IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理装置及び保護継電器の試験方法 図1
  • 特許-情報処理装置及び保護継電器の試験方法 図2
  • 特許-情報処理装置及び保護継電器の試験方法 図3
  • 特許-情報処理装置及び保護継電器の試験方法 図4
  • 特許-情報処理装置及び保護継電器の試験方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】情報処理装置及び保護継電器の試験方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/05 20060101AFI20221129BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H02H3/05 L
G01R31/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019127071
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021013266
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直喜
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182905(JP,A)
【文献】特開平7-143655(JP,A)
【文献】特開平7-280861(JP,A)
【文献】特開2003-153427(JP,A)
【文献】特開2009-106006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/05
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護継電器に所定の試験信号を送信するように、前記保護継電器を試験する保護継電器試験器に指示可能な情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、制御部を備え、
前記制御部は、
前記試験信号に応じて動作する前記保護継電器の動作情報を検出し、前記動作情報を前記情報処理装置に無線送信する動作情報送信装置に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理と、
前記テスト信号の送信から、前記テスト信号に対する前記動作情報送信装置からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、前記試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理と、を実行することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記試験信号送信要否決定処理は、前記応答時間が所定値よりも長い場合、前記試験信号の送信は不要と判断し、前記応答時間が所定値以下である場合、前記試験信号の送信は必要と判断することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記応答時間が所定値よりも長い場合、前記動作情報送信装置と前記情報処理装置との通信状態に異常があることを示す表示部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記テスト信号および前記応答信号は、アナログ信号として送信され、
前記情報処理装置は、前記応答信号をアナログ信号として受信することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
保護継電器に所定の試験信号を送信するように、前記保護継電器を試験する保護継電器試験器に指示可能な情報処理装置により実行される、保護継電器の試験方法であって、
前記試験信号に応じて動作する前記保護継電器の動作情報を検出し、前記動作情報を前記情報処理装置に無線送信する動作情報送信装置に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理ステップと、
前記テスト信号の送信から、前記テスト信号に対する前記動作情報送信装置からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、前記試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理ステップと、を含むことを特徴とする保護継電器の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置及び保護継電器の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、試験者が試験器と保護継電器とを接続して保護継電器の試験を行う試験システムについて開示されている。