(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電動作業機及び電動作業機の無線連動システム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20221129BHJP
B27G 3/00 20060101ALI20221129BHJP
B27B 9/00 20060101ALI20221129BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
B25F5/00 Z
B27G3/00 C
B27B9/00 A
A47L9/28 U
(21)【出願番号】P 2020532160
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2019015941
(87)【国際公開番号】W WO2020021787
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2018141027
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】羽山 芳雅
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112669(JP,A)
【文献】特開2017-215858(JP,A)
【文献】特開2014-072756(JP,A)
【文献】特開2015-030060(JP,A)
【文献】特開2018-069431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B27G 3/00
B27B 9/00
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの駆動力により稼動する作業機器と、前記モータの回転を制御する制御部と、を有する電動作業機であって、
他の電動作業機の制御部と無線通信を行う通信部を設け、
運転モードとして、前記他の電動作業機と連動して運転する連動モードと、前記他の電動作業機と連動せずに単独で運転する単動モードを設け、
前記連動モードと前記単動モードを相互に切替えるスイッチを設け、
前記制御部は、
前記スイッチが前記単動モードから前記連動モードに切り替えられた際に、前記通信部を用いて通信可能な前記他の電動作業機を検索する検索状態に遷移し、
前記検索状態において連動可能な前記他の電動作業機を検知した場合は、前記他の電動作業機の識別情報を連動対象として記憶することで前記他の電動作業機と連動して運転す
る連動状態に遷移し、
前記検索状態において連動可能な前記他の電動作業機が検知されない場合は、前記検索状態を継続し連動可能な他の電動作業機を検索し続け、
前記連動状態において、前記他の電動作業機との無線通信が切断されるか、前記スイッチが前記連動モードから前記単動モードに切り替えられるまでは、前記他の電動作業機と連動させて運転する前記連動状態を維持し、前記他の電動作業機と異なる第2の他の電動作業機とは接続不能であり、
前記連動状態において、前記他の電動作業機との無線通信が切断されるか、前記スイッチが前記連動モードから前記単動モードに切り替えられると、前記連動対象としての記憶から前記識別情報を削除することを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチが前記連動モードにあって、連動可能な他の電動作業機を検索する前記検索状態にて運転させている状態において、連動可能な他の電動作業機を検知したら前記連動状態に遷移することを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御部は、電源起動時において前記スイッチが前記連動モードに設定されている場合、及び、他の電動作業機と連動させながら前記連動モードでの運転中に設定された通信路が遮断された場合は、外部の通信可能な電動作業機を検索する前記検索状態に遷移し、検知された他の電動作業機のいずれかと新たに接続することを特徴とする請求項2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記電動作業機は、前記通信部によって前記他の電動作業機のマスターとして連動制御するか、又は、前記通信部によって前記他の電動作業機のスレーブとして連動制御されるかが予め定義づけられており、
マスター側の前記電動作業機は、連動可能な外部のスレーブ側の前記電動作業機だけを検索し、
スレーブ側の前記電動作業機は、連動可能な外部のマスター側の前記電動作業機だけを検索することを特徴とする請求項2又は3に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記制御部は、前記連動状態にある連動モードにおいて、連動する前記他の電動作業機の識別情報を記憶した上で前記連動状態を維持し、
前記連動モードの設定中に前記連動状態から前記検索状態に遷移したら、前記識別情報を削除してから連動可能な他の電動作業機の再検索を開始することを特徴とする請求項3に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記制御部は、前記連動状態にある連動モードにおいて、連動する前記他の電動作業機の識別情報を記憶した上で前記連動状態を維持し、
前記連動状態において前記スイッチが前記連動モードから前記単動モードに切り替えられたら、前記識別情報を削除してから通信中の前記他の電動作業機との接続を解除することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記モータへ電力を供給する着脱式のバッテリパックを設け、
前記連動状態において前記バッテリパックが取り外された際には、外部の通信中の電動作業機との接続が解除され、別のバッテリパックが装着された際には、連動可能な他の電動作業機の再検索を開始することを特徴とする請求項6に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記モータへ電力を供給する着脱式のバッテリパックを設け、
前記通信部を前記バッテリパックの中に設け、
前記制御部は前記バッテリパック内の前記通信部を介して前記他の電動作業機と無線通信を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項9】
請求項1に記載の電動作業機と、前記他の電動作業機および前記第2の他の電動作業機とを含むことを特徴とする電動作業機の無線連動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動作業機に関し、特に無線通信を用いて複数の電動作業機を容易に連動させて稼動できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
