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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20221129BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60K15/04 E
B60K15/04 F
F02M37/00 301M
F02M37/00 311K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019195832
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070333
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波賀野 博之
(72)【発明者】
【氏名】石原 徳彦
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074409(JP,A)
【文献】特開2010-195344(JP,A)
【文献】特開2007-261492(JP,A)
【文献】特開2019-006309(JP,A)
【文献】特開2017-226278(JP,A)
【文献】特開2018-052380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着される給油装置であって、
給油ノズルを受け入れる給油口を備え、前記給油口から燃料タンクに至る燃料通路の一部を形成する燃料通路形成部と、
前記給油口から挿入される前記給油ノズルの到達範囲に設けられ、前記挿入される前記給油ノズルの径を弁別して動作する弁別部材と、
前記弁別部材よりも前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料タンクの側から閉方向に付勢された開閉部材であって、前記給油ノズルが挿入されない初期状態では、前記弁別部材によって閉状態に固定され、前記弁別部材の前記動作によって、前記固定が解かれる開閉部材と、
を備え、
前記弁別部材は、前記動作として、
前記挿入される前記給油ノズルの径が当該給油装置に適合する場合には、前記燃料通路の径方向外側に移動し、前記移動によって、前記開閉部材の前記固定を解き、
前記挿入される前記給油ノズルの径が当該給油装置に適合しない場合に、前記移動を起さず、
前記移動によって、前記燃料通路が大気と連通する大気連通孔を閉塞させる閉塞部材を有する、
給油装置。
【請求項2】
請求項1記載の給油装置であって、
前記弁別部材は、
前記給油ノズルの挿入範囲を取り囲み、外側に拡開可能な拡開部材と、
前記拡開部材の前記給油口側の、前記燃料通路を挟んで対向する少なくとも2箇所に、当該給油装置に適合する前記給油ノズルの径より小径の位置まで突出して形成されたガイド部材であって、当該給油装置に適合する前記給油ノズルの挿入により、前記拡開部材を前記外側に拡開させるガイド部材と、
前記拡開部材の前記ガイド部材より前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料通路の前記径方向内側に突出し、前記初期状態では前記開閉部材に係合して、前記開閉部材の前記固定を行なう保持部材と
を備える給油装置。
【請求項3】
前記閉塞部材は、
前記拡開部材の外周の所定の位置であって、前記大気連通孔に対応する位置から所定距離だけ隔たった位置から、前記外周に沿って、前記大気連通孔に対応する位置まで形成された所定長さの腕部と、
前記腕部の先端に設けられ、前記拡開部材の拡開により、前記大気連通孔に当接する位置まで移動する当接部と
を備える、請求項2に記載の給油装置。
【請求項4】
前記腕部は、前記拡開部材の前記外周との間に所定の間隙を備え、前記拡開部材の方向に向けて弾性変形可能である、請求項3記載の給油装置。
【請求項5】
前記大気連通孔および前記閉塞部材は、複数設けられた、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の給油装置。
【請求項6】
