(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H01L21/68 E
(21)【出願番号】P 2019181643
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】中山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】渕上 克典
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 章
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-289084(JP,A)
【文献】特開2002-184836(JP,A)
【文献】特開平6-104329(JP,A)
【文献】特開2006-294763(JP,A)
【文献】特開平9-162205(JP,A)
【文献】特開2015-179813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0003491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、前記上面と対向する面である裏面を有し、前記上面から前記裏面にそれぞれ貫通する複数のニードル孔が形成されたニードルホルダーと、
前記複数のニードル孔にそれぞれ挿入され、前記ニードルホルダーの前記上面から上方にそれぞれ突出する複数のニードルと、
前記ニードルホルダーの前記裏面に対向する第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有し、前記第1面から前記第2面に貫通し前記複数のニードル孔のうち第1ニードル孔と連なる調整部孔が形成された調整部ホルダーと、
前記第1ニードル孔の内部で、前記調整部ホルダーと、前記複数のニードルのうち前記第1ニードル孔に上下に移動可能な状態で挿入された第1ニードルとの間に設けられ、前記第1ニードルに弾性力を及ぼす弾性部材と、
前記調整部孔に挿入され、前記調整部ホルダーの前記第1面から前記第1ニードル孔の内部に突出し、前記第1ニードルの直下に設けられた調整部材と、
を備えることを特徴とする半導体チップのピックアップ治具。
【請求項2】
前記第1ニードルは前記調整部材と接する位置まで下降可能であることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項3】
前記弾性部材の下端は前記調整部ホルダーの前記第1面に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項4】
前記弾性部材の下端の前記第1面からの高さを調節する高さ調節部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項5】
前記調整部材の下端部は前記調整部ホルダーの前記第2面から下方に突出し、
前記調整部材の前記第1ニードル孔に突出した部分の長さは、前記調整部ホルダーの前記第2面側から変更可能であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項6】
前記調整部材はネジであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項7】
前記第1ニードルは、前記第1ニードル孔の内部に設けられた幅広部と、前記幅広部よりも細く前記ニードルホルダーの前記上面から上方に突出するニードル部と、を有し、
前記ニードルホルダーの前記上面での前記第1ニードル孔の幅は、前記幅広部よりも狭いことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項8】
前記第1ニードル孔は、前記複数のニードル孔の中央部に設けられることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項9】
前記調整部ホルダーには複数の前記調整部孔が形成され、
前記複数の調整部孔には複数の前記調整部材がそれぞれ挿入されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項10】
前記複数の調整部材は、前記調整部ホルダーの前記第2面側で互いに連結されることを特徴とする請求項9に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項11】
前記複数の調整部材は、第1調整部材と、前記調整部ホルダーの前記第1面からの高さが前記第1調整部材と異なる第2調整部材とを含むことを特徴とする請求項9または10に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項12】
前記複数の調整部孔は、前記複数のニードル孔とそれぞれ連なり、
