(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】農作物収穫システム
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20221129BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A01D46/30
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2019201508
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】半田 郷
(72)【発明者】
【氏名】青木 義昌
(72)【発明者】
【氏名】松野 勤
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 日菜
(72)【発明者】
【氏名】森 俊和
(72)【発明者】
【氏名】岩竹 皓也
(72)【発明者】
【氏名】古川 文崇
(72)【発明者】
【氏名】北村 清
(72)【発明者】
【氏名】町田 高章
(72)【発明者】
【氏名】井野川 和也
(72)【発明者】
【氏名】榊原 大五
(72)【発明者】
【氏名】在原 拓務
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴巨
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-107889(JP,A)
【文献】特開2010-207118(JP,A)
【文献】特開昭59-106218(JP,A)
【文献】特開2012-110256(JP,A)
【文献】特開2019-097448(JP,A)
【文献】特開2015-162073(JP,A)
【文献】米国特許第05544474(US,A)
【文献】国際公開第2018/087546(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0073584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/30
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主茎(92)や枝に結実した収穫対象物(91)に対し果柄(93)を切断して前記収穫対象物を収穫する農作物収穫用エンドエフェクタ(1)を備えた農作物収穫システム(50)であって、
前記果柄を切断するための切断刃(2)が設けられた第1部材(10、20A、41)と、
前記第1部材に対して相対的に移動可能に構成された第2部材(20、41A)と、
前記第1部材に対して前記第2部材を相対的に移動させる移動機構(30)と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方は、前記切断刃を含んで環状に構成されてその環状の内側に前記収穫対象物を通すことが可能な通過部(3)を形成し、
前記移動機構は、前記通過部の内側に前記果柄を通した状態で前記第1部材と前記第2部材とを相対的に移動させて前記通過部を縮小させることで前記第2部材と前記切断刃とで前記果柄を挟み込んで切断する、
前記農作物収穫用エンドエフェクタと、
前記農作物収穫用エンドエフェクタが取り付けられたロボットアーム(52)と、
前記収穫対象物の位置情報を含む視覚情報を取得可能な視覚装置(51)と、
前記視覚装置で取得した前記視覚情報に含まれている収穫対象物を検出する収穫対象物検出処理を実行可能な収穫対象物検出処理部(61)と、
前記収穫対象物検出処理で検出した前記収穫対象物の先端位置(Pb)と基端位置(Pt)とを含む位置を特定する位置特定処理を実行可能な位置情報特定処理部(62)と、
前記ロボットアームを駆動制御して、前記収穫対象物の前記先端位置の外方に設定された始点位置(Ps)まで前記農作物収穫用エンドエフェクタを接近させる接近処理を実行可能な接近処理部(65)と、
前記ロボットアームを駆動制御して前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記先端位置の外方から前記基端位置側へ向かって移動させて前記通過部に前記収穫対象物を通す移動処理を実行可能な移動処理部(66)と、
前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記主茎や枝に沿うように傾けて前記通過部が前記収穫対象物を前記基端位置の外方へ通過した状態にする傾け処理を実行可能な傾け処理部(67)と、
前記農作物収穫用エンドエフェクタを動作させて前記通過部を縮小させることで前記通過部の内側に通された前記果柄を切断する切断処理を実行可能な切断処理部(68)と、
を備えている農作物収穫システム。
【請求項2】
前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記主茎や枝に沿うように傾けるための傾け角度を設定する傾け角度設定処理を実行可能な傾け角度設定処理部(63)を更に備え、
前記傾け角度設定処理は、前記傾け角度を予め設定された一定値に設定する処理を含み、
前記傾け処理部は、前記傾け角度設定処理で設定された傾け角度に基づいて前記傾け処理を実行する、
請求項1に記載の農作物収穫システム。
【請求項3】
前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記主茎や枝に沿うように傾けるための傾け角度を設定する傾け角度設定処理を実行可能な傾け角度設定処理部(63)を更に備え、
前記傾け角度設定処理は、前記視覚装置で取得した前記視覚情報に基づいて前記傾け角度を設定する処理を含み、
前記傾け処理部は、前記傾け角度設定処理で設定された傾け角度に基づいて前記傾け処理を実行する、
請求項1に記載の農作物収穫システム。
【請求項4】
前記収穫対象物の高さ位置とその高さ位置における前記傾け角度とを示すデータテーブルを記憶した記憶領域(602)を更に備え、
前記傾け角度設定処理は、前記視覚装置で取得した前記視覚情報から前記収穫対象物の高さ位置(Pt)を特定し、前記傾け角度を、前記データテーブルに基づいて、その特定した前記収穫対象物の高さ位置に対応する角度に設定する処理を含んでいる、
請求項3に記載の農作物収穫システム。
【請求項5】
前記傾け角度設定処理は、前記視覚装置で取得した前記視覚情報から前記主茎や枝の形状を抽出し、その抽出した前記主茎や枝の形状に対してパターンマッチング処理又はフィッティング処理を行うことで前記傾け角度を設定する処理を含む、
請求項3に記載の農作物収穫システム。
【請求項6】
前記傾け処理における前記農作物収穫用エンドエフェクタの回転軸側とは反対側部分に対する物体の接触を検出可能な反回転軸側接触検出部(73)を更に備え、
前記傾け処理部は、前記傾け処理を実行し前記農作物収穫用エンドエフェクタを傾ける動作を行っている際中に前記反回転軸側接触検出部により物体の接触を検知した場合に前記傾け処理を終了する、
請求項1に記載の農作物収穫システム。
【請求項7】
前記移動処理は、前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記傾け角度で傾けることで前記通過部が前記収穫対象物の前記基端位置の外方へ通過する位置に設定された目標位置(Pg)まで前記農作物収穫用エンドエフェクタを移動させる処理を含み、
前記傾け処理部は、前記農作物収穫用エンドエフェクタが前記目標位置に到達した場合に前記傾け処理を実行する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の農作物収穫システム。
【請求項8】
前記傾け処理における前記農作物収穫用エンドエフェクタの回転軸側の部分に対する物体の接触を検出可能な回転軸側接触検出部(72)を更に備え、
前記移動処理は、前記収穫対象物の前記基端位置の外方に設定された終点位置(Pe)を目指して前記農作物収穫用エンドエフェクタを移動させる処理を含み、
前記傾け処理部は、前記移動処理により前記終点位置を目指して前記農作物収穫用エンドエフェクタを移動させている際中に前記回転軸側接触検出部により物体の接触を検知した場合に前記傾け処理を開始する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の農作物収穫システム。
【請求項9】
前記傾け処理における前記農作物収穫用エンドエフェクタの回転軸は、当該農作物収穫用エンドエフェクタにおいて固定位置に設定されており、
前記接近処理は、前記回転軸の軸方向が前記主茎から延びる前記果柄と交差する方向となるように調整して前記農作物収穫用エンドエフェクタ前記始点位置まで接近させる処理を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の農作物収穫システム。
【請求項10】
前記傾け処理は、前記農作物収穫用エンドエフェクタにおいて前記主茎や枝に最も接近している部分を回転軸(Axr、Axp)にして前記回転軸の反対側が前記主茎や枝に接近するように傾ける処理を含み、
前記接近処理は、前記主茎や枝に対する前記収穫対象物の位置関係に関わらず前記収穫対象物に対して一定の角度で前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記始点位置まで接近させる処理を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の農作物収穫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、主茎や枝に結実した農作物を収穫するための農作物収穫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作業の自動化を実現するため、農作物を自動で収穫するためのエンドエフェクタや農作物収穫用システムが提案されている。例えばロボットアームの先端にハサミ形状の刃を有するエンドエフェクタを設け、そのエンドエフェクタで果柄を切断することで、主茎や枝から果実を分離し収穫する構成が考えられている。しかしながら、刃物を用いて果柄を切断する構成の場合、エンドエフェクタを果柄に近づける際に刃部分が主茎や枝に接触して主茎や枝を傷つけてしまったり、さらには切断してしまったりするおそれがある。また、刃部分が主茎や枝に直接接触しない場合であっても、主茎や枝に無理な力が加わることによって、折れ曲がって傷つけたり切断してしまったりするおそれがある。そして、主茎や枝の損傷や切断は、植物の様々な病気を引き起こす原因となり、ひどい場合には枯れてしまい、その結果、その後の収穫量の減少に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、収穫の際に主茎や枝を傷つけることを抑制して安全に収穫することができる農作物収穫システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の農作物収穫システム(50)は、主茎(92)や枝に結実した収穫対象物(91)に対し果柄(93)を切断して前記収穫対象物を収穫する農作物収穫用エンドエフェクタ(1)を備えた農作物収穫システムである。農作物収穫システムは、農作物収穫用エンドエフェクタ(1)を備える。農作物収穫用エンドエフェクタは、前記果柄を切断するための切断刃(2)が設けられた第1部材(10、20A、41)と、前記第1部材に対して相対的に移動可能に構成された第2部材(20、41A)と、前記第1部材に対して前記第2部材を相対的に移動させる移動機構(30)と、を備え、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方は、前記切断刃を含んで環状に構成されてその環状の内側に前記収穫対象物を通すことが可能な通過部(3)を形成し、前記移動機構は、前記通過部の内側に前記果柄を通した状態で前記第1部材と前記第2部材とを相対的に移動させて前記通過部を縮小させることで前記第2部材と前記切断刃とで前記果柄を挟み込んで切断する。
【0006】
また、農作物収穫システムは、ロボットアーム(52)と、視覚装置(51)と、収穫対象物検出処理部(61)と、位置情報特定処理部(62)と、接近処理部(65)と、移動処理部(66)と、傾け処理部(67)と、切断処理部(68)と、を備える。前記ロボットアームは、前記農作物収穫用エンドエフェクタが取り付けられる。前記視覚装置は、前記収穫対象物の位置情報を含む視覚情報を取得可能である。前記収穫対象物検出処理部は、前記視覚装置で取得した前記視覚情報に含まれている収穫対象物を検出する収穫対象物検出処理を実行可能である。前記位置情報特定処理部は、前記収穫対象物検出処理で検出した前記収穫対象物の先端位置(Pb)と基端位置(Pt)とを含む位置を特定する位置特定処理を実行可能である。
【0007】
前記接近処理部は、前記ロボットアームを駆動制御して、前記収穫対象物の前記先端位置の外方に設定された始点位置まで前記農作物収穫用エンドエフェクタを接近させる接近処理を実行可能である。前記移動処理部は、前記ロボットアームを駆動制御して前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記先端位置の外方から前記基端位置側へ向かって移動させて前記通過部に前記収穫対象物を通す移動処理を実行可能である。前記傾け処理部は、前記農作物収穫用エンドエフェクタを前記主茎や枝に沿うように傾けて前記通過部が前記収穫対象物を前記基端位置の外方へ通過した状態にする傾け処理を実行可能である。そして、前記切断処理部は、前記農作物収穫用エンドエフェクタを動作させて前記通過部を縮小させることで前記通過部の内側に通された前記果柄を切断する切断処理を実行可能である。
【0008】
ここで、例えばハサミ形状のエンドエフェクタによって果柄を切断しようとした場合、ハサミ形状のエンドエフェクタを主茎や枝を切断できる位置まで移動する際に、果柄や枝の伸びる方向に対してハサミ形状のエンドエフェクタを直角方向に接近させる必要がある。すると、ハサミ形状のエンドエフェクタを移動させる際に刃先部分が主茎や枝に接触して、主茎や枝を傷つけてしまうおそれがある。
【0009】
一方、本構成によれば、エンドエフェクタは、主茎等に結実した収穫対象物に対し収穫対象物の先端から収穫対象物全体を通過部に通すことで、すなわち、例えばミニトマトのような主茎から垂れ下がった収穫対象物に対し、房全体を下方からすくうようにして通過部に通すことで、エンドエフェクタを主茎や枝を切断できる位置まで移動させることができる。その際、移動部材は、切断刃の周囲を囲っているため、主茎が切断刃に接触することを抑制できる。その結果、切断刃によって主茎や枝を傷つけてしまうことを抑制できて安全に収穫対象物を収穫することができるという優れた効果が得られる。
【0010】
更には、本構成の農作物収穫システムは、傾け処理を実行することにより、農作物収穫用エンドエフェクタが果柄を切断するときの位置、つまり収穫対象物と主茎や枝との間の位置までエンドエフェクタを移動させる際に、エンドエフェクタを主茎や枝の傾きに沿った姿勢にすることができる。これにより、農作物収穫システムは、エンドエフェクタが果柄を切断するときの位置まで移動する際に、エンドエフェクタが主茎や枝を押し上げる等して無理な力をかけてしまうことを抑制できる。このように、本構成によれば、エンドエフェクタを用いて収穫対象物を収穫する際に、エンドエフェクタが主茎や枝に無理な力を加えてしまい主茎や枝を折り曲げて傷つけたり切断してしまったりすることも抑制でき、その結果、極めて安全に収穫作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、移動部材が引き出された状態を示す平面図
【
図2】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、
図1のものにおいてカバー部材を取り外して示す平面図
【
図3】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図1のX3-X3線に沿って示す断面図
【
図4】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図3の矢印X4方向から示す図
【
図5】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図1のX5-X5線に沿って示す断面図
【
図6】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図1のX6-X6線に沿って示す断面図
【
図7】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図1のX7-X7線に沿って示す断面図
【
図8】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図3の矢印X8部分を拡大して示す図
【
図9】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図3の矢印X9部分を拡大して示す図
【
図10】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、移動部材が引き込まれた状態を示す平面図
【
図11】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、
図10のものにおいてカバー部材を取り外して示す平面図
【
図12】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図11のX12-X12線に沿って示す断面図
【
図13】第1実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例について
図12の矢印X13部分を拡大して示す図
【
図14】第1実施形態による農作物収穫システムの構成を概略的に示す図
【
図15】第1実施形態による農作物収穫システムの制御装置の構成を概略的に示すブロック図
【
図16】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例を概念的に示すもので、正面側から見た図
【
図17】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて、位置特定処理部による各位置の特定及び移動経路生成処理部による移動経路の生成の一例を概念的に示すもので、正面側から見た図
【
図18】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて、目標位置Pgの決定方法の一例を概念的に示す図
【
図19】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて、農作物収穫用エンドエフェクタを収穫対象物の下方に進入させた状態を示すもので、(A)は正面側から見た図、(B)は上側から見た図
【
図20】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて実行される収穫動作の制御内容の一例を示すフローチャート
【
図21】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを始点位置まで移動させた状態を正面側から示す図。
【
図22】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを先端位置まで移動させた状態を正面側から示す図。
【
図23】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを目標位置まで移動させた状態を正面側から示す図。
【
図24】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを傾け角度で傾けた状態を正面側から示す図。
【
図25】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを傾け角度で傾けた状態を側面側から示す図(その1)。
【
図26】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを傾け角度で傾けた状態を側面側から示す図(その2)。
【
図27】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタで果柄を切断する直前の状態を側面側から示す図。
【
図28】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの一例について、
図27の矢印X28部分を拡大して示す図
【
図29】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタで果柄を切断して把持した状態を側面側から示す図。
【
図30】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの一例について、
図29の矢印X30部分を拡大して示す図
【
図31】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタの傾きを復帰した状態を正面側から示す図
【
