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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20221129BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20221129BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20221129BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221129BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221129BHJP
   G08G 1/16 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W30/12
B60W30/16
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021209343
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2017178866の分割
【原出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2022050461
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189299(JP,A)
【文献】特開2012-096568(JP,A)
【文献】特開2011-168194(JP,A)
【文献】特開2005-343184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192710(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0166062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車走行レーンおよび該走行レーンを走行する他車を認識する周囲認識機能と自車運動状態を取得する機能を含む環境状態推定部と、
前記環境状態推定部に取得される情報に基づいて目標経路を生成する経路生成部と、
前記目標経路に自車を追従させるべく速度制御および操舵制御を行う車両制御部と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
自車走行レーンに先行他車がいない場合は目標車速に従って定速走行を行い、先行他車がいる場合は所定車間距離を維持して追従走行を行うACC機能と、
前記目標経路への追従制御により自車走行レーン内の走行を維持するLKA機能と、
運転者の操舵介入によって前記LKA機能を停止させる操舵オーバーライド機能と、
前記ACC機能の失陥時に、前記LKA機能の停止と操舵引継を運転者に通知し、前記LKA機能の縮退制御を行う機能と、
を有するものにおいて、
前記LKA機能を停止させる前記操舵介入の判定基準となる操舵トルクまたは操舵角のオーバーライド閾値は、前記ACC機能の正常動作時のオーバーライド閾値と、前記ACC機能の失陥時のオーバーライド閾値と、を含み、
前記ACC機能正常時の前記オーバーライド閾値は、前記操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なり、かつ、前記ACC機能失陥時の前記オーバーライド閾値も、前記操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記ACC機能正常時の順操舵オーバーライド閾値は、前記ACC機能正常時の逆操舵オーバーライド閾値より大きい値に設定され、前記ACC機能失陥時の順操舵用オーバーライド閾値は、前記ACC機能失陥時の逆操舵オーバーライド閾値よりも大きい値に設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記ACC機能失陥時の順操舵用オーバーライド閾値は、前記ACC機能正常時の順操舵オーバーライド閾値よりも大きい値に設定され、前記ACC機能失陥時の逆操舵用オーバーライド閾値は、前記ACC機能正常時の逆操舵オーバーライド閾値よりも大きい値に設定されることを特徴とする請求項2記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記ACC機能失陥時の前記オーバーライド閾値は、走行レーンを逸脱しない最大の横変位の50%~100%の範囲で設定され、前記ACC機能正常時の前記オーバーライド閾値は、走行レーンを逸脱しない最大の横変位の50%以下の範囲で設定されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記ACC機能失陥時の前記オーバーライド閾値は、走行レーンを逸脱しない最大の横変位に相当する値で設定されることを特徴とする請求項1~4の何れか一項記載の車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記ACC機能失陥時の前記オーバーライド閾値が設定される時に、車速に応じて設定される操舵トルクまたは操舵角の上限値を下げる機能をさらに有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関し、さらに詳しくは、車線内部分的自動走行システ
