線21が左方に移動しようとすると、芯線21が左側の第2接触部154Bに対して接触することで移動が規制される。また、芯線21が右方に移動しようとすると、芯線21が右側の第2接触部54Bに対して接触することで移動が規制される。本開示の規制リブ154の後端は、平面状に形成されているものの、このような形状に限定されることはなく、規制リブの後端は芯線21の先端を挿通部155に誘い込み可能なテーパ状に形成されていてもよい。
【0054】
<実施形態3>
本開示の実施形態3が
図10から
図12を参照しつつ説明される。実施形態3は、実施形態1のスライド部50の構成を一部変更したものであって、その他の構成については実施形態1と同じであるため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については実施形態1と同一の符号が用いられる。
【0055】
本実施形態のスライド部250は、
図10に示すように、2つの折曲片257と、2つの突起258と、を備えている。
【0056】
2つの折曲片257は、スライド部250の天井壁の後縁に設けられた上側の折曲片257と、底壁の後縁に設けられた下側の折曲片257と、を備えている。上側の折曲片257は片持ち状をなし、天井壁の後縁から後方に向かった後、直角に折り曲げられて下方に延びる形態とされている。下側の折曲片257は片持ち状をなし、底壁の後縁から後方に向かった後、直角に折り曲げられて上方に延びる形態とされている。
【0057】
上側の折曲片257の下端部は上側の第1接触部254Aとされ、下側の折曲片257の上端部は下側の第1接触部254Aとされている。2つの第1接触部254Aは、上下方向に対向する配置で設けられている。上側の第1接触部254Aの後縁には、後方に向かうほど上方に向かう上側の誘い込み部256が設けられている。下側の第1接触部254Aの後縁には、後方に向かうほど下方に向かう下側の誘い込み部256が設けられている。
【0058】
図12に示すように、2つの突起258は左右方向に対向する配置で設けられている。左側の突起258はスライド部250の左側壁から右方に突出し、右側の突起258はスライド部250の右側壁から左方に突出している。突起258は、例えばスライド部250の一部をプレス加工によって叩き出すことで形成されている。突起258の突出端面は第2接触部254Bとされている。右側の突起258の後縁には、後方に向かうほど右方に向かう右側の誘い込み部259が設けられている。左側の突起258の後縁には、後方に向かうほど左方に向かう左側の誘い込み部259が設けられている。
【0059】
電線20がスライド部250に向けて後方から挿入されると、芯線21の先端が誘い込み部256に接触しながら一対の第1接触部254Aの間へ案内される。芯線21は一対の第1接触部254Aに接触することで上下方向への移動が規制される。その後、芯線21の先端が誘い込み部259に接触しながら一対の第2接触部254Bの間へ案内される。芯線21は一対の第2接触部254Bに接触することで左右方向への移動が規制される。
【0060】
本実施形態では、第1接触部254Aと第2接触部254Bが別体に設けられているため、一体に設けられる場合よりも精度よく加工ができ、製造面で有利である。また、第1接触部254Aを有する折曲片257と第2接触部254Bを有する突起258とのいずれもが単純な形状とされているため、寸法精度が高くなり、やはり製造面で有利である。
【0061】
<他の実施形態>
(1)実施形態1と2では、左右一対の規制リブ54、154が設けられているものを例示したが、いずれか一方のみが設けられているものでもよい。例えば、右側の規制リブ54、154のみが設けられている場合、右側の規制リブ54、154と対向する左側壁が第2接触部として機能する。
【0062】
(2)実施形態1と2では、規制リブ54、154に一対の第1接触部54A、154Aが設けられているものを例示したが、いずれか一方のみが設けられているものでもよい。例えば、下側の第1接触部54A、154Aと対向する天井壁が第1接触部として機能する。
【0063】
(3)実施形態3では、上下一対の折曲片257が設けられているものを例示したが、いずれか一方のみが設けられているものでもよい。同様に、左右一対の突起258が設けられているものを例示したが、いずれか一方のみが設けられているものでもよい。
【0064】
(4)実施形態1と2では、第1接触部54A、154Aと第2接触部54B、154Bが一体に設けられているものを例示したが、第1接触部と第2接触部は別体に設けられているものでもよい。例えば第1接触部は天井壁又は底壁に設けられ、第2接触部は側壁に設けられているものでもよい。
【0065】
(5)実施形態2では誘い込み部が設けられていないものを例示したが、規制リブの後端部がテーパ状に形成されることで誘い込み部が設けられているものでもよい。
【0066】
(6)実施形態1では円弧状の挿通部55を例示したが、円弧状以外の曲面形状の挿通部でもよい。
(7)実施形態1と2では芯線21が2つの挟持部43A、43Bによって挟まれているが、1つの挟持部とこの挟持部に対向する壁部とによって芯線が挟まれるものとしてもよい。また、3つ以上の挟持部によって芯線が挟まれるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…端子付き電線
20…電線
21…芯線
22…絶縁被覆
30…端子
40…端子本体
41…筒部
42…電線接続部
43A…上側挟持部
43B…下側挟持部
44…接触片
45A…上側保持突部
45B…下側保持突部
46…係止突起
47…開口
50、150、250…スライド部
51A…上側加圧部
51B…下側加圧部
52…仮係止受け部
53…本係止受け部
54、154…規制リブ
54A、154A、254A…第1接触部
54B、154B、254B…第2接触部
55…挿通部
56、256、259…誘い込み部
257…折曲片
258…突起