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特許7184144ポリ塩化ビニル用粘着剤および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル用粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20221129BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221129BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/38
C09J133/02
C09J133/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021189078
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2018021860の分割
【原出願日】2017-02-06
(65)【公開番号】P2022020831
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松帆 志幸
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026449(JP,A)
【文献】特開2014-152295(JP,A)
【文献】特開平1-271472(JP,A)
【文献】特開2014-189656(JP,A)
【文献】特開2016-098335(JP,A)
【文献】特開2017-019955(JP,A)
【文献】特開2009-234011(JP,A)
【文献】特開平7-003221(JP,A)
【文献】特開2015-174969(JP,A)
【文献】特開平5-302070(JP,A)
【文献】特開2015-110723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー混合物の共重合物であるアクリル系ポリマー、ならびにイソシアネート化合物、エポキシ化合物および金属キレートから選ばれる少なくとも1種の硬化剤を含んでなるポリ塩化ビニル用粘着剤であって、
前記アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル酸メチル、およびアクリル酸エチルの少なくともいずれかを含み、
前記モノマー混合物中の、前記アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー含有量が18~55質量%および前記カルボキシル基含有モノマー含有量が3~10質量%であり、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量が、95万~170万であり、
前記アクリル系ポリマーの分子量分散度が、5~10であり、前記粘着剤から形成された粘着剤層の周波数1Hz、70℃での貯蔵弾性率が、0.05~1MPaであることを特徴とするポリ塩化ビニル用粘着剤。
【請求項2】
前記モノマー混合物中の、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー含有量が30~75質量%であり、前記モノマー混合物が、さらにアルキル基の炭素数8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを0~15質量%含む請求項1に記載のポリ塩化ビニル用粘着剤。
【請求項3】
前記モノマー混合物が、さらに水酸基含有モノマーを0.01~0.5質量%含む請求項1または2に記載のポリ塩化ビニル用粘着剤。
【請求項4】
前記モノマー混合物中のカルボキシル基含有モノマー含有が、5~10質量%である請求項1~3いずれか1項に記載のポリ塩化ビニル用粘着剤。
【請求項5】
硬化剤がイソシアネート化合物を含む場合は、アクリル系ポリマー100質量部に対してイソシアネート化合物を0.5~15質量部含み、
硬化剤がエポキシ化合物を含む場合は、アクリル系ポリマー100質量部に対してエポキシ化合物を0.01~1質量部含み、
硬化剤が金属キレートを含む場合は、アクリル系ポリマー100質量部に対して金属キレートを0.1~5質量部含む、
請求項1~4いずれか1項に記載のポリ塩化ビニル用粘着剤。
【請求項6】
基材および請求項1~いずれか1項に記載のポリ塩化ビニル用粘着剤から形成された粘着剤層を備えてなる粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニルの貼り合わせに好適に使用できるポリ塩化ビニル用粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベルや接着用途として幅広い分野で使用されている。その中でもアクリル系粘着剤は、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等に優れていることから広く使用されている。例えば、アクリル系粘着シートをプラスチック等のラベルとして使用することは一般的であるが、プラスチックの材質がポリ塩化ビニルである場合、ポリ塩化ビニル中に含まれる可塑剤が、粘着シートの粘着剤層表面へ移行することで粘着力が低下し、ラベルが剥がれ易いという問題があった。
また、装飾シートのようにポリ塩化ビニル基材にアクリル系粘着剤を塗布またはラミネートした粘着シートの場合にも、ポリ塩化ビニル基材からの可塑剤移行により粘着力が低下し、剥がれが発生するという問題があった。
さらには、農業用フィルムや浴室の床材などで使用されるポリ塩化ビニルの貼り合わせに用いられる粘着シートには、高温高湿環境下に曝された場合でも粘着シートの粘着力が維持できる耐湿熱性が求められていた。
【0003】
特許文献1には、酢酸ビニル5~20質量%、(メタ)アクリロニトリル5~10質量%、アルキル基の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステル10~30質量%、エチレン性不飽和カルボン酸3~6質量%及び残りアルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸エステルよりなるアクリル系共重合体に、可塑剤を配合した粘着剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アルキル基の炭素数が1~10のアクリル酸アルキルエステル50~99.95質量%と、極性基を有する不飽和単量体0.05~20質量%と、共重合可能なビニル系単量体0~30質量%とからなる共重合物100質量部に対して、5質量部未満の硝化綿を含む粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-43863号公報
【文献】特開昭63-230783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~2の粘着剤は、熱処理後の粘着力はある程度保持出来ているものの、可塑剤や硝化綿を添加していることにより凝集力が不足し、保持力が不十分であった。また、耐湿熱性が劣るという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ塩化ビニルの貼り合わせに好適な粘着力を有し、耐熱性だけでなく、耐湿熱性にも優れた粘着シートを形成できる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すポリ塩化ビ
