(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電力制御回路
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20221129BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20221129BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J7/34 G
H02J7/00 302B
H02J7/00 302D
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2019207419
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2021-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】奈良岡 順
(72)【発明者】
【氏名】中平 強
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082824(JP,A)
【文献】特開2018-098823(JP,A)
【文献】特開2006-254698(JP,A)
【文献】特開2002-354707(JP,A)
【文献】特開2005-129036(JP,A)
【文献】特開2006-074922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 9/00-11/00
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源が供給する電力で充電されるリチウムイオンキャパシタと、
前記外部電源が供給する電力で動作する第1負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第1保護回路と、
前記外部電源が供給する電力で動作し、且つ、前記第1負荷よりも少ない消費電力で動作する第2負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第2保護回路と
を備え、
前記第1保護回路は、
前記第1負荷及び前記第2負荷に含まれず、前記リチウムイオンキャパシタと前記第1負荷との間に接続されている第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子を制御する第1電圧検出回路とを備え、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が第1電圧未満となった場合に前記第1負荷への電流の供給を停止し、
前記第2保護回路は、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧より低い第2電圧未満となった場合に前記第2負荷への電流の供給を停止する、電力制御回路。
【請求項2】
前記第1電圧検出回路は、
前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタから前記第1スイッチング素子を介して供給される電流によって動作可能に構成され、
前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧以上である場合に前記第1スイッチング素子をオン状態に維持させ、
前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧未満となった場合に前記第1スイッチング素子をオフ状態に遷移させる、
請求項1に記載の電力制御回路。
【請求項3】
前記第1保護回路は、前記第1スイッチング素子を介して前記リチウムイオンキャパシタを外部電源に接続可能に構成され、
前記第1スイッチング素子は、オフ状態に遷移している場合であっても、前記外部電源から前記リチウムイオンキャパシタに向かう電流が流れるように構成される、請求項2に記載の電力制御回路。
【請求項4】
前記リチウムイオンキャパシタは、前記第1負荷とともに回路基板に実装され、
前記リチウムイオンキャパシタの温度は、前記第1負荷の発熱量が大きいほど高くなり、
前記リチウムイオンキャパシタの仕様として定められる端子電圧の下限は、
前記リチウムイオンキャパシタの温度が所定温度より高くなっている場合において前記第1電圧に対応し、
前記リチウムイオンキャパシタの温度が前記所定温度以下になっている場合において前記第2電圧に対応する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電力制御回路。
【請求項5】
外部電源が供給する電力で充電されるリチウムイオンキャパシタと、
前記外部電源が供給する電力で動作する第1負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第1保護回路と、
前記外部電源が供給する電力で動作し、且つ、前記第1負荷よりも少ない消費電力で動作する第2負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第2保護回路と
を備え、
前記第1保護回路は、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が第1電圧未満となった場合に前記第1負荷への電流の供給を停止し、
前記第2保護回路は、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧より低い第2電圧未満となった場合に前記第2負荷への電流の供給を停止し、
前記リチウムイオンキャパシタは、前記第1負荷とともに回路基板に実装され、
前記リチウムイオンキャパシタの温度は、前記第1負荷の発熱量が大きいほど高くなり、
前記リチウムイオンキャパシタの仕様として定められる端子電圧の下限は、
前記リチウムイオンキャパシタの温度が所定温度より高くなっている場合において前記第1電圧に対応し、
前記リチウムイオンキャパシタの温度が前記所定温度以下になっている場合において前記第2電圧に対応する、
電力制御回路。
【請求項6】
前記第1保護回路は、前記第1負荷及び前記第2負荷に
対して前記外部電源に接続される節点を介してレギュレータに供給した電力を供給するように構成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の電力制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の電源として用いられる二次電池の電圧が低下して放電が停止された後でも、電気機器の最低限の機能を果たせるだけの電流を流す二次電池パックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックアップ対象の負荷に電力を供給する期間を長くすることが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、バックアップ対象の負荷に電力を供給する期間を長くできる電力制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る電力制御回路は、外部電源が供給する電力で充電されるリチウムイオンキャパシタと、前記外部電源が供給する電力で動作する第1負