前記複数のニードル孔のうち前記第1ニードル孔以外の第2ニードル孔では、前記調整部材と第2ニードル孔に挿入されたニードルとが接していることを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載の半導体チップのピックアップ治具。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載のピックアップ治具と、
上面に開口が形成され、前記複数のニードルが上方を向いた状態で前記開口の内部に前記ピックアップ治具を保持する位置決めホルダーと、
前記ピックアップ治具を上下に移動させる駆動部と、
前記開口の内部を吸引する吸引部と、
を備え、
前記位置決めホルダーの前記上面には、複数の半導体チップが張り付けられた粘着シートが前記開口を覆うように搭載されることを特徴とするピックアップ装置。
【請求項14】
上面に複数のニードル孔が形成されたニードルホルダーと、前記複数のニードル孔にそれぞれ挿入され前記ニードルホルダーの前記上面から上方にそれぞれ突出する複数のニードルと、を備えたピックアップ治具に、第1部分と前記第1部分よりも下方に突出した第2部分とを有するニードル調節具を上方から接触させ、前記複数のニードルのうち第1ニードルの上端と前記第1部分とが接触し、前記複数のニードルのうち第2ニードルの上端と前記第2部分とが接触することで、前記第2ニードルの前記ニードルホルダーの前記上面から突出した部分の長さを前記第1ニードルの前記ニードルホルダーの前記上面から突出した部分の長さよりも短くすることを特徴とするピックアップ治具の調節方法。
【請求項15】
前記ニードル調節具は、前記複数のニードルと前記ニードル調節具との接触を検出するセンサを備えることを特徴とする請求項14に記載のピックアップ治具の調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子のピックアップ用治具が開示されている。このピックアップ用治具では、第1の突き上げピン群と、第2の突き上げピン群がピンホルダーに装着されている。第1の突き上げピン群は、半導体素子の各コーナー部にそれぞれ対応して配置される。第2の突き上げピン群は半導体素子の中央部近傍に対応し、先端部が第1の突き上げピン群の先端部よりも低い。第1の突き上げピン群で半導体素子の各コーナー部を剥離した後、第2の突き上げピン群で半導体素子の中央部近傍を剥離する。これにより、突き上げピンの先端部に応力が集中して半導体素子を貫通するのを防止できる。また、半導体素子の反りに起因するクラックを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、半導体チップの形状は様々である。特許文献1に示されるピックアップ治具では、半導体チップの厚みおよび大きさに応じて、ピックアップの際にニードルの先端高さを調整する必要がある。しかし、複数のニードルの先端高さの調整をニードル毎に行うことは困難であるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、容易に半導体チップの損傷を抑制できる半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体チップのピックアップ治具は、上面と、前記上面と対向する面である裏面を有し、前記上面から前記裏面にそれぞれ貫通する複数のニードル孔が形成されたニードルホルダーと、前記複数のニードル孔にそれぞれ挿入され、前記ニードルホルダーの前記上面から上方にそれぞれ突出する複数のニードルと、前記ニードルホルダーの前記裏面に対向する第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有し、前記第1面から前記第2面に貫通し前記複数のニードル孔のうち第1ニードル孔と連なる調整部孔が形成された調整部ホルダーと、前記第1ニードル孔の内部で、前記調整部ホルダーと、前記複数のニードルのうち前記第1ニードル孔に上下に移動可能な状態で挿入された第1ニードルとの間に設けられ、前記第1ニードルに弾性力を及ぼす弾性部材と、前記調整部孔に挿入され、前記調整部ホルダーの前記第1面から前記第1ニードル孔の内部に突出し、前記第1ニードルの直下に設けられた調整部材と、を備える。
【0007】
本発明に係るピックアップ治具の調節方法は、上面に複数のニードル孔が形成されたニードルホルダーと、前記複数のニードル孔にそれぞれ挿入され前記ニードルホルダーの前記上面から上方にそれぞれ突出する複数のニードルと、を備えたピックアップ治具に、第1部分と前記第1部分よりも下方に突出した第2部分とを有するニードル調節具を上方から接触させ、前記複数のニードルのうち第1ニードルの上端と前記第1部分とが接触し、前記複数のニードルのうち第2ニードルの上端と前記第2部分とが接触することで、前記第2ニードルの前記ニードルホルダーの前記上面から突出した部分の長さを前記第1ニードルの前記ニードルホルダーの前記上面から突出した部分の長さよりも短くする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体チップのピックアップ治具では、第1ニードルは上方に半導体チップが搭載されることで弾性部材から弾性力を受けながら下方に移動する。また、第1ニードルの先端位置は、第1ニードルと調整部材とが接することで制限される。従って、容易に半導体チップの損傷を抑制できる。
