IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-電気器具 図1
  • 特許-電気器具 図2
  • 特許-電気器具 図3
  • 特許-電気器具 図4
  • 特許-電気器具 図5
  • 特許-電気器具 図6
  • 特許-電気器具 図7
  • 特許-電気器具 図8
  • 特許-電気器具 図9
  • 特許-電気器具 図10
  • 特許-電気器具 図11
  • 特許-電気器具 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電気器具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021527486
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020040
(87)【国際公開番号】W WO2020261827
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019116897
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
(72)【発明者】
【氏名】山川 博雄
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051892(WO,A1)
【文献】特開2009-220213(JP,A)
【文献】特開2015-076980(JP,A)
【文献】実開平04-035887(JP,U)
【文献】実開昭61-134879(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って長軸を有する把持部と、
前記第1方向に交差する第2方向に沿って延在する方向に配置される主機能部と、
前記把持部の面のうち、前記主機能部が配置されている側の第1面とは反対側の第2面または前記第1面及び前記第2面を除く第3面に配置されている第1センサと、
前記主機能部に対する電源供給を許可する又は停止する電源供給制御部と、
前記把持部のうち、前記第1面に配置されている第2センサと、
を備え、
前記電源供給制御部は、前記第1センサの出力値が所定の閾値を超えている場合、且つ、前記第2センサの出力値が前記閾値を超えていない場合に、前記主機能部に対する電源供給を許可し、
前記電源供給制御部は、前記第1センサの出力値が前記閾値を超えている場合、且つ、前記第2センサの出力値が前記閾値を超えている場合に、前記主機能部に対する電源供給を停止する、
電気器具。
【請求項2】
前記主機能部に対する電源供給の指示を受け付ける受付部を備え、
前記第1センサは、前記受付部の対向位置に配置されている、
請求項1に記載の電気器具。
【請求項3】
前記把持部は、前記第1方向に沿って長軸を有する第1把持部と、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に沿って長軸を有し、前記主機能部から前記第3方向に沿って延在する第2把持部と、
を有し、
前記第1センサは、前記第1把持部の有する面のうち、前記第2把持部が延在する側の面に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の電気器具。
【請求項4】
前記電気器具は、第3センサを更に備えており、
前記第1センサは、前記第2面に配置されており、
前記第3センサは、前記第3面に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の電気器具。
【請求項5】
前記第1センサは、前記把持部から着脱可能に構成されている、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の電気器具。
【請求項6】
前記第1センサまたは前記第2センサは、圧電センサを含む、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の電気器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気により動作する電気器具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気器具の一例として、例えば、特許文献1には、把持部が把持されたことを検出する電動工具が開示されている。特許文献1の電動工具は、把持部に設けられた接触センサで、利用者の把持を検出する。特許文献1の電動工具は、接触センサで把持を検出しない場合にモータの電源供給を遮断する。これにより、特許文献1の接触センサは、優れた安全性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-220213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の電動工具は、利用者の把持の有無を確実に検出できるとは限らない。