ムにおける操舵オーバーライド機能に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の負担軽減、安全運転支援を目的とした種々の技術、例えば、車間距離制御シス
テム(AdaptiveCruiseControlSystem:ACCS)、車線維持支援システム(LaneKeeping
AssistanceSystem:LKAS)などが実用化されている。さらに、これらをベースにした
「車線内部分的自動走行システム(PartiallyAutomatedIn-laneDrivingSystem:PADS
)」の実用化や国際規格化が進められている。
【0003】
このような走行制御システムは、作動中における運転者の強制介入によって手動運転に
切替わるオーバーライド機能を備えている。例えば、特許文献1には、操舵目標制御量に
基づいて操舵制御を行う際の制御ゲインを可変設定する制御ゲイン設定手段を備え、運転
者による運転操作介入時の制御ゲインの値を運転操作非介入時の値よりも小さく設定し、
且つ、運転操作介入時における自車旋回時の制御ゲインの値を自車非旋回時の値よりも大
きく設定するようにした走行制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-97827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図4に示すように、PADS作動中に、機器の故障や異常によりACCシス
テムに機能失陥が発生した場合は(61)、失陥発生と同時にACC機能が停止され、A
CC機能停止とLKA機能停止のための操舵引継要求が運転者に通知され(62)、LK
A縮退制御モードに移行するように設定されている。通知から数秒経過後にLKA縮退制
御が開始し(63)、LKA縮退制御の終了、運転者への操舵引継がなされる(64)。
【0006】
このようなシステムにおいて、例えば、LKA機能により車線中央付近51cに経路追
従するために、左右いずれかの自動操舵中に、ACCシステムに機能失陥が発生した場合
、LKA機能停止までの間にLKA縮退制御モードが入るため、LKA縮退制御中に運転
者がハンドルの切り増しなど修正操舵を加えると、過度の順操舵が行われる虞がある。
【0007】
さらに、機能停止・引継要求通知に慌てた運転者が、過度の操舵(操舵オーバーライド
)を行う虞もある。また、過度の操舵オーバーライドと、操舵に対する修正操舵を繰り返
す虞もある。
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ACC機能失
陥時のLKA縮退制御への移行過程における過度な操舵オーバーライドを防止できる車両
の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
自車走行レーンおよび該走行レーンを走行する他車を認識する周囲認識機能と自車運動状態を取得する機能を含む環境状態推定部と、
前記環境状態推定部に取得される情報に基づいて目標経路を生成する経路生成部と、
前記目標経路に自車を追従させるべく速度制御および操舵制御を行う車両制御部と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
自車走行レーンに先行他車がいない場合は目標車速に従って定速走行を行い、先行他車がいる場合は所定車間距離を維持して追従走行を行うACC機能と、
前記目標経路への追従制御により自車走行レーン内の走行を維持するLKA機能と、
運転者の操舵介入によって前記LKA機能を停止させる操舵オーバーライド機能と、
前記ACC機能の失陥時に、前記LKA機能の停止と操舵引継を運転者に通知し、前記LKA機能の縮退制御を行う機能と、
を有するものにおいて、
前記LKA機能を停止させる前記操舵介入の判定基準となる操舵トルクまたは操舵角のオーバーライド閾値は、前記ACC機能の正常動作時のオーバーライド閾値と、前記ACC機能の失陥時のオーバーライド閾値と、を含み、