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第1保護回路と、前記外部電源が供給する電力で動作し、且つ、前記第1負荷よりも少ない消費電力で動作する第2負荷に対して、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタの放電電流を供給する第2保護回路とを備え、前記第1保護回路は、前記第1負荷及び前記第2負荷に含まれず、前記リチウムイオンキャパシタと前記第1負荷との間に接続されている第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子を制御する第1電圧検出回路とを備え、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が第1電圧未満となった場合に前記第1負荷への電流の供給を停止し、前記第2保護回路は、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧より低い第2電圧未満となった場合に前記第2負荷への電流の供給を停止する。このようにすることで、電力制御回路は、リチウムイオンキャパシタを第1負荷及び第2負荷のバックアップ電源として用いる場合に、リチウムイオンキャパシタの充電量を所定値以上残した状態で第1負荷を止められる。その結果、第2負荷に電力を供給できる期間が長くなる。
【0007】
一実施形態に係る電力制御回路において、前記第1保護回路は、前記リチウムイオンキャパシタと前記第1負荷との間に接続されている第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子を制御する第1電圧検出回路とを備え、前記第1電圧検出回路は、前記外部電源から電力が供給されなくなった場合に前記リチウムイオンキャパシタから前記第1スイッチング素子を介して供給される電流によって動作可能に構成され、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧以上である場合に前記第1スイッチング素子をオン状態に維持させ、前記リチウムイオンキャパシタの端子電圧が前記第1電圧未満となった場合に前記第1スイッチング素子をオフ状態に遷移させてよい。このようにすることで、第1保護回路が第1負荷を止めた後に無駄な電力を消費しない。その結果、第2負荷に電力を供給できる期間が長くなる。
【0008】
一実施形態に係る電力制御回路において、前記第1保護回路は、前記第1スイッチング素子を介して前記リチウムイオンキャパシタを外部電源に接続可能に構成され、前記第1スイッチング素子は、オフ状態に遷移している場合であっても、前記外部電源から前記リチウムイオンキャパシタに向かう電流が流れるように構成されてよい。このようにすることで、第1保護回路の状態にかかわらず、外部電源が復電したときにリチウムイオンキャパシタが充電される。その結果、復電時の復帰が容易になる。
【0009】
一実施形態に係る電力制御回路において、前記リチウムイオンキャパシタは、前記第1負荷とともに回路基板に実装され、前記リチウムイオンキャパシタの温度は、前記第1負荷の発熱量が大きいほど高くなり、前記リチウムイオンキャパシタの仕様として定められる端子電圧の下限は、前記リチウムイオンキャパシタの温度が所定温度より高くなっている場合において前記第1電圧に対応し、前記リチウムイオンキャパシタの温度が前記所定温度以下になっている場合において前記第2電圧に対応してよい。このようにすることで、リチウムイオンキャパシタは、その使用温度範囲内においてできるだけ広い電圧範囲で活用される。その結果、第2負荷に電力を供給できる期間が長くなる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バックアップ対象の負荷に電力を供給する期間を長くできる電力制御回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例1に係る電力制御回路の回路図である。
【
図2】比較例2に係る電力制御回路の回路図である。
【
図3】一実施形態に係る電力制御回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】リチウムイオンキャパシタの端子電圧の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図7】リチウムイオンキャパシタと第1負荷とが基板に実装されている構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0013】
(比較例1)
図1に示されるように、比較例1に係る電力制御回路910は、電源911と、プロセッサ912と、RTC(Real Time Clock)913とを備える。電源911は、プロセッサ912に電力を供給する。電源911が電力を供給できなくなった場合、プロセッサ912は、動作を停止する。
【0014】
電力制御回路910は、RTC913との間に直列に接続されているダイオード914と、RTC913に対して並列に接続されている電気二重層キャパシタ915とを更に備える。電源911は、ダイオード914を介して、RTC913に電力を供給するとともに、電気二重層キャパシタ915に電力を供給して電気二重層キャパシタ915を充電する。電源911が電力を供給できなくなった場合、電気二重層キャパシタ915が放電してRTC913に電力を供給する。RTC913は、電気二重層キャパシタ915が放電する電力によって動作できる。その結果、電力制御回路910は、RTC913に対するバックアップ電源として機能し得る。
【0015】
しかし、電気二重層キャパシタ915は、自己放電しやすい。よって、電気二重層キャパシタ915は、長期間にわたって負荷をバックアップする用途に向いていない。
【0016】
図1において、電気二重層キャパシタ915がボタン電池等の一次電池に置き換えられる場合、一次電池がRTC913のバックアップ電源として機能し得る。しかし、一次電池は、充電できないために交換が必要である。また、一次電池が電源911の停止時にバックアップを開始するように回路を追加する必要がある。
【0017】
また、電力制御回路910は、RTC913につながる1つの系統だけバックアップでき、プロセッサ912に対するバックアップ電源を別途備える必要がある。
【0018】
(比較例2)
図2に示されるように、比較例2に係る電力制御回路920は、リチウムイオン二次電池921と、正極端子926と、負極端子927とを備える。リチウムイオン二次電池921は、複数の電池セルを含んでよい。リチウムイオン二次電池921の正極は、正極端子926に接続されている。リチウムイオン二次電池921の負極は、負極端子927に接続されている。正極端子926及び負極端子927は、負荷に接続される。電力制御回路920は、正極端子926及び負極端子927から負荷に電流を供給することによって、負荷に対するバックアップ電源として機能する。リチウムイオン二次電池921の充電率(SOC:State of Charge)は、端子電圧と正の相関を有する。つまり、リチウムイオン二次電池921の端子電圧が高いほど、SOCが高い。リチウムイオン二次電池921は、SOCが高いほど長時間にわたって放電できる。
【0019】
