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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20221129BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221129BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20221129BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/00 305
H01B7/00 301
H02G3/04
B60R16/02 620J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019206154
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021082380
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/038259(WO,A1)
【文献】特開2002-112440(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/00
H02G 3/04
B60R 16/02
H01R 12/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状伝送部材を含む幹線と、
前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐線と、
一方主面上に少なくとも前記幹線が固定された固定シートと、
前記固定シートの他方主面において少なくとも一部が前記分岐線と重なる位置に設けられるカバーシートと、
を備え、
前記固定シートと前記カバーシートとの融着箇所は、少なくとも前記幹線の長手方向に対する側方に設けられ、前記分岐線を避けた位置に設けられる、配線部材。
【請求項2】
請求項1記載の配線部材であって、
前記固定シートと前記カバーシートとの融着箇所は、少なくとも前記幹線の長手方向に対する側方の両端に設けられている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記カバーシートは、前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐部分と重なる分岐覆い部分を含む、配線部材。
【請求項4】
請求項3に記載の配線部材であって、
前記分岐覆い部分における前記固定シートとの融着箇所が分岐部分を囲う複数箇所に設けられている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバーシートは、前記固定シートの長手方向に沿って部分的に設けられている、配線部材。
【請求項6】
請求項5に記載の配線部材であって、
前記カバーシートは、前記固定シートの長手方向に沿って間隔をあけて設けられている第1部分シート及び第2部分シートを含み、
前記第1部分シートは前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐部分を含む領域を覆い、
前記第2部分シートは前記複数の線状伝送部材の一部の線状伝送部材が並行する並行部分を含む領域を覆い、
前記第2部分シートと前記固定シートとの融着箇所は前記並行部分の両側方に設けられている、配線部材。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の配線部材であって、
前記固定シートは、第1経路部分と、前記第1経路部分から分岐する第2経路部分とを含み、
前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材は前記第1経路部分において他の一部の線状伝送部材に対して分岐して、前記第2経路部分上に固定され、
前記カバーシートのうち分岐部分を覆う部分は前記第1経路部分と前記第2経路部分とのうち前記第1経路部分のみを覆っている、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記固定シートは第1経路部分と前記第1経路部分から分岐する第2経路部分とを含み、
前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材は前記第1経路部分において他の一部の線状伝送部材に対して分岐して前記第2経路部分に沿って延び、
前記カバーシートのうち分岐部分を覆う部分は分岐形状に形成されて前記第1経路部分と前記第2経路部分との両方を覆っている、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
分岐部分において、前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材が前記固定シート上で他の一部の線状伝送部材に対して分岐して、前記固定シートの側縁から外方に延びている、配線部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバーシートは前記固定シートよりも剛性が高い、配線部材。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバーシートにおける外面に両面粘着部材が貼り付けられ、
前記両面粘着部材は分岐部分と重なっている、配線部材。
【請求項12】
請求項11に記載の配線部材であって、
