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特許7184083車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラム
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  • 特許-車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020532370
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2019028580
(87)【国際公開番号】W WO2020022240
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018139098
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110627(JP,A)
【文献】特表2007-512636(JP,A)
【文献】特開2006-350617(JP,A)
【文献】特開2017-003946(JP,A)
【文献】特開2000-211452(JP,A)
【文献】特開2003-016591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置において、
前記画像を表示する表示部と、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出部と、
前記区画線検出部で検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、
前記区画線検出部で検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出部の検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する
車両用表示装置。
【請求項2】
前記ドライバーの視線を検出する視線検出部を備え、
前記表示制御部は、
前記視線検出部の検出結果に基いて、前記ドライバーの視線方向の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記ドライバーの視線を検出する視線検出部を備え、
前記表示制御部は、
前記視線検出部の検出結果に基いて、前記区画線検出部で検出された区画線毎に、前記ドライバーの視線の集中の程度を算出し、
算出結果に基いて、単位時間における視線集中の高い側の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、
前記視線検出部で検出される視線の集中の程度が判定基準値以上の場合、前記ガイド線の可動表示に係る前記ガイド線の視認性を低下させる
請求項2又は請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、
車線中央から前記自車両の中央までの距離に応じて、前記ガイド線の可動表示に係る前記ガイド線の視認性を低下させる
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置の制御方法において、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出ステップと、
前記区画線検出ステップで検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出ステップと、
前記画像を表示する表示部を制御する表示制御ステップとを備え、
前記表示制御ステップは、
前記区画線検出ステップで検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出ステップの検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する
車両用表示装置の制御方法。
【請求項7】
演算処理回路における実行により所定の処理手順を実行させる車両用表示装置の制御プログラムにおいて、
車両用表示装置が、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置であり、
前記処理手順は、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出ステップと、
前記区画線検出ステップで検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出ステップと、
前記画像を表示する表示部を制御する表示制御ステップとを備え、
前記表示制御ステップは、
前記区画線検出ステップで検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出ステップの検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する
