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特許7184196樹脂フィルムラミネート金属板、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】樹脂フィルムラミネート金属板、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/18 20060101AFI20221129BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221129BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221129BHJP
   B29C 65/44 20060101ALI20221129BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B32B15/18
B32B15/20
B32B15/08 N
B29C65/44
B29C63/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021530576
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024507
(87)【国際公開番号】W WO2021006024
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2019125682
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】門脇 伸生
(72)【発明者】
【氏名】岩切 和史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 知弘
(72)【発明者】
【氏名】安福 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原 朋也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏
(72)【発明者】
【氏名】田島 雄太
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠輝
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-078543(JP,A)
【文献】特開2010-023440(JP,A)
【文献】特開2000-351174(JP,A)
【文献】特開平05-245963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0239851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 63/02
B29C 65/02
B29C 65/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板の両面に融着される熱可塑性樹脂フィルムと、
を備え、
前記金属板が、厚み0.08mm以上の鋼板、または、厚み0.15mm以上のアルミニウム板であり、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記金属板と融着する面の反対の面を第1面としたとき、
少なくとも一方の前記熱可塑性樹脂フィルムにおいて前記第1面の表面張力が36mN/m以上、50mN/m以下であり、前記金属板と融着する面の表面張力が36mN/m以上であり、かつ、前記第1面のワックス付着量が0mg/m 超、5.00mg/m 以下である、樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法であって、
フィルムラミネート後、ワックスを0.1mg/m以上、2.0mg/m以下の範囲で塗布した後、通板ロール表面の表面張力が36mN/m以上である通板ロールを用い、樹脂フィルムラミネート金属板を通板する、樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法。
【請求項2】
樹脂フィルムラミネート金属板を通板する前に無塗油鋼板を50m/分以上の速度で1000m以上、フィルムラミネートせずに通板した後、樹脂フィルムラミネート金属板を製造通板する、請求項に記載の樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法。
【請求項3】
発泡ポリウレタン樹脂からなるコア層と、
樹脂フィルムラミネート金属板と、を
備える積層パネルであって、
前記樹脂フィルムラミネート金属板は、
金属板と、
前記金属板の両面に融着される熱可塑性樹脂フィルムと、
を備え、
前記金属板が、厚み0.08mm以上の鋼板、または、厚み0.15mm以上のアルミニウム板であり、
前記熱可塑性樹脂フィルムの前記コア層と接する面を第1面としたとき、
少なくとも一方の前記熱可塑性樹脂フィルムにおいて前記第1面の表面張力が36mN/m以上、50mN/m以下であり、前記金属板と融着する面の表面張力が36mN/m以上であり、かつ、前記第1面のワックス付着量が0mg/m超、5.00mg/m以下である、積層パネル。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムと前記金属板との接着強度が、前記コア層と前記熱可塑性樹脂フィルムとの接着強度よりも高い、請求項に記載の積層パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材、船舶、車両の床および壁材の軽量化対策として用いられる積層パネル用の材料に関し、特に2枚の金属板間に発泡樹脂のコア層を有する積層パネルに用いる樹脂フィルムラミネート金属板に関する。
本願は、2019年7月5日に、日本に出願された特願2019-125682号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
建材、船舶、車両の床および壁材の軽量化対策として2枚の金属板間にコア層として発泡樹脂層や、アルミハニカム・ペーパーハニカム層を接着積層した積層型の軽量パネルが提案、実用化されている。
【0003】
コア層に発泡樹脂を用いた積層パネルとしては、特許文献1に記載された金属板と発泡樹脂の間に金属板側から順に接着剤層と非発泡性樹脂層とが設けられた積層パネルの例が挙げられ、コア層にハニカムを用いた積層パネルとしては、特許文献2に、ハニカム構造を有するシート状のコア層の両面にシート状のプリプレグを硬化させたサンドイッチパネルの製造方法の例が示されている。
【0004】
また、特許文献3には、樹脂シート(a)の両面に、金属板を包埋した樹脂シート(b)と、当該樹脂シート(b)の前記樹脂シート(a)と接する面と反対側の面に位置する鋼板と、を少なくとも順次積層してなる樹脂シート積層鋼板の例が示されており、樹脂シート(b)に包埋される金属板は金属板の全体積に対して30体積%以上の体積率を有する細孔部が形成されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第4326001号公報
【文献】日本国特開2018-187939号公報
【文献】日本国特許第5553542号公報
【0006】
ところで、特許文献1に示されるような積層パネルでは、発泡樹脂層と金属板が剥離するのを抑制するために、金属板と発泡樹脂との間に非発泡性樹脂層を接着剤で貼り合せて積層しており、接着剤の貼り合せ工程が多く、かつ、発泡工程が別に必要なため、製造コストが高い。
【0007】
また、特許文献2には、ハニカム構造を有するシート状のコア層とシート状のプリプレグをコア層の上面と下面から押し当てながら加熱加圧するサンドイッチパネルの製造方法が示されているが、サンドイッチパネルのコア層のハニカム材および表皮材のプリプレグが高価であり、加熱時間も長いことから材料コスト、製造コストとも高い。