前記外面と前記両面粘着部材との粘着力は、前記他方主面と前記両面粘着部材との粘着力よりも大きい、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材に電線が溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤーハーネスにおいて、機能性外装部材に別のシートが融着されることが望まれる場合があるが、機能性外装部材に別のシートを融着させる際に融着が困難な場合がある。例えば、機能性外装部材に別のシートを融着させる際に融着用の治具が線状伝送部材を噛み込んでしまうと良好に機能性外装部材に別のシートが融着することが難しい場合がある。
【0005】
そこで、線状伝送部材が固定されるシートに別のシートが良好に融着されることが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、複数の線状伝送部材を含む幹線と、前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐線と、一方主面上に少なくとも前記幹線が固定された固定シートと、前記固定シートの他方主面において少なくとも一部が前記分岐線と重なる位置に設けられるカバーシートと、を備え、前記固定シートと前記カバーシートとの融着箇所は、少なくとも前記幹線の長手方向に対する側方に設けられ、前記分岐線を避けた位置に設けられる、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材が固定されるシートに別のシートが良好に融着されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態にかかる配線部材を示す概略平面図である。
図2図2は実施形態にかかる配線部材を示す概略背面図である。
図3図3図2における領域A1の概略拡大図である。
図4図4図2における領域A2の概略拡大図である。
図5図5図2における領域A3の概略拡大図である。
図6図6図4におけるVI-VI線に沿った概略断面図である。
図7図7は配線部材を被着体に貼り付ける様子を示す説明図である。
図8図8は配線部材の変形例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)複数の線状伝送部材を含む幹線と、前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐線と、一方主面上に少なくとも前記幹線が固定された固定シートと、前記固定シートの他方主面において少なくとも一部が前記分岐線と重なる位置に設けられるカバーシートと、を備え、前記固定シートと前記カバーシートとの融着箇所は、少なくとも前記幹線の長手方向に対する側方に設けられ、前記分岐線を避けた位置に設けられる、配線部材である。固定シートに線状伝送部材が固定された後に固定シートとカバーシートとが融着されることも考えられる。この場合でも、カバーシートと固定シートとの融着箇所が分岐部分を避けた位置に設けられているため、融着に係る作業が容易となる。例えば固定シートとカバーシートとの融着時に融着用の治具が線状伝送部材を噛み込むことが抑制される。これにより、線状伝送部材が固定される固定シートに別のカバーシートが良好に融着されることが可能となる。
【0012】
(2)前記固定シートと前記カバーシートとの融着箇所は、少なくとも前記幹線の長手方向に対する側方の両端に設けられていてもよい。これにより、幹線を挟む位置で固定シートとカバーシートとが融着される。
【0013】
(3)前記カバーシートは、前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐部分と重なる分岐覆い部分を含んでもよい。これにより、分岐部分もカバーシートによって覆われる。
【0014】
(4)前記分岐覆い部分における前記固定シートとの融着箇所が分岐部分を囲う複数箇所に設けられていてもよい。これにより、分岐覆い部分において固定シートとカバーシートとが強固に固定される。
【0015】
(5)前記カバーシートは、前記固定シートの長手方向に沿って部分的に設けられていてもよい。これにより、カバーシートが設けられることによる配線部材の重量増加が抑制される。
【0016】
(6)前記カバーシートは、前記固定シートの長手方向に沿って間隔をあけて設けられている第1部分シート及び第2部分シートを含み、前記第1部分シートは前記幹線から一部の線状伝送部材が分岐する分岐部分を含む領域を覆い、前記第2部分シートは前記複数の線状伝送部材の一部の線状伝送部材が並行する並行部分を含む領域を覆い、前記第2部分シートと前記固定シートとの融着箇所は前記並行部分の両側方に設けられていてもよい。これにより、固定シートに第1部分シート及び第2部分シートが良好に融着されることが可能となる。
【0017】
(7)前記固定シートは、第1経路部分と、前記第1経路部分から分岐する第2経路部分とを含み、前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材は前記第1経路部分において他の一部の線状伝送部材に対して分岐して、前記第2経路部分上に固定され、前記カバーシートのうち分岐部分を覆う部分は前記第1経路部分と前記第2経路部分とのうち前記第1経路部分のみを覆っていてもよい。これにより、固定シートに対して分岐を覆う部分が設けられる領域が小さくなる。
【0018】
(8)前記固定シートは第1経路部分と前記第1経路部分から分岐する第2経路部分とを含み、前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材は前記第1経路部分において他の一部の線状伝送部材に対して分岐して前記第2経路部分に沿って延び、前記カバーシートのうち分岐部分を覆う部分は分岐形状に形成されて前記第1経路部分と前記第2経路部分との両方を覆っていてもよい。これにより、カバーシートのうち分岐を覆う部分も分岐した形状となる。
【0019】
(9)分岐部分において、前記複数の線状伝送部材のうちの一部の線状伝送部材が前記固定シート上で他の一部の線状伝送部材に対して分岐して、前記固定シートの側縁から外方に延びていてもよい。これにより、線状伝送部材に対して固定シート及びカバーシートが設けられる領域が小さくなることによって、配線部材の重量増加を抑制できる。
