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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】LED駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20221129BHJP
【FI】
H01L33/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021522184
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020019016
(87)【国際公開番号】W WO2020241247
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019099280
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】西郷 有民
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205883643(CN,U)
【文献】特開平09-325719(JP,A)
【文献】特開2010-062349(JP,A)
【文献】特開2009-267065(JP,A)
【文献】特開平11-298044(JP,A)
【文献】特開2001-339286(JP,A)
【文献】特開2014-146423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H05B 45/00 - 45/60
H05B 47/00 - 47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子と、LEDと、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、グランドとを備えたLED駆動回路であって、
前記電源端子と前記グランドとの間に、前記LEDと、前記第1スイッチング素子と、前記第1抵抗とが、直列に接続され、
前記電源端子と前記グランドとの間に、前記第3抵抗と、第2スイッチング素子とが、直列に接続され、
前記第3抵抗と前記第2スイッチング素子との接続点と、前記第1スイッチング素子の制御端子とが、接続され、
前記第2抵抗は、前記第1スイッチング素子と前記第1抵抗との接続点と、前記第2スイッチング素子の制御端子との間に接続され、
前記第2スイッチング素子の前記制御端子と前記第2抵抗との接続点と、前記グランドとの間に、第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された第2PTCサーミスタおよびNTCサーミスタが接続され
前記第1PTCサーミスタ、および、前記相互に直列に接続された第2PTCサーミスタおよびNTCサーミスタは、それぞれ、周囲の温度が上昇したとき、一定温度までは負の抵抗温度特性を示し、前記一定温度よりも高い温度で正の抵抗温度特性を示す、
LED駆動回路。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子が、第1NPN型トランジスタであり、
前記第2スイッチング素子が、第2NPN型トランジスタであり、
前記電源端子が、前記LEDのアノードに接続され、
前記LEDのカソードが、前記第1NPN型トランジスタのコレクタに接続され、
前記第1NPN型トランジスタのエミッタが、前記第1抵抗の一端と、前記第2抵抗の一端とに、それぞれ接続され、
前記電源端子が、前記第2NPN型トランジスタのコレクタに、前記第3抵抗を経由して接続され、
前記第3抵抗と前記第2NPN型トランジスタのコレクタとの接続点と、前記第1NPN型トランジスタのベースとが、接続され、
前記第2抵抗の他端が、前記第2NPN型トランジスタのベースに接続され、
前記第2抵抗の他端と前記第2NPN型トランジスタのベースとの接続点に、前記第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された前記第2PTCサーミスタおよび前記NTCサーミスタが接続されている、
請求項1に記載されたLED駆動回路。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子が、第1PNP型トランジスタであり、
前記第2スイッチング素子が、第2PNP型トランジスタであり、
前記電源端子が、前記LEDのアノードに接続され、
前記LEDのカソードが、前記第1PNP型トランジスタのエミッタに接続され、
前記第1PNP型トランジスタのコレクタが、前記第1抵抗の一端と、前記第2抵抗の一端とに、それぞれ接続され、
前記電源端子が、前記第2PNP型トランジスタのエミッタに、前記第3抵抗を経由して接続され、
前記第3抵抗と前記第2PNP型トランジスタのエミッタとの接続点と、前記第1PNP型トランジスタのベースとが、接続され、
前記第2抵抗の他端が、前記第2PNP型トランジスタのベースに接続され、
前記第2抵抗の他端と前記第2PNP型トランジスタのベースとの接続点に、前記第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された前記第2PTCサーミスタおよび前記NTCサーミスタが接続されている、
請求項1に記載されたLED駆動回路。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子が、第1NチャンネルFETであり、
前記第2スイッチング素子が、第2NチャンネルFETであり、
前記電源端子が、前記LEDのアノードに接続され、
前記LEDのカソードが、前記第1NチャンネルFETのドレインに接続され、
前記第1NチャンネルFETのソースが、前記第1抵抗の一端と、前記第2抵抗の一端とに、それぞれ接続され、
前記電源端子が、前記第2NチャンネルFETのドレインに、前記第3抵抗を経由して接続され、
前記第3抵抗と前記第2NチャネルFETのドレインとの接続点と、前記第1NチャネルFETのゲートとが、接続され、
