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特許7183916溝入れ工具用ヘッド部材および溝入れ工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】溝入れ工具用ヘッド部材および溝入れ工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20221129BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20221129BHJP
   B23B 29/00 20060101ALI20221129BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B23B27/10
B23B27/04
B23B29/00 P
B23B29/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019067138
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163526
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】上林 弘和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 彰一郎
(72)【発明者】
【氏名】木曽 拓真
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 翔太
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0175938(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326500(US,A1)
【文献】特表2017-503669(JP,A)
【文献】特開平07-060507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/10
B23B 27/04
B23B 29/00 - 29/12
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃を有する切削インサートを保持する溝入れ工具用ヘッド部材であって、
前記切削インサートが取り付けられるインサート取付部を有する板状の本体部を有し、
前記本体部には、主流路と前記主流路の開口端である吐出口を有するクーラント供給路が設けられ、
前記主流路は、全長に亘って湾曲し、
前記主流路は、前記吐出口に向かうに従い連続的に流路断面積が小さくなる狭窄領域を有し、前記狭窄領域の端部に前記吐出口が設けられる、
溝入れ工具用ヘッド部材。
【請求項2】
前記クーラント供給路の断面形状は、前記吐出口において前記本体部の板厚方向を長手方向とする横長形状である、
請求項1に記載の溝入れ工具用ヘッド部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溝入れ工具用ヘッド部材と、
前記インサート取付部に取り付けられた前記切削インサートと、
前記溝入れ工具用ヘッド部材を支持するホルダと、を備える、溝入れ工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝入れ工具用ヘッド部材および溝入れ工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溝入れ加工および突っ切り加工などに用いられるブレード状の溝入れ工具が知られている。特許文献1には、切刃を冷却するために、工具ホルダの内部を通過し切刃の近傍で開口して切刃にクーラントを供給するクーラント供給路を有する溝入れ工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0175938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の工具では、クーラント供給路から切削対象に供給されたクーラントの一部が、開口部から霧状に飛散してしまい、切刃および被削材の所望の範囲にクーラントを効率的に供給できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであって、供給対象にクーラントを効率的に供給できる溝入れ工具用ヘッド部材および溝入れ工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一実施態様の溝入れ工具用ヘッド部材は、切刃を有する切削インサートを保持する溝入れ工具用ヘッド部材であって、前記切削インサートが取り付けられるインサート取付部を有する板状の本体部を有し、前記本体部には、主流路と前記主流路の開口端である吐出口を有するクーラント供給路が設けられ、前記主流路は、全長に亘って湾曲し、前記主流路は、前記吐出口に向かうに従い連続的に流路断面積が小さくなる狭窄領域を有し、前記狭窄領域の端部に前記吐出口が設けられる