前記開閉部材は、給油時以外において前記給油口を閉鎖するフラップである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装着される給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に給油するための給油施設では、ガソリンと軽油など、異なる燃料を給油する設備があり、給油の際に誤って、意図しない燃料を自動車に給油することがないよう、給油施設における給油用ノズルの外径を燃料毎に異ならせている。最近では、ディーゼル車の触媒用にアドブルー(尿素水溶液)を給油することもあり、これらの液体供給用ノズルも、異なるノズル径とされている。具体的には、日本国では、ガソリン用のノズル径は20mm、軽油用のノズル径は23.5mm、アドブルー用のノズル径は19mmである。こうしたノズル径自体は、国によっても異なるが、自動車に供給されることが想定される液体の種別毎に、ノズル径を異ならせることが多い。国によっては、給油施設におけるノズル径を燃料等の種別毎に異ならせ、自動車側の給油装置に、異種の燃料等を供給ができない機構を設けることを法令等で定めている。ノズル径の違いにより給油の可否を判別して対応する装置として、特許文献1、2の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,714,214B2公報
【文献】特開2015-74409号公報
【文献】特開2017-226278号公報
【文献】特開2019-6309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、給油装置には、給油口の入口付近に侵入した雨水や塵埃を排出するための燃料通路と大気とを連通する連通路および大気への開口部が設けられることがある。こうした開口部が存在すると、給油ノズルを差し込んで燃料通路に設けられた開閉機構を開くと、燃料タンクから給油口までが連通状態となるため、燃料蒸気が外気に漏れる可能性が生じる。そこでこうした燃料蒸気の漏洩を防止する機構を給油装置に組み込むことが提案されている(例えば特許文献3、4)。このように、給油ノズルを受け入れる給油装置のヘッド部分には、複数の機能を組み込む必要が生じ、構造が複雑化、大型化しやすいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
(1)本開示の第一の態様は、車両に装着される給油装置としての態様である。この給油装置は、給油ノズルを受け入れる給油口を備え、前記給油口から燃料タンクに至る燃料通路の一部を形成する燃料通路形成部と、前記給油口から挿入される前記給油ノズルの到達範囲に設けられ、前記挿入される前記給油ノズルの径を弁別して動作する弁別部材と、前記弁別部材よりも前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料タンクの側から閉方向に付勢された開閉部材であって、前記給油ノズルが挿入されない初期状態では、前記弁別部材によって閉状態に固定され、前記弁別部材の前記動作によって、前記固定が解かれる開閉部材と、を備える。ここで、前記弁別部材は、前記動作として、前記挿入される前記給油ノズルの径が当該給油装置に適合する場合には、前記燃料通路の径方向外側に移動し、前記移動によって、前記開閉部材の前記固定を解き、前記挿入される前記給油ノズルの径が当該給油装置に適合しない場合に、前記移動を起さず、前記移動によって、前記燃料通路が大気と連通する大気連通孔を閉塞させる閉塞部材を有する、ものとしてよい。
こうすれば、給油装置に適合する給油ノズルか否かの弁別を行なう機構を利用して、そのまま燃料通路を大気に連通する大気連通孔の閉塞を行なうことができる。従って、給油ノズルを受け入れる給油装置のヘッド部分の構造が複雑化、大型化を抑制することができる。
(2)こうした給油装置において、前記弁別部材は、前記給油ノズルの挿入範囲を取り囲み、外側に拡開可能な拡開部材と、前記拡開部材の前記給油口側の、前記挿入範囲を取り囲む直径方向に隔たった少なくとも2箇所に、当該給油装置に適合する前記給油ノズルの径より小径の位置まで突出して形成されたガイド部材であって、当該給油装置に適合する前記給油ノズルの挿入により、前記拡開部材を前記外側に拡開させるガイド部材と、前記拡開部材の前記ガイド部材より前記燃料タンク側に設けられ、前記燃料通路の前記径方向内側に突出し、前記初期状態では前記開閉部材に係合して、前記開閉部材の前記固定を行なう保持部材とを備えるものとしてもよい。こうすれば、給油装置に適合する給油ノズルより外径の小さい給油ノズルを容易に弁別でき、誤挿入の可能性を抑制できる。