ニル用粘着剤により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー混合物の共重合物であるアクリル系ポリマー、ならびにイソシアネート化合物、エポキシ化合物および金属キレートから選ばれる少なくとも1種の硬化剤を含んでなるポリ塩化ビニル用粘着剤であって、上記粘着剤から形成された粘着剤層の周波数1Hz 、70℃での貯蔵弾性率が、0.05~1MPa
であることを特徴とするポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0009】
また、本発明は、上記アクリル系ポリマーの分子量分散度が、5~10である上記ポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0010】
また、本発明は、上記モノマー混合物中の、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー含有量が30~75質量%、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー含有量が18~55質量%およびカルボキシル基含有モノマー含有量が3~10質量%であり、上記モノマー混合物が、さらにアルキル基の炭素数8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを0~15質量%を含む上記ポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0011】
また、本発明は、上記モノマー混合物が、さらに水酸基含有モノマーを0.01~0.5質量%を含む上記ポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0012】
また、本発明は、上記モノマー混合物中のカルボキシル基含有モノマー含有率が、5~10質量%である上記ポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0013】
また、本発明は、上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量が、95万~170万である上記ポリ塩化ビニル用粘着剤に関する。
【0014】
また、本発明は、基材および上記ポリ塩化ビニル用粘着剤から形成された粘着剤層を備えてなる粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、基材および/または被着体にポリ塩化ビニル用いた場合に、粘着力が良
好で、耐熱性だけでなく耐湿熱性が優れた粘着シートを形成できる粘着剤を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルムおよびテープは、同義である。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を意味する。モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体を意味する。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方を指す。
【0017】
<ポリ塩化ビニル用粘着剤>
本発明のポリ塩化ビニル用粘着剤(単に「粘着剤」と略記することがある)は、アクリル系ポリマー、ならびにイソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、金属キレート硬化剤から選ばれる少なくとも1種を含み、前記粘着剤から形成された粘着剤層の周波数1Hz
、70℃での貯蔵弾性率が、0.05~1MPaである。
【0018】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、0.07~0.4MPaであることがより好ましい。粘着剤層の周波数1Hz 、70℃での貯蔵弾性率が、0.05~1MPaであると、基材およ
び/または被着体にポリ塩化ビニルが用いられた場合の耐熱および耐湿熱試験中において、ポリ塩化ビニル中の可塑剤が粘着剤層に移行するのを抑制することが可能となる。また、0.05MPa未満であると可塑剤が粘着剤層に移行しやすいため粘着力が低下しやすく、1MPaより大きいと粘着剤層が硬すぎるため粘着力が不十分となる。
【0019】
<アクリル系ポリマー>
本発明で使用するアクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー混合物の共重合物である。
【0020】
アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル系ポリマーに粘着力および凝集力を付与するために用いられ、アルキル基が直鎖構造の場合は粘着力付与に良好であり、アルキル基が分岐構造の場合は凝集力付与に良好であり、直鎖構造と分岐構造を併用することで、粘着力と凝集力を高度に両立できる場合がある。含有量は、モノマー混合物100質量%中に30~75質量%を使用することが好ましく、35~70質量%がより好ましい。30~75質量%を使用することで粘着力と凝集力の両立が容易になる。
【0021】
アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、およびメタクリル酸t-ブチル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチルが、粘着力および凝集力の付与に良好である。
【0022】
アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル系ポリマーに凝集力を付与して粘着剤層の貯蔵弾性率を上昇させ、耐熱性および耐湿熱性を向上させる機能を有する。含有量は、モノマー混合物100質量%中に18~55質量%を使用することが好ましく、28~50質量%がより好ましい。18~55質量%を使用することで粘着剤層の貯蔵弾性率を向上させながら粘着力の維持が容易になる。
【0023】
アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性および耐湿熱性の両立が容易となる。
【0024】
カルボキシル基含有モノマーは、硬化剤との架橋反応の架橋点として機能し、モノマー混合物100質量%中に3~10質量%を使用することが好ましく、5~10質量%がより好ましい。3~10質量%を使用することで、所望の架橋密度が得やすく、ポリ塩化ビニルに対する密着性が向上する。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p-カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(エチレンオキサイド付加モル数:(2~18)フタル酸アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β-カルボキシエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0026】