【0020】
(10)前記カバーシートは前記固定シートよりも剛性が高くてもよい。これにより、カバーシートによって配線部材の形状が保持される。
【0021】
(11)前記カバーシートにおける外面に両面粘着部材が貼り付けられ、前記両面粘着部材は分岐部分と重なっていてもよい。これにより、両面粘着部材が比較的広い領域に設けられる。
【0022】
(12)前記外面と前記両面粘着部材との粘着力は、前記他方主面と前記両面粘着部材との粘着力よりも大きくてもよい。これにより、配線部材が粘着剤によって被着体に貼り付けられて固定される際、固定シートに粘着剤が設けられる場合と比べて、固定強度が高くなる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
[実施形態]
以下、実施形態にかかる配線部材について説明する。図1は実施形態にかかる配線部材10を示す概略平面図である。図2は実施形態にかかる配線部材10を示す概略背面図である。図3図2における領域A1の概略拡大図である。図4図2における領域A2の概略拡大図である。図5図2における領域A3の概略拡大図である。図6図4におけるVI-VI線に沿った概略断面図である。
【0025】
配線部材10は、配線体12とカバーシート40とを備える。配線部材10は両面粘着部材50をさらに備える。配線部材10は両面粘着部材50によって被着体80に貼り付けられる。配線部材10は例えば車両に搭載される。かかる被着体80は車両において配線部材10の固定対象となる部材である。かかる被着体80は例えば、車両におけるボディフレーム、ボディパネル、内装パネルなどである。
【0026】
配線体12は、線状伝送部材20と固定シート30とを含む。線状伝送部材20は少なくとも1本含まれる。ここでは複数の線状伝送部材20が含まれる。各線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。固定シート30は、全体として扁平な形状に形成されている。複数の線状伝送部材20が固定シート30に固定されることによって、配線体12が扁平な形態に保たれる。図6に示す例では、1つの固定シート30に同じ径、構造の線状伝送部材20が複数配設されている。もっとも、複数の線状伝送部材20の径、構造等は適宜設定されていればよく、径、構造等の異なる線状伝送部材20が同じ固定シート30に配設されていてもよい。
【0027】
複数の線状伝送部材20は、車両における部品同士を接続する部材であることが想定される。線状伝送部材20の端部には、例えばコネクタCが設けられる。このコネクタCが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、線状伝送部材20が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材10は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材10として用いられる。コネクタCは、固定シート30に固定されていてもよい。
【0028】
複数の線状伝送部材20の経路は、接続先となる部品の位置等に応じて設定される。複数の線状伝送部材20が固定シート30に固定されることによって、複数の線状伝送部材20がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。複数の線状伝送部材20は、幹線から分岐線が分岐する態様で、固定シート30に固定されていてもよい。固定シート30も幹線が固定される部分から分岐線が固定される部分が分岐する形状に形成されていてもよい。ここでは複数の線状伝送部材20は固定シート30上で分岐している。複数の線状伝送部材20のうち一部の線状伝送部材20が他の一部の線状伝送部材20から分岐する部分は分岐部分DPとされる。図3及び図4に示されるようにここでは2つの分岐部分DP1、DP2が固定シート30上に位置している。
【0029】
固定シート30は、各分岐部分DP1、DP2に対応する位置において、第1経路部分31と第2経路部分32とを含む。第2経路部分32は、第1経路部分31から分岐する部分である。複数の線状伝送部材20のうちの一部の線状伝送部材20は第1経路部分31において他の一部の線状伝送部材20に対して分岐して、第2経路部分32上に固定される。第1経路部分は例えば幹線が固定される部分である。第2経路部分は分岐線が固定される部分である。幹線は、幹線の一部から分岐する分岐線を有する。幹線は分岐線の分岐の元となる複数の線状伝送部材を指し、例えば、幹線は分岐線よりも重量が大きい線状伝送部材(又は複数の線状伝送部材)、分岐線よりも本数が多い線状伝送部材(又は複数の線状伝送部材)として把握されうる。また、幹線は、分岐線よりも長い線状伝送部材(又は複数の線状伝送部材)として把握しても良い。
【0030】
線状伝送部材20は、伝送線本体22と被覆層24とを含む。伝送線本体22は、電気又は光等を伝送する。被覆層24は伝送線本体22を覆う。例えば、線状伝送部材20は、芯線と芯線の周囲の被覆層とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0031】
電気を伝送する線状伝送部材20としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材20の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0032】
また、線状伝送部材20は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0033】