図32】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタが回収箱へ向かって移動する際の状態を側面側から示す図
【
図33】第1実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、果柄の把持を解放した状態を側面側から示す図
【
図34】第2実施形態による農作物収穫システムについて、記憶領域に記憶されているデータテーブルの一例を示す図
【
図35】第3実施形態による農作物収穫システムについて、傾け角度を設定するためのパターンマッチング処理の一例を概念的に示す図(その1)
【
図36】第3実施形態による農作物収穫システムについて、傾け角度を設定するためのパターンマッチング処理の一例を概念的に示す図(その2)
【
図37】第3実施形態による農作物収穫システムについて、傾け角度を設定するための直線又は曲線のフィッティング処理の一例を概念的に示す図
【
図38】第4実施形態による農作物収穫システムにおいて、位置特定処理部による各位置の特定及び移動経路生成処理部による移動経路の生成の一例を概念的に示す図
【
図39】第4実施形態による農作物収穫システムの制御装置の構成を概略的に示すブロック図
【
図40】第4実施形態による農作物収穫システムについて、接触検出部によって検出する力と、農作物収穫用エンドエフェクタに設定される回転軸と、の関係を概念的に示す図
【
図41】第4実施形態による農作物収穫システムにおいて実行される収穫動作の制御内容の一例を示すフローチャート
【
図42】第4実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、農作物収穫用エンドエフェクタを始点位置まで移動させた状態を正面側から示す図
【
図43】第4実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、回転軸側接触検出部が農作物収穫用エンドエフェクタに対する接触を検出した状態を正面側から示す図
【
図44】第4実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫用エンドエフェクタの移動態様及び動作態様の一例を示すもので、反回転軸側接触検出部が農作物収穫用エンドエフェクタに対する接触を検出した状態を正面側から示す図
【
図45】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の横側に位置している状態を示すもので、正面側から見た図
【
図46】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の横側に位置している状態を示すもので、上面側から見た図
【
図47】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の正面側に位置している状態を示すもので、正面側から見た図
【
図48】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の正面側に位置している状態を示すもので、上面側から見た図
【
図49】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の背面側に位置している状態を示すもので、正面側から見た図
【
図50】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例であって収穫対象物が主茎の背面側に位置している状態を示すもので、上面側から見た図
【
図51】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図46に示す場合における進入方向を概念的に示す図
【
図52】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の横側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の一例を示す図
【
図53】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図48に示す場合における進入方向を概念的に示す図
【
図54】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の正面側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の一例を示す図
【
図55】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図50に示す場合における進入方向を概念的に示す図
【
図56】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の背面側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の一例を示す図
【
図57】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図51に示すものにオフセット角度を考慮した場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向を概念的に示す図
【
図58】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図53に示すものにオフセット角度を考慮した場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向を概念的に示す図
【
図59】第5実施形態による農作物収穫システムにおいて、
図55に示すものにオフセット角度を考慮した場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向を概念的に示す図
【
図60】第6実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の横側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の決定方法の一例を示す図
【
図61】第6実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の正面側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の決定方法の一例を示す図
【
図62】第6実施形態による農作物収穫システムにおいて、収穫対象物が主茎の背面側に位置している場合における農作物収穫用エンドエフェクタの進入方向の決定方法の一例を示す図
【
図63】第7実施形態による農作物収穫システムにおいて、農作物収穫用エンドエフェクタに設定される回転軸の設定箇所の一例を示すもので、上面側から見た図
【
図64】第7実施形態による農作物収穫システムにおいて、ピッチ回転軸を中心にピッチ方向へ農作物収穫用エンドエフェクタを傾ける際の一例を示す図(その1)
【
図65】第7実施形態による農作物収穫システムにおいて、ピッチ回転軸を中心にピッチ方向へ農作物収穫用エンドエフェクタを傾ける際の一例を示す図(その2)
【
図66】第8実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、移動部材が引き出された状態を示す平面図
【
図67】第9実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例を示すもので、移動部材が引き出された状態を示す平面図
【
図68】第10実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例をカバー部材を取り外した状態で示すもので、把持部材が前進している状態を示す平面図
【
図69】第10実施形態による農作物収穫用エンドエフェクタの構成の一例をカバー部材を取り外した状態で示すもので、把持部材が後退している状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図33を参照して説明する。
<農作物収穫用エンドエフェクタの構成>
まず、農作物収穫用エンドエフェクタ1の構成について、主に
図1~
図13を参照して説明する。本実施形態の農作物収穫用エンドエフェクタ1(以下、エンドエフェクタ1と称する)は、例えばトマト、ミニトマトやナスのように主茎から垂れ下がった状態で成長する果菜類や、リンゴやナシ、ブドウのように樹木の枝から垂れ下がった状態で成長する果樹類を収穫対象物として収穫することに用いることができる。
【0014】
エンドエフェクタ1は、
図1~
図3等に示すように、全体として一方向に長い形状に構成されており、切断刃2、ベース部材10、移動部材20、移動機構30、及び把持機構40を備えている。本実施形態の場合、切断刃2は、ベース部材10に設けられている。このため、本実施形態において、ベース部材10は、果柄を切断するための切断刃2が設けられた第1部材として機能する。また、移動部材20は、ベース部材10に対して、エンドエフェクタ1の長手方向に沿って移動可能に構成されている。このため、本実施形態において、移動部材20は、第1部材つまりベース部材10に対して相対的に移動可能に構成された第2部材として機能する。
【0015】
以下の説明では、エンドエフェクタ1の長手方向すなわち移動部材20の移動方向のうち、移動部材20がベース部材10から離間する方向を、エンドエフェクタ1の前側又は移動部材20の前進方向とし、逆方向つまり移動部材20がベース部材10に接近する方向をエンドエフェクタ1の後側又は移動部材20の後退方向とする。また、
図1におけるエンドエフェクタ1の長手方向に対する直角方向を、エンドエフェクタ1の幅方向とする。そして、
図3におけるエンドエフェクタ1の長手方向及び幅方向に対する直角方向を、エンドエフェクタ1の厚み方向とする。
【0016】
ベース部材10は、移動部材20、移動機構30、及び把持機構40の土台となる構成であり、保持部材11、12、カバー部材13、連結部材14、及び取付部材15を含んで構成されている。保持部材11、12は、エンドエフェクタ1の長手方向に離間して配置されている。本実施形態の場合、前側に設けられた保持部材11は、
図5に示すように、断面がいわゆるT字形状に形成されている。そして、前側の保持部材11は、摺動溝111及びばね支持部112を有している。摺動溝111は、複数例えば3つ設けられており、カバー部材13側から掘り込まれて前後方向に伸びる溝形状に形成されている。ばね支持部112は、後述する弾性部材42の一端部を支持する機能を有している。本実施形態の場合、ばね支持部112は、例えば前側の保持部材11の前面から前方へ突出した円筒形状に形成されている。また、後側に設けられた保持部材12は、
図4にも示すように、矩形のブロック状に形成されている。
【0017】
カバー部材13は、
図1及び
図3等に示すように、全体として板状に形成されており、保持部材11、12に対してエンドエフェクタ1の厚み方向の一方側に設けられて、エンドエフェクタ1の厚み方向の一方側の少なくとも一部又は全体を覆っている。カバー部材13は、例えば図示しないボルト等の締結部材によって、保持部材11、12に固定されている。これにより、カバー部材13は、前側の保持部材11と後側の保持部材12とを接続している。カバー部材13の後側は、エンドエフェクタ1の前後方向に長い矩形の板状に形成されており、カバー部材13の前側は、前方へ向かって幅が広がる台形状に形成されている。
【0018】
カバー部材13は、
図1に示すように、窪み部131及びガイド部132を有している。窪み部131は、カバー部材13の前側の縁部を、後方へ向かって矩形状に窪ませて形成されている。本実施形態の場合、窪み部131は、カバー部材13の中心部つまりエンドエフェクタ1の幅方向の中心部を跨って幅方向に延びており、カバー部材13の前端部における幅方向の半分以上、この場合、略全体に亘って設けられている。ガイド部132は、
図1等に示すように、カバー部材13の前端部において幅方向の両側、つまり窪み部131の両端側に設けられている。ガイド部132は、エンドエフェクタ1の後側から前側へ向かうにつれてカバー部材13の幅方向に広がるように傾斜している。
【0019】
連結部材14は、
図2及び
図3に示すように、例えば全体として前後方向に長い矩形の板状に形成されており、保持部材11、12に対してエンドエフェクタ1の厚み方向の他方側すなわちカバー部材13とは反対側に設けられて、エンドエフェクタ1の厚み方向の他方側の少なくとも一部又は全体を覆っている。連結部材14は、図示しない例えばボルト等の締結部材によって、保持部材11、12に固定されている。すなわち、連結部材14は、前側の保持部材11と後側の保持部材12とを接続している。
【0020】
取付部材15は、エンドエフェクタ1を後述するロボットアーム52に取り付けるためのものである。取付部材15は、
図3及び
図4等に示すように、例えば板状の部材を折り曲げた形状に形成されており、図示しない例えばボルト等の締結部材によって連結部材14に固定されている。取付部材15は、連結部材14からエンドエフェクタ1の幅方向の一方側に延び出ている。そして、取付部材15は、ボルト等の締結部材を通すための複数の通し穴151を有している。エンドエフェクタ1は、取付部材15の通し穴151にボルト等の締結部材を通してロボットアーム52のボルト穴にねじ込むことで、ロボットアーム52に取り付けられる。
【0021】
ベース部材10は、果柄を切断するための切断刃2を着脱可能に固定する。すなわち、切断刃2は、ベース部材10に着脱可能に固定される。本実施形態の場合、切断刃2は、例えば、板状に形成されており、刃先を前側へ向けた姿勢でベース部材10に取り付けられる。切断刃2は、
図5等に示すように、前側の保持部材11とカバー部材13との間に挟み込まれている。そして、ボルト16をカバー部材13に通して保持部材11にねじ込むことで、切断刃2は、前側の保持部材11とカバー部材13との間に挟み込まれた状態で固定される。
【0022】
図1等に示すように、切断刃2の刃先は、窪み部131内に収められている。すなわち、切断刃2の刃先は、窪み部131の前端部より前方へは出ていない。換言すれば、切断刃2とガイド部132とは、エンドエフェクタ1の長手方向及び幅方向のいずれにおいても重なっていない。
【0023】
移動部材20は、カバー部材13と連結部材14との間で、かつ、切断刃2に対してカバー部材13とは反対側つまり連結部材14側に設けられている。移動部材20は、環状部材21、及び回転部材22を有している。環状部材21は、移動部材20の主要構成であって、例えば剛性を有する金属や樹脂などによって全体として閉じた環状に形成されている。この場合、切断刃2は、環状部材21の内側に配置されている。すなわち、切断刃2の周囲は、環状部材21によって囲まれている。また、環状部材21は、全体としてエンドエフェクタ1の前後方向に長い多角形、例えば六角形状に形成されている。この場合、環状部材21は、枠部211、取付部212、受け部213、係止部214、及び移動部材側突出部215を一体に有している。
【0024】
枠部211は、環状部材21の前側に設けられた幅方向に伸びる辺と、その前側の辺の幅方向の両側に設けられた前後方向に伸びる2辺とによって、いわゆるコ字状若しくはU字状に構成された部分である。環状部材21において、枠部211部分は、他の部分に比べて細く形成されている。この場合、枠部211の厚み寸法は、数mm程度、例えば3~5mm程度に設定されている。取付部212は、環状部材21の後側の辺部分であり、枠部211よりも太くつまり幅広に構成されている。取付部212は、例えば図示しないボルト等の締結部材によって移動機構30に取り付けられる。
【0025】
受け部213は、枠部211において切断刃2と対向する部分、この場合、環状部材21の前側に設けられた幅方向に伸びる辺部分を、前方へ向かって矩形状に窪ませて形成されている。エンドエフェクタ1の幅方向における受け部213の長さは、切断刃2と同程度に設定されている。係止部214は、受け部213の長手方向の両端側すなわちエンドエフェクタ1の幅方向における両端側に設けられている。この場合、受け部213は、係止部214に対してエンドエフェクタ1の前側へ向かって窪んでいる。
【0026】
移動部材側突出部215は、受け部213に設けられている。移動部材側突出部215は、
図8に示すように、受け部213から後方側へ向かって突出するように形成された突出部である。この場合、移動部材側突出部215は、受け部213の長手方向の全体つまりエンドエフェクタ1の幅方向の略全体に亘って設けられている。この移動部材側突出部215は、例えば
図8に示すように断面が鋭角に形成することができるが、果柄を切断するものではない。すなわち、移動部材側突出部215は、当該移動部材側突出部215が果柄に押し付けられた際にその果柄を切断しないが果柄に食い込む程度に鋭角に形成されている。なお、移動部材側突出部215は、例えば多数の角錐形状や円柱形状、若しくは半球状で構成することもできる。
【0027】
回転部材22は、例えば長細い円筒形状に形成されたローラーであり、
図1及び
図7に示すように、環状部材21のうち枠部211部分に設けられている。本実施形態の場合、回転部材22は、枠部211のうち前後方向に伸びる部分に設けられている。すなわち、枠部211部分のうち受け部213、係止部214、及び移動部材側突出部215が設けられていない部分に、回転部材22は設けられている。換言すれば、回転部材22は、枠部211のうち切断刃2と対向する部分を除いた部分に設けられている。
【0028】
回転部材22は、枠部211が通されており、外力を受けて回転可能に構成されている。回転部材22は、金属製や樹脂製であって剛性を有するものであっても良いし、表面が柔軟性を有するものであっても良い。また、回転部材22は、両側各1本の長尺状の部材で構成しても良いし、多数の短い部材で構成しても良い。また、回転部材22は、丸みを帯びており摩擦が少ない部材で構成されていれば、必ずしも枠部211に対して回転可能に構成する必要はない。この場合、回転部材22を省略し、枠部211自体を、丸みを帯びており摩擦が少ない部材で構成しても良い。
【0029】
移動機構30は、第1部材としてのベース部材10に対して、第2部材としての移動部材20を相対的に移動させる機能を有する。本実施形態の場合、移動機構30は、例えばボールねじ機構で構成されている。この場合、移動機構30は、
図1~
図6に示すように、モータ31、軸受け32、ねじ軸33、ナット部材34、伝達部材35、ガイドシャフト36、リニアブシュ37を有して構成されている。
【0030】
モータ31は、移動機構30の駆動力、すなわち、移動部材20を移動させるための駆動源となるものであり、例えばサーボモータで構成されている。軸受け32、ねじ軸33、ナット部材34、伝達部材35、ガイドシャフト36、及びリニアブシュ37は、駆動源であるモータ31の回転力を、エンドエフェクタ1の長手方向に沿った直線方向への移動に変換して移動部材20に伝達するための構成である。
【0031】
モータ31は、例えば後側の保持部材12の外側に取り付けられており、ねじ軸33の一方の端部に接続されてねじ軸33を回転させる。軸受け32は、ねじ軸33を回転可能に支持するためのものであり、前後の保持部材11、12に設けられている。すなわち、ねじ軸33は、その軸方向がエンドエフェクタ1の長手方向に沿った状態で配置されている。
【0032】
ねじ軸33は、全長に亘ってねじが形成された軸であり、前後の保持部材11、12に設けられた軸受け32に回転可能に支持されて、前後の保持部材11、12を繋ぐように設けられている。ナット部材34は、モータ31からねじ軸33を介して伝達された回転を、ねじ軸33の軸方向に沿った直線移動に変換する機能を有する。
【0033】
ナット部材34は、例えば内部に回転可能な多数のボールを有するボールナットで構成されており、伝達部材35に取り付けられている。伝達部材35は、例えばブロック状に構成されており、移動部材20が取り付けられる。本実施形態の場合、移動部材20のうち、環状部材21の取付部212が、例えば図示しないボルト等の締結部材によって伝達部材35に固定されている。すなわち、ナット部材34は、伝達部材35を介して移動部材20に連結されている。これにより、移動部材20は、伝達部材35と一体的に移動することができる。
【0034】
ガイドシャフト36及びリニアブシュ37は、ねじ軸33の回転によりナット部材34が回転することを規制し、これによりナット部材34をねじ軸33の軸方向に沿って直線的に移動させる機能を有する。ガイドシャフト36は、前後の保持部材11、12を繋ぐように設けられている。この場合、2本のガイドシャフト36が、ねじ軸33に対してエンドエフェクタ1の幅方向の両側に設けられている。また、リニアブシュ37は、伝達部材35においてナット部材34の両側に2つ設けられており、それぞれガイドシャフト36が通されている。
【0035】
