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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】自動車用ドアチェック装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/22 20060101AFI20221129BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E05C17/22 A
B60J5/04 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019161870
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021038602
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正純
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-169283(JP,A)
【文献】特開2010-116685(JP,A)
【文献】特開2013-217077(JP,A)
【文献】特開平09-053358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00-21/02
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部が車体に揺動自在に連結されるアームと、前記車体に開閉可能に枢支されるドアに取り付けられ、前記ドアの開閉動作に伴って前記アームの上下面に形成されるディテント面を摺動するシューを有するチェックユニットとを備え、前記アームは、板厚が上下方向を向く単一の鋼板と、当該鋼板の表面を被覆する合成樹脂層とを含み、長手方向の後端部に前記チェックユニットにおける前記シューを収容するケースの当接面に当接することにより前記ドアの全開位置を規制する全開ストッパを有する自動車用ドアチェック装置において、
前記鋼板は、平坦部の後側部にあって、長手方向に沿って上方又は下方に略90度折曲した折曲部と、前記折曲部の後端部にあって、前記折曲部の上下幅より上下方向へ大きく突出する張出部と、前記張出部の前部にあって、左方または右方へ略90度折曲したストッパ部と、を有し、
前記合成樹脂層は、前記鋼板の前記平坦部及び前記折曲部の前部を被覆することで前記ディテント面を形成し、前記折曲部の後部、前記張出部及び前記ストッパ部を被覆することで前記全開ストッパを形成することを特徴とする自動車用ドアチェック装置。
【請求項2】
前記鋼板の後部を、前記鋼板の長手方向に沿って斜め下方へ傾斜する傾斜部と、当該傾斜部に連設される水平方向を向く水平部とを有する形状としたことを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアチェック装置。
【請求項3】
前記鋼板の前記張出部は、前記アームの長手方向の中心線上に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用ドアチェック装置。
【請求項4】
前記全開ストッパを形成する領域の前記合成樹脂層は、前記ストッパ部の前面を被覆し、前記ドアの全開位置において前記チェックユニットの前記ケースの前記当接面に当接するストッパ面を形成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自動車用ドアチェック装置。
【請求項5】
前記合成樹脂層の前記ストッパ面は、平面視において前方を向くR形状を呈することを特徴とする請求項記載の自動車用ドアチェック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に開閉可能に枢支されるドアの開閉動作にチェック力を付与すると共に、全開位置を規制する自動車用ドアチェック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された自動車用ドアチェック装置は、一端部が車体に揺動可能に連結されるアームと、ドアに取り付けられるケース内にドアの開閉動作に伴ってアームのディテント面を摺動するシューを収容したチェックユニットとを備え、ドアの開閉動作に伴ってシューがアームのディテント面を摺動することによりドアの開閉動作に所定のチェック力を付与すると共に、チェックユニットのケースがアームの他端部に設けた全開ストッパに当接することにより、ドアの全開位置を規制する。そして、アームは、単一の鋼板の外表面全域を合成樹脂材料からなる合成樹脂層で被覆することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5004058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動車用ドアチェック装置においては、全開ストッパが、鋼板の他端部を鋼板の長手方向に沿って略90度捻転すると共に、捻転した捻転部を合成樹脂層で被覆することで形成されるため、長期の使用により鋼板の捩り部分に割れが発生する懸念があり、全開ストッパの強度が十分とは言えない。