【0007】
上述の構成によれば、クーラント供給路は、吐出口に向かうに従い連続的に流路断面積が小さくなる領域(以下、狭窄領域と呼ぶ)。狭窄領域は、クーラント供給路の吐出口に至る領域に設けられる。このため、狭窄領域においてクーラントには流路断面の中央側に向かって傾いて向かう流れが形成されるため、吐出口から放出される際に霧状に飛散することが抑制される。
加えて、上述の構成によれば、クーラント供給路は、上流側の流路断面積が下流側の流路断面積より大きい。クーラント供給路は、上流側の流路断面積を大きくすることで上流側におけるクーラントの圧力損失を抑制するとともに、下流側の流路断面積を小さくすることで下流側のクーラントの流速が高められる。これにより、吐出口から噴出されるクーラントの流速を高めて、高効率の冷却を行うことができる。
【0008】
上述の溝入れ工具用ヘッド部材において、前記クーラント供給路の断面形状は、前記吐出口において前記本体部の板厚方向を長手方向とする横長形状である、構成としてもよい。
【0009】
上述の構成によれば、吐出口において板厚方向を長手方向とする横長形状である。切削インサートの切刃は、本体部の板厚方向に沿って延びる。このため、吐出口から放出されたクーラントが切削インサートの切刃の全体に供給されやすくすることができる。
【0010】
本発明の一実施態様の溝入れ工具は、上記の溝入れ工具用ヘッド部材と、前記インサート取付部に取り付けられた前記切削インサートと、前記溝入れ工具用ヘッド部材を支持するホルダと、を備える。
【0011】
本実施形態によれば、上述の効果を奏する溝入れ工具を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、供給対象に効率的にクーラントを供給できる溝入れ工具用ヘッド部材および溝入れ工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態の溝入れ工具の斜視図である。
図2図2は、一実施形態のヘッド部材の正面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿うクーラント供給路の断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿うクーラント供給路の断面図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿うクーラント供給路の断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線に沿うクーラント供給路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0015】
図1は、一実施形態の溝入れ工具50の斜視図である。
図1に示すように、溝入れ工具50は、溝入れ工具用ヘッド部材(以下、ヘッド部材)1と、ヘッド部材1に保持される切削インサート(以下、単にインサート)11と、ヘッド部材1を支持するホルダ51と、を備える。溝入れ工具50は、旋盤を用いた溝入れ加工および突っ切り加工などに用いられる。
【0016】
ホルダ51は、ヘッド部材1を支持するとともに、ヘッド部材1にクーラントを供給するためのブロックである。ホルダ51は、ホルダ51は、軸状に延びる棒体である。
【0017】
本明細書では、ホルダ51が延びる方向のうち、被削材の加工面に向かう方向を工具先端側といい、その反対側を工具基端側という。また、ホルダ51が延びる方向に直交する方向のうち、インサート11のすくい面11bが向く方向を上側として各部を説明する。なお、本明細書における上下方向は、単に説明のために用いられる方向であって、ヘッド部材1の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0018】
ホルダ51は、鋼材等からなる。ホルダ51は、工具基端側に位置する基端部51bにおいて図示略の工作機械の冶具(刃物台)に着脱可能に保持される。
【0019】