丸鋸やジグソー等の電動作業機を用いた作業時に発生する塵埃を、集塵機等の別の電動作業機で吸引させるために、電動作業機と集塵機を集塵ホースにて接続し、一つの電動作業機側の駆動と連動させて別の電動作業機を駆動させるようにした連動システムが実現されている。このような連動作業においては、マスター側となる電動作業機(例えば丸鋸やジグソー)に、スレーブ側となる別の電動作業機(例えば集塵機やブロワファン)を準備し、マスター側電動作業機の稼動に連動させて、スレーブ側電動作業機を稼動させる。このように連動システムにおいて、スレーブ側電動作業機をマスター側電動作業機と連動させる方法としては、特許文献1に示すように、マスター側電動作業機(丸鋸)の電源コードを、スレーブ側電動作業機(集塵機)に接続することで、マスター側電動作業機の駆動電力をスレーブ側電動作業機から供給する構成とし、スレーブ側電動作業機は電力を出力したときにマスター側電動作業機が駆動したと判断することによって自らも稼動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、マスター側電動作業機の駆動情報をスレーブ側電動作業機へ伝達するために電源コードが必要であり、電源コードを有さないバッテリ駆動の電動作業機には適用ができないという問題がある。このため近年では、バッテリ駆動の電動作業機の連動運転のために、無線通信を用いてマスター側電動作業機の稼動情報をスレーブ側電動作業機へ伝達する方法が提案されている。しかしながら、無線通信を用いた連動を行う場合、マスター側となる電動作業機と、スレーブ側となる電動作業機の設定登録作業が必要であり、これらの登録作業(ペアリング)が煩わしいという問題があった。また、マスター側とスレーブ側の電動作業機がそれぞれ複数台あるような場合は、意図しない電動作業機間の組み合わせで登録を行ってしまう虞があった。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、無線を用いた連動作業のためのペアリング登録における作業性を向上させた電動作業機および電動作業機の無線連動システムを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、連動作業のためのペアリング登録のやり直しを容易にした電動作業機を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的は、連動作業のために必要なボタン操作の数を少なくした電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、モータと、モータの駆動力により稼動する作業機器と、モータの回転を制御する制御部と、を有する電動作業機であって、他の電動作業機の制御部と無線通信を行う通信部を設け、運転モードとして、他の電動作業機と連動させて運転する連動モードと、他の電動作業機を連動させずに単独で運転する単動モードを設けた。また、電動作業機に連動モードと単動モードを相互に切替えるスイッチを設け、制御部は、スイッチが単動モードから連動モードに切り替えられた際に通信部を用いて通信可能な他の電動作業機を検索する検索状態に遷移し、検索状態において連動可能な他の電動作業機を検知した場合は、他の電動作業機の識別情報を連動対象として記憶することで他の電動作業機と連動して運転する連動状態に遷移し、検索状態において連動可能な他の電動作業機が検知されない場合は、検索状態を継続して連動可能な他の電動作業機を検索し続けるように構成した。
また、制御部は連動状態において、他の電動作業機との無線通信が切断されるか、スイッチが連動モードから単動モードに切り替えられるまでは、他の電動作業機と連動させて運転する連動状態を維持しつつ、他の電動作業機と異なる第2の他の電動作業機とは接続不能とし、他の電動作業機との無線通信が切断されるか、スイッチが連動モードから単動モードに切り替えられると、連動対象としての記憶から識別情報を削除するように構成した。さらに制御部は、スイッチが連動モードにあって連動可能な他の電動作業機を検索する検索状態にて運転させている状態において、連動可能な他の電動作業機を検知したら連動状態に遷移するようにした。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、制御部は、電源起動時においてスイッチが連動モードに設定されている場合、及び、他の電動作業機と連動させながら連動モードでの運転中に設定された通信路が遮断された場合は、外部の通信可能な電動作業機を検索する検索状態に遷移し、検知された他の電動作業機のいずれかと新たに接続するようにした。また、電動作業機は、通信部によって他の電動作業機のマスターとして連動制御するか、又は、通信部によって他の電動作業機のスレーブとして連動制御されるかが予め定義づけられており、マスター側の電動作業機は、連動可能な外部のスレーブ側の電動作業機だけを検索し、スレーブ側の電動作業機は、連動可能な外部のマスター側の電動作業機だけを検索するように構成した。さらに制御部は、連動状態にある連動モードにおいて、連動する他の電動作業機の識別情報を記憶した上で連動状態を維持し、連動モードの設定中に連動状態から検索状態に遷移したら、識別情報を削除してから連動可能な他の電動作業機の再検索を開始するように構成した。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、連動状態においてスイッチが連動モードから単動モードに切り替えられたら、連動中の相手側電動作業機の識別情報を削除してから相手側との接続を解除する。また、電動作業機にモータへ電力を供給する着脱式のバッテリパックを設け、連動状態においてバッテリパックが取り外された際には外部の通信中の電動作業機との接続が解除され、別のバッテリパックが装着された際には連動可能な他の電動作業機の再検索を開始するように構成した。つまり、バッテリパックの交換で電源が維持されないような電動作業機の場合には、遮断状態から電源が復帰したら連動可能な他の電動作業機を自動で検索して接続するようにした。尚、上記通信部を、電動作業機本体内部ではなく、着脱可能なバッテリパックの中に設けても良い。その場合は電動作業機の動作が、バッテリパック内の通信部を介して他の電動作業機に伝達されるようにすれば良い。以上のように、本発明ではマスター側電動作業機と、1台以上のスレーブ側電動作業機を含んで電動作業機の無線連動システムが実現し、マスター側電動作業機のオン又はオフに連動させてスレーブ側の電動作業機のオンオフ制御を容易に行えるようになった。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、幅広い電動作業機と集塵機との連動作業を容易に可能とし、電動作業機と集塵機との連動作業における作業性を向上させることができる。特に、作業者はモードを単動モードから連動モードに切り替えるだけで自動的にペアリング登録が行われるので、作業者がモード切替スイッチを長押してペアリングを実行させる必要がない。また、ペアリングの実行のために、ペアリング用の専用操作ボタンをモード切替スイッチとは別に設ける必要が無いので、操作パネルがシンプルで使いやすい電動作業機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る電動作業機の無線連動システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1の丸鋸10の側面図(一部断面図)である。
【
図3】
図1の丸鋸10の概略回路ブロック図である。
【
図5】
図1の集塵機50の概略回路ブロック図である。
【
図6】
図1の丸鋸10の操作パネル27を示す図である。
【
図7】
図4の集塵機50の操作表示部60を示す図である。
【
図8】本実施例の無線連動システムにおける各電動作業機(丸鋸10、集塵機50)の動作タイミングを示す図である。
【
図9】各電動作業機(丸鋸10、集塵機50)の運転モードの状態遷移を示す図である。
【
図10】丸鋸10の動作手順を示すフローチャートである。
【
図11】本実施例の別の実施例に係る電動作業機本体とバッテリパックの接続回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下に図面を参照して、電動作業機および電動作業機の無線連動システムの実施例を詳細に説明する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施例の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施例に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施例における電動作業機の無線連動システム1の構成例を示す概略斜視図である。無線連動システム1は、連動して駆動されるペアとなる電動作業機により構成される。ここではマスター側の電動作業機として丸鋸10を用い、スレーブ側の電動作業機として集塵機50を用いている。丸鋸10と集塵機50とは、独立した駆動源を用いて独立して駆動可能な電動作業機である。2つ又は複数の電動作業機を連動して動作させる際に、動作の開始指示及び終了指示を行う電動作業機を「マスター」側電動作業機とし、マスター側電動作業機からの指示に従って「スレーブ」側電動作業機の動作をさせるようにした。