【0008】
また、特許文献3に示される積層パネルは、樹脂シート(a)の両面に、金属板を包埋した樹脂シート(b)と、当該樹脂シート(b)の前記樹脂シート(a)と接する面と反対側の面に位置する鋼板とを少なくとも順次積層してなる樹脂シート積層鋼板であるが、樹脂シート(b)に包埋される金属板に予め金属板の全体積に対して30体積%以上の体積率を有する細孔加工する工程が必要であることから、積層パネルに占める樹脂シート(b)のコストが高いので、積層パネルの廉価化を達成することは困難である。
また、当該特許の樹脂シート積層鋼板は、自動車用外板や家電の筐体、家具、OA機器部品への適用を目的としているため、曲げ加工や深絞り加工ができる必要がある。このため、コア層である樹脂シート(a)は可撓性があり、好ましい厚みが0.2~1.5mmと比較的薄く、パネルトータル厚みも3mm以下程度である。したがって、建材、船舶、車両用の積層パネルのように耐荷重が高く少なくともコア層厚みが5mm程度以上必要な用途には不向きである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされた発明であり、積層パネルのコア層との接着強度が高く、かつ、廉価で耐衝撃性に優れる積層パネルを製造することが可能な樹脂フィルムラミネート金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の問題点および課題を解決すべく、本発明では、発泡硬質ウレタン樹脂をコア層とする積層パネルの表皮材として、0.08mm以上の鋼板、または、0.15mm以上のアルミニウム板の両面に熱可塑性樹脂フィルムを熱融着した樹脂フィルムラミネート金属板を用いる。発泡硬質ウレタン樹脂と接する面のフィルムの表面張力が50mN/m以下であるものとする。更には、当該樹脂フィルムラミネート金属板の表面に存在するワックスを0mg/m超、5.00mg/m以下とする。すなわち、熱可塑性樹脂フィルムの金属板と融着する面の反対の面を第1面としたとき、少なくとも一方の熱可塑性樹脂フィルムにおいて第1面の表面(発泡硬質ウレタン樹脂と接する面)の表面張力が50mN/m以下であり、かつ、前記表面に存在するワックスが0mg/m超、5.00mg/m以下とする。このような構成により、積層パネルのコア層との接着強度が高く、耐衝撃性に優れる積層パネルを廉価に提供することを可能とした。本発明は、ハニカムコア層などにプリプレグシートを加熱圧着するような余分な製造工程がないので廉価に積層パネルを提供することが可能であり、かつ、コア層と表皮材との接着強度に優れ、かつ、コア層の気泡サイズバラつきが小さくできるので、耐衝撃性が高い積層パネルを安価に製造することができる。
【0011】
本発明は上記の知見に基づいてなされ、その要旨は以下の通りである。
すなわち、
(1)本発明の一態様に係る樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法は、金属板と、前記金属板の両面に融着される熱可塑性樹脂フィルムと、を備え、前記金属板が、厚み0.08mm以上の鋼板、または、厚み0.15mm以上のアルミニウム板であり、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記金属板と融着する面の反対の面を第1面としたとき、
少なくとも一方の前記熱可塑性樹脂フィルムにおいて前記第1面の表面張力が36mN/m以上、50mN/m以下であり、前記金属板と融着する面の表面張力が36mN/m以上であり、かつ、前記第1面のワックス付着量が0mg/m 超、5.00mg/m 以下である、樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法であって、フィルムラミネート後、ワックスを0.1mg/m以上2.0mg/m以下の範囲で塗布した後、通板ロール表面の表面張力が36mN/m以上である通板ロールを用い、樹脂フィルムラミネート金属板を通板する。
)上記()に記載の樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法は、樹脂フィルムラミネート金属板を通板する前に無塗油鋼板を50m/分以上の速度で1000m以上、フィルムラミネートせずに通板した後、樹脂フィルムラミネート金属板を製造通板してもよい。
(3)本発明の一態様に係る積層パネルは、発泡ポリウレタン樹脂からなるコア層と、樹脂フィルムラミネート金属板と、を備える積層パネルであって、前記樹脂フィルムラミネート金属板は、金属板と、前記金属板の両面に融着される熱可塑性樹脂フィルムと、を備え、前記金属板が、厚み0.08mm以上の鋼板、または、厚み0.15mm以上のアルミニウム板であり、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記コア層と接する面を第1面としたとき、少なくとも一方の前記熱可塑性樹脂フィルムにおいて前記第1面の表面張力が36mN/m以上、50mN/m以下であり、前記金属板と融着する面の表面張力が36mN/m以上であり、かつ、前記第1面のワックス付着量が0mg/m 超、5.00mg/m 以下である。
(4)(3)に記載の積層パネルは、前記熱可塑性樹脂フィルムと前記金属板との接着強度が、前記コア層と前記熱可塑性樹脂フィルムとの接着強度よりも高くてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、積層パネルのコア層との接着強度が高く、かつ、廉価で耐衝撃性に優れる積層パネルを製造することが可能な樹脂フィルムラミネート金属板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱可塑性樹脂フィルムの金属板と融着させる面の表面張力と樹脂フィルムラミネート金属板のフィルム接着性との関係を示した図である。
図2】熱可塑性樹脂フィルムの発泡硬質ウレタン樹脂と接する面の表面張力と積層パネルのコア層中の気泡の最大気泡径の判定結果との関係を示した図である。
図3】樹脂フィルムラミネート金属板表面のワックス付着量と積層パネルのコア層中の気泡の最大気泡径の判定結果との関係を示した図である。
図4】樹脂フィルムラミネート金属板表面のワックス付着量と樹脂フィルムラミネート金属板およびコア層の接着性との関係を示した図である。
図5】所定長さ通板した金属板の表面に転写したワックス付着量と通板ロール表面の表面張力との関係を示した図である。
図6】金属板通板長さと通板ロール表面のワックス除去程度判定結果との関係を示した図である。
図7】金属板通板速度と通板ロール表面のワックス除去程度判定結果との関係を示した図である。
図8】本発明の一態様に係る樹脂フィルムラミネート金属板を使用した積層パネルの断面模式図である。
図9】樹脂フィルムラミネート金属板の連続製造設備の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板は、発泡硬質ウレタン樹脂をコア層とする積層パネルの表皮材に用いられる樹脂フィルムラミネート金属板であり、当該樹脂フィルムラミネート金属板に用いられる金属板が、0.08mm以上の鋼板、または、0.15mm以上のアルミニウム板であり、かつ、金属板の両面に融着させるフィルムが熱可塑性樹脂フィルムであり、発泡硬質ウレタン樹脂と接する面のフィルムの表面張力が50mN/m以下である樹脂フィルムラミネート金属板であり、かつ、当該樹脂フィルムラミネート金属板の発泡硬質ウレタン樹脂と接する面に存在するワックスが0mg/m超、5.00mg/m以下であることを特徴とする積層パネル用の樹脂フィルムラミネート金属板である。すなわち、本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板は、金属板と、前記金属板の両面に融着される熱可塑性樹脂フィルムと、を備え、前記金属板が、厚み0.08mm以上の鋼板、または、厚み0.15mm以上のアルミニウム板であり、前記熱可塑性樹脂フィルムの前記金属板と前記融着される面の反対の面を第1面としたとき、少なくとも一方の前記熱可塑性樹脂フィルムにおいて前記第1面の表面の表面張力が50mN/m以下であり、前記金属板と融着する面の表面張力が36mN/m以上であり、前記表面のワックス付着量が0mg/m超、5.00mg/m以下である。
