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特許7183965ハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法
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  • 特許-ハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20221129BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20221129BHJP
   E02D 27/48 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E02D27/00 D
E02D27/48
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019109529
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020200706
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕司
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 典央
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155572(JP,A)
【文献】特開平07-216907(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015951(JP,U)
【文献】特開平02-282572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E02D 27/00
E02D 27/48
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の底盤に上面視で枠状に形成されたハーフプレキャストコンクリートが載置され、前記底盤における前記ハーフプレキャストコンクリートの設置領域の内側の内領域にコンクリートが現場打設されることにより構築される基礎構造を、前記底盤に接続する基礎構築方法であって、
前記底盤の前記内領域に縦筋アンカーを打設する工程と、
前記設置領域に前記ハーフプレキャストコンクリートを載置する工程と、
前記ハーフプレキャストコンクリートに囲まれる前記内領域にコンクリートを打設する工程と、
を有することを特徴とするハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【請求項2】
前記コンクリートを打設する工程の前に、前記ハーフプレキャストコンクリートに横筋アンカーを設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【請求項3】
前記ハーフプレキャストコンクリートの内面には、前記横筋アンカーが挿入可能な複数の挿入孔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【請求項4】
前記挿入孔は、配置される前記ハーフプレキャストコンクリートの内面における水平方向に50mm以上の間隔で設けられていることを特徴とする請求項3に記載のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【請求項5】
前記コンクリートを打設する工程の前に、前記ハーフプレキャストコンクリートの内面の少なくとも一部に目粗しをするようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【請求項6】
前記ハーフプレキャストコンクリートには、上方に突出する縦主筋が埋設され、
前記ハーフプレキャストコンクリートの上方に型枠が設置され、
前記ハーフプレキャストコンクリートの内側にコンクリートが打設された後、前記型枠内にコンクリートを打設するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設構造物内の既設柱や配管が残存するような極めて狭隘な場所においても、現場打設により基礎を構築する施工を行うことがある。このような場合には、型枠の設置作業や配筋等の現場における作業効率が低下することから、工期が長くなるおそれがあった。
そこで、例えば特許文献1に示されるような、工場で製作するプレキャストコンクリートを適用して既設の鉄筋コンクリート造の既設構造物に接続する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-282572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来のプレキャストコンクリートを用いて既設構造物に接続する施工方法では、以下のような問題があった。
