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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/458 20060101AFI20221129BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221129BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C23C16/458
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021195592
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2019560955の分割
【原出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2022033870
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2017246512
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】近石 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山根 茂樹
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-186904(JP,A)
【文献】特開平09-036044(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125733(WO,A1)
【文献】特開昭59-107071(JP,A)
【文献】特開平09-134913(JP,A)
【文献】特開昭56-028636(JP,A)
【文献】実開昭50-005562(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/31,21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子層堆積法による成膜装置であって、
内部を真空保持可能なチャンバーと、
処理対象であるワークを複数段に並べて前記チャンバー内に保持するワークホルダーと、
前記チャンバー内を加熱するためのヒーターと、
前記ワークホルダーを回転させるための回転機構と、を備え、
前記チャンバーは、横型の筒状体からなり、
さらに、前記チャンバーは、内部に前記ワークホルダーが設置される内チャンバーと、前記内チャンバーを収容する外チャンバーと、を備え、
前記内チャンバーは、第1の蓋と、水平方向において前記第1の蓋とは反対側の第2の蓋と、を有し、
前記ワークホルダーは、前記内チャンバーの前記第2の蓋に接続されることなく、前記内チャンバーの前記第1の蓋に片持ちで支持され、
前記回転機構は、水平方向に回転軸を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記回転機構は、前記内チャンバーの前記第1の蓋に設けられている請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記ワークホルダーは、前記ワークの主面が鉛直方向に沿うように前記ワークを複数段に並べて保持する請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記ワークホルダーは、前記内チャンバー内に着脱可能に設置される請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記チャンバーは、水平方向に移動可能である請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子層堆積法による成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の被処理基板上に酸化膜を形成する方法として、原子層堆積(ALD)法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ALD法により金属酸化膜を成膜する成膜装置が開示されている。特許文献1に記載の成膜装置は、真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、被処理体を複数段に保持した状態で上記処理容器内に保持する保持部材と、上記処理容器の外周に設けられた加熱装置と、成膜原料を上記処理容器内に供給する成膜原料供給機構と、上記処理容器内へ酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、上記処理容器内へパージガスを供給するパージガス供給機構と、上記処理容器内を排気する排気機構と、上記成膜原料供給機構、上記酸化剤供給機構、上記パージガス供給機構、および上記排気機構を制御する制御機構とを具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5221089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の成膜装置では、被処理体としてのウエハを多段に載置可能なウエハボードが処理容器内に下方から挿入可能となっている。成膜の際には、複数枚のウエハが搭載された状態のウエハボードを、処理容器内に下方から上昇させることによりロードし、処理容器内を密閉空間とする。