本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板を用いることにより、積層パネルのコア層との接着強度が高く、かつ、耐食性に優れ、かつ、廉価に積層パネルを製造することが可能となる。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板の構成及び樹脂フィルムラミネート金属板100を備えた積層パネル300の構成についても図8を用いて説明する。図8に示すように、積層パネル300は、コア層3、樹脂フィルムラミネート金属板100とを備える。以下、各構成について説明する。
【0016】
<積層パネル>
積層パネル300は、コア層3と樹脂フィルムラミネート金属板100とを備える。このような構成により、積層パネル300は、軽量かつ高強度となる。
【0017】
(コア層)
コア層3は、樹脂31と、気泡32とを備える。コア層3は、発泡ポリウレタン樹脂からなることが好ましい。発泡ポリウレタン樹脂は、硬質発泡ポリウレタン樹脂が特に好ましい。ここで、硬質発泡ポリウレタン樹脂とは、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートと水酸基を2個以上有するポリオールとを含有する発泡性原料を加熱することで、泡化反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られる、独立気泡構造を主とした樹脂発泡体をいう。硬質発泡ポリウレタン樹脂とすることで、積層パネル300の強度を向上することができる。
【0018】
(樹脂フィルムラミネート金属板)
樹脂フィルムラミネート金属板100は、金属板1と、熱可塑性樹脂フィルム2と、を備える。以下、各構成について説明する。
【0019】
〔金属板〕
樹脂フィルムラミネート金属板100には、強度、剛性、加工性、接着性、コストに優れることから、金属板1を用いることが好ましい。
本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板100の金属板1としては、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、ティンフリー鋼板、錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板などの鋼板、アルミニウム板、および、これら金属板の表面処理材が挙げられる。樹脂との密着性、耐食性、強度、材料コストの観点から、金属板1としては、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、ティンフリー鋼板、および錫めっき鋼板が好ましい。特に、ティンフリー鋼板は、金属クロム層の上層にクロム水和酸化層が形成されていることから、ポリエステル系樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂等、分子鎖中に水素結合可能な極性基を有する樹脂との密着強度が非常に高いので金属板1として好ましい。
【0020】
冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板は、密着性向上を目的として、りん酸塩処理やクロメート処理等の各種化成処理を施すことにより、ティンフリー鋼板と同等の接着強度が得られる。このため、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板を金属板1として用いる場合は化成処理したものを用いるのが好ましい。
【0021】
化成処理していない錫めっき鋼板は、めっき表面に酸化錫が存在しており、そのままの状態では酸化錫層が剥離しやすいため十分な接着強度が得られない。したがって、酸洗処理やアルカリ電解処理でめっき表面の酸化錫を除去した後、クロム酸処理等の化成処理を行って、表面が酸化しないようにするのが好ましい。
【0022】
樹脂フィルムラミネート金属板100の金属板1の厚みは、鋼板の場合、0.08mm以上、0.8mm以下が好ましい。鋼板の厚みが0.08mm未満の場合、積層パネル300の座屈強度が足りず、局所的に荷重が加わった際に内側の金属板1が座屈あるいは反対側の金属板1が割れる恐れがあるので好ましくない。また、鋼板の厚みの上限は特に限定されないが、軽量化を考慮するならば、必要以上に板厚を厚くするのは好ましくない。経済的には0.8mm以下であるのが好ましい。
【0023】
樹脂フィルムラミネート金属板100の金属板1がアルミニウム板の場合は、鋼板に比べて比重が小さく軽量化効果は高いが、強度が低い。このため、アルミニウム板を用いた場合、金属板1の厚みが薄すぎると積層パネル300の踏み抜き強度が低くなるので、厚みは0.15mm以上とすることが好ましい。アルミニウム板を用いる場合の金属板1の厚みの上限は、特に限定されない。軽量化を考慮するならば必要以上に金属板1の厚みを厚くするのは好ましくない。経済的にはアルミニウム板を用いる場合、金属板1の厚みは、2.5mm以下であるのが好ましい。
【0024】
樹脂フィルムラミネート金属板100の金属板1の表面粗さは、特に限定されないが、金属板1の表面粗さが、JISB0601:2013に規定される算術平均粗さRaで0.05μm未満の場合、金属板1に熱可塑性フィルム2を圧着積層する際に金属板1と熱可塑性フィルム2との間に気泡が入り込むと気泡が抜け難くなるので、好ましくない。一方、金属板1の表面粗さが平均粗さRaで0.8μmを超える場合、積層パネル300を作製する際、コア層3に用いられるウレタン樹脂の流動性が低下して金属板表面の凹凸に沿って気泡が滞留しやすくなるため、金属板1の表面粗さは、平均粗さRaで、0.05μm以上、0.8μm以下の範囲が好ましい。より好ましくは、0.1μm以上、0.6μm以下である。
【0025】
〔熱可塑性樹脂フィルム〕
金属板1に融着される熱可塑性樹脂フィルム2については、樹脂フィルムラミネート金属板100の金属板1と融着させる側の熱可塑性樹脂フィルム2の表面張力が36mN/m以上とする。これにより、金属板1およびコア層3の両方に対して優れた接着性が得られる。
【0026】
発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)3と接する側の熱可塑性樹脂フィルム2の表面(第1面1A)の表面張力が50mN/mを超えると、積層パネル300を作製する際のコア層3に用いられるウレタン樹脂の流動性が低下して発泡した気泡が局所的に成長することがある。この場合、積層パネル300の曲げ強度が低下する恐れがあるので、積層パネル300の表皮材となる樹脂フィルムラミネート金属板100に用いる熱可塑性樹脂フィルム2の発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)3と接する面(第1面1A)の表面張力は、50mN/m以下である。すなわち、樹脂フィルムラミネート金属板の少なくとも一方の熱可塑性樹脂フィルムの第1面の表面張力は、50mN/m以下である。
【0027】
熱可塑性樹脂フィルム2に用いられる樹脂熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、変性ポリプロピレン樹脂等の分子鎖中に水素結合可能な極性基を有する樹脂を用いたものが金属板1とコア層3の樹脂との接着性に優れるので好ましい。熱可塑性樹脂フィルム2としては、特に、ホモPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルム、PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合樹脂)フィルム、PET-PBT(ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート共重合樹脂)フィルムが好ましい。