本発明に係るピックアップ治具の調節方法では、ニードル調節具により容易に複数のニードルの先端位置を調節できる。従って、容易に半導体チップの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る製造装置の側面図である。
【
図2】実施の形態1に係るピックアップ装置の構造を説明する断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るピックアップ治具の平面図である。
【
図4】実施の形態1に係るピックアップ治具の側面図である。
【
図5】実施の形態1に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係るピックアップ治具の調節方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係るニードルの固定方法を説明する図である。
【
図8】実施の形態1に係る半導体チップの製造方法を説明する図である。
【
図9】実施の形態1の変形例に係るニードル調節具の側面図である。
【
図10】実施の形態2に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【
図11】ニードルが下降した状態を説明する図である。
【
図12】実施の形態2に係るピックアップ治具の側面図である。
【
図13】実施の形態2の第1の変形例に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【
図14】実施の形態2の第2の変形例に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【
図15】実施の形態2の第3の変形例に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【
図16】実施の形態3に係るピックアップ治具の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る製造装置100の側面図である。製造装置100はテーブル5を備える。テーブル5にはピックアップ装置1が設けられる。テーブル5の上には裏面に粘着シート4が張り付けられた半導体ウエハ2が搭載されている。半導体ウエハ2はダイシングにより複数の半導体チップに個片化されている。複数の半導体チップはダイシング後にテーブル5の上に設置され、ピックアップ装置1を用いて粘着シート4からピックアップされる。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るピックアップ装置1の構造を説明する断面図である。ピックアップ装置1はピックアップ治具9と、位置決めホルダー10を備える。位置決めホルダー10の上面には開口10aが形成される。位置決めホルダー10は開口10aの内部にピックアップ治具9を保持する。位置決めホルダー10はピックアップ治具9の位置を決定する。
【0013】
粘着シート4の上面には複数の半導体チップ3が貼り付けられている。粘着シート4は、位置決めホルダー10の上面に開口10aを覆うように搭載される。位置決めホルダー10は粘着シート4の上面に設けられた半導体チップ3を保持する。
【0014】
ピックアップ治具9はニードルホルダー8と、複数のニードル6を有する。ニードルホルダー8は上面に複数のニードル孔が形成されている。複数のニードル6は複数のニードル孔にそれぞれ挿入される。複数のニードル6は、ニードルホルダー8の上面から上方にそれぞれ突出する。ニードルホルダー8は、ニードル6をニードル孔に直立させて支持する。本実施の形態では、複数のニードル6は後述するニードル6a~6cを含む。
【0015】
位置決めホルダー10は、複数のニードル6が上方を向いた状態でピックアップ治具9を保持する。複数の半導体チップ3のうち1つは、開口10aの直上に設けられる。このとき、複数のニードル6と対向するように半導体チップ3が配置される。
【0016】
ピックアップ装置1は駆動部40を備える。駆動部40はピックアップ治具9を上下に移動させる。駆動部40はピックアップ治具9を矢印61の方向に移動させる。また、後述するようにピックアップ装置1は、ピックアップ治具9が可動する空間内を吸引する吸引部を備える。
【0017】