前記ACC機能正常時の前記オーバーライド閾値は、前記操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なり、かつ、前記ACC機能失陥時の前記オーバーライド閾値も、前記操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両の走行制御装置によれば、LKA機能を停止させる前記操舵介入の判定基準となる操舵トルクまたは操舵角のオーバーライド閾値が、ACC機能正常時のオーバーライド閾値と、ACC機能失陥時のオーバーライド閾値とを含み、ACC機能失陥時に機能停止と操舵引継が通知されLKA機能の縮退制御が行われる間、ACC機能失陥時のオーバーライド閾値が適用されるので、運転者の過操舵によるオーバーライドと、それに起因する車線逸脱や修正操舵の反復を防止でき、円滑な操舵引継を行う上で有利である。また、オーバーライド閾値が、操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なるので、ACC機能失陥時の車両の走行状態に合わせて効果的な過操舵防止が行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両の走行制御システムを示す概略図である。
図2】車両の外界センサ群を示す概略的な平面図である。
図3】車両の走行制御システムを示すブロック図である。
図4】ACC機能失陥時のLKA縮退制御を示す概略平面図である。
図5】ACC機能失陥時の過操舵防止制御の例を示す概略平面図である。
図6】ACC機能失陥時の過操舵防止制御の他の例を示す概略平面図である。
図7】ACC機能失陥時の過操舵防止制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、本発明に係る走行制御システムを備えた車両1は、エンジンや車体など
一般的な自動車の構成要素に加え、従来運転者が行っていた認知・判断・操作を車両側で
行うために、車両周囲環境を検知する外界センサ21、車両情報を検知する内界センサ2
2、速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群、車間距離制御の
ためのACCコントローラ14、車線維持支援制御のためのLKAコントローラ15、お
よび、それらを統括し、経路追従制御を実施するための自動運転コントローラ10を備え
ている。
【0013】
速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群は、操舵制御のため
のEPS(電動パワーステアリング)コントローラ31、加減速度制御のためのエンジン
コントローラ32、ESP/ABSコントローラ33を含む。ESP(登録商標;エレク
トロニックスタビリティプログラム)はABS(アンチロックブレーキシステム)を包括
してスタビリティコントロールシステム(車両挙動安定化制御システム)を構成する。
【0014】
外界センサ21は、自車線51および隣接車線52を画定する道路上の区分線5s,5
c、自車周辺にある他車両や障害物、人物などの存在と相対距離を画像データや点群デー
タとして自動運転コントローラ10に入力するための複数の検知手段からなる。
【0015】
例えば、図2に示すように、車両1は、前方検知手段211,212としてミリ波レー
ダ(211)およびカメラ(212)、前側方検知手段213および後側方検知手段21
4としてLIDAR(レーザ画像検出/測距)、後方検知手段215としてカメラ(バッ
クカメラ)を備え、自車両周囲360度をカバーし、それぞれ自車前後左右方向所定距離
内の車両や障害物等の位置と距離、区分線位置を検知できるようにしている。
【0016】
内界センサ22は、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサなど、車両の運動状
態を表す物理量を計測する複数の検知手段からなり、図3に示すように、それぞれの測定
値は、自動運転コントローラ10、ACCコントローラ14、LKAコントローラ15、
および、EPSコントローラ31に入力される。
【0017】
自動運転コントローラ10は、環境状態推定部11、経路生成部12、および、車両制
御部13を含み、以下に記載されるような機能を実施するためのコンピュータ、すなわち
、プログラム及びデータを記憶したROM、演算処理を行うCPU、前記プログラム及び
データを読出し、動的データや演算処理結果を記憶するRAM、および、入出力インター
フェースなどで構成されている。
【0018】
環境状態推定部11は、GPS等の測位手段24を用いて自車の絶対位置を取得し、外
界センサ21に取得される画像データや点群データなどの外界データに基づいて自車線5
1および隣接車線52の区分線位置、他車位置および速度を推定する。また、内界センサ
22に計測される内界データより自車の運動状態を取得する。
【0019】
経路生成部12は、環境状態推定部11で推定された自車位置から到達目標までの目標
経路を生成する。また、地図情報23を参照し、環境状態推定部11で推定された隣接車
線の区分線位置、他車位置および速度、自車の運動状態に基づいて、車線変更における自