すなわち、既設の鉄筋コンクリート造の構造物(以下、RC造既設構造物という)を改造して新たに基礎を構築する場合には、そのRC造既設構造物とプレキャストコンクリートを接続して応力伝達させ、一体化させる必要がある。例えば、RC造既設構造物が底盤の場合には、その底盤に縦筋アンカーを打設しておき、予め製作工場でプレキャストコンクリートに設けた挿入孔に縦筋アンカーを挿入する構造が一般的である。この場合には、プレキャストコンクリートの製作前に縦筋アンカー及び挿入孔の位置が一致するように決めておく必要がある。
【0005】
ところが、縦筋アンカー及び挿入孔の位置は、RC造既設構造物に埋設されている鉄筋の位置に依存することから、事前に非破壊配筋調査を行った後に、既設コンクリート内の鉄筋を避けた位置を縦筋アンカー及び挿入孔の位置とするように決定してプレキャストコンクリートを製造することになる。そのため、現地において事前の配筋調査が難しい場合や工期が限られるといった制約がある場合には、既設コンクリート内の鉄筋を調査して、縦筋アンカー及び挿入孔の位置を決定することが難しいという問題があった。
【0006】
また、プレキャストコンクリートを底盤上に設置する際には、クレーン等を使用してプレキャストコンクリートを吊り下ろす作業となるが、先行して打設された多数の縦筋アンカーにプレキャストコンクリートの挿入孔の位置を合わせて挿入することは、クレーン操作上、位置決め精度の高い作業が要求されることになる。しかも、構築する基礎の形状が大きい場合には、プレキャストコンクリートの重量も増大するため、揚重機械の仕様も大きくする必要があった。
そのため、施工の簡略化を図って、工期の短縮と工事費の低減が求められており、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、施工の簡略化を図ることができ、工期の短縮と工事費の低減を図ることができるハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、既設構造物の底盤上面視で枠状に形成されたハーフプレキャストコンクリートが載置され、前記底盤における前記ハーフプレキャストコンクリートの設置領域の内側の内領域にコンクリートが現場打設されることにより構築される基礎構造を、前記底盤に接続する基礎構築方法であって、前記底盤の前記内領域に縦筋アンカーを打設する工程と、前記設置領域に前記ハーフプレキャストコンクリートを載置する工程と、前記ハーフプレキャストコンクリートに囲まれる前記内領域にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、底盤のうちハーフプレキャストコンクリートが載置されない内領域に縦筋アンカーを設け、この縦筋アンカーをハーフプレキャストコンクリートの内側(内領域)に打設されるコンクリートに埋設することで、打設された現場打設コンクリート部とハーフプレキャストコンクリートとが縦筋アンカーを介して既設構造物の底盤と一体化することができる。つまり、底盤から縦筋アンカーを介して現場打設コンクリート部及びハーフプレキャストコンクリートに応力伝達ができる基礎構造を構築することができる。
【0010】
この場合、縦筋アンカーがハーフプレキャストコンクリートに接続されずに現場打設コンクリート部に埋設されることから、縦筋アンカーをハーフプレキャストコンクリートにかかわらず任意の位置に配置することが可能となる。そのため、縦筋アンカーを底盤に埋設されている既設鉄筋と干渉することなく配置することができることから、施工の簡略化を図ることができる。
さらに、本発明では、縦筋アンカーの設置位置に自由度をもたせることが可能となるので、底盤に埋設される既存鉄筋の位置を例えば非破壊配筋調査等により確認して縦筋アンカーをハーフプレキャストコンクリートの設計に反映する必要がなくなる。そのため、前記調査の結果を待たずにハーフプレキャストコンクリートの製作を開始することが可能となることから、工期の短縮とコストの低減を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明では、底盤に設けた縦筋アンカーをハーフプレキャストコンクリートに接続するといった従来の場合のように、ハーフプレキャストコンクリートを吊り下ろす際の高い精度が求められる位置決め作業が不要となるので、施工の簡略化を図ることができる。しかもハーフプレキャストコンクリートを用いているので、プレキャスト部分が軽量化されるため、クレーン仕様を小さく抑えることができ、コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、本発明では、ハーフプレキャストコンクリートが底盤の設置領域に載置可能な形状であり、設置領域に載置したハーフプレキャストコンクリートを型枠としてその内側にコンクリートを打設することができる。そのため、型枠が不要となるので、施工が簡単になるうえ、基礎構造の構築箇所が狭隘な場所に適用することができる。
【0013】