図3は、実施の形態1に係るピックアップ治具9の平面図である。ピックアップ治具9は9本のニードル6を有する。ピックアップ治具9が有するニードル6の数は複数であれば良い。また、本実施の形態では複数のニードル6は十字型に並ぶ。複数のニードル6の配置はこれに限らない。
【0018】
図4は、実施の形態1に係るピックアップ治具9の側面図である。
図5は、実施の形態1に係るピックアップ治具9の構造を説明する図である。ピックアップ治具9は、後述するニードル先端位置調整手段を備える。ニードル先端位置調整手段は、ニードルホルダー8から突出したニードル6の先端位置の高さを個別に調整する。
【0019】
本実施の形態では、複数のニードル6のうちニードルホルダー8の中央部に設けられたニードル6aの先端位置の高さが最も低い。また、ニードルホルダー8の外周部に設けられたニードル6cの先端位置の高さが最も高い。また、ニードル6aとニードル6cの間に設けられたニードル6bの先端位置の高さは、ニードル6aよりも高くニードル6cよりも低い。複数のニードル6の先端位置の高さは、中央部ほど低く調整される。
【0020】
ニードルホルダー8は上面と、上面と対向する面である裏面を有する。複数のニードル孔7は、ニードルホルダー8を上面から裏面にそれぞれ貫通する。複数のニードル6は、複数のニードル孔7にそれぞれ挿入される。複数のニードル6はニードルホルダー8の上面から上方にそれぞれ突出する。
【0021】
また、ピックアップ治具9は、調整部ホルダー12を備える。調整部ホルダー12はニードルホルダー8の裏面に対向する第1面と、第1面と対向する第2面とを有する。調整部ホルダー12には、第1面から第2面に貫通する複数の調整部孔20が形成される。複数の調整部孔20は、複数のニードル孔7とそれぞれ連なる。
【0022】
各々の調整部孔20には第2面側から調整部材13が挿入される。調整部材13は、上端部が調整部ホルダー12の第1面から、調整部孔20に連なるニードル孔7の内部に突出する。調整部材13の下端部は、調整部ホルダー12の第2面から下方に突出する。調整部材13のニードル孔7に突出した部分の長さは、調整部ホルダー12の第2面側から変更可能である。本実施の形態では調整部材13はネジである。
【0023】
本実施の形態では、調整部ホルダー12と、ニードル孔7に連通して調整部ホルダー12に設けられた調整部材13がニードル先端位置調整手段に該当する。ニードル6の下端と調整部材13の上端は接触する。調整部材13は、ニードル6の底面14に押し当てられた状態で矢印62に示す方向に回転する。これにより、調整部材13のニードル孔7内の部分の長さが調節される。従って、ニードル6の先端位置の高さは矢印63に示される方向で調整される。
【0024】
図6は、実施の形態1に係るピックアップ治具9の調節方法を説明する図である。
図6を用いて、ニードル6の先端位置の高さ調整方法について説明する。まず、ピックアップ治具9にニードル調節具15を接触させる。ニードル調節具15は、ピックアップ治具9に上方から接触する。
【0025】
ニードル調節具15は複数のニードル6の先端部と対向する対向部を備える。具体的には、ニードル調節具15は、主部15aと主部15aから下方に突出する第1部分16bと第2部分16aとを有する。第2部分16aは1部分16bよりも下方に突出する。
【0026】
次に、複数のニードル6の先端が全てニードル調節具15と接するように、ニードル先端位置調整手段を用いてニードル6の高さを調整する。つまり、調整部材13を用いて複数のニードル6の先端位置の高さがそれぞれ調節される。これにより、複数のニードル6のうちニードル6aの上端と第2部分16aとが接触し、ニードル6bの上端と第1部分16bとが接触する。また、ニードル6cの上端と主部15aの裏面とが接触する。
【0027】
これにより、ニードル6aのニードルホルダー8の上面から突出した部分の長さを、ニードル6bのニードルホルダー8の上面から突出した部分の長さよりも短くすることができる。また、ニードル6bのニードルホルダー8の上面から突出した部分の長さを、ニードル6cのニードルホルダー8の上面から突出した部分の長さよりも短くすることができる。
【0028】
次に、ニードル6をニードルホルダー8に固定する。
図7は、実施の形態1に係るニードル6の固定方法を説明する図である。各々のニードル6には、ニードル固定ネジ24が設けられる。ニードル固定ネジ24は、ニードルホルダー8の側面に設けられる。ニードル固定ネジ24を矢印65に示す方向に回すことで、ニードル6はニードルホルダー8に固定される。
【0029】
図8は、実施の形態1に係る半導体チップ3の製造方法を説明する図である。半導体ウエハ2はダイシングにより複数の半導体チップ3に個片化される。ダイシング後、各半導体チップ3はピックアップ装置1により粘着シート4からピックアップされる。その後、実装工程へ移行し、半導体チップ3は製品化される。
【0030】