前記第2抵抗の他端が、前記第2NチャンネルFETのゲートに接続され、
前記第2抵抗の他端と前記第2NチャンネルFETのゲートとの接続点に、前記第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された前記第2PTCサーミスタおよび前記NTCサーミスタが接続されている、
請求項1に記載されたLED駆動回路。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子が、第1PチャンネルFETであり、
前記第2スイッチング素子が、第2PチャンネルFETであり、
前記電源端子が、前記LEDのアノードに接続され、
前記LEDのカソードが、前記第1PチャンネルFETのソースに接続され、
前記第1PチャンネルFETのドレインが、前記第1抵抗の一端と、前記第2抵抗の一端とに、それぞれ接続され、
前記電源端子が、前記第2PチャンネルFETのソースに、前記第3抵抗を経由して接続され、
前記第3抵抗と前記第2PチャネルFETのソースとの接続点と、前記第1PチャネルFETのゲートとが、接続され、
前記第2抵抗の他端が、前記第2PチャンネルFETのゲートに接続され、
前記第2抵抗の他端と前記第2PチャンネルFETのゲートとの接続点に、前記第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された前記第2PTCサーミスタおよび前記NTCサーミスタが接続されている、
請求項1に記載されたLED駆動回路。
【請求項6】
前記第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された前記第2PTCサーミスタおよび前記NTCサーミスタが、
25℃以上、90℃以下の温度において、負の抵抗温度特性を示し、
125℃以上の温度において、正の抵抗温度特性を示す、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載されたLED駆動回路。
【請求項7】
前記第1PTCサーミスタ、または、前記第2PTCサーミスタが、セラミックPTCサーミスタである、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載されたLED駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを駆動させる、LED駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途に、LED(Light Emitting Diode)が広く使用されている。たとえば、自動車のヘッドライト、テールランプ、室内灯などにLEDが使用されている。このような自動車に搭載されるLEDでは、電源として電池が使用されることが多い。
【0003】
LEDを駆動させるために、定電流回路を使用する場合がある。たとえば、特許文献1(特許第5079858号公報)に、LEDを駆動させるための定電流回路が開示されている。図9に、特許文献1に開示された定電流回路を示す。
【0004】
図9に示すように、定電流回路1000は、端子101、102と、NPN型トランジスタ103、104と、抵抗105、106とを備えている。端子101が、NPN型トランジスタ103のコレクタと、抵抗105の一端とに、それぞれ接続されている。抵抗105の他端が、NPN型トランジスタ103のベースと、NPN型トランジスタ104のコレクタとに、それぞれ接続されている。NPN型トランジスタ103のエミッタが、抵抗106の一端と、NPN型トランジスタ104のベースとに、それぞれ接続されている抵抗106の他端と、NPN型トランジスタ104のエミッタとが、それぞれ端子102に接続されている。
【0005】
ここで、NPN型トランジスタ103、104がオフ状態からオン状態になる閾値電圧である、NPN型トランジスタ103、104のベース・エミッタ間閾値電圧を0.6Vとする。すなわち、NPN型トランジスタ103、104のベースに印加される電圧が0.6V未満であると、NPN型トランジスタ103、104はオフ状態になり、NPN型トランジスタ103、104のベースに印加される電圧が0.6V以上であると、NPN型トランジスタ103、104はオン状態になるものとする。また、抵抗106の抵抗値を2Ωとする。
【0006】
定電流回路1000では、たとえば、端子101と、NPN型トランジスタ103のコレクタとの間の点Xに、駆動させるLEDが接続される。
【0007】
端子101が直流の正電源に接続され、端子102がグランドに接続されると、抵抗105を経由して、NPN型トランジスタ103のベースに0.6V以上の電圧が印加され、NPN型トランジスタ103がオン状態になる。この結果、点Xに接続されたLEDに電流が流れ、LEDが駆動される。この結果、LEDが発光する。また、抵抗106にも電流が流れる。
【0008】
上記のように、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧を0.6Vとし、抵抗106の抵抗値を2Ωとした場合、端子101に印加される電圧値が変動しても、抵抗106には常に約300mAの電流が流れる。そして、抵抗106に流れる電流の電流値に制限されて、点Xに接続されたLEDにも、常に約300mAの電流が流れる。
【0009】
すなわち、抵抗106の抵抗値が2Ωであるため、NPN型トランジスタ103のエミッタと抵抗106の一端とNPN型トランジスタ104のベースとの接続点である点Yに印加される電圧が、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧である0.6Vのとき、抵抗106に流れる電流の電流値は、下の数1に示す式から、300mAになる。
【数1】
【0010】
抵抗106に流れる電流の電流値が300mA未満の場合、点Yに印加される電圧は0.6V未満であり、NPN型トランジスタ104はオフ状態になる。一方、抵抗106に流れる電流が300mA以上の場合、点Yに印加される電圧は0.6V以上であり、NPN型トランジスタ104はオン状態になる。