また、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、前記コンクリートを打設する工程の前に、前記ハーフプレキャストコンクリートに横筋アンカーを設けるようにしたことを特徴としてもよい。
【0014】
この場合には、底盤に打設された縦筋アンカーの近傍に横筋アンカーを配置することができるので、既設構造物の底盤に作用する応力を縦筋アンカー、現場打設コンクリート及び横筋アンカーを介して横筋アンカーが接続されるハーフプレキャストコンクリートに伝達することができる。
【0015】
また、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、前記ハーフプレキャストコンクリートの内面には、前記横筋アンカーが挿入可能な複数の挿入孔が設けられていることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、構造的に必要な横筋アンカーの本数以上の複数の挿入孔をハーフプレキャストコンクリートに設けておくことで、縦筋アンカーと干渉する場合であっても、その干渉する縦筋アンカーの位置をずらした位置の挿入孔に横筋アンカーを挿入することが可能となる。そのため、本発明では、必要な横筋アンカーの本数を確実に配置することができる。
【0017】
また、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、前記挿入孔は、配置される前記ハーフプレキャストコンクリートの内面における水平方向に50mm以上の間隔で設けられていることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、挿入孔が水平方向に50mm以上の間隔で設けられているので、効果的に必要な横筋アンカーの本数を満たすことができる。すなわち、挿入孔を水平方向に50mm以上の間隔で設けることで、一般的なコンクリートの粗骨材の最大寸法25~40mm以上を確保することができるうえ、コンクリートの充填性を良好とすることができる。つまり、挿入孔が50mm未満の場合のように、挿入孔に挿入される横筋アンカー同士の間においてコンクリートが流通しにくくなるという不具合を防ぐことができる。
【0019】
また、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、前記コンクリートを打設する工程の前に、前記ハーフプレキャストコンクリートの内面の少なくとも一部に目粗しをするようにしたことを特徴としてもよい。
【0020】
この場合、ハーフプレキャストコンクリートの内面の一部に目粗しが施されているので、ハーフプレキャストコンクリートの内側に打設される現場打設コンクリート部のコンクリートとのせん断を発生させてそのコンクリートとの一体化を図ることができる。
【0021】
また、本発明に係るハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法では、前記ハーフプレキャストコンクリートには、上方に突出する縦主筋が埋設され、前記ハーフプレキャストコンクリートの上方に型枠が設置され、前記ハーフプレキャストコンクリートの内側にコンクリートが打設された後、前記型枠内にコンクリートを打設するようにしたことを特徴としてもよい。
【0022】
本発明では、ハーフプレキャストコンクリートが不要な基礎上部の施工においては、ハーフプレキャストコンクリート上に設置した型枠内にコンクリートを打設することで、打設した現場打設コンクリート部とハーフプレキャストコンクリートとを一体に設けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法によれば、施工の簡略化を図ることができ、工期の短縮と工事費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態によるハーフプレキャスト基礎構造体と既設構造物とが接続された構造を示す縦断面図である。
図2図1に示すA-A線断面図であってハーフプレキャスト基礎構造体の水平断面図である。
図3図1において、1段目のハーフプレキャストコンクリート及び現場打設コンクリート部と底盤との接続構造の要部を示す縦断面図である。
図4】ハーフプレキャストコンクリートの斜視図である。
図5】ハーフプレキャストコンクリートを上方から見た平面図である。
図6】ハーフプレキャストコンクリートの水平断面図であって、(a)は1段目を示す図、(b)は2段目を示す図である。
図7】1段目と2段目のハーフプレキャストコンクリートを接続するための接合継手の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態によるハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態によるハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法は、ハーフプレキャスト基礎構造体1(基礎構造)を既設構造物2の底盤20上に接続し、基礎として構築する施工に採用される施工方法である。