(3)こうした給油装置において、前記閉塞部材は、前記拡開部材の外周の所定の位置であって、前記大気連通孔に対応する位置から所定距離だけ隔たった位置から、前記外周に沿って、前記大気連通孔に対応する位置まで形成された所定長さの腕部と、前記腕部の先端に設けられ、前記拡開部材の拡開により、前記大気連通孔に当接する位置まで移動する当接部とを備えるものとしてよい。こうすれば、当接部材の位置決めを容易にできる。
(4)こうした給油装置において、前記腕部は、前記拡開部材の前記外周との間に所定の間隙を備え、前記拡開部材の方向に向けて弾性変形可能であるのものとしてよい。こうすれば、閉塞部材に過剰な力が掛かって、腕部を損傷する虞を低減できる。
(5)こうした給油装置において、前記大気連通孔および前記閉塞部材は、複数設けられるものとしてもよい。こうすれば、大気連通孔の開口面積を十分に確保でき、しかも閉塞部材による閉塞を容易におこなうことができる。
(6)こうした給油装置において、前記開閉部材は、給油時以外において前記給油口を閉鎖するフラップとしてもよい。こうすれば、いわゆるキャップレスの給油装置において、開閉部材とフラップとを兼用でき、装置構成を更に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の給油装置全体の構成を示す概略構成図。
図2】実施形態の給油装置に組み込まれたフィラーネックの外観を示す斜視図。
図3】フィラーネックを開口側から見た説明図。
図4図3のIV-IVaおよびIV-IVb断面図。
図5】フィラーネックに組み込まれた弁別部材の形態を例示する斜視図。
図6図4のVI-VI端面図。
図7図4のVII-VII端面図。
図8図3のVIII-VIII断面図。
図9】フィラーネックに適合する給油ノズルが差し込まれた場合のフィラーネックを開口側から見た説明図。
図10図9のX-XaおよびX-Xb断面図。
図11図9のXI-XI断面図。
図12図10のXII-XII端面図。
図13図10のXIII-XIII端面図。
図14】弁別部材の動作を説明する説明図。
図15】弁別部材の動作を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.実施形態1:
図1は実施形態の給油装置を含む給油装置FSの概要を示す説明図である。給油装置FSは、車両に装着され、給油ノズルFNから供給される燃料を燃料タンクFTに導く。図1には、鉛直方向を示す矢印Gが記載されている。給油装置FSは、燃料通路形成部材であるフィラーネック100と、燃料蒸気ポート102と、フィラーパイプFPと、逆止弁TVと、燃料蒸気チューブNTと、ガス放出弁BVと、装着部材FEと、を備えている。フィラーネック100は、装着部材FEにより車両の給油室FRに装着され、給油口104への給油ノズルFNの挿入を受け付ける。なお、図示する装着部材FEに代わり、中央にフィラーネック100の一部が挿入される円孔が形成された円板状の基板を用いて、フィラーネック100を給油室FRに装着してもよい。
【0008】
フィラーネック100は、燃料タンクFTと、フィラーパイプFPおよび燃料蒸気チューブNTにより接続されている。そして、フィラーネック100は、給油口104に挿入された給油ノズルFN(図1参照)からガソリンなどの液体燃料を、フィラーパイプFPを介して接続される燃料タンクFTへと導く。フィラーパイプFPは、例えば、2箇所に蛇腹構造を有する樹脂製のチューブであり、一定の範囲において、伸縮し、湾曲可能である。このフィラーパイプFPは、逆止弁TVを介して、燃料タンクFTと接続されている。給油口104に挿入された給油ノズルFNから吐出された燃料は、フィラーネック100が形成する後述の燃料通路とフィラーパイプFPを経て、逆止弁TVから、燃料タンクFTに導かれる。逆止弁TVは、燃料タンクFTからフィラーパイプFPへの燃料の逆流を防止する。
【0009】