【0013】
丸鋸10は、円盤状であって外周側に複数の尖塔状の刃が形成された作業機器たる鋸刃25を、図示しないモータによって高速で回転させて、木材等の被切断物を切断するための工具である。丸鋸10の電源は、商用電源を用いるものとバッテリを用いるものが広く知られているが、本実施例では着脱式のバッテリパック100(
図2で後述)を用いている。丸鋸10のハウジング12の上部には作業者が把持するハンドル部13が形成される。ハンドル部13の前方側下部には、モータのスイッチを操作するためのトリガレバー17a(
図2にて後述)が設けられ、作業者がベース20及び鋸刃25を被切断物に押し当ててトリガレバー17aを引くことにより、被切断物を直線切りすることができる。鋸刃25の外周縁付近の上側約半分はハウジング12によって覆われる。鋸刃25の下側の約半分の周囲には、鋸刃25を被切断物に押し当てていないときに鋸刃25の刃が露出しないように保護する保護カバー26が設けられる。
【0014】
丸鋸10による木材の切断作業を行うと、切断加工時に多くの木くずが発生する。ハウジング12による鋸刃25の上側約半分の覆い部分は、木くず等の粉塵の飛散防止を図る機能を果たす。また、ハウジング12の一部にダクトアダプタ18を取り付け可能とした。ダクトアダプタ18は、切断作業により発生する粉塵を周囲の空気と共に吸引するための吸引通路を形成するもので、鋸刃25の外周縁の一部付近から径方向外側に接続管19が延在するようにして、ハウジング12の内側部分から接続管19への空気通路が形成されるようにした。接続管19には可撓式の集塵用ホース4の端部4bが接続可能である。
【0015】
集塵機50は、モータによって集塵ファン(図示せず)を回転させて、集塵用ホース4内に負圧を作りだして、集塵用ホース4の先端4aに接続されたダクトアダプタ18の内側から、切断作業時に発生する切り屑や塵埃を空気と共に吸引し、エアフィルタ(図示せず)で空気と切り屑や塵埃とを分離して、切り屑や塵埃だけを容器内に回収する電動作業機である。集塵機50の操作表示部60にはメインスイッチが設けられ、メインスイッチをオンにするとモータが起動する(単動モード時)。モータが回転すると集塵作業を開始し、集塵用ホース4を介して粉塵等を吸引できる。作業者がメインスイッチをオフにするとモータが停止して集塵動作も停止する。集塵機50は単独で動作させる単動モードでの使用だけで無く、
図1にて示したように他の電動機器のスレーブ側として連動動作させることも可能である。その場合は、集塵用ホース4の先端4aをダクトアダプタ18の接続管19に装着し、操作表示部60の専用のスイッチ(後述)を操作することによって、“単動モード”から“連動モード”に切り替える。この際、マスター側の電動機器たる丸鋸10側も操作パネル(図では見えない)のスイッチを操作することによって、“単動モード”から“連動モード”に切り替えて、相互に“連動モード”に切り替えたら、丸鋸10と集塵機50は自動でペアリング登録され、無線を用いた連動が可能となる。
【0016】
このように2つの電動作業機を連動させて、一方側(マスター側)の電動作業機にて主となる作業(丸鋸10による切断作業)を行い、他方側(スレーブ側)の電動作業機にて従となる作業(丸鋸10で発生した粉塵の吸引及び収集作業)を行う。ここでは、マスター側の電動作業機(丸鋸10)のトリガスイッチのオン又はオフに連動させてスレーブ側の電動作業機(集塵機50)のモータのオン又はオフを行う。複数の電動作業機間にて連動させて作業を行うために、各電動作業機(丸鋸10と集塵機50)にそれぞれ無線通信を行う通信部を設け、マスター側電動作業機(丸鋸10)から無線通信22、52によって稼動指示を受けたスレーブ側の電動作業機(集塵機50)が、稼動指示に従って動作する。ここでは、集塵機50を連動モードにすると待機状態となり、丸鋸10のトリガスイッチがオンになったら丸鋸10の通信部から集塵機50に対して稼動指示信号を送出し、集塵機50は稼動指示信号を受けてモータを起動して集塵作業を開始する。丸鋸10のトリガスイッチがオフになったら丸鋸10の通信部からの稼動指示信号が消失するため、集塵機50は直ちに、又は、所定のタイムラグを持たせた後にモータを停止させて集塵動作を停止する。このように本実施例では無線通信を利用して複数の電動作業機間で連動動作をさせるので、電源ケーブルの接続や、連動信号の伝達用の信号コードを準備すること無く、容易に電動作業機の無線連動システムが実現できる。また、無線通信を用いるために、マスター側とスレーブ側の電動作業機のいずれか又は双方がバッテリ駆動の電動作業機であっても、連動動作が可能となるので、電動作業機の電源の制約がなくなる。
【0017】
図2は丸鋸10の左側面図であって、一部を断面図で示している。丸鋸10は、バッテリパック100を電源とするコードレスタイプの電動作業機である。丸鋸10は、ハウジング12とベース20を有している。ベース20は、例えば、金属製の略長方形の板材であって、その底面は被切断材との摺動面となり、長手方向の左右中心付近に鋸刃25を貫通させる長穴(図では見えない)が形成されている。丸鋸10の本体側のハウジング12はベース20に前後2箇所にて連結され、ベース20はハウジング12に対して左右に傾動可能である。ハウジング12は、図示しないモータや動力伝達機構を収容するもので、その上部にハンドル部13が形成され、ハンドル部13の後方下側には、バッテリ取付部14が形成される。ハウジング12の左側には図示しないモータが取りつけられ、モータは回転軸が水平方向に延在するようにしてモータカバー16内に収容される。
【0018】
ハンドル部13は、使用者が丸鋸10を握るためのグリップである。ハンドル部13の内部にはトリガスイッチ17が設けられ、トリガスイッチ17の下方であって、ハンドル部13から下側に突出するようにトリガレバー17aが設けられる。作業者は、トリガレバー17aを引く操作(トリガレバー17aを上方に移動させる操作)によってモータを回転させ、トリガレバー17aを離す操作(トリガレバー17aを下方に戻すことを許容する操作)によってモータを停止させる。保護カバー26は、例えば、樹脂製の部材から構成された可動式の覆い部材であり、切断作業を行っていない状態では、鋸刃25の下半分(ベース20の底面から下方に突出した部分)を、前方の一部を除いて覆う。
【0019】
ハウジング12のモータよりも後方側上面には操作パネル27が設けられる。操作パネル27は、“単動モード”と“連動モード”のモード切替を行うための入力手段であるが、その詳細は
図6にて後述する。操作パネル27の下側には丸鋸10のモータの回転制御や無線通信を制御するための回路を搭載する制御回路基板30が配置される。丸鋸10のハンドル部13の内部には、本実施例の特徴的な構成である無線通信部34が設けられる。無線通信部34は、無線通信規格に従って、集塵機50との間で所定の情報を送受信するためのユニットである。尚、無線通信部34を設ける位置は任意であり、電波を遮断したり影響させない場所であればハウジング12内の任意の位置に設けても良い。また、ハウジング12に無線通信部34を収容する無線通信ユニットを着脱可能とするコネクタを設けて、無線通信部34をハウジング12に対して着脱可能としても良い。
【0020】
ハウジング12のハンドル部13の後端下部には、バッテリ取付部14が設けられ、バッテリパック100が着脱自在に装着される。バッテリパック100は、モータ15に駆動電力を供給するための電源であって、リチウムイオン電池等の二次電池を収容したものである。バッテリ取付部14の下側には、バッテリパック100と電気的に接続するための複数のターミナル(工具側プラス端子41等)が設けられる。バッテリパック100は、水平方向に後方から前方側にスライドさせることによってハウジング12に装着可能であり、装着された状態では工具本体側のターミナルと、バッテリパック側のターミナルが電気的に導通状態となる。左右両側に設けられたラッチ101を押しながらバッテリパック100を後方にスライドさせると、バッテリパック100をハウジング12から取り外すことができる。