負荷は、所定値以上の消費電力で動作する重負荷と、所定値未満の消費電力で動作する微小負荷とを含む。重負荷は、例えばプロセッサ912を含む。微小負荷は、例えばRTC913を含む。
【0020】
リチウムイオン二次電池921の負極と電力制御回路920の負極端子927とは、並列の2本の経路で接続されている。1つの経路は、スイッチ923を含む。もう1つの経路は、スイッチ924と抵抗925との直列回路を含む。スイッチ923及び924は、閉じた状態で配線に電流が流れるように導通させる。スイッチ923及び924は、開いた状態で配線に電流が流れないように遮断する。
【0021】
電力制御回路920は、スイッチ923及び924の開閉を制御するスイッチ制御部922を更に備える。スイッチ制御部922は、リチウムイオン二次電池921の電圧に基づいて、スイッチ923及び924を制御する。
【0022】
スイッチ制御部922は、リチウムイオン二次電池921の電圧が所定電圧以上の場合、つまり、SOCが所定値以上の場合、スイッチ923を閉じ、スイッチ924を開く。この場合、リチウムイオン二次電池921の端子電圧は、正極端子926と負極端子927との間の電圧として出力され、正極端子926と負極端子927との間に接続される負荷に印加される。
【0023】
スイッチ制御部922は、リチウムイオン二次電池921の電圧が第1所定値未満の場合、つまり、SOCが所定値未満の場合、スイッチ923を開き、スイッチ924を閉じる。この場合、リチウムイオン二次電池921は、抵抗925を含む配線を介して負荷に電流を供給する。スイッチ制御部922は、抵抗925の電圧に基づいて、リチウムイオン二次電池921の放電電流を測定する。スイッチ制御部922は、リチウムイオン二次電池921の放電電流が所定値以上となった場合、スイッチ924を開き、リチウムイオン二次電池921の放電を停止させる。スイッチ制御部922は、リチウムイオン二次電池921の放電電流が所定値未満となることを確認した上でスイッチ924を閉じ、リチウムイオン二次電池921の放電を再開させる。このようにすることで、リチウムイオン二次電池921の放電電流が制限され、放電の継続時間が長くされる。
【0024】
負荷は、電流の供給が停止した場合に、スイッチ923及び924の開閉等の手段によって微小負荷に電流を供給する配線を導通させつつ重負荷に電流を供給する配線を遮断する。このようにすることで、負荷全体に供給される電流が所定値未満となるように制御される。その結果、スイッチ制御部922は、スイッチ924を閉じた場合に負荷に流れる電流が所定値未満となることを確認できる。この場合、電力制御回路920は、微小負荷に対するバックアップ電源として機能できる。
【0025】
電力制御回路920は、上述してきたように微小負荷だけでなく重負荷に対するバックアップ電源としても機能できる。電力制御回路920は、正極端子926と負極端子927とで構成される1つの系統から微小負荷及び重負荷の両方にバックアップの電流を供給している。言い換えれば、電力制御回路920は、微小負荷及び重負荷の両方によって1つの系統からバックアップの電流を吸い出される。重負荷自身が動作を停止することによってはじめて、重負荷による電流の吸い出しが停止する。したがって、電力制御回路920が微小負荷だけに電流を供給する動作は、重負荷自身の制御に依存する。
【0026】
リチウムイオン二次電池921の放電電流を測定するために用いられる抵抗925において、負荷の動作に寄与しない消費電力が発生する。このような消費電力は、リチウムイオン二次電池921が放電を継続できる時間を減少させる。
【0027】
リチウムイオン二次電池921は、使用可能な温度範囲が狭く、限られた条件でしか使用できない。電力制御回路920が条件から外れた環境で使用される場合、その信頼性が低下する。
【0028】
リチウムイオン二次電池921は、自己放電しやすい。よって、リチウムイオン二次電池921は、長期間にわたって在庫として保管されにくいし、長期間にわたって負荷をバックアップする用途にも向いていない。
【0029】
リチウムイオン二次電池921は、過充電によって早く劣化したり故障したりする。よって、過充電保護回路によってリチウムイオン二次電池921の充電電流を制御する必要がある。電力制御回路920は、過充電保護回路を備えることによって小型化されにくくなる。その結果、電力制御回路920の設置場所が限定される。
【0030】
以上述べてきたリチウムイオン二次電池921の課題は、
図1において電気二重層キャパシタ915をリチウムイオン二次電池921で置き換えた場合でも同様に生じ得る課題である。
【0031】
以上述べてきたように、各比較例に係る構成において、電力制御回路910及び920は、負荷を長期間バックアップするための種々の課題を有している。
【0032】
そこで、本開示は、負荷を長期間にわたってバックアップできる電力制御回路1(
図3等参照)を説明する。電力制御回路1は、エッジコンピュータゲートウェイの用途に適用されてよい。電力制御回路1は、IoT(Internet of Things)のゲートウェイ端末において用いられてよい。
【0033】
(本開示の一実施形態)
図3に示されるように、一実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40と、第1保護回路10と、第2保護回路20と、レギュレータ30とを備える。リチウムイオンキャパシタ40は、一端において接地点80に接続され、他の一端において第1保護回路10及び第2保護回路20に接続される。第1保護回路10は、一端においてリチウムイオンキャパシタ40に接続され、他の一端においてレギュレータ30に接続される。レギュレータ30は、一端において第1保護回路10に接続され、他の一端において第1負荷61に接続される。第2保護回路20は、一端においてリチウムイオンキャパシタ40に接続され、他の一端においてダイオード52を介して第2負荷62に接続される。ダイオード52は、第2保護回路20から第2負荷62に向く方向を順方向として接続される。電力制御回路1は、レギュレータ30と第1負荷61との間に位置する節点71と、ダイオード52と第2負荷62との間に位置する節点72とを有する。電力制御回路1は、ダイオード51を更に備える。ダイオード51は、節点71と節点72との間に、節点71から節点72に向く方向を順方向として接続される。電力制御回路1は、第1保護回路10とレギュレータ30との間で、外部電源8に接続される。
【0034】
レギュレータ30は、外部電源8から供給される電力を、電圧又は電流が所定値となるように制御して第1負荷61及び第2負荷62に供給する。レギュレータ30は、スイッチングレギュレータとして構成されてもよい。レギュレータ30は、降圧型のスイッチングレギュレータとして構成されてもよいし、昇圧型のスイッチングレギュレータとして構成されてもよい。
【0035】
リチウムイオンキャパシタ40は、電気二重層キャパシタ915及びリチウムイオン二次電池921の長所を両立した性能を実現し得る蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ40は、多くの電荷を充電しているほど、長時間にわたって放電できる。リチウムイオンキャパシタ40に充電される電荷量は、端子電圧と正の相関を有する。つまり、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が高いほど、充電されている電荷量が多くなる。その結果、端子電圧が高いほど、リチウムイオンキャパシタ40が長時間にわたって放電できる。