車両用表示装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドアップディスプレイ装置による車両用表示装置に関して、ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する工夫が提案されている。このような車両用表示装置は、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に、種々の画像を表示することができる。
【0003】
このような車両用表示装置に関して、特許文献1には、車両の両側の区画線に重なり合うように、虚像によりこの区画線を強調する表示を形成し、区画線の視認性を向上する構成が開示されている。
また特許文献2には、走行予測位置を示すマーカーを虚像により表示することにより、操舵の目印を表示する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-211452号公報
【文献】特開平8-241493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれら特許文献1、2に開示の構成においては、結局、ドライバーは、走行車線の左右の区画線を目視により確認しながら、運転操作することが必要であり、これによりドライバーの負担を軽減する点で実用上未だ不十分な問題がある。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、従来に比してドライバーの負担を軽減することができる車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
係る課題を解決するため、請求項1の発明に係る車両用表示装置は、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置において、
前記画像を表示する表示部と、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出部と、
前記区画線検出部で検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出部と、
前記表示部を制御する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、
前記区画線検出部で検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出部の検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する。
【0008】
請求項1の構成によれば、他方の区画線においては、ガイド線との間隔が車両の走行位置に応じて変化することにより、区画線とガイド線の表示とが一定の間隔となるように操舵して、走行車線を走行することができる。すなわち実景における左右の2つの区画線を必ずしも確認しなくても、左右いずれか1つの区画線とガイド線の表示を視認することで、概ね車両の位置を把握することができる。これによりドライバーは、この他方の区画線側に注意を集中させて走行することができる。
また一方の区画線については、ガイド線が一定位置に表示されることにより、区画線の位置を把握容易とすることができる。これにより実景の区画線を確認する時間、頻度を軽減することができる。
これにより従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【0009】
請求項2の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1の構成において、
前記ドライバーの視線を検出する視線検出部を備え、
前記表示制御部は、
前記視線検出部の検出結果に基いて、前記ドライバーの視線方向の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定する。
【0010】
請求項2の構成によれば、ドライバーが操舵の基準としている区画線をガイド線の可動表示に設定することができ、これにより確実にドライバーの負担を軽減することができる。
【0011】
請求項3の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1の構成において、
前記ドライバーの視線を検出する視線検出部を備え、
前記表示制御部は、
前記視線検出部の検出結果に基いて、前記区画線検出部で検出された区画線毎に、前記ドライバーの視線の集中の程度を算出し、
算出結果に基いて、単位時間における視線集中の高い側の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定する。
【0012】
請求項3の構成によれば、ドライバーが操舵の基準としている区画線をガイド線の可動表示に設定することができ、これにより確実にドライバーの負担を軽減することができる。
【0013】
請求項4の発明に係る車両用表示装置は、
請求項2又は請求項3の構成において、
前記表示制御部は、
前記視線検出部で検出される視線の集中の程度が判定基準値以上の場合、前記ガイド線の可動表示に係るガイド線の視認性を低下させる。
【0014】
請求項4の構成によれば、ドライバーが操舵の基準としている区画線のガイド線について、煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0015】