【0021】
図3は丸鋸10の概略回路ブロック図である。制御部32は、丸鋸10の各部の動作を制御する回路である。制御部32はワンチップマイコンを含んで構成され、マイコンがバッテリの電圧検出、モータに流れる電流検出、無線通信の制御等を行う。バッテリパック100から供給される直流は、電源回路31に出力され、電源回路31は18V等の高い電圧から、一定の低電圧(例えば5V又は3.3V)の直流を出力し、その低電圧電力によって制御部32が動作する。バッテリパック100の出力はインバータ・ドライバ回路33にも入力される。インバータ・ドライバ回路33に搭載される電子素子には、3相ブリッジ形式に接続されたFET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの6個のスイッチング素子が含まれる。ブリッジ接続されたスイッチング素子は、スター結線又はデルタ結線されたモータ15の固定子巻線U、V、Wに接続される。6個のスイッチング素子は、制御部32に含まれるマイコンによって制御されるもので、制御部32のマイコンから出力されるスイッチング素子駆動信号によってインバータ・ドライバ回路33はスイッチング動作を行い、バッテリパック100から供給される直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv,Vwの交流に変換してモータ15に供給する。
【0022】
無線通信部34は、本実施例の丸鋸10において初めて追加された部分であって、他の無線通信部付きの電動作業機(例えば
図1の集塵機50)と単方向又は双方向通信を行うためのものである。ここでは、広く用いられているBluetooth(Bluetooth SIG,Inc.の登録商標)等の公知の無線通信規格に従って、他の電動作業機との間で所定の情報を送受信する。尚、必要な伝達距離を有するならば使用する無線通信規格の制限はなく、Wi-Fi(Wi-Fi Allianceの登録商標)や、その他の任意の近距離通信技術を用いても良い。また、電波による通信だけで無く、赤外線通信、光通信によるものであっても良い。無線通信部34は、無線通信を行うための通信モジュールが搭載されたワンチップの専用ICと、上記規格で定められた周波数帯の電波を送受信するためのアンテナ部を含んで構成される。無線通信部34によって送信される信号のタイミングやその内容は制御部32に含まれるマイコンによって指示され、無線通信部34がデコードした後に送信する。また無線通信部34によって受信された電波は、復号化された後に制御部32に出力される。制御部32は、モータに流れる電圧や電流を検出する検出回路を有し、モータ15の回転制御を行うと共に、無線通信部34を用いた他の電動作業機との間の無線通信を制御し、入力操作の取得や出力表示を含むその他全般の制御を行う。
【0023】
UI(User Interface)部35は、作業者からの制御部32への情報の入力と、制御部32からの作業者に対する情報の出力を行うものであり、トリガスイッチ17、プッシュスイッチ等の入力手段と、単一LED、複数セグメントLED、画像表示パネル等の任意の出力手段を用いることができる。
【0024】
図4は集塵機50の正面図である。集塵機50の構成は、後述する無線通信部74(
図5参照)を有する点とそれに伴う改良部分を除いて従来の集塵機と同様である。集塵機50は、相互に分離可能なタンク部56とヘッド部51とを備える。ヘッド部51は、取付機構としてのクランプ機構53によってタンク部56の上部に着脱可能に固定される。タンク部56は、上部が開放された底付の筒状であり、集塵用ホース4を接続するためのホース取付口57を側面(前側面)に有する。タンク部56の内部には、吸引した粉塵をろ過するための円錐台形状のフィルタ(図示せず)が設けられる。図示しないフィルタは、タンク部56及びヘッド部51に上下から気密に挟持され、集塵作業によって塵埃が堆積したら、タンク部56及びヘッド部51が切り離されて、タンク部56内の塵埃が廃棄される。タンク部56の下部には、設置面上を転動可能な複数のキャスター58が設けられる。
【0025】
ヘッド部51には、ヘッドハウジングの内側に、モータ55(
図5にて後述)と、バッテリパック100(図では見えない)と、制御部と、無線通信部74(
図5にて後述)を有する。モータ55は、その出力軸(図示せず)が鉛直方向上下に延びるようにヘッド部51内に配設され、図示しない集塵ファンを回転させる。ヘッド部51の前側の側面には、ユーザが入力操作を行うと共に、制御部からの情報の表示を行うための操作表示部60が設けられる。操作表示部60には、電源スイッチ61と、操作パネル62を有するが、その詳細は
図7にて後述する。
【0026】
集塵機50において、モータ55(後述の
図5参照)が回転すると、図示しない集塵ファンが回転する。集塵ファンの回転により、タンク部56内が負圧になり、ホース取付口57に吸込み力を発生させる。すると、集塵用ホース4(
図1参照)を介してダクトアダプタ18(
図1参照)の内側部分の空気が粉塵と共に吸引され、ホース取付口57を通ってタンク部56の内部に吸い込まれる。その後、タンク部56内にて図示しないフィルタによって粉塵と空気が分離され、濾過された空気だけがタンク部56の外部に排出される。
【0027】
図5は
図1の集塵機50の概略回路ブロック図である。電源としては丸鋸10で使うものと同じバッテリパック100を用いる。バッテリパック100は2個装着可能として、それらを並列接続とすることでバッテリによる稼動時間の向上を図るようにした。集塵機50では、インバータ・ドライバ回路73を用いてブラシレス方式のモータ55が駆動される。本実施例では、従来の集塵機に対して新たに無線通信部74を設けたことが新しく、その新規な構成に合わせてUI部75も改良した。無線通信部74は、丸鋸10(
図1参照)等の他の無線通信部付きの電動作業機と同じ無線通信規格のものを用いて単方向又は双方向通信を行う。ここでは、丸鋸10の無線通信部34(
図3参照)との間で所定の情報を送受信する。無線通信部74は、無線通信を行うための通信モジュールが搭載されたワンチップの専用ICとアンテナ部を含んで構成できる。無線通信部74によって送信される無線信号のタイミングやその内容は第二制御部76のマイコンによって指示される。また無線通信部74によって受信された無線信号は、復号化された後に第二制御部76に出力される。第二制御部76は、受信した信号に従って電源回路71に制御信号を出力してその動作を制御すると共に、第一制御部72への無線信号を伝達する。無線信号が伝達された第一制御部72は、連動モードにおいては無線信号に従ってインバータ・ドライバ回路73を動作させることで、モータ55の駆動及び停止制御を行う。
【0028】
第一制御部72は、集塵機50の各部の動作を制御する制御ユニットである。第一制御部72はワンチップマイコンによって主に構成され、モータ55に流れる電圧や電流を検出する検出回路を有し、モータ55の回転制御を行うと共に、入力操作の取得や出力表示を含むその他全般の制御を行う。第二制御部76は、電源回路71のオンオフ制御及び無線通信の制御を行うサブの制御部であって、メインとなる第一制御部72の補助をする。第二制御部76もワンチップマイコン(第二のマイコン)にて主に構成される。第一制御部72と第二制御部76との間は信号線によって相互に情報のやりとりを行う。本実施例では実装上の都合によって第一制御部72と第二制御部76を別のマイコンにて制御するようにしたが、第一制御部72と第二制御部76を統合させて一つのマイコンによって制御するように構成しても良い。
【0029】