【0036】
外部電源8は、レギュレータ30に電力を供給するとともに、第1保護回路10を介してリチウムイオンキャパシタ40を充電できる。外部電源8は、リチウムイオンキャパシタ40の充電電圧を制御する回路を含んでもよい。外部電源8は、例えば、リチウムイオンキャパシタ40の充電上限電圧保護機能を有してもよい。外部電源8は、リチウムイオンキャパシタ40を充電する電圧と、レギュレータ30に印加する電圧とを、同じ電圧に制御してもよいし、異なる電圧に制御してもよい。
【0037】
外部電源8が供給する電力は、第1負荷61及び第2負荷62、並びに、リチウムイオンキャパシタ40に供給される。レギュレータ30は、外部電源8から供給された電力を所定電圧の直流電力に制御して第1負荷61及び第2負荷62に供給する。リチウムイオンキャパシタ40は、外部電源8から供給された電力で充電される。外部電源8は、リチウムイオンキャパシタ40の充電を制御する充電制御回路を含んでよい。外部電源8は、リチウムイオンキャパシタ40をCCCV(Constant Current, Constant Voltage)モードで充電できるように出力する電圧を制御してよい。レギュレータ30は、外部電源8がリチウムイオンキャパシタ40を充電するために制御する電圧の大きさにかかわらず、所定電圧の直流電力を第1負荷61及び第2負荷62に供給できる。
【0038】
外部電源8が停止して電力を供給できない場合、リチウムイオンキャパシタ40が放電して、第1負荷61又は第2負荷62に電力を供給する。第1保護回路10及び第2保護回路20は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧に基づいて電流を流すか遮断するか制御する。
【0039】
リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧以上である場合、第1保護回路10は、リチウムイオンキャパシタ40とレギュレータ30との間を導通させ、リチウムイオンキャパシタ40からの電力をレギュレータ30に供給する。リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第1電圧未満である場合、第1保護回路10は、リチウムイオンキャパシタ40とレギュレータ30との間を遮断し、レギュレータ30への電力供給を停止する。
【0040】
リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第1電圧より低い第2電圧以上である場合、第2保護回路20は、リチウムイオンキャパシタ40と第2負荷62との間を導通させ、リチウムイオンキャパシタ40からの電力を第2負荷62に供給する。リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第2電圧未満である場合、第2保護回路20は、リチウムイオンキャパシタ40と第2負荷62との間を遮断し、第2負荷62への電力供給を停止する。
【0041】
以上のことから、リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第1電圧以上である場合、第1負荷61及び第2負荷62は、リチウムイオンキャパシタ40からの電力供給によって動作できる。リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第1電圧未満且つ第2電圧以上である場合、第2負荷62は、リチウムイオンキャパシタ40からの電力供給によって動作できる。一方で、第1負荷61は、電力が供給されずに動作できない。リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第2電圧未満である場合、第1負荷61及び第2負荷62は両方とも、電力が供給されずに動作できない。
【0042】
電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40の電圧が第1電圧未満になった場合に第1負荷61への電力供給を遮断することで、リチウムイオンキャパシタ40の充電量を所定値以上残した状態で第1負荷61を止められる。このようにすることで、第2負荷62に供給できる電力量が確保される。その結果、第2負荷62に電力を供給できる期間が長くなる。
【0043】
以上述べてきたように、本実施形態に係る電力制御回路1は、外部電源8が電力を供給できなくなった場合に、第1負荷61及び第2負荷62に電力を供給するバックアップ電源として機能できる。さらに、電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40の充電量が減った場合に、少なくとも所定期間にわたって動作させる必要がある第2負荷62に優先的に電力を供給できる。その結果、電力制御回路1は、第1負荷61及び第2負荷62のバックアップ電源として機能しつつ、第2負荷62を所定期間にわたってバックアップできる。
【0044】
第2負荷62は、RTC等のクロック回路を含む。電力制御回路1は、エッジコンピュータゲートウェイの用途に適用される場合、IoT端末にバックアップ電力を供給する。IoT端末は、サーバ等と通信することによってデータをサーバにアップロードする。IoT端末とサーバ等との間の通信は、クロックによって同期する。したがって、IoT端末の運用において、クロックの動作は、優先的に維持されるべき動作の1つに含まれる。本実施形態に係る電力制御回路1は、エッジコンピュータゲートウェイの用途におけるバックアップ電源としての仕様を満たすことができる。
【0045】
第1負荷61は、プロセッサ等を含む。第1負荷61は、リチウムイオンキャパシタ40が供給可能な電力量を数十秒程度で消費するように構成されてよい。一方で、第2負荷62は、リチウムイオンキャパシタ40が供給可能な電力量を約半年又は約1年程度以上かけて消費するように構成されてよい。つまり、第2負荷62の消費電力は、第1負荷61の消費電力よりも桁違いに小さくされてよい。このようにすることで、電力制御回路1が採用されているIoT端末が作業員等のアクセス困難な位置に設置されていても、外部電源8から給電されなくなった後に作業員が修理するまで、第2負荷62に対するバックアップ電源として機能し続けることができる。
【0046】
第2負荷62は、SRAM(Static Random Access Memory)等の記憶デバイスを含んでもよい。外部電源8からの電力供給が停止した場合に、第2負荷62としての記憶デバイスがプロセッサ等で処理中の情報を速やかに記憶してよい。このようにすることで、外部電源8からの電力供給が再開した場合に、プロセッサは、停止前の情報に基づいて動作を再開できる。
【0047】
第2電圧は、リチウムイオンキャパシタ40の仕様として定められる下限電圧に対応する。リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が下限電圧未満になるまでリチウムイオンキャパシタ40が放電する場合、リチウムイオンキャパシタ40が故障する可能性が高くなる。
【0048】