また、鋼板の捩り部分のスプリングバックの影響により、全開ストッパの位置精度が出し難いという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、アームに設けられる全開ストッパの強度及び位置精度の向上を可能にした自動車用ドアチェック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明は、前端部が車体に揺動自在に連結されるアームと、前記車体に開閉可能に枢支されるドアに取り付けられ、前記ドアの開閉動作に伴って前記アームの上下面に形成されるディテント面を摺動するシューを有するチェックユニットとを備え、前記アームは、板厚が上下方向を向く単一の鋼板と、当該鋼板の表面を被覆する合成樹脂層とを含み、長手方向の後端部に前記チェックユニットにおける前記シューを収容するケースの当接面に当接することにより前記ドアの全開位置を規制する全開ストッパを有する自動車用ドアチェック装置において、前記鋼板は、平坦部の後側部にあって、長手方向に沿って上方又は下方に略90度折曲した折曲部と、前記折曲部の後端部にあって、前記折曲部の上下幅より上下方向へ大きく突出する張出部と、前記張出部の前部にあって、左方または右方へ略90度折曲したストッパ部と、を有し、前記合成樹脂層は、前記鋼板の前記平坦部及び前記折曲部の前部を被覆することで前記ディテント面を形成し、前記折曲部の後部、前記張出部及び前記ストッパ部を被覆することで前記全開ストッパを形成することを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記鋼板の後部を、前記鋼板の長手方向に沿って斜め下方へ傾斜する傾斜部と、当該傾斜部に連設される水平方向を向く水平部とを有する形状とする。
【0008】
好ましくは、前記鋼板の前記張出部は、前記アームの長手方向の中心線上に位置する。
【0009】
好ましくは、前記全開ストッパを形成する領域の前記合成樹脂層は、前記ストッパ部の前面を被覆し、前記ドアの全開位置において前記チェックユニットの前記ケースの前記当接面に当接するストッパ面を形成する。
【0010】
好ましくは、前記合成樹脂層の前記ストッパ面は、平面視において前方を向くR形状を呈する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車用ドアチェック装置によると、全開ストッパを、鋼板の後部を長手方向に沿って上方又は下方に略90度折曲して形成された折曲部の後端部に設けられる張出部と、当該張出部に設けられ、左方または右方へ略90度折曲されたストッパ部とを合成樹脂層により被覆して形成したことによって、全開ストッパの強度及び位置精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る自動車用ドアチェック装置の斜視図である。
図2】(a)は、ドアが閉鎖位置にある場合の自動車用ドアチェック装置の平面図である。(b)は、ドアが全開位置にある場合の自動車用ドアチェック装置の平面図である。
図3図2(b)におけるIII-III線縦断面図である。
図4】アームの斜視図である。
図5】(a)は、アームの平面図である。(b)は、(a)のb矢視図である。(c)は、(a)のc矢視図である。
図6】鋼板の斜視図である。
図7】(a)は、鋼板の平面図である。(b)は、(a)のb矢視図である。
図8】(a)は、図3(b)におけるa-a線断面図である。(b)は、図3(b)におけるb-b線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
自動車用ドアチェック装置1は、自動車の車体Bに図示略の上下方向のヒンジ軸を有する上下一対のヒンジにより枢支されるドアDの開閉動作にチェック力を付与してドアDを半開位置に保持したり全開位置に規制したりするものであって、図1~3に示すように、前端部が車体Bに枢着されるアーム2と、ドアDに取り付けられ、ドアDの開閉動作に伴って、アーム2の後述のディテント面22を摺動するシュー7を有するチェックユニット3とを備える。
【0014】
アーム2は、前端部が上下方向を向く枢軸41により車体Bに固定されるブラケット4に左右方向へ揺動可能に枢着される。アーム2の前端部には、枢軸41が挿入される軸孔23が設けられ、同じく後端部には、ドアDの全開位置を規制する全開ストッパ21が設けられ、同じく前端部と全開ストッパ21との間の領域には、長手方向(前後方向)に沿って凸部と凹部とを交互に設けることで、ドアDの開閉動作にチェック力を付与する上下のディテント面22、22が形成される。
【0015】
チェックユニット3は、図示略のボルトによりドアDの内面に固定される金属製のケース5と、ケース5の前面に固定され、ケース5の前方を向く開口を閉塞する金属製のカバー6とを有する。アーム2は、ケース5に設けた開口部51及びカバー6に設けた開口部61を貫通してケース5とカバー7とにより形成される内部空間に挿入される。
【0016】
ケース5とカバー6とにより形成される内部空間には、アーム2の上下のディテント面22、22をそれぞれ摺動可能な上下一対のシュー7、7と、上下のシュー7、7を上下のディテント面22、22に向けて付勢する上下一対のゴムにより形成される弾性体8、8とが収納される。なお、弾性体8は、ゴムに代えてコイルスプリングとしても良い。
【0017】
アーム2は、単一の鋼板9と、鋼板9の外表面全域を被覆する合成樹脂層10とにより形成される。
【0018】
鋼板9は、特に図6、7から理解できるように、板厚方向が上下方向を向き、かつ平坦部91が前後方向へ長い形状を呈して、平坦部91の前端部に枢軸3が挿入される軸孔23を有し、後部に折曲部92、張出部93及び上下のストッパ部94、94を有する。
【0019】
折曲部92は、鋼板9の後部96の右側部を長手方向に沿って上方へ略90度(90度を含む)折曲することにより形成される。好ましくは、鋼板9の後部96は、平坦部91の後端から後方へ斜め下方に傾斜する第1傾斜部96aと、第1傾斜部96aの後端から後方へ水平方向へ延伸する水平部96bと、水平部96bの後端から後方へ斜め下方に傾斜する第2傾斜部96cとを含んで構成される。これにより、鋼板9の後部96に折曲形成される折曲部92の強度を高めることができる。