なお、未変性のポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂は表面張力が30~32mN/m程度であり金属板との密着性が低いので好ましくない。コロナ処理をしたポリプロピレン系フィルムは未変性のものより表面張力は高いが、表面張力が36mN/m未満であり金属板1との接着性は変性ポリプロピレン樹脂ほど高くないので好ましくない。
熱可塑性フィルム2は、延伸フィルムであっても無延伸フィルムであっても構わないが、延伸フィルムの方が、無延伸フィルムより、積層パネル300を作製する際のウレタン樹脂の流動性が良いので、より好ましい。
【0028】
また、熱可塑性フィルム2中に、チタンホワイト、シリカ、カーボンブラックなどの無機充填材や着色用顔料を添加してあってもよい。その他、金属板1および/または積層パネル300のコア層3との接着性を向上させるために熱可塑性樹脂フィルム2の表面に接着プライマーが塗工してあっても構わない。
【0029】
金属板1に融着される熱可塑性樹脂フィルム2の厚みは、8μm以上、50μm以下が好ましい。フィルムの厚みが8μ未満の場合、樹脂フィルムラミネート金属板100の製造時にシワが入りやすくなり、特に積層パネル300の外面側となる側の熱可塑性樹脂フィルム2のシワは外観不良となりやすい。このような理由から、積層パネル300の外面側となる側の熱可塑性樹脂フィルム2の厚みは8μm以上であることが好ましい。
【0030】
他方、コア層3と接する側の熱可塑性樹脂フィルム2の厚みが50μmを超えると、積層パネルを製造する際、ウレタン樹脂の硬化発熱で樹脂が軟化した際、ウレタン樹脂の流動性が低下し気泡を巻き込みやすくなる。したがってウレタンコア層と接する側の面(第1面1A)の熱可塑性樹脂フィルム2の厚みは50μm以下とするのが好ましい。
【0031】
樹脂フィルムラミネート金属板の表面には通常成形時の潤滑性を確保するために、グラマーワックス、カルナバワックスなどの固形ワックスを塗布されている。この表面に塗布されたワックスは表面張力が低い。したがって、樹脂フィルムラミネート金属板の表面に5.00mg/m超のワックスがある状態では積層パネル300を作製した場合に樹脂フィルムラミネート金属板とコア層3との剥離強度が低くなり、好ましくない。そのため、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム2のコア層3側(第1面1A)側の表面のワックス付着量は、5.00mg/m以下である。また、樹脂フィルムラミネート金属板上のワックスを完全に除去し、0mg/mとした場合、硬質発泡ウレタン樹脂をコア層3とする積層パネル300を作製する際、ウレタン樹脂注入工程で樹脂フィルムラミネート金属板100の表面の滑り性が悪くなる。ウレタン樹脂と樹脂フィルムラミネート金属板100との界面付近のウレタン樹脂の流動性が悪化すると、ウレタン樹脂が滞留しやすい部分で気泡が会合して巨大化する。そのため、パネルの強度、剛性がバラつきやすくなるので好ましくない。よって、コア層3側(第1面1A)側の表面のワックス付着量は0mg/m超である。より好ましいワックス付着量は0.05mg/m以上である。
このため、本発明の実施形態に係る樹脂フィルムラミネート金属板100では、少なくとも一方の熱可塑性樹脂フィルム2のコア層3側(第1面1A)の表面のワックス付着量が0mg/m超、5.00mg/m以下の範囲になるよう塗布する。
【0032】
熱可塑性樹脂フィルム2と金属板1との剥離強度(接着強度)は、コア層3と熱可塑性樹脂フィルム2との剥離強度(接着強度)よりも高いことが好ましい。このような構成とすることで、熱可塑性樹脂フィルム2が強固に金属板1を覆うことができ、金属板1が錆びることを防止することができる。
例えば、樹脂フィルムラミネート金属板100をインジェクション金型の上面側と下面側とにセットし、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する発泡性原料を混合しながら金型の横側方の注入口から30秒以内に充填し20kN/mの圧力で約30秒間保持して前記樹脂フィルムラミネート金属板間に発泡ポリウレタン樹脂を形成した積層パネルから幅25mmのT型剥離試験片を切り出し、樹脂フィルムラミネート金属板を引張速度50mm/分で剥離させた際にフィルムが金属板から剥離しない場合を、熱可塑性樹脂フィルム2と金属板1との接着強度が、発泡ポリウレタン樹脂と熱可塑性樹脂フィルム2との接着強度よりも高いと判定する。
【0033】
〔フィルム表面張力とフィルム剥離強度との関係〕
次に、熱可塑性樹脂フィルムの金属板と融着させる面の表面張力と、樹脂フィルムラミネート金属板のフィルム剥離強度と、の関係を調べた試験結果について説明する。以下、試験方法について具体的に示す。
【0034】
〔熱可塑性樹脂フィルムの表面張力の調整〕
グラマーワックスの溶解量(0.1g/L~5g/L)を変えたヘキサン溶液中に熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性無延伸PET-IAフィルム:厚み20μm)を浸漬し、自然乾燥させた試料とワックス浸漬処理していない試料、を用意した。その他前記熱可塑性樹脂フィルムの表面に有機溶剤で希釈したエポキシ樹脂系プライマー塗布を塗布乾燥させて表面張力の高いフィルムを作製した。
【0035】
〔樹脂フィルムラミネート金属板作製〕
樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルムのラミネート方法は、金属板給装装置、金属板加熱用の金属製加熱用ホットプレスと、表裏面のフィルム給装装置、耐熱ゴム製ラミネートロール(金属製加熱バックアップロールによりゴムロール表面温度を制御)、および、冷却用水槽を備えた専用の樹脂フィルムラミネート装置によって行った。具体的には、265℃に加熱した金属板(ティンフリースチール(TFS)、厚み:0.185mm)にワックス付着量を変えて作成した熱可塑性フィルム(熱可塑性無延伸PET-IAフィルム:厚み20μm)を線圧100N/cmで熱融着させた直後に水冷してフィルムラミネート金属板を作製した。
【0036】
〔フィルム表面張力測定〕
樹脂フィルムラミネート金属板に用いる熱可塑性樹脂フィルムの金属板および融着させる面の表面張力の測定は、JIS K6768:1999の「プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法」によって行い、ぬれ張力試験用混合液(富士フィルム 和光純薬株式会社製)のハジキ程度から判定した。
【0037】
〔フィルム剥離強度測定〕
樹脂フィルムラミネート金属板の金属板とフィルムとの接着性の評価は、通常のフィルムラミネート金属板のフィルム剥離強度測定法に準じて行った。すなわち、フィルム剥離幅15mmのフィルムの180°剥離試験片を作製し室温下で引張速度20mm/分でフィルムを引張り、フィルムの180°剥離強度を測定した。180°剥離強度が10N/15mm以上の場合を良とし、5N/15mm以上、10N/15mm未満を可とし、剥離強度が5N/15mm未満の場合を、不可とした(樹脂フィルムラミネート金属板をエリクセン張出加工で5mm張出した時にフィルムが剥離しないフィルム剥離強度を基準とした)。可以上を合格とした。
【0038】
図1は、樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルムの表面張力と樹脂フィルム子金属板のフィルム接着性との関係を示した図である。