そこで、この発明は、利用者の把持の有無を確実に検出する電気器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気器具は、第1方向に沿って長軸を有する把持部と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延在する方向に配置される主機能部と、前記把持部の面のうち、前記主機能部が配置されている側の第1面とは反対側の第2または前記第1面および前記第2面を除く第3面に配置されている第1センサと、前記主機能部に対する電源供給を許可する又は停止する電源供給制御部と、前記把持部のうち、前記第1センサが配置されている面とは異なる面に配置されている第2センサと、を備え、前記電源供給制御部は、前記第1センサの出力値が所定の閾値を超えている場合、且つ、前記第2センサの出力値が前記閾値を超えていない場合に、前記主機能部に対する電源供給を許可し、前記電源供給制御部は、前記第1センサの出力値が前記閾値を超えている場合、且つ、前記第2センサの出力値が前記閾値を超えている場合に、前記主機能部に対する電源供給を停止する
【0006】
利用者は、長軸を有する把持部を把持する際に、親指を主機能部側に回して、親指と人差し指の間で把持部を挟み込む。本発明のセンサは、親指とその周囲の位置に対応する、主機能部側の反対側の面およびその側面にセンサを配置しているため、利用者の把持の有無を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、利用者の把持の有無を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電気器具1の背面図である。
図2】電気器具1の正面図である。
図3】電気器具1の左側面図である。
図4】電気器具1の左側面図である。
図5】電気器具1の構成を示すブロック図である。
図6図6(A)は、4つのセンサを配置した場合の電気器具1の左側面図であり、図6(B)は、センサの配置と出力との関係を示す図である。
図7】トリガレバー77をさらに備えた電気器具1の左側面図である。
図8】トリガレバー77を備えた電気器具1の構成を示すブロック図である。
図9】ロックオン機能を備えた電気器具1の構成を示すブロック図である。
図10】第2把持部19をさらに備えた電気器具1の背面図である。
図11】、図11(A)および図11(B)は、アタッチメント151を備えた電気器具1の背面図である。
図12図12(A)および図12(B)は、筐体10を左右に分割する電気器具1の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態の電気器具1の背面図であり、図2は正面図、図3は左側面図である。本実施形態において、筐体10の右方向はX方向、左方向は-X方向、上方向はZ方向、下方向は-Z方向、正面方向はY方向、背面方向は-Y方向とも称する。
【0010】
電気器具1は、外観上、筐体10、把持部15、主機能部17、センサ11A、およびセンサ11Bを備えている。本実施形態の電気器具1は、一例として電動ドリルである。主機能部17は、ドリルおよび当該ドリルを回転させるモータから構成される。利用者は、把持部15を把持し、主機能部17を対象物に向ける。主機能部17がモータにより回転すると、該対象物に孔を開けることができる。
【0011】
ただし、本発明の電気器具は、ドリルに限るものではない。本発明の電気器具は、例えば、ドライバ、グラインダ、丸ノコギリ、攪拌機、チェーンソー、草刈り機、バリカン、トリマー、サンダー、またはアイロンなどモータを使用しない電気器具にも用いることができる。
【0012】
筐体10は、上下方向に長い筒状の部分と、正面および背面方向に長い筒状の部分とを合わせた形状からなる。把持部15は、上下方向に長い筒状の部分により構成され、筐体10の下側に配置されている。すなわち、把持部15は、上下方向に沿って長軸を有する。本実施形態では、上方向(Z方向)が第1方向に対応する。なお、把持部15の下側には、着脱型のバッテリを接続するための接続部が配置される。
【0013】
筐体10の上側は、正面および背面方向に長い筒状の部分からなる。筐体10の上側の部分は、主機能部17を回転させるためのモータが内蔵されている。主機能部17は、筐体10の上側の部分のうち正面方向に向かって配置されている。本実施形態では、正面方向が第2方向に対応する。すなわち、主機能部17は、第1方向に交差する第2方向に沿って延在する。仮に、電気器具1が、ドライバ、グラインダ、丸ノコギリ、攪拌機、チェーンソー、草刈り機、バリカン、トリマー、サンダー、およびアイロンの場合であっても同様に、主機能部17は、第2方向に沿って延在する。なお、把持部15および主機能部17は、それぞれ上方向および正面方向に沿って配置されている必要はない。把持部15の長軸である第1方向と、主機能部17が延在する第2方向は、少なくとも交差していればよい。