第1電圧は、第2負荷62の消費電力と、第2負荷62をバックアップする時間とに基づいて設定される。つまり、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧から第2電圧に低下するまでに放電される電荷量が、第2負荷62を所定期間にわたってバックアップするために必要な電荷量以上となるように、第1電圧が設定される。
【0049】
図4に示されるように、第1保護回路10は、電圧検出回路11と、スイッチング素子16と、端子17及び18とを備える。電圧検出回路11は、第1電圧検出回路とも称される。スイッチング素子16は、第1スイッチング素子とも称される。第1保護回路10は、端子17でリチウムイオンキャパシタ40に接続可能に構成される。第1保護回路10は、端子18でレギュレータ30及び外部電源8に接続可能に構成される。第1保護回路10は、電圧検出回路11で接地点80に接続される。第1保護回路10は、端子17又は18と接地点80との間に印加される電圧によって動作する。
【0050】
本実施形態において、スイッチング素子16は、pチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含むとする。スイッチング素子16は、nチャネルMOSFETを含んでもよい。スイッチング素子16は、MOSFET以外のトランジスタを含んでもよいし、スイッチIC(Integrated Circuit)等を含んでもよい。スイッチング素子16は、オン状態において導通し、オフ状態において遮断する。
【0051】
電圧検出回路11は、コンパレータ12と、基準電圧源13と、分圧抵抗14及び15とを含む。分圧抵抗14及び15は、端子18と接地点80との間に直列に接続される。分圧抵抗14及び15は、端子18と接地点80との間に印加される電圧を分圧する。端子18と接地点80との間に印加される電圧を分圧抵抗14及び15で分圧した電圧は、第1分圧電圧とも称される。第1分圧電圧は、分圧抵抗14と分圧抵抗15との間に位置する節点19に印加される。基準電圧源13は、端子18と接地点80との間に接続され、第1基準電圧を出力する。
【0052】
コンパレータ12は、入力端子で基準電圧源13と節点19とに接続され、出力端子でスイッチング素子16のゲートに接続される。コンパレータ12は、端子18と接地点80との間に接続され、端子18と接地点80との間に印加される電圧によって動作する。スイッチング素子16がオン状態となって端子17と端子18とを導通させている場合、コンパレータ12は、端子17から印加される電圧で動作してよいし、端子18から印加される電圧で動作してもよい。コンパレータ12は、2つの入力端子と、1つの出力端子とを有する。コンパレータ12は、入力端子に入力された第1基準電圧と第1分圧電圧とを比較した結果に基づく信号を出力端子から出力する。
【0053】
第1分圧電圧が第1基準電圧以上である場合、コンパレータ12は、スイッチング素子16がオン状態になるように制御する信号を出力端子から出力する。スイッチング素子16がFETである場合、コンパレータ12は、FETのゲート閾値電圧以上の電圧を有する信号を出力する。第1分圧電圧が第1基準電圧以上である場合、コンパレータ12は、端子17又は18と同じ電圧を出力することによってスイッチング素子16をオン状態にさせてもよい。スイッチング素子16は、オン状態である場合にオン状態になるように制御する信号を受けることによって、オン状態を維持する。スイッチング素子16は、オフ状態である場合にオン状態になるように制御する信号を受けることによって、オン状態に遷移する。
【0054】
第1分圧電圧が第1基準電圧未満である場合、コンパレータ12は、スイッチング素子16がオフ状態になるように制御する信号を出力端子から出力する。スイッチング素子16がFETである場合、コンパレータ12は、FETのゲート閾値電圧未満の電圧を有する信号を出力する。第1分圧電圧が第1基準電圧未満である場合、コンパレータ12は、接地点80と同じ電圧を出力することによってスイッチング素子16をオフ状態にさせてもよい。スイッチング素子16は、オン状態である場合にオフ状態になるように制御する信号を受けることによって、オフ状態に遷移する。スイッチング素子16がオフ状態に遷移した場合、コンパレータ12は、電圧を受けることができなくなって動作しなくなる。コンパレータ12は、電圧を受けることができずに動作しなくなった場合、信号を出力しない。コンパレータ12が信号を出力しない状態は、コンパレータ12がスイッチング素子16をオフ状態にする信号を出力している状態とみなされる。したがって、コンパレータ12が信号を出力しない場合、スイッチング素子16は、オフ状態となる。その結果、スイッチング素子16は、オン状態からオフ状態に遷移した後、オフ状態のままで維持される。スイッチング素子16がもともとオフ状態であった場合も、スイッチング素子16は、オフ状態のままで維持される。
【0055】
電圧検出回路11は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧以上である場合に第1分圧電圧が第1基準電圧以上となるように構成される。具体的には、電圧検出回路11において、分圧抵抗14及び15の抵抗値、並びに、基準電圧源13が出力する第1基準電圧が適宜設定される。
【0056】
図5に示されるように、第2保護回路20は、電圧検出回路21と、スイッチング素子26と、端子27及び28とを備える。電圧検出回路21は、第2電圧検出回路とも称される。スイッチング素子26は、第2スイッチング素子とも称される。第2保護回路20は、端子27でリチウムイオンキャパシタ40に接続され、端子28で第2負荷62に接続される。第2保護回路20は、電圧検出回路21で接地点80に接続される。第2保護回路20は、端子27又は28から印加される電圧によって動作する。
【0057】
本実施形態において、スイッチング素子26は、pチャネルMOSFETであるとする。電圧検出回路21は、
図4の電圧検出回路11と同一に構成されるとする。電圧検出回路21は、端子27又は28と接地点80との間を分圧した第2分圧電圧を生成する。電圧検出回路21は、第2基準電圧を生成する。
【0058】
電圧検出回路21は、第2分圧電圧が第2基準電圧以上である場合、スイッチング素子26がオン状態になるように制御する信号を出力する。スイッチング素子26がFETである場合、電圧検出回路21は、ゲート閾値電圧以上の電圧を有する信号を出力する。
【0059】
電圧検出回路21は、第2分圧電圧が第2基準電圧未満である場合、スイッチング素子26がオフ状態になるように制御する信号を出力する。スイッチング素子26がFETである場合、電圧検出回路21は、ゲート閾値電圧未満の電圧を有する信号を出力する。
【0060】
電圧検出回路21は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧以上である場合に第2分圧電圧が第2基準電圧以上となるように構成される。第2基準電圧は、第1基準電圧と同じにされてもよい。この場合、第2分圧電圧が第1分圧電圧と同じになるように電圧検出回路21に含まれる分圧抵抗の抵抗値が設定されてよい。第1基準電圧と第2基準電圧とが同じにされることによって、電圧検出回路11及び21において、基準電圧源13が共通化され得る。
【0061】