ピックアップ装置1は、開口10aの内部を吸引する吸引部41を備える。吸引部41で開口10aの内部を矢印64に示されるように吸引することで、粘着シート4はピックアップ治具9および位置決めホルダー10に吸着される。ピックアップ装置1は、粘着シート4を吸着しながら、駆動部40によってピックアップ治具9を持ち上げる。このとき、ピックアップ治具9は、ニードル6が粘着シート4および半導体チップ3を持ち上げる位置まで移動する。この状態で、半導体チップ3は図示しない吸着部により粘着シート4から剥離され、移送される。
【0031】
本実施の形態では、半導体チップ3の外周部を保持するニードル6b、6cは中央部を保持するニードル6aよりも高い。このため、まず粘着シート4に貼りつけられた半導体チップ3のコーナー部がニードル6b、6cによって剥離される。次に、半導体チップ3の中央部がニードル6aによって剥離される。これにより、半導体チップ3が粘着シート4からピックアップ可能な状態となる。
【0032】
ピックアップ装置において、複数のニードルの高さが揃っている場合を考える。この場合、半導体チップのコーナー部が剥離する前に、半導体チップの中央部に配置されたニードルで半導体チップを突き上げる可能性がある。このとき、半導体チップの中央部に対して、ニードルの突き上げによる応力が集中するおそれがある。従って、半導体チップの中央部に貫通またはクラックが発生するおそれがある。このような損傷は、例えば100μm以下に薄厚化された半導体チップにおいて、特に問題となり易い。
【0033】
これに対し、本実施の形態では、内側に設けられたニードル6が外側に設けられたニードル6よりも低い。このため、半導体チップ3のコーナー部から中央部に向けて粘着シート4を剥離できる。従って、半導体チップ3の損傷を抑制できる。
【0034】
このように、薄厚化された半導体チップをピックアップする際には、半導体チップの外周部及び中央部に配置するニードルの高さの管理が重要となる。ここで、ニードル高さは、半導体チップの厚み、大きさに応じて調整されることが好ましい。しかし、複数のニードルの高さをニードル毎に調節することは、一般に困難である。
【0035】
これに対し、本実施の形態のピックアップ治具9は、ニードル6の先端位置の高さを個別に調整できるニードル先端位置調整手段を備える。このため、半導体チップ3の形状に応じて、容易に各々のニードル6の高さを調整できる。このため、半導体チップ3の形状毎に複数のピックアップ治具9を準備する必要がない。従って、利便性を向上できる。
【0036】
また、調整部材13としてネジを設けたことで、ネジを上下させてニードル6の先端位置を容易に調整できる。
【0037】
また、ニードル調節具15を用いることで、複数のニードル6の高さを、一括して高精度で調整できる。このため、高精度な高さ調整を容易に実施できる。従って、容易に半導体チップ3の損傷を抑制できる。
【0038】
図9は、実施の形態1の変形例に係るニードル調節具215の側面図である。
図9は、ニードル調節具215のうち第2部分16a周辺の拡大図である。ニードル調節具215は、複数のニードル6とニードル調節具215との接触を検出するセンサ217を備える。ニードル調節具215の複数のニードル6と接触する部分には、複数のセンサ217がそれぞれ設けられる。つまり、第1部分16b、第2部分16aおよび主部15aの裏面のうち、ニードル6と対向する部分には、センサ217がそれぞれ設けられる。
【0039】
これにより、ニードル調節具215とニードル6との接触を明確にできる。従って、ニードル6の高さの調整を容易化できる。また、ニードル6の高さの調整を高精度化できる。
【0040】
また、本実施の形態ではニードル6の高さが3段階に調節された。これに限らず、複数のニードル6は互いに高さの異なるニードル6を含めばよい。例えば、ニードル6の高さは2段階または4段階以上に調節されても良い。また、ニードル調節具15の形状は、目標とする複数のニードル6の高さに応じて決まる。
【0041】
これらの変形は、以下の実施の形態に係る半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る半導体チップのピックアップ治具、半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ治具の調節方法については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0042】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係るピックアップ治具309の構造を説明する図である。本実施の形態では、複数のニードル孔7のうち少なくとも1つに弾性部材319が設けられる。弾性部材319は例えばバネである。弾性部材319は、ニードル孔7の内部で、調整部ホルダー12とニードル306との間に設けられる。弾性部材319の下端は調整部ホルダー12の第1面に設けられる。また、弾性部材319の上端はニードル306の底面と接する。弾性部材319は、ニードル306と調整部ホルダー12とを連結する。弾性部材319はニードル306に弾性力を及ぼす。