バッテリパック100から供給される直流電力は、一定の低電圧直流を出力する電源回路71に接続され、電源回路71からの電力によって第一制御部72及び第二制御部76が動作する。バッテリパック100の出力はインバータ・ドライバ回路73にも入力される。インバータ・ドライバ回路33に搭載される電子素子には、3相ブリッジ形式に接続されたFET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの6個のスイッチング素子が含まれる。ブリッジ接続されたスイッチング素子は、スター結線又はデルタ結線されたモータ55の固定子巻線U、V、Wに接続される。これによって、6個のスイッチング素子は、マイコンによって制御されるドライバ回路から入力されたスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、バッテリパック100から供給される直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv,Vwとしてモータ55に供給する。尚、モータ55の種類は、インバータ・ドライバ回路73を用いて駆動されるブラシレスDCモータだけでなく、ブラシ式の直流モータやその他の種類のモータを用いるようにしても良い。
【0030】
UI(User Interface)部75は、第一制御部72への情報の入力と、第一制御部72からの情報の出力を行うものであり、トリガスイッチ、プッシュスイッチ等の入力手段と、単一LED、複数セグメントLED、8セグメントの数字表示用LED等任意の出力手段を用いることができる。
【0031】
次に
図6を用いて丸鋸10の操作パネル27を説明する。ここには「運転モード」を示すスイッチ名27aと共に、押しボタン式のスイッチ28と、スイッチ28の状況に応じて表示するLED29が設けられる。スイッチ28はプッシュ式のソフトタッチスイッチであって、表面には「連動/単動」と印刷されている。このスイッチ28を操作しない状態ではLED29が消灯状態の「単動モード」にあり、スイッチ28を押したら「連動モード」に切り替わる。単動モードから連動モードに切り替わると、LED29が点滅状態となって、連動させる他の電動作業機との無線接続の確立を試みる状態(検索状態)となる。ここで、他の電動作業機(例えば集塵機50)との接続が確立したらLED29が点灯状態となり、ペアリングが完了した状態(連動状態)ことを示す。
【0032】
他の電動作業機(例えば集塵機50)との接続を解消させる際には、LED29が点灯又は点滅している連動モードの状態から、スイッチ28を押すことによって単動モードに切り替わる。単動モードに切り替わるとLED29が消灯する。尚、本実施例の電動作業機では、電源遮断をしたことによって単動/連動モードの設定がクリアされないようにし、電源遮断時のモード設定を、再起動時に維持するようにすると良い。丸鋸10のメインスイッチは、専用のスイッチが設けられるのでなくて、トリガレバー17aの最初の操作でオンになり、操作終了後の所定の時間経過によって自動でオフになる。このオフになった状態から再びトリガレバー17aが引かれて丸鋸10の電源がオンになった際には、電源がオフになった際の単動/連動モードの設定を維持するので、LED29が点灯する連動モードの状態で丸鋸10の電源がオフになったら、丸鋸10の再起動時にはスイッチ28の操作無しに自動的に連動モードとなって、連動させる他の電動作業機との無線接続の確立を試みる。この無線接続の確立を試みている時のLED29は点滅状態であり、他の電動作業機とのペアリングが確立したらLED29が点灯状態となる。
【0033】
図7は集塵機50の操作表示部60の拡大図である。操作表示部60には、電源スイッチ61と、操作パネル62が配置される。電源スイッチ61は、集塵機50のメインスイッチであって、これをオンにすることによって集塵機50の第一制御部72、第二制御部76が起動して、モータ55
が起動する。操作パネル62は、集塵機50の駆動モードと、装着されたバッテリの残量表示と、運転モードの切り替えスイッチが設けられる。また、操作パネル62の一部であって電源スイッチ61の下方には、電源スイッチ61を示すための説明(電源スイッチラベル66)が表示される。尚、
図7では省略しているが、ラベル部65には製品の型式番号や商標等が表示可能である。
【0034】
集塵機50の駆動モードは、モータの回転速度を切り替えることによって吸引力の“強弱”を切り変えるための強弱スイッチ63にて操作される。強弱スイッチ63の上側には3つの大きさの異なるLED63a~63cが設けられ、LED63a~63cの左側からの表示個数で、吸引力が“弱(モータの回転速度が低)”、“中(モータの回転速度が中)”、“強(モータの回転速度が高)”のいずれかであるかが表示される。
【0035】
残量チェックスイッチ64は、装着されているバッテリの残量をチェックするためのボタン式のスイッチであって、残量チェックスイッチ64を押すことによって、一定時間だけ3つのセグメントをそれぞれ有するLED64a、64bが点灯する。集塵機50には2つのバッテリパック100が装着可能である。LED64aは一つ目のバッテリパック100に対応する電圧を表示し、LED64bは二つ目のバッテリパック100に対応する電圧を表示する。各電圧はLEDの点灯数に対応させており、残量がない状態ではLEDが点灯せず、残量が低い場合はLEDが一つだけ点灯、残量が中程度の場合はLEDが2つだけ点灯、フル充電状態の時はLEDが3つ全部点灯する。
【0036】
操作パネル67は、
図6で示した操作パネル
27と同じ機能を有する。ここには「運転モード」を示すスイッチ名67aと共に、押しボタン式のスイッチ68と、スイッチ68の状況に応じて表示するLED69が設けられる。スイッチ68はプッシュ式のソフトタッチスイッチであって、表面には「連動/単動」と印刷されている。このスイッチ68を操作しない状態ではLED69が消灯状態の「単動モード」にあり、スイッチ68を押したら「連動モード」に切り替わる。単動モードから連動モードに切り替わると、LED69が点滅状態となって、連動させる他の電動作業機との無線接続の確立を自動的に試みる。ここで、他の電動作業機(例えば丸鋸10)とのペアリングが確立したらLED69が点灯状態となる。
【0037】
他の電動作業機(例えば丸鋸10)との接続を解消させる際には、LED69が点滅又は点灯している連動モードの状態から、スイッチ68を押すことによって単動モードに切り替わり、LED69が消灯する。尚、本実施例の電動作業機では、電源遮断をしたことによっても単動/連動モードがクリアされないようにする。電源スイッチ61がオフになった際には選択されているモードが記憶され、再度電源スイッチ61をオンにした際には、記憶されたモードとなる。例えば、LED69が点灯する連動モードの状態で集塵機50のメインスイッチをオフにしたら、集塵機50の再起動時にはスイッチ68の操作無しに自動的に連動モードとなって、連動させる他の電動作業機との無線接続の確立(ペアリング)を試みる状態(検索状態)となる。この時のLED69は点滅状態であり、他の電動作業機との無線接続が確立したらLED69が点灯状態(連動状態)となる。以上のように構成することによって、マスター側電動作業機もスレーブ側電動作業機も容易に連動モードの実行を行うことができる。
【0038】
図8は本実施例の無線連動システムにおける各電動作業機(丸鋸10、集塵機50)の動作タイミングを示す図であって、(A)はマスター側電動作業機(丸鋸10)のトリガ操作状態80を示し、(B)はスレーブ側電動作業機(集塵機50)のモータ55の稼動状況90を示す。(A)と(B)の横軸は時間(単位:秒)であり、それぞれの横軸は同期して図示している。本発明の無線連動システムにおいては、マスター側電動作業機(丸鋸10)のトリガ操作に応じて、スレーブ側電動作業機(集塵機50)が動作する。時刻t
1において丸鋸10のトリガレバー17aが引かれると、トリガスイッチ17が矢印80aのオフ状態から矢印80bのオン状態となって、丸鋸10のモータ15が回転する。このモータ15の回転制御は制御部32(
図3参照)によって行われる。作業者による切断作業が時間T1だけ継続し、時刻t
2で作業者がトリガレバー17aを離すと矢印80cのようにトリガオフによりモータ15が停止する。同様にして、時刻t
4にてトリガレバー17aが引かれると、矢印80dのようにトリガスイッチ17がオン状態となって、時刻t