図1に示すように、熱可塑性樹脂フィルムの表面張力が36mN/m以上であれば、樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルムの接着性が良好であった。フィルムの表面張力が36mN/m未満の場合、積層パネルのウレタン樹脂との接着強度よりも金属板とフィルムの接着強度の方が低くなり、金属板とフィルムの界面で剥離する恐れがあるので好ましくないことが分かった。
【0039】
(フィルム表面張力と気泡サイズとの関係)
熱可塑性樹脂フィルムの第1面の表面張力と、積層パネルのウレタンコア層中の気泡の最大気泡径と、の関係を調べた試験結果について説明する。以下、試験方法について具体的に示す。
【0040】
〔樹脂フィルムラミネート金属板の表面張力の調整〕
グラマーワックスの溶解量(0.1g/L~5g/L)を変えたヘキサン溶液中に、ワックスが付着していない熱可塑性樹脂フィルムを用いて作製した樹脂フィルムラミネート金属板を浸漬し、自然乾燥させた試料を作製した。また、浸漬処理していない試料も用意し、ワックス付着量の異なる樹脂フィルムラミネート金属板を用意した。
【0041】
〔積層パネル作製〕
上記で表面張力を調整した樹脂フィルムラミネート金属板を200mm×250mmに切断し、インジェクション金型の上面側と下面側とにセットし、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する発泡性原料を混合しながら金型の横側方の注入口から30秒以内に充填した。その後、20kN/mの圧力で約30秒間保持した後、上下金型を開放し、積層パネル(コア層:発泡硬質ウレタン樹脂(比重0.6)、積層パネルの厚み:5mm)を取外すことにより積層パネルを得た。積層パネルの構成は、樹脂フィルムラミネート金属板/コア層/樹脂フィルムラミネート金属板である。
【0042】
〔フィルム表面張力測定〕
樹脂フィルムラミネート金属板の発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)と接する面の表面張力の測定は、JIS K6768:1999の「プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法」によって行い、ぬれ張力試験用混合液(富士フィルム 和光純薬株式会社製)のハジキ程度から判定した。積層パネルで使用したものと同一のワックス塗布量の樹脂フィルムラミネート金属板について測定を行った。
【0043】
〔コア層中の気泡サイズ測定〕
作製した積層パネルの中央位置から、高速精密切断機(平和テクニカ株式会社 ファインカット SP-320Z型)で縦15mm、横10mmの試験片を切断採取し、ウレタン樹脂注入方向の断面の埋込研磨試料を作製した。作製した断面研磨試料のコア層をデジタル式光学顕微鏡を用いて倍率50倍で積層パネルの上部、中間部、下部の3箇所について観察を行った。デジタル式光学顕微鏡の長さ測定機能を用いて各層の気泡直径を測定し、その中で最大の気泡径を求めた。最大気泡径が200μm以下の場合を優、最大気泡径が300μm以下の場合を良、300μm超500μm以下を可とし、500μm超の場合を不可とした。可以上を合格とした。
【0044】
図2は、表皮材である樹脂フィルムラミネート金属板の積層パネルの発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)と接する側のフィルム面の表面張力と積層パネルのコア層の最大気泡径と、の関係を調査した結果である。
図2からわかるように樹脂フィルムラミネート金属板の積層パネルのコア層と接する側の熱可塑性フィルムの表面張力が50mN/mを超えると積層パネルのコア層中の気泡の最大気泡径が大きくなることが分かった。
【0045】
積層パネルのコア層の厚みが5mm以下で体積充填率が60%以下程度の場合、コア層中に最大気泡径が500μmを超える気泡が多数存在していると積層パネルに荷重が加わって撓んだ際に、コア層が座屈して積層パネル自体が座屈する可能性が高くなるので、好ましくない。種々検討した結果、コア層の厚みが4mmの場合、ウレタンコア層中の気泡の最大気泡径が500μm以下であれば、前述の耐衝撃性が良好であることが明らかになった。
【0046】
樹脂フィルムラミネート金属板の積層パネルの発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)と接する側の熱可塑性樹脂フィルムの表面の表面張力が高くなると、ウレタン樹脂との密着性は高くなる。しかし、熱可塑性樹脂フィルムの表面張力が高くなると、積層パネルを作製する際、ウレタン樹脂の流動性が低下して気泡を巻き込みやすくなると同時に流動性が低下した部分でウレタンが滞留して気泡が成長しやすくなる。これによって、500μm超の気泡径の気泡が発生しやすくなる。そのため、表皮材の樹脂フィルムラミネート金属板の発泡硬質ウレタン樹脂(コア層)と接する面の熱可塑性樹脂フィルムの表面張力を50mN/m以下とすることで、ウレタン樹脂注入時の流動性が改善され気泡のサイズを小さく均一にできるので好ましい。
【0047】
(ワックス付着量と気泡サイズおよび接着力との関係)
熱可塑性樹脂フィルムの第1面のワックス付着量と、積層パネルのコア層中の気泡の最大気泡径と、の関係を調べた試験結果について説明する。以下、試験方法について具体的に示す。
【0048】
〔ワックス付着量調査用樹脂フィルムラミネート金属板および積層パネル作製〕
樹脂フィルムラミネート金属板の積層パネルの樹脂フィルムラミネート金属板の接着強度を評価するために、樹脂フィルムを延伸ホモPETフィルムに変更し、フィルムラミネート時の金属板(ティンフリースティール)の加熱温度を285℃にした以外上述の製造条件で作製したワックス未浸漬の樹脂フィルムラミネート金属板に、グラマーワックスの溶解量の異なるヘキサン溶液(1~50g/L)をバーコーターを使用して塗布した。これにより、ワックス付着量の異なる樹脂フィルムラミネート金属板を作製した。得られた樹脂フィルムラミネート金属板を用い、上述の条件で積層パネルを作製した。
【0049】
〔ワックス付着量調査〕
ワックス付着量の測定は、20cm×25cmのサンプル板(上述で作製したワックス付着量調査用樹脂フィルムラミネート金属板)の表面のワックスにヘプタンを約30mlかけて溶かした。ワックスを溶解させたヘプタンを予め精密天秤で重量を測定しておいたアルミニウム箔で作製した容器(約3g)で受け、アルミニウム箔容器をヒーターで加熱してヘプタンを蒸発させた。再度、精密天秤でアルミニウム箔容器の重量を測定し、ワックス溶解したヘプタン溶液を入れる前のアルミニウム箔容器の重量とヘプタンを蒸発させてワックスだけ残留したアルミニウム箔容器の重量との差を求めることにより、ワックス重量を求め、単位面積あたりのワックス付着量を算出した。
【0050】
〔コア層中の気泡サイズ測定〕
作製した積層パネルの中央位置から、高速精密切断機(平和テクニカ株式会社 ファインカット SP-320Z型)で縦15mm、横10mmの試験片を切断採取し、ウレタン樹脂注入方向の断面の埋込研磨試料を作製した。作製した断面研磨試料のコア層をデジタル式光学顕微鏡を用いて倍率50倍で積層パネルの上部、中間部、下部の3箇所について各視野中の気泡を観察した。デジタル式光学顕微鏡の長さ測定機能を用いて各層の気泡直径を測定し、最大気泡径を求めた。最大気泡径が200μm以下の場合を優とし、200μm超300μm以下の場合を良とし、300μ超500μm以下を可とし、500μm超を不可とした。可以上を合格とした。
【0051】
〔積層パネルの樹脂フィルムラミネート金属板剥離強度測定〕
作製した積層パネルを高速精密切断機で切断して25mm幅×150mmの試験片を採取し、試験片端の両面の樹脂フィルムラミネート金属板を約30mm剥離して引張試験機のチャックに挟むための掴み部を作製した。
試験片両面の樹脂フィルムラミネート金属板の掴み部を引張試験機のチャックに挟んで200mm/分の引張速度で100mm剥離(チャック間移動量200mm)することで、樹脂フィルムラミネート金属板とコア層の発泡硬質ウレタン樹脂との剥離強度を測定した。剥離強度が10N/25mm以上の場合を良とし、5N/25mm以上、10N/25mm未満の場合を可とし、5N/25mm未満を不可とした。合格を可以上とした。