請求項5の発明に係る車両用表示装置は、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の何れかの構成において、
前記表示制御部は、
車線中央から前記自車両の中央までの距離に応じて、前記ガイド線の可動表示に係るガイド線の視認性を低下させる。
【0016】
請求項5の構成によれば、車線中央からの距離に応じて、ガイド線の可動表示に係るガイド線の視認性を低下させることにより、煩わしさを感じさせないようにして、車線中央からの逸脱量に応じてドライバーの注意を喚起することができ、安全運転に寄与することができる。
【0017】
請求項6の発明は、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置の制御方法において、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出ステップと、
前記区画線検出ステップで検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出ステップと、
前記画像を表示する表示部を制御する表示制御ステップとを備え、
前記表示制御ステップは、
前記区画線検出ステップで検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出ステップの検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する。
【0018】
請求項6の構成によれば、他方の区画線においては、ガイド線との間隔が車両の走行位置に応じて変化することにより、区画線とガイド線の表示とが一定の間隔となるように操舵して、走行車線を走行することができる。すなわち実景における左右の2つの区画線を必ずしも確認しなくても、左右いずれか1つの区画線とガイド線の表示を視認することで、概ね車両の位置を把握することができる。これによりドライバーは、この他方の区画線側に注意を集中させて走行することができる。
また一方の区画線については、ガイド線が一定位置に表示されることにより、区画線の位置を把握容易とすることができる。これにより実景の区画線を確認する時間、頻度を軽減することができる。
これにより従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【0019】
請求項7の発明は、
演算処理回路における実行により所定の処理手順を実行させる車両用表示装置の制御プログラムにおいて、
前記車両用表示装置が、
ドライバーの前方空間に、虚像により画像を表示する車両用表示装置であり、
前記処理手順は、
車両の左右の区画線を検出する区画線検出ステップと、
前記区画線検出ステップで検出された区画線に対する自車両の位置を検出する走行状態検出ステップと、
前記画像を表示する表示部を制御する表示制御ステップとを備え、
前記表示制御ステップは、
前記区画線検出ステップで検出された区画線の一方の区画線をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線を前記ガイド線の可動表示に設定し、
前記ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て前記一方の区画線に対して一定の位置に前記ガイド線を表示し、
前記ガイド線の可動表示では、前記走行状態検出ステップの検出結果に基いて、前記他方の区画線までの間隔を前記自車両の走行位置に応じて可変して、前記ガイド線を表示する。
【0020】
請求項7の構成によれば、他方の区画線においては、ガイド線との間隔が車両の走行位置に応じて変化することにより、区画線とガイド線の表示とが一定の間隔となるように操舵して、走行車線を走行することができる。すなわち実景における左右の2つの区画線を必ずしも確認しなくても、左右いずれか1つの区画線とガイド線の表示を視認することで、概ね車両の位置を把握することができる。これによりドライバーは、この他方の区画線側に注意を集中させて走行することができる。
また一方の区画線については、ガイド線が一定位置に表示されることにより、区画線の位置を把握容易とすることができる。これにより実景の区画線を確認する時間、頻度を軽減することができる。
これにより従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両用表示装置、車両用表示装置の制御方法、車両用表示装置の制御プログラムによれば、従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両用表示装置を示すブロック図である。
図2】ガイド線の表示の説明に供する図である。
図3】車線中央を走行している場合を示す図である。
図4】ガイド線の可動表示の他の例を示す図である。
図5】視線による可動表示の設定の説明に供する図である。
図6A】視線による可動表示の設定の他の例の説明に供する図である。
図6B】視線による可動表示の設定の他の例の説明に供する図である。
図7】ガイド線の視認性の低下の説明に供する図である。