本発明では、アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびカルボキシル基含有モノマー以外の、その他モノマーを使用することもできる。
その他モノマーは、粘着剤の粘着力や凝集力を損なわないモノマーであれば良い。具体
的には、例えば、水酸基含有モノマー、アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、およびアミノ基含有モノマー等の反応性官能基を有するモノマー、アルキル基の炭素数1、2および4以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、芳香環含有モノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーおよびその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0027】
水酸基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0028】
水酸基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中に0.01~0.5質量%を含むことが好ましく、0.05~0.3質量%がより好ましい。水酸基含有モノマーを適量使用することで粘着力と凝集力をより高度に両立できる。
【0029】
アミド結合含有モノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、およびアクリロイルモルホリン等の複素環含有化合物等が挙げられる。
【0030】
エポキシ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、および(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0031】
アミノ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0032】
アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマーおよびアミノ基含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、それぞれ0.1~1質量部を含むことが好ましい。
【0033】
アルキル基の炭素数1、2および4以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、および(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数8である(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(
メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。
【0034】
アルキル基の炭素数8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、モノマー混合物100質量%中に0~15質量%を使用することが好ましく、0~10質量%がより好ましい。
【0035】
芳香環含有モノマーは、例えばアクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、および(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール等が挙げられる。
【0036】
芳香環含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量部を含むことが好ましい。
【0037】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、例えばアクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0038】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量部を含むことが好ましい。
【0039】
その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
その他ビニルモノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量部を含むことが好ましい。
【0041】
アクリル系ポリマーは、モノマー混合物に重合開始剤を加え、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択して行うことができる。これらの中でも、溶液重合が、アクリル系ポリマーの重量平均分子量および分子量分散度の調整が容易である点から好ましい。
【0042】
前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
溶剤は単独また2種類以上を併用できる。
【0043】
前記溶液重合は、モノマー混合物100質量部に対して重合開始剤を0.001~1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃~90℃程度の温度で6時間~20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用してアクリル系ポリマーの重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0044】
本発明においてアクリル系ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwともいう)は、95万~170万が好ましく、105万~150万がさらに好ましい。Mwを95万~170万の範囲にすることで、粘着剤層の貯蔵弾性率を所望の範囲内に調整しやすくなり、粘着物性と塗工性の両立が容易になる。なお、本発明でMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー
(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0045】
本発明においてアクリル系ポリマーの分子量分散度は、Mwを数平均分子量(以下、Mnともいう)で除した値(Mw/Mn)のことであり、5~10が好ましい。分子量分散度を5~10にすることで、粘着物性と塗工性の両立が容易になる。なお、本発明でMnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0046】
前記連鎖移動剤は、例えばn-ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、グリシジルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。
連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~1質量部程度を使用できる。
【0047】
前記重合開始剤は、アゾ系化合物および有機過酸化物が一般的である。