ホルダ51の先端部51aには、ヘッド部材1を装着するための装着部52が向けられる。装着部52は、ホルダ51の先端部51aの角部を切り欠く凹状部52aを有する。凹状部52aは、ホルダ51の一方の側面と平行に延びる平面状をなす受け面53を有する。受け面53には、ホルダ51内に設けられたクーラント流路の開口部53aが設けられる。ヘッド部材1は、1つ以上の固定ネジ54によって受け面53に押し付けるように固定される。開口部53aは、ヘッド部材1の流入口21aに対向する。
【0020】
図2は、インサート11が装着されたヘッド部材1の正面図である。
ヘッド部材1は、ホルダ51に取り付けて使用される。ヘッド部材1は、ホルダ51から供給されたクーラントをインサート11の切刃11aに供給する。ヘッド部材1は、板状の本体部10を有する。
【0021】
本実施形態の本体部10は、一例として3Dプリンタによって金属の粉末材料を溶融させながら積層することで形成される。本体部10は、3Dプリンタで形成されるため、内部に空洞部(図示略)が設けられることで軽量化が図られていてもよい。
【0022】
本体部10は、板厚方向を向く第1主面10aおよび第2主面と、第1主面10aおよび第2主面10bの間に位置する端面10cと、を有する。端面10cは、板厚方向に沿って延び第1主面10aと第2主面10bとを繋ぐ。本体部10は、第1主面10aにおいて、ホルダ51の受け面53と対向する。
【0023】
本体部10には、工具先端側を向く端面10cから工具基端側に延びる切欠部16cと、切欠部16cからさらに工具基端側に延びるスリット16dと、が設けられる。また、本体部10は、切欠部16cおよびスリット16dを挟んで上下に配置された上顎部17および下顎部18を有する。インサート11は、上顎部17と下顎部18の間に挟み込まれて本体部10にクランプされる。インサート11は、上顎部17を下側に弾性変形させて切欠部16cにクランプされる。
【0024】
上顎部17には、インサート11を上方から押圧する押圧面17aが設けられる。一方で、下顎部18には、押圧面17aと上下方向に対向する台座面18aが設けられる。また、押圧面17aと台座面18aとで挟まれた領域の工具基端側には、工具先端側を向く当接面19が設けられる。押圧面17a、台座面18aおよび当接面19は、工具先端側に開口する凹状をなすインサート取付部16を構成する。すなわち、本体部10は、インサート11が取り付けられるインサート取付部16を有する。なお、本実施形態において、押圧面17aは下方に向けて凸となる凸V字状をなし、台座面18aは上方に向けて凸となる逆凸V字状をなす。
【0025】
インサート11は、超硬合金等の硬質材料により構成される。インサート11は、外形が断面略方形の角棒状である。インサート11の上面および下面は、断面凹V字状に工具軸方向に沿って延びるV状面が形成されている。インサート11の上面および下面のV状面は、それぞれ押圧面17aおよび台座面18aに接触する。インサート11の上面にはV状面より工具先端側に位置しV状面より一段後退するすくい面11bが形成される。すくい面11bの工具先端側に位置する角部には、溝入れ加工や突っ切り加工に使用される切刃11aが形成されている。すなわち、インサート11は、切刃11aを有する。
【0026】
図1に示すように、インサート11は、すくい面11bを上側に向けるとともに工具先端側からインサート取付部16に挿入される。これにより、インサート11の後端面が当接面19に当接する。さらに、ホルダ51のネジ穴に締結ネジ55をねじ込むことで、締結ネジ55の頭部が上顎部17を下側に押し付け、上顎部17が下顎部18側に撓むように弾性変形させられる。これにより、その押圧面17aがインサート11を台座面18a側に押圧してインサート11がクランプされる。
【0027】
図2に示すように、本体部10には、一対のクーラント供給路21が設けられる。一対のクーラント供給路21は、ホルダ51から供給されたクーラントを切刃11aに供給する。以下の説明において、一対のクーラント供給路21を互いに区別して説明する場合、これらをそれぞれ第1クーラント供給路21Aと第2クーラント供給路21Bと呼ぶ。第1クーラント供給路21Aは、第2クーラント供給路21Bより上側に位置する。第1クーラント供給路21Aは、切欠部16cおよびスリット16dの上側に位置する。また、第2クーラント供給路21Bは、切欠部16cおよびスリット16dの下側に位置する。
【0028】
クーラント供給路21は、流入口21aと、導入流路21bと、主流路21cと、吐出口21dと、を有する。クーラント供給路21は、流入口21a、導入流路21b、主流路21c、および吐出口21dの順でクーラントを流す。
【0029】