【0014】
筐体10の内部には、各種の電気回路も内蔵されている。ただし、モータ、電気回路、およびバッテリ等の配置は、本実施形態で示す例に限るものではない。
【0015】
図5は、電気器具1の構成を示すブロック図である。電気器具1は、電気的構成として、電源供給制御部51、電源71、リレー73、およびモータ75を備えている。
【0016】
リレー73は、電源71およびモータ75に接続されている。リレー73は、電源供給制御部51の制御に応じて、電源71からモータ75への電源供給をオン、オフする。モータ75は、ドリルとともに主機能部17を構成する。
【0017】
電源供給制御部51は、例えばマイコン(マイクロコントローラ:Microcontroller)からなる。電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bの検出結果に応じて、リレー73を制御する。電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bで利用者の接触を検出した場合に、リレー73によるモータ75に対する電源供給を許可する。電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bで利用者の接触を検出しない場合に、リレー73によるモータ75に対する電源供給を禁止する。
【0018】
利用者は、図4の左側面図に示す様に、把持部15を握ることで、筐体10を支える。筐体10の上側の部分のうち、正面側には主機能部17が配置されている。したがって、利用者は、把持部15を背面側から握る。
【0019】
この例では、利用者は、右手で把持部15を把持している。したがって、親指は把持部15の左側面から正面側に回り込む。また、親指と人差し指の間は、把持部15の背面側に位置する。この様に、利用者は、上下方向に長軸を有する筒状の把持部15を把持する場合、親指を左側面から正面側に回して、親指と人差し指の間で当該把持部15を挟み込む。
【0020】
本実施形態のセンサ11Aは、把持部15の背面側に配置されている。また、センサ11Bは、把持部15の左側面側に配置されている。すなわち、センサ11Aおよびセンサ11Bは、親指とその周囲の位置に対応する、主機能部17(第2方向)とは反対側の面およびその側面に配置されている。
【0021】
図6(A)は、4つのセンサを仮に配置した場合の電気器具1の左側面図であり、図6(B)は、センサの配置と各センサの出力との関係を示す図である。図6(B)に示すグラフの縦軸はセンサの出力に対応する。図6(A)において、センサ90Aは、把持部15の正面側に配置されている。センサ90Bは、把持部15の右側面側に配置されている。
【0022】
図6(B)に示す様に、利用者が把持部15を把持した場合、親指とその周囲の位置に配置されたセンサ11Aおよびセンサ11Bは、高い出力を示す。一方で、これら以外の位置に配置されたセンサ90Aおよびセンサ90Bは、低い出力を示す。
【0023】
電源供給制御部51は、図6(B)に示したセンサ90Aおよびセンサ90Bの出力値よりも高く、センサ11Aおよびセンサ11Bの出力値よりも低い値に閾値を設定する。電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bから閾値を超える出力を検出した場合に、利用者が把持部15を把持したと判断する。
【0024】
また、電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bだけでなく、センサ90Aおよび/またはセンサ90Bから閾値を超える出力を検出した場合は、振動などによるノイズの混入や把持部を正しく把持していないなど異常状態と判断して、主機能部17の稼働を停止してもよい。この場合、電気器具1には、少なくともセンサ90Aかセンサ90Bのどちらか一方が配置されていればよい。
【0025】
これにより、電源供給制御部51は、利用者の把持の有無を確実に検出することができる。電源供給制御部51は、利用者が把持部15を把持したと判断した場合にのみ、モータ75に電源を供給する。したがって、電気器具1は、利用者が把持部15を把持した場合にのみ、主機能部17(本実施形態ではドリル)が稼動するため、非常に高い安全性を実現することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、主機能部側の反対側に配置されたセンサとして、2つのセンサ11Aおよびセンサ11Bを示したが、センサの数はこの例に限らない。例えば、1つのセンサ11Aを配置するだけでもよい。また、本実施形態では、利用者が右手で把持部15を把持するために、筐体10の左側面および背面側にセンサを配置する例を示した。しかし、利用者が左手で把持部15を把持するために、筐体10の右側面にセンサを配置してもよい。また、筐体10の左側面および右側面の両方にセンサを配置してもよい。この場合、電気器具1は、右手で把持した場合も左手で把持した場合も、利用者の把持を検出することができる。