図8A】ガイド線の視認性の低下の他の例の説明に供する図である。
図8B】ガイド線の視認性の低下の他の例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用表示装置1を示す図である。
この車両用表示装置1は、ヘッドアップディスプレイ装置による車両用表示装置であり、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの前方空間に、各種の画像を虚像により表示する。車両用表示装置1は、この虚像による画像表示により、ドライバーの負担を軽減する。
車両用表示装置1は、車両に据え付けて車両に配置されるものや、ドライバーが携帯する携帯情報端末により構成してもよい。
また車両用表示装置1は、ヘッドマウントディスプレイ装置等、ウインドシールドを介して前方を視認したドライバーの視界に画像を表示可能な種々の構成を広く適用することができる。
【0024】
車両用表示装置1は、表示部2、車両情報取得部3、視線検出部4、車線検出部5、画像生成部6を備える。また画像生成部6は、表示制御部6A、区画線検出部6B、走行状態検出部6C、視線情報検出部6Dを備える。
車両用表示装置1は、車両用表示装置の制御プログラムを画像生成部6に設けられた演算処理回路で実行することにより、表示制御部6A、区画線検出部6B、走行状態検出部6C、視線情報検出部6Dの機能ブロックが構成される。
これによりこの制御プログラムの実行による処理手順は、表示制御部6A、区画線検出部6B、走行状態検出部6C、視線情報検出部6Dにそれぞれ対応して、対応する処理を実行する表示制御ステップ、区画線検出ステップ、走行状態検出ステップ、視線情報検出ステップを備える。
【0025】
表示部2は、表示に供する画像を虚像により形成する部位であり、画像表示パネル、この画像表示パネルの周辺回路、この画像表示パネルの出射光をウインドシールドに向けて出射する光学系等により形成される。
ここで画像表示パネルは、DMD(Digital Mirror Device)、液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル等、種々の構成を広く適用することができる。
【0026】
車両情報取得部3は、車速、燃料の残量、各種の警告等の車両情報を車両より取得するインターフェースであり、取得した車両情報を画像生成部6に出力する。
【0027】
視線検出部4は、ドライバーの視線検出に供する構成であり、ドライバーの顔を撮像して撮像結果を出力する撮像装置により構成される。
【0028】
車線検出部5は、自車両の走行車線を、当該走行車線に沿って延長する走行車線の両側の区画線(車線境界線、車道外境界線、車道中央線)と共に撮像して撮像結果を出力する撮像装置により構成される。車両用表示装置1では、後述するように、この車線検出部5の撮像結果に基いてドライバーより見て走行車線の区画線に対して一定位置にガイド線を表示することにより、車線検出部5は、ドライバーの眼の近傍(例えば運転席の上方)に配置される。しかしながら車線検出部5の取り付け位置に対するドライバーの眼の位置に応じて車線検出部5の撮像結果より得られる区画線の位置情報を補正して、ドライバーより見て区画線に対して一定位置にガイド線を表示することも可能であり、これにより車線検出部5は種々の位置に配置することができる。
【0029】
画像生成部6は、表示に供する画像を生成して表示部2を制御する部位であり、演算処理回路、この演算処理回路の処理に使用されるメモリ、グラフィックス ディスプレイ コントローラ等を備える。
【0030】
画像生成部6において、区画線検出部6Bは、車線検出部5で取得される撮像結果の画像処理により、走行車線11の両側の区画線を検出する。
【0031】
走行状態検出部6Cは、区画線検出部6Bで検出した区画線に対する自車両の位置を検出する。より具体的に、走行状態検出部6Cは、区画線検出部6Bで検出した区画線により走行車線の車線中央を検出し、さらにこの車線中央に対する自車両の中央位置を検出することにより、区画線に対する自車両の位置を検出する。
【0032】
視線情報検出部6Dは、視線検出部4の撮像結果を画像処理することにより、ドライバーの視線を検出する。
【0033】
表示制御部6Aは、区画線検出部6B、走行状態検出部6C、視線情報検出部6Dの検出結果に応じて表示部2の表示を制御する。
すなわち表示制御部6Aは、表示部2の制御により車両情報取得部3で取得される車両情報を表示する。
さらに表示制御部6Aは、ドライバーがガイド線の表示を指示している場合、車両情報に加えてガイド線を表示する。
ここでガイド線は、区画線に沿って配置される目印の表示である。
【0034】
図2は、このガイド線の表示の説明に供する図であり、ドライバーの前景を示す図である。なおこの図2においては、車両情報の表示を省略して示す。
この図2の例では、ドライバーの前方、ウインドシールドの全部又は一部に対応する領域に車両用表示装置1による表示可能領域2Aが形成され、この表示可能領域2Aを介して走行中の道路に係る走行車線11、この走行車線11の左右の区画線12、13を見て取ることができる。