【0048】
アゾ系化合物は、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル
)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチ
ルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2'-アゾビス(2-(2-
イミダゾリン-2-イル)プロパン)等が挙げられる。
【0049】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
重合開始剤は単独または2種以上を併用できる。
【0050】
<硬化剤>
本発明において硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレートを使用することが重要であり、イソシアネート化合物がより好ましい。硬化剤は単独または2種以上を併用できる。
【0051】
イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0052】
イソシアネート化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5~15質量部を含むことが好ましく、1~10質量部がより好ましい。0.5~15質量部を含むと粘着剤層の凝集力と粘着力のバランスを取ることが容易になる。イソシアネート化合物は単独または2種以上を併用できる。
【0053】
エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0054】
エポキシ化合物は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01~1質量部を含むことが好ましい。0.01~1質量部を含むと粘着剤層の凝集力と粘着力のバランスを取ることが容易になる。エポキシ化合物は単独または2種以上を併用できる。
【0055】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0056】
金属キレートは、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1~5質量部を含むことが好ましい。0.1~5質量部を含むと粘着剤層の凝集力と粘着力のバランスを取ることが容易になる。金属キレートは単独または2種以上を併用できる。
【0057】
なお、本発明の課題解決ができる範囲で粘着付与樹脂を含んでも良い。例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、脂環族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(油性フェノール樹脂)等が好ましい。粘着付与樹脂は、単独または2種以上を併用できる。粘着剤が粘着付与樹脂を含むとポリ塩化ビニルに対する粘着力がより向上する場合がある。
【0058】
粘着付与樹脂は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、10~30質量部配合することが好ましい。
【0059】
粘着付与樹脂の軟化点は、80~140℃が好ましい。軟化点を80~140℃にすると粘着力および凝集力を両立することが容易となる。
【0060】
本発明の粘着剤は、本発明の課題解決ができる範囲で、任意成分として各種樹脂、硬化触媒、シランカップリング剤、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、充填剤、老化防止剤および帯電防止剤等を配合しても良い。
【0061】
本発明の粘着剤は、ポリ塩化ビニルの貼り合わせ用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、粘着性光学フィルム、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても有用に使用できる。
【0062】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、基材、および本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。
【0063】
前記粘着剤を塗工する際に、溶液重合で説明した溶剤を添加して粘度を調整することができる。
【0064】
前記基材は、ポリ塩化ビニル以外にも、例えばセロハン、その他プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等が好ましく、特に可塑剤を含む基材に対して本発明の効果を発揮することが出来る。基材の形状は、板状およびフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0065】
前記その他プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド等が挙げられる。
【0066】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、およびスピンコーター等が挙げられる。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等がが挙げられる。乾燥温度は、通常60~160℃程度である。
【0067】
粘着剤層の厚さは、1~300μmが好ましく、5~100μmがより好ましい。1~300μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整できる。
【実施例
【0068】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味す
るものとする。
【0069】
[アクリル系ポリマーの合成]
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル75部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸5部、酢酸エチル85部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(
以下「AIBN」と記述する。)0.02部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.02部を反応溶
液に添加し2時間反応し、さらにAIBN 0.02部を反応溶液に添加し4時間反応を
継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル150部を加え、重量平均分子量113万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0070】
(合成例2~19、23~26)
モノマーの種類及び配合量を表1の記載に従った他は、合成例1と同様に行うことで合成例2~19、23~26のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0071】
(合成例20)