【0027】
また、把持部15を把持する手が右手または左手のいずれかにあらかじめ決まっている場合、筐体10の左側面または右側面のセンサのうち、いずれか1つを有効にしてもよい。例えば、電気器具1は、有効にするセンサを切り替えるための切替スイッチを備えていてもよい。この場合、電気器具1は、より確実に把持を検知することができる。
【0028】
なお、センサは、照度センサ、静電容量センサ、加速度センサ、歪みゲージ、圧電フィルム、または圧電セラミックスなどを用いることができる。センサは、特に圧電フィルムを用いるのが好適である。
【0029】
例えば、圧電フィルムは、筐体に貼り付けることでセンサを構成することができるため、筐体に孔を開ける等の加工を行なう必要が無い。また、圧電フィルムは、静電容量センサのように水滴が付着した場合でも出力値が変動しないため、水分がセンサや筐体に付着するような状況でも使用することができる。さらに、圧電フィルムは、加速度センサと異なり、筐体の歪みを直接的に検出するため、外部の振動を検出することもない。また、圧電フィルムは、筐体に動的な歪みが生じている場合にのみ出力値を示す。圧電フィルムは、歪みの変化がない場合には出力が生じない。圧電フィルムは、例えば、温度変化により、筐体に緩やかな膨張または収縮が生じた場合には反応しない(出力値は小さい)。したがって、圧電フィルムは、温度変化により筐体に膨張または収縮が生じたとしても、誤検出することがない。
【0030】
圧電フィルムは、圧電セラミックスと比べて柔軟であるため、曲面に対してより大きな面積のセンサを貼り付けることができる。その結果、圧電フィルムは、曲面への把持をより精度よく検知することができる。さらに、落下等の強い衝撃が加わった場合でも、圧電フィルムは柔軟性であるため、破損することは少ない。その結果、圧電フィルムは、より耐久性の高いセンサを実現することができる。
【0031】
また、複数のセンサを配置する場合、例えばセンサ11Aが静電容量センサであり、センサ11Bが圧電フィルムセンサであってもよい。この様に、電気器具1は、異なる方式のセンサを備えていてもよい。
【0032】
また、圧電センサは、例えばPVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride)、またはポリ乳酸(PLA:Polylactic Acid)を用いることができる。ポリ乳酸は、焦電性を有していない圧電性ポリマーである。ポリ乳酸は、一軸延伸されることで圧電性が生じる。ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDFのように、ポーリング処理を行う必要がない。また、ポリ乳酸は、焦電性を有しない。したがって、ポリ乳酸は、利用者の熱または電気器具の発熱によってセンサの出力値に大きな変化を生じさせない。したがって、ポリ乳酸は、本実施形態の用に、利用者が把持する部分に配置する場合に好適である。また、一軸延伸されたポリ乳酸は、高分子の中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することが少なく、極めて安定している。
【0033】
圧電フィルムがポリ乳酸である場合、センサの短手方向を0°とすると、延伸方向が45°±10°または135°±10°となるように配置することが望ましい。これにより、利用者が筐体10を把持した時、主に圧電フィルムの長手方向の引張ひずみが発生して電荷が発生し、センサから出力が得られる。
【0034】
次に、図7は、トリガレバー77をさらに備えた電気器具1の左側面図である。図4と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
トリガレバー77は、把持部15の正面側に配置されている。すなわち、トリガレバー77は、筐体10のうち、主機能部17が配置されている第2方向側に配置されている。
【0036】
図8は、トリガレバー77を備えた電気器具1の構成を示すブロック図である。図5と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省略する。図8の例に係る電気器具1は、リレー73Bと、操作検出部79と、をさらに備えている。リレー73Bは、電源71とモータ75との間に挿入される。トリガレバー77および操作検出部79は、本発明の受付部を構成する。