このような構成により、モータ31が回転すると、その回転力は、ねじ軸33、ナット部材34、及び伝達部材35を介して、ねじ軸33の軸方向に沿った直線的な移動に変換されて移動部材20に伝達される。これにより、モータ31の回転により、移動部材20は、ねじ軸33の軸方向すなわちエンドエフェクタ1の長手方向に沿って直線的に移動する。なお、移動機構30は、ねじ軸33及びナット部材34を含むいわゆるボールナット機構に換えて、ラックアンドピニオン機構で構成することもできる。更に例えば移動機構30は、エア駆動や電動の直動型シリンダで構成することもできる。
【0036】
また、移動機構30は、
図3等に示すように、ストッパ381、382を有していても良い。ストッパ381、382は、例えばいわゆるストッパボルト等であり、前後の保持部材11、12に設けられている。ストッパ381、382は、伝達部材35に当てて伝達部材35の移動を停止させる機能を有する。すなわち、前端ストッパ381は、伝達部材35の前後方向の移動端を規定する。この場合、伝達部材35の前後方向の移動端を規定する2つのストッパ381、382のうち、少なくとも後端位置を規定する後端ストッパ382は、保持部材12からの突出量を任意に調整できるものであることが望ましい。これにより、伝達部材35の後方側の移動端を任意に調整するこができる。
【0037】
把持機構40は、移動部材20が移動して収穫対象物の果柄を切断した際に、移動部材20との間に果柄を把持する機能を有する。これにより、果柄が切断された収穫対象物が落下しないようにすることができる。本実施形態の場合、把持機構40は、
図2及び
図3等に示すように、把持部材41と、弾性部材42と、を有している。
【0038】
把持部材41は、前側の保持部材11に摺動可能に取り付けられており、前側の保持部材11と環状部材21の受け部213との間に設けられている。また、把持部材41は、エンドエフェクタ1の厚み方向に見た場合に、カバー部材13及び切断刃2と、前側の保持部材11との間に設けられている。そして、エンドエフェクタ1の厚み方向に見た場合に、把持部材41は、移動部材20の少なくとも一部又は全部と、その厚み方向において重なっている。
【0039】
把持部材41は、把持部411、摺動部412、ばね支持部413、及び把持部材側突出部414を有している。把持部411は、移動部材20のうち環状部材21の受け部213に対向する位置に設けられている。この場合、把持部411は、切断刃2及び受け部213に平行に伸びる、すなわちエンドエフェクタ1の幅方向に長い板状に構成されている。また、この場合、
図1に示すように、移動部材20における環状部材21の枠部211と、把持部材41の把持部411とは、切断刃2を含んで環状に形成されており、その内側に収穫対象物を通すことが可能な通過部3を形成している。本実施形態の場合、通過部3は、エンドエフェクタ1の前後方向に長い矩形状に形成されている。この場合、エンドエフェクタ1の長手方向を通過部3の長手方向又は前後方向とする。また、エンドエフェクタ1の幅方向を通過部3の幅方向とする。
【0040】
摺動部412は、把持部411に対して直角方向でかつ前側の保持部材11側へ向かって伸びる板状に構成されている。摺動部412は、
図5に示すように前側の保持部材11の摺動溝111内に摺動可能に配置されている。これにより、把持部材41は、受け部213に対して把持部411を平行の姿勢に保ったまま、エンドエフェクタ1の長手方向に沿って、つまり移動部材20の移動方向に沿って摺動することができる。
【0041】
ばね支持部413は、弾性部材42の両端部のうち前側の保持部材11とは逆側の端部を支持する機能を有している。ばね支持部413は、前側の保持部材11のばね支持部112と対向する位置に設けられている。この場合、ばね支持部413は、例えば前側の保持部材11側へ突出した円筒形状に形成されている。
【0042】
把持部材側突出部414は、
図9に示すように、把持部材41の把持部411に設けられている。移動部材側突出部215は、
図9に示すように、把持部411から前方側へ向かって突出するように形成された突出部である。この場合、把持部材側突出部414は、把持部411の長手方向の全体つまりエンドエフェクタ1の幅方向の略全体に亘って設けられている。この把持部材側突出部414は、移動部材側突出部215と同様に、断面が鋭角に形成することができるが、果柄を切断するものではない。すなわち、把持部材側突出部414も、移動部材側突出部215と同様に、果柄に押し付けられた際にその果柄を切断しないが果柄に食い込む程度に鋭角に形成されている。なお、把持部材側突出部414も、移動部材側突出部215と同様に、例えば多数の角錐形状や円柱形状、若しくは半球状で構成することもできる。
【0043】
弾性部材42は、たとえばコイルばねで構成されている。弾性部材42の両端部は、それぞれ前側の保持部材11のばね支持部112と、把持部材41のばね支持部413とに支持されている。弾性部材42は、把持部材41に対して、前側の保持部材11から前方つまり移動部材20の受け部213側へ向かう弾性力を作用させている。これにより、把持部411を含む把持部材41は、把持部材41に対して弾性的に移動可能に構成されている。
【0044】
把持部411を含む把持部材41は、把持部411に対して受け部213とは反対側への力が作用していない状態では、つまり外力を受けていない状態では、
図9に示すように、切断刃2よりも通過部3の中心側に突出して切断刃2の一方の面、この場合、カバー部材13とは反対側の面を覆っている。また、把持部411を含む把持部材41は、通過部3の中心とは反対方向への力を受けた場合、つまり把持部材41を前側の保持部材11側に押し込む力を受けた場合には、
図13に示すように、切断刃2の刃先よりも通過部3の中心とは反対方向へ移動する。これにより、切断刃2によって果柄を切断可能な程度に切断刃2を露出させる。
【0045】
また、本実施形態の場合、移動部材20における環状部材21の係止部214は、
図11に示すように、移動部材20がベース部材10側へ移動した際に把持部411の長手方向の両端部に係止可能に構成されている。これにより、把持部材41に対する移動部材20の更なる接近が規制されて、受け部213及び移動部材側突出部215と、把持部411及び把持部材側突出部414とが所定距離L1で離間した状態に維持される。
【0046】
すなわち、受け部213及び移動部材側突出部215と、把持部411及び把持部材側突出部414とは、移動部材20がベース部材10に対して相対的に移動して通過部3の内径が最小まで縮小した場合において、所定距離L1を維持した状態で相互に離間している。これにより、エンドエフェクタ1は、果柄を把持する際に、受け部213及び移動部材側突出部215と、把持部411及び把持部材側突出部414とが接触しないため、果柄を潰したり切断したりして、収穫対象物を落としてしまうことを抑制できる。
【0047】
なお、所定距離L1は、0より大きい値であって、かつ例えば果柄の外径の平均値よりもやや小さい値に設定することが望ましい。これにより、エンドエフェクタ1は、移動部材側突出部215及び把持部材側突出部414を果柄に食い込ませて収穫対象物の果柄をより確実に把持することができる。
【0048】
また、移動部材20がベース部材10側へ移動した移動端に位置している状態では、切断刃2と環状部材21の受け部213との間には、所定距離L2の隙間が形成されている。この所定距離L2は、0mm以上の値であって、かつ、人の指が切断刃2と受け部213との間に入り込まない程度又は入り込み難いように小さく設定されている。これにより、移動部材20がベース部材10側へ移動して把持部材41が切断刃2を覆っている状態が解除された場合であっても、切断刃2によって作業者等の指を切ってしまうことを抑制でき、その結果、安全性の向上が図られる。
【0049】
この構成にいて、エンドエフェクタ1は、
図1及び
図10に示すように、移動機構30を駆動させて移動部材20をベース部材10側つまりエンドエフェクタ1の後方へ引き込むように移動させることで、通過部3を縮小させて最終的には消失させることができる。このとき、通過部3の内側に収穫対象物の果柄93が存在していれば、移動部材20の受け部213と切断刃2とでその果柄93を挟み込んで切断するとともに、切断した果柄93を、把持部材41の把持部411及び把持部材側突出部414と環状部材21の受け部213及び移動部材側突出部215との間に挟み込んで把持することができる。
【0050】
また、エンドエフェクタ1は、移動機構30を駆動させて移動部材20をベース部材10とは反対側つまりエンドエフェクタ1の前方へ押し出すように前進させることで、通過部3を拡大させることができる。これにより、把持部材41の把持部411及び把持部材側突出部414と環状部材21の受け部213及び移動部材側突出部215とで挟み込んで保持していた果柄93を解放することができる。
【0051】
<農作物収穫システム>
次に、エンドエフェクタ1を用いた農作物収穫システムの一例について、
図14~
図31も参照して説明する。
図14に示す農作物収穫システム50は、収穫対象物91の農作物にミニトマトを設定した例である。本実施形態では、複数の実で構成された房全体を収穫対象物91とする。本実施形態の農作物収穫システム50は、複数のミニトマトを房ごと収穫することができる。
【0052】
ミニトマトのような収穫対象物91は、主茎92から果柄93を介して垂れ下がった状態で結実している。市場での販売を目的とした商品用のミニトマトは、ビニールハウスで育てられることが多い。この場合、主茎92の先端部は、ビニールハウスの天井付近に配置されたレールに吊り下げられている。これにより、主茎92は、地面から天井付近へ向かって斜め上方に傾斜するように伸びている。
【0053】
なお、本実施形態の農作物収穫システム50の収穫対象物は、その実が主茎又は結実母枝から垂れ下がった状態で結実するものであれば、ミニトマトに限定されない。また、収穫対象物は、必ずしも主茎又は結実母枝から垂直下方へ垂れ下がっている必要はない。更には、収穫対象物は、主茎又は結実母枝から上方へ向かって実っているものでも良い。なお、本実施形態では、主茎及び枝とは、いずれも収穫作業によって生じる損傷等から保護する対象であり、技術的には同義のものとして扱う。
【0054】
本実施形態の農作物収穫システム50は、エンドエフェクタ1に加えて、視覚装置51、ロボットアーム52、運搬装置53、及び回収箱54を更に備えている。視覚装置51は、収穫対象物91の位置情報を含む視覚情報を取得可能な装置である。視覚装置51は、例えばステレオカメラ、ToF(Time of Flight)カメラ、ストラクチャードライトスキャナ等の3次元の空間及び物体を計測することができる装置である。
【0055】
本実施形態の場合、視覚装置51が取得する視覚情報には、収穫対象物91の位置情報及び外形形状情報の他、色情報も含まれる。また、視覚装置51が取得する視覚情報には、主茎92の位置情報、外形形状情報、及び色情報も含まれるが、果柄93の位置情報、外形形状情報、及び色情報は含んでいても含んでいなくても良い。すなわち、本実施形態の場合、視覚装置51は、収穫対象物91及び主茎92の位置情報、外形形状情報、及び色情報については取得するが、果柄93の位置情報、外形形状情報、及び色情報については必ずしも取得する必要はない。
【0056】
本実施形態の場合、視覚装置51は、
図3等に示すように取り付け用のステー17を介してエンドエフェクタ1のベース部材10、この場合、カバー部材13に取り付けられている。すなわち、本実施形態の場合、エンドエフェクタ1は、視覚装置51を含んで構成されている。この場合、エンドエフェクタ1の移動に伴って視覚装置51も移動する。なお、視覚装置51は、必ずしもエンドエフェクタ1に取り付けられている必要はない。視覚装置51は、例えばロボットアーム52に取り付けても良いし、運搬装置53に取り付けても良い。また、視覚装置51は、例えば図示しないビニールハウスの構造物に取り付けて、常に定位置を維持する構成としても良い。
【0057】
ロボットアーム52は、例えば複数の駆動軸、この場合6つの駆動軸を有する6軸垂直多関節ロボットである。エンドエフェクタ1は、取付部材15を介してロボットアーム52の手先に取り付けられている。ロボットアーム52は、エンドエフェクタ1を任意の位置に移動させるとともに任意の姿勢に回転させることができる。
【0058】
運搬装置53は、エンドエフェクタ1を取り付けたロボットアーム52と、回収箱54とを、収穫対象物91まで運搬するための構成である。運搬装置53は、例えばタイヤ532を駆動するための図示しないモータを有しており、外部からの制御等によって任意の位置に移動することができる。回収箱54は、エンドエフェクタ1で果柄93を切断して収穫した収穫対象物91を収容し回収するための箱である。回収箱54は、例えば上側か開口した容器状に形成されており、運搬装置53に設置されている。なお、例えばビニールハウス等の設備が、ベルトコンベヤー等のような収穫対象物91を搬送する装置を備えている場合は、回収箱54を削減することができる。
【0059】
また、農作物収穫システム50は、エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531を備えている。エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531は、それぞれエンドエフェクタ1の主に移動機構30、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に付随する例えば専用の装置であり、例えば運搬装置53に設けられている。
【0060】
エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531は、それぞれ例えば図示しないCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータと、エンドエフェクタ1の主に移動機構30、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に駆動力となる電力を供給するための電力回路等を主体に構成されている。エンドエフェクタ1の移動機構30、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53は、それぞれエンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531からの指令に基づいて駆動制御される。
【0061】
制御装置60は、エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531を介して、それぞれエンドエフェクタ1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53を制御するためのものである。制御装置60は、エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531のそれぞれに有線又は無線によって通信可能に接続されている。この場合、制御装置60は、例えばLANやWAN、若しくはインターネットや携帯電話回線等の電気通信回線80を介してエンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531に接続されていても良い。
【0062】
制御装置60は、
図15に示すように、例えばCPU601や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域602を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御装置60は、エンドエフェクタ1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に対して駆動指令を出すとともに、エンドエフェクタ1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53からフィードバックを受ける。制御装置60は、エンドエフェクタ1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53のいずれにも付随しない汎用の制御装置である。すなわち、制御装置60は、エンドエフェクタ制御部4、視覚装置制御部511、ロボットアーム制御部521、及び運搬装置制御部531に対して指令を出す上位の装置である。制御装置60は、例えばパーソナルコンピュータやサーバ等で構成することができる。
【0063】
記憶領域602は、農作物収穫システム用のプログラムを記憶している。制御装置60は、CPU601において農作物収穫システム用のプログラムを実行することにより、収穫対象物検出処理部61、位置情報特定処理部62、傾け角度設定処理部63、移動経路生成処理部64、接近処理部65、移動処理部66、傾け処理部67、切断処理部68、負荷検出処理部69、過負荷時復帰処理部70、及び回収処理部71等を、ソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、これら収穫対象物検出処理部61、位置情報特定処理部62、傾け角度設定処理部63、移動経路生成処理部64、接近処理部65、移動処理部66、傾け処理部67、切断処理部68、負荷検出処理部69、過負荷時復帰処理部70、及び回収処理部71は、例えば制御装置60と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。
【0064】
収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物検出処理を実行可能である。収穫対象物検出処理は、視覚装置51で取得した視覚情報から、視覚装置51の視野内に収穫対象物91が存在しているか否かを検出する処理を含む。この場合、視覚装置51で取得する視覚情報は、
図16に示すように、ポイントクラウドと称される点群データで構成されている。この視覚情報は、例えばX-Y-Z直交座標系上に配置された点群で構成されており、各点についてのRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)の色情報と、視覚装置51を基準とした深度情報(D:Depth)つまりX-Y-Z直交座標系における位置情報と、を含んでいる。
図16の例の場合、収穫対象物であるミニトマト91については赤色が検出され、主茎92については緑色が検出されている。なお、視覚装置51は、視覚情報として例えば赤外線カメラによりモノクロ値を取得しても良い。
【0065】
収穫対象物検出処理部61は、点群の外形を認識することで、収穫対象物91や主茎92の外形形状を認識することができる。この場合、果柄93は、収穫対象物91や主茎92に比べて細い。そのため、視覚装置51によって果柄93の視覚情報を取得しようとすると、視覚装置51の性能や分解能を上げる必要があり、ハードウェアコストが増大する。また、視覚装置51の処理負荷及び、取得した視覚情報を用いた制御装置60による処理負荷も増大する。そこで、本実施形態においては、視覚装置51は、果柄93の視覚情報を積極的には取得しないように構成している。これにより、視覚装置51や制御装置60の処理負荷を低減することができる。
【0066】
収穫対象物検出処理部61は、まず、視覚装置51で取得した視覚情報から、収穫対象物91の色値が高い点群データを抽出する。本実施形態の場合、収穫対象物検出処理部61は、ミニトマト91の色である赤色値が高い点群データを抽出する。そして、収穫対象物検出処理部61は、例えば取得した視覚情報の中に赤色値の高い点群が所定範囲以上存在している場合には、取得した視覚情報に収穫対象物91が含まれている、つまり視覚装置51の視野内に収穫対象物であるミニトマト91が存在していると判断する。
【0067】
一方、収穫対象物検出処理部61は、取得した視覚情報の中に存在する赤色値の高い点群が所定範囲未満である場合には、取得した視覚情報に収穫対象物91が含まれていない、つまり視覚装置51の視野内に収穫対象物であるミニトマト91が存在していないと判断する。このように、収穫対象物検出処理部61は、取得した視覚情報のうち赤色値の高い点群を収穫対象物であるミニトマト91であると認識する。なお、収穫対象物検出処理部61は、視覚情報に含まれるX-Y-Z直交座標系上に配置された点群の情報すなわち3次元点群情報や、赤外線カメラによりモノクロ値から、収穫対象物91や主茎92を認識する構成としても良い。
【0068】
位置情報特定処理部62は、位置特定処理を実行可能である。位置特定処理は、
図17に示すように、視覚装置51で取得した視覚情報から収穫対象物91の先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とを含む収穫対象物91の位置を特定する処理を含む。本実施形態において、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)は、主茎92を基準にして収穫対象物91全体の先端側の位置を意味し、収穫対象物91全体において主茎92から最も離れた端部である。また、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)は、主茎92を基準にして収穫対象物91全体の基端側の位置を意味し、収穫対象物91全体において主茎92に最も近い端部である。
【0069】