【0052】
図3は樹脂フィルムラミネート金属板の表面に付着したワックス付着量と、積層パネルにした時の積層パネルのコア層の最大気泡径の判定結果との関係を示した図である。
図3に示されるように樹脂フィルムラミネート金属板表面にワックスが全く存在しない状態の場合、積層パネルのコア層の最大気泡径が500μm超となりやすいため、好ましくないことが分かった。
【0053】
樹脂フィルムラミネート金属板の表面に全くワックスが存在しないと、積層パネルを製造時の発泡樹脂注入工程で界面付近のウレタン樹脂の流動性が低下して界面付近に渦が発生し、気泡が滞留して会合しやすくなる。そのため、ワックスが微量存在することが好ましい。
【0054】
図4は、樹脂フィルムラミネート金属板の表面に付着したワックス量と、積層パネルにした時のフィルムラミネート金属板およびコア層の接着性(剥離強度)との関係を示した図である。
図4からわかるように樹脂フィルムラミネート金属板の表面に付着したワックス量が5.00mg/mを超えると積層パネルにした時の剥離強度が積層パネルに求められる樹脂フィルムラミネート金属板とコア層との剥離強度である5N/25mmより低くなるので好ましくない。
【0055】
樹脂フィルムラミネート金属板表面のワックス付着量が0mg/m超、5.00mg/m以下の場合、積層パネルを作製した際の表皮の樹脂フィルムラミネート金属板と積層パネルのコア層の剥離強度が5N/25mm以上で合格レベルとなることが明らかとなった。
【0056】
<樹脂フィルムラミネート金属板の製造方法>
次に、樹脂フィルムラミネート金属板100の製造方法について説明する。樹脂フィルムラミネート金属板100の製造方法は、準備工程、加熱工程、ラミネート工程、冷却工程とを備える。
【0057】
〔準備工程〕
従来技術では通常、樹脂フィルムラミネート金属板の製造工程で熱可塑性樹脂フィルムを金属板に熱融着させた後、樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルム面に加熱溶融させた固形ワックスをロールコーター54(図9)で塗布している。そのため、ワックス塗布工程の後にある通板ロール55(図9)に微量のワックスが転写堆積するのが避けられず、熱可塑性樹脂フィルムのワックス付着量を微量に制御するのは困難であった。
【0058】
そこで、鋭意検討した結果、本発明者らは、積層パネルの両側に配する樹脂フィルムラミネート金属板の表面に付着するワックスを0mg/m超、5.00mg/m以下にする方法として、本願の樹脂フィルムラミネート金属板を通板する前に、無塗油鋼板を通板し、通板ロール表面に堆積したワックスを無塗油鋼板側に付着させて除去してからワックスを微量塗布する方法を考案し、樹脂フィルムラミネート金属板の表面のワックス付着量が0mg/m超、5.00mg/m以下である樹脂フィルムラミネート金属板を製造することを可能とした。ここで、無塗油鋼板とは、防錆油などの油を塗布していない鋼板をいう。
【0059】
本発明者らが、樹脂フィルムラミネート金属板製造時の熱可塑性樹脂フィルムの表面へのワックス付着量を0mg/m超、5.00mg/m以下とするための通板条件を鋭意検討した結果、樹脂フィルムラミネート金属板連続製造設備において、樹脂フィルムラミネート金属板を製造する前に無塗油鋼板を50m/分以上の速度で1000m以上、フィルムラミネートせずに通板した後(準備工程S0)、樹脂フィルムラミネート金属板に0.1mg/m~2.0mg/mのワックスを塗工することによって、樹脂フィルムラミネート金属板製造時のフィルム面へのワックス付着量を0mg/m超、5.00mg/m以下まで低減できる。具体的には、無塗油鋼板を50m/分以上の速度で1000m以上、フィルムラミネートせずに通板することで、通板ロール55の表面のワックスを除去し、通板ロール55の表面の表面張力を36mN/m以上とした後、樹脂フィルムラミネート金属板に0.1mg/m~2.0mg/mのワックスを塗布して通板することすることによって、最終的に樹脂フィルムラミネート金属板上のワックス付着量を0mg/m超、5.00mg/m以下まで低減できる。
【0060】
無塗油鋼板の通板速度が50m/分未満の場合、金属板と通板ロールの間に剪断力が働き難くロールに付着したワックスを金属板が通板する際にワックスを取り難くなるので好ましくない。また、無塗油鋼板の連続通板長さが1000m未満の場合、通板ロールに堆積したワックスを十分に除去することができない場合があるので好ましくない。
【0061】
〔加熱工程〕
上述の準備工程で通板ロール55からワックスを除去し、通板ロール55の表面張力を36mN/m以上とした後、図9に示すような樹脂フィルムラミネート金属板の連続製造設備、例えば、図示しない加熱ロールで加熱された公知の金属板1の上に熱可塑性樹脂フィルム2をフィルムラミネートロール52によって圧着して熱可塑性樹脂フィルム2を熱融着させ、ついで冷却槽53で樹脂フィルムラミネート金属板を所定の温度まで冷却することによって、幅、長さ方向均一な樹脂フィルム層構造を形成することができ、かつ、金属板1と熱可塑性樹脂フィルム2との間に巻き込まれる気泡を少なくできる。
【0062】
加熱工程S1における樹脂フィルムラミネート金属板の連続製造設備の金属板1を加熱する方法としては、複数のスチーム等の熱媒体をロール内部に通して加熱するジャケットロール、あるいは、ヒーターを内蔵した加熱ロールに金属板を通板させて加熱させる方法などがあげられる。
【0063】
〔ラミネート工程〕
ラミネート工程S2におけるフィルムラミネートロール52としては、フィルムラミネート部で適度なニップ長を確保できるのでゴムロールが好ましい。ゴムロールの材質としては、フッ素ゴム、シリコンゴムなど耐熱性の高いゴムが特に好ましい。
【0064】
〔冷却工程〕
上記方法で金属板にフィルムを熱融着させた後は、冷却層53で冷却を行う。樹脂フィルムラミネート金属板を熱可塑性樹脂フィルム2の結晶化温度より低い温度まで冷却することが好ましい(冷却工程S3)。なお、本実施形態に係る製造方法において、図9のロールコーター54で塗布するワックスは溶剤で希釈してワックス濃度を下げて塗布しても良い。
【0065】
<積層パネルの製造方法>
本実施形態に係る積層パネルの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法で製造することができる。例えば、上記の製造方法で製造した樹脂フィルムラミネート金属板をインジェクション金型の上面側と下面側とにセットし、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する発泡性原料を混合しながら金型の横側方の注入口から30秒以内に充填し20kN/mの圧力で約30秒間保持した後、上下金型を開放することで積層パネルを製造することができる。
【0066】
〔通板ロールへのワックス付着量検討〕
次に、樹脂フィルムラミネート金属板表面へのワックス転写源となる連続製造設備の通板ロール55の表面上に付着堆積したワックスの除去条件の検討試験について説明する。
【0067】
図5は、鋼板を所定長さ通板した後の通板ロール表面の表面張力測定結果とその際に鋼板の表面に転写したワックス付着量との関係を示した図である。図5のワックス付着量は、上述のワックス付着量調査で行った方法で測定し、通板ロール表面の表面張力の測定は表面張力測定試薬を通板ロール表面に塗布した際のハジキ性で判定した。
図5から、樹脂フィルムラミネート金属板製造設備通板後の金属板表面のワックス付着量は、通板ロール表面の表面張力と良い相関があることがわかった。
【0068】
通板ロール表面の表面張力を測定することで樹脂フィルムラミネート金属板通板後の表面のワックス付着量を推測することが可能になったことから、以下、通板ロール表面のワックスの除去程度の判定は、通板ロール表面に表面張力36mN/mの表面張力測定試薬を塗ってハジキがでないかどうかで判定した。