【0020】
張出部93は、折曲部92の後端部にあって、折曲部92の上下幅より上下方向へ大きく突出することで形成される。張出部93の上下幅は、少なくともケース5に設けた開口部51の上下方向の開口幅よりも大となるように設定される。これにより、折曲部92及び張出部93を含む部分は、図7(b)に示す側面視において略横向きT字状を呈する。好ましくは、図5(a)に示すように、張出部93は、平面視においてアーム2の長手方向の中心線x上に位置するように設ける。
【0021】
ストッパ部94は、張出部93の上部の前側部分及び下部の前側部分を左方へ略90度(90度を含む)折曲することで形成される。これにより、折曲部92に対するストッパ部94の折曲部分は、アーム2の中心線x上に位置する。好ましくは、上のストッパ部94は、折曲部92の上縁よりも上方に位置し、下のストッパ部94は、折曲部92の下縁よりも下方に位置する。
【0022】
合成樹脂層10は、鋼板9の外表面全域を被覆すると共に、鋼板9の平坦部91及び折曲部92の前部を被覆することでアーム2のディテント面22を形成し、折曲部92の後部、張出部93及びストッパ部94を被覆することで全開ストッパ21を形成する。なお、合成樹脂層10の左右両側面は、鋼板9の形状に合わせて肉抜きされるため、左右両側面の形状は、左右非対称に形成される。
【0023】
以下の説明においては、合成樹脂層10において、鋼板9の折曲部92の後部、張出部93及びストッパ部94を被覆して全開ストッパ21を形成する領域を、全開ストッパ合成樹脂部101という。
【0024】
全開ストッパ合成樹脂部101は、鋼板9のストッパ部94の前面を被覆し、ドアDの全開位置においてチェックユニット3のケース5の後面である当接面52に当接するストッパ面21aを形成する。好ましくは、合成樹脂層10のストッパ面21aは、主に図2(b)及び図5(a)に示す平面視において前方を向くR形状を呈するものとする。
【0025】
全開ストッパ合成樹脂部101における張出部93の右側(ストッパ部94が折曲される側の反対側)には、主に図8(a)に示すように、上下方向の肉抜き孔101aが設けられる。同じく張出部93の左側にあって、張出部93の上下中央部には、主に図8(b)に示すように、左方へ突出する補強リブ101bが設けられる。同じく内部には、図8(b)に示すように、張出部93に設けた貫通孔93aに充填される充填部101cが設けられる。充填部101cは、貫通孔93aに充填されることで、全開ストッパ合成樹脂部101を張出部93に強固に被覆させる。
【0026】
ドアDが閉鎖位置から開方向へ移動した場合には、ドアDの開動作に伴って、チェックユニット3は、図2(a)及び図3に2点鎖線で示す閉鎖位置からシュー7がアーム2のディテント面22を摺動しつつ後方へ移動し、アーム2は、図2(a)に示す位置から枢軸41を中心に時計方向へ揺動する。
【0027】
そして、最終的に、チェックユニット3は、図2(b)及び図3に実線で示すように、ケース5の当接面52がアーム2の全開ストッパ21のストッパ面21aに当接することでドアDの全開位置を規制する。この場合、ケース5の当接面52が全開ストッパ21のストッパ面21aに当接した際の荷重は、合成樹脂層10の一部であるストッパ面21aを介して鋼板9のストッパ部94及び張出部93により受け止められる。そして、鋼板9のストッパ部94は、鋼板9の後部96を略90度折曲した折曲部92に設けた張出部93に設けたものであるから、従来技術のように捻り加工にした捻転部にストッパ部を設けたものに比して、強度的に優れ、ストッパ部94の位置精度が向上する。さらには、ストッパ面21aがR形状を呈しているため、ケース5の当接面52にストッパ面21aが当接した際の当接音を緩和することができると共に、ケース5の当接面52に対する片当たりを防止して、安定した状態で荷重を確実に受け止めることができる。
【0028】
ドアDが全開位置から閉方向へ移動した場合には、チェックユニット3は、ドアDの閉動作に伴って、図2(b)及び図3に実線で示す全開位置からシュー7がディテント面22を摺動しつつ前方へ向けて移動し、最終的に全閉位置に停止する。また、ドアDを半開位置に停止させた場合には、シュー7がディテント面22の凹部に陥入することで、ドアDを所定の保持力で半開位置に保持される。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(1)鋼板9の折曲部92を下方へ略90度(90度を含む)折曲する。
(2)鋼板9の折曲部92を後部96の左側に設ける。この場合には、ストッパ部94は、張出部93の前部を右方へ略90度(90度を含む)折曲することで形成される。
【符号の説明】
【0030】
1 自動車用ドアチェック装置 2 アーム
21 全開ストッパ 21a ストッパ面
22 ディテント面 23 軸孔
3 チェックユニット 4 ブラケット
41 枢軸 5 ケース
51 開口部 52 当接面
6 カバー 61 開口部
7 シュー 8 弾性体
9 鋼板 91 平坦部
92 折曲部 93 張出部
93a 貫通孔 94 ストッパ部
96 後部 96a 第1傾斜部
96b 水平部 96c 第2傾斜部
10 合成樹脂層 101 全開ストッパ合成樹脂部
101a 肉抜き孔 101b 補強リブ
101c 充填部 B 車体
D ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8