燃料蒸気チューブNTは、一端がガス放出弁BVを介して燃料タンクFTと接続され、他端がフィラーネック100から突出した燃料蒸気ポート102に接続されている。ガス放出弁BVは、燃料蒸気チューブNTを燃料タンクFTに接続する継手としても機能する。燃料蒸気が含まれるタンク内エアーは、ガス放出弁BVから、燃料蒸気チューブNTに流れ込む。燃料蒸気は、給油ノズルFNからの給油時に、供給された燃料と共にフィラーパイプFPを通って燃料タンクFTに導かれる。以下、フィラーネック100について詳述する。
【0010】
図2は実施形態におけるフィラーネック100を概略視した斜視図である。図3は、フィラーネック100を開口側から見た説明図である。図4は、図3のIV-IVaおよびIV-IVb断面図、図5は、フィラーネックに組み込まれた弁別部材の形態を例示する斜視図、図6は、図4のVI-VI端面図、図7は、図4のVII-VII端面図、図8は、図3のVIII-VIII断面図である。なお、図4は、フィラーネック100の給油口104側の上半分、つまり弁別部材50および開閉部材70は、図3のIV-IVa断面として示し、フィラーネック100の下半分、つまりタンク側開閉弁機構30は、図3のIV-IVa断面として示している。また、図5図6などにおいては、理解の便を図って、背後の部材の図示を省略している。例えば、図6では、後述する弁別部材50に組み合わされている開閉部材70の図示を省略している。同様に、図8では、ガード部材25の図示を省略している。以下、これらの図面を参照して、本実施形態のフィラーネック100の構造とその内部構造について説明する。
【0011】
フィラーネック100は、その内部に、給油ノズルFNから給油される燃料を燃料タンクFTまで導く燃料通路形成部20が形成されている。図4に示すように、フィラーネック100に形成された燃料通路形成部20は、燃料通路90を形成する。この燃料通路90には、給油口104側から、給油ノズルFNの径を弁別する弁別部材50および開閉部材70と、燃料タンク側開閉弁機構30とが設けられている。燃料通路形成部20は、円筒状の形状とされ、給油ノズルFN(図1参照)が挿入される給油口104を形成するアウターボディー21と、燃料通路90を挿入側で取り囲むインナーボディー22と、燃料タンク側で燃料タンク側開閉弁機構30が組み込まれるアンダーボディー23とを備える。燃料通路90は、上記の各ボディーで取り囲まれ、給油口104から供給された液体燃料を燃料タンクFT側に導く。上記の各ボディーは、PA(ポリアミド)等の耐油性樹脂から成形されている。
【0012】
このフィラーネック100には、給油口104の側から順に、弁別部材50,開閉部材70,燃料タンク側開閉弁機構30を備える。これらはいずれも給油ノズルFNの到達範囲に設けられている。燃料タンク側開閉弁機構30は、図4に示すように、最も燃料タンク側において燃料通路形成部20のアンダーボディー23に配設され、燃料通路90を開閉する。この燃料タンク側開閉弁機構30は、燃料通路90を開閉する燃料タンク側開閉部材31と、燃料通路形成部20に固定されて燃料タンク側開閉部材31を閉める方向に付勢する燃料タンク側スプリング32と、を備える。燃料タンク側開閉部材31は、燃料タンク側から挿入側への液体燃料の逆流を防止するフラップである。燃料タンク側スプリング32は、燃料通路形成部20に固定端32Lで固定され、固定端32Lと反対側の自由端で燃料タンク側開閉部材31に固定されている。燃料タンク側スプリング32は、固定端32Lを中心に、燃料タンク側開閉部材31の所定の角度の範囲での回動を許容し、燃料タンク側開閉部材31を燃料通路90が閉まる方向に付勢している。
【0013】
フィラーネック100の外側全周を覆うアウターボディー21の外周には、燃料通路90を大気に連通する大気連通孔41が設けられている。この大気連通孔41は、給油口104から侵入した雨水や塵埃の排出に用いられるので、フィラーネック100を給油室FRに取付けた状態で、給油室FRを形成するボディーより車体内側で、かつフィラーネック100の重力方向G側に設けられている。燃料通路90と大気連通孔41とは、直接は接続されておらず、図5図6に示すように、大気連通孔41の内側にガード部材25が設けられている。このため、燃料通路90は、ガード部材25の両側に設けられた開口部47,49を介して、大気連通孔41と接続されている。
【0014】