【0006】
そして、処理容器内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持するとともに、加熱装置への供給電力を制御して、ウエハ温度を上昇させてプロセス温度に維持し、ウエハボードを回転させた状態で成膜処理を開始する。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の成膜装置のように、処理容器(以下、チャンバーともいう)が縦型であると、被処理体(以下、ワークともいう)の数量が多くなるほど、成膜装置のサイズが高さ方向に大きくなるため、ワークの着脱が困難となる。さらに、成膜装置のサイズが高さ方向に大きくなると、天井の高い建屋を探す必要があるなど、成膜装置を設置する環境が制限される。また、メンテナンス作業等の際には、作業者がチャンバーの下部に入って作業する必要があるため、危険が伴う。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、ワークの着脱が容易であり、かつ、高さ方向のサイズが抑えられた成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の成膜装置は、原子層堆積法による成膜装置であって、内部を真空保持可能なチャンバーと、処理対象であるワークを複数段に並べて上記チャンバー内に保持するワークホルダーと、上記チャンバー内を加熱するためのヒーターと、上記ワークホルダーを回転させるための回転機構と、を備え、上記チャンバーは、横型の筒状体からなり、さらに、上記チャンバーは、内部に上記ワークホルダーが設置される内チャンバーと、上記内チャンバーを収容する外チャンバーと、を備え、上記内チャンバーは、第1の蓋と、水平方向において上記第1の蓋とは反対側の第2の蓋と、を有し、上記ワークホルダーは、上記内チャンバーの上記第2の蓋に接続されることなく、上記内チャンバーの上記第1の蓋に片持ちで支持され、上記回転機構は、水平方向に回転軸を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の成膜装置は、上記外チャンバー内の圧力が上記内チャンバー内の圧力よりも高くなるように制御する制御機構をさらに備えることが好ましい。
【0011】
本発明の成膜装置において、上記ワークホルダーは、上記ワークの主面が鉛直方向に沿うように上記ワークを複数段に並べて保持することが好ましい。
【0012】
本発明の成膜装置において、上記ワークホルダーは、上記内チャンバー内に着脱可能に設置されることが好ましい。
【0013】
本発明の成膜装置において、上記ヒーターは、上記内チャンバーの外壁に着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の成膜装置において、上記チャンバーは、さらに、水平方向に旋回可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワークの着脱が容易であり、かつ、高さ方向のサイズが抑えられた成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す成膜装置において、チャンバーを開放した状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、ワークが保持された状態のワークホルダーの一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、内チャンバーの外壁に取り付けられるヒーターの一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、図1に示す成膜装置において、内チャンバーを水平方向に移動させた状態の斜視図である。
図6図6は、図1に示す成膜装置において、内チャンバーを水平方向に旋回させた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の成膜装置について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0018】
本明細書において、「水平方向」とは、厳密な水平方向でなくてもよく、例えば、水平方向に対して±10°程度傾いていてもよい。同様に、「鉛直方向」とは、厳密な鉛直方向でなくてもよく、例えば、鉛直方向に対して±10°程度傾いていてもよい。
【0019】
本発明の成膜装置は、原子層堆積(ALD)法による成膜装置であって、内部を真空保持可能なチャンバーと、処理対象であるワークを複数段に並べて上記チャンバー内に保持するワークホルダーと、上記チャンバー内を加熱するためのヒーターと、を備える。本発明の成膜装置は、さらに、各種ガスを上記チャンバー内に供給するガス供給機構と、上記チャンバー内を排気する排気機構と、を備える。本発明の成膜装置は、さらに、上記ワークホルダーを回転させるための回転機構を備えることが好ましい。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す成膜装置において、チャンバーを開放した状態を模式的に示す斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示す成膜装置1は、内部を真空保持可能なチャンバー10と、ワークWを複数段に並べてチャンバー10内に保持するワークホルダー20と、チャンバー10内を加熱するためのヒーター30と、を備えている。成膜装置1は、さらに、各種ガスをチャンバー内に供給するガス供給管群40と、チャンバー内を排気する排気管50と、ワークホルダー20を回転させるための回転機構60と、を備えている。