【0037】
リレー73Bは、操作検出部79に接続されている。操作検出部79は、トリガレバー77に接続されている。操作検出部79は、例えばマイコンからなる。操作検出部79は、トリガレバー77のオン、オフを検出する。操作検出部79は、トリガレバー77のオンを検出した場合に、リレー73Bによるモータ75に対する電源供給を許可する。操作検出部79は、トリガレバー77がオフである場合に、リレー73Bによるモータ75に対する電源供給を禁止する。
【0038】
利用者は、トリガレバー77を人差し指で操作する。この場合でも、図7に示す様に、利用者は、把持部15を背面側から握る。センサ11Aは、トリガレバー77の対向位置に配置されている。利用者は、トリガレバー77を人差し指で握ると、親指と人差し指の間で把持部15を強く挟み込む。したがって、センサ11Aの出力値は高くなる。
【0039】
この様に、電気器具1は、トリガレバー77の対向位置にセンサ11Aを配置することで、利用者の把持の有無を確実に検出することができる。
【0040】
次に、図9は、ロックオン機能を備えた電気器具1の構成を示すブロック図である。図8と共通する構成は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
図9に示す電気器具1は、さらにロックオンスイッチ91を備えている。ロックオンスイッチ91は、操作検出部79に接続されている。操作検出部79は、ロックオンスイッチ91のオン、オフを検出する。操作検出部79は、ロックオンスイッチ91のオンを検出した場合に、トリガレバー77のオン、オフに関わらず、リレー73Bによるモータ75に対する電源供給を許可する。したがって、利用者は、トリガレバー77を操作しなくとも、主機能部17を稼動させることができる。
【0042】
この場合でも、電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bで利用者の把持を検出しない場合に、リレー73によるモータ75に対する電源供給を禁止する。したがって、ロックオンスイッチ91をオンすることにより、トリガレバー77を操作しない状態で主機能部17が稼動する状態であっても、利用者が把持部15から手を離した場合、主機能部17が停止する。
【0043】
したがって、本実施形態の電気器具1は、ロックオン機能を備えた場合でも、高い安全性を実現することができる。なお、トリガレバー77をラッチする場合も、ロックオン機能と同じ機能を実現することができる。この場合も、電源供給制御部51は、センサ11Aおよびセンサ11Bで利用者の把持を検出しない場合に、リレー73によるモータ75に対する電源供給を禁止する。したがって、トリガレバー77がオン状態でラッチされた場合でも、利用者が把持部15から手を離した場合、主機能部17が停止する。
【0044】
なお、電源供給制御部51は、一度リレー73をオフにして電源供給を禁止した場合には、次に電気器具1の主電源(不図示)をオンして再起動するまで、センサ11Aおよびセンサ11Bで利用者の把持を検出した場合でも、リレー73によるモータ75に対する電源供給を禁止することが好ましい。これにより、仮に利用者が再度把持部15を把持したとしても、意図せずに主機能部17が稼動することはない。
【0045】
次に、図10は、第2把持部19をさらに備えた電気器具1の背面図である。図1と共通する構成は同一の符号を付し、説明を省略する。図10に示す電気器具1は、筐体10の上部のうち左側面側に第2把持部19を備えている。この場合、把持部15は、第1把持部に対応する。また、第2把持部19には、センサ11Cが配置されている。センサ11Cは、第2把持部19のうち下面側に配置されている。
【0046】
第2把持部19は、左右方向(第1方向および第2方向に交差する第3方向)に沿って長軸を有する。利用者は、第2把持部19を左手で把持する。左手の親指は第2把持部19の下面から正面側に回り込む。また、左手の親指と人差し指の間は、第2把持部19の背面側に位置する。なお、第2把持部19は、左右方向に沿って長軸を有する必要はない。第2把持部19の長軸である第3方向は、把持部15の長軸である第1方向と、主機能部17の配置される第2方向に、少なくとも交差していればよい。
【0047】
電源供給制御部51は、センサ11Cから閾値を超える出力を検出した場合に、利用者が第2把持部19を把持したと判断する。これにより、電源供給制御部51は、利用者の第2把持部19に対する把持の有無を確実に検出することができる。電源供給制御部51は、利用者が把持部15および第2把持部19の両方を把持した場合にのみ、モータ75に電源を供給する。したがって、電気器具1は、利用者が把持部15および第2把持部19の両方を把持した場合にのみ、主機能部17(本実施形態ではドリル)が稼動するため、より高い安全性を実現することができる。