フィラーネック100内部に設けられた弁別部材50および開閉部材70の構造について説明する。弁別部材50および開閉部材70は、図3および図4に示したように、フィラーネック100の給油口104側からやや奥まった位置に、弁別部材50が設けられ、その奥、つまり給油口104とは反対側に、開閉部材70が設けられている。弁別部材50は、給油口104に差し込まれた給油ノズルFNの大きさを弁別する部材であり、本実施形態では、ガソリン用のノズル径21mmの給油ノズルFNは、開閉部材70を開くことができず、軽油用のノズル径23.5ミリの給油ノズルFNは、開閉部材70を開いて、その奥に挿入可能とさせる。開閉部材70は、図4に示したように、燃料通路90を閉鎖する開閉弁71と、開閉弁71の外周に嵌め込まれたシール用のシール部材72と、開閉弁71を閉弁方向である弁別部材50の方向に付勢するバネ部材73と、このバネ部材73を支承する支持部74とからなる。
【0015】
弁別部材50は、図5図6に示したように、燃料通路形成部20に固定された円盤形状のベース部51から、その内側に、かつ周方向に形成された2つの拡開部材52,53を備える。2つの拡開部材52,53は、燃料通路90において給油ノズルFNの挿入範囲を取り囲むように対向する位置に設けられている。各拡開部材52,53は、それぞれの略中央に、内側に突出したガイド部材55,56を備える。従って、弁別部材50のガイド部材55,56は、燃料通路90を挟んで対向する位置に設けられている。また、各拡開部材52,53の先端には、内側に向けて突出する保持部材61,62が設けられている。保持部材61,62は、拡開部材52,53の先端が互いに近接配置されることから、図5図7に示したように、隣り合って配置される。各保持部材61,62は、図5に示したように、各拡開部材52,53の開閉部材70側に設けられている。つまり、ガイド部材55,56とは、給油ノズルFNの挿入方向に沿って反対側に設けられている。
【0016】
各拡開部材52,53は、大気連通孔41を通る重力方向Gの軸線から見て左右対称に構成されており、拡開部材52,53がベース部51に接続する箇所の近傍、つまり開口部47,49に対応する位置から所定距離だけ隔たった位置から腕部であるアーム部66,68が延出されている。このアーム部66,68は、拡開部材52,53とベース部51との間に、拡開部材52,53とほぼ平行に形成されている。アーム部66,68は、拡開部材52,53より細く作られ、拡開部材52,53より弾性変形しやすい。このアーム部66,68の先端には、大気連通孔41に至る開口部47,49を塞ぐための閉塞部材67,69が設けられている。
【0017】
拡開部材52,53に設けられたガイド部材55,56は、各拡開部材52,53から給油口104側に向けて立設されており、燃料通路90中心を向いた内面は、斜めにカットされて、斜面55a,56aを形成している。この斜面55a,56aは、給油口104側から給油ノズルFNが進入して、2個のガイド部材55,56に当たった際、給油ノズルFNの先端を、燃料通路90の中心に向けて誘導しつつ、弁別部材50の弁別機能を働かせる契機となる。弁別部材50による給油ノズルFNの径の弁別機能について、以下詳しく説明する。
【0018】
給油ノズルFNが給油口104から挿入されていない状態(以下、初期状態とも言う)では、弁別部材50により、開閉部材70は、閉鎖状態に保たれる。これは、弁別部材50の保持部材61,62が、図7図8に示したように、初期状態では、開閉部材70の開閉弁71に設けられた溝に係合しているからである。図8には、給油ノズルFNが描いてあるが、給油ノズルFNの先端は、ガイド部材55,56にまだ接触していない状態である。この状態では、例えば径の細い給油ノズルFNで、弁別部材50の中心の開口を通して開閉部材70の開閉弁71を押しても、開閉弁71は保持部材61,62が溝に係合することで保持されており、開かない。
【0019】
初期状態から、この給油装置FSに適した給油ノズルFNを挿入した場合の各部の状態を、図9図13に示した。図10図9のXーXaおよびXーXb断面図、図11図9のXIーXI断面図、図12図10のXII-XII断面図、図13図9のXIII-XIII断面図、である。各図に示したように、この給油装置FSに適合する軽油用の給油ノズルFN(外径23.5mm)が挿入されると、給油ノズルFNの先端は、ガイド部材55,56の斜面55a,56aに当たり、給油ノズルFNの先端はこの斜面55a,56aに案内されて、ガイド部材55,56、延いては各拡開部材52,53を径方向外側に押し広げつつ、奥に進むことになる。