【0011】
上述したように、端子101が直流の正電源に接続され、端子102がグランドに接続されると、NPN型トランジスタ103がオン状態になり、LEDおよび抵抗106に電流が流れる。そして、抵抗106に流れる電流が300mA以上になると、点Yに印加される電圧が0.6V以上になり、NPN型トランジスタ104がオン状態になる。そして、NPN型トランジスタ104がオン状態になると、NPN型トランジスタ103のベースに印加される電圧が0.6V未満になり、NPN型トランジスタ103がオフ状態になる。そして、NPN型トランジスタ103がオフ状態になると、LEDおよび抵抗106に電流が流れなくなり、点Yに印加される電圧が0.6V未満になり、NPN型トランジスタ104がオフ状態になる。そして、NPN型トランジスタ104がオフ状態になると、NPN型トランジスタ103のベースに0.6V以上の電圧が印加され、NPN型トランジスタ103が再びオン状態になる。そして、LEDおよび抵抗106に再び電流が流れる。
【0012】
定電流回路1000では、以上の動作が高速で繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5079858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
定電流回路1000では、NPN型トランジスタ104がオフ状態からオン状態になる閾値電圧である、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧に温度特性があり、閾値電圧がNPN型トランジスタ104の周囲の温度によって変動するという問題があった。より具体的には、NPN型トランジスタ104の周囲の温度が上昇すると、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧が降下し、NPN型トランジスタ104の周囲の温度が降下すると、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧が上昇するという問題があった。たとえば、あるNPN型トランジスタ104では、NPN型トランジスタ104の周囲の温度が1℃上昇する毎に、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧が0.002V降下する。
【0015】
NPN型トランジスタ104の周囲の温度の上昇により、NPN型トランジスタ104のベース・エミッタ間閾値電圧が降下することは、NPN型トランジスタ104の周囲の温度の上昇により、LEDに流れる電流の電流値が設計値よりも小さくなることを意味する。したがって、定電流回路1000には、NPN型トランジスタ104の周囲の温度が上昇することにより、LEDに流れる電流の電流値が小さくなり、LEDの輝度が低下してしまうという問題があった。
【0016】
また、別の問題として、定電流回路1000には、LEDの温度が異常に高くなっても、LEDに流れる電流の電流値を制限する仕組みがないという問題があった。すなわち、定電流回路1000は、LEDの温度がジャンクション温度を超えても、LEDに高い電流値の電流が流れ続けるため、LEDが故障したり、LEDの製品寿命が短くなったりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の一実施形態にかかるLED駆動回路は、電源端子と、LEDと、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、グランドとを備えたLED駆動回路であって、電源端子とグランドとの間に、LEDと、第1スイッチング素子と、第1抵抗とが、直列に接続され、電源端子とグランドとの間に、第3抵抗と、第2スイッチング素子とが、直列に接続され、第3抵抗と第2スイッチング素子との接続点と、第1スイッチング素子の制御端子とが、接続され、第2抵抗は、第1スイッチング素子と第1抵抗との接続点と、第2スイッチング素子の制御端子との間に接続され、第2スイッチング素子の制御端子と第2抵抗との接続点と、グランドとの間に、第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された第2PTCサーミスタおよびNTCサーミスタが接続され、第1PTCサーミスタ、および、相互に直列に接続された第2PTCサーミスタおよびNTCサーミスタは、それぞれ、周囲の温度が上昇したとき、一定温度までは負の抵抗温度特性を示し、一定温度よりも高い温度で正の抵抗温度特性を示すものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のLED駆動回路は、LED駆動回路の周囲の温度が変動しても、LEDに一定の電流値の電流が安定して流れるため、LEDは常に一定の輝度で発光する。
【0019】
また、本発明のLED駆動回路は、LEDの温度が異常に高くなったときに、LEDに流れる電流の電流値を制限することができるため、LEDに高い電流値の電流が流れ続けることによるLEDの故障を防ぐことができるとともに、LEDの製品寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路の第1PTCサーミスタの抵抗温度特性を示すグラフである。
図3】本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路における、周囲の温度と点Pの電圧Vとの関係を示すグラフである。
図4】本発明の第2実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかるLED駆動回路の直列に接続された第2PTCサーミスタとNTCサーミスタの抵抗温度特性を示すグラフである。
図6】本発明の第3実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
図7】本発明の第4実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