特許文献1に記載されている試験システムは、保護継電器に格納されている判定基準となる動作時間と、動作時間試験結果で計測された計測時間とを比較して試験の合格、不合格を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-344640号公報(1993年12月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のような試験システムでは、保護継電器の試験器が設置されている現地まで試験作業員が出向き、試験器を試験作業員が操作して作業を行う必要がある。また、試験作業員の負担を減らすべく、試験器に接続された端末を試験員が操作して、試験器から保護継電器への試験信号の送信指示を前記端末より付与することも考え得る。このようにした場合、前記端末と保護継電器との間における通信を確保しておく必要が生じる。そして、当該通信については配線の輻輳を防ぐ観点から、無線通信とすることが好ましいが、当該無線通信に異常があると、保護継電器の試験を正確に行えず、試験結果の信頼性が低下する。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、試験作業員の負担を減らし、なおかつ確実で信頼性の高い保護継電器の試験を行うことができる情報処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、保護継電器に所定の試験信号を送信するように、前記保護継電器を試験する保護継電器試験器に指示可能な情報処理装置であって、前記情報処理装置は、制御部を備え、前記制御部は、前記試験信号に応じて動作する前記保護継電器の動作情報を検出し、前記動作情報を前記情報処理装置に無線送信する動作情報送信装置に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理と、前記テスト信号の送信から、前記テスト信号に対する前記動作情報送信装置からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、前記試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理と、を実行することを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、前記情報処理装置の指示により保護継電器試験器から保護継電器に試験信号が送信可能となるので、試験作業員が保護継電器試験器を直接操作せずに保護継電器の試験を行うことができる。これにより、試験作業員の負担が軽減される。
【0008】
また、前記情報処理装置では、テスト信号送信処理により動作情報送信装置にテスト信号が送信され、試験信号送信要否決定処理により、テスト信号に対する動作情報送信装置からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、試験信号を送信するかしないかが決定される。これにより、情報処理装置と動作情報送信装置との通信状態が正常かどうか確認した上で、試験信号の送信要否を決定することができる。その結果、信頼性の高い保護継電器の試験を確実に行うことができる。
【0009】
また、前記情報処理装置では、前記試験信号送信要否決定処理は、前記応答時間が所定値よりも長い場合、前記試験信号の送信は不要と判断し、前記応答時間が所定値以下である場合、前記試験信号の送信は必要と判断してもよい。
【0010】
前記構成によれば、応答時間が所定値以下の場合、動作情報送信装置と情報処理装置との通信が正常であると判断することができる。また、応答時間が所定値より長い場合、動作情報送信装置と情報処理装置との通信に異常があると判断することができる。これにより、安定した通信状況下でのみ、試験信号の送信を行い、試験を行うことができる。その結果、信頼性の高い保護継電器の試験を行うことができる。
【0011】
さらに、前記情報処理装置では、前記応答時間が所定値よりも長い場合、前記動作情報送信装置と前記情報処理装置との通信状態に異常があることを示す表示部を備えていてもよい。前記構成によれば、作業員が、動作情報送信装置と情報処理装置との通信状態に異常が生じていることを、表示部を視認して即座に把握することができる。
【0012】
また、前記情報処理装置では、前記テスト信号および前記応答信号はアナログ信号として送信され、前記情報処理装置は、前記応答信号をアナログ信号として受信してもよい。前記構成によれば、無線通信方式によるリトライ機能の遅延時間への影響を除去することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る保護継電器の試験方法は、保護継電器に所定の試験信号を送信するように、前記保護継電器を試験する保護継電器試験器に指示可能な情報処理装置により実行される、保護継電器の試験方法であって、前記試験信号に応じて動作する前記保護継電器の動作情報を検出し、前記動作情報を前記情報処理装置に無線送信する動作情報送信装置に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理ステップと、前記テスト信号の送信から、前記テスト信号に対する前記動作情報送信装置からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、前記試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理ステップと、を含むことを特徴とする。