【0022】
本発明の成膜装置において、チャンバーは、横型の筒状体からなる。図1では、チャンバー10は、内部にワークホルダー20(図2参照)が設置される内チャンバー11と、内チャンバー11を収容する外チャンバー12と、を備えている。
【0023】
図2では、内チャンバー11は、筒状体の一方側面を構成する第1の蓋11aと、筒状体の他方側面を構成する第2の蓋11bと、筒状体の周面を構成するチャンバー本体11cと、から構成される。第1の蓋11aは、成膜装置1に固定され、第2の蓋11bは、チャンバー本体11cのフランジ部に着脱可能に接続されている。チャンバー本体11cは、第1の蓋11aに着脱可能に接続されるものであり、第2の蓋11bとともに水平方向に移動することが可能である(図2参照)。
【0024】
同様に、外チャンバー12は、筒状体の一方側面を構成する第1の蓋12aと、筒状体の他方側面を構成する第2の蓋12bと、筒状体の周面を構成するチャンバー本体12cと、から構成される。第1の蓋12aは、成膜装置1に固定され、第2の蓋12bは、チャンバー本体12cのフランジ部に着脱可能に接続されている。チャンバー本体12cは、第1の蓋12aに着脱可能に接続されるものであり、第2の蓋12bとともに水平方向に移動することが可能である(図2参照)。
【0025】
成膜装置1にはガイド13が設けられており、内チャンバー11の第2の蓋11b及びチャンバー本体11cは、外チャンバー12の第2の蓋12b及びチャンバー本体12cとともに、ガイド13上をモーター(図示せず)による駆動にて水平方向に移動することが可能である。これらを所定の位置まで移動させた後、駆動を停止することで、チャンバー10が開放される。
【0026】
このように、チャンバーが横型であり、かつ、水平方向に移動可能であると、ワークを設置するスペースを確保することができるため、ワークの着脱が容易になる。また、ワークの数量が多い場合であっても、成膜装置のサイズを高さ方向に抑えることができるため、成膜装置を設置する環境の制限を受けにくくなる。
【0027】
なお、「チャンバーが水平方向に移動可能である」とは、チャンバーの全部が水平方向に移動可能である場合だけでなく、チャンバーの一部が成膜装置に固定されている場合も含まれる。そのため、図2では、内チャンバー及び外チャンバーは、いずれも水平方向に移動可能であると言える。
【0028】
また、チャンバーが内チャンバーと外チャンバーとを備えていると、成膜原料又は改質剤を含む成膜ガス等の有害ガスの漏洩を抑制することができる。その結果、チャンバー内の成膜ガス環境が安定する。
【0029】
図1及び図2には示されていないが、本発明の成膜装置は、外チャンバー内の圧力が内チャンバー内の圧力よりも高くなるように制御する制御機構をさらに備えることが好ましい。
【0030】
外チャンバー内の圧力が内チャンバー内の圧力よりも高いと、内チャンバーから外チャンバーへガスが流れにくくなるため、成膜作業時の安全が確保され、また、外チャンバーの内面に成膜原料等が付着しにくくなる。
【0031】
例えば、チャンバーが閉じた状態において、外チャンバーと内チャンバーとで独立して排気量やガス供給量を調整することにより、外チャンバー内の圧力を内チャンバー内の圧力よりも高くすることができる。
【0032】
本発明の成膜装置において、ワークホルダーは、内チャンバー内に着脱可能に設置されることが好ましい。図2では、ワークホルダー20は、内チャンバー11の第1の蓋11aに着脱可能に接続されている。ワークホルダー20は、内チャンバー11の第2の蓋11bには接続されないため、第1の蓋11aに片持ちで支持される。なお、ワークホルダーは、チャンバー内に直接設置されてもよいし、チャンバー内に固定された治具サポートを介して設置されてもよい。
【0033】
ワークホルダーがワークを保持する方向は特に限定されないが、図2に示すように、ワークホルダーは、ワークの主面が鉛直方向に沿うようにワークを複数段に並べて保持することが好ましい。この場合、複数のワークは、主面同士が対向し、かつ、互いに離間するように配置される。
ワークの主面が鉛直方向に沿うようにワークを置いて成膜を行うことにより、ワークの主面に不純物となるパーティクルが残りにくくなる。また、ワークを鉛直方向に積み重ねる場合と比べて、チャンバーの上部からワークが落下する危険性がないため、安全に作業することができる。
【0034】
図3は、ワークが保持された状態のワークホルダーの一例を模式的に示す斜視図である。
図3に示すワークホルダー20は、一対の支え板20a及び20bと、支え板20a及び20bに連結された複数の支柱20c、20c、20c及び20cと、を備える。支柱20c、20c、20c及び20cには複数の溝25がそれぞれ形成されており、溝25によりワークWが保持されるように構成されている。ワークWは、主面が鉛直方向に沿うように保持される。なお、支柱20cは着脱可能である。
【0035】
本発明の成膜装置においては、チャンバー内を加熱することができる限り、ヒーターが設けられる位置は特に限定されないが、ヒーターは、内チャンバーの外壁に取り付けられていることが好ましい。特に、ヒーターは、内チャンバーの外壁に着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
内チャンバーの外壁にヒーターを取り付けることにより、内チャンバー内が安定した温度となるため、成膜を均一化することができる。特に、ヒーターが着脱可能である場合には、メンテナンスが容易になる。