この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方とは、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)に対して収穫対象物91全体の外方つまり先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)に対して主茎92から離れる方向を意味する。また、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方とは、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に対して収穫対象物91全体の外方つまり基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に対して主茎92に近づく方向を意味する。
【0070】
ミニトマトのような収穫対象物91は主茎92から垂れ下がっている。そのため、この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)は収穫対象物91の下端位置となり、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)は、収穫対象物91の上端位置となる。以下では、収穫対象物91の先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)とし、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と称することもある。この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方は、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の下方となり、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方は、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の上方となる。
【0071】
位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データの中から、Z値が最小となる点を抽出して収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を特定するとともに、Z値が最大となる点を抽出して収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定する。
【0072】
ここで、実際にZ値が最小となっている最下点及びZ値が最大となる最上点のデータのみを用いて下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定すると、視覚装置51で取得した視覚情報にノイズ等が混ざっていた場合に、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の座標にブレが生じ易くなる。そこで、本実施形態の場合、位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データのうち、Z値が最小となる最下点、及びその最下点からZ値がプラス方向に所定範囲内例えば上方に20mmの範囲内の点群データの平均値を算出し、その平均値を下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)とする。
【0073】
同様に、位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データのうち、Z値が最大となる最大点、及びその最大点からZ値がマイナス方向に所定範囲内例えば下方に20mmの範囲内の点群データの平均値を算出し、その平均値を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とする。
【0074】
また、位置情報特定処理部62は、上述した位置特定処理において、収穫対象物91と繋がっている果柄93の位置情報を用いることなく収穫対象物91の位置情報、この場合、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)、及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定することができる。
【0075】
また、
図16等に示すように、収穫対象物検出処理部61は、視覚装置51で取得した視覚情報から、主茎92についての視覚情報、この場合、主茎92の位置情報を含む形状、及び色情報を取得することができる。収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物91の場合と同様に、視覚装置51で取得した視覚情報から、主茎92の色である緑色値が高い点群データを抽出する。そして、収穫対象物検出処理部61は、例えば取得した視覚情報の中に緑色値の高い点群が所定範囲以上存在している場合には、その緑色値の高い点群を主茎92であると認識する。
【0076】
傾け角度設定処理部63は、傾け角度設定処理を実行可能である。傾け角度設定処理は、傾け処理の際の角度、すなわち、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きに沿うように傾けるための傾け角度θを設定する処理である。この場合、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きに沿うように傾けるとは、通過部3の面方向が、主茎92の長手方向と極力平行になるように、エンドエフェクタ1を傾けることを意味する。なお、本実施形態において、主茎92の傾き角度及び傾け角度θは、いずれも水平を基準にしている。
【0077】
本実施形態の場合、傾け角度設定処理は、傾け角度θを予め設定された一定値に設定する処理を含んでいる。すなわち、本実施形態の場合、傾け角度θは、収穫対象物91の基端位置つまり上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)や主茎92の実際の傾き等には関わらず変化しない一定角度である。この場合、傾け角度θは、0°~90°の範囲内で設定された一定値、例えば60°に設定されている。この一定値は、例えばユーザが予め登録した値、または視覚装置51から取得した複数の主茎92の視覚情報から算出した値等であり、予め制御装置60の記憶領域602に記憶される。この場合、傾け角度θは、例えば複数の主茎92の傾き角度を計測し、その傾き角度の平均値、又は中央値、若しくは最頻値とすることができる。
【0078】
移動経路生成処理部64は、移動経路生成処理を実行可能である。本実施形態の場合、移動経路生成処理は、
図17に示すように、第1移動経路R1と、第2移動経路R2と、を生成する処理を含む。第1移動経路R1は、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きに沿って傾けるための傾け動作を伴わない移動経路である。この場合、第1移動経路R1は、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を通り目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に至るまでの移動経路である。
【0079】
第1移動経路R1は、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)とを繋いだ経路とすることができる。この場合、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)とは、直線的に繋いでも良いし、収穫対象物91に概ね沿うように曲線的に繋いでも良い。
【0080】
また、第2移動経路R2は、第1移動経路R1後における移動経路であり、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きに沿って傾けるための傾け動作を伴う移動経路である。この場合、第2移動経路R2は、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)においてエンドエフェクタ1を傾け角度θで回転させる、つまりエンドエフェクタ1を傾けた際に、通過部3が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を上方に通り越して終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に至るまでの移動経路である。
【0081】
この場合、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から所定距離直下の位置、例えば数十mm下方の位置に設定することができる。また、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)は、収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)から所定距離直上の位置、例えば数十mm上方の位置に設定することができる。
【0082】
また、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)は、エンドエフェクタ1を傾け角度θで傾けることで通過部3が収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過する位置、詳細に言えば通過すると想定される位置に設定することができる。この場合、エンドエフェクタ1側の移動の基準は、例えば
図1に示す基準点Pcに設定されている。基準点Pcは、通過部3内における任意の位置、例えば中心位置に設定されている。そして、例えばエンドエフェクタ1を傾け角度θで傾けた状態で基準点Pcと終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)とを一致させた姿勢を、果柄93を切断する際の姿勢に設定する。
【0083】
この場合、移動経路生成処理部64は、
図18に示すように、傾き処理におけるエンドエフェクタ1の回転軸Axから基準点Pcまでの距離を距離Lとすると、この距離Lと傾け角度θとから、例えば次の式1に基づいて目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)を算出することができる。
Pg(Xg,Yg,Zg)=Pe(Xe,Ye,Ze)+(0,L-Lcosθ,-Lsinθ)・・・(式1)
【0084】
本実施形態の場合、傾け処理におけるエンドエフェクタ1の回転軸Axは、第1部材であるベース部材10及び第2部材である移動部材20に対して固定位置に設定されている。本実施形態の場合、回転軸Axは、
図19に示すように、移動部材20のうち移動部材20の進入方向へ向かって伸びる2つの棒状の部分、つまり回転部材22が取り付けられている2つの棒状の部分のうちのいずれか一方に設定されている。
【0085】
なお、本実施形態において、進入方向とは、エンドエフェクタ1が収穫対象物91の下方へ移動する際における、収穫対象物91に対するエンドエフェクタ1の進入方向を意味する。本実施形態の場合、エンドエフェクタ1の進入方向は、エンドエフェクタ1におけるベース部材10に対する移動部材20の前進方向と概ね一致している。なお、エンドエフェクタ1の進入方向と、エンドエフェクタ1におけるベース部材10に対する移動部材20の前進方向とは、必ずしも一致している必要はない。
【0086】
回転軸Axの位置は、主茎92の傾きの方向に応じて変更することができる。本実施形態の場合、主茎92は、
図16及び
図19(A)に示すように、ロボットアーム52側から、つまり運搬装置53側から見て左側が低く右側が高いいわゆる右肩上がりに延びている。この場合、エンドエフェクタ1を収穫対象物91の直下に移動させた際、環状部材21において進入方向へ伸びる左右の棒状部分のうち左側部分が、右側部分よりも主茎92に近くなる。そのため、回転軸Axは、移動部材20において進入方向へ伸びる左右の棒状部分のうち左側部分に設定される。なお、主茎92の傾きが上述したものの逆、つまり左肩上がりに延びている場合、回転軸Axは、移動部材20のうち進入方向へ伸びる左右の棒状部分のうち主茎92に近い方の右側部分に設定される。
【0087】
接近処理部65は、接近処理を実行可能である。接近処理は、ロボットアーム52を駆動制御して、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方に設定された始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで、エンドエフェクタ1を接近させる処理を含んでいる。すなわち、接近処理部65は、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動制御し、
図19に示すように例えば通過部3の面方向が水平方向を向いた姿勢を維持した状態で基準点Pcが始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と一致するようにエンドエフェクタ1を収穫対象物91の下方へ進入させる。
【0088】
移動処理部66は、移動処理を実行可能である。移動処理は、
図21~
図23に示すように、ロボットアーム52を駆動制御して、エンドエフェクタ1を下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)側へ向かって移動させて、通過部3に収穫対象物91を通す処理を含む。本実施形態の場合、移動処理は、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)までエンドエフェクタ1を移動させる処理を含む。目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)は、上述したように、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達したエンドエフェクタ1が、その目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)において傾け角度θで傾けられることで通過部3が収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過する位置に設定されている。
【0089】
傾け処理部67は、傾け処理を実行可能である。傾け処理は、
図24に示すように、エンドエフェクタ1を主茎92に沿うように傾けることで、通過部3が収穫対象物91を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過した状態にする処理を含む。本実施形態の場合、傾け処理部67は、傾け角度設定処理で設定された傾け角度θに基づいて傾け処理を実行する。また、本実施形態の場合、傾け処理部67は、エンドエフェクタ1が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達した場合に傾け処理を実行する。
【0090】
また、本実施形態の場合、傾け角度θは、主茎92の実際の傾き等に関わらない一定値、例えば60°に設定されている。そのため、移動処理部66による移動処理の実行によってエンドエフェクタ1が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達すると、傾け処理部67は、傾け処理を実行し、エンドエフェクタ1を傾け角度θ、例えば60°に傾ける。これにより、エンドエフェクタ1は、
図24に示すように、主茎92に沿うように傾いているとともに通過部3が収穫対象物91を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過した状態になる。
【0091】
切断処理部68は、切断処理を実行可能である。切断処理は、移動処理によって通過部3に対する収穫対象物91の通過が完了した後に実行される。切断処理は、
図25~
図30に示すように、エンドエフェクタ1を動作させて、つまりエンドエフェクタ制御部4を介して移動機構30を駆動し、移動部材20をベース部材10側へ引き込んで通過部3を縮小させることで、通過部3の内側に通された果柄93を切断する処理を含む。
【0092】
負荷検出処理部69は、移動部材20の移動の際に移動部材20に作用する負荷の検出を行う。これにより、負荷検出処理部69は、移動部材20が正常に移動しているか否かを検出する。すなわち、負荷検出処理部69は、移動部材20の移動の際の過負荷を検出することで、主茎92や果柄93などを巻き込んで移動部材20の移動が規制されていないか等を検出することができる。モータ31がエンコーダを備える場合、負荷検出処理部69は、そのエンコーダが出力する信号に基づいて、移動部材20に作用する負荷を検出しても良い。また、負荷検出処理部69は、モータ31の電流値つまりトルクを計測することで、移動部材20に作用する負荷を検出することもできる。
【0093】
また、エンコーダや電流値を計測する代わりに、例えば移動部材20の移動位置を検出するためのセンサ等を用いても良い。この場合、センサは、例えば移動部材20の移動端に設けられている。そして、負荷検出処理部69は、エンドエフェクタ制御部4が移動部材20を移動させる制御を行っているにもかかわらず、センサの検出が無ければ、移動部材20の移動が規制されて過負荷が生じていると判断する。
【0094】
過負荷時復帰処理部70は、過負荷時復帰処理を実行可能である。過負荷時復帰処理は、切断処理を実行している際に過負荷が検出された場合に、移動部材20による果柄93の切断及び把持を解放する処理を含む。過負荷時復帰処理部70は、過負荷時復帰処理を実行すると、エンドエフェクタ制御部4を介して移動機構30を駆動制御し、移動部材20をエンドエフェクタ1の前方つまり開く方向へ移動させて通過部3を拡大する。これにより、移動部材20と把持部材41とによる果柄93の把持が解放される。
【0095】
そして、過負荷時復帰処理部70は、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動制御し、移動処理とは逆の順、すなわち、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)から、収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)及び下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を通り、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)に至るように、移動経路R2、R1に沿って上述の場合とは逆の順序でロボットアーム52を移動させる。
【0096】
回収処理部71は、回収処理を実行可能である。回収処理は、切断処理によって果柄93を切断及び把持している収穫対象物91を、回収箱54に投入して収穫対象物91を回収する処理である。回収処理部71は、切断処理後、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させて、収穫対象物91の果柄93を把持した状態で回収箱54の上方近傍までエンドエフェクタ1を移動させる。そして、回収処理部71は、回収箱54の上方近傍でエンドエフェクタ1による果柄93の把持を解放し、収穫対象物91を回収箱54内に落下又は配置させる。このようにして、主茎92から切り離された収穫対象物91が回収箱54内に回収される。
【0097】
次に、
図20のフローチャートに沿って、農作物収穫システム50において実行される、収穫対象物91を収穫するための収穫動作の一連の制御内容について説明する。なお、以下の説明において、各処理部61~71で実行される処理の主体は制御装置60とする。本実施形態では、主茎92に沿って収穫区間が設定されている。運搬装置53は、主茎92に沿って移動し、主茎92に実っている収穫対象物91を主茎92に沿って順次収穫していく。
【0098】
図20のフローチャートにおいて、ステップS13、S14における処理は、収穫対象物検出処理の一例である。ステップS15における処理は、位置特定処理の一例である。ステップS16における処理は、傾け角度設定処理の一例である。ステップS17、S18における処理は、移動経路生成処理の一例である。ステップS19における処理は、接近処理の一例である。ステップS20における処理は、移動処理の一例である。ステップS21における処理は、傾け処理の一例である。S22における処理は、切断処理の一例である。ステップS23における処理は、過負荷検出処理の一例である。ステップS24、25における処理は、回収処理の一例である。そして、ステップS26、S27における処理は、過負荷時復帰処理の一例である。
【0099】