図6に例示されるグラフを参照して、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の時間変化が説明される。横軸は、時刻を表している。縦軸は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧を表している。
【0062】
リチウムイオンキャパシタ40は、時刻T0まで端子電圧がV0となるように充電され、時刻T0以降に放電を開始する。放電開始時点(時刻T0)において、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧は、リチウムイオンキャパシタ40の内部抵抗による電圧降下によってステップ状に低くなる。リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧は、放電によって低下し、時刻T1において第1電圧V1にまで低下する。
【0063】
リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧V1になったとき、第1保護回路10は、リチウムイオンキャパシタ40とレギュレータ30との間を遮断する。一方で、第2保護回路20は、リチウムイオンキャパシタ40と第2負荷62との間の導通を維持する。これによって、第2負荷62への給電が維持されるものの、第1負荷61への給電が停止する。
【0064】
第1負荷61への給電が停止することによってリチウムイオンキャパシタ40の放電電流が減少する。放電電流の減少によって、リチウムイオンキャパシタ40の内部抵抗による電圧降下が減少する。その結果、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧は、時刻T1においてステップ状に高くなる。第1負荷61は、給電が停止したタイミングで動作を停止する。リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧がステップ状に高くなることによって第1保護回路10がリチウムイオンキャパシタ40とレギュレータ30との間を再び導通させ得る。この場合、第1負荷61は、自動的に動作を再開しないように構成されてよい。例えば、第1負荷61は、外部電源8と通信可能に構成され、外部電源8が電力供給を再開したことを表す信号を取得した場合に動作を再開するように構成されてよい。このようにすることで、第1保護回路10のスイッチング素子16がオン状態とオフ状態との間で小刻みに変化する現象(リレー等で発生するチャタリングに対応する現象)が起こりにくくなる。
【0065】
時刻T1以降において、リチウムイオンキャパシタ40は、第2負荷62の動作に必要とされる電流を流すように放電する。したがって、時刻T1以後の放電電流は、時刻T1以前の放電電流より小さくなる。リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧は、放電電流の減少によって時刻T1以前よりも緩やかに低下し、時刻T2において第2電圧V2にまで低下する。
【0066】
リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧V2になったとき、第2保護回路20は、リチウムイオンキャパシタ40と第2負荷62との間を遮断する。これによって、第2負荷62への給電が停止する。
【0067】
以上述べてきたように、本実施形態に係る電力制御回路1は、外部電源8が電力を供給できなくなった場合に、第1負荷61及び第2負荷62に電力を供給するバックアップ電源として機能できる。さらに、電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40の充電量が減った場合に、少なくとも所定期間にわたって動作させる必要がある第2負荷62に優先的に電力を供給できる。その結果、電力制御回路1は、第1負荷61及び第2負荷62のバックアップ電源として機能しつつ、第2負荷62を所定期間にわたってバックアップできる。
【0068】
本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧に基づいてスイッチング素子16及び26の開閉を制御する。一方、比較例2に係る電力制御回路920は、リチウムイオン二次電池921の放電電流を検出するために抵抗925を有する。抵抗925は、負荷のバックアップに寄与しない消費電力を増加させる。また、スイッチ制御部922回路自身も電力を消費する。電力制御回路920における消費電力の増加は、負荷をバックアップできる期間の短縮を引き起こす。本実施形態に係る電力制御回路1は、比較例2に係る電力制御回路920に比べて、負荷をバックアップできる期間を長くできる。
【0069】
リチウムイオンキャパシタ40は、リチウムイオン二次電池921よりも広い温度範囲で動作可能である。したがって、仮にリチウムイオンキャパシタ40がリチウムイオン二次電池921に置き換えられた場合、電力制御回路1が動作できる温度範囲が狭くなる。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって、リチウムイオン二次電池921を備える構成と比べて、動作できる温度範囲を広げることができる。その結果、高い利便性が実現され得る。
【0070】
リチウムイオン二次電池921は、その内部においてデンドライト状の金属リチウムが析出する現象によって自己放電しやすい。一方で、リチウムイオンキャパシタ40は、自己放電しにくい。また、電気二重層キャパシタ915は、リチウムイオンキャパシタ40よりも自己放電しやすい。したがって、仮にリチウムイオンキャパシタ40が同じ充電容量のリチウムイオン二次電池921又は電気二重層キャパシタ915に置き換えられた場合、電力制御回路1がバックアップ電源として機能する期間が短くなる。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって、同じ容量のリチウムイオン二次電池921又は電気二重層キャパシタ915を備える構成と比べて、バックアップ電源として機能する期間を長くできる。その結果、高い利便性が実現され得る。
【0071】
リチウムイオン二次電池921は、過充電及び過放電のいずれが発生しても劣化したり故障しやすくなったりする。一方で、リチウムイオンキャパシタ40は、過充電が発生しても劣化したり故障しやすくなったりしない。したがって、仮にリチウムイオンキャパシタ40がリチウムイオン二次電池921に置き換えられた場合、電力制御回路1は、過充電監視回路を更に備える必要がある。過充電監視回路の追加は、電力制御回路1の大型化又は高コスト化を引き起こし得る。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって、過充電監視回路を必要としない。その結果、構成が簡易化され得る。
【0072】
リチウムイオンキャパシタ40の過放電の保護は、電力制御回路1が第1保護回路10及び第2保護回路20を備えることによって実現されている。つまり、電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧未満にならないように制御して過放電の発生を回避できる。
【0073】