固定シート30の一方主面上に、線状伝送部材20が固定される。固定シート30は、樹脂シートであってもよい。例えば、固定シート30は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂によって形成されていてもよい。固定シート30は一様充実断面を有するシートであってもよい。また、固定シート30は、編布、織布又は不織布等の繊維材であることも考えられる。また、固定シート30は、発泡シート等であることも考えられる。また、固定シート30は、1層構造を有していてもよく、複数層構造を有していてもよい。また、固定シート30は、金属層を有していてもよい。
【0034】
ここでは固定シート30は積層された第1層33及び第2層34を含む。固定シート30は2層構造である。固定シート30は第1層33及び第2層34以外の層は含まない。固定シート30は3層構造以上であってもよい。固定シート30は第1及び第2層34以外の層を含んでもよい。
【0035】
第1層33は樹脂が一様に詰まった一様充実断面を有する樹脂層でも良い。第1層33には線状伝送部材20が固定されている。第1層33は固定層である。第1層33の材料となる樹脂は例えば被覆層24と同じ樹脂である。第1層33の一方の表面が固定シート30の一方主面とされる。
【0036】
第2層34は繊維材層である。カバーシート40は第2層34に固定されている。第2層34の一方の表面が固定シート30の他方主面とされる。
【0037】
第1層33の他方の表面と第2層34の他方の表面とが接触しつつ、第1層33と第2層34とが固定されている。第1層33と第2層34との固定態様は特に限定されるものではないが、融着又は接着により固定されているとよい。特に、樹脂層である第1層33と繊維材層である第2層34とは、樹脂層の樹脂又は接着剤が繊維材層における繊維の間に入り込んで固定されるとよい。これによりいわゆるアンカー効果が発揮されて、第1層33及び第2層34が強固に固定される。ここでは第1層33と第2層34とが融着されている。つまり、樹脂層である第1層33の樹脂が流動性を有する状態で繊維材層である第2層34の繊維の間に入り込んだ後に硬化される。これにより、樹脂層の樹脂が繊維材層の繊維の間に入り込んだ状態が維持され、第1層33と第2層34とが固定される。第1層33及び第2層34は同じ大きさに形成されている。第1層33及び第2層34は一方が他方よりも大きく形成されていてもよい。第1層33及び第2層34は接触する領域が全体的に固定されている。第1層33及び第2層34は接触する領域の一部のみが固定されていてもよい。
【0038】
固定シート30は柔らかい部材であってもよい。例えば、第1層33が軟質PVCなど軟質な樹脂を材料とする一様充実断面を有する樹脂層であり、第2層34がPETを材料とする不織布であるなどして、固定シート30が柔らかい部材とされる。例えば、固定シート30は線状伝送部材20の曲げに追従可能な可撓性を有してもよい。つまり配線体12は厚み方向への曲げ(折目が固定シート30の主面に沿うような曲げ)が可能とされてもよい。
【0039】
線状伝送部材20は、固定シート30に固定されればよく、固定シート30に対する線状伝送部材20の固定構造は特に限定されない。かかる固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材20と固定シート30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、カバー、粘着テープなどが、線状伝送部材20を固定シート30に向けて押え込んだり、線状伝送部材20と固定シート30とを挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、線状伝送部材20と固定シート30とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0040】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、線状伝送部材20と固定シート30とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、線状伝送部材20と固定シート30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば線状伝送部材20と固定シート30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0041】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0042】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20と固定シート30とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20と固定シート30とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0043】
以下では、線状伝送部材20と固定シート30とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。
【0044】
複数の線状伝送部材20それぞれは、長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所で固定シート30に固定されていてもよい。複数の線状伝送部材20それぞれは、長手方向に沿って全体に一連に固定シート30に固定されていてもよい。
【0045】
カバーシート40は固定シート30の他方主面を覆う。カバーシート40は固定シート30の他方主面に固定されている。カバーシート40は固定シート30のうち線状伝送部材20が固定された部分を避けた部分に固定されている。
【0046】