図8】本発明の第5実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
図9】特許文献1に開示された定電流回路の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
【0024】
図1に示すように、LED駆動回路100は、電源端子1と、スイッチ2と、LED3と、第1スイッチング素子である第1NPN型トランジスタ4と、第2スイッチング素子である第2NPN型トランジスタ5と、第1抵抗6と、第2抵抗7と、第3抵抗8と、抵抗9と、第1PTCサーミスタ10とを備える。
【0025】
電源端子1は、電源60と接続される。
【0026】
電源60は、直流の正電源である。電源60は、たとえば、自動車に搭載された電池である。電源60は、たとえば12Vを基準電圧とするが、諸条件により、電圧値が、たとえば9Vから16Vの範囲で変動する。
【0027】
本実施形態においては、第1NPN型トランジスタ4および第2NPN型トランジスタ5がオフ状態からオン状態になる閾値電圧である、第1NPN型トランジスタ4および第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧は、25℃において、0.68Vである。ただし、第1NPN型トランジスタ4および第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧は温度特性をもっており、LED駆動回路100の周囲の温度、すなわち第1NPN型トランジスタ4および第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度が1℃上昇する毎に、ベース・エミッタ間閾値電圧は0.002V降下する。
【0028】
本実施形態においては、第1抵抗6の抵抗値は4.7Ωである。また、第2抵抗7の抵抗値は1Ωである。なお、第3抵抗8、抵抗9の抵抗値は、スイッチ2がオン状態になったときに第1NPN型トランジスタ4がオン状態になることを条件に、適宜、設定することができる。なお、抵抗9は省くことも可能である。
【0029】
本実施形態においては、第1PTCサーミスタ10は、25℃における抵抗値が470Ωである。第1PTCサーミスタ10は、セラミックPTCサーミスタである。第1PTCサーミスタ10は、抵抗温度特性を備えている。図2は、本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路の第1PTCサーミスタの抵抗温度特性を示すグラフである。図2に示すように、第1PTCサーミスタ10は、キュリー温度よりも高い温度において、明確な正の抵抗温度特性を示す温度領域を有している。一方、第1PTCサーミスタ10は、キュリー温度よりも低い温度において、負の抵抗温度特性を示す温度領域を有している。より具体的には、本実施形態の第1PTCサーミスタ10は、おおよそ25℃以上、90℃以下において負の抵抗温度特性を示し、おおよそ125℃以上において正の抵抗温度特性を示す。本実施形態の第1PTCサーミスタ10の抵抗値は、約135℃において室温である25℃の2倍の大きさになり、約145℃において25℃の10倍の大きさになる。
【0030】
なお、PTCサーミスタのキュリー温度よりも低い温度領域に現れる負の抵抗温度特性は、一般的に、ポリマーPTCサーミスタよりも、セラミックPTCサーミスタにおいて顕著に現れる傾向がある。そこで、本実施形態においては、上述したように、第1PTCサーミスタ10に、セラミックPTCサーミスタを使用している。
【0031】
第1PTCサーミスタ10は、第2NPN型トランジスタ5の近傍に配置されている。このため、第1PTCサーミスタ10の周囲の温度は、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度とほぼ同じである。また、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度は、LED3の発光にともなう発熱の影響を受け、LED3の温度が異常に上昇した場合には、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度も急激に上昇する。
【0032】
LED駆動回路100の各構成要素の接続関係は、次のとおりである。
【0033】
電源端子1が、スイッチ2の一端に接続されている。
【0034】
スイッチ2の他端が、LED3のアノードと、第3抵抗8の一端とに、それぞれ接続されている。
【0035】
LED3のカソードが、第1NPN型トランジスタ4のコレクタに接続されている。
【0036】
第1NPN型トランジスタ4のエミッタが、第1抵抗6の一端と、第2抵抗7の一端とに、それぞれ接続されている。なお、第1NPN型トランジスタ4のエミッタと第1抵抗6の一端と第2抵抗7の一端との接続点を、点Pとする。
【0037】
第1抵抗6の他端が、グランドに接続されている。
【0038】
第3抵抗8の他端が、抵抗9の一端と、第2NPN型トランジスタ5のコレクタとに、それぞれ接続されている。
【0039】
第2NPN型トランジスタ5のエミッタが、グランドに接続されている。
【0040】
抵抗9の他端が、第1NPN型トランジスタ4のベースに接続されている。第1NPN型トランジスタ4のベースが制御端子である。
【0041】
第2抵抗7の他端が、第2NPN型トランジスタ5のベースと、第1PTCサーミスタ10の一端とに、それぞれ接続されている。なお、第2抵抗7の他端と第2NPN型トランジスタ5のベースと第1PTCサーミスタ10の一端との接続点を、点Qとする。第2NPN型トランジスタ5のベースが制御端子である。
【0042】
第1PTCサーミスタ10の他端が、グランドに接続されている。
【0043】
LED駆動回路100は、スイッチ2がオン状態になると、次の動作をおこなう。ただし、特に断らない限り、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度は、室温である25℃とする。
【0044】