車位置から到達目標地点までの目標経路を生成する。
【0020】
車両制御部13は、経路生成部12で生成された目標経路に基づいて目標車速および目
標舵角を算出し、定速走行または車間距離維持・追従走行のための速度指令をACCコン
トローラ14に送信し、経路追従のための舵角指令をLKAコントローラ15経由でEP
Sコントローラ31に送信する。
【0021】
なお、車速は、EPSコントローラ31およびACCコントローラ14にも入力される
。車速により操舵トルクが変わるため、EPSコントローラ31は、車速毎の操舵角-操
舵トルクマップを参照して操舵機構41にトルク指令を送信する。エンジンコントローラ
32、ESP/ABSコントローラ33、EPSコントローラ31により、エンジン42
、ブレーキ43、操舵機構41を制御することで、車両1の縦方向および横方向の運動が
制御される。
【0022】
(車線内部分的自動走行システムの概要)
次に、高速道路で先行車に追従しながら単一車線内を走行することを想定して、車線内
部分的自動走行システム(PADS)の概要を説明する。
【0023】
車線内部分的自動走行(PADS走行)は、自動運転コントローラ10とともにACC
Sを構成するACCコントローラ14およびLKASを構成するLKAコントローラ15
が共に作動している状態で実行可能となる。
【0024】
車線内部分的自動走行システム作動と同時に、自動運転コントローラ10(経路生成部
12)は、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報(車線、自
車位置、自車走行車線および隣接車線を走行中の他車位置、速度)、および、内界センサ
22に取得される内界情報(車速、ヨーレート、加速度)に基づいて、単一車線内目標経
路および目標車速を生成する。
【0025】
自動運転コントローラ10(車両制御部13)は、自車位置と自車の運動特性、すなわ
ち、車速Vで走行中に操舵機構41に操舵トルクTが与えられた時に生じる前輪舵角δに
よって、車両運動により生じるヨーレートγと横加速度(dy/dt)の関係から、
Δt秒後の車両の速度・姿勢・横変位を推定し、Δt秒後に横変位がytとなるような舵
角指令をLKAコントローラ15経由でEPSコントローラ31に与え、Δt秒後に速度
Vtとなるような速度指令をACCコントローラ14に与える。
【0026】
車線内部分的自動走行中は、外界センサ21により自車線前方の先行車両および自車線
の車線区分線を認識し、生成した目標経路に自車が追従するように常時監視している。
【0027】
(ACC、EPS、ESP/ABS、LKA、エンジン制御との関係)
ACCコントローラ14、LKAコントローラ15、EPSコントローラ31、エンジ
ンコントローラ32、および、ESP/ABSコントローラ33は、自動操舵とは無関係
に独立して作動するが、車線内部分的自動走行機能(PADS)の作動中は、自動運転コ
ントローラ10からの指令入力でも作動可能になっている。
【0028】
ACCコントローラ14からの減速指令を受けたESP/ABSコントローラ33は、
アクチュエータに油圧指令を出し、ブレーキ43の制動力を制御することで車速を制御す
る。また、ACCコントローラ14からの加減速指令を受けたエンジンコントローラ32
は、アクチュエータ出力(スロットル開度)を制御することで、エンジン42にトルク指
令を与え、駆動力を制御することで車速を制御する。
【0029】
ACC機能(ACCS)は、外界センサ21としてのミリ波レーダ211、ACCコン
トローラ14、エンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33等のハード
ウエアとソフトウエアの組合せで機能する。
【0030】
すなわち、先行車がいない場合は、クルーズコントロールセット速度を目標車速として
定速走行し、先行車に追いついた場合(先行車速度がクルーズコントロールセット速度以
下の場合)には、先行車速度に合わせて、設定されたタイムギャップ(車間時間=車間距
離/自車速)に応じた車間距離を維持しながら先行車に追従走行する。
【0031】
LKA機能(LKAS)は、外界センサ21(カメラ212,215)に取得される画
像データに基づき、自動運転コントローラ10の環境状態推定部11で車線区分線と自車
位置を検知し、車線中央を走行できるように、LKAコントローラ15およびEPSコン
トローラ31により操舵制御を行う。
【0032】
すなわち、LKAコントローラ15からの舵角指令を受けたEPSコントローラ31は
、車速-操舵角-操舵トルクのマップを参照して、アクチュエータ(EPSモータ)にト
ルク指令を出し、操舵機構41が目標とする前輪舵角を与える。
【0033】
車線内部分的自動走行機能(PADS)は、以上述べたようなACCコントローラ14
による縦方向制御(速度制御、車間距離制御)とLKAコントローラ15による横方向制