なお走行中の道路が対向2車線である場合、区画線12、13は、それぞれ車道外境界線、車道中央線となる。また走行中の道路が片側2車線以上の道路であり、最も左側車線を走行している場合、区画線12、13は、それぞれ車道外境界線、車線境界線となり、最も右側車線を走行している場合、区画線12、13は、それぞれ車線境界線、車道中央線となる。また3車線以上の道路で、中央車線を走行している場合、区画線12、13は、共に車線境界線となる。
なお区画線は、一定間隔により途切れた白線、黄色線、複数本の白線等により形成されているものの、この図2においては、実線により示す。
【0035】
表示制御部6Aは、走行車線11の左右で検出される区画線12、13の一方の区画線13をガイド線の固定表示に設定し、他方の区画線12をガイド線の可動表示に設定する。
【0036】
表示制御部6Aは、ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て当該区画線13に対して一定の位置にガイド線15を表示する。この図2の例では、区画線の内側にガイド線の外側が接するように、区画線13の内側にガイド線を表示する。
なおこの固定表示に係る一定位置は、区画線12の外側にガイド線の内側が接するように、区画線12の外側にガイド線を表示する場合、区画線12に重なり合うようにガイド線を表示する場合、区画線12に対して一定の距離だけ離間して、区画線12の内側又は外側にガイド線を表示する場合等、種々の形態を適用することができ、さらには適宜変更するようにしてもよい。
【0037】
また表示制御部6Aは、ガイド線の可動表示では、走行状態検出部6Cの検出結果に基いて、当該区画線12までの距離Dを自車両の走行位置に応じて可変して、ガイド線16を表示する。
より具体的に、この図2の例では、表示制御部6Aは、区画線検出部6Bで検出される車線中央LCに対する自車両の中央CCにより、車線中央LCからの逸脱量である、車線中央LCから自車両の中央CCまでの距離Dを検出し、ガイド線を固定表示により表示する場合の表示位置から、この距離Dの分だけ変位した位置に、可変表示に係るガイド線16を表示する。
【0038】
このようにガイド線を固定表示、可変表示する場合、可変表示に係る区画線12においては、ガイド線16との間隔が車両の走行位置に応じて変化することにより、区画線12とガイド線16の表示とが一定の間隔となるように操舵して、走行車線を走行することができる。すなわち実景における左右の2つの区画線12、13を必ずしも確認しなくても、左右いずれか1つの区画線12とガイド線16の表示を視認することで、概ね車両の位置を把握することができる。これによりドライバーは、この他方の区画線12側に注意を集中させて走行することができる。
また図2の例では、自車両の走行位置が左側に片寄っていることにより、実景の区画線12に対してガイド線16が外側にずれて表示されることになる。この場合、ドライバーは、違和感を覚え、無意識のうちに、このガイド線16が区画線12側に変位するように操舵して、自車両を右側に寄せるように操舵することになる。これにより車線を逸脱しないようにドライバーの運転を補助して安全運転に寄与することができる。
また固定表示に係る区画線13については、ガイド線15が一定位置に表示されることにより、区画線13の位置を把握容易とすることができる。これにより実景の区画線13を確認する時間、頻度を軽減することができる。
またこの固定表示側では、区画線13に対してガイド線15が一定位置に保持されていることにより、ドライバーに安心感を提供することができ、これによっても安全運転に寄与することができる。
これらによりこの実施形態では、区画線に関して、従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【0039】
なお図2の例では、走行車線11の両側の区画線12、13にガイド線16、15を表示しているものの、これら区画線12、13の外側の、隣接車線の区画線についても、ガイド線の固定表示を適用して、ガイド線を表示するようにしてもよい。
このようにすれば、隣接車線との関係を一段と容易に把握することができ、一段と安全性を向上することができる。
【0040】
図3は、図2との対比により自車両が走行車線の中央を走行している場合の例を示す図である。
この場合、可動表示に係る区画線12は、固定表示に係る区画線13とほぼ同一にガイド線16が表示されることになり、これによりドライバーは、車線中央LCの走行を確認することができる。
【0041】
ここでガイド線15、16は、区画線13、12の延長方向に一定幅により見て取ることができるように、帯形状により同一形状により形成されているものの、例えば区画線に対応して一定の長さによる帯形状を一定の間隔で配置して形成する場合等、種々の構成を広く適用することができる。
またガイド線15、16は、道路の状況、対応する区画線に応じて、適宜、形状を変更するようにしてもよい。
またさらにガイド線15、16で、形状、色彩を異ならせるようにしてもよい。
【0042】