カバーシート40は、固定シート30に対して全体的に重ねられてもよいし、一部に重ねられてもよい。カバーシート40は、固定シート30と同じ材料によって形成されていてもよいし、異なる材料によって形成されていてもよい。カバーシート40は、樹脂シートであってもよい。例えば、カバーシート40は、固定シート30と同様に、PVC、PE、PP、PET等の樹脂によって形成されていてもよい。
【0047】
固定シート30及びカバーシート40の一方は、他方よりも剛性が高くてもよい。ここではカバーシート40は固定シート30よりも高剛性に形成される。例えば、カバーシート40は、硬質PVC、ナイロン、PET、PPなどの硬質な樹脂材料によって一様充実断面を有するように形成される。カバーシート40は、配線体12の曲げを規制可能であってもよい。ここではカバーシート40は1つの樹脂層からなる一層構造であるものとして説明される。かかる樹脂層が固定シート30よりも高剛性とされる。カバーシート40は、複数層構造であってもよい。
【0048】
カバーシート40における樹脂層の表面と固定シート30における繊維材層の表面とが接触しつつ、カバーシート40と固定シート30とが固定されている。カバーシート40と固定シート30とは、融着により固定されている。カバーシート40と固定シート30とは、融着により固定されるものであれば特に限定されないが、例えば次の3つの形態が挙げられる。なお、カバーシート40と固定シート30とは、次の3つの形態のうちいずれの形態にかかる融着状態を呈していてもよく、カバーシート40と固定シート30との少なくとも一方が溶けて相互に固定できていれば良い。
【0049】
第1の形態は以下のようなものである。すなわちカバーシート40における樹脂層と固定シート30における繊維材層とは、カバーシート40における樹脂層の樹脂が超音波溶着などによって加熱されて溶けて固定シート30に接触し固着することによって、カバーシート40と固定シート30とが融着される。このとき、カバーシート40における樹脂層の樹脂は繊維材層の表面にのみ接触するものであってもよいし、繊維材層の内部に浸透するものであってもよい。カバーシート40における樹脂層の樹脂が繊維材層における繊維の間に入り込んで固定されると、いわゆるアンカー効果が発揮されて、カバーシート40と固定シート30とが強固に固定される。つまり、カバーシート40における樹脂層の樹脂が流動性を有する状態で固定シート30における繊維材層の繊維の間に入り込んだ後に硬化される。これにより、カバーシート40における樹脂層の樹脂が固定シート30における繊維材層の繊維の間に入り込んだ状態が維持され、カバーシート40と固定シート30とが固定される。
【0050】
第2の形態は以下のようなものである。すなわち固定シート30における固定層の樹脂が溶けて繊維材層に浸透する。そして繊維材層に浸透した固定層の樹脂が、カバーシート40の表面に接触し、固着することによって、カバーシート40と固定シート30とが融着される。
【0051】
第3の形態は以下のようなものである。すなわちカバーシート40を構成する樹脂が溶けて固定シート30における繊維材層に浸透する。また、固定シート30における固定層の樹脂も溶けて繊維材層に浸透する。そして、繊維材層内においてカバーシート40の樹脂と固定シート30の樹脂とが接触し、固着することによって、カバーシート40と固定シート30とが融着される。なお第3の形態において、カバーシート40を構成する樹脂が固定シート30における繊維材層に浸透することによって、いわゆるアンカー効果が発揮されて、カバーシート40と固定シート30とが強固に固定される。
【0052】
カバーシート40は、固定シート30の長手方向に沿って部分的に設けられている。カバーシート40は、複数の部分シート41、42、43、44を含む。各部分シート41、42、43、44は、固定シート30の長手方向に沿った一部のみを覆う。各部分シート41、42、43、44は固定シート30の長手方向に沿って間隔をあけて設けられている。カバーシート40は分岐覆い部分を含む。分岐覆い部分は分岐部分DP1、DP2を含む領域を覆う。ここでは部分シート41、42が分岐部分DP1、DP2を覆っている。部分シート41、42がそれぞれ分岐覆い部分である。カバーシート40は分岐覆い部分を含んでいなくてもよい。つまりカバーシート40は分岐部分DPより端末側のみを覆っていてもよい。
【0053】
各部分シート41、42、43、44は、方形状に形成されているが、その他、凹多角形状、円形状、楕円形状等であってもよい。各部分シート41、42、43、44は固定シート30を覆う領域が異なる。部分シート41、42は固定シート30の中間部であって、分岐部分DP1、DP2に設けられている。部分シート43は固定シート30の端部に設けられている。部分シート44は固定シート30の中間部であって、分岐部分DP1、DP2ではない部分に設けられている。
【0054】
部分シート41は、分岐部分DP1に設けられている。分岐部分DP1は複数の線状伝送部材20が4分岐している部分である。分岐部分DP1では分岐点から4つの分岐線が延びている。4つの分岐線のうち分岐点周りに連続する2つの分岐線は直交している。分岐点周りに連続する2つの分岐線のなす角は直角以外であってもよい。
【0055】
図3に示されるように、部分シート41は分岐点周りに連続する2つの分岐線に挟まれる位置、つまり分岐点周りに連続する2つの分岐線の股部に相当する位置において固定シート30に融着されている。従って、分岐覆い部分である部分シート41における固定シート30との融着箇所WP1は、分岐部分DP1を避けた位置に設けられている。部分シート41は4つの股部それぞれの位置において固定シート30に融着されている。部分シート41と固定シート30との4つの融着箇所WP1は分岐部分DP1を囲う位置に位置する。従って、分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP1が分岐部分DP1を囲う複数箇所に設けられている。分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP1は1箇所であってもよい。融着箇所WP1は少なくとも幹線の長手方向に対する側方に設けられ、分岐線を避けた位置に設けられていればよい。好ましくは、融着箇所WP1は少なくとも幹線の長手方向に対する両側方に設けられているとよい。