御(操舵制御、車線維持走行制御)を組み合わせることにより実施される。
【0034】
(オーバーライド機能)
車線内部分的自動走行機能(PADS)作動中において、縦方向制御システム(ACC
S)、横方向制御システム(LKAS)の何れも運転者によるオーバーライドが可能にな
っている。
【0035】
縦方向制御システム(ACCS)は、運転者のアクセルペダル操作によるエンジントル
ク要求、または、ブレーキペダル操作による減速度要求が、それぞれのオーバーライド閾
値以上の場合にオーバーライドされる。これらのオーバーライド閾値は、車両の加減速特
性、走行状態に応じて設定される。
【0036】
横方向制御システム(LKAS)は、運転者の手動操舵34による操舵トルクがオーバ
ーライド閾値以上の場合にオーバーライドされる。この操舵介入によるオーバーライド閾
値は、車両の操舵特性、走行状態に応じて設定される。
【0037】
操舵オーバーライドは、運転者が進路変更や障害物回避の意図をもって操舵を行った、
あるいは、LKA制御に反する意図をもって操舵(逆操舵)を行ったと判断される操舵ト
ルクをハンドル操作によって与えた場合に、LKA制御を中止し、運転者の手動操舵によ
る走行に移行するものである。
【0038】
ところで、図4に示すように、車線内部分的自動走行機能(PADS)作動中に、前方
検知用ミリ波レーダの故障やESP/ABS異常などの理由によるACCSの機能失陥が
発生した場合(61)、失陥発生と同時にACC機能を停止し、LKASが縮退制御モー
ドに移行するとともに、運転者にLKA機能停止と操舵引継要求(テークオーバーリクエ
スト)を通知し(62)、数秒(例えば4秒)経過した後、LKA縮退制御を開始し(6
3)、操舵トルクが0(Nm)になった時点でLKA機能を停止して運転者に操舵を引継
する(64)。
【0039】
LKA縮退制御は、EPSコントローラ31に入力する操舵トルク指令値を所定の傾き
をもって0(Nm)まで徐々に低下させることで、手動操舵に円滑に移行できるようにす
る目的で設定されている。
【0040】
上記のように、車線内部分的自動走行機能作動中にACCSの機能失陥が発生した場合
、ACC機能およびLKA機能が停止され、それらによる縦方向制御および横方向制御が
運転者に引継されるが、その際に、機能停止・引継要求通知に慌てた運転者の過度の操舵
(操舵オーバーライド)の虞があることは既に述べた通りである。
【0041】
(ACCS機能失陥時の過操舵防止機能)
そこで、本発明に係る自動運転コントローラ10では、車線内部分的自動走行機能作動
中にACCSの機能失陥が発生し、ACC機能およびLKA機能の停止と縦方向制御およ
び横方向制御の運転者への引継を行う際、車線内部分的自動走行機能停止(ACC機能停
止・LKA機能停止通知)からLKA機能停止までの間(例えば、通知後4秒経過~LK
A縮退制御開始~LKA縮退制御終了)は、操舵オーバーライド閾値を正常動作時よりも
大きな値に変更する過操舵防止機能を備えている。
【0042】
ACCSの機能失陥時に操舵オーバーライド閾値を正常動作時よりも大きくすることに
より、運転者の手動操舵34によって、過大な操舵トルクがEPSコントローラ31に入
力された場合でもオーバーライド状態にならず、LKA制御が継続され、車線内を維持し
て走行することができる。
【0043】
(正常動作時の操舵オーバーライド閾値)
ACCS正常動作時の操舵オーバーライド閾値は、車速Vと横加速度制限値(例えば1
m/s)、t秒後に現在の位置から車線中央位置(1a)に到達するための横移動距離
ytに基づいて、仮想横変位y′t(=yt+α)と車両の運動特性から算出される操舵
角を操舵トルクに換算した値(車速-操舵角-操舵トルクマップから算出した操舵トルク
)がオーバーライド閾値T1dとして設定される。
【0044】
具体的には、t秒後に仮想横位置(1d)に到達するための仮想横変位y′tがyt+
α(但し、αは車速に基づいて決定される定数)となるような操舵角に相当する操舵トル
クを順操舵オーバーライド閾値T1dとする。
【0045】
逆操舵の場合は、t秒後に目標位置(1a)に到達するための目標横移動距離ytと車
両の運動特性から算出される操舵角を操舵トルクに換算した値(操舵トルク目標値)に対
して、操舵トルクを減少させる方向に印加される、微小でないと判断(操舵角、操舵角速
度などで判断)できる値T2dとする。逆操舵は、運転者のLKA制御を解除する意思表
示と見做せるので、逆操舵として検知されることをもってオーバーライドする。
【0046】
例えば、車線幅3.5mの高速道路を車幅1.7mの車両がLKAS走行している場合
を想定する。図5に示されるように、車両1が車線51の右端寄りを走行している(理解
を容易にするためやや極端な位置になっている)とすると、車両横方向の中心Gは右車線
区分線5cから0.9m付近にあり、LKASは左自動操舵により車線中央51c付近、