前記構成によれば、請求項1と同様の効果を奏する保護継電器の試験方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、試験作業員の負担を減らし、なおかつ確実で信頼性の高い保護継電器の試験を行うことができる情報処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる保護継電器試験システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】前記保護継電器試験システムにおける、情報処理装置及び保護継電器試験器の内部の概略構成を示すブロック図である。
図3】前記保護継電器試験システムにおける、情報処理装置と動作情報送信装置との通信を説明するための情報処理装置及び動作情報送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】前記情報処理装置が実行する試験信号送信要否決定処理の一例を示すフロー図である。
図5】本発明の変形例にかかる保護継電器試験システムにおける、情報処理装置と動作情報送信装置との通信を説明するための情報処理装置及び動作情報送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(保護継電器試験システムの構成)
保護継電器試験システム100は、保護継電器40が正常に動作しているか否かを試験するシステムである。具体的には、保護継電器試験システム100は、保護継電器40に所定の試験信号が入力されてから保護継電器40が所定の動作をするまでの接点動作時間が、所定の時間範囲内で動作しているか否かを確認する。
【0017】
保護継電器試験システム100は、図1及び図2に示すように、情報処理装置10と、保護継電器試験器20と、配電盤30と、保護継電器40と、動作情報送信装置50と、を備えている。図1は、本発明の実施形態にかかる保護継電器試験システム100の概略構成を示すブロック図である。図2は保護継電器試験システム100における、情報処理装置10及び保護継電器試験器20の内部の概略構成を示すブロック図である。なお、図1図2図3及び図5の点線は無線通信を示す。
【0018】
(情報処理装置)
情報処理装置10は、保護継電器40に所定の試験信号を送信するように、保護継電器40を試験する保護継電器試験器20に指示可能である。また、情報処理装置10は、制御部(CPU11)を備え、制御部は以下の処理を実行する。すなわち、情報処理装置10の制御部は、試験信号に応じて動作する保護継電器40の動作情報を検出し、動作情報を情報処理装置10に無線送信する動作情報送信装置50に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理を実行する。また、制御部は、テスト信号の送信から、テスト信号に対する動作情報送信装置50からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理を実行する。以下に詳しく説明する。
【0019】
情報処理装置10は、図2に示すように、CPU11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、IF部15と、パス16と、アンテナ17(図3参照)を備えている。情報処理装置10は、例えば、コンピュータである。CPU(Central Processing Unit)11は、情報処理装置10全体を制御し、後述する保護継電器40の試験プログラムを実行する。CPU11は、マイクロコンビュータ(以下、マイコンという)であってもよく、情報処理装置10の制御部として機能する。
【0020】
CPU11(制御部)は、保護継電器試験器20に試験信号送信指示を出力する前に、試験信号の送信要否を決定するための処理を実行する。試験信号送信指示は、保護継電器試験器20から保護継電器40に所定の試験信号を送信するように指示する信号である。
【0021】
試験信号の送信要否を決定するための処理では、まず、CPU11が、動作情報送信装置50にアンテナ17を介して、テスト信号を送信するテスト信号送信処理を実行する。そして、CPU11は、テスト信号の送信から、テスト信号に対する動作情報送信装置50からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理を実行する。
【0022】
CPU11は、試験信号送信要否決定処理において、応答時間が所定値よりも長い場合、保護継電器試験器20から保護継電器40への試験信号の送信は不要と判断し、前記試験信号の送信を中止する。また、CPU11は、応答時間が所定値よりも長い場合、表示部14に動作情報送信装置50と情報処理装置10との通信状態に異常があることを表示する。前記所定値は、例えば、1ミリ秒とすることができる。前記所定値は、試験プログラム上または記憶部12に保存される設定ファイル上で保持される。