【0043】
ニードル306は、ニードル孔7の内部に設けられた幅広部351と、幅広部351よりも細くニードルホルダー8の上面から上方に突出するニードル部352とを有する。ニードル306はニードル孔7に上下に移動可能な状態で挿入される。
【0044】
調整部材313はニードル306の直下に設けられる。調整部材313は例えば弾性部材319に挿入されている。
【0045】
図11は、ニードル306が下降した状態を説明する図である。ニードル306は、上方に半導体チップ3が搭載されることで弾性部材319から弾性力を受けながら下方に移動する。このとき、
図11に示されるように、ニードル306は調整部材313と接する位置まで下降可能である。従って、ニードル306の先端位置の高さは、ニードル306の底面と調整部材313とが接して、ニードル306のストロークが制限されることで決定される。
【0046】
図12は、実施の形態2に係るピックアップ治具309の側面図である。複数の調整部孔20には複数の調整部材313がそれぞれ挿入される。複数のニードル孔7のうち弾性部材319が設けられる第1ニードル孔は、複数のニードル孔7の中央部に設けられる。複数のニードル孔のうち第1ニードル孔以外の第2ニードル孔では、弾性部材319が設けられない。第2ニードル孔では、調整部材313と第2ニードル孔に挿入されたニードル306とが接している。
【0047】
つまり、
図12においてニードルホルダー8の中央部に設けられた第1ニードル306aは弾性部材319に支持されている。また、ニードルホルダー8の外周部に設けられた第2ニードル306bには弾性部材319が設けられない。第2ニードル306bは、実施の形態1と同様に調整部材313と接している。
【0048】
また、半導体チップ3が搭載されていない状態では、複数のニードル306の先端は揃っている。これに限らず、半導体チップ3が搭載されていない状態において、ニードルホルダー8の中央部のニードル306の先端は、外周部のニードル306の先端よりも低くても良い。また、複数の調整部材313は、調整部ホルダー12の第1面からの高さが互いに異なっていても良い。
【0049】
本実施の形態では、ニードル先端位置調整手段に調整部材313と弾性部材319を設けた構成になっている。複数のニードル306の上に半導体チップ3が搭載されると、半導体チップ3の中央部には弾性力を持ってニードル306が押し当てられる。このとき、半導体チップ3の形状に応じて、中央部のニードル306が弾性部材319から弾性力を受けながら下降する。これにより、ニードル306の突き上げによる半導体チップ3の中央部への応力を抑制できる。従って、ピックアップ開始時の半導体チップ3の割れ等の損傷を抑制できる。
【0050】
また、ニードル306の先端位置の下限は、ニードル306と調整部材313とが接することで制限される。このため、ニードル306が過度に下降して半導体チップ3が損傷することを抑制できる。従って、半導体チップ3の損傷をさらに抑制できる。
【0051】
なお、ピックアップ治具309に半導体チップ3が搭載された状態において、ニードル306は調整部材313と接していても良く、接していなくても良い。
【0052】
また、本実施の形態では、ピックアップ治具309に半導体チップ3を搭載することで、弾性部材319により支持されてニードル306の高さが変わる。このため、ニードル306の高さが固定される構成と比較して、ニードル306の高さを厳密に調節する必要がない。また、ニードル306のストロークは、調整部材313により容易に調節できる。従って、容易に半導体チップ3の損傷を抑制できる。
【0053】
また、外周部のニードル306は高さが固定されている。これにより、実施の形態1と同様に半導体チップ3のコーナー部から中央部に向けて粘着シート4を剥離できる。この変形例として、全てのニードル孔7に弾性部材319が設けられても良い。この場合も、
図8に示されるような半導体チップ3の湾曲に沿って各ニードル306が下降することで、半導体チップ3のコーナー部から中央部に向けて粘着シート4を剥離することができる。
【0054】
また、本実施の形態では弾性部材319と調整部材313は独立している。このため、調整部材313のニードル孔7に突出した部分の長さが変わっても弾性部材319の弾性力は変化しない。従って、ニードル306のストロークと弾性部材319の弾性力を別個に調節でき、ピックアップ治具309を調節し易い。
【0055】
また、調整部材313は例えばネジである。これにより、ネジを上下させることで容易にニードル306の先端位置の下限を規定できる。また、ニードル306の先端位置の下限を容易に微調整できる。調整部材313はネジに限らず、ニードル孔7内に突出してニードル306のストロークを制限できるものであれば良い。