反応容器に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル75部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸5部、酢酸エチル160部、AIBN0.02部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.02部
を反応溶液に添加し2時間反応し、さらにAIBN 0.02部を反応溶液に添加し4時
間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル75部を加え、重量平均分子量70万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0072】
(合成例21)
反応容器に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル75部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸5部、酢酸エチル60部、アセトン60部、AIBN0.02部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.02部を反応溶液に添加し2時間反応し、さらにAIBN 0.02部を反応溶液に添加し4時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル115部を加え、重量平均分子量167万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0073】
(合成例22)
反応容器に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル75部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸5部、アセトン120部、AIBN0.02部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。更に、AIBN 0.02部を反
応溶液に添加し、4時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル115部を加え、重量平均分子量201万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0074】
得られた共重合体溶液について、Mw、Mw/Mn、溶液の外観を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0075】
<溶液外観>
得られたアクリル系ポリマー溶液の外観を目視で評価した。
【0076】
<MwおよびMw/Mnの測定>
Mw、Mw/Mnの測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、Mw、Mw/Mnの決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を直列に連
結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0077】
表1の略号を以下に記載する。
<アルキル基の炭素数4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー>
BA : アクリル酸ブチル
IBA : アクリル酸イソブチル
<アルキル基の炭素数8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー>
2EHA : アクリル酸2-エチルヘキシル
<アルキル基の炭素数1~2である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー>
MA : アクリル酸メチル
EA : アクリル酸エチル
MMA : メタクリル酸メチル
<カルボキシル基含有モノマー>
AA : アクリル酸
MAA : メタクリル酸
<水酸基含有モノマー>
HEA : アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HEMA : メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0078】
(実施例1)
合成例1で得られたポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100部(不揮発分)に対して、イソシアネート硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体2部(不揮発分換算)配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を20%に調整してポリ塩化ビニル用粘着剤を得た。前記粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ80μmの基材(可塑剤としてフタル酸ジオクチルを36%含有するポリ塩化ビニル製基材(以下、PVCシートという))を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PVCシート」という構成の粘着シート1を得た。また、上記の塗工、乾燥後の粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製基材(以下、PETシートという))を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シート2を得た。
【0079】
(実施例2~26、比較例1~4)
材料を表2、3の配合に従って変更した以外は、実施例1と同様に行うことで、実施例2~26および比較例1~4のポリ塩化ビニル用粘着剤、粘着シート1、粘着シート2をそれぞれ得た。
ただし、実施例6、7、10、16、20および22は参考例である。
【0080】
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表2および表3に示す。
表2、表3中の略号を以下に記載する。
<イソシアネート化合物>
TDI/TMP : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
IPDI/ヌレート : イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体
<エポキシ化合物>
TETRAD X : N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)
<金属キレート>
アルミキレートA : アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル社製)
【0081】
(1)貯蔵弾性率