5にてトリガレバー17aが離されると、矢印80eのようにトリガオフによりモータ15が停止する。
【0039】
図8(A)のように丸鋸10が操作されると、丸鋸10のトリガ操作を示す信号(連動信号)がペアリングの完了した集塵機50に伝達される。この連動信号を受信した集塵機50の第二制御部76(
図5参照)は、時刻t
1(厳密にはほんのわずかなタイムラグが生じるが、無視できる程度である)にて、矢印90aのようにモータ55のスイッチのオフ状態(停止状態)から矢印90bのようにオン状態(回転状態)に切り替わる。ここで、時刻t
2にて作業者が丸鋸10のトリガレバー17a(
図2参照)を離すと、そのことを示す連動信号が無線により集塵機50に伝達される。集塵機50の第二制御部76は、この連動信号を第一制御部72に伝達してモータ55を停止させる。この際、第一制御部72は時刻t
2にて直ちにモータ55を停止させることが可能であるが、ここでは一定のディレイタイムαを持たせて、時刻t
3にて
矢印90cのようにモータ55を停止させる。これは、丸鋸10の作業終了後にディレイタイムα分の集塵作業を追加することによって、切断後の鋸刃25や被切断物からの集塵を十分に完了させるためである。ディレイタイムαは、0以上の任意の時間に設定すれば良く、集塵機50の第二制御部にパラメータの一つとして予め設定しておけば良い。同様に、時刻t
4にて丸鋸10のトリガ操作を示す連動信号が集塵機50に伝達されると、矢印90dのように集塵機50のモータ55が回転し、時刻t
5にて丸鋸10のトリガ操作の終了を示す連動信号が集塵機50に伝達されたら、集塵機50の第一制御部72は時刻t
5からディレイタイムαが経過した時刻t
6にて
矢印90eのようにモータ55を停止させる。
【0040】
図9はペアリングされた電動作業機(丸鋸10、集塵機50)における運転モードの状態遷移を示す図である。
図9の左側に示す図は丸鋸10の状態遷移であり、右側に示す図は集塵機50の状態遷移である。双方の電動作業機においては、同じモード設定が準備され、単動モード81、91と連動モード82、92が設けられる。連動モード82、92では、2つの状態が存在し、ペアリングする相手を検索する検索状態83、93と、ペアリングが完了した連動状態84、94がある。マスター側の丸鋸10と、スレーブ側の集塵機50が共に連動状態84、94にある場合は、それらが連動して
図8に示すような連動動作が可能となる。連動モード82、92にはペアリング作業の途中である検索状態83、93は、無線接続による連動準備が完了していない状態であるため、この状態の時に丸鋸10を動作させると、単動モード81と同じように非連動状態にて動作し、丸鋸10を動作させても集塵機50は稼動しない。検索状態83、93においてはLED29(
図6参照)、LED69(
図7参照)は点滅状態にあるため、作業者は「連動モードを選択したのに、ペアリングが完了していない状態」であることを容易に識別することができる。
【0041】
単動モード81、91から連動モード82、92への移行は、矢印85、95に示すようにスイッチ28(
図6参照)、スイッチ68(
図7参照)を押すことによって切り替え可能である。すると丸鋸10と集塵機50は共に検索状態83、93に移行し、待機モードとも言える検索状態83、93で待機中の相手側電動作業機(集塵機50と丸鋸10)と接続ができたら、矢印86、96のように連動状態84、94に移行する。作業者は、LED29(
図6参照)、LED69(
図7参照)が点灯状態になることで、連動状態84、94に移行したことを識別できる。連動状態84、94で連動運転中に、又は、運転停止中において何らかの理由によって無線接続が切れた場合は、矢印88、98のように検索状態83、93に戻る。検索状態83、93では再びペアリングの相手側電動作業機を検索して、ペアリングが完了したら、矢印86、96のように連動状態84、94に移行する。
【0042】
検索状態83、93でLED29、69の点滅状態が長く続いて、複数の電動作業機間の連動ができないと作業者が判断した場合には、作業者は矢印89、99のようにスイッチ28(
図6参照)、スイッチ68(
図7参照)を押すことによって単動モードに切り替え可能である。単動モードに移行すると、LED29、69が消灯するので、作業者はモードが切り替わったことを容易に判断できる。
【0043】
連動状態84、94において、作業者は矢印87、97のようにスイッチ28(
図6参照)、スイッチ68(
図7参照)を押すことによって単動モードに切り替えて、連動動作を終了させることが可能である。単動モードに移行すると、LED29、69が消灯するので、作業者はモードが切り替わったことを容易に判断できる。
【0044】
図10は、丸鋸10のコントローラが行うペアリング処理の処理手順を示すフローチャートである。
図10に示す一連の手順は、制御部32のマイコンに予め格納されたプログラムによってソフトウェア的に実行可能である。ペアリング処理は、複数の電動作業機による連動作業を行う際に、マスター側電動作業機(丸鋸10)とスレーブ側の(集塵機50)とを互いに識別し、当該識別の結果に応じてマスター側の丸鋸10からスレーブ側の集塵機50の駆動を連動させるための処理である。
図10の制御は、丸鋸10にバッテリパック100が装着され、トリガレバー17aが最初に引かれることによって制御部32のマイコンが起動した後に行われる。また、これら制御は、制御部32のマイコンによる他の処理と並行に処理され、マイコンがシャットダウンするまで繰り返し行われる。
【0045】
最初に制御部32のマイコンは、連動モードのスイッチ28(
図6参照)が押されてオンにされた状態(“連動モード”)か否かを判定する(ステップ201)。スイッチが押されていない状態の場合は、他の電動作業機(集塵機50等)との連動作業を行わないので、“単動モード”として電動作業機を動作させる(ステップ212)。その際のLED29(
図6)は消灯している状態にあって(ステップ213)、再びステップ201に戻る。
【0046】
ステップ201において連動モードのスイッチ28(
図6参照)がオン(“連動モード”)の場合は、連動モードの動作が開始され(ステップ202)、最初にペアリングする相手の電動作業機を探して無線接続を確立させる検索を行う(ステップ203)。本実施例でいう「ペアリング」とは、丸鋸10と集塵機50との間で連動作業を行うことが可能な状態を指す。連動させる一方側の電動作業機(ここでは丸鋸10)は、他方側の電動作業機(ここでは集塵機50)にリクエスト信号を送出することで、リクエスト信号に応答する接続先(他の電動作業機)の有無を検索する(ステップ203)。この検索状態においては、LED29(
図6参照)は点滅状態として、接続先を検索していることを作業者に報知する(ステップ204)。この検索において、接続先が検出できたら、最初にリクエスト信号に応答した接続可能な電動作業機との接続を行う(ステップ205、206)。これらのペアリング手順は、Bluetooth(登録商標)を用いる場合は、その規格に沿った手順で行うことができる。本実施例では、リクエスト信号を行う側の電動作業機にて接続対象となる特定の機器の固有識別情報を保持しておいて、接続時に接続対象となる固有識別情報があればその中から接続させるという制御をあえて行わずに、最初にリクエスト信号に応答した電動作業機との自動接続を行う。但し、リクエスト信号には、電動作業機の種類を識別するための種類識別情報(例えば、電動作業機の型番)が含まれるので、他のどんな電動作業機でも接続可能とされるものではない。例えば、丸鋸10と連動可能な電動作業機は、集塵機50やその他の集塵機だけである。その機種と接続可能であるかは、丸鋸10側の制御部32にパラメータの一つとして定義づけて予め記憶させておくと良い。従って、電動作業機と連動不能な機種、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いたスピーカー等に接続されることはおこらない。
【0047】