【0069】
〔通板距離とワックス除去率との関係〕
次に、樹脂フィルムラミネート金属板製造設備の通板ロール表面の表面張力が36mN/m以上となる鋼板通板条件について検討した。まず、通板距離とワックス除去率との関係について調べた。具体的には、通板長さを変えて、鋼板(冷延鋼板、厚み:0.225mm)を50m/分で通板した後、表面張力36mN/mの表面張力試験液を通板ロールに塗布し、ワックス除去程度を判定した。表面張力試験液の液はじきがない場合を良とし、瞬間的な液はじきはないが、2秒以内に液が引いてくる場合を可とし、液をすぐにはじいて水滴状になる場合を不可とした。
【0070】
図6は、樹脂フィルムラミネート金属板製造設備で無塗油鋼板を50m/分で通板した際の通板長さと鋼板通板後の通板ロール表面のワックス除去判定の結果との関係を示した図である。
図6から、樹脂フィルムラミネート金属板製造ラインで通板ロール表面のワックスを除去するために必要な鋼板の通板長さは1000m以上必要であり、鋼板の通板長さが1000m未満だと通板ロール上に付着したワックスが十分に除去できないことがわかった。
【0071】
〔通板速度とワックス除去率との関係〕
次に、通板速度とワックス除去率との関係について調べた。具体的には、通板速度を変えて、無塗油鋼板(冷延鋼板、厚み:0.225mm)を1000m通板した後、表面張力36mN/mの表面張力試験液を通板ロールに塗布することで、ワックス除去程度を判定した。表面張力試験液の液はじきがない場合を良とし、瞬間的な液はじきはないが、2秒以内に液が引いてくる場合を可とし、液をすぐにはじいて水滴状になる場合を不可とした。
【0072】
図7は、樹脂フィルムラミネート金属板製造設備で鋼板を1000m通板した際の鋼板の通板速度と鋼板通板後の通板ロール表面のワックス除去程度の判定結果を示した図である。
図7から、樹脂フィルムラミネート金属板製造ラインで通板ロール表面のワックスを除去するために金属板を1000m通板した際に通板ロール上に付着堆積したワックスを除去するためには、鋼板通板速度が50m/分以上必要であり、鋼板の通板速度が50m未満だと通板ロール上に付着したワックスが十分に除去できないことがわかった。
これは、通板速度が遅いと鋼板通過時に通板ロール表面にかかる剪断力が小さくなり、通板ロール表面に堆積したワックスが鋼板に接触した際の削りとる力が低下するためと考えられる。鋼板の通板速度が50m未満の場合、鋼板の通板長さを長くすれば、通板ロール表面上に付着堆積したワックスを除去できると考えられるが、鋼板の必要長さが長くなり、かつ、通板ロール表面のワックスを除去するのに時間がかかるため、実用的でなく好ましくない。
【0073】
図6および図7から、樹脂フィルムラミネート金属板製造設備の通板ロール表面の表面張力が36mN/m以上となる鋼板通板条件は、鋼板通板速度50m/分以上で鋼板の通板長さが1000m以上必要であることがわかった。
【実施例
【0074】
本発明の積層パネル用樹脂フィルムラミネート金属板、および、その製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
ただし、実施例における条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件であり、本発明は下記実施例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能である。よって、本発明は、種々の条件を採用し得、それらは何れも本発明の技術的特徴に含まれる。
【0075】
実施例、比較例を通じ、図8に示すような積層パネル用の樹脂フィルムラミネート金属板に用いる金属板を表1に、樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルムを表2に、樹脂フィルムラミネート金属板、積層パネルの構成内容(コア層厚、樹脂層密度)、および、積層パネルの特性評価結果(樹脂フィルムラミネート金属板のフィルム剥離強度、コア層中の気泡サイズ分布、積層パネルの樹脂フィルムラミネート金属板の剥離強度、積層パネルの耐衝撃性)を表3A~3Fおよび表4A~表4Fに示した。表5A~5Cおよび表6A~表6Cには樹脂フィルムラミネート金属板の構成、樹脂フィルムラミネート金属板製造前の鋼板空通板条件、積層パネルのコア層の構成、および、積層パネルの樹脂フィルムラミネート金属板剥離強度判定結果を示した。なお、樹脂フィルムラミネート金属板は図9に示すような連続製造設備を用いて連続的に製造している。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3A】
【0079】
【表3B】
【0080】
【表3C】
【0081】
【表3D】
【0082】
【表3E】
【0083】
【表3F】
【0084】
【表4A】
【0085】
【表4B】
【0086】
【表4C】
【0087】
【表4D】
【0088】
【表4E】
【0089】
【表4F】
【0090】
【表5A】
【0091】
【表5B】
【0092】
【表5C】
【0093】
【表6A】
【0094】
【表6B】
【0095】
【表6C】
【0096】
具体的には以下の通りである。
樹脂フィルムラミネート金属板の構成材料について、以下に示す。
【0097】
〔金属板〕
表1に示すM1~M8の金属板を用いた。
M1は、厚み0.08mmのCr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有する金属クロムめっき鋼板である。
M2は、厚み0.80mmのCr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有する金属クロムめっき鋼板である。
M3は、厚み0.08mmのZr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有するSn-Fe合金めっき鋼板である。
M4は、厚み0.80mmのZr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有するSn-Fe合金めっき鋼板である。
M5は、厚み0.15mmのZr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有するA5052系のアルミニウム板である。
M6は、厚み2.50mmのZr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有するA5052系のアルミニウム板である。
M7は、厚み0.07mmのCr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有する金属クロムめっき鋼板である。
M8は、厚み0.14mmのZr酸化・水酸化物化成処理皮膜を有するA5052系のアルミニウム板である。
【0098】
〔熱可塑性樹脂フィルム〕
表2に示すE1~E12のフィルムを用いて、樹脂フィルムラミネート金属板を作製した。以下に示した表面張力、表面粗度は金属板と融着させる面と反対面の表面粗度である。
E1は、表面張力48mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み8μmの熱可塑性延伸ホモPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルムである。
E2は、表面張力48mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み50μmの熱可塑性延伸ホモPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルムである。