【0056】
図4に示されるように、部分シート42は、分岐部分DP2に設けられている。分岐部分DP2は複数の線状伝送部材20が3分岐している部分である。分岐部分DP2では分岐点から3つの分岐線が延びている。3つの分岐線のうち2つの分岐線が相互に逆向きに延び、残りの1つの分岐線が2つの分岐線の延びる方向と交差する方向に延びている。分岐部分DP2において1つの方向に沿って延びる幹線から分岐線が分岐しているととらえることもできる。幹線と分岐線とは直交している。幹線と分岐線とのなす角は、直角以外であってもよい。
【0057】
部分シート42は、例えば線状伝送部材20の側方において固定シート30に融着される。従って、分岐覆い部分である部分シート42における固定シート30との融着箇所WP2、WP3は、分岐部分DP2を避けた位置に設けられている。また部分シート42と固定シート30とは3箇所で融着されている。部分シート42と固定シート30との3つの融着箇所WP2、WP3は分岐部分DP2を囲う位置に位置する。従って、分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP2、WP3が分岐部分DP2を囲う複数箇所に設けられている。分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP2、WP3は1箇所であってもよい。融着箇所WP2、WP3は少なくとも幹線の長手方向に対する側方に設けられ、分岐線を避けた位置に設けられていればよい。好ましくは、融着箇所WP2、WP3は少なくとも幹線の長手方向に対する両側方に設けられているとよい。図4に示すように、分岐線の両側方の2つの融着箇所WP2よりも幹線の一方側方(分岐線が延びない側)の1つの融着箇所WP3が大きくなってもよい。
【0058】
図5に示されるように、部分シート43は、ここでは固定シート30における複数(ここでは5つ)の端部すべてに設けられている。もっとも、固定シート30における複数の端部すべてに部分シート43が設けられる必要はない。固定シート30における複数の端部のうち一部の端部にのみ部分シート43が設けられていてもよい。ここで部分シート43が固定シート30の端部に設けられているとは、例えば部分シート43の端縁及び固定シート30の端縁の一方が他方から長手方向に沿って20mm以内に位置することを言う。
【0059】
部分シート43は、例えば線状伝送部材20の側方において固定シート30に融着される。部分シート43と固定シート30とは2箇所で融着されている。部分シート43と固定シート30との2つの融着箇所WP4は線状伝送部材20の両側方に位置する。部分シート43と固定シート30との2つの融着箇所WP4は固定シート30の両側縁部に位置する。
【0060】
部分シート44は、固定シート30の中間部であって、1つの方向に沿って延びる部分に設けられている。部分シート44は、部分シート43と同様に線状伝送部材20の側方において固定シート30に融着される。
【0061】
部分シート41、42は分岐部分DP1、DP2を含む領域を覆っている。部分シート41、42は分岐部分DP1、DP2を避けた位置で固定シート30と固定されている。また部分シート43、44は並行部分を含む領域を覆っている。並行部分は複数の線状伝送部材20のうち一部の線状伝送部材20が並行する部分である。部分シート43、44と固定シート30との融着箇所は並行部分の両側方に設けられている。従って、部分シート41、42は第1部分シートの一例である。また部分シート43、44は第2部分シートの一例である。
【0062】
両面粘着部材50は、カバーシート40上に貼り付けられている。両面粘着部材50は、両面が粘着性を示すシート状に形成されている。両面粘着部材50は、カバーシート40に接する部分で粘着性を示すと共に、その反対側の部分でも粘着性を示す部材である。両面粘着部材50は、カバーシート40の外面(配線体12に固定される面とは反対側の面)に粘着して面状に広がっている。両面粘着部材50の外面が被着体80に粘着している。両面粘着部材50は、基材シートの両面に粘着部材が設けられたものであってもよい。両面粘着部材50は、基材シートのないものであってもよい。
【0063】
配線体12に対して両面粘着部材50が設けられる領域は適宜設定される。ここでは両面粘着部材50は、各部分シート41、42、43、44の外面に全体的に設けられている。従って両面粘着部材50は、各部分シート41、42、43、44の外面形状に合わせて方形状に形成されている。両面粘着部材50は、凹多角形状、円形状、楕円形状等であってもよい。両面粘着部材50は、各部分シート41、42、43、44の外面形状とは異なる形状に形成されていてもよい。例えば、両面粘着部材50は、部分シート41、42、43、44の外縁に沿う枠状に設けられていてもよい。またカバーシート40が固定シート30のように大きいシートである場合、カバーシート40の一部に両面粘着部材50が設けられるとよい。
【0064】
カバーシート40において両面粘着部材50に接触する面は第1接触面CS1とされる。固定シート30においてカバーシート40と接触する面は第2接触面CS2とされる。第1接触面CS1と両面粘着部材50との粘着力は、第2接触面CS2に両面粘着部材50が設けられた場合の第2接触面CS2と両面粘着部材50との粘着力よりも大きい。かかる粘着力は、例えば同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854の各試験)で別々に試験した結果を用いて評価することができる。
【0065】