流入口21aは、クーラント供給路21の最上流に位置する。流入口21aは、本体部10の第1主面10aに位置する。図1に示すように、ヘッド部材1がホルダ51に固定されると、第1主面10aはホルダ51の受け面53に対向する。これに伴い、流入口21aは、ホルダ51の開口部53aと連通する。これにより、クーラント供給路21は、流入口21aにおいてホルダ51からクーラントを流入させる。
【0030】
導入流路21bは、流入口21aと主流路21cを繋ぎ流入口21aに流入したクーラントを主流路21cに導入する流路である。導入流路21bは、本体部10の内部を板厚方向に沿って延びる。本実施形態において、導入流路21bは、第1主面10aから本体部10の板厚方向中央まで延びる。流入口21aは、導入流路21bの第1主面10aにおける開口端である。
【0031】
主流路21cは、本体部10の板厚方向と直交する平面に沿って延びる。主流路21cは、工具先端側に向かって緩やかに湾曲して延び吐出口21dにおいて工具先端側に開口する。
【0032】
吐出口21dは、主流路21cの開口端であり端面10cに位置する。すなわち、クーラント供給路21は、端面10cで開口する吐出口21dを有する。吐出口21dは、クーラント供給路21内を流れるクーラントを切刃11aおよび被削材に向けて放出する。吐出口21dは、本体部10の端面10cのうち工具先端側を向く面に位置する。
【0033】
ここで、第1クーラント供給路21Aおよび第2クーラント供給路21Bの主流路21cおよび吐出口21dを互いに区別してより詳細に説明する。以下の説明において、第1クーラント供給路21Aの主流路21cを第1主流路21Acと呼び、第1クーラント供給路21Aの吐出口21dを第1吐出口21Adと呼ぶ。また、第2クーラント供給路21Bの主流路21cを第2主流路21Bcと呼び、第2クーラント供給路21Bの吐出口21dを第2吐出口21Bdと呼ぶ。
【0034】
図2に示すように、第1クーラント供給路21Aの第1主流路21Acは、上顎部17の内部を通過する。第1吐出口21Adは、上顎部17の工具先端側を向く端面10cであって切刃11aの上側に位置する。したがって、第1クーラント供給路21Aは、切刃11aの上側から切刃11aおよび被削材にクーラントを供給する。
【0035】
第1主流路21Acは、工具先端側に向かうに従い上側に凸となるように湾曲して延びる。より具体的には、第1主流路21Acは、導入流路21bから工具先端側に向かうに従い、緩やかに上側に向かい最上点を超えて緩やかに下側に向かように湾曲する。すなわち、第1クーラント供給路21Aは、第1吐出口21Adに至る一領域において工具先端側に向かうに従い下側に傾斜する。第1クーラント供給路21Aを通過するクーラントは、第1吐出口21Adにおいて斜め下側に向けて噴出される。結果的に、第1クーラント供給路21Aは、第1吐出口21Adの下側に位置する切刃11aに対して効率的にクーラントを供給できる。
【0036】
第2クーラント供給路21Bの第2主流路21Bcは、下顎部18の内部を通過する。第2吐出口21Bdは、下顎部18の工具先端側を向く端面10cであって切刃11aの下側に位置する。したがって、第2クーラント供給路21Bは、切刃11aの下側から切刃11aおよび被削材にクーラントを供給する。
【0037】
第2主流路21Bcは、工具先端側に向かうに従い下側に凸となるように湾曲して延びる。より具体的には、第2主流路21Bcは、導入流路21bから工具先端側に向かうに従い、緩やかに下側に向かい最下点を超えて緩やかに上側に向かように湾曲する。すなわち、第2クーラント供給路21Bは、第2吐出口21Bdに至る一領域において工具先端側に向かうに従い上側に傾斜する。このため、第2クーラント供給路21Bを通過するクーラントは、第2吐出口21Bdにおいて斜め上側に向けて噴出される。結果的に、第2クーラント供給路21Bは、第2吐出口21Bdの上側に位置する切刃11aに対して効率的にクーラントを供給できる。
【0038】
本実施形態によれば、クーラント供給路21は、主流路21cにおいて緩やかに湾曲する。このため、クーラント供給路21を極端に折れ曲がった構成にすることなく吐出口21dを切刃11aに向けて最適に配置することが可能となる。これにより、クーラント供給路21中のクーラントの流動をスムーズにして、吐出口21dから噴出するクーラントの流速を高めるとともに、切刃11aの適切な位置にクーラントをあてることが可能となり、クーラントによる切刃11aおよび被削材の冷却効率を高めることができる。
【0039】
本実施形態において、クーラント供給路21は、主流路21cの全長に亘って湾曲する。すなわち、主流路21cは直線的に延びる領域を有していない。このため、主流路21cに大きな曲率半径で湾曲する領域を設ける必要がなく、クーラント供給路21内のクーラントの流動抵抗を効果的に低減できる。