制御装置60は、まずステップS11において、運搬装置制御部531から受信した情報等に基づき、運搬装置53の現在の位置を特定し、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点であるか否かを判断する。制御装置60は、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点である場合(ステップS11でYES)、次の収穫対象物91は存在しないと判断し、一連の制御を終了する。一方、制御装置60は、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点でない場合(ステップS11でNO)、収穫対象物91が未だ存在すると判断する。そして、制御装置60は、ステップS12に処理を移行し、運搬装置制御部531を介して運搬装置53を駆動させ、次の収穫地点へ運搬装置53を移動させる。
【0100】
次に、制御装置60は、ステップS13、S14において、収穫対象物検出処理を実行する。制御装置60は、ステップS13において、視覚装置制御部511を介して視覚装置51を駆動させ、収穫対象物91側を撮像する。そして、制御装置60は、ステップS14において、視覚装置51で撮像した視覚情報、この場合、画像情報に収穫対象物91が含まれているか否かを判断する。
【0101】
ステップS14において収穫対象物91が検出されなかった場合(ステップS14でNO)、制御装置60は、運搬装置53を駆動させて、運搬装置53を次の収穫地点へ移動させる。一方、ステップS14において収穫対象物91が検出された場合(ステップS14でYES)、制御装置60は、ステップS15へ処理を移行させる。制御装置60は、ステップS15において位置特定処理を実行し、視覚装置51で取得した視覚情報に基づき、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定する。
【0102】
次に、制御装置60は、ステップS16において傾け角度設定処理を実行する。本実施形態の場合、傾け角度θは一定値、例えば60°に設定されている。そのため、制御装置60は、ステップS15で特定した収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の値に関わらず、傾け角度θを画一的に60°に設定する。
【0103】
次に、制御装置60は、ステップS17、S18において移動経路生成処理を実行する。まず制御装置60は、ステップS17において、ステップS15で特定した下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に基づき、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を算出する。また、制御装置60は、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)と、エンドエフェクタ1の回転軸Axから基準点Pcまでの距離Lと、及びステップS16で設定した傾け角度θとに基づき、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)を算出する。次に、制御装置60は、ステップS18へ処理を移行し、エンドエフェクタ1の移動経路である第1移動経路R1、第2移動経路R2を生成する。
【0104】
次に、制御装置60は、ステップS19において接近処理を実行し、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させることで、エンドエフェクタ1を始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで移動させる。この場合、制御装置60は、
図21に示すように、エンドエフェクタ1の基準点Pcが始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と一致するようにエンドエフェクタ1を移動させる。
【0105】
その後、制御装置60は、ステップS20において移動処理を実行し、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させることで、エンドエフェクタ1を第1移動経路R1に沿って目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)まで移動させる。これにより、
図22及び
図23に示すように、制御装置60は、エンドエフェクタ1を、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)側へ向かって移動させて通過部3に収穫対象物91を通す。
【0106】
次に、制御装置60は、ステップS21において傾け処理を実行し、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させることで、エンドエフェクタ1の回転軸Axを中心に傾け角度θ傾ける。これにより、
図24に示すように、制御装置60は、エンドエフェクタ1を主茎92に沿うように傾けて通過部3が収穫対象物91を上端位置Pt(Xt、Yx,Zt)の外方へ通過した状態にする。
【0107】
このように、エンドエフェクタ1は、通過部3に収穫対象物91を通して収穫対象物91を下方からすくい上げるように目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)まで移動した後、更に傾け角度θ傾けられることで、収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を主茎92側へ超えた位置に移動する。このとき、通過部3の内側には、収穫対象物91と主茎92とを繋ぐ果柄93が存在している。そして、収穫対象物91と主茎92とは、それぞれ通過部3に対して下方外側及び上方外側に位置している。
【0108】
ここで、エンドエフェクタ1の移動の途中で移動部材20が収穫対象物91に接触することも想定される。この場合、何らの対応もしないと、移動部材20に接触した収穫対象物91は、移動部材20に引っ掛かって、エンドエフェクタ1に引っ張られて傷つくおそれがある。これに対し、本実施形態の移動部材20は、外力を受けて回転可能な回転部材22を有している。そのため、収穫対象物91が移動部材20に接触したとしても、回転部材22が回転することにより、エンドエフェクタ1が移動する際に収穫対象物91が移動部材20に引っ掛かることを抑制できる。これにより収穫対象物91が傷ついてしまい商品価値が低下してしまうことを更に効果的に抑制することができる。
【0109】
次に、制御装置60は、
図20のステップS22において切断処理を実行し、エンドエフェクタ制御部4を介してエンドエフェクタ1を駆動させる。制御装置60は、移動機構30のモータ31を駆動させて移動部材20をベース部材10側へ引き込む。すると、
図25~
図27にかけて示すように、まず移動部材20の受け部213が果柄93に接触し、これにより移動部材20の移動に伴って果柄93がベース部材10側に引き込まれる。
【0110】
そして、移動部材20が更にベース部材10側へ移動し、移動部材20の係止部214が把持部材41の両端部に接触すると、
図28に示すように、移動部材20の受け部213と把持部材41の把持部411との間の距離が一定に維持される。これにより、果柄93は、移動部材側突出部215と把持部材側突出部414とが果柄93に食い込んだ状態で、移動部材20の受け部213と把持部材41の把持部411との間に挟まれて把持される。そして、
図29に示すように、移動部材20が更にベース部材10側へ移動すると、
図30に示すように、切断刃2によって果柄93が切断される。これにより、収穫対象物91は、主茎92から分離される。
【0111】
図20のステップS22において切断処理を実行している間、制御装置60は、ステップS23において過負荷検出処理を実行する。過負荷の検出が無かった場合(ステップS23でNO)、制御装置60は、主茎92や果柄93が絡まることなく果柄93が切断されたと判断し、ステップS24、S25へ処理を移行させる。
【0112】
制御装置60は、ステップS24、S25において、回収処理を実行する。この場合、制御装置60は、まずステップS24において、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させ、
図31に示すように、エンドエフェクタ1が水平を向くように回転させて傾きを復帰させるとともに、エンドエフェクタ1を回収箱54の上方近傍まで移動させる。そして、エンドエフェクタ1を回収箱54の上方近傍まで移動すると、制御装置60は、ステップS25において、エンドエフェクタ制御部4を介して移動機構30を駆動制御し、
図32及び
図33に示すように、移動部材20をエンドエフェクタ1の前方つまり開方向へ移動させて、果柄93の把持を解放し、収穫対象物91を回収箱54内に落下又は配置させる。このようにして、主茎92から切り離された収穫対象物91が回収箱54内に回収される。そして、制御装置60は、ステップS11へ処理を戻し、次の収穫対象物91の収穫を行う。
【0113】
なお、エンドエフェクタ1が果柄93を切断してから収穫対象物91を回収箱54に落下させるまでの間において、エンドエフェクタ1は、必ずしも水平の姿勢に戻っている必要はない。制御装置60は、エンドエフェクタ1を、水平の姿勢に戻すことなく傾けた状態で回収箱54の上方近傍まで移動させても良い。
【0114】
一方、ステップS23において過負荷の検出が検出された場合(ステップS23でYES)、つまり、切断処理を行ったにもかかわらず移動部材20がベース部材10側の移動端まで移動できなかった場合、制御装置60は、主茎92や果柄93が絡まって果柄93の切断が適切に行われていないと判断し、ステップS26、S27へ処理を移行させる。
【0115】
制御装置60は、ステップS26、S27において、過負荷時復帰処理を実行する。この場合、制御装置60は、まずステップS26において、エンドエフェクタ制御部4を介して移動機構30を駆動制御し、移動部材20をエンドエフェクタ1の前方つまり開方向へ移動させて果柄93の把持を解放する。次に、制御装置60は、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させ、エンドエフェクタ1の基準点Pcが、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)から、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を通り、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)に至るように、第2移動経路R2及び第1移動経路R1に沿って上述した順序とは逆方向に移動させる。そして、制御装置60は、ロボットアーム制御部521を介してロボットアーム52を駆動させ、エンドエフェクタ1を初期位置つまり運搬装置53が駆動する際の位置に戻し、ステップS11へ処理を戻し、次の収穫対象物91の収穫を行う。
【0116】
以上説明した実施形態によれば、農作物収穫システム50は、エンドエフェクタ1と、視覚装置51と、ロボットアーム52と、を備える。エンドエフェクタ1は、主茎92又は枝に結実した収穫対象物91に対し果柄93を切断して収穫対象物91を収穫するためのものである。エンドエフェクタ1は、第1部材としてのベース部材10と、第2部材としての移動部材20と、移動機構30と、を備える。ベース部材10は、果柄93を切断するための切断刃2が設けられている。移動部材20は、ベース部材10に対して相対的に移動可能に構成されている。移動機構30は、ベース部材10に対して移動部材20を相対的に移動させる機能を有する。
【0117】
ベース部材10及び移動部材20のいずれか一方又は両方は、切断刃2を含んで環状に構成されてその環状の内側に収穫対象物91を通すことが可能な通過部3を形成する。本実施形態の場合、ベース部材10と移動部材20とは、切断刃2を含んで環状に構成されており、その環状の内側に収穫対象物91を通すことが可能な通過部3を形成している。そして、移動機構30は、通過部3の内側に果柄93を通した状態でベース部材10と移動部材20とを相対的に移動させて通過部3を縮小させる。これにより、エンドエフェクタ1は、第2部材である移動部材20と切断刃2とで果柄93を挟み込んで切断する。
【0118】
ここで、例えばハサミ形状のエンドエフェクタによって果柄93を切断しようとした場合、ハサミ形状のエンドエフェクタを主茎92や枝を切断できる位置まで移動する際に、果柄93や枝の伸びる方向に対してハサミ形状のエンドエフェクタを直角方向に接近させる必要がある。すると、ハサミ形状のエンドエフェクタを移動させる際に刃先部分が主茎92や枝に接触して、主茎92や枝を傷つけてしまうおそれがある。
【0119】
一方、本実施形態によれば、エンドエフェクタ1は、主茎92等から垂れ下がった収穫対象物91に対し、収穫対象物91の下方から収穫対象物91全体をすくうようにして通過部3に通すことで、エンドエフェクタを主茎92や枝を切断できる位置まで移動させることができる。その際、移動部材20は、切断刃2の周囲を囲っているため、主茎92が切断刃2に接触することを抑制でき、その結果、切断刃2によって主茎92や枝を傷つけてしまうことを抑制できて安全に収穫対象物91を収穫することができるという優れた効果が得られる。
【0120】
第2部材としての移動部材20は、剛性を有する部材によって環状に形成されている。すなわち、本実施形態において移動部材20は、環状部材21を有している。そして、環状部材21は、例えば剛性を有する金属や樹脂などによって全体として閉じた環状に形成されている。これによれば、環状部材21の自重やエンドエフェクタ1を移動させる際の振動等によって環状部材21の形状やサイズすなわち通過部3の形状やサイズが変化してしまうことを抑制できる。これにより、エンドエフェクタ1を移動させて通過部3内に収穫対象物91を通し易くなり、その結果、エンドエフェクタ1による収穫対象物91の収穫の成功率を向上させることができる。
【0121】
切断刃2は、通過部3の幅方向の半分以上に亘って設けられている。これによれば、エンドエフェクタ1は、移動部材20を移動させて通過部3を縮小させた際、つまり移動部材20の移動によって果柄93を切断刃2側に引き寄せる際に、果柄93を切断刃2に精密に案内しなくても、幅の広い切断刃2によって果柄93を容易に切断することができる。これにより、比較的粗い位置制御でも、幅の広い切断刃2によって果柄93を容易に切断することができる。その結果、ロボットアーム52の制御負荷が低減されるとともに、エンドエフェクタ1による収穫対象物91の収穫の成功率を更に向上させることができる。
【0122】
また、エンドエフェクタ1は、把持機構40を更に備えている。把持機構40は、第1部材としてのベース部材10に設けられている。把持機構40は、ベース部材10と移動部材20とが相対的に移動して通過部3の内径を縮小させることで切断刃2によって果柄93を切断した場合に、移動部材20に受け部213との間に、切断した果柄93を挟み込んで把持する機能を有する。
【0123】
これによれば、エンドエフェクタ1は、切断した果柄93を把持することで、収穫対象物91がエンドエフェクタ1から落下してしまうことを抑制できる。これにより、エンドエフェクタ1による収穫対象物91の収穫の成功率を向上させることができる。また、落下によって収穫対象物91が傷ついてしまい、商品価値が低下してしまうことを抑制できる。
【0124】
把持機構40は、第1部材であるベース部材10に対して弾性的に移動可能に構成されている。把持機構40は、把持部材41を有している。把持部材41は、果柄93を把持する際に、果柄93に接触する把持部411を有している。把持部材41は、把持部411に力が作用していない状態では切断刃2よりも通過部3の中心側に突出しており、切断刃2の一方の面を覆っている。本実施形態の場合、把持部材41は、把持部411に力が作用していない状態では切断刃2より前方側に突出しており、切断刃2におけるカバー部材13側の面を覆っている。これにより、例えば作業者の手指が切断刃2に触れてしまい怪我等をしてしまうことを抑制でき、その結果、作業時の作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0125】
また、把持機構40の把持部材41は、通過部3の中心とは反対方向への力を受けた場合には切断刃2の刃先よりも通過部3の中心とは反対方向へ移動する。本実施形態の場合、把持部材41は、エンドエフェクタ1の後方側への力を受けた場合には切断刃2の刃先よりも後方側へ引っ込み、これにより切断刃2が露出する。これにより、エンドエフェクタ1は、切断刃2によって果柄93を確実に切断することができる。
【0126】
ここで、本願発明者は、把持機構40と移動部材20の受け部213とによって果柄93を把持する際に、把持機構40と移動部材20の受け部213とが接触する程度まで接近させてしまうと、果柄93を押し潰してしまい、その結果、果柄93から水分が滲み出てその水分によって果柄93が滑り易くなることを見出した。そして、果柄93が滑り易くなると、把持機構40と移動部材20の受け部213との間から果柄93が滑り落ちて収穫対象物91が落下する可能性が高まる。
【0127】
そこで、本実施形態において、把持機構40と受け部213とは、ベース部材10と移動部材20とが相対的に移動して通過部3の内径が最小まで縮小した場合において相互に離間している。すなわち、把持機構40における把持部材41の把持部411と、移動部材20における環状部材21の受け部213とは、移動部材20がベース部材10に接近する方向に移動して後方側の移動端まで移動した状態において、
図13に示すように、距離L1の隙間が形成されている。
【0128】
これによれば、エンドエフェクタ1は、把持機構40と移動部材20の受け部213とによって果柄93を把持する際に、果柄93を潰してしまうことを抑制できる。これにより、果柄93を把持する際に果柄93から水分が滲み出てくることを抑制でき、その結果、把持機構40と移動部材20の受け部213との間から果柄93が滑り落ちて収穫対象物91が落下することを極力防ぐことができる。
【0129】
ここで、収穫対象物91、主茎92、及び果柄93の形状等は農作物であることから一定ではない。例えば果柄93が短いもの、すなわち、収穫対象物91の上端と主茎92との距離が短いものもよく見られる。この場合、受け部213の厚み寸法が大きいと、移動部材20をベース部材10側に引き込む際に収穫対象物91を巻き込んで傷つけてしまうおそれがある。一方、受け部213の厚み寸法が小さいと、果柄93に接触する受け部213の面積が小さくなり、その結果、果柄93に対する把持力が小さくなって落下する可能性が高まる。
【0130】
そこで、把持機構40又は移動部材20に設けられた受け部213のうちいずれか一方又は両方は、通過部3の中心側へ突出した突出部414、215を更に有している。本実施形態の場合、把持機構40を構成する把持部材41は、把持部材側突出部414を有している。また、移動部材20を構成する環状部材21は、受け部213に設けられた移動部材側突出部215を有している。これによれば、エンドエフェクタ1は、果柄93を把持する際に移動部材側突出部215及び把持部材側突出部414を果柄93に食い込ませることができるため、果柄93をより確実に把持することができる。
【0131】
このように、本実施形態によれば、エンドエフェクタ1は、突出部414、215を有していない構成に比べて果柄93に対する把持力を向上させることができる。したがって、受け部213の厚み寸法を小さくつまり薄くしても、収穫対象物91を落下させずに果柄93を把持するために必要な把持力を確保することができる。これにより、果柄93が短い場合であっても、収穫対象物91を極力傷つけずに収穫することができる。
【0132】
移動機構30は、例えばモータ31の回転力をねじ軸33に沿った直線方向への移動に変換して、移動部材20を直線的に移動させる機能を有する。この場合、移動機構30は、例えばラックギアとピニオンギアを有して構成されたいわゆるラックアンドピニオン構造で構成することも考えられる。すなわち、例えばモータ31にピニオンギアを接続するとともに、移動部材20にラックギアを接続し、モータ31の回転力をピニオンギア及びラックギアを介して移動部材20に伝達する。しかし、この構成においては、ピニオンギアを基準としてラックギア全体が直線的に移動する。
【0133】
このため、例えば
図1においてベース部材10の内部にラックギア全体を収納しようとすると、ベース部材10の長さ寸法が大きくなってしまう。一方、ベース部材10の長さ寸法を小さくしようとすると、ラックギアの移動によりベース部材10からラックギアが飛び出てしまう。すると、例えばエンドエフェクタ1をロボットアーム52に取り付ける際に干渉してしまい、その取り付け態様が制限されてしまうおそれがある。
【0134】
そこで、本実施形態において、移動機構30は、例えばねじ軸33とナット部材34とを有して構成された直動ねじ機構で構成されている。すなわち、本実施形態において、移動機構30は、ねじ軸33と、ナット部材34と、モータ31と、を有して構成されている。ねじ軸33は、ベース部材10に回転可能に設けられている。ナット部材34は、移動部材20に連結されるとともに、ねじ軸33を通されてねじ軸33の回転に伴ってねじ軸33に沿って移動する。モータ31は、ねじ軸33を回転させる。これによれば、ねじ軸33自体はエンドエフェクタ1の長手方向には移動しないため、エンドエフェクタ1の長さ寸法を極力小さくすることができる。