【0023】
CPU11は、応答時間が所定値以下である場合、試験信号の送信は必要と判断し、保護継電器試験器20に試験信号送信指示を出力する。より詳しくは、CPU11は、後述する操作部13により選択された試験プログラムに基づき、保護継電器40に所定の試験信号を送信するように指示する処理を実行する。これにより、試験作業員は保護継電器試験器20を直接操作せずに、保護継電器40に対して点検試験を実行することができる。ここで、所定の試験信号とは、保護継電器40が所定の動作を実行させるためのトリガとなる信号であり、所定の動作とは、例えば、保護継電器40が保護継電器40の内部に実装されているリレーをオンまたはオフする動作のことである。
【0024】
CPU11は、動作情報送信装置50から出力された、保護継電器40が所定の動作を行ったことを示す動作情報を、後述するIF部15により受信する。また、CPU11は動作情報を受信すると、動作情報をIF部15により保護継電器試験器20に送信する。このときCPU11は、保護継電器試験器20に保護継電器40への試験信号の送信を停止するよう指示する処理を実行してもよい。
【0025】
また、CPU11は、保護継電器試験器20により算出された接点動作時間を、IF部15を介して受信する。接点動作時間とは、保護継電器試験器20による試験信号の送信から、当該試験信号により生じた動作情報を保護継電器試験器20が情報処理装置10から受信するまでの時間である。
【0026】
CPU11は、受信した接点動作時間に基づき保護継電器40の状態を判定する処理を実行する。具体的には、例えば、CPU11は、接点動作時間が現在試験を実施している保護継電器40に予め設定されている整定値により決まる閾値以内であれば、保護継電器40は正常(良好な状態)であると判定し、その旨を表示部14に表示する。また、CPU11は、接点動作時間が現在試験を実施している保護継電器40に予め設定されている整定値により決まる閾値以外であれば、保護継電器40は異常(不良な状態)であると判定し、その旨を表示部14に表示する。なお、前記閾値は、予め情報処理装置10に記憶されている。
【0027】
保護継電器40の接点動作時間は、数十ミリ秒の範囲で行われる。本願発明では、動作信号が無線信号に変換され、情報処理装置10と動作情報送信装置50との間では無線送信が行われているが、無線送信には遅延時間がつきまとう。無線送信の遅延時間が大きい、または無線送信の遅延時間バラつきが大きくなると、保護継電器40の接点動作時間の測定結果の誤差が大きくなり測定結果の信頼性低下につながる。
【0028】
そこで、前述のように、保護継電器40の試験前に、無線送信の遅延時間が正常な範囲にあるか否かを管理し、無線送信の遅延時間が正常な範囲にある場合のみ保護継電器40の試験を行うことで、信頼性の高い保護継電器の試験が可能となる。
【0029】
記憶部12は、データを記憶する、例えば、書き換え可能な不揮発性半導体メモリである。記憶部12には、CPU11により実行される試験プログラムが記憶されている。試験プログラムは、対象とする保護継電器40の保護継電器要素、例えば、過電流要素(一般的には保護継電器40の器具番号等を用いて51要素、OC要素と呼ばれる)等の試験手順(保護継電器試験器20の動作制御)を登録したものである。
【0030】
また、記憶部12は、動作情報送信装置50及び保護継電器試験器20から出力された動作情報等のデータを記憶する。情報処理装置10を構成する各部間のデータ交換は、パス16を介して行われる。
【0031】
操作部13は、試験作業員により操作され、試験作業員の指示の入力を受付ける。操作部13は、例えば、コンピュータ用キーボードまたはコンピュータ用マウス等である。表示部14は、テキスト及び画像等の情報を表示する。また、表示部14は、験信号送信要否決定処理において、応答時間が所定値よりも長い場合、動作情報送信装置50と情報処理装置10との通信状態に異常があることを表示する。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイまたはCRT(陰極線管)等である。
【0032】
IF部15は、外部とデータを交換するためのインターフェイスである。IF部15は、保護継電器試験器20と通信するための機能を有し、例えば、パラレル通信(GPIB等)またはシリアル通信(RS-232C等)による通信が保護継電器試験器20と可能である。また、IF部15は、動作情報送信装置50と通信するための機能を有する。IF部15と動作情報送信装置50との通信は、無線通信である。IF部15と動作情報送信装置50との通信を無線通信とすることにより、保護継電器40が配置されている現場において、保護継電器40以外の点検を行うための配線の輻輳による事故等を低減することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、情報処理装置10の中にIF部15が含まれるものとして説明を行うが、前記に限らない。IF部15は、無線モジュールとして情報処理装置10とは別に設けられるものであってもよい。その場合、無線モジュールと情報処理装置10との通信は、接点動作時間には影響しないため、BlueTooth(登録商標)通信やWiFi(登録商標)通信などの無線通信でもよいし、RS-232Cなどの有線通信でもよい。ただし、この場合、IF部15にCPU11の持つ機能を搭載することが必要となる。