【0036】
図4は、内チャンバーの外壁に取り付けられるヒーターの一例を模式的に示す斜視図である。
図4では、内チャンバーの第1の蓋11aの外壁を覆うようにヒーター30aが、内チャンバーの第2の蓋11bの外壁を覆うようにヒーター30bが、内チャンバーのチャンバー本体11cの外壁を覆うようにヒーター30c及び30cがそれぞれ取り付けられる。ヒーター30c及び30cには、ヒーター線35が、チャンバー本体11cの長手方向の両端及び中央の3ブロックに分かれて設けられており、それぞれ独立して制御することが可能となっている。
【0037】
本発明の成膜装置は、各種ガスを内チャンバー内に供給するガス供給機構をさらに備えることが好ましい。特に、図2に示すガス供給管群40のように、各種ガスを内チャンバー内に供給するガス供給管をさらに備えることが好ましい。それぞれのガス供給管には、通常、複数のガス吹き出し口が設けられている。
【0038】
図2では、ガス供給管群40は、内チャンバー11の第1の蓋11aに接続されている。ガス供給管群40は、内チャンバー11の第2の蓋11bには接続されないため、第1の蓋11aに片持ちで支持される。
【0039】
ガス供給管としては、例えば、成膜原料供給管、改質剤供給管及びキャリアガス供給管の3種類が挙げられる。
【0040】
図2に示すガス供給管群40のうち、どの種類のガス供給管がそれぞれ何本あるかは限定されるものではないが、キャリアガス供給管が最も多くあることが好ましい。
【0041】
成膜原料供給管は、ALD法による成膜において、成膜目的の化合物の前駆体である成膜原料のガスを供給するためのガス供給管である。
ALD法により、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等の金属酸化物;窒化チタン(TiN)等の金属窒化物;白金(Pt)等の金属を成膜することができる。
成膜原料としては、例えば、アルミナを成膜するために用いられるTMA(トリメチルアルミニウム:Al(CH)、シリカを成膜するために用いられるトリスジメチルアミノシラン(SiH[N(CH)、窒化チタンを成膜するために用いられる四塩化チタン(TiCl)、白金を成膜するために用いられるMeCpPtMe((トリメチル)メチルシクロペンタジエニル白金)等が挙げられる。
【0042】
成膜原料供給管には、成膜原料とともにキャリアガスも供給されることが好ましい。
この場合、成膜装置の外で成膜原料とキャリアガスの混合ガスを調製して、混合ガスを成膜原料供給管からチャンバー内に供給することが好ましい。
【0043】
改質剤供給管は、ALD法による成膜において、成膜目的の化合物の前駆体を改質して成膜目的の化合物とするための改質剤となるガスを供給するためのガス供給管である。
改質剤としてのガスとしては、オゾン、酸素、水(水蒸気)、アンモニア等が挙げられる。
アルミナを成膜する場合、TMAを前駆体として、オゾンガスや水を改質剤として使用することによって、アルミナをワーク上に成膜することができる。
シリカを成膜する場合、トリスジメチルアミノシランを前駆体として、オゾンガスを改質剤として使用することによって、シリカをワーク上に成膜することができる。
窒化チタンを成膜する場合、四塩化チタンを前駆体として、アンモニアガスを改質剤として使用することによって、窒化チタンをワーク上に成膜することができる。
白金を成膜する場合、MeCpPtMeを前駆体として、酸素ガスを改質剤として使用することによって、白金をワーク上に成膜することができる。
【0044】
改質剤供給管には、改質剤とともにキャリアガスも供給されることが好ましい。
この場合、成膜装置の外で改質剤とキャリアガスの混合ガスを調製して、混合ガスを改質剤供給管からチャンバー内に供給することが好ましい。
【0045】
キャリアガス供給管は、ALD法による成膜において、成膜原料をワーク上に堆積させた後のパージガス、及び、改質剤と成膜原料を反応させて成膜目的の化合物をワーク上に堆積させた後のパージガスとして、キャリアガスを供給するためのガス供給管である。
キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。
【0046】
成膜原料供給管及び改質剤供給管にも、キャリアガス供給管から供給されるキャリアガスと同じ種類のキャリアガスを流すことが好ましく、3種類のガス供給管からキャリアガスを常時流すことが好ましい。
3種類のガス供給管からキャリアガスを常時流すことによってガス供給管の成膜原料又は改質剤による詰まりを防止することができる。
【0047】
本発明の成膜装置は、内チャンバー内及び外チャンバー内をそれぞれ独立して排気する排気機構をさらに備えることが好ましい。特に、図2に示す排気管50のように、内チャンバー内を排気する排気管をさらに備えることが好ましい。排気管には、通常、複数の吸気口が設けられており、管の接続先(チャンバーの外)で真空ポンプ等の排気装置に接続されて、内チャンバー内の気体を排気することができるようになっている。
【0048】
図2では、排気管50は、内チャンバー11の第1の蓋11aに接続されている。排気管50は、内チャンバー11の第2の蓋11bには接続されないため、第1の蓋11aに片持ちで支持される。
【0049】
ガス供給管からチャンバー内に供給されたガスは、ワーク上に滞留させ、その後に排気管に向かうようにするのが好ましい。そのため、図1及び図2には示されていないが、本発明の成膜装置は、ガス供給管から吹き出されるガス流の向きを、排気管に向かう向きに変更する整流部材をさらに備えることが好ましい。