またガイド線の可動表示において、ガイド線16の表示位置は、車両の走行位置に対応する個所から適宜変化させるようにしてもよい。具体的に、例えば追い越し車両の検出により、この追い越し車両が通過する側に近づくようにガイド線の表示位置を一時的に変化させ、自車両が理想ラインを走行するように制御してもよい。またこれとは逆に、他の車両を追い越す場合、同様にガイド線の表示位置を変化させ、この場合も自車両が理想ラインを走行するように制御してもよい。
このようにすれば一段とドライバーの負担を軽減することができる。
【0043】
またガイド線の可動表示において、ガイド線16の表示位置は、自車両より遠ざかるに従って対応する区画線との間隔が小さくなるようにして、遠近感を醸し出すように表示されるものの(図2及び図3)、図2との対比により図4に示すように、区画線12の延長方向で一定の間隔として、直線道路では区画線12とガイド線16とが平行になるように表示してもよい。
【0044】
すなわち自車両より遠ざかるに従って対応する区画線との間隔が小さくなるようにして、遠近感を醸し出すように表示する場合、車線中央から逸脱していることは把握できるようにすることができるものの、如何にすればこの逸脱を修正できるかを、適切に伝えることが難しい場合がある。
しかしながらこのように区画線12に平行にガイド線16を表示する場合、ドライバーにおいては、単にハンドル操作により自車両の走行位置を右側に寄せれば良いことを直感的に把握することができ、これにより適切に修正方法を伝達して使い勝手を向上することができる。
またこのようにすれば表示制御部6Aにおける処理を簡略化することができることにより、全体構成を簡略化することができる。
【0045】
〔固定表示と可動表示の設定〕
図5は、図4との対比により固定表示と可動表示との設定の説明に供する図である。
表示制御部6Aは、視線情報検出部6Dの検出結果に基いて、ガイド線の固定表示、可動表示を設定する。
【0046】
具体的に、図5に示すように、表示制御部6Aは、視線の滞留時間が一定時間以上の箇所が、走行車線11の車線中央LCを基準にして左右何れの側に集中しているかを判定することにより、ドライバーの視線方向を検出する。
またこの視線方向の区画線をガイド線の可動表示に設定し、残る区画線をガイド線の固定表示に設定する。
ここで図5の例では、左側、区画線12の外側領域に視線が集中する視線集中領域ARが検出されており、これによりこの視線集中領域ARに近い側である左側の区画線12をガイド線の可動表示に設定し、残る右側の区画線13をガイド線の固定表示に設定する。
なおこのように区画線12の外側領域に視線集中領域ARが形成されている場合であっても、この区画線12のガイド線16は、ドライバーの周辺視により把握され、これにより区画線12に視線が集中していない場合でも、ドライバーにおいては、ガイド線16の表示により自車両の走行状態を把握することができる。
【0047】
このようにすれば、ドライバーが注視しており、ドライバーが操舵の基準としている区画線をガイド線の可動表示に設定することができ、これにより確実にドライバーの負担を軽減することができる。
またこの場合、例えば右カーブ、左カーブの繰り返しにより、左右への視線移動をドライバーが繰り返している場合に、この視線移動に追従するように、固定表示、可動表示を切替えることができ、一段とドライバーの負担を軽減することができる。
【0048】
なおこれに代えて、ドライバーの視線の集中の程度を左右の区画線毎に算出し、この算出結果に基いて、単位時間における視線集中の高い側の区画線をガイド線の可動表示に設定してもよい。
【0049】
図6A及び図6Bは、この視線集中の高い側の区画線についての可動表示の設定の説明に供する図である。
この場合、表示制御部6Aは、右側区画線13、左側区画線12にそれぞれ視線検出用の領域を設定し、滞留時間が一定時間以上である視線の滞留を領域でそれぞれ計測し、これにより視線の集中の程度を区画線毎に算出する。
ここで図6Aは、左側区画線12に視線集中領域ARLが形成されている場合であり、この場合、この区画線12が可動表示に設定される。
また図6Bは、右側区画線13に視線集中領域ARRが形成されている場合であり、この場合、この区画線13が可動表示に設定される。
【0050】
このようにすれば、右ハンドル車、左ハンドル車での視線集中の傾向が相違する場合、視線集中に個人差を有する場合等にあっても、確実に視認している側の区画線を可動表示とすることができる。これによりドライバーが操舵の基準としている区画線を確実にガイド線の可動表示に設定することができ、一段とドライバーの負担を軽減することができる。
【0051】
なおこのようにして視線集中により可動表示と固定表示とを設定する場合、視線集中の変化により可動表示と固定表示とを切替えることになる。この場合、切替えの判定により瞬時に表示を切替えるようにしてもよく、切替えの判定から表示の切替えまでに一定の遅延時間を設けるようにしてもよい。また切替えの判定にヒステリシス特性を設けて、頻繁な切替えを防止するようにしてもよい。また一旦、双方の区画線を固定表示又は可動表示とした後、表示を切替えるようにしてもよい。
【0052】
なお固定表示、可動表示の設定は、これらに限らず、例えば路肩に充分な余裕を有する側の区画線をガイド線の固定表示に設定する場合等、種々の設定方法を広く適用することができる。
【0053】
〔ガイド線の視認性の設定〕