スイッチ2がオン状態になると、第3抵抗8および抵抗9を経由して、第1NPN型トランジスタ4のベースに0.68V以上の電圧が印加され、第1NPN型トランジスタ4がオン状態になる。この結果、電源端子1から、LED3と第1抵抗6に電流が流れ、LED3が発光する。
【0045】
第2NPN型トランジスタ5がオフ状態からオン状態になる閾値電圧である、第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧は、25℃において0.68Vである。
【0046】
点Qの電圧Vが、第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧である0.68Vであるとき、点Pの電圧Vは、約1.39Vになる。このとき、点Pからグランドへ流れる電流の電流値は298mAになる。また、LED3に流れる電流の電流値も、同じ298mAになる。
【0047】
上述したとおり、スイッチ2がオン状態になると、LED3と第1抵抗6に電流が流れ、LED3が発光するが、LED3に流れる電流の電流値、点Pからグランドに流れる電流の電流値が、298mA以上になると、点Qの電圧Vが0.68V以上になり、第2NPN型トランジスタ5がオン状態になる。
【0048】
そして、第2NPN型トランジスタ5がオン状態になると、第1NPN型トランジスタ4のベースに印加される電圧が0.68V未満になり、第1NPN型トランジスタ4がオフ状態になる。
【0049】
そして、第1NPN型トランジスタ4がオフ状態になると、LED3と第1抵抗6に電流が流れなくなり、点Qの電圧Vが0.68V未満になり、第2NPN型トランジスタ5がオフ状態になる。
【0050】
そして、第2NPN型トランジスタ5がオフ状態になると、第1NPN型トランジスタ4のベースに0.68V以上の電圧が印加され、第1NPN型トランジスタ4が再びオン状態になる。そして、LED3と第1抵抗6に再び電流が流れる。
【0051】
LED駆動回路100では、以上の動作が高速で繰り返される。そのため、電源60の電圧値が変動しても、LED3には、常に約298mAの電流が安定して流れ、LEDは一定の輝度で安定して発光する。
【0052】
なお、LED3に298mAの電流が安定して流れるとき、点Qの電圧Vは、第1NPN型トランジスタ4のベース・エミッタ間閾値電圧である0.68Vを中心として、極めて狭い範囲内の電圧値に収まる。以下の説明において、この状態を、点Qの電圧Vが0.68Vに固定される状態という場合がある。
【0053】
また、LED3に298mAの電流が安定して流れるとき、点Pの電圧Vは、上述した約1.39Vを中心として、極めて狭い範囲の電圧値に収まる。以下の説明において、この状態を、点Pの電圧Vが1.39Vに固定される状態という場合がある。
【0054】
以上は、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度が、室温である25℃に保たれているときのLED駆動回路100の動作である。
【0055】
次に、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度が、25℃よりも高い温度に上昇したときの、LED駆動回路100の動作について説明する。
【0056】
上述したとおり、第2NPN型トランジスタ5がオフ状態からオン状態になる閾値電圧である、第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧は温度特性をもっており、周囲の温度が1℃上昇する毎に、ベース・エミッタ間閾値電圧は0.002V降下する。
【0057】
そして、第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に対して、何らかの補正をおこなわなければ、点Qの電圧Vが0.68Vよりも小さくなり、かつ、点Pの電圧Vが1.39Vよりも小さくなる。そして、その結果、LED3に流れる電流の電流値が298mAよりも小さくなり、LED3の輝度が設計値よりも低下してしまう。
【0058】
そこで、LED駆動回路100では、第1PTCサーミスタ10のもつ抵抗温度特性を利用して、周囲の温度の上昇による第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下を補正する。すなわち、LED駆動回路100は、温度補償機能を備えている。
【0059】
上述したように、第1PTCサーミスタ10は、おおよそ25℃以上、90℃以下において負の抵抗温度特性を示し、周囲の温度が上昇すると抵抗値が降下する。すなわち、第1PTCサーミスタ10は、25℃から温度が上昇すると、25℃において470Ωであった抵抗値が降下する(図2参照)。そして、周囲の温度が上昇したことによる第1PTCサーミスタ10の抵抗値の降下により、点Qからグランドに流れる電流の電流値が上昇し、点Pからグランドに流れる電流の電流値が上昇し、ひいてはLED3に流れる電流の電流値が上昇する。
【0060】
すなわち、LED駆動回路100では、周囲の温度の上昇による第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下が、周囲の温度の上昇による第1PTCサーミスタ10の抵抗値の降下によるLED3に流れる電流の電流値の上昇によって相殺される。これにより、周囲の温度が上昇してもLED3に流れる電流の電流値が298mAから低下しない。そして、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度が上昇しても、LED3の輝度が低下しない。よって、LED3は一定の輝度で安定して発光する。
【0061】
図3は、本発明の第1実施形態にかかるLED駆動回路における、周囲の温度と点Pの電圧Vとの関係を示すグラフである。図3において、LED駆動回路100における、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度と、点Pの電圧Vとの関係を、実線で示す。図3から分かるように、LED駆動回路100は、おおよそ25℃以上、90℃以下の温度範囲においては、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度が上昇しても、点Pの電圧Vがほとんど変動せず平坦である。