実施例および比較例について、粘着シート1の手順にしたがって厚さ38μmの剥離性シート上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、基材の代わりに厚さ75μmの別の剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)を貼り合わせ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成し、「剥離性シート/粘着剤層/剥離性シート」という構成の2枚の剥離性シートで挟まれた粘着剤層を作成した。次いで、片方の剥離性シートを剥がし、粘着剤層が重なるように積層を繰り返し、厚みが1mmの粘着剤層を得た。オートクレーブで気泡を除去した後、直径8mmの円柱形に型抜きして貯蔵弾性率測定用の試料を作成した。両側の剥離性シートを剥がし、この試料のねじり剪断法により、下記の条件で測定した。
【0082】
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「D
YNAMIC ANALYZER RDA III」
周波数:1Hz
測定温度: -50℃から150℃まで測定し、70℃での貯蔵弾性率を読み取った

昇温速度: 10℃/分
【0083】
(2-1)粘着力1
得られた粘着シート1を幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、切り出した粘着シート1から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層をステンレス(SUS)板に貼り付け、2kgロールにより1往復させて圧着後24時間放置した試料を作製した。この試料を引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験によって粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。(JIS Z0237:2000に準拠)
◎:「粘着力が15N/25mm以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満であり、良好。」
△:「粘着力が5N/25mm以上10N/25mm未満であり、実用可能。」
×:「粘着力が5N/25mm未満または凝集破壊であり、実用不可。」
【0084】
(2-2)粘着力2
粘着シート1の替わりに粘着シート2を、SUS板の替わりに可塑剤としてフタル酸ジオクチルを48%含有する厚さ1.0mmのポリ塩化ビニル(PVC)板を使用した以外は、上記「粘着力1」と同様に粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「粘着力が20N/25mm以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満であり、良好。」
△:「粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満であり、実用可能。」
×:「粘着力が10N/25mm未満であり、実用不可。」
【0085】
(3)保持力
得られた粘着シート1を幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シート1から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、研磨した幅30mm、
長さ150mmのステンレス板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて圧着後、70℃雰囲気で粘着シートの下端部に1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した(JIS Z0237:2000に準拠)。
評価は、粘着シート1の貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定した。
評価基準
◎:「ずれた長さが0.1mm未満であり、非常に良好。」
○:「ずれた長さが0.1mm以上0.5mm未満であり、良好。」
△:「ずれた長さが0.5mm以上2.0mm未満であり、実用可能。」
×:「ずれた長さが2.0mm以上であり、実用不可。」
【0086】
(4-1)耐熱性1
得られた粘着シート1を70℃、相対湿度5%で5日間放置した後、23℃、相対湿度50%雰囲気下にて24時間放置した。その後、上記粘着力1と同様に粘着力(耐熱後粘着力1とする)測定を行い、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
保持率=(粘着力1/耐熱後粘着力1)×100
◎:「保持率90以上であり、非常に良好。」
○:「保持率75以上90未満であり、良好。」
△:「保持率50以上75未満であり、実用可能。」
×:「保持率50未満または凝集破壊のため保持率が算出できず、実用不可。」
【0087】
(4-2)耐熱性2
得られた粘着シート2を上記粘着力2と同様に貼り付け圧着し、70℃、相対湿度5%で5日間放置した後、23℃、相対湿度50%雰囲気下にて24時間放置した。その後、上記粘着力2と同様に粘着力(耐熱後粘着力2とする)測定を行い、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
保持率=(粘着力2/耐熱後粘着力2)×100
◎:「保持率90以上であり、非常に良好。」
○:「保持率75以上90未満であり、良好。」
△:「保持率50以上75未満であり、実用可能。」
×:「保持率50未満または凝集破壊のため保持率が算出できず、実用不可。」
【0088】
(5-1)耐湿熱性1
得られた粘着シート1を70℃、相対湿度60%で3日間放置した後、23℃、相対湿度50%雰囲気下にて24時間放置した。その後、上記粘着力1と同様に粘着力(耐湿熱後粘着力1とする)測定を行い、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
保持率=(粘着力1/耐湿熱後粘着力1)×100
◎:「保持率90以上であり、非常に良好。」
○:「保持率75以上90未満であり、良好。」
△:「保持率50以上75未満であり、実用可能。」
×:「保持率50未満または凝集破壊のため保持率が算出できず、実用不可。」
【0089】
(5-2)耐湿熱性2
得られた粘着シート2を上記粘着力2と同様に貼り付け圧着し、70℃、相対湿度60%で3日間放置した後、23℃、相対湿度50%雰囲気下にて24時間放置した。その後、上記粘着力2と同様に粘着力(耐湿熱後粘着力2とする)測定を行い、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
保持率=(粘着力2/耐湿熱後粘着力2)×100
◎:「保持率90以上であり、非常に良好。」
○:「保持率75以上90未満であり、良好。」
△:「保持率50以上75未満であり、実用可能。」
×:「保持率50未満または凝集破壊のため保持率が算出できず、実用不可。」
【0090】
表2、3の実施例1~26に示すように本発明の粘着剤は、ポリ塩化ビニルを基材または被着体に用いた場合にも粘着力、保持力、耐熱性、耐湿熱性に優れていることが分かる。これに対し、表3の比較例1~4では、いずれかの項目が不良となっており、実用不可であることがわかる。
【0091】
本発明の粘着剤は、ポリ塩化ビニルの貼り合わせに好適な可塑剤移行耐性を有し、耐熱性だけでなく、耐湿熱性に優れているために、ポリ塩化ビニル用粘着剤として特に有用である。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】