すなわち右車線区分線5cから1.75m付近に位置を設定するので、t秒後の横変位は
1.75-0.9=0.85m、α=0.43mとして、t秒後の横変位が1.28m(
0.85+0.43)となるような操舵角に相当する操舵トルクが正常動作時の順操舵オ
ーバーライド閾値T1dとして設定される。
【0047】
一方、逆操舵オーバーライド閾値T2dは、操舵トルクXNmを減少させる方向に印加
されるセンシング可能な操舵トルクX′Nm(X′<X)が車速に応じて設定される。し
たがって、図5には順操舵の場合のような仮想横変位は現れない。
【0048】
(機能失陥時の操舵オーバーライド閾値)
ACCS正常動作時の順操舵オーバーライド閾値T1dに対し、運転者の追操舵による
横移動距離が所定値以上になるような操舵トルクを上乗せした値(車速-操舵角-操舵ト
ルクマップと車両運動特性を考慮して設定)として設定される。運転者の追操舵による横
移動距離が所定値以下になるような操舵トルクであればオーバーライドしない。
【0049】
具体的には、車速Vと横加速度制限値(例えば1m/s)、現在の位置から車線中央
位置(1a)に到達するための横移動距離ytに基づいて、t秒後に仮想横位置(1e
)に到達するための仮想横変位y″t(=yt+β、但しβ>α、図示例ではβ=2α
)と車両の運動特性から算出される操舵角を操舵トルクに換算した値が順操舵オーバーラ
イド閾値T1eとして設定される。
【0050】
例えば、前記同様、車線幅3.5mの高速道路を車幅1.7mの車両がLKAS走行し
ている場合を想定する。図5に示されるように、車両1が車線の右端寄りを走行している
とすると、t秒後に現在位置から車線51の中央位置(1a)に到達するための横移動距
離ytは1.75-0.9=0.85mとなるが、機能失陥時には、β=0.85mとし
て、t秒後の仮想横変位が1.75m(=0.9+0.85)となるような操舵角に相当
する操舵トルクが順操舵オーバーライド閾値T1eとして設定される。実際の横変位が1
.75mに設定されても、車線内走行を維持することができる。
【0051】
一方、逆操舵オーバーライド閾値T2eは、正常動作時の逆操舵オーバーライド閾値T
2dに相当する仮想横変位を、現在の位置から車線中央位置(1a)に到達するための横
移動距離ytと近似して、それに基づいて、t秒後に仮想横位置(1e)に到達するた
めの仮想横変位がy″t(=yt-γ、但しγは操舵トルクX′Nmに相当する横変位
より大きい、図示例ではγ=α)と車両の運動特性から算出される操舵角を操舵トルクに
換算した値が逆操舵オーバーライド閾値T2eとして設定される。
【0052】
この場合、図5に示されるように、γ=0.43mとなり、t秒後の横変位が0.42
m(=0.85-0.43)となるような操舵角に相当する操舵トルクが逆操舵オーバー
ライド閾値T2eとして設定される。図5からも明らかなように、仮想横位置(1e
においても車線内走行を維持することができる。
【0053】
(機能失陥時の操舵オーバーライド閾値の他の設定例)
図6は、ACCS機能失陥時の操舵オーバーライド閾値の他の設定例を示しており、こ
の例では、車線幅3.5mの高速道路の中央付近を車幅1.7mの車両1がLKAS走行
している場合を想定している。
【0054】
先ず、車両1が車線中央51cから進行方向右寄り0.5mを走行している場合に、t
秒後に現在の位置から車線中央51cに到達するための横移動距離yt(=0.5m)、
t秒後に現在の位置から左側の車線区分線5sを逸脱しない許容横位置1eに到達する
と仮定した場合の仮想横変位y″t=yt+βとすると、β=3.5/2-1.7/2
=0.9mであるから、y″t=1.4mとなる。
【0055】
この場合、例えば、ACCS正常動作時における操舵オーバーライド閾値Td1が、t
秒後に許容横位置1eに到達する仮想横変位の1/2、すなわち、y′t=(yt+
β)/2=0.7mとなるような操舵トルクに設定され、ACCS機能失陥時における操
舵オーバーライド閾値Te1が、t秒後に前記許容横位置1eに対応する仮想横変位y
t=yt+β=1.4mとなるような操舵トルクに設定される。
【0056】
逆操舵の場合も同様であって、t秒後に現在の位置から右側の車線区分線5cを逸脱し
ない許容横位置1eに到達すると仮定した場合の仮想横変位y″t=yt-βとする
と、β=3.5/2-1.7/2=0.9mであるから、y″t=-0.4mとなり、
この場合、ACCS正常動作時における操舵オーバーライド閾値Td2が、t秒後に許容
横位置1eに到達する仮想横変位の1/2、すなわち、y′t=(yt-β)/2=
-0.2mとなるような操舵トルクに設定され、ACCS機能失陥時における操舵オーバ
ーライド閾値Te2が、t秒後に前記許容横位置1eに対応する仮想横変位y″t=
yt-β=-0.4mとなるような操舵トルクに設定される。
【0057】
この設定例では、車両1が左右の車線区分線5s,5cを逸脱しない許容横位置1e