【0062】
一方、LED駆動回路100は、図3から分かるように、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度が、おおよそ120℃を超えると、点Pの電圧Vが急激に降下する。これは、第1PTCサーミスタ10が正の抵抗温度特性を示し始めるからである。そして、点Pの電圧Vが降下すると、LED3に流れる電流の電流値が降下する。
【0063】
LED駆動回路100は、この特性を利用して、LED3の温度が異常に高くなった場合に、LED3のさらなる温度の上昇を防ぎ、LED3の温度がジャンクション温度、たとえば125℃~150℃程度に至ることがないようにする。すなわち、LED駆動回路100は、LED3の温度が、たとえば120℃を超えて異常に高くなると、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度が大きく上昇するため、点Pの電圧Vが大きく降下し、LED3に流れる電流の電流値が大きく降下する。そのため、LED3のさらなる温度の上昇が防止され、LED3が保護される。
【0064】
(実験)
本発明の有効性を確認するために、次の実験をした。
【0065】
上述したLED駆動回路100(図1参照)を作製し、実施例とした。LED駆動回路100は、上述したとおり、第1抵抗6の抵抗値が4.7Ωである。また、第2抵抗7の抵抗値が1Ωである。また、第1PTCサーミスタ10は、25℃における抵抗値が470Ωである。これらの抵抗値を、下の表1に示す。
【0066】
また、比較のために、比較例にかかるLED駆動回路を作製した。比較例にかかるLED駆動回路は、LED駆動回路100から、第2抵抗7および第1PTCサーミスタ10を省き、第1NPN型トランジスタ4のエミッタを、第2NPN型トランジスタ5のベースに直接に接続した構成である。比較例にかかるLED駆動回路においては、第1抵抗6の抵抗値を2.2Ωとした。第1抵抗6の抵抗値を、表1に示す。また、比較例にかかるLED駆動回路においては、第2抵抗7を省いたため、第1NPN型トランジスタ4のエミッタと第1抵抗6の一端と第2NPN型トランジスタ5のベースとの接続点を、点Pとする。
【0067】
実施例において、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度を、22℃から140℃まで上昇させて、点Pにおける電圧Vを測定した。また、比較例において、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度を、22℃から140℃まで上昇させて、点Pにおける電圧Vを測定した。図3に、比較例に係るLED駆動回路における、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度と、点Pの電圧Vとの関係を、破線で示す。
【0068】
図3から分かるように、比較例に係るLED駆動回路は、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度の上昇にともなって、点Pの電圧Vが線形に低下する。
【0069】
また、実施例において、第2NPN型トランジスタ5および第1PTCサーミスタ10の周囲の温度が、25℃のとき、90℃のとき、135℃のときにおける、LED3に流れる電流の電流値を測定した。また、比較例においても、第2NPN型トランジスタ5の周囲の温度が、25℃のとき、90℃のとき、135℃のときにおける、LED3に流れる電流の電流値を測定した。各測定結果を、表1に示す。
【表1】
【0070】
実施例のLED3に流れる電流の電流値は、周囲温度が25℃のとき298mAであり、周囲温度が90℃のとき283mAであり、周囲温度が25℃から90℃に上昇してもLED3に流れる電流の電流値は、約5%しか降下しなかった。これは、周囲の温度の上昇による第2NPN型トランジスタ5のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下が、第1PTCサーミスタ10の負の抵抗温度特性によって相殺されたことによる効果であると考えられる。これに対し、比較例のLED3に流れる電流の電流値は、周囲温度が25℃のとき309mAであり、周囲温度が90℃のとき250mAであり、周囲温度が25℃から90℃に上昇することによりLED3に流れる電流の電流値が、約20%降下した。
【0071】
また、実施例では、周囲温度が135℃になると、LED3に流れる電流の電流値が150mAであり、LED3に流れる電流が抑制された。したがって、実施例では、LED3の温度が120℃を超えて異常に高くなった場合には、LED3に流れる電流の電流値が抑制され、LED3のさらなる温度上昇を防ぐことができる。これに対し、比較例では、周囲温度が135℃になっても、LED3に流れる電流の電流値が209mAであり、LED3に流れる電流が抑制されなかった。したがって、比較例では、LED3の温度が120℃を超えて異常に高くなっても、LED3に流れる電流の電流値が抑制されず、LED3の温度が上昇を続け、LED3の温度がジャンクション温度に到達してしまう虞がある。
【0072】
以上の実験により、本発明の有効性が確認できた。
【0073】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
【0074】
図4に示すように、第2実施形態にかかるLED駆動回路200は、上述した第1実施形態にかかるLED駆動回路100の構成の一部が変更されている。具体的には、LED駆動回路100では、第2抵抗7の他端と第2NPN型トランジスタ5のベースとの接続点である点Qと、グランドとの間に、第1PTCサーミスタ10が接続されているのに対して、LED駆動回路200では、第2抵抗7の他端と第2NPN型トランジスタ5のベースとの接続点である点Qと、グランドとの間に、相互に直列に接続された第2PTCサーミスタ20とNTCサーミスタ21とが接続されている。LED駆動回路200の他の構成は、LED駆動回路100と同じにした。