【0135】
更に、移動機構30の駆動によってねじ軸33等がベース部材10から突出したりすることがないため、エンドエフェクタ1をロボットアーム52に取り付ける際に、エンドエフェクタ1をロボットアーム52との干渉を考慮する必要がない。その結果、ロボットアーム52に対してエンドエフェクタ1を比較的自由な態様で取り付けることができる。なお、ロボットアーム52に対するエンドエフェクタ1の取り付け態様は、取付部材15の位置や形状等を変えることで調整することができる。
【0136】
また、本実施形態において、通過部3は、矩形に形成されている。これによれば、通過部3を、例えば
図1のエンドエフェクタ1の幅方向を直径とした円に形成した場合に比べて、矩形に形成した場合の方が面積を大きく確保することができる。すなわち、移動部材20の移動距離が同じであれば、通過部3が矩形のものの方が、円形のものよりも面積を大きく確保することができる。これにより、通過部3に収穫対象物91をより確実に通過させることができ、その結果、収穫の成功率を更に向上させることができる。
【0137】
また、農作物収穫システム50は、視覚装置51と、ロボットアーム52と、を備える。視覚装置51は、収穫対象物91の位置情報を含む視覚情報を取得可能に構成されている。ロボットアーム52は、エンドエフェクタ1が取り付けられている。また、農作物収穫システム50は、収穫対象物検出処理部61、位置情報特定処理部62、接近処理部65、移動処理部66、傾け処理部67、及び切断処理部68を備えている。
【0138】
収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物検出処理を実行可能である。収穫物検出処理は、視覚装置51で取得した視覚情報に含まれている収穫対象物を検出する処理を含む。位置情報特定処理部62は、位置特定処理を実行可能である。位置特定処理は、収穫対象物検出処理で検出した収穫対象物91の先端位置である下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と、基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)位置とを含む収穫対象物91の位置を特定する処理を含む。
【0139】
接近処理部65は、接近処理を実行可能である。接近処理は、ロボットアーム52を駆動制御して、収穫対象物91の先端位置である下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方に設定された始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)までエンドエフェクタ1を接近させる処理を含む。移動処理部66は、移動処理を実行可能である。移動処理は、ロボットアーム52を駆動制御してエンドエフェクタ1を、収穫対象物91の先端位置である下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方から、基端位置である上端位置Pt(Xt、Yx、Zt)側へ向かって移動させて、通過部3に収穫対象物91を通す処理を含む。
【0140】
傾け処理部67は、傾け処理を実行可能である。傾け処理は、エンドエフェクタ1を主茎92や枝に沿うように傾けて通過部3が収穫対象物91を基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過した状態にする処理を含む。そして、切断処理部68は、切断処理を実行可能である。切断処理は、エンドエフェクタ1を動作させて通過部3を縮小させることで通過部3の内側に通された果柄93を切断する処理を含む。
【0141】
これによれば、エンドエフェクタ1を用いて、主茎92や枝から果柄93を介して垂れ下がった収穫対象物91を収穫することで、上述したように、切断刃2が収穫対象物91や主茎92、若しくは枝に接触して、収穫対象物91や主茎92、枝が傷ついてしまうことを極力防ぐことができる。
【0142】
更には、農作物収穫システム50は、傾け処理を実行することにより、エンドエフェクタ1が果柄93を切断するときの位置、つまり収穫対象物91と主茎92や枝との間の位置までエンドエフェクタ1を移動させる際に、エンドエフェクタ1を主茎92や枝の傾きに沿った姿勢にすることができる。これにより、農作物収穫システム50は、エンドエフェクタ1が果柄93を切断する際の位置まで移動する際に、エンドエフェクタ1が主茎92や枝を押し上げる等して無理な力をかけてしまうことを抑制できる。このように、本実施形態によれば、エンドエフェクタ1を用いて収穫対象物91を収穫する際に、エンドエフェクタ1が主茎92や枝に無理な力を加えてしまい主茎92や枝を折り曲げて傷つけたり切断してしまったりすることを抑制でき、その結果、安全に収穫作業を行うことができる。
【0143】
ここで、主茎92と収穫対象物91との距離つまり果柄93の長さは一定ではないことが多い。主茎92と収穫対象物91との距離つまり果柄93の長さが短い場合、エンドエフェクタ1を主茎92に沿って傾けない構成にすると、主茎92と収穫対象物91との間にエンドエフェクタ1が到達する前にエンドエフェクタ1が主茎92に当ってしまい、主茎92と共に収穫対象物91を持ち上げてしまうおそれがある。すると、エンドエフェクタ1は、通過部3の内側に収穫対象物91が位置している状態のまま終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に到達してしまう。そして、この状態で切断処理を行うと、収穫対象物91も切断してしまうことになる。
【0144】
これに対し、本実施形態によれば、エンドエフェクタ1は、傾け処理の実行により、果柄93を切断する際には主茎92に沿って傾けられる。そのため、果柄93が短い場合であっても、主茎92と収穫対象物91との間にエンドエフェクタ1を配置することができ、その結果、誤って収穫対象物91を切断してしまうことを抑制することができる。
【0145】
農作物収穫システム50は、傾け角度設定処理部63を更に備えている。傾け角度設定処理部63は、傾け角度設定処理を実行可能である。傾け角度設定処理は、エンドエフェクタ1を主茎92や枝に沿うように傾けるための傾け角度θを設定する処理である。本実施形態において、傾け角度設定処理は、傾け角度θを予め設定された一定値に設定する処理を含む。そして、傾け処理部67は、傾け角度設定処理で設定された傾け角度θに基づいて傾け処理を実行する。
【0146】
すなわち、主茎92や枝はある程度の柔軟性を有しているため、エンドエフェクタ1等の移動によって主茎92や枝に多少の力が加わっても、ある程度の力であれば折れることはない。また、主茎92や枝の角度は、個別に見れば当然ばらつきはあるものの、全体としては概ね同様の傾向が見られる。そこで、本実施形態では、傾け角度θは一定値に設定されている。これによれば、農作物収穫システム50は、傾け角度θを設定する際に、視覚装置51で取得した視覚情報を用いた画像処理等を行って傾け角度θを算出する必要がない。そのため、主茎92や枝に対する多少の負荷を許容し、傾け角度θを一定値に設定することで、農作物収穫システム50は、傾け角度θを設定する際の処理負荷を低減することができる。
【0147】
また、移動処理は、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)までエンドエフェクタ1を移動させる処理を含む。目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)は、エンドエフェクタ1を傾け角度θで傾けることで通過部3が収穫対象物91の基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方へ通過する位置に設定されている。そして、傾け処理部67は、エンドエフェクタ1が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達した場合に傾け処理を実行する。すなわち、制御装置60は、エンドエフェクタ1を、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から第1移動経路R1に沿って目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)まで移動させる。その後、制御装置60は、目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)において、回転軸Axを中心にエンドエフェクタ1を回転させて、通過部3を収穫対象物91の基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方、この場合、上方に通過させる。
【0148】
これによれば、制御装置60は、エンドエフェクタ1が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達した後に傾け処理を実行するため、例えば傾け処理を実行するタイミングが早過ぎることによりエンドエフェクタ1を傾ける際にエンドエフェクタ1が収穫対象物91に接触してしまうことを抑制することができる。これにより、エンドエフェクタ1が収穫対象物91に干渉することを抑制しつつ、エンドエフェクタ1の通過部3に収穫対象物91を確実に通すことができる。その結果、収穫対象物91が傷つくことを効果的に抑制することができる。
【0149】
また、位置情報特定処理部62は、位置特定処理において、収穫対象物91と繋がっている果柄93の位置情報を用いることなく収穫対象物91の位置を特定する。すなわち、制御装置60は、視覚装置51からの視覚情報に基づいてロボットアーム52を動作させる際に、果柄93を認識する処理は行わない。すなわち、エンドエフェクタ1を用いることで、果柄93を視覚的に認識する処理を行うことなく、果柄93を正確に切断することができる。
【0150】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図34を参照して説明する。
第2実施形態の農作物収穫システム50は、上記第1実施形態に対して、傾け角度設定処理部63で実行される傾け角度設定処理の内容、すなわち
図20のステップS16における処理内容が異なる。本実施形態の場合、傾け角度設定処理は、視覚装置51で取得した視覚情報に基づいて傾け角度θを設定する処理を含んでいる。
【0151】
すなわち、例えばビニールハウスで育てられるミニトマト等は、その主茎92の先端部がビニールハウスの天井付近に配置されたレールに吊り下げられていることから、主茎92は、地面から天井付近へ向かって斜め上方に傾斜するように伸びている。この場合、主茎92の根本に過大な負荷をかけないようにするため、主茎92全体のうち地面付近はたわませている。このため、主茎92の角度は、地表付近は小さく、上方へ行くほど大きくなる傾向がある。つまり、主茎92の角度は、その主茎92の高さ位置と相関性を有して変化する。換言すれば、主茎92の角度は、収穫対象物91の基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と相関性を有する。
【0152】
そこで、本実施形態において、記憶領域602は、
図34に示すように、収穫対象物91の高さ位置と、その高さ位置における傾け角度θとを示すデータテーブルを記憶している。この場合、収穫対象物91の高さ位置は、収穫対象物91の基端位置つまり上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とすることができる。なお、収穫対象物91の先端位置つまり下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)や主茎92の高さ位置から収穫対象物91の高さ位置を推定しても良い。
【0153】
図34に示すデータテーブルは、
図16等に示すように、主茎92が右肩上がりに延びたものについてのデータテーブルである。この場合、
図34に示すデータテーブルは、複数の主茎92のサンプルについて上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と主茎92の角度を測定して、例えば統計処理等を行うことによって上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と主茎92の角度との相関関係を特定し、その相関関係に基づいて上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と傾け角度θとの関係を設定したものである。
【0154】
そして、傾け角度設定処理は、視覚装置51で取得した視覚情報から収穫対象物91の高さ位置、この場合、収穫対象物91の基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定し、傾け角度θを、その特定した収穫対象物91の高さ位置Pt(Xt、Yt、Zt)に対応する傾け角度に設定する処理を含んでいる。
【0155】
これによれば、制御装置60は、傾け角度設定処理部63による傾け角度設定処理の実行によって、傾け角度θを主茎92の実際の傾き角度に極力合わせた値に設定することができる。そのため、農作物収穫システム50は、果柄93を切断する位置までエンドエフェクタ1を移動させる際に、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きにより精密に沿わせることができる。これにより、エンドエフェクタ1を用いて収穫対象物91を収穫する際に、エンドエフェクタ1が主茎92や枝に無理な力が加えてしまい主茎92や枝を折り曲げて傷つけたり切断してしまったりすることをより効果的に抑制することができ、その結果、更に安全に収穫作業を行うことができる。
【0156】
更に、本実施形態において、傾け角度設定処理は、
図34に示すデータテーブルから傾け角度θを特定する際に、収穫対象物91の基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を用いる。この上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)は、位置情報特定処理部62による位置特定処理によって特定される情報を流用することができるため、傾け角度設定処理のために新たな画像処理等を行う必要がない。そのため、本実施形態によれば、傾け角度設定処理のために制御負荷を低減することができる。
【0157】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図35~
図37を参照して説明する。
第3実施形態の農作物収穫システム50は、上記各実施形態に対して、傾け角度設定処理部63で実行される傾け角度設定処理の内容、すなわち
図20のステップS16における処理内容が異なる。本実施形態も、上記第2実施形態と同様に、傾け角度設定処理は、視覚装置51で取得した視覚情報に基づいて傾け角度θを設定する処理を含んでいる。
【0158】
すなわち、本実施形態の傾け角度設定処理は、視覚装置51で取得した視覚情報から主茎92や枝の形状を抽出し、その抽出した主茎92や枝の形状に対してパターンマッチング処理又は線のフィッティング処理を行うことで傾け角度θを設定する処理を含んでいる。つまり、本実施形態の傾け角度設定処理部63は、視覚装置51で取得した視覚情報から主茎92や枝の形状を抽出し、その抽出した主茎92や枝の形状の情報に画像処理を施すことで、主茎92や枝の実際の角度を取得する。そして、傾け角度設定処理部63は、その取得した主茎92や枝の実際の角度に合わせて、傾け処理に用いる傾け角度θを設定する。
【0159】
図35及び
図36は、パターンマッチング処理の一例を概念的に示すものである。この場合、記憶領域602は、
図35に示すように、基準画像94を予め記憶している。基準画像94は、主茎92や枝の実際の角度を取得するための基準となるもので、例えば複数の主茎92の外形形状を平均化し、水平方向へ伸びるように配置したものである。傾け角度設定処理部63は、
図35に示すように、視覚装置51で取得した視覚情報、点群データと色データとから、収穫対象物91を基準とした特定範囲における主茎92や枝の形状を基準画像94として抽出する。次に、傾け角度設定処理部63は、
図36に示すように、水平方向へ伸びるように設定された基準画像94を回転させて、主茎92等の形状と基準画像94との一致率が最も高くなるときの基準画像94の回転角度を算出する。そして、傾け角度設定処理部63は、その算出した回転角度を、その収穫対象物91に対応した主茎92や枝の角度として傾け角度θに設定する。
【0160】
また、
図37は、直線又は曲線のフィッティング処理の一例を概念的に示すものである。この場合、傾け角度設定処理部63は、
図37に示すように、視覚装置51で取得した視覚情報、例えば点群データと色データとから主茎92や枝の形状を抽出する。そして、傾け角度設定処理部63は、主茎92等の形状を構成する点群データから例えば最小二乗法等を用いて回帰直線又は回帰曲線の回帰式Yを算出する。次に、傾け角度設定処理部63は、算出した回帰式Yに例えば収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を代入することで、その収穫対象物91に対応した主茎92や枝の角度を算出し、その算出した角度を傾け角度θに設定する。
【0161】
これによれば、制御装置60は、傾け角度設定処理部63による傾け角度設定処理の実行によって、傾け角度θを主茎92の実際の傾き角度に更に精密に合わせた値に設定することができる。そのため、農作物収穫システム50は、果柄93を切断する位置までエンドエフェクタ1を移動させる際に、エンドエフェクタ1を主茎92の傾きに更に精密に沿わせることができる。これにより、エンドエフェクタ1を用いて収穫対象物91を収穫する際に、エンドエフェクタ1が主茎92や枝に無理な力を加えてしまい主茎92や枝を折り曲げて傷つけたり切断してしまったりすることを更に効果的に抑制することができ、その結果、極めて安全に収穫作業を行うことができる。
【0162】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図38~
図44を参照して説明する。
第4実施形態の農作物収穫システム50は、上記各実施形態に対して、移動経路生成処理において生成する移動経路の具体的内容、傾け角度θの決定方法、及び傾け処理を実行するタイミングが、上記各実施形態と異なる。
【0163】
本実施形態の移動経路生成処理部64は、移動経路生成処理の実行により移動経路Rを生成する。移動経路Rは、
図38に示すように、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を通り終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に至るまでのエンドエフェクタ1の移動経路である。このため、移動処理部66における移動処理は、収穫対象物の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方に設定された終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を目指して、移動経路Rに沿ってエンドエフェクタ1を移動させる処理を含む。
【0164】
この場合、位置情報特定処理部62は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)までの途中の位置である中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)を特定し、その中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)を通るように移動経路Rを生成することができる。この場合、移動経路Rは、Z方向に隣接する各位置、すなわち、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と、中間位置Ph(X、Y、Z)と、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)と、を順に直線で繋いだ経路となる。
【0165】
位置情報特定処理部62は、例えば下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とのZ方向の中間位置の座標を、中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)として取得する。この場合、中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)のZ値は、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)のZ値と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)のZ値と平均値、すなわち、Ph(Z)=(下端位置Pb(Z)+上端位置Pt(Z))/2となる。また、中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)のX値及びY値は、Ph(Z)と同じZ値を持つ点群データのX値及びY値の平均値となる。なお、中間位置Ph(Xh、Yh、Zh)を複数設定することもできる。この場合、中間位置Phの数をN個とし、下端位置Pb(Z)からの中間位置Phの個数をiとすると、i個目の中間位置Ph_i(Z)は次の式2で表すことができる。