ここで、「ハーフプレキャストコンクリート」とは、ハーフプレキャスト基礎構造体1において、プレキャストコンクリートが配置される水平断面において、部分的にプレキャストコンクリートが設けられたものと定義する。つまり、他の断面部分は、現場打設によるコンクリート部等により構成される。
【0027】
本実施形態による既設構造物2は、例えば製鉄所のコークス炉の地下空間2Aを有し、コークス炉の配管等の設備(図示省略)が配置される鉄筋コンクリート造の構造物を対象としている。そして、本実施形態では、この地下空間2Aの底盤に中間擁壁(上述したハーフプレキャスト基礎構造体1)を新たに構築する施工方法に適用される。
【0028】
既設構造物2の躯体は、一方向に延在する底盤20と、上面視で底盤20の延在方向X1(一方向)に直交する幅方向X2に互いに対向する既設側壁21(21A、21B)と、を有し、これら底盤20と一対の既設側壁21A、21Bとによって囲まれて上方が開口して延在方向X1に延びる地下空間2Aを形成している。また、既設構造物2は、対向する既設側壁21A、21Bのうち一方(ここでは第2既設側壁21B)の上端から他方の第1既設側壁21Aに向けて突出する既設頂壁23が設けられている。既設頂壁23の下方には、配管設備が設置されている。
【0029】
ハーフプレキャスト基礎構造体1は、地下空間2Aに配置される地下部1Aと、地下部1Aから上方に延びる地上部1Bと、を有し、地下空間2Aの延在方向X1に沿って延びる壁体を構成している。ハーフプレキャスト基礎構造体1は、第1既設側壁21Aの内壁面21aに接した状態で構築される。
【0030】
ハーフプレキャスト基礎構造体1は、図1及び図2に示すように、既設構造物2の底盤20に載置される上面視で矩形枠状に形成されたハーフプレキャストコンクリート3と、底盤20おけるハーフプレキャストコンクリート3の設置領域20Aの内側の内領域20Bにコンクリートが現場打設された現場打設コンクリート部4と、により構築された構造体である。ハーフプレキャスト基礎構造体1は、図1及び図3に示すように、底盤20に対して縦筋アンカー11を介して接続されている。
【0031】
縦筋アンカー11は、図3に示すように、例えば樹脂製のアンカーが採用され、底盤20の内領域20Bにおけるハーフプレキャストコンクリート3の短壁部32(後述する)寄りの位置で短辺方向Y2に沿って間隔をあけて複数配置される。第1既設側壁21A側に配置される縦筋アンカー11は、2列で配置されている。縦筋アンカー11は、下部11aが底盤20に埋設され上方に突出し上部11bが直角に折れ曲げられた形状で先端に定着部11cを有している。
縦筋アンカー11は、現場打設コンクリート部4のコンクリートが打設される前であって、好ましくはハーフプレキャストコンクリート3が設置領域20Aに載置される前に、底盤20に挿入されて設けられる。
【0032】
ハーフプレキャストコンクリート3は、図1に示すように、例えばハーフプレキャスト基礎構造体1が構築される現場から離れた製作工場で予め製作され、現場に搬入されて施工箇所に設置される。本実施形態では、ハーフプレキャストコンクリート3が上下2段に重ねて設置されるとともに、延在方向X1に連続して配置されている。
なお、以下の説明では、底盤20上に直接載置される下段のハーフプレキャストコンクリートを1段目として符号3Aを付し、1段目のハーフプレキャストコンクリート3A上に接続されるハーフプレキャストコンクリートを2段目として符号3Bを付す。
【0033】
ハーフプレキャストコンクリート3は、図4及び図5に示すように、上面視で長方形状に枠組みされた形状をなしている。すなわち、ハーフプレキャストコンクリート3は、対向する一対の長壁部31、31と、対向する一対の短壁部32(32A、32B)と、を有し、内側に上下に貫通開口3bが形成されている。
【0034】
短壁部32は、それぞれ厚さが異なり、厚さが薄い方を第1短壁部32Aとし、厚い方を第2短壁部32Bとする。
そして、ハーフプレキャストコンクリート3は、長壁部31の長辺方向Y1を地下空間2Aの幅方向X2(図1参照)に向け、かつ第2短壁部32Bを既設構造物2の第1既設側壁21Aの内壁面21aに接した状態で、底盤20に載置されている。
【0035】
ハーフプレキャストコンクリート3A、3Bは、図6(a)、(b)に示すように、各壁部31、32において、長辺方向Y1及び短辺方向Y2に延在するように配置された縦主筋33と、縦主筋33を囲むように設けられたせん断補強筋34と、を備えている。
【0036】
1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aには、図6(a)に示すように、短壁部32の内面32aに後述する横筋アンカー36が挿入可能な挿入孔35が設けられている(図3参照)。