【0020】
給油ノズルFNがガイド部材55,56の斜面55a,56aに当接して押し込まれ、開閉部材70の開閉弁71に接した状態(図10)では、各拡開部材52,53が径方向外側に拡がっているから、各拡開部材52,53の先端に設けられた保持部材61,62も径方向外側に移動し、図11図13に示すように、開閉弁71に設けられた溝から外れ、その係合は解かれている。従って、開閉弁71の保持は解除されており、開閉弁71はバネ部材73により閉方向に保持されているに過ぎない。このため、給油ノズルFNを更に押し込めば、開閉弁71は、燃料タンクFT方向に開き、給油ノズルFNは、給油可能な位置まで進入する。
【0021】
このとき、各拡開部材52,53のガイド部材55,56が、図12に示したように、給油ノズルFNにより径方向外側に向けて押し広げられるから、各拡開部材52,53も径方向外側に移動する。この各拡開部材52,53の動作に伴い、アーム部66,68の外側に移動され、その先端の閉塞部材67,69は、開口部47,49を閉塞する。アーム部66,68は、弾性変形可能に形成されているので、仮に給油ノズルFNがガイド部材55やガイド部材56側に強く押し付けられて、各拡開部材52,53が変形しても、アーム部66やアーム部68が撓み、こうした変形は吸収される。この結果、閉塞部材67,69による開口部47,49の閉塞は保たれる。開口部47,49が閉塞部材67,69により閉塞されると、燃料通路90から大気連通孔41を介した大気への連通は遮断される。従って、燃料通路90から大気への燃料蒸気の漏洩を抑制または防止できる。
【0022】
この様子を、図14図15に模式的に示した。図14は、この給油装置FSに適した径の給油ノズルFNが挿入される前の、各部の様子を示す説明図である。図14では、大気連通孔41側である下半分の燃料通路形成部20を除いて描くなど、理解の便を図って、図示を簡略化している。図14に示した状態では、この給油装置FSに不適合の小さな径の給油ノズル(例えば、ガソリン用の外径21mmの給油ノズル)がガイド部材55,56の中央に差し込まれると、外径21mmの給油ノズルは、いずれのガイド部材も移動せず、開閉部材70の開閉弁71に突き当たって止る。ガイド部材55,56が給油ノズルにより移動されなければ、各拡開部材52,53に設けられた保持部材61,62も移動せず、開閉弁71を閉状態に保持するからである。このとき、アーム部66,68も移動せず、閉塞部材67,69は開口部47,49を閉塞せず、燃料通路90は、大気連通孔41を介して大気と連通している。
【0023】
給油ノズルは人が操作するので、必ずしも中央に挿入されるとは限らない。外径の小さな給油ノズルが差し込まれて、ガイド部材55,56のいずれか一方に当たり、斜面55a,56aのいずれか一方に当接して、ガイド部材の一つを径方向外側に押し開くことも生じ得る。しかしながら、径の小さな給油ノズルがガイド部材55,56の両方を同時に、径方向外側に押すことはできないから、各拡開部材52,53の少なくとも1つは、元の位置に留まり、この結果、保持部材61,62の少なくとも片方は開閉弁71を閉状態に保持する。従って、開閉部材70の開閉弁71は閉弁状態を維持する。
【0024】
他方、この給油装置FSに適した給油ノズルFNが挿入されると、給油ノズルFNは、各拡開部材52,53に設けられたガイド部材55,56の両方の斜面55a,56aに最終的に当接し、ガイド部材55,56を径方向外側に移動する。この結果、図15に示したように、各拡開部材52,53に設けられた保持部材61,62も径方向外側に移動し、開閉弁71の保持は解除される。こうして給油ノズルFNは、開閉部材70の開閉弁71を押し開き、その奥の給油可能な位置にまで進入する。このとき、全ての拡開部材52,53が径方向外側に移動し、これにつれて、アーム部66,68も外側に移動し、アーム部66,68先端の閉塞部材67,69が、開口部47,49を閉塞する。従って、給油ノズルFNが差し込まれて、給油可能となった状態では、大気連通孔41を介した燃料通路90と大気との連通は遮断される。