Ph_i(Z)=((Pt(Z)-Pb(Z))/(N+1))×i+Pb(Z)・・・(式2)
【0166】
また、本実施形態の農作物収穫システム50は、
図39に示すように、上記各実施形態の傾け角度設定処理部63に換えて、回転軸側接触検出部72及び反回転軸側接触検出部73を備えている。接触検出部72、73は、いずれもエンドエフェクタ1に対する物体の接触を検出する機能を有している。
【0167】
この場合、回転軸側接触検出部72は、
図40に示すように、エンドエフェクタ1に対して上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)側から先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)側へ向かう力、換言すれば、移動処理によって移動経路Rに沿って移動する際とは逆方向への力、この場合、下方へ向かう力であって、エンドエフェクタ1のうち回転軸Ax側部分に作用する力Lfを検出することにより、エンドエフェクタ1のうち回転軸Ax側部分に対する物体の接触を検出する機能を有する。
【0168】
また、反回転軸側接触検出部73は、エンドエフェクタ1に対して上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)側から先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)側へ向かう力、換言すれば、移動処理によって移動経路Rに沿って移動する際とは逆方向への力、この場合、下方へ向かう力であって、エンドエフェクタ1のうち回転軸Axとは反対側部分に作用する力Rfを検出することにより、エンドエフェクタ1のうち回転軸Axとは反対側部分に対する物体の接触を検出する機能を有する。
【0169】
なお、本実施形態において、エンドエフェクタ1のうち回転軸Ax側部分は、移動部材20を構成する環状部材21のうち、
図40に示すように向かって左側の回転部材22が取り付けられている部分とすることができる。また、エンドエフェクタ1のうち回転軸Axとは反対側部分は、移動部材20を構成する環状部材21のうち、
図40に示すように向かって右側の回転部材22が取り付けられている部分とすることができる。
【0170】
ちなみに、主茎92の傾き角度が逆になれば、回転軸Ax側部分と、回転軸Axとは反対側部分との関係も逆になる。すなわち、主茎92の傾きが左肩上がりである場合、回転軸Axは、エンドエフェクタ1のうち
図40の右側部分に設定される。この場合、エンドエフェクタ1における回転軸Ax側部分は、
図40の右側部分となり、回転軸Ax側とは反対部分は、
図40の左側部分となる。
【0171】
接触検出部72、73は、例えばエンドエフェクタ1に作用する回転方向の力を検出するためのトルクセンサ等で構成することができる。この場合、接触検出部72、73は、いずれもロボットアーム52又はロボットアーム制御部521の一機能、つまりロボットアーム52又はロボットアーム制御部521に付随した機能として構成することができる。
【0172】
また、接触検出部72、73は、エンドエフェクタ1の例えば回転部材22部分に例えば接触センサや圧力センサ等を取り付け、この接触センサや圧力センサによってエンドエフェクタ1に何らかの物体が接触したことを直接的に検出する構成であっても良い。この場合、接触検出部72、73は、エンドエフェクタ1又はエンドエフェクタ制御部4の一機能、つまりエンドエフェクタ1又はエンドエフェクタ制御部4に付随した機能として構成することができる。なお、接触検出部72、73は、ロボットアーム52やロボットアーム制御部521、及びエンドエフェクタ1やエンドエフェクタ制御部4とは独立した装置として構成することもできる。
【0173】
そして、上記構成において、回転軸側接触検出部72は、例えばエンドエフェクタ1が移動処理中にロボットアーム52の各軸を駆動するモータの駆動力以外によってエンドエフェクタ1に作用する力Lfを検出した場合に、エンドエフェクタ1のうち回転軸Ax側部分に何らかの物体が接触したと判断する。また、反回転軸側接触検出部73は、例えばエンドエフェクタ1が傾け処理中にロボットアーム52の各軸を駆動するモータの駆動力以外によってエンドエフェクタ1に作用する力Rfを検出した場合に、エンドエフェクタ1のうち回転軸Axとは反対側部分に何らかの物体が接触したと判断する。
【0174】
また、制御装置60は、回転軸側接触検出部72の検出結果に基づいて、傾け処理部67により傾け処理を開始するタイミングを決定する。すなわち、制御装置60は、移動処理によってエンドエフェクタ1を移動経路Rに沿って終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)まで移動させている際中に回転軸側接触検出部72による物体の接触を検出した場合に、傾け処理部67による傾け処理を開始する。この場合、制御装置60は、移動処理によってエンドエフェクタ1を移動経路Rに沿って終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)まで移動させている際中に回転軸側接触検出部72による物体の接触が検出されなかった場合には、傾け処理部67による傾け処理を実行しない。
【0175】
また、制御装置60は、反回転軸側接触検出部73の検出結果に基づいて、傾け処理部67により傾け処理による傾け角度θを決定する。すなわち、制御装置60は、傾け処理部67による傾け処理の実行しエンドエフェクタ1を傾ける動作を行っている際中に、反回転軸側接触検出部73により物体の接触を検知した場合に、傾け処理を終了し、これにより、傾け角度θを決定する。すなわち、制御装置60は、傾け処理部67による傾け処理を開始した後は、反回転軸側接触検出部73により物体の接触を検知するまでエンドエフェクタ1を傾け続け、反回転軸側接触検出部73により物体の接触を検知した場合にエンドエフェクタ1を傾ける動作を停止する。
【0176】
次に、
図41も参照して制御装置60が実行する制御内容について説明する。この場合、
図41のステップS32、S33は移動処理の一例である。また、ステップS34~S36は、傾け処理の一例である。なお、
図41のフローチャートにおいて、ステップS22以降の処理は
図20のステップS23~S27と同様であり、その記載を省略している。
【0177】
制御装置60は、上記第1実施形態と同様に、ステップS11~S16を実行する。その後、制御装置60は、ステップS31において移動経路生成処理を実行し、移動経路Rを生成する。その後、制御装置60は、上記第1実施形態と同様にステップS19において接近処理を行う。
【0178】
次に、制御装置60は、ステップS32において、移動処理を実行し、
図42及び
図43に示すように、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を目指した移動経路Rに沿ったエンドエフェクタ1の移動を開始する。次に、制御装置60は、ステップS33において、回転軸側接触検出部72の検出結果に基づき、エンドエフェクタ1の回転軸Ax側部分に対する物体の接触すなわち主茎92の接触の有無を判断する。エンドエフェクタ1の回転軸Ax側部分に対する物体の接触が検出されていない場合(ステップS33でNO)、制御装置60は、移動処理を継続、つまりエンドエフェクタ1の移動経路Rに沿った移動を継続する。
【0179】
一方、エンドエフェクタ1の回転軸Ax側部分に対する物体の接触が検出された場合(ステップS33でYES)、制御装置60は、
図43に示すように、移動処理を停止、つまりエンドエフェクタ1の移動経路Rに沿った移動を停止し、ステップS34へ処理を移行させる。そして、制御装置60は、ステップS34において、傾け処理部67により傾け処理を開始し、
図43及び
図44に示すように、回転軸Axを中心にして、エンドエフェクタ1における回転軸Axとは反対側部分が主茎92に近づくように、エンドエフェクタ1を傾ける動作を開始する。
【0180】
次に、制御装置60は、ステップS35において、反回転軸側接触検出部73の検出結果に基づき、エンドエフェクタ1の回転軸Axとは反対側部分に対する物体の接触すなわち主茎92の接触の有無を判断する。エンドエフェクタ1の回転軸Axとは反対側部分に対する物体の接触が検出されていない場合(ステップS35でNO)、制御装置60は、傾け処理を継続、つまりエンドエフェクタ1を傾ける動作を継続する。
【0181】
一方、エンドエフェクタ1の回転軸Axとは反対側部分に対する物体の接触が検出された場合(ステップS35でYES)、制御装置60は、ステップS36へ処理を移行する。そして、制御装置60は、ステップS36において、傾け処理を停止、つまりエンドエフェクタ1を傾ける動作を停止する。その後、制御装置60は、上記第1実施形態と同様に、ステップS22以降の処理を実行し、果柄93の切断等を行って収穫対象物91を収穫する。
【0182】
この第4実施形態によれば、農作物収穫システム50は、回転軸側接触検出部72を更に備える。回転軸側接触検出部72は、傾け処理におけるエンドエフェクタ1の回転軸Ax側部分に対する物体の接触を検出可能である。また、移動処理は、収穫対象物91の基端位置である上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方に設定された終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を目指してエンドエフェクタ1を移動させる処理を含む。そして、傾け処理部67は、移動処理により終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を目指してエンドエフェクタ1を移動させている際中に回転軸側接触検出部72により物体の接触を検知した場合に傾け処理を開始する。
【0183】
すなわち、例えば移動処理の実行によってエンドエフェクタ1を移動経路Rに沿って移動させている際中にエンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合でも、その移動処理による動作が継続されてしまうと、主茎92等に対してエンドエフェクタ1が力を加え続けてしまい、ひどい場合には主茎92等を傷つけてしまうおそれがある。
【0184】
一方、本実施形態によれば、移動処理の実行によってエンドエフェクタ1を移動させている際中に、エンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合には、移動経路Rに沿ったエンドエフェクタ1の移動を停止することができる。これにより、移動処理の実行によってエンドエフェクタ1を移動させている際中にエンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合に、その移動処理によるエンドエフェクタ1の移動が継続してしまうことを防止できる。これにより、主茎92等に対してエンドエフェクタ1が力を加え続けてしまい傷つけてしまうことを更に精度良く抑制することができる。その結果、更に安全に収穫作業を行うことができるという優れた効果を得ることができる。
【0185】
また、農作物収穫システム50は、反回転軸側接触検出部73を更に備える。反回転軸側接触検出部73は、傾け処理におけるエンドエフェクタ1の回転軸Ax側とは反対側部分に対する物体の接触を検出可能である。そして、傾け処理部67は、傾け処理を実行しエンドエフェクタ1を傾ける動作を行っている際中に反回転軸側接触検出部73により物体の接触を検知した場合に、傾け処理を終了する。
【0186】
すなわち、例えば傾け処理の実行によってエンドエフェクタ1を傾けている際中にエンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合でも、その傾け処理による動作が継続されてしまうと、主茎92等に対してエンドエフェクタ1が力を加え続けてしまい、ひどい場合には主茎92等を傷つけてしまうおそれがある。
【0187】
一方、本実施形態によれば、傾け処理の実行によってエンドエフェクタ1を傾けている際中に、エンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合には、エンドエフェクタ1を傾ける動作を停止することができる。これにより、傾け処理の実行によってエンドエフェクタ1を傾けている際中にエンドエフェクタ1が主茎92等に実際に接触した場合に、その傾け処理による動作が継続されてしまうことを防止できる。これにより、主茎92等に対してエンドエフェクタ1が力を加え続けてしまい傷つけてしまうことを更に精度良く抑制することができる。その結果、更に安全に収穫作業を行うことができるという優れた効果を得ることができる。
【0188】
ここで、例えば収穫対象物91が全体として湾曲形状となっている場合には、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)まで直線的にエンドエフェクタ1を移動させると、その途中部分においてエンドエフェクタ1が収穫対象物91に接触して収穫対象物91を傷つけてしまうおそれがある。
【0189】
そこで、位置情報特定処理部62において実行される位置特定処理は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)までの途中の位置である中間位置Ph(X、Y、Z)を特定する処理を更に含んでいる。そして、移動経路生成処理部64において実行される移動経路生成処理は、中間位置Ph(X、Y、Z)を通過するようにエンドエフェクタ1の移動経路Rを生成する処理を更に含んでいる。
【0190】
これによれば、移動経路Rは、収穫対象物91が全体的に湾曲している場合であっても、収穫対象物91の形状に極力沿ったものとすることができる。すなわち、この農作物収穫システム50によれば、例えば収穫対象物91が全体として曲がっている場合において、エンドエフェクタ1を移動経路Rに沿って果柄93の切断位置まで移動させる際に、エンドエフェクタ1が収穫対象物91に接触して傷つけてしまうことをさらに効果的に抑制することができる。
【0191】
また、例えばエンドエフェクタ1を移動させる際にエンドエフェクタ1が収穫対象物91に接触する可能性が高い場合、接触した際の衝撃を少なくして収穫対象物91に与える損傷を低減する必要がある。この場合、エンドエフェクタ1の移動速度を遅くする必要があり、その結果、収穫効率が低下してしまうおそれがある。一方、本実施形態によれば、上述した構成により、エンドエフェクタ1を移動させる際にエンドエフェクタ1が収穫対象物91に接触する可能性が低い。そのため、エンドエフェクタ1の移動速度を速くすることができ、その結果、収穫作業の効率をさらに向上させることができる。
【0192】
この場合、移動経路生成処理部64において実行される移動経路生成処理は、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と中間位置Ph(X、Y、Z)と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とを順に直線で繋いで移動経路Rを生成する処理を含む。すなわち、本実施形態において、移動経路Rは、各位置Pb(Xb、Yb、Zb)、Ph(X、Y、Z)、Pt(Xt、Yt、Zt)を順に繋いだ複数の直線で構成されている。
【0193】
これによれば、例えば移動経路Rを収穫対象物91の湾曲に沿って滑らかな曲線状で生成した場合つまり全軌道を生成した場合に比べて、認識する座標点数を低減することができるため、移動経路Rを生成する際の移動経路生成処理部64の処理負荷を大幅に低減することができる。これにより、移動経路Rを生成する際の処理速度を向上することができる。すなわち、農作物収穫システム50は、収穫対象物91を認識してから移動経路Rを生成しその後、実際にロボットアーム52を動作させるまでの時間を低減することができる。
【0194】
さらにはこの場合、移動経路Rを滑らかな曲線で生成した場合に比べて、移動経路Rを各位置Pb(Xb、Yb、Zb)、Ph(X、Y、Z)、Pt(Xt、Yt、Zt)を順に繋いだ複数の直線で生成した方が、エンドエフェクタ1の移動距離を短くすることができる。そのため、本実施形態によれば、エンドエフェクタ1を果柄93の切断可能な位置に移動させるまでの時間つまりロボットアーム52の動作時間も短縮することができる。これらの結果、農作物収穫システム50の動作速度を向上や動作期間の短縮を図ることができ、ひいては収穫作業の速度を向上させることができる。
【0195】
(第5実施形態)
次に、
図45~
図59を参照して第5実施形態について説明する。
上記各実施形態において、主茎92と収穫対象物91との位置関係に対して、エンドエフェクタ1の回転軸Axを適切に設定しないと、エンドエフェクタ1を主茎92に沿わせて傾けたとしても、通過部3が収穫対象物91を完全に通過しきれない場合が生じて、房の上部付近にある収穫対象物91を切断してしまう可能性がある。
【0196】
ここで、例えば収穫対象物91がミニトマトである場合について、本願発明者が主茎92に対する収穫対象物91及び果柄93の位置関係を調べたところ、概ね次のようになっていることがわかった。なお、
図46、
図48、
図50は、視覚装置51で取得した視覚情報に基づき、収穫対象物91の上端位置つまり上端位置Pt(Zt)近傍における収穫対象物91及び主茎92の点群データを、平面で見た場合の画像に仮想的に置き換えた図である。この場合、収穫対象物91及び主茎92のうち、視覚装置51の視野内に入っている部分、つまり実際に点群データを取得出来た部分については実線で示されている。また、収穫対象物91及び主茎92のうち、視野外つまり死角となっている部分、すなわち点群データが取得できなかった部分については二点鎖線で示されている。
【0197】
主茎92に対する収穫対象物91の位置関係は、
図45及び
図46に示すように、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が横側に位置しているものが最も多く、全体の70%~80%程度を占めていた。次に、
図47及び
図48に示すように、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が正面側つまり手前に位置しているものが多く、全体の20%~30%程度を占めていた。そして、
図49及び
図50に示すように、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が背面側つまり奥側に位置しているものが最も少なく、全体の10%程度を占めていた。
【0198】
この場合、傾け処理における回転軸Ax及び接近処理におけるエンドエフェクタ1の接近方向を、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が横側に位置しているものに対応させることで、全体の70%~80%程度については安全に収穫することができる。しかしこの場合、残りの20%~30%、つまり、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が正面側又は背面側に位置したものについては、房の上部付近の収穫対象物91を切断してしまう可能性が残る。
【0199】
そこで、本実施形態において、制御装置60は、傾け処理を実行する際のエンドエフェクタ1の回転軸の軸方向が、主茎92から延びる果柄93を横切るように、つまり果柄93の延伸方向と極力直角に交差する方向となるように、エンドエフェクタ1の姿勢を調整するする。これにより、エンドエフェクタ1の通過部3が、収穫対象物91の上端部を超えて通過させることができる。
【0200】
具体的には、傾け処理におけるエンドエフェクタ1の回転軸Axは、エンドエフェクタ1において固定位置に設定されている。すなわち、回転軸Axは、移動部材20において左右両側の回転部材22が設けられた部分のうち一方側部分、この場合、左側部分に固定されている。そして、接近処理は、回転軸Axの軸方向が、主茎92から延びる果柄93を横切るように、つまり果柄93の延伸方向と極力直角に交差する方向となるように調整して始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで接近させる処理を含む。
【0201】
すなわち、本実施形態において、制御装置60は、接近処理の実行によりエンドエフェクタ1を始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで接近させる際の、主茎92及び収穫対象物91に対するエンドエフェクタ1の進入角度つまり進入方向を、主茎92と収穫対象物91との位置関係に応じて変化させる。なお、主茎92と収穫対象物91との位置関係は、視覚装置51で取得した視覚情報から取得することができる。
【0202】
この場合、制御装置60は、接近処理の実行により、まず、