なお本例のようにカバーシート40のうち固定シート30を覆う部分の一部分のみが固定シート30に固定される場合、固定シート30のうちカバーシート40に覆われつつカバーシート40と固定されない部分に両面粘着部材50が設けられて、第2接触面CS2と両面粘着部材50との粘着力が測定されることができる。またカバーシート40のうち固定シート30を覆う部分の全部が固定シート30に固定される場合、固定シート30のうちカバーシート40に覆われない部分が第2接触面CS2とみなされてもよい。つまり、カバーシート40のうち固定シート30を覆う部分の全部が固定シート30に固定される場合、固定シート30のうちカバーシート40に覆われない部分に両面粘着部材50が設けられて、第2接触面CS2と両面粘着部材50との粘着力が測定されることができる。
【0066】
上述のようにカバーシート40は一様充実断面を有する樹脂層からなる1層構造を有している。また第1層33と第2層34との2層構造を有する固定シート30のうち繊維材層である第2層34にカバーシート40が固定されている。このため、第1接触面CS1は一様充実断面を有する樹脂層の表面である。また第2接触面CS2は繊維材層の表面である。これにより、第1接触面CS1及び第2接触面CS2に同じ大きさの両面粘着部材50が設けられた場合に、第1接触面CS1における両面粘着部材50との有効接触面積が、第2接触面CS2における両面粘着部材50との有効接触面積よりも大きくなる。これにより、第1接触面CS1と両面粘着部材50との粘着力が第2接触面CS2と両面粘着部材50との粘着力よりも大きい構成が簡易に得られる。
【0067】
より詳細には、繊維材層の表面では、複数の繊維それぞれの流れ(例えば繊維間の空隙又は繊維の曲げなど)に起因する微小な凹凸が生じている。繊維材層の表面に両面粘着部材50が貼り付けられた場合、両面粘着部材50は当該微小な凹凸のうち凸部に接触して、凹部に接触しない。このため、両面粘着部材50と繊維材層とが実際に接触している有効接触面積は両面粘着部材50の大きさよりも小さくなる。一方、一様充実断面を有する樹脂層の表面では、繊維材層ほどの凹凸が生じていない。このため、両面粘着部材50と一様充実断面を有する樹脂層とが実際に接触している有効接触面積は両面粘着部材50の大きさと同じかそれよりもわずかに小さい程度となる。このため、第1接触面CS1における両面粘着部材50との有効接触面積が、第2接触面CS2における両面粘着部材50との有効接触面積よりも大きくなる。
【0068】
図7は配線部材10を被着体80に貼り付ける様子を示す説明図である。
【0069】
ここではカバーシート40は固定シート30よりも高剛性である。このため、配線部材10はカバーシート40が設けられた部分において自重などによって撓むことが抑制される。これにより、配線部材10はカバーシート40が設けられた部分において、図7に示すように平坦状に保たれやすくなる。この結果、両面粘着部材50が被着体80に貼り付けられやすくなる。
【0070】
固定シート30に線状伝送部材20が固定された後に固定シート30とカバーシート40とが融着されることも考えられる。この場合でも、配線部材10によると、分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP1、WP2、WP3が分岐部分DP1、DP2を避けた位置に設けられている。このため、固定シート30とカバーシート40との融着時に融着用の治具が線状伝送部材20を噛み込むことが抑制される。これにより、線状伝送部材20が固定される固定シート30に別のカバーシート40が良好に融着されることが可能となる。
【0071】
また分岐覆い部分における固定シート30との融着箇所WP1、WP2、WP3が分岐部分DP1、DP2を囲う複数箇所に設けられている。これにより、分岐覆い部分において固定シート30とカバーシート40とが強固に固定される。
【0072】
またカバーシート40は、固定シート30の長手方向に沿って部分的に設けられている。これにより、カバーシート40が設けられることによる配線部材10の重量増加が抑制される。
【0073】
またカバーシート40は、第1部分シートである部分シート41、42と、第2部分シートである部分シート43、44を含む。第1部分シートにおいて分岐部分DP1、DP2を避けた位置で固定シート30と固定されている。第2部分シートにおいて並行部分を避けた位置で固定シート30と固定されている。これにより、固定シートに第1部分シート及び第2部分シートが良好に融着されることが可能となる。
【0074】
また固定シート30は、第1経路部分31と第2経路部分32とを含む。分岐覆い部分は第1経路部分31と第2経路部分32とのうち第1経路部分31のみを覆っている。これにより、固定シート30に対して分岐覆い部分が設けられる領域が小さくなる。
【0075】
またカバーシート40は固定シート30よりも剛性が高い。これにより、カバーシート40によって配線部材10の形状が保持される。これにより、配線部材10のうちカバーシート40が固定された部分が平面状に保たれやすくなる。これにより、両面粘着部材50も平面状に保たれやすくなり、両面粘着部材50が被着体80に貼り付けられやすくなる。
【0076】
またカバーシート40における外面に両面粘着部材50が貼り付けられ、両面粘着部材50は分岐部分DP1、DP2と重なっている。これにより、両面粘着部材50が比較的広い領域に設けられる。カバーシート40における外面と両面粘着部材50との粘着力は、固定シート30における他方主面と両面粘着部材50との粘着力よりも大きい。これにより、配線部材10が両面粘着部材50によって被着体80に貼り付けられて固定される際、固定シート30に両面粘着部材50が設けられる場合と比べて、固定強度が高くなる。
【0077】
[変形例]
図8は配線部材10の変形例を示す背面図である。
【0078】
図8に示す配線部材110では分岐部分DP1における固定シート130及び部分シート141の形状が異なっている。
【0079】