仮にリチウムイオンキャパシタ40がリチウムイオン二次電池921に置き換えられた場合、pチャネルMOSFETは、リチウムイオン二次電池921に接続するスイッチング素子16として性能不足である。したがって、nチャネルMOSFETが用いられる。nチャネルMOSFETが用いられることによって、リチウムイオン二次電池921の回路は、接地側でスイッチングされる必要がある。接地側でスイッチングされる場合、回路が接地されない状態が生じて不安定になり得る。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって接地側でスイッチングせずに電圧を印加したハイサイドでスイッチングする結果、安定して動作できる。その結果、高い利便性が実現され得る。
【0074】
リチウムイオンキャパシタ40は、リチウムイオン二次電池921より長寿命であり得る。したがって、電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を交換しない前提で構成され得る。電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を交換しない前提で構成される場合、交換可能に構成される場合よりも簡易に構成され得る。仮にリチウムイオンキャパシタ40がリチウムイオン二次電池921に置き換えられた場合、電力制御回路1は、リチウムイオン二次電池921を交換可能に構成される必要がある。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって、メンテナンス頻度を低減できる。その結果、高い利便性が実現され得る。
【0075】
仮に電力制御回路1が第1負荷61をバックアップするリチウムイオンキャパシタ40と別の構成として第2負荷62に電力を供給するための一次電池を備える場合、電力制御回路1は、第2負荷62に一次電池を接続するための回路を備える必要がある。このような回路は、電力制御回路1を複雑にするとともに、第2保護回路20よりも高価になり得る。また、一次電池が放電を終えた後、電力制御回路1が第2負荷62のバックアップ電源として機能できなくなる。本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによって、一次電池を備える構成と比べて、安価に構成され得るとともに、長期間にわたって動作できる。その結果、高い利便性が実現され得る。
【0076】
(保護回路の自動スリープ)
第1保護回路10において、電圧検出回路11は、スイッチング素子16を介して、リチウムイオンキャパシタ40に接続される端子17に接続される。つまり、電圧検出回路11は、スイッチング素子16を介して、リチウムイオンキャパシタ40から放電電流の供給を受けることができる。第1保護回路10は、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧未満になった場合、スイッチング素子16をオフ状態にする。この場合、リチウムイオンキャパシタ40の放電電流は、電圧検出回路11に流れない。第1保護回路10は、スイッチング素子16をオフ状態にすることによって、電力を消費しなくなる。この場合、電圧検出回路11がスイッチング素子16を介さずに端子17に接続される場合と比較して、第1保護回路10がリチウムイオンキャパシタ40の電流を消費しなくなる。つまり、第1保護回路10が第1負荷61を止めた後に無駄な電力を消費しなくなる。その結果、リチウムイオンキャパシタ40が第2負荷62に電流を供給できる期間が長くなる。
【0077】
第2保護回路20においても、電圧検出回路21は、スイッチング素子26を介して、リチウムイオンキャパシタ40に接続される端子27に接続される。これによって、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧未満になった後に、第2保護回路20がリチウムイオンキャパシタ40の電流を消費しなくなる。その結果、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧のさらなる低下が避けられ得る。リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧未満で更に低下した場合、リチウムイオンキャパシタ40は、劣化しやすくなる。したがって、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の低下の抑制は、リチウムイオンキャパシタ40の劣化の抑制につながる。
【0078】
(電源復帰時の充電)
上述のとおり、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧未満になった場合、スイッチング素子16がオフ状態になる。その結果、電圧検出回路11は動作しなくなる。
【0079】
ここで、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧未満であり且つスイッチング素子16がオフ状態である場合に、外部電源8が電力供給を再開すると仮定する。スイッチング素子16は、pチャネルMOSFETであるとする。
【0080】
外部電源8が第1電圧以上の電圧で電力を供給する場合、スイッチング素子16がオン状態になる。この場合、外部電源8からリチウムイオンキャパシタ40に向かう電流は、pチャネルMOSFETのチャネルを流れることができる。
【0081】
外部電源8は、CCCV(Constant Current, Constant Voltage)制御でリチウムイオンキャパシタ40を充電する場合、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧に応じて第1電圧未満の電圧で電力を供給することがある。この場合、スイッチング素子16がオフ状態のままとなる。スイッチング素子16(pチャネルMOSFET)がオフ状態であることによって、外部電源8からリチウムイオンキャパシタ40に向かう電流は、pチャネルMOSFETのチャネルを流れることができない。
【0082】
しかし、pチャネルMOSFETは、
図4に示されるように、寄生ダイオード16aを有する。寄生ダイオード16aは、ボディダイオードとも称される。スイッチング素子16(pチャネルMOSFET)は、寄生ダイオード16aの順方向が端子18から端子17に向かう方向となるように接続される。外部電源8からリチウムイオンキャパシタ40に向かう電流は、寄生ダイオード16aを流れることができる。このようにすることで、本実施形態に係る電力制御回路1は、充電を再開するための特別な回路を必要とせずに、外部電源8にリチウムイオンキャパシタ40の充電を再開させることができる。その結果、電力制御回路1は、簡易な回路で構成される。
【0083】
以上述べてきたように、本実施形態に係る電力制御回路1によれば、スイッチング素子16(pチャネルMOSFET)がオン状態であるかオフ状態であるかにかかわらず、外部電源8がリチウムイオンキャパシタ40を充電できる。
【0084】
仮にリチウムイオンキャパシタ40がリチウムイオン二次電池921に置き換えられたとする。この場合、リチウムイオン二次電池921の過充電を制限するために、寄生ダイオード16aに電流が流れないようにする必要がある。そのため、リチウムイオン二次電池921に置き換えられた場合、スイッチング素子16として、ソース-ドレインの方向が互いに逆向きとなるように直列に接続された2つのMOSFETが採用される。そうすると、スイッチング素子16がオフ状態の場合に寄生ダイオード16aに電流が流れず、リチウムイオンキャパシタ40が充電されない。したがって、本実施形態に係る電力制御回路1は、リチウムイオンキャパシタ40を備えることによってはじめて、外部電源8が電力供給を再開したときにスイッチング素子16がオン状態かオフ状態かにかかわらず充電を再開できる。その結果、復電時の復帰が容易になる。また、電力制御回路1による充電の再開は、簡易な回路で実現され得る。