【0040】
図3は、図2のIII-III線に沿う第1クーラント供給路21Aの断面図であり、第1主流路21Acの上流側端部における第1クーラント供給路21Aの流路断面を示す。図4は、図2のIV-IV線に沿う第1クーラント供給路21Aの断面図であり、第1主流路21Acの下流側端部における第1クーラント供給路21Aの流路断面を示す。
なお、本明細書において、流路断面とは、流路が延びる方向と直交する断面を意味し、流路断面積とは、流路断面における流路の断面積を意味する。
【0041】
図3および図4に示すように、第1主流路21Acは、下流側端部の流路断面積が、上流側端部の流路断面積と比較して、小さい。第1主流路21Acは、上流側端部から下流側端部に向かうに従い、流路断面積が連続的に小さくなる。第1主流路21Acの下流側端部には、第1吐出口21Adが設けられる。すなわち、第1クーラント供給路21Aは、第1吐出口21Adに至る少なくとも一部の領域において、第1吐出口21Adに向かうに従い連続的に流路断面積が小さくなる。
【0042】
図5は、図2のV-V線に沿う第2クーラント供給路21Bの断面図であり、第2主流路21Bcの上流側端部における第2クーラント供給路21Bの流路断面を示す。図6は、図2のVI-VI線に沿う第2クーラント供給路21Bの断面図であり、第2主流路21Bcの下流側端部における第2クーラント供給路21Bの流路断面を示す。
【0043】
図5および図6に示すように、第2主流路21Bcは、下流側端部の流路断面積が、上流側端部の流路断面積と比較して、小さい。第2主流路21Bcは、第1主流路21Acと同様に、上流側端部から下流側端部に向かうに従い、流路断面積が連続的に小さくなる。すなわち、第2クーラント供給路21Bは、第2吐出口21Bdに至る少なくとも一部の領域において、第2吐出口21Bdに向かうに従い連続的に流路断面積が小さくなる。
【0044】
本明細書において、流路断面積が連続的に小さくなる領域を狭窄領域と呼ぶこととする。狭窄領域では、流路が徐々に狭くなるため流路内を流れる流体に流路断面の中央側に傾いて向かう流れが形成される。このため、狭窄領域の端部に吐出口が設けられることで吐出口に達した流体は霧状に飛散することなくまとまって噴出される。
【0045】
本実施形態によれば、クーラント供給路21は、吐出口21dに至る領域が狭窄領域とされることで、吐出口21dからまとまったクーラントを噴出することができる。結果的に吐出口21dから切刃11aおよび被削材に効率的にクーラントを供給することができる。
【0046】
本実施形態において、クーラント供給路21において、狭窄領域は主流路21cの全長に亘って設けられる。しかしながら、クーラント供給路21が、吐出口21dに至る一部の領域に狭窄領域を有していれば、上述の効果を奏することができる。
【0047】
本実施形態において、クーラント供給路21の流路断面は、狭窄領域において、板厚方向に沿う寸法(図3図6において紙面左右方向の寸法)と、板厚方向と直交する寸法(図3図6において紙面上下方向の寸法)と、の何れも連続的に小さくなっている。これにより、吐出口21dから噴出するクーラントの板厚方向への飛散および板厚方向と直交する方向への飛散を何れも抑制することができる。
【0048】
本実施形態によれば、クーラント供給路21は、上流側の流路断面積が下流側の流路断面積より大きい。クーラント供給路21は、上流側の流路断面積を大きくすることで上流側におけるクーラントの圧力損失を抑制するとともに、下流側の流路断面積を小さくすることで下流側のクーラントの流速が高められる。これにより、吐出口21dから噴出されるクーラントの流速を高めて、高効率の冷却を行うことができる。
【0049】
図4および図5に示すように、クーラント供給路21の断面形状は、吐出口21dにおいて本体部の板厚方向を長手方向とする横長形状である。上述したように、インサート11の切刃11aは、本体部10の板厚方向に沿って延びる。このため、吐出口21dを横長形状とすることで吐出口21dから放出されたクーラントをインサート11の切刃11aの全長に効率的に供給できる。
【0050】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0051】
1…ヘッド部材(溝入れ工具用ヘッド部材)
10…本体部
10c…端面
11…インサート(切削インサート)
11a…切刃
16…インサート取付部
21(21A、21B)…クーラント供給路
21d(21Ad、21Bd)…吐出口
50…溝入れ工具
51…ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6