【0056】
本実施の形態では、弾性部材319の中に調整部材313が挿入される。これに限らず、弾性部材319は調整部材313の横に設けられても良い。
【0057】
図13は、実施の形態2の第1の変形例に係るピックアップ治具409の構造を説明する図である。ニードルホルダー8の上面には飛出し防止機構425が設けられる。飛出し防止機構425には、開口10aと重なる位置にニードル306の幅広部351よりも幅が狭い開口が形成される。本実施の形態では、ニードル306の幅広部351と飛出し防止機構425とがストッパーとなる。このため、ニードル306の抜けを防止できる。従って、ニードル306の抜けに気付かずにピックアップを開始して半導体チップ3が損傷することを抑制できる。
【0058】
図14は、実施の形態2の第2の変形例に係るピックアップ治具509の構造を説明する図である。ニードルホルダー508は飛出し防止機構と一体化されていても良い。ニードルホルダー508は、上面でのニードル孔7の幅がニードル306の幅広部351よりも狭く形成されれば良い。
【0059】
また、ニードル306の素材は、半導体チップ3を繰り返し突き上げても劣化または破損しにくい超硬合金を選定すると良い。また、ニードル306の幅広部351は、ニードル306自体を切削加工して形成されても良い。
【0060】
図15は、実施の形態2の第3の変形例に係るピックアップ治具609の構造を説明する図である。ピックアップ治具609は高さ調節部613を備える。高さ調節部613は、弾性部材319の下端の調整部ホルダー12の第1面からの高さを調節する。高さ調節部613は例えばネジである。弾性部材319は高さ調節部613に取り付けられる。
【0061】
高さ調節部613は調整部ホルダー12の第2面側から調整部ホルダー12に挿入されている。高さ調節部613のニードル孔7の内部に突出する部分の長さは、調整部ホルダー12の第2面側から調節できる。高さ調節部613のニードル孔7の内部に突出する部分の長さを調節することで、弾性部材319の調整部ホルダー12の第1面からの高さを調節できる。これにより、ニードル306の高さを調節できる。
【0062】
実施の形態3.
図16は、実施の形態3に係るピックアップ治具709の構造を説明する図である。本実施の形態では、複数の調整部材313に代えてストローク調整具723が設けられる。ストローク調整具723は、複数の調整部材713a、713bと連結部726を有する。複数の調整部材713a、713bは、調整部ホルダー12の第2面側で連結部726によって互いに連結される。複数の調整部材713a、713bは複数の調整部孔20と嵌め合う。
【0063】
複数の調整部材713a、713bは、第1調整部材と、調整部ホルダー12の第1面からの高さが第1調整部材と異なる第2調整部材とを含む。これにより、ニードル306毎にストロークの範囲を調節できる。
【0064】
本実施の形態では、ニードル先端位置調整手段にストローク調整具723を設けた。このため、複数のニードル306の下降可能な範囲を一括して調整できる。従って、調整時間を短縮することができる。また、半導体チップ3の厚み、大きさに応じて、ストローク調整具723を交換することで、様々な半導体チップ3に容易に対応することができる。
【0065】
以上の実施の形態には、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されている。1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は、特定の実施の形態への適用に限られるものではなく、単独でまたは様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または、省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 ピックアップ装置、2 半導体ウエハ、3 半導体チップ、4 粘着シート、5 テーブル、6、6a~6c ニードル、7 ニードル孔、8 ニードルホルダー、9 ピックアップ治具、10 ホルダー、10a 開口、12 調整部ホルダー、13 調整部材、14 底面、15 ニードル調節具、15a 主部、16a 第2部分、16b 第1部分、20 調整部孔、24 ニードル固定ネジ、40 駆動部、41 吸引部、100 製造装置、215 ニードル調節具、217 センサ、306 ニードル、306a 第1ニードル、306b 第2ニードル、309 ピックアップ治具、313 調整部材、319 弾性部材、351 幅広部、352 ニードル部、409 ピックアップ治具、425 飛出し防止機構、508 ニードルホルダー、509、609 ピックアップ治具、613 高さ調節部、709 ピックアップ治具、713a、713b 調整部材、723 ストローク調整具、726 連結部