【0050】
本発明の成膜装置は、図2に示す回転機構60のように、ワークホルダーを回転させるための回転機構をさらに備えることが好ましい。ワークホルダーが、ワークの主面が鉛直方向に沿うようにワークを複数段に並べて保持する場合、回転機構は、水平方向に回転軸を備える。例えば、モーター等を用いることにより、ワークホルダーを回転させることができる。
チャンバー内でワークホルダーを回転させることにより、チャンバー内のガスの流れが均一になるため、ワークWの主面内の膜厚を均一にすることができる。
【0051】
図2では、回転機構60は、内チャンバー11の第1の蓋11aに設けられており、第1の蓋11aに片持ちで支持されるワークホルダー20を回転させることが可能である。
【0052】
本発明の成膜装置において、チャンバーは、さらに、水平方向に旋回可能であることが好ましい。
チャンバーが水平方向に旋回可能であると、チャンバーの向きを作業しやすい位置に変えることができるため、メンテナンス作業が容易になる。
【0053】
図5は、図1に示す成膜装置において、内チャンバーを水平方向に移動させた状態の斜視図である。
図5では、内チャンバーの第2の蓋11b及びチャンバー本体11cが、外チャンバーの第2の蓋12bとともに水平方向に移動している。一方、内チャンバーの第1の蓋11a(図示せず)、外チャンバーの第1の蓋12a及びチャンバー本体12cは固定されている。この場合、内チャンバーのみが水平方向に移動していると言える。
【0054】
図6は、図1に示す成膜装置において、内チャンバーを水平方向に旋回させた状態の斜視図である。
図6では、内チャンバーの第2の蓋11b及びチャンバー本体11cが、外チャンバーの第2の蓋12bとともに水平方向に旋回している。この場合、内チャンバーのみが水平方向に旋回していると言える。
【0055】
本発明の成膜装置において、チャンバーが水平方向に旋回可能である場合、旋回する角度は特に限定されないが、メンテナンス作業を容易にする観点からは、70度以上、110度以下であることが好ましい。
【0056】
以下、本発明の成膜装置の使用方法について、成膜作業とメンテナンス作業に分けて説明する。
【0057】
本発明の成膜装置を用いた成膜作業を説明する前に、ALD法による成膜方法を説明する。
ALD法による成膜方法は、内部を真空保持可能なチャンバー内にワークをセットし、上記チャンバー内を真空に保持した状態として、上記チャンバー内に成膜原料を供給する工程と、上記チャンバー内に改質剤を供給する工程とを複数回繰り返すことにより、ワークに反応膜を形成する。
【0058】
次に、本発明の成膜装置を用いた成膜作業の動作フローの一例を以下に示す。
1.モーターとガイドによる水平移動にてチャンバーを開く。
2.予めワークがセットされたワークホルダーをチャンバー内に設置する。
3.水平移動にてチャンバーを元の位置に戻し、チャンバーを閉じる。
4.チャンバー内を真空引きする。
5.チャンバー内をヒーターにて加熱する。
6.チャンバー内が所定の圧力になってから、成膜原料を含むガスと改質剤を含むガスを交互にチャンバー内に流す。
7.所定の成膜ができるまで、ガスの供給を繰り返す。
8.チャンバー内の加熱を停止する。
9.大気ベントする。
10.モーターとガイドによる水平移動にてチャンバーを開く。
11.ワークホルダーをチャンバー内から取り外す。
【0059】
また、本発明の成膜装置を用いたメンテナンス作業の動作フローの一例を以下に示す。
1.外チャンバーを残して、モーターとガイドによって内チャンバーのみを水平移動させる。
2.外チャンバー及び内チャンバーのメンテナンスをそれぞれ行う。
3.内チャンバーが旋回可能である場合、メンテナンスが容易になる。また、ヒーターが内チャンバーの外壁に着脱可能に取り付けられている場合、メンテナンスがさらに容易になる。
【0060】
本発明の成膜装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、成膜装置の構成等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0061】
本発明の成膜装置において、内チャンバー及び外チャンバーは、それぞれ独立して水平方向に移動可能であることが好ましい。例えば、内チャンバー及び外チャンバーが一体となって水平方向に移動してもよいし、内チャンバーのみが水平方向に移動してもよい。
【0062】
また、本発明の成膜装置において、チャンバーが水平方向に旋回可能である場合、内チャンバー及び外チャンバーが、それぞれ独立して水平方向に旋回可能であることが好ましい。例えば、内チャンバー及び外チャンバーが一体となって水平方向に旋回してもよいし、内チャンバーのみが水平方向に旋回してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 成膜装置
10 チャンバー
11 内チャンバー
11a 内チャンバーの第1の蓋
11b 内チャンバーの第2の蓋
11c 内チャンバーのチャンバー本体
12 外チャンバー
12a 外チャンバーの第1の蓋
12b 外チャンバーの第2の蓋
12c 外チャンバーのチャンバー本体
13 ガイド
20 ワークホルダー
20a,20b 支え板
20c,20c,20c,20c 支柱
25 溝
30,30a,30b,30c,30c ヒーター
35 ヒーター線
40 ガス供給管群
50 排気管
60 回転機構
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6