【0085】
(使用温度範囲の拡張)
リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の上限及び下限は、リチウムイオンキャパシタ40の使用温度に応じて定まる。リチウムイオンキャパシタ40がT1minからT1maxまでの温度範囲で使用される場合、端子電圧の上限及び下限はそれぞれ、V1max及びV1minとされるとする。一方で、リチウムイオンキャパシタ40がT2minからT2maxまでの温度範囲で使用される場合、端子電圧の上限及び下限はそれぞれ、V2max及びV2minとされるとする。ここで、T1maxは、T2maxよりも高いと仮定する。V1minは、V2minよりも低いと仮定する。このような仮定の下で、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の下限は、リチウムイオンキャパシタ40の温度がT2maxを超える場合とT2max以下である場合とで異なる。T2maxが所定温度と称される場合、端子電圧の下限は、リチウムイオンキャパシタ40の温度が所定温度を超える場合よりも、リチウムイオンキャパシタ40の温度が所定温度以下である場合に低くなる。
【0086】
具体例として、リチウムイオンキャパシタ40が-30℃から+85℃までの温度範囲で使用される場合、端子電圧の上限及び下限はそれぞれ、3.5V及び2.5Vとされてよい。一方で、リチウムイオンキャパシタ40が-30℃から+70℃までの温度範囲で使用される場合、端子電圧の上限及び下限はそれぞれ、3.8V及び2.2Vとされてよい。この例において、上述の各変数は、以下のように表される。
T1min=-30℃、T1max=+85℃
T2min=-30℃、T2max=+70℃
V1min=2.5V、V1max=3.5V
V2min=2.2V、V2max=3.8V
【0087】
図7に示されるように、リチウムイオンキャパシタ40は、第1負荷61とともに回路基板100に実装されてよい。リチウムイオンキャパシタ40は、第1負荷61の発熱の影響を受ける位置に実装されているとする。この場合、リチウムイオンキャパシタ40の温度は、第1負荷61の動作の発熱によって上昇する。つまり、第1負荷61の発熱量が大きいほど、リチウムイオンキャパシタ40の温度が高くなる。
【0088】
第1負荷61が動作している場合、リチウムイオンキャパシタ40の温度は、所定温度を超えやすくなる。一方で、第1負荷61が停止している場合、リチウムイオンキャパシタ40の温度は、所定温度以下にとどまりやすくなる。
【0089】
ここで、所定温度が70℃であると仮定する。この仮定を上述の具体例に当てはめると、リチウムイオンキャパシタ40の温度が70℃を超える場合、端子電圧の下限は2.5Vである。リチウムイオンキャパシタ40の温度が70℃以下である場合、端子電圧の下限は2.2Vである。
【0090】
さらに、第1電圧が2.5Vに設定され、且つ、第2電圧が2.2Vに設定されると仮定する。この仮定の下で、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第1電圧未満になって第1保護回路10が第1負荷61への電力供給を遮断した場合、第1負荷61が停止することによってリチウムイオンキャパシタ40の温度が所定温度未満にとどまりやすくなる。そうすると、第2保護回路20を通じて第2負荷62への電力供給が継続してリチウムイオンキャパシタ40の端子電圧が第2電圧まで低下したとしても、リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の下限を下回りにくくなる。
【0091】
以上述べてきた例におけるリチウムイオンキャパシタ40の温度及び端子電圧の下限と、第1電圧及び第2電圧との関係が満たされる場合、リチウムイオンキャパシタ40が第1負荷61の発熱の影響を受ける位置に実装されることが許容されるといえる。満たされるべき条件は、以下の(a)及び(b)に言い換えられる。
(a)リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の下限は、リチウムイオンキャパシタ40の温度が所定温度より高くなっている場合において第1電圧に対応する。
(b)リチウムイオンキャパシタ40の端子電圧の下限は、リチウムイオンキャパシタ40の温度が所定温度以下になっている場合において第2電圧に対応する、
【0092】
リチウムイオンキャパシタ40が第1負荷61の発熱の影響を受ける位置に実装されることが許容されることによって、電力制御回路1の実装に関する制約が少なくなる。また、回路基板100に実装される部品が集積化されやすくなる。その結果、電力制御回路1の小型化及び低コスト化が実現され得る。また、リチウムイオンキャパシタ40は、その使用温度範囲内においてできるだけ広い電圧範囲で活用される。その結果、第2負荷62に電力を供給できる期間が長くなる。
【0093】
(自己停止機能)
第1負荷61は、リチウムイオンキャパシタ40が供給可能な電力量を数十秒程度で消費すると仮定する。ここで、第1負荷61は、プロセッサであるとする。第1負荷61は、外部電源8からの電力供給が停止した場合、外部電源8の停止を検出し、第1負荷61自身の停止処理を開始する。第1負荷61は、リチウムイオンキャパシタ40から電力が供給されている間に停止処理を完了させることによって、電力供給再開時に安全に動作を再開できるように停止できる。第1電圧は、第1負荷61が停止処理を完了できるまでリチウムイオンキャパシタ40を放電させ続けることができるように設定されてよい。
【0094】
第1負荷61が自ら停止した後、レギュレータ30は、第1負荷61に対して電力を供給しなくてもよい。第1負荷61は、
図1に破線で示されるようにレギュレータ30に通信線73で接続されてよい。第1負荷61は、通信線73を介してレギュレータ30に対して放電停止信号を出力してよい。レギュレータ30は、第1負荷61からの放電停止信号に基づいて、リチウムイオンキャパシタ40が放電した電力を第1負荷61及び第2負荷62に出力する動作を停止してよい。このようにすることで、電力制御回路1の消費電力のうちレギュレータ30の消費電力が削減される。電力制御回路1の消費電力の削減は、リチウムイオンキャパシタ40が第2負荷62に供給できる電力量を増加させる。その結果、第2負荷62に電力を供給できる期間が長くなる。
【0095】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 電力制御回路
8 外部電源
10 第1保護回路
11 電圧検出回路(12:コンパレータ、13:基準電圧源、14:分圧抵抗、15:分圧抵抗、19:節点)
16 スイッチング素子
17、18 端子
20 第2保護回路
21 電圧検出回路
26 スイッチング素子
27、28 端子
30 レギュレータ
40 リチウムイオンキャパシタ
51、52 ダイオード
61 第1負荷
62 第2負荷
71、72 節点
73 通信線
80 接地点
100 回路基板