【0034】
(保護継電器試験器)
保護継電器試験器20は、保護継電器40を試験するための試験器である。保護継電器試験器20の試験対象は、配電盤30に配置された保護継電器40である。保護継電器試験器20は、外部制御ポートが搭載されており、情報処理装置10からの試験信号送信指示により保護継電器40に所定の試験信号を送信する。保護継電器40の試験は、保護継電器試験器20により保護継電器40毎に行われる。具体的に以下に説明する。
【0035】
保護継電器試験器20は、図2に示すように、CPU21と、記憶部22と、操作部23と、表示部24と、IF部25と、出力部26と、パス27とを備えている。CPU21は、保護継電器試験器20全体を制御する。CPU21は、マイコンであってもよい。
【0036】
CPU21は、情報処理装置10からの試験信号送信指示により保護継電器40に所定の試験信号を送信する処理を実行する。CPU21は、情報処理装置10から動作情報を受信したとき、当該動作情報に基づき接点動作時間を算出する処理を実行し、接点動作時間を点検結果として表示部24に表示する。CPU21は、接点動作時間を情報処理装置10に送信する処理を実行する。また、CPU21は、情報処理装置10から動作信号を受信したときは、情報処理装置10の指示により保護継電器40への試験信号の送信を停止する処理を実行してもよい。
【0037】
記憶部22は、データを記憶する、例えば、書き換え可能な不揮発性半導体メモリである。記憶部22には、CPU21により実行されるプログラムが記憶されている。保護継電器試験器20を構成する各部間のデータ交換は、パス27を介して行われる。
【0038】
操作部23は、試験作業員により操作され、試験作業員の指示の入力を受付ける。操作部23は、例えば、キー(スイッチ、ボタン等)等である。操作部23は、タッチパネルであってもよい。表示部24は、CPU21により算出された接点動作時間、保護継電器試験器20の状態及び測定値等の数値を表示する。表示部24は、例えば、LED(発光ダイオード)、数値を表示するための7セグメントディスプレイまたは液晶ディスプレイ等である。
【0039】
IF部25は、外部とデータを交換するためのインターフェイスである。IF部25は、情報処理装置10のIF部15と通信するための機能を有する。出力部26は、保護継電器40に試験信号を出力する。出力部26は、例えば、試験信号として、所定の電圧または電流を供給する電源として機能する。保護継電器40に供給される試験信号の強度は、試験項目に応じて、記憶部22に記憶されている情報を参照してCPU21により決定される。
【0040】
(保護継電器)
配電盤30には、保護継電器40が配置されている。保護継電器40は、電力系統を構成する電力設備において発生した短絡または地絡事故を検出し、事故区間を電力系統から速やかに切り離すために、遮断器等に制御信号を出力するための機器である。保護継電器により、短絡または地絡事故の影響が波及することを抑えることができる。
【0041】
保護継電器40は、試験信号に応じて所定の動作を実行する。本実施形態では、保護継電器試験器20は所定の試験信号が入力されたときに、保護継電器40に接続されているリレーを、保護継電器40がオンまたはオフする(接点を動作する)。
【0042】
(動作情報送信装置)
動作情報送信装置50は図1図3に示すように、CPU51と、IF部55と、アンテナ57とを備えている。図3は、保護継電器試験システム100における、情報処理装置10と動作情報送信装置50との通信を説明するための情報処理装置10及び動作情報送信装置50の概略構成を示すブロック図である。
【0043】
CPU51は、動作情報送信装置50全体を制御する。CPU51は、マイコンであってもよい。CPU51は、試験信号に応じて所定の動作を行う保護継電器40の動作情報を検出する。CPU51は、動作情報を検出すると、IF部55及びアンテナ57を介して、動作情報を情報処理装置10に無線送信する。また、CPU51は、CPU11からテスト信号を受信すると、IF部55及びアンテナ57を介して、そのテスト信号の応答信号を直ちに情報処理装置10に返信する。
【0044】
(試験信号送信要否決定処理)
図4に基づき、試験信号送信要否決定処理の一例について説明する。図4は、情報処理装置10が実行する試験信号送信要否決定処理の一例を示すフロー図である。図4に示すように、情報処理装置10が保護継電器試験器20に試験信号送信指示を出力する前に、情報処理装置10は動作情報送信装置50にテスト信号を送信し、計時を開始する(S1、テスト信号送信処理ステップ)。情報処理装置10は、動作情報送信装置50から、テスト信号の応答信号を受信したか否かを確認する(S2)。情報処理装置10が、動作情報送信装置50から、テスト信号の応答信号を受信した場合(S2でYES)、情報処理装置10は計時を終了し、テスト信号から応答信号受信までの応答時間Tを算出する(S3)。なお、情報処理装置10が、動作情報送信装置50から、テスト信号の応答信号を受信していない場合(S2でNO)、情報処理装置10は応答信号を受信するまで待機する。