,1eにt秒後に到達する仮想横変位y″t,y″tとなるような操舵トルクに基
づいて、ACCS機能失陥時における操舵オーバーライド閾値T1e,T2eが設定され
るので、車線内走行を維持しながら、過操舵を防止することができる。
【0058】
(ACCSの機能失陥時のフロー)
次に、ACCSの機能失陥時のフローについて図7を参照しながら説明する。
【0059】
(1)車線内部分的自動走行システムによる走行(PADS走行)
運転者の操作によりPADS走行が選択されると、ACCSおよびLKASがシステム
チェックを経て起動され、PADS走行中であることがメーターパネル内などに表示され
る(ステップ100)。PADS走行では、ACCSおよびLKASが連動して、目標速
度(クルーズセット速度)にて単一車線内を維持して定速走行、または、所定車間距離を
維持して追従走行する。この場合、車線内目標経路は、車線(走行レーン)中央または左
右何れかの車線区分線から所定のオフセット距離などによって設定される。
【0060】
(2)ACCS機能失陥判定
PADS(ACCS・LKAS)走行中は、外界センサ21、内界センサ22、アクチ
ュエータ群を含む構成部品の故障や異常の有無が常時監視され、ACC機能失陥の判定が
行われる(ステップ101)。
【0061】
(3)ACC機能停止
PADS(ACCS・LKAS)走行中に、外界センサ21を構成する前方検知用ミリ
波レーダ211の断線やESP/ABSコントローラ33の油圧系統の故障など、ACC
Sを構成する部品の機能失陥が検出された場合は、即時ACC機能が停止され(ステップ
102)、ACC機能失陥フラグが立てられる(ステップ103)。
【0062】
(4)操舵オーバーライド閾値の変更
同時に、操舵オーバーライド閾値が、正常動作時の操舵オーバーライド閾値(順方向T
1d、逆方向T2d)から機能失陥時の操舵オーバーライド閾値(順方向T1e、逆方向
T2e)に変更される(ステップ113)。すなわち、この時点における横移動距離yt
と車両の運動特性から算出される操舵角を操舵トルクに換算した値が計算され、機能失陥
時の操舵オーバーライド閾値(順方向T1e、逆方向T2e)がセットされる。
【0063】
(5)ACC機能失陥・操舵引継の通知
同時に、ヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の表示や音声によって、ACC
機能失陥の発生と操舵引継(LKASが縮退制御を経て停止される)が運転者に通知され
る(ステップ104)。これと同時に、LKA縮退制御に移行するまでの所定時間(例え
ば4秒)のカウントが開始される。
【0064】
(6)手動操舵有無判定
同時に、EPSコントローラ31付帯のトルクセンサにより、手動操舵34の有無が判
定される(ステップ105)。
【0065】
(7)操舵方向判定
EPSコントローラ31付帯のトルクセンサの検出値から、手動操舵ありと判断された
場合、手動操舵34の操舵方向が判定される(ステップ106)。
【0066】
操舵方向の判定は、上記ステップ113で計算された操舵トルク値に対して、操舵トル
クを増加させる方向に印加された場合は順操舵と判定され、操舵トルクを減少させる方向
に印加された場合は逆操舵と判定される。
【0067】
(8)オーバーライド判定
手動操舵34の操舵トルクがオーバーライド閾値を超えているか否か判定される。
(8-1)順操舵オーバーライド判定
操舵方向判定で順操舵と判定された場合は、操舵トルクが順操舵オーバーライド閾値T
1eと比較される(ステップ107)。
i)操舵トルク>順操舵オーバーライド閾値T1eであれば、オーバーライドと判定さ
れ、即時オーバーライドして手動走行となる。
ii)操舵トルク<順操舵オーバーライド閾値T1eであれば、オーバーライドせず、
LKA走行が継続される。
【0068】
(8-2)逆操舵オーバーライド判定
操舵方向判定で逆操舵と判定された場合は、操舵トルクが逆操舵オーバーライド閾値T
2eと比較される(ステップ108)。
i)操舵トルク>逆操舵オーバーライド閾値T2eであれば、オーバーライドと判定さ
れ、即時オーバーライドして手動走行となる。
ii)操舵トルク<逆操舵オーバーライド閾値T2eであれば、オーバーライドせず、
LKA走行が継続される。
【0069】
(9)引継経過時間の判定
LKA走行が継続されている場合、上記ステップ104で操舵引継通知を出してからの
所定時間(4秒)のカウントが継続され(ステップ109)、所定時間(4秒)が経過し
た時点でLKAS縮退制御が開始される(ステップ110)。
【0070】
(10)LKAS縮退制御終了・機能停止・操舵引継
EPSコントローラ31に入力する操舵トルク指令値を所定の傾きでて0(Nm)まで
徐々に低下させるLKAS縮退制御が終了すると、LKA機能が停止され、運転者への操
舵引継が行われ(ステップ111)、手動操舵に完全移行する(ステップ112)。