【0025】
以上説明した実施形態によれば、給油装置FSに挿入される給油ノズルFNの径の違いを弁別部材50が弁別し、給油装置FSに適した外径の給油ノズルFNよりも外径の小さな給油ノズルの進入を阻止できるだけでなく、給油ノズルが挿入されていない状態では、燃料通路90と大気との連通を大気連通孔41により確保して、雨水や塵埃を排出可能とする。他方、給油装置FSに適した給油ノズルFNが挿入されると弁別部材50がこれを弁別して開閉部材70が開くことを可能とし、給油ノズルFNが挿入されて、給油可能となった場合には、燃料通路90と大気との連通を遮断し、燃料タンクFTからの燃料蒸気が大気に漏れることを抑制または防止する。
【0026】
B.他の実施形態:
上記実施形態では、ガイド部材55等を備えた拡開部材52等を設けることにより、差し込まれた給油ノズルが、給油装置に適合するものか否かを弁別したが、こうした弁別部材50は、他の構成を備えても差し支えない。例えば、拡開部材は3つであっても良く、4つ以上であっても良い。また一つの拡開部材に設けられるガイド部材は1つに限る必要はない。あるいは、特許文献1や2に示した機構を用い、給油ノズルにより径方向外側に移動される部材の動きを利用して、大気連通孔を閉塞するようにすればよい。もとより、適合する給油ノズルにより移動される部材があれば、リンク機構などを用いて、大気連通孔の閉塞を実現することは容易である。
【0027】
上記実施形態では、給油装置FSは、いわゆるキャップレスの構成を備え、給油時以外では給油口104を閉鎖するフラップと開閉部材70とを兼用している。開閉部材70は、フラップとは別に独立に設けてもよい。あるいは、燃料タンク側開閉弁機構30のフラップと兼用してもよい。
【0028】
燃料通路を大気に連通する大気連通孔の位置は、雨水や塵埃の進入を妨げ、その排出が可能な位置であれば、いずれでもよく、大気連通孔の閉塞は、大気連通孔それ自体を閉塞しても良いし、大気連通孔に連なる連通路のどこかを閉塞することにより実現してもよい。上記実施形態の様に、1つの大気連通孔41に連なる開口部47および49の2つを閉塞するようにしても良く、更に多数の開口部を設けて、それらを閉塞する構造としてもよい。また、給油装置に適合する給油ノズルの挿入による弁別部材50の動きによる大気連通孔の閉塞は、径方向外側への移動によって閉塞部材67等を開口部47等に押し付けるというものに限られず、弁別部材50の動きにより開口部47等に対して閉塞部材67等がスライドするように移動して、これを閉塞するものとしてもよい。
【0029】
上記実施形態では、弁別部材50の拡開部材52,53の動きにより、アーム部66,68が移動するものとし、このアーム部66等が弾性変形可能として、拡開部材52等の過剰な移動などを吸収するものとしたが、弁別部材50の動きを制約する部材を設ければ、閉塞部材67等は、アーム部66等に設ける必要はなく、拡開部材52等に直接設けてもよい。また、大気連通孔を閉塞する構造に、アーム部66等の弾性変形のような遊びが必要な場合には、閉塞部材67等を柔らかい部材で形成し、遊びを吸収するようにしてもよい。あるいは、大気連通孔の側を弾性変形可能な構造としてもよい。
【0030】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
20…燃料通路形成部、21…アウターボディー、22…インナーボディー、23…アンダーボディー、25…ガード部材、30…燃料タンク側開閉弁機構、31…燃料タンク側開閉部材、32…燃料タンク側スプリング、32L…固定端、41…大気連通孔、47,49…開口部、50…弁別部材、51…ベース部、52,53…拡開部材、55,56…ガイド部材、55a,56a…斜面、61,62…保持部材、66,68…アーム部、67,69…閉塞部材、70…開閉部材、71…開閉弁、72…シール部材、73…バネ部材、74…支持部、90…燃料通路、100…フィラーネック、102…燃料蒸気ポート、104…給油口、BV…ガス放出弁、FE…装着部材、FN…給油ノズル、FP…フィラーパイプ、FR…給油室、FS…給油装置、FT…燃料タンク、NT…燃料蒸気チューブ、TV…逆止弁
図1
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