【0045】
次に、情報処理装置10は、応答時間Tが、所定値以内か否かを判定する(S4、試験信号送信要否決定処理ステップ)。応答時間Tが所定値以内の場合(S4でYES)、情報処理装置10は、情報処理装置10及び動作情報送信装置50間の無線通信の通信状態が正常であると判定し、保護継電器試験器20に試験信号送信指示を出力する。
【0046】
応答時間Tが所定値よりも長い場合(S4でNO)、情報処理装置10は、情報処理装置10及び動作情報送信装置50間の無線通信の通信状態が異常であると判定し、その旨を表示部14に表示して、試験信号の送信を中止する(S6)。
【0047】
なお、応答時間Tの1/2は、情報処理装置10及び動作情報送信装置50間の無線通信の遅延時間に相当する。情報処理装置10は、S4において、応答時間TではなくT/2を基準に無線通信の通信状態の判定を行ってもよい。
【0048】
(保護継電器の試験方法の一例)
保護継電器の試験方法の一例について説明する。当該保護継電器の試験方法は、保護継電器40に所定の試験信号を送信するように、保護継電器40を試験する保護継電器試験器20に指示可能な情報処理装置10により実行される。当該保護継電器の試験方法は、試験信号に応じて動作する保護継電器40の動作情報を検出し、動作情報を情報処理装置10に無線送信する動作情報送信装置50に、テスト信号を送信するテスト信号送信処理ステップを含む。また、当該保護継電器の試験方法は、テスト信号の送信から、テスト信号に対する動作情報送信装置50からの応答信号を受信するまでの応答時間に基づき、試験信号の送信要否を決定する試験信号送信要否決定処理ステップを含む。
【0049】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例にかかる保護継電器試験システム100Aについて図1及び図5に基づき説明する。図5は、本発明の変形例にかかる保護継電器試験システム100Aにおける、情報処理装置10Aと動作情報送信装置50Aとの通信を説明するための情報処理装置10A及び動作情報送信装置50Aの概略構成を示すブロック図である。
【0050】
本変形例では、テスト信号および応答信号はアナログ信号として送信され、情報処理装置10Aは、応答信号をアナログ信号として受信する。本変形例は、情報処理装置10Aと動作情報送信装置50Aとの無線通信方式が、リトライ機能(無線通信が中断されたときの再実行機能)を有している場合による、リトライ機能実行による時間の遅れを考慮する。具体的に以下に説明する。
【0051】
保護継電器試験システム100Aは保護継電器試験システム100と比較して、情報処理装置10及び動作情報送信装置50に代えて、情報処理装置10A及び動作情報送信装置50Aが設けられている点が異なり、その他の構成は同様である。
【0052】
情報処理装置10Aは情報処理装置10と比較して、ADC(アナログデジタル変換器)18が設けられている点が異なり、その他の構成は同様である。ADC18により情報処理装置10Aは、動作情報送信装置50Aからの応答信号をアナログ信号として検出することができる。情報処理装置10Aは、テスト信号をアナログ信号として動作情報送信装置50Aに送信し、応答信号をアナログ信号として受信する。
【0053】
動作情報送信装置50Aは動作情報送信装置50と比較して、ADC58が設けられている点が異なり、その他の構成は同様である。ADC58により、動作情報送信装置50Aは情報処理装置10Aからのテスト信号をアナログ信号として検出することできる。言い換えると、動作情報送信装置50Aは、テスト信号をアナログ信号として受信する。また、動作情報送信装置50Aは、応答信号をアナログ信号として情報処理装置10Aに送信する。
【0054】
無線通信方式がリトライ機能を有している場合は、リトライ機能実行による時間遅れが無線遅延時間となるが、本変形例では前記構成とすることで、無線通信方式によるリトライ機能の遅延時間への影響を除去することができる。
【0055】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置10・10A、保護継電器試験器20及び動作情報送信装置50・50Aの制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0056】
後者の場合、情報処理装置10・10A、保護継電器試験器20及び動作情報送信装置50・50Aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10・10A 情報処理装置
11・21・51 CPU(制御部)
14・24 表示部
20 保護継電器試験器
40 保護継電器
50・50A 動作情報送信装置
100・100A 保護継電器試験システム
図1
図2
図3
図4
図5