【0048】
なお、図10に示す構造では、センサ11Bは、第2把持部19が配置された側に配置されている。第2把持部が図10の様に、筐体の左側面側に配置されている場合、利用者は、右手で第1把持部を把持し、左手で第2把持部を把持する。一方、第2把持部が筐体の右側面側に配置されている場合、利用者は、左手で第1把持部を把持し、右手で第2把持部を把持する。いずれにしても、センサ第2把持部が設けられている場合、利用者は、第1把持部を把持する際に、第2把持部の側に親指を回す。したがって、把持部15にセンサを配置する場合、該センサは、第2把持部が設けられた第3方向側に配置されていればよい。なお、第2把持部は、着脱可能な構成としてもよい。この場合、第2把持部に配置されたセンサ11Cと電源供給制御部51は、第2把持部と筐体10の嵌合部によって電気的に接続することができる。
【0049】
次に、図11(A)および図11(B)は、アタッチメント151を備えた電気器具1の背面図である。図11(A)および図11(B)に示す様に、センサ11Aおよびセンサ11Bは、アタッチメント151を介して、把持部15から着脱可能に構成されている。
【0050】
ンサ11Aおよびセンサ11Bは、把持部15に設けられた端子101を介して、内部の電気回路(図5に示した電源供給制御部51)に電気的に接続される。
【0051】
これにより、センサ11Aおよびセンサ11Bは、筐体10より分離されるため、筐体10の振動が伝わりにくくなる。そのため、筐体10の振動に反応して誤検出するおそれが低下する。また、アタッチメント151と把持部15との間に、クッションなどを配置することで、筐体10の振動をセンサ11Aおよびセンサ11Bにより伝えにくくすることもできる。
【0052】
図11(A)および図11(B)の構造によれば、筐体10に直接、センサ11Aおよびセンサ11Bを組み込む必要がない。したがって、筐体10の組み立て工程を簡略化することができる。さらに、アタッチメント151に電源供給制御部51を組み込んでもよい。この場合、筐体10内に、電源供給制御部51を組み込む必要がない。したがって、より組み立て工程を簡略化することができる。
【0053】
なお、図12(A)に示す様に、多くの電気器具は、筐体10の上下方向の分割線に沿って左右に分割され、いずれかにモータ75および電気回路150を配置する。この様な構造により、筐体10の内部にモータ75や電気回路150などの部品を容易に配置し、組み立て工程を簡略化することができる。
【0054】
しかし、この様な構造では、センサは、分割線に跨がって、左右に長く配置することができない。一方、図12(B)に示す様に、アタッチメント151は、筐体10とは分離しているため、分割線を跨いで、左右に長くすることができる。したがって、アタッチメント151を用いることで、左右方向に長いセンサ11Nを筐体10に配置することも可能である。
【0055】
なお、アタッチメント151にセンサを搭載することは必須ではない。例えば、何も搭載していないブランクのアタッチメント151を接続すれば、本実施形態に示したセンサによる電源供給の禁止機能をキャンセルすることができる。
【0056】
あるいは、センサ以外のセンサをアタッチメント151に搭載することもできる。例えば、アタッチメント151にスピーカを搭載し、アラーム機能を実現することができる。アタッチメント151に搭載された制御部は、バッテリの容量を検出し、バッテリが基準値以下となった場合に、アラームを鳴らす。
【0057】
また、アタッチメント151にセンサに加えて、LED等の表示器を搭載することもできる。この場合、アタッチメント151に搭載された電源供給制御部51は、利用者の把持を検出した場合に、LEDを点灯させる。
【0058】
また、アタッチメント151に指紋センサ等の個人認証センサを搭載してもよい。この場合、電源供給制御部51は、個人認証センサを介して、予め登録された利用者の個人情報を検出した場合にのみ、電源供給を許可する。よって、予め登録された利用者以外は、電気器具1を利用することができない。これにより、有資格者等の特定の利用者に利用を限定することができる。あるいは、さらに、アタッチメント151にメモリを搭載してもよい。電源供給制御部51は、メモリに稼動時間を記録する。これにより、予め登録された利用者の作業時間を記録しておくこともできる。
【符号の説明】
【0059】
1…電気器具
10…筐体
11A,11B,11C,11N,90A,90B…センサ
15…把持部
17…主機能部
19…第2把持部
51…電源供給制御部
71…電源
73,73B…リレー
75…モータ
77…トリガレバー
79…操作検出部
91…ロックオンスイッチ
101…端子
150…電気回路
151…アタッチメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12