ステップ206にてペアリングが行われて、接続が成功したら(ステップ207)、連動動作が開始される。この連動状態において制御部は、LED29(
図6参照)を点灯状態としてペアリングによって連動される電動作業機との接続済みであることを作業者に知らせる(ステップ208)。また、制御部は連動する他の電動作業機の識別情報をマイコンのメモリに一時的に記憶する。連動状態で、作業者がトリガレバー17aを引くことによってモータ15が回転し、丸鋸10が動作すると共に、
図8にて示したように集塵機50も連動するように駆動される。尚、モータ15の回転制御手順や、それに合わせた丸鋸10から集塵機50に対する連動信号の送出は、
図10に示すフローチャートを実行するプログラムとは別の制御プログラム
によって並行して実行される。また、ステップ202~208の間にトリガレバー17aが引かれた場合は、丸鋸10は単体で動作する(単動モードと同じ動作)。
【0048】
連動信号は、当該電動作業機のモータの駆動状態を示す情報であって集塵機50の駆動開始時の制御を切り換える駆動状態識別情報(例えば、モータの回転数)を含む。具体的には、駆動状態識別情報は、丸鋸10側のモータの駆動状態に応じて、丸鋸10側のモータの駆動開始から集塵機50が作業速度で駆動するまでの始動時間を変更する情報である。集塵機50の第一制御部72は、上記駆動状態識別情報に応じて、外部の電動作業機の駆動開始時から、あるいは集塵機50のモータへの電力供給開始時から、集塵機50のモータへの供給電力が実作業時電圧へ到達するまでの時間である始動時間を切り換える。また、集塵機50の第一制御部72は、上記駆動状態識別情報に含まれる丸鋸10の種類に応じて、上記始動時間の長さや停止時のディレイタイムαを変更する。
【0049】
また、駆動状態識別情報には、電動作業機が行う作業の負荷に応じてモータの回転数を変化させるか否かを示すモード設定情報を含む。当該モード設定情報には、例えば、電動作業機(丸鋸10)の先端工具(鋸刃25)への負荷が所定の閾値に満たない場合に所定の回転数未満となるようにモータの回転数を維持し、その後、当該先端工具への負荷が所定の閾値以上となった場合に所定の回転数以上となるようにモータの回転数を引き上げるオートモード、あるいは当該先端工具への負荷にかかわらずモータの回転数を一定の速度で所定の回転数となるまで引き上げる通常モード等、モータの駆動状態に応じて定められる電動作業機の設定を示す情報が含まれる。
【0050】
以上、ステップ207にて連動モードが確立したら、連動モードは、何らかの理由によって通信が切断されるか、又は、作業者が連動モードのスイッチ28(
図6参照)を押して“単動モード”に切り替えるまで続けられる(ステップ209、210)。ステップ209では通信が切断されたか否かを判定し、切断されていたら識別情報を削除してからステップ201に戻り、ステップ202以降を実施することにより連動可能な電動作業機の再検索を行う。通信が切断される一例としては、相手側の電動作業機において連動モードスイッチ(例えば
図7のスイッチ68)が押されて“単動モード”に切り替えられたことによって通信が相手側電動作業機から切断された場合である。ステップ209で通信が切断されてなければ、制御部32のマイコンは、自機側のスイッチ28の状態が“連動モード”のままであるかを判定し、連動モードのままならばステップ209に戻る(ステップ210)。ステップ210において、“連動モード”が解除して“単動モード”になったら、相手側電動作業機との通信を切断させて(ステップ211)、ステップ201に戻る。
【0051】
ステップ204において、連動を行う相手側の電動作業機が検出できない場合は、例えば、集塵機等の相手側電動作業機が接続可能範囲内に無い場合、又は、あってもメイン電源ONかつ“連動モード”に設定済みでは無い場合が該当する。その場合はステップ202に戻り、相手側電動工具の検索を行う検索状態を継続する。この際、相手側電動作業機の検索時間にタイムアウトを設定せずに、LEDが点滅中においては相手側電動作業機を検索し続ける。従って、検索状態において、無線接続可能範囲内において、接続可能機種が連動モードに切り替えられたら即座にペアリング登録をすることが可能となる。
【0052】
本実施例の方法では連動作業を行う2つの電動作業機を、無線通信可能範囲内において連動モードに切り替えるだけで容易にペアリングを行うことが可能となる。また、ペアリングを行う際の検索状態にタイムアウト時間を設定していないので、連動モードに切り替えるタイミングを2つの電動作業機でずらしても影響がない。なお、無線通信可能範囲内に複数の接続可能な電動作業機が存在する場合、例えば集塵機が2台あるような場合であっても、すでに連動モードでペアリング済みの機種には、丸鋸側からは接続不能となるので、特に問題とはならない。また、意図しない別の機種(例えば3台目の集塵機)に接続されてしまった場合は、意図しない別の機種(3台目の集塵機)の電源をオフにするか又は別の機種(3台目の集塵機)の連動モードのスイッチ68を押して単動モードに切り替えるだけで、丸鋸10は所望の集塵機(1台目の集塵機)との接続ができる。よって、簡単な手順で容易にペアリングのリカバリが可能となり、作業者にとってきわめて簡単に無線連動システムを使用できる。
【実施例2】
【0053】
図1から
図10の実施例では、それぞれ無線通信部を有する電動作業機間にて連動させるようにした。しかしながら無線通信部を有しない電動作業機とは連動させることができない。例えば、無線通信部付きの新しい集塵機50に、従来の無線通信部無しのコードレス丸鋸を連動させたいような場合である。そこで、本実施例では、バッテリパックに無線通信部134を設けて、無線通信部134を介してスレーブ側の電動作業機(集塵機50)と連動できるように構成した。
【0054】
図11は、電動作業機本体(丸鋸10)とバッテリパック100Aの接続回路構成図である。
図11に示すように、丸鋸10は、工具側プラス端子41と、バッテリパック100Aから供給される電力をモータ15に供給するためのトリガスイッチ17と、バッテリパック100Aから電力が供給されていることを検出するための工具側トリガ検出端子43と、丸鋸10を駆動するためのモータ15と、工具側マイナス端子45と、電動作業機の電圧値を出力する工具側LD端子44とを有している。丸鋸10にはさらに、電池電圧検出回路36と、電源回路31と、トリガ検出回路37と、電流検出回路39と、制御部32と、通信接続端子42と無線通信部34とを有している。
【0055】
電池電圧検出回路36は、バッテリパック100Aから供給される電圧を測定するための検出手段であり、その出力は制御部32のマイコンのA/Dコンバータに接続される。A/Dコンバータからは、検出した電池電圧に対応するデジタル値が入力され、制御部32は、入力されたデジタル値とあらかじめ設定した所定値とを比較し、電池残量が所定値より少なくなった場合、即ち過放電状態となった時にスイッチング素子38を遮断状態、即ちFETのゲート信号をLOWにすることで一時的にモータ15が回転しない状態にしてバッテリパック100Aが過放電とならないように保護する。
【0056】
電源回路31は、制御部32の動作電圧を生成するための電源回路である。制御部32の電源が入っていない状態で、トリガレバー17aを最初に引いてトリガスイッチ17がオン状態となった場合、制御部32に電源回路31から電圧が供給されるため制御部32のマイコンが起動し、制御部32から電源回路31に電源保持信号が継続的に出されることでトリガスイッチ17が戻された状態であっても制御部32への電源供給が一定時間だけ維持され、制御部32のマイコンが動作を継続する。
【0057】
トリガ検出回路37は、トリガスイッチ17が閉じたことを検出するための回路であり、トリガスイッチ17が閉じた旨の信号を制御部32に出力する。電流検出回路39は、回路内を流れる電流(モータ15に流れる電流)を検出する回路である。電流検出回路39は、シャント抵抗R2の両端電圧を検出し、制御部32のA/Dコンバータには電流検出回路39によって検出された電流値に対応するデジタル値が入力される。