【0075】
図5は、本発明の第2実施形態にかかるLED駆動回路の直列に接続された第2PTCサーミスタとNTCサーミスタの抵抗温度特性を示すグラフである。図5において、直列に接続された第2PTCサーミスタ20とNTCサーミスタ21との合成された抵抗温度特性を実線で示す。また、参考として、第1実施形態にかかるLED駆動回路100の第1PTCサーミスタ10の抵抗温度特性を破線で示す。図5から分かるように、直列に接続された第2PTCサーミスタ20とNTCサーミスタ21との合成された抵抗温度特性は、LED駆動回路100の第1PTCサーミスタ10の抵抗温度特性に比べて、キュリー温度よりも低い温度領域に現れる負の抵抗温度特性の傾きが大きい。したがって、LED駆動回路200の第2PTCサーミスタ20およびNTCサーミスタ21は、LED駆動回路100の第1PTCサーミスタ10に比べて、周囲温度が上昇したときに、LED3に流れる電流の電流値をより上昇させることができる。
【0076】
LED駆動回路200は、周囲の温度の上昇による第2NPN型トランジスタ5の閾値電圧の降下に起因したLED3に流れる電流の電流値の低下を補正する範囲が大きい場合に、有用である。
【0077】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
【0078】
図6に示すように、第3実施形態にかかるLED駆動回路300も、上述した第1実施形態にかかるLED駆動回路100の構成の一部が変更されている。具体的には、LED駆動回路100では、第1NPN型トランジスタ4が第1スイッチング素子であり、第2NPN型トランジスタ5が第2スイッチング素子であるのに対して、LED駆動回路300では、第1PNP型トランジスタ34が第1スイッチング素子であり、第2PNP型トランジスタ35が第2スイッチング素子である。LED駆動回路300の他の構成は、LED駆動回路100と同じにした。
【0079】
LED駆動回路300では、LED3のカソードが、第1PNP型トランジスタ34のエミッタに接続されている。
【0080】
また、第1PNP型トランジスタ34のコレクタが、第1抵抗6の一端と、第2抵抗7の一端とに、それぞれ接続されている。第1PNP型トランジスタ34のベースが制御端子である。
【0081】
また、第3抵抗8の他端が、抵抗9の一端と、第2PNP型トランジスタ35のエミッタとに、それぞれ接続されている。
【0082】
また、第2PNP型トランジスタ35のコレクタが、グランドに接続されている。第2PNP型トランジスタ35のベースが制御端子である。
【0083】
LED駆動回路300においても、周囲の温度の上昇による第2PNP型トランジスタ35のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下が、周囲の温度の上昇による第1PTCサーミスタ10の抵抗値の降下によるLED3に流れる電流の電流値の上昇によって相殺される。したがって、周囲の温度が上昇してもLED3に流れる電流の電流値が低下せず、LED3の輝度が低下せず、LED3は一定の輝度で安定して発光する。このように、LED駆動回路300では、第1PTCサーミスタ10のもつ抵抗温度特性を利用して、周囲の温度の上昇による第2PNP型トランジスタ35のベース・エミッタ間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下を補正する。すなわち、LED駆動回路300は、温度補償機能を備えている。
【0084】
[第4実施形態]
図7は、本発明の第4実施形態にかかるLED駆動回路の等価回路図である。
【0085】
図7に示すように、第4実施形態にかかるLED駆動回路400も、上述した第1実施形態にかかるLED駆動回路100の構成の一部が変更されている。具体的には、LED駆動回路100では、第1NPN型トランジスタ4が第1スイッチング素子であり、第2NPN型トランジスタ5が第2スイッチング素子であるのに対して、LED駆動回路400では、第1NチャンネルFET44が第1スイッチング素子であり、第2NチャンネルFET45が第2スイッチング素子である。LED駆動回路400の他の構成は、LED駆動回路100と同じにした。
【0086】
LED駆動回路400では、LED3のカソードが、第1NチャンネルFET44のドレインに接続されている。
【0087】
また、第1NチャンネルFET44のソースが、第1抵抗6の一端と、第2抵抗7の一端とに、それぞれ接続されている。
【0088】
また、第3抵抗8の他端が、抵抗9の一端と、第2NチャンネルFET45のドレインとに、それぞれ接続されている。
【0089】
また、抵抗9の他端が、第1NチャンネルFET44のゲートに接続されている。第1NチャンネルFET44のゲートが制御端子である。
【0090】
また、第2抵抗7の他端が、第2NチャンネルFET45のゲートと、第1PTCサーミスタ10の一端とに、それぞれ接続されている。第2NチャンネルFET45のゲートが制御端子である。
【0091】
また、第2NチャンネルFET45のソースが、グランドに接続されている。
【0092】
LED駆動回路400においても、周囲の温度の上昇による第2NチャンネルFET45のゲート・ソース間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下が、周囲の温度の上昇による第1PTCサーミスタ10の抵抗値の降下によるLED3に流れる電流の電流値の上昇によって相殺される。したがって、周囲の温度が上昇してもLED3に流れる電流の電流値が低下せず、LED3の輝度が低下せず、LED3は一定の輝度で安定して発光する。このように、LED駆動回路400では、第1PTCサーミスタ10のもつ抵抗温度特性を利用して、周囲の温度の上昇による第2NチャンネルFET45のゲート・ソース間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下を補正する。すなわち、LED駆動回路400は、温度補償機能を備えている。