2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bには、図6(b)及び図7に示すように、1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aの縦主筋33の上端部33aと、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの縦主筋33の下端部33bとを同軸に接続するための接合継手37が設けられている。
【0037】
本実施形態では、図6(a)、(b)に示すように、縦主筋33は、長壁部31においてハーフプレキャストコンクリート3の長辺方向Y1に間隔をあけて1列で配筋され、短壁部32のうち一方の第1短壁部32Aにおいて短辺方向Y2に間隔をあけて1列で配筋され、他方の第2短壁部32Bにおいて短辺方向Y2に間隔をあけて2列で配筋されている。なお、縦主筋33の配筋数は、上記数量、配置は一例であり、適宜設定可能である。
【0038】
せん断補強筋34は、長辺方向Y1及び短辺方向Y2を含む水平断面で縦主筋33を囲むように設けられている。さらに、第2短壁部32Bにおいては、2列の縦主筋33を囲むようにして配筋されている。
【0039】
短壁部32の内面32aに設けられる挿入孔35は、雌ねじが形成されたアンカーボルトが埋設されたものである。挿入孔35は、この雌ねじに横筋アンカー36の雄ねじが螺合されて横筋アンカー36が装着可能に設けられている。挿入孔35は、配置される短壁部32の内面32aにおける水平方向(短辺方向Y2)に50mm以上の間隔で設けられ、上下方向にも適宜な間隔をあけて配置されている。すなわち、挿入孔35を水平方向に50mm以上の間隔で設けることで、一般的なコンクリートの粗骨材の最大寸法25~40mm以上を確保することができるうえ、コンクリートの充填性を良好とすることができる。つまり、挿入孔が50mm未満の場合のように、挿入孔35に挿入される横筋アンカー36、36同士の間においてコンクリートが流通しにくくなるといいう不具合を防ぐことができる。
なお、挿入孔35の上下方向の配置間隔は、とくに限定されることはなく、現場の条件に合わせて適宜設定することができる。
横筋アンカー36は、複数設けられる挿入孔35のうち任意の挿入孔35に装着することが可能である。
【0040】
2段目のハーフプレキャストコンクリート3に設けられる接合継手37は、図7に示すように、上下方向に連通して上下両端に縦主筋33の端部33a、33bが緩やかに挿入される筒状体371と、筒状体371の内側に連通する上下一対の注入管372と、を備えている。接合継手37は、縦主筋33に対応する位置にハーフプレキャストコンクリート3Bのコンクリートに埋設されている。接合継手37の下端37aは、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの下面に開口するように配置されている。接合継手37の注入管372の注入口は、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの内面3aに開口するように配置されている。接合継手37は、筒状体371の上下端のそれぞれに縦主筋33が挿通された状態で、注入管372の注入口からモルタル373が注入され、筒状体371及び注入管372の内部を充填することにより上下の縦主筋33同士が接続される。
【0041】
次に、上述したハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法について、図面を用いて詳細に説明する。
先ず、図4及び図5に示すハーフプレキャストコンクリート3A、3Bは、予め工場等で製作しておく。
そして、図1及び図3に示すように、施工現場となる既設構造物2の底盤20において、底盤20の内領域20Bに複数の縦筋アンカー11を打設する。縦筋アンカー11は、底盤20内に埋設されている既設鉄筋(図示省略)に干渉しない位置に設ける。
【0042】
次に、図1に示すように、底盤20の設置領域20Aに1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aを載置する。このとき、ハーフプレキャストコンクリート3Aは、底盤20に対して接続はしないで、載置のみとする。その後、図3に示すように、ハーフプレキャストコンクリート3Aの短壁部32の内面32aに設けられる任意の位置の挿入孔35に横筋アンカー36を螺合させることにより装着する。なお、横筋アンカー36は、縦筋アンカー11と重ならない位置で挿入孔35に挿通可能な位置に設けることができる。
このように、構造的に必要な横筋アンカー36の本数以上の挿入孔35を例えば50mm以上の間隔でハーフプレキャストコンクリート3Aに仕込んでおくことで、必要な横筋アンカー36の本数を満たすことができる。
【0043】
また、図6(a)に示すように、ハーフプレキャストコンクリート3Aの長壁部31の内面31aを例えばサンダー等を使用して目粗しM(いわゆる、洗い出し)をしておく。なお、この目粗しMは、ハーフプレキャストコンクリート3Aを底盤20の設置領域20Aに載置する前であってもよい。すなわち、ハーフプレキャストコンクリート3Aを工場で製作する段階で目粗しMを設けておいてもかまわない。