【0071】
以上のようなオーバーライド閾値の変更によって、ACC機能失陥時の過操舵によるオ
ーバーライドは基本的に防止できるが、上述したオーバーライド判定(ステップ107,
108)において、手動操舵がオーバーライド閾値以上であれば、LKA機能が手動操舵
でオーバーライドされることになる。
【0072】
そこで、ACC機能失陥時におけるオーバーライド閾値の変更(ステップ103)の際
に、EPSコントローラ31において車速に応じて設定される(車速に逆比例する/車速
上昇に伴い降下する)操舵トルクまたは操舵角の上限値を正常動作時よりも低い値にする
ことで、手動操舵によってオーバーライドされた場合にも車線内走行を維持できる。
【0073】
また、ACC機能失陥時におけるオーバーライド閾値の変更(ステップ103)の際に
、EPSコントローラ31において手動操舵の操舵ゲインを小さい値に変更することで、
手動操舵によってオーバーライドされた場合にも、その操舵量が操舵トルクに部分的に反
映されるようにすることもできる。
【0074】
(作用と効果)
以上詳述したように、本発明に係る車両の走行制御装置は、ACCSの機能失陥時に、
ACC機能およびLKA機能の停止と縦方向制御および横方向制御の引継が運転者に通知
されてLKA機能の縮退制御が行われる間、操舵オーバーライド閾値が正常動作時よりも
大きい値に変更されるように構成されているので、運転者のハンドル操作によって、車線
逸脱につながるような過大な操舵トルクが与えられた場合にはオーバーライド状態になら
ず、LKA制御が継続されるため、車線内走行が維持され、過操舵によるオーバーライド
と、それに起因する車線逸脱を防止できる。
【0075】
例えば、車線内部分的自動走行機能作動中、ACCSに機能失陥が発生し、LKA縮退
制御中に運転者がハンドルの切り増しなど修正操舵を加えた場合でも、操舵オーバーライ
ド閾値が大きく設定されているため、オーバーライドせず、車線逸脱を防止することがで
きる。さらに、操舵オーバーライドしないので、操舵に対する修正操舵の繰り返しを防止
することができる。
【0076】
また、ACCSの9機能失陥時に適用される操舵オーバーライド閾値は、機能停止およ
び操舵引継の通知からLKA縮退制御の終了まで維持されることにより、LKA機能によ
る操舵アシストが部分的に作用している状態で徐々に操舵引継できるので、円滑な操舵引
継を行う上で有利である。
【0077】
また、ACC機能正常時の操舵オーバーライド閾値は、操舵介入時の操舵方向に対して
順操舵である場合と逆操舵である場合とで異なるが、上述したACC機能失陥時における
操舵オーバーライド閾値の変更においても、操舵介入時の操舵方向に対して順操舵である
場合と逆操舵である場合とで異なるので、ACC機能失陥時の車両の走行状態に合わせて
効果的な過操舵防止が行える利点がある。
【0078】
LKASでは車両は走行レーンの中央を走行するように操舵制御されるので、操舵介入
時の操舵方向に対して順操舵の場合は、車両の横移動方向に余剰スペースが多いのに対し
て、逆操舵の場合は、相対的に余剰スペースが少ないため、車線内走行を優先したオーバ
ーライド閾値が適用されることで、効果的な過操舵防止が行える。
【0079】
ACC機能失陥時におけるオーバーライド閾値は、走行レーンを逸脱しない最大の横変
位の50%~100%、好ましくは90%~100%の範囲で設定され、ACC機能正常
時のオーバーライド閾値は、前記ACC機能失陥時における前記オーバーライド閾値より
も小さい範囲、例えば50%以下、好ましくは、40%~50%の範囲で設定される。特
に、上述した相対的に余剰スペースが少ない逆操舵の場合のオーバーライド閾値は、走行
レーンを逸脱しない最大の横変位を基準に設定されることが好ましい。
【0080】
なお、上記実施形態では、操舵オーバーライド閾値が操舵トルクに基づいて設定される
場合を示したが、操舵角(ステアリング角)に基づいて設定されるように構成することも
できる。
【0081】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定さ
れるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能で
あることを付言する。
【符号の説明】
【0082】
1 車両(自車)
5,5c,5d,5s 区分線
10 自動運転コントローラ
11 環境状態推定部
12 経路生成部
13 車両制御部
14 ACCコントローラ
15 LKAコントローラ
21 外界センサ
22 内界センサ
31 EPSコントローラ
32 エンジンコントローラ
33 ESP/ABSコントローラ
34 手動操舵(ハンドル)
41 操舵機構
42 エンジン
43 ブレーキ
51,52 車線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7