分岐部分DP1における固定シート130の分岐の数は複数の線状伝送部材20の分岐の数よりも少ない。複数の線状伝送部材20は4分岐しているのに対して、固定シート130は3分岐している。第1経路部分31から第2経路部分32が1つのみ分岐している。固定シート130は1つの分岐線の方向に延長されていない。当該1つの分岐線は固定シート130の側縁から固定シート130の外方に延出している。なお分岐部分DP1、DP2において固定シート130が分岐していない場合もあり得る。
【0080】
部分シート141は固定シート130の分岐する方向に分岐している。ここでは部分シート141は3分岐している。分岐覆い部分である部分シート141は分岐形状に形成されて第1経路部分31と第2経路部分32との両方を覆っている。部分シート141は2つの角が凹角となる凹八角形状に形成されている。なお分岐部分DP2において部分シート42が部分シート141のように3分岐する形状に形成されていてもよい。また分岐部分DP1において固定シート30のように4分岐している場合、部分シート41が4分岐する形状に形成されていてもよい。
【0081】
部分シート141と固定シート130とは、4箇所で融着されている。4箇所の融着箇所WP5、WP6のうち2つの融着箇所WP5は、部分シート141の凹角となる部分に設けられている。各融着箇所WP5は、凹角をなす2辺に沿って延びるように設けられている。各融着箇所WP5はL字状となっている。また4箇所の融着箇所WP5、WP6のうち残りの2つの融着箇所WP6は、一方に長尺とされている。融着箇所WP5、WP6は、融着箇所WP1よりも大きい領域に設けられる。これにより部分シート141と固定シート130との固定強度が高まる。
【0082】
なお両面粘着部材50は部分シート141に対して全面的に設けられていてもよい。両面粘着部材50は分岐点を含む部分に図5と同様の方形状に設けられていてもよい。
【0083】
本例の配線部材110によると、部分シート141が第1経路部分31と第2経路部分32との両方を覆っている。これにより、分岐覆い部分である部分シート141も分岐した形状となる。この際、部分シート141が固定シート30よりも高剛性であると、部分シート141のうち第2経路部分32を覆う部分によって分岐線の基端部を経路規制することができる。
【0084】
また分岐部分DP1において、複数の線状伝送部材20のうちの一部の線状伝送部材20が固定シート130上で他の線状伝送部材20に対して分岐して、固定シート130の側縁から外方に延びている。これにより、線状伝送部材20に対して固定シート130及びカバーシート40が設けられる領域が小さくなることによって、配線部材110の重量増加を抑制できる。
【0085】
このほか実施形態においてカバーシート40の外面に両面粘着部材50が設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。カバーシート40の外面に両面粘着部材50が設けられていなくてもよい。この場合、配線部材はクランプなどの係止部材によって被着体に係止されて固定されることが考えられる。
【0086】
また実施形態においてカバーシート40が固定シート30よりも高剛性を有しているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。カバーシート40は、固定シート30と同じかそれよりも低い剛性を有していてもよい。例えば、カバーシート40はフィルムなどであってもよい。
【0087】
また実施形態において部分シート41、42、43、44が複数設けられているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。部分シート41、42、43、44の数は、適宜、省略、追加が可能である。部分シート41、42、43、44のうち少なくとも部分シート41、42のいずれか1つが設けられているとよい。
【0088】
また実施形態において、第1接触面CS1が一様充実断面を有する樹脂層の表面であり、第2接触面CS2が繊維材層の表面であることによって、第1接触面CS1と両面粘着部材50との粘着力が、第2接触面CS2と両面粘着部材50との粘着力よりも大きいものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第1接触面CS1及び第2接触面CS2はこれ以外の組み合わせであってもよい。例えば、第1接触面CS1及び第2接触面CS2は共に一様充実断面を有する樹脂層の表面でありつつ、第1接触面CS1は第2接触面CS2よりも平滑に形成されていてもよい。つまり第1接触面CS1は第2接触面CS2よりも表面の凹凸形状が少なく(表面粗さが小さく)形成されていてもよい。また例えば、第1接触面CS1を構成する材料が第2接触面CS2を構成する材料よりも両面粘着部材50との相性が良い部材であってもよい。
【0089】
また配線部材10は両面粘着部材50が被着体80に粘着されていない状態で搬送されることも考えられる。この場合、両面粘着部材50が被着体80に粘着される前の状態で、配線部材10は両面粘着部材50の外面に設けられた剥離部材をさらに備えているとよい。
【0090】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
10、110 配線部材
12 配線体
20 線状伝送部材
22 伝送線本体
24 被覆層
30、130 固定シート
31 第1経路部分
32 第2経路部分
33 第1層
34 第2層
40 カバーシート
41、42、141 部分シート(分岐覆い部分)
43、44 部分シート
50 両面粘着部材
80 被着体
C コネクタ
CS1 第1接触面
CS2 第2接触面
WP1、WP2、WP3、WP4、WP5、WP6 融着箇所
DP、DP1、DP2 分岐部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8