【0058】
制御部32は、例えば、マイコン(マイクロコンピュータ)により主に構成され、丸鋸10の各部を制御する。通信接続端子42は、制御部32が、バッテリパック100Aの充電/放電制御部151と通信して各種制御情報を送受信するための接続端子である。無線通信部34は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)通信等の無線通信規格に従って、外部機器(例えば、集塵機50)との間で通信するための回路であるが、無線通信部134付きのバッテリパック100Aを使用する場合には、電動作業機本体側に無線通信部34を持たない構成であっても本願発明による無線連動システムを実現できる。
【0059】
バッテリパック100Aは、定格出力電圧が18Vであって、5本のセル121~125からなるセルユニット120を備える。充電/放電制御部151は、プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力する中央処理装置(CPU)、プログラムとデータを記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時記憶するRAM(Random Access Memory)、及びタイマ等を含む回路であり、バッテリパック100Aの充電及び放電動作を監視する。バッテリパック100Aには、工具側トリガ検出端子43に接続するためのバッテリ側トリガ検出端子143と、バッテリ側トリガ検出端子143が電動作業機からの電力の供給を受けていることを検出するためのトリガ検出回路135を有している。
【0060】
さらに、バッテリパック100Aは、電動作業機の電圧値を入力するバッテリ側LD端子144と、バッテリ側LD端子144が電動作業機の電圧値を検出するための機器電源検出回路136とを有している。セルユニット120には、セルユニット120を保護するセル保護IC152が設けられる。セル保護IC152の信号を用いる過充電検出回路137と過放電検出回路138が接続され、これらの信号は、充電/放電制御部151に出力される。
【0061】
セル保護IC152は、個々の電池セルの電圧を監視し、その中の一つでも過放電又は過充電になることを防止するためのものである。充電に伴い電池セルの電圧は上昇するため、充電を継続し、満充電となる閾値電圧(充電限界電圧)に達すると、過充電検出回路137から過充電信号が出力される。同様に、放電によって電池セルの少なくとも1つが過放電のおそれがある閾値電圧(放電限界電圧)まで低下した場合には、過放電検出回路138から過放電信号が出力される。一例として、過充電検出回路137と過放電検出回路138は、バッテリパック100Aが過放電及び満充電のいずれでもない通常の使用電圧ではハイ信号を出力し、過放電又は満充電を知らせる場合はロー信号を出力する。セル温度検出回路139は、セルユニット120およびセルユニット120を構成する各電池セルの近傍に配置された図示しないサーミスタ等の温度検出素子を含み、各セル121~125の温度を検出し、充電/放電制御部151に送信する。
【0062】
電源回路130は、セルユニット120の電圧に基づいて充電/放電制御部151の動作用の基準電圧VDDを生成し、充電/放電制御部151に供給する。電流検出回路131は、セルユニット120と直列接続された抵抗132の両端の電圧に基づいてセルユニット120に流れる電流を検出し、充電/放電制御部151に出力する。
【0063】
無線通信部134は、本実施例のバッテリパック100Aに新たに追加された部分であって、他の無線通信部付きの電動作業機(例えば
図1の集塵機50)と単方向又は双方向通信を行うためのものである。ここでは、丸鋸10や集塵機50と同様にBluetooth(登録商標)等の公知の無線通信規格を用いて、所定の情報を送受信する。
【0064】
図11に示す無線通信部134を用いたバッテリパック100Aの動作を説明する。電動作業機本体の制御部32と、バッテリパック100A側の充電/放電制御部151は、通信接続端子42、142を介して双方向に通信可能である。また、電動作業機本体側でトリガ検出回路37によってトリガ操作が検出されたら、電動作業機本体の制御部32はトリガ検出端子43、143を介してバッテリパック100A側の充電/放電制御部151にトリガ操作信号を伝達する。充電/放電制御部151はトリガ検出信号を受信したら、無線通信部134を介してスレーブ側電動作業機(例えば集塵機50)に伝達する。この無線連動動作を行う前には、バッテリパック100A側の連動モードに切り替えておく必要がある。そのために、
図6に示したスイッチと同等のスイッチ、即ち、無線によって連動動作を行う連動モードに切り換えるための通信スイッチ127と、LED等の通信状態表示手段129を新たに設けた。尚、バッテリパック100Aは、他の電動作業機との連動動作を行わない場合や、電動作業機本体側に無線通信部34を有する場合は、単動モードとして、従来のバッテリパック100と同様に無線通信部134を動作させなければ良い。
【0065】
第2の実施例を用いることによって無線通信部を有しない電動作業機においても、無線通信機能付きのバッテリパック100Aを装着すれば無線連動システムを容易に実現できる。尚、スレーブ側電動作業機(無線通信部を有しない従来の集塵機)においても、同様にバッテリパック100Aを用いることによって無線連動システムを容易に実現できる。
【0066】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、無線連動システム1で用いられるマスター側電動作業機として丸鋸10を例示したが、例えば、ジグソー、グラインダ、ハンマドリル等の他の様々な工具においても同様に適用できる。また、マスター側電動作業機やスレーブ側電動作業機は、コードレス方式の電動作業機だけに限られずに、商用電源を用いた電動作業機にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1…無線連動システム、4…集塵用ホース、10…丸鋸、12…ハウジング、13…ハンドル部、14…バッテリ取付部、15…モータ、16…モータカバー、17…トリガスイッチ、17a…トリガレバー、18…ダクトアダプタ、19…接続管、20…ベース、22 …無線通信、25…鋸刃、26…保護カバー、27…操作パネル、27a…スイッチ名、28…スイッチ、29…LED、30…制御回路基板、31…電源回路、32…制御部、33…インバータ・ドライバ回路、34…無線通信部、35…UI部、36…電池電圧検出回路、37…トリガ検出回路、38…スイッチング素子、39…電流検出回路、41…工具側プラス端子、42…通信接続端子、43…工具側トリガ検出端子、44…工具側LD端子、45…工具側マイナス端子、50…集塵機、51…ヘッド部、52…無線通信、53…クランプ機構、55…モータ、56…タンク部、57…ホース取付口、58…キャスター、60…操作表示部、61…電源スイッチ、62…操作パネル、63…強弱スイッチ、63a~63c…LED、64…残量チェックスイッチ、64a,64b…LED、65…ラベル部、66…電源スイッチラベル、67…操作パネル、67a…スイッチ名、68…スイッチ、69…LED、71…電源回路、72…第一制御部、73…インバータ・ドライバ回路、74…無線通信部、75…UI部、76…第二制御部、80…トリガ操作状態、90…モータの稼動状況、81,91…単動モード、82,92…連動モード、83,93…検索状態、84,94…連動状態、100,100A…バッテリパック、101…ラッチ、120…セルユニット、121~125…セル、127…通信スイッチ、129…通信状態表示手段、130…電源回路、131…電流検出回路、132…抵抗、134…無線通信部、135…トリガ検出回路、136…機器電源検出回路、137…過充電検出回路、138…過放電検出回路、139…セル温度検出回路、143…バッテリ側トリガ検出端子、144…バッテリ側LD端子、151…充電/放電制御部、152…セルユニット保護IC、VDD,VDD2…基準電圧