【0093】
[第5実施形態]
図8は、本発明の第5実施形態にかかるLED駆動回路500の等価回路図である。
【0094】
図8に示すように、第5実施形態にかかるLED駆動回路500も、上述した第1実施形態にかかるLED駆動回路100の構成の一部が変更されている。具体的には、LED駆動回路100では、第1NPN型トランジスタ4が第1スイッチング素子であり、第2NPN型トランジスタ5が第2スイッチング素子であるのに対して、LED駆動回路500では、第1PチャンネルFET54が第1スイッチング素子であり、第2PチャンネルFET55が第2スイッチング素子である。LED駆動回路500の他の構成は、LED駆動回路100と同じにした。
【0095】
LED駆動回路500では、LED3のカソードが、第1PチャンネルFET54のソースに接続されている。
【0096】
また、第1PチャンネルFET54のドレインが、第1抵抗6の一端と、第2抵抗7の一端とに、それぞれ接続されている。
【0097】
また、第3抵抗8の他端が、抵抗9の一端と、第2PチャンネルFET55のソースとに、それぞれ接続されている。
【0098】
また、抵抗9の他端が、第1PチャンネルFET54のゲートに接続されている。第1PチャンネルFET54のゲートが制御端子である。
【0099】
また、第2抵抗7の他端が、第2PチャンネルFET55のゲートと、第1PTCサーミスタ10の一端とに、それぞれ接続されている。第2PチャンネルFET55のゲートが制御端子である。
【0100】
また、第2PチャンネルFET55のドレインが、グランドに接続されている。
【0101】
LED駆動回路500においても、周囲の温度の上昇による第2PチャンネルFET55のゲート・ソース間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下が、周囲の温度の上昇による第1PTCサーミスタ10の抵抗値の降下によるLED3に流れる電流の電流値の上昇によって相殺される。したがって、周囲の温度が上昇してもLED3に流れる電流の電流値が低下せず、LED3の輝度が低下せず、LED3は一定の輝度で安定して発光する。このように、LED駆動回路500では、第1PTCサーミスタ10のもつ抵抗温度特性を利用して、周囲の温度の上昇による第2PチャンネルFET55のゲート・ソース間閾値電圧の降下に起因するLED3に流れる電流の電流値の低下を補正する。すなわち、LED駆動回路500は、温度補償機能を備えている。
【0102】
以上、第1実施形態~第5実施形態にかかるLED駆動回路100、200、300、400、500について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0103】
たとえば、上記各実施形態では、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とに同じ種類の半導体素子(たとえばNPN型トランジスタとNPN型トランジスタ)を使用したが、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とに異なる種類の半導体素子(たとえばNPN型トランジスタとPNP型トランジスタ)を使用してもよい。
【0104】
また、上記各実施形態の回路に、さらに、コンデンサ、コイル、抵抗などの他の電子部品要素を付加してもよい。
【0105】
本願発明の一実施態様にかかるLED駆動回路は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0106】
このLED駆動回路において、第1スイッチング素子を、NPN型のトランジスタからなる第1NPN型トランジスタ、PNP型のトランジスタからなる第1PNP型トランジスタ、NチャンネルのFETからなる第1NチャンネルFET、PチャンネルのFETからなる第1PチャンネルFETなどで構成することも好ましい。また、第2スイッチング素子を、NPN型のトランジスタからなる第2NPN型トランジスタ、PNP型のトランジスタからなる第2PNP型トランジスタ、NチャンネルのFETからなる第2NチャンネルFET、PチャンネルのFETからなる第2PチャンネルFETなどで構成することも好ましい。
【0107】
また、第1PTCサーミスタ、または、相互に直列に接続された第2PTCサーミスタおよびNTCサーミスタが、25℃以上、90℃以下の温度において、負の抵抗温度特性を示し、125℃以上の温度において、正の抵抗温度特性を示すことも好ましい。この場合には、第2スイッチング素子の周囲の温度の上昇による第2スイッチング素子の閾値電圧の降下に起因するLEDに流れる電流の電流値の低下を、良好に補正することができる。また、LEDの温度が異常に高温になった場合に、LEDに流れる電流の電流値を良好に制限することができる。
【0108】
また、第1PTCサーミスタ、または、第2PTCサーミスタが、セラミックPTCサーミスタであることも好ましい。この場合には、第2スイッチング素子の周囲の温度の上昇による第2スイッチング素子の閾値電圧の降下に起因するLEDに流れる電流の電流値の低下を、良好に補正することができる。
【0109】
電源端子に接続される電源が電池であることも好ましい。電池は電圧が変動しやすいが、この場合においても、LEDに一定の電流値の電流を流し、LEDの輝度を一定に維持することができる。
【符号の説明】
【0110】
1・・・電源端子
2・・・スイッチ
3・・・LED
4・・・第1NPN型トランジスタ
5・・・第2NPN型トランジスタ
6・・・第1抵抗
7・・・第2抵抗
8・・・第3抵抗
9・・・抵抗
10・・・第1PTCサーミスタ
20・・・第2PTCサーミスタ
21・・・NTCサーミスタ
34・・・第1PNP型トランジスタ
35・・・第2PNP型トランジスタ
44・・・第1NチャンネルFET
45・・・第2NチャンネルFET
54・・・第1PチャンネルFET
55・・・第2PチャンネルFET
60・・・電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9