【0044】
次に、図1に示すように、ハーフプレキャストコンクリート3Aの内部の内領域20Bにコンクリートを打設し、現場打設コンクリート部4を施工し、ハーフプレキャストコンクリート3Aと現場打設コンクリート部4とを一体化させる。このとき、ハーフプレキャストコンクリート3Aの内面31aの一部に目粗しMが施されているので、ハーフプレキャストコンクリート3Aの内側に打設される現場打設コンクリート部4のコンクリートとのせん断を発生させてそのコンクリートとの一体化を図ることができる。これにより1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aとその内側の現場打設コンクリート部4の施工が完了となる。
【0045】
次に、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bを、1段目のハーフプレキャストコンクリート3A上に接続する。このとき、1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aの縦主筋33と2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの縦主筋33とが接合継手37(図7参照)を介して接合される。つまり、図7に示すように、接合継手37の筒状体371に上下の縦主筋33の上端部33a、下端部33bを挿通させた後に一方(ここでは下方)の注入管372よりモルタル373を充填して硬化させる。なお、接合継手37内に注入したモルタル373は、他方(上方)の注入管372より流出が確認された時点で注入が完了となる。
また、図6(b)に示すように、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの内面3aも全周にわたって目粗しMをしておく。
【0046】
その後、2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bの内側にコンクリートを打設し、現場打設コンクリート部4を施工し、ハーフプレキャストコンクリート3Bと現場打設コンクリート部4とを一体化させる。これにより2段目のハーフプレキャストコンクリート3Bとその内側の現場打設コンクリート部4の施工が完了となる。
【0047】
次に、図1に示すように、既設構造物2の地下部1Aにおいて、ハーフプレキャストコンクリート3Bの上方に不図示の型枠が設置される。そして、その型枠内に適宜な鉄筋51を組み立てた後にコンクリートを打設して、地下部1Aにおける鉄筋コンクリート造のコンクリート壁部5Aが構築される。
さらに、地上部1Bにおいても同様に順次上方に向けて型枠(図示省略)を設置し、その型枠内に適宜な鉄筋51を組み立てた後にコンクリートを打設して、地上部1Bにおける鉄筋コンクリート造のコンクリート壁部5Bが構築される。これにより本実施形態の ハーフプレキャスト基礎構造体1が構築されることになる。
【0048】
次に、上述したハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0049】
本実施形態では、図1に示すように、底盤20のうちハーフプレキャストコンクリート3が載置されない内領域20Bに縦筋アンカー11を設け、この縦筋アンカー11を1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aの内側(内領域20B)に打設されるコンクリートに埋設することで、打設された現場打設コンクリート部4とハーフプレキャストコンクリート3とが縦筋アンカー11を介して既設構造物2の底盤20と一体化することができる。つまり、底盤20から縦筋アンカー11を介して現場打設コンクリート部4及びハーフプレキャストコンクリート3に応力伝達ができるハーフプレキャスト基礎構造体1を構築することができる。
【0050】
この場合、縦筋アンカー11が1段目のハーフプレキャストコンクリート3Aに接続されずに現場打設コンクリート部4に埋設されることから、縦筋アンカー11をハーフプレキャストコンクリート3Aにかかわらず任意の位置に配置することが可能となる。そのため、縦筋アンカー11を底盤20に埋設されている既設鉄筋と干渉することなく配置することができることから、施工の簡略化を図ることができる。さらに、縦筋アンカー11の設置位置に自由度をもたせたことで、縦筋アンカー11を打設する前に実施していた非破壊配筋調査等が不要になるため、工期の短縮とコストの低減を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、底盤20に設けた縦筋アンカーをハーフプレキャストコンクリートに接続するといった従来の場合のように、ハーフプレキャストコンクリート3Aを吊り下ろす際の高い精度が求められる位置決め作業が不要となるので、施工の簡略化を図ることができる。しかもハーフプレキャストコンクリート3を用いているので、プレキャスト部分が軽量化されるため、クレーン仕様を小さく抑えることができ、コストの低減を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、ハーフプレキャストコンクリート3Aが底盤20の設置領域20Aに載置可能な形状であり、設置領域20Aに載置したハーフプレキャストコンクリート3Aを型枠としてその内側にコンクリートを打設することができる。そのため、型枠が不要となるので、施工が簡単になるうえ、基礎構造の構築箇所が狭隘な場所に適用することができる。