図51、
図53、
図55に示すように、上端位置Pt(Zt)近傍における収穫対象物91及び主茎92の点群データの中から、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)を特定する。なお、この場合、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)とは、
図45~
図50等における主茎92の点群のうち最も+Y側の端点のX、Y値を意味する。また、対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とは、
図45~
図50等における収穫対象物91の点群のうち最も+Y側の端点のX、Y値を意味する。そして、本実施形態の場合、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)は、
図52、
図54、及び
図56における主茎92の右端部となり、対象物側端位置Hb(Xb、Yb)は、
図52、
図54、及び
図56における収穫対象物91の左端部となる。
【0203】
本実施形態の場合、先端側は、
図45~
図50等における概ね+Y側又は
図52、
図54、
図56における概ね右側を意味する。また、基端側は、
図45~
図50等における概ね-Y側又は
図52、
図54、
図56における概ね左側を意味する。なお、以下の説明では、主茎92の先端側のX、Y値を、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と称し、収穫対象物91の基端側のX、Y値を対象物側端位置Hb(Xb、Yb)と称する。
【0204】
制御装置60は、接近処理の実行により、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とのうちX値を比較して前後関係を特定する。そして、制御装置60は、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とを結ぶ直線を算出し、その直線の手前側から奥側へ向かう方向を進入方向Apとする。そして、制御装置60は、この進入方向Apに概ね沿った進入角度で、エンドエフェクタ1を始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで接近させる。これにより、エンドエフェクタ1の回転軸Axの軸方向が、主茎92から延びる果柄93を横切るように、つまり果柄93の延伸方向と極力直角に交差する方向となるように調整して始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで接近させることができる。
【0205】
この場合、進入方向Apは、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)及び対象物側端位置Hb(Xb、Yb)のX、Y値にかかわらず、手前側つまりロボットアーム52側から奥側へ向かう方向とする。すなわち、例えば
図51及び
図53の例では、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とのうち、対象物側端位置Hb(Xb、Yb)が手前側つまりロボットアーム52側に位置している。このため、
図51及び
図53の例において、制御装置60は、進入方向Apを、対象物側端位置Hb(Xb、Yb)から主茎側端位置Ha(Xa、Ya)へ向かう方向に設定する。
【0206】
これに対し、例えば
図55の例では、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とのうち、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)が手前側つまりロボットアーム52側に位置している。このため、
図55の例において、制御装置60は、進入方向Apを、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)から対象物側端位置Hb(Xb、Yb)へ向かう方向に設定する。
【0207】
これによれば、傾け処理を実行した際に、収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3をより確実に通過させることができる。したがって、本実施形態によれば、主茎92に対する収穫対象物91及び果柄93の位置関係に関わらず、房全体における上部付近の収穫対象物91を切断してしまうことを低減でき、その結果、更に安全に収穫対象物を収穫することができる。
【0208】
また、傾け処理を実行した際に収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3をより確実に通過させるためには、エンドエフェクタ1は、傾け処理を実行する直前において回転軸Axが果柄93の極力直下に位置した状態となっていることが好ましい。そこで、本実施形態において、制御装置60は、傾け処理によってエンドエフェクタ1を傾ける時点までに、収穫対象物91が通過部3の中心Pcよりも回転軸Ax側に位置するようにエンドエフェクタ1の姿勢を調整する処理を実行することができる。この処理は、接近処理に含まれていても良いし、傾け処理の初期に含まれていても良い。これによれば、収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3を更に確実に通過させることができ、その結果、更に安全に収穫対象物を収穫することができる。
【0209】
また、制御装置60は、例えば
図57、
図58、及び
図59に示すように、オフセット角度αを加算又は減算して進入方向Apを設定することもできる。オフセット角度αは、例えば予め設定された固定値であっても良いし、例えば複数の値から択一的に選択されるテーブルであっても良いし、または学習等に応じて設定される値であっても良い。この場合、例えばオフセット角度αの回転中心は、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とを結ぶ直線の中点とすることができる。
【0210】
この場合、制御装置60は、主茎側端位置Ha(Xa、Ya)と対象物側端位置Hb(Xb、Yb)とを結ぶ直線が、それぞれ主茎側端位置Ha(Xa、Ya)及び対象物側端位置Hb(Xb、Yb)から離れる方向へ、進入方向Apを回転させる。例えば
図57及び
図58の例では、制御装置60は、それぞれ
図51及び
図53で設定した進入方向Apに対して、更に時計回り方向へオフセット角度α回転させる。また、例えば
図59の例では、制御装置60は、
図55で設定した進入方向Apに対して、更に反時計回り方向へオフセット角度α回転させる。
【0211】
これによれば、傾け処理を実行した際に、収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3を更に確実に通過させることができ、更に安全に収穫対象物を収穫することができる。
【0212】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について
図60~
図62を参照して説明する。
本実施形態では、接近処理における進入方向の決定方法が上記第5実施形態と異なる。本実施形態において、制御装置60は、接近処理の実行に際し、まず、ロボットアーム52を駆動させ、例えば
図60~
図62の白抜き矢印A、B、Cで示すように、複数の方向から収穫対象物91を撮像する。そして、制御装置60は、撮像した各方向のうち、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)のZ値において収穫対象物91と主茎92との距離が最も離れて見える方向、つまり隙間が最も大きく見える方向を、進入方向に決定する。
【0213】
例えば
図60の例では、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が横側に位置している。この場合、主茎92及び収穫対象物91に対して正面方向、つまり白抜き矢印B方向から見た場合に、収穫対象物91と主茎92との隙間が最も大きい。そのため、制御装置60は、白抜き矢印B方向を進入方向に決定する。
【0214】
また、例えば
図61の例では、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が正面側つまり手前に位置している。この場合、主茎92及び収穫対象物91に対して主茎92が下がっている側、つまり白抜き矢印A方向から見た場合に、収穫対象物91と主茎92との隙間が最も大きい。そのため、制御装置60は、白抜き矢印A方向を進入方向に決定する。
【0215】
なお、
図61に示すように主茎92に対して収穫対象物91が正面側に位置している場合、制御装置60は、主茎92及び収穫対象物91に対して主茎92が上がっている側、つまり白抜き矢印C方向から見たものに隙間が存在していたとしても、この方向を進入方向には決定しない。この方向から進入すると、回転軸Axが、収穫対象物91を挟んで主茎92とは反対側に位置してしまうため、傾け処理を実行しても通過部3が収穫対象物91を通過できないからである。
【0216】
また、例えば
図62の例では、主茎92に対して収穫対象物91及び果柄93が背面側つまり奥側に位置している。この場合、主茎92及び収穫対象物91に対して主茎92が上がっている側、つまり白抜き矢印C方向から見た場合に、収穫対象物91と主茎92との隙間が最も大きい。そのため、制御装置60は、白抜き矢印C方向を進入方向に決定する。
【0217】
なお、
図62に示すように主茎92に対して収穫対象物91が背面側に位置している場合、制御装置60は、主茎92及び収穫対象物91に対して主茎92が下がっている側、つまり白抜き矢印A方向から見たものに隙間が存在していたとしても、この方向を進入方向には決定しない。この方向から進入すると、回転軸Axが、収穫対象物91を挟んで主茎92とは反対側に位置してしまうため、傾け処理を実行しても通過部3が収穫対象物91を通過できないからである。
【0218】
このような本実施形態によっても、傾け処理を実行した際に、収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3をより確実に通過させることができる。したがって、本実施形態によっても、主茎92に対する収穫対象物91及び果柄93の位置関係に関わらず、房全体における上部付近の収穫対象物91を切断してしまうことを低減でき、その結果、更に安全に収穫対象物を収穫することができる。
【0219】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について
図63~
図65を参照して説明する。
傾け処理部67による傾け処理は、エンドエフェクタ1において主茎92や枝に最も接近している部分を回転軸Axにして回転軸Axの反対側が主茎92や枝に接近するように傾ける処理を含む。すなわち、上記第5実施形態では、回転軸Axの位置は固定されていた、一方、本実施形態において、制御装置60は、主茎92と収穫対象物91との位置関係に応じて、回転軸Axの位置を適宜変更する。
【0220】
例えば、制御装置60は、
図63に示すように、傾け処理の際の回転軸として、ロール回転軸Axrとピッチ回転軸Axpとのうち適切な方を、主茎92と収穫対象物91との位置関係に応じて適宜選択することができる。この場合、ロール回転軸Axrは、エンドエフェクタ1をロール方向へ傾けるための回転軸である。ロール回転軸Axrは、上記第5実施形態における回転軸Axと同様に、例えば環状部材21において左右両側の回転部材22が設けられた部分のうち一方側部分、この場合、左側部分に固定されている。
【0221】
一方、ピッチ回転軸Axpは、エンドエフェクタ1をピッチ方向へ傾けるための回転軸である。この場合、ピッチ回転軸Axpは、例えば環状部材21の最先端部分に設定されている。そして、ピッチ回転軸Axpを中心に傾け処理を実行する場合、エンドエフェクタ1は、
図55及び
図56に示すように、エンドエフェクタ1とロボットアーム52との接続部分が上方へ移動するようにして傾けられる。
【0222】
そして、接近処理は、主茎92や枝に対する収穫対象物91の位置関係に関わらず収穫対象物91に対して一定の進入角度でエンドエフェクタ1を始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)まで接近させる処理を含む。
【0223】
これによっても、傾け処理を実行した際に、収穫対象物91に対してエンドエフェクタ1の通過部3をより確実に通過させることができる。その結果、主茎92に対する収穫対象物91及び果柄93の位置関係に関わらず、房全体における上部付近の収穫対象物91を切断してしまうことを低減でき、その結果、更に安全に収穫対象物を収穫することができる。
【0224】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について
図66を参照しながら説明する。
第8実施形態は、エンドエフェクタ1の構成が上記各実施形態と異なる。この場合、切断刃2は、通過部3の幅方向の半分以下の範囲に設けられている。本実施形態の場合、通過部3の幅方向における切断刃2の長さ寸法は、通過部3の幅方向全体の1/4程度である。また、切断刃2は、通過部3の幅方向における中心部に設けられている。これに対し、ガイド部132は、通過部3の幅方向の半分以上の範囲に設けられている。
【0225】
この場合も、上記各実施形態と同様に、ベース部材10が第1部材となり、移動部材20が第2部材となる。そして、ベース部材10と移動部材20とは、切断刃2を含んで環状に構成されてその環状の内側に収穫対象物91を通すことが可能な通過部3を形成する。
この構成によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0226】
また、この場合、窪み部131の幅方向の寸法は、果柄93の外径よりも大きくかつ人の指よりも小さい寸法、例えば10mm以下に設定することができる。これによれば、作業者の指が窪み部131に入り込んで切断刃2に接触することを抑制できるため、安全性を更に向上させることができる。
【0227】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について
図67を参照しながら説明する。
本実施形態において、エンドエフェクタ1は、上記各実施形態のベース部材10に換えてベース部材10Aを備え、移動部材20に換えて移動部材20Aを備えている。ベース部材10Aは、上記各実施形態におけるベース部材10Aと同様の構成である。また、移動部材20Aは、上記各実施形態における移動部材20とほぼ同様の構成であるが、環状部材21に切断刃2が設けられている点で異なっている。
【0228】
切断刃2は、環状部材21において把持機構40と対向する位置に設けられている。この場合、ベース部材10Aには、切断刃2は設けられていない。切断刃2は、移動部材20Aの移動に伴って、ベース部材10に対して接近及び離間する方向へ移動する。本実施形態では、移動部材20Aは第1部材として機能し、ベース部材10A及び把持部材41Aは、第2部材として機能する。そして、移動部材20A、ベース部材10A、及び把持部材41Aは、切断刃2を含んで環状に構成されてその環状の内側に収穫対象物91を通すことが可能な通過部3を形成している。
この構成によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0229】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について
図68及び
図69を参照しながら説明する。
本実施形態のエンドエフェクタ1は、上記第各実施形態のベース部材10、移動部材20、把持機構40、及び把持部材41に換えて、ベース部材10B、非移動部材20B、把持機構40B、及び把持部材41Bを備えている。ベース部材10Bは、上記各実施形態におけるベース部材10と同様の構成である。また、非移動部材20Bは、上記各実施形態における移動部材20とほぼ同様の構成であるが、ベース部材10Bに固定されている点で異なっている。また、把持機構40B及び把持部材41Bは、上記各実施形態における把持機構40及び把持部材41とほぼ同様の構成であるが、ベース部材10に対して相対的に移動可能に構成されている点で異なっている。
【0230】
すなわち、本実施形態において、環状部材21は、ベース部材10Aの例えば保持部材11に固定されている。このため、環状部材21は、ベース部材10Aに対して相対的に移動不可に構成されている。一方、把持機構40Bは、ベース部材10に対して相対的に移動可能に構成されている。
【0231】
また、本実施形態の場合、移動機構30は、モータ31、軸受け32、ねじ軸33、ナット部材34に換えて、直動アクチュエータ39を有している。直動アクチュエータ39は、直線方向へ駆動するアクチュエータであり、例えばエア式又は電動式のシリンダ、若しくはリニアスライダ等である。直動アクチュエータ39は、前側の保持部材11と後側の保持部材12との間に設けられている。
【0232】
直動アクチュエータ39は、駆動軸391及び端部材392を有している。端部材392は、駆動軸391の先端部に設けられており、駆動軸391の伸縮に伴って前後方向に移動する。把持機構40Bは、端部材392を介して駆動軸391に接続されている。そして、把持機構40Bは、
図59及び
図60に示すように、駆動軸391の伸縮に伴ってエンドエフェクタ1の前後方向つまり通過部3の前後方向へ移動する。この場合、端部材392は、保持部材11の摺動溝111に相当する構成として摺動溝393を有している把持部材41の摺動部412は、摺動溝393を摺動可能に構成されている。
【0233】
切断刃2は、把持機構40Bに設けられている。そのため、本実施形態の場合、把持機構40Bの把持部材41Bは、果柄93を切断するための切断刃2が設けられた第1部材として機能する。また、この場合、ベース部材10及び非移動部材20Bは、把持機構40Bの把持部材41Bに対して相対的に移動可能に構成された第2部材として機能する。なお、本実施形態の場合、第1部材であるの把持部材41Bが、第2部材であるベース部材10B及び環状部材21Bに対して移動する。そして、把持部材41Bと非移動部材20Bとは、切断刃2を含んで環状に構成されてその環状の内側に収穫対象物91を通すことが可能な通過部3を形成する。
これによっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0234】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、その構成の一部又は全部を抽出してそれぞれ組み合わせることができる。
例えば第4実施形態の回転軸側接触検出部72及び反回転軸側接触検出部73のいずれか一方又は両方を、第1~第3実施形態に適用し、第1~第3実施形態における移動経路生成処理及び傾け角度設定処理と併用することができる。
【0235】
この場合、第1~第3実施形態は、例えば次のように変形することができる。すなわち、第1~第3実施形態に回転軸側接触検出部72を適用する場合、制御装置60は、移動処理の実行により目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)を目指してエンドエフェクタ1を移動させるが、エンドエフェクタ1が目標位置Pg(Xg、Yg、Zg)に到達する以前に回転軸側接触検出部72が主茎92等の接触を検出した場合には、エンドエフェクタ1の移動を終了して傾け処理に移行する。
【0236】
また、第1~第3実施形態に反回転軸側接触検出部73を適用する場合、制御装置60は、エンドエフェクタ1の角度が傾け角度設定処理によって設定した傾け角度θとなるように傾け処理を実行するが、エンドエフェクタ1が傾け角度θとなる以前に反回転軸側接触検出部73が主茎92等の接触を検出した場合には、傾け処理を終了して切断処理に移行する。このような構成によって、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0237】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0238】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0239】
1…農作物収穫用エンドエフェクタ、2…切断刃、3…通過部、10…ベース部材(第1部材)、20…移動部材(第2部材)、20A…非移動部材(第1部材)、30…移動機構、41…把持部材(第1部材)、41A…把持部材(第2部材)、50…農作物収穫システム、51…視覚装置、52…ロボットアーム、602…記憶領域、61…収穫対象物検出処理部、62…位置情報特定処理部、63…傾け角度設定処理部、65…接近処理部、66…移動処理部、67…傾け処理部、68…切断処理部、72…回転軸側接触検出部、73…反回転軸側接触検出部、91…収穫対象物、92…主茎、93…果柄、602…記憶領域、Ax…回転軸、Axr…ロール回転軸(回転軸)、Axp…ピッチ回転軸(回転軸)、Ps…始点位置、Pb…先端位置、Pg…目標位置、Pt…基端位置、高さ位置、Pe…終点位置、