さらに表示制御部6Aは、可動表示に係るガイド線の表示については、視線の集中の程度に応じて視認性が低下するように表示を制御し、これにより煩わしさを感じさせないようにする。
【0054】
すなわち表示制御部6Aは、視線情報検出部6Dによる検出結果により、視線集中の程度を判定基準値により判定し、この判定結果により視線集中の程度が低い場合、固定表示のガイド線15と同一の輝度レベルによりガイド線16を表示する。
これに対して判定基準値以上の判定結果が得られると、図6A及び図6Bとの対比により図7に示すように、輝度レベルを低下させてガイド線16を表示し、これにより視認性を低下させる。
【0055】
ここでこのように視線が集中している場合、ドライバーは、この視線が集中している区画線を充分に視認していると判断することができ、この場合、この区画線に係るガイド線の視認性を低下させても、ガイド線の可動表示による機能を充分に確保することができる。
またこの場合、ガイド線の表示による煩わしさを軽減して、一段とドライバーの負担を軽減することができる。
【0056】
ここでこの視認性の低下にあっては、輝度レベルの低下に代えて、又は加えて、解像度を低下させたり、ガイド線の色彩を変化させたり、ガイド線の幅を低下させたり、これらを組み合わせたりして実行するようにしてもよい。
また例えば遠方側程、視認性が低下するように設定して、手前側は視認性を低下させないようにしてもよく、このようにすればガイド線を見失わないようにすることができる。
【0057】
なおこれに代えて、又はこれに加えて、図8A及び図8Bに示すように、車線中央から自車両の中央の変位量に応じて、可動表示に係るガイド線の視認性を低下させるようにしてもよい。
【0058】
すなわち図8Aは、車線中央LCから自車両の中央CCの変位量が大きい場合を示し、この場合、固定表示のガイド線15と同一の輝度レベルにより可動表示のガイド線16を表示する。
ここでこの場合、車線中央LCから自車両の中央CCの変位量が大きいことにより、可動表示側のガイド線16は、対応する区画線12より大きく離間した位置に表示される。この場合、ガイド線16を充分な視認性により表示して、充分にドライバーに注意を喚起することができる。
【0059】
これに対して図8Bは、車線中央LCから自車両の中央CCの変位量が小さい場合を示し、この場合、輝度レベルを低下させてガイド線16を表示し、これにより視認性を低下させる。
このように変位量が小さい場合、可動表示側のガイド線16は、対応する区画線12に近接した位置に表示される。ドライバーにおいては、変位量が大きい場合に比して、区画線12側に注意を払う必要が無いと言える。
これにより煩わしさを感じさせないようにして、車線中央からの逸脱量が大きくなるに従ってドライバーの注意を喚起することができ、安全運転に寄与することができる。
またこのようにして視認性を低下させる場合、不必要な場合には、可動表示に係るガイド線を認識できないようにすることができ、ガイド線の可動表示を参考にした運転操作に慣れたドライバーに対して、特に有効にドライバーの負担を軽減することができる。
なおこの視認性を低下させる判定基準にあっては、ドライバーの過去の運転における視線集中の履歴、ドライバーのハンドル操作の履歴等によりディフォルト値を補正して設定することができる。
【0060】
以上の構成によれば、ガイド線の固定表示、ガイド線の可動表示を設定し、ガイド線の固定表示では、ドライバーより見て区画線に対して一定の位置にガイド線を表示し、ガイド線の可動表示では、区画線までの間隔を自車両の走行位置に応じて可変してガイド線を表示することにより、従来に比してドライバーの負担を軽減することができる。
【0061】
またさらにドライバーの視線方向の区画線をガイド線の可動表示に設定することにより、又は区画線毎に視線集中の程度を算出して視線集中の高い側の区画線をガイド線の可動表示に設定することにより、ドライバーが操舵の基準としている区画線をガイド線の可動表示に設定することができ、これにより確実にドライバーの負担を軽減することができる。
【0062】
またさらに視線の集中の程度が判定基準値以上の場合、ガイド線の可動表示に係るガイド線の視認性を低下させることにより、ドライバーが操舵の基準としている区画線のガイド線について、煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0063】
またさらに車線中央から自車両の中央までの距離に応じて、ガイド線の可動表示に係るガイド線の視認性を低下させることにより、煩わしさを感じさせないようにして、車線中央からの逸脱量に応じてドライバーの注意を喚起することができ、安全運転に寄与することができる。
【0064】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両用表示装置
2 表示部
2A 表示可能領域
3 車両情報取得部
4 視線検出部
5 車線検出部
6 画像生成部
6A 表示制御部
6B 区画線検出部
6C 走行状態検出部
6D 視線情報検出部
11 走行車線
12、13 区画線
15、16 ガイド線
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B