【0053】
また、本実施形態では、底盤20に打設された縦筋アンカー11の近傍に横筋アンカー36を配置することができるので、既設構造物2の底盤20に作用する応力を縦筋アンカー11、現場打設コンクリート部4及び横筋アンカー36を介して横筋アンカー36が接続されるハーフプレキャストコンクリート3に伝達することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、構造的に必要な横筋アンカー36の本数以上の複数の挿入孔35をハーフプレキャストコンクリート3Aに設けておくことで、縦筋アンカー11と干渉する場合であっても、その干渉する縦筋アンカー11の位置をずらした位置の挿入孔35に横筋アンカー36を挿入することが可能となる。そのため、本実施形態では、必要な横筋アンカー36の本数を確実に配置することができる。
さらに、挿入孔35が水平方向に50mm以上の間隔で設けられているので、効果的に必要な横筋アンカー36の本数を満たすことができる。
【0055】
また、本実施形態では、ハーフプレキャストコンクリート3A、3Bの内面3aの一部に目粗しMが施されているので、ハーフプレキャストコンクリート3A、3Bの内側に打設される現場打設コンクリート部4のコンクリートとのせん断を発生させてそのコンクリートとの一体化を図ることができる。
【0056】
上述した本実施形態によるハーフプレキャストコンクリート3を用いた基礎構築方法では、施工の簡略化を図ることができ、工期の短縮と工事費の低減を図ることができる。
【0057】
以上、本発明によるハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、既設構造物として製鉄所のコークス炉を対象としているが、この構造物に限定されることはなく、他の既設構造物に対して本発明のハーフプレキャストコンクリートを用いた基礎構築方法を適用することも勿論可能である。
【0059】
また、本実施形態では、ハーフプレキャストコンクリート3A、3Bが上下2段で設けられているが、このような形態であることに限定されることはなく、例えば複数段に分割されていない構造のハーフプレキャストコンクリートであってもよい。あるいは、ハーフプレキャストコンクリートが3段以上に設けられていてもよい。
さらに、本実施形態では、ハーフプレキャストコンクリート3A、3Bが上面視で長方形状となっているが、正方形であってもかまわい。
【0060】
さらに、本実施形態では、コンクリートを打設する工程の前に、ハーフプレキャストコンクリート3Aに挿入孔35を設け、この挿入孔35に横筋アンカー36を挿入して設けるようにしているが、横筋アンカー36及び挿入孔35を省略することも可能であり、挿入孔35を設けていても横筋アンカー36を使用しない方法であってもかまわない。そして、横筋アンカー36及び挿入孔35の数量、配置間隔は、適宜設定することが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、現場打設コンクリート部4のコンクリートを打設する工程の前に、ハーフプレキャストコンクリート3の内面の少なくとも一部に目粗しMをするようにしているが、目粗しMを省略してもよいし、目粗しMの位置も適宜設定することが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、上下に配置される複数段のハーフプレキャストコンクリート同士の接続構造として、筒状体371と注入管372とを備えた接合継手37を採用しているが、このような構成の接合継手37であることに限定されることはなく、他の構成の継手を用いることも可能である。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ハーフプレキャスト基礎構造体(基礎構造)
1A 地下部
1B 地上部
2 既設構造物
2A 地下空間
3、3A、3B ハーフプレキャストコンクリート
3a 内面
4 現場打設コンクリート部
5A、5B コンクリート壁部
11 縦筋アンカー
20 底盤
20A 設置領域
20B 内領域
21、21A、21B 既設側壁
31 長壁部
32 短壁部
32a 内面
33 縦主筋
34 せん断補強筋
35 挿入孔
36 横筋アンカー
37 接合継手
M 目粗し
X1 延在方向
X2 幅方向
Y1 長辺方向
Y2 短辺方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7