E3は、表面張力50mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み8μmの熱可塑性延伸PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート8モル%共重合樹脂)フィルムである。
E4は、表面張力50mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み50μmの熱可塑性延伸PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート8モル%共重合樹脂)フィルムである。
E5は、表面張力50mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み6μmの熱可塑性延伸PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート8モル%共重合樹脂)フィルムである。
E6は、表面張力50mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み52μmの熱可塑性延伸PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート8モル%共重合樹脂)フィルムである。
E7は、表面張力52mN/m、表面粗度Ra0.3μm、厚み20μmの熱可塑性無延伸PET-IA(ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート8モル%共重合樹脂)フィルムである。
E8は、表面張力50mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み25μmの熱可塑性延伸PET-PBT(ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート50質量%共重合樹脂)フィルムである。
E9は、表面張力36mN/m、表面粗度Ra0.2μm、厚み25μmの熱可塑性無延伸変性PP(無水フタル酸変性ポリプロピレン系樹脂)フィルムである。
E10は、表面張力34mN/m、表面粗度Ra0.3μm、厚み25μmの熱可塑性無延伸コロナ処理PP(ポリプロピレン樹脂)フィルムである。
E11は、表面張力44mN/m、表面粗度Ra0.3μm、厚み25μmの熱硬化性軟質ポリウレタンフィルムである。
E12は、金属板と融着させる面の表面張力が48mN/m〔ポリエチレンテレフタレート〕、金属板と融着させる面と反対面の表面張力が36mN/m(無水マレイン酸変性ポリエチレン)、表面粗度Raが0.1μm、厚み50μmの熱可塑性無延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)・変性PE(ポリエチレン)共押出フィルムである。
【0099】
〔樹脂フィルムラミネート金属板〕
樹脂フィルムラミネート金属板は、表3A~3Fおよび表5A~5Cに記載の構成およびラミネート条件で作製した。
【0100】
〔積層パネル〕
上記で製造した樹脂フィルムラミネート金属板を200mm×250mmに切断し、インジェクション金型の上面側と下面側とにセットし、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する発泡性原料を混合しながら金型の横側方の注入口から30秒以内に充填して20kN/mの圧力で約30秒間保持した後、上下金型を開放することで、積層パネル(コア層:発泡硬質ウレタン樹脂(比重0.6)、積層パネルの厚み:4mm)を得た。
【0101】
〔積層パネルの特性判定結果〕
上述した種々特性と積層パネルの性能に係る特性の関係から、積層パネル特性の良否を以下の方法によって判定した。
【0102】
(1)樹脂フィルムラミネート金属板の熱可塑性樹脂フィルム剥離強度判定
樹脂フィルムラミネート金属板の金属板と熱可塑性樹脂フィルムとの剥離強度(フィルムは栗強度)の測定は、以下の方法で行った。フィルム剥離幅15mmのフィルムの180°剥離試験片を作製し、室温下で引張速度20mm/分でフィルムを引張り、フィルムの180°剥離強度を測定した。得られた剥離強度を下記の基準に基づいて判定した。可以上を合格とした。得られた結果を表4A~4Fおよび表6A~6Cに示す。
良: 10N/15mm ≦ (フィルム剥離強度)
可: 5N/15mm ≦ (フィルム剥離強度) < 10N/15mm
不可: (フィルム剥離強度) < 5N/15mm
【0103】
(2)コア層中の気泡サイズ測定
作製した積層パネルの中央位置から、高速精密切断機(平和テクニカ株式会社 ファインカット SP-320Z型)で縦15mm、横10mmの試験片を切断採取し、ウレタン樹脂注入方向の断面の埋込研磨試料を作製した。作製した断面研磨試料のコア層をデジタル式光学顕微鏡を用いて倍率50倍で積層パネルの上部、中間部、下部の3箇所について各視野中の気泡を観察してデジタル式光学顕微鏡の長さ測定機能を用いて各層の気泡直径を測定した。得られた最大気泡直径(最大気泡径)を下記の基準に基づき判定した。可以上を合格とした。得られた結果を表4A~4Fおよび表6A~6Cに示す。
優:コア層断面視野中の最大気泡直径が200μm以下の場合
良:コア層断面視野中の最大気泡直径が200μm超~300μm以下の場合
可:コア層断面視野中の最大気泡直径が300μm超~500μm以下の場合
不可:コア層断面視野中の最大気泡直径が500μm超の場合
【0104】
(3)積層パネルの樹脂フィルムラミネート金属板剥離強度
上記で作製した積層パネルを高速精密切断機で切断して25mm幅×150mmの試験片を採取し、試験片端の両面の樹脂フィルムラミネート金属板を約30mm剥離して引張試験機のチャックに挟むための掴み部を作製した。
試験片両面の樹脂フィルムラミネート金属板の掴み部を引張試験機のチャックに挟んで200mm/分の引張速度で100mm剥離(チャック間移動量200mm)し、樹脂フィルムラミネート金属板とコア層の発泡硬質ウレタン樹脂との剥離強度(ラミネート金属板剥離強度)を測定した。100mm剥離した時の剥離強度を下記の基準に基づき判定した。合格は可以上とした。得られた結果を表4A~4Fおよび表6A~6Cに示す。
良: 10N/25mm ≦(ラミネート金属板剥離強度)
可: 5N/25mm ≦(ラミネート金属板剥離強度)< 10N/25mm
不可: (ラミネート金属板剥離強度)< 5N/25mm
【0105】
(4)積層パネルの耐衝撃性判定
作製した積層パネルを高速精密切断機で25mm幅×150mmに切断し耐衝撃性試験片とした。
耐衝撃性試験は、デュポン衝撃試験機に支持点間距離100mm、支持部先端が半径2.5mmのロール状支持部を有するダイスを設置し、衝撃圧子として半径5mmの半円柱状の上のポンチを取り付け、重さ1kgの錘を衝撃圧子上部の衝撃受け面から60mmの高さから落下させ、下記の判定基準を基に良否を判定した。合格は、可以上とした。得られた結果を表4A~4Fおよび表6A~6Cに示す。
良:凹み無し、座屈無し、表皮材剥離無し
可:若干の凹み有り、座屈無し、衝撃圧子の当った部分で局所的な表皮材剥離あり
不可:座屈有り、または、表皮材剥離有り
【0106】
表3A~3F、4A~4F、5A~5Cおよび6A~6Cに積層パネルの表皮材としての樹脂フィルムラミネート金属板の構成(表1に示した金属板と表2に示したフィルムの組合せ)とその作製条件、積層パネルコア層の構成、および、作製した積層パネルの特性判定結果を示した。
表3A~3F、4A~4F、5A~5Cおよび6A~6Cに、樹脂フィルムラミネート金属板の構成と、積層パネルの表皮材用の樹脂フィルムラミネート金属板を容器用樹脂ラミネート金属板連続製造設備で製造する際の製造ラインからのワックス転写による積層パネルにおける樹脂フィルムラミネート金属板の剥離強度低下を防止するための樹脂フィルムラミネート金属板製造前の無塗油鋼板空通板条件、積層パネルのウレタンコア層の構成、および、積層パネルの樹脂フィルム金属板剥離強度判定結果を示した。
【0107】
表3A~3F、4A~4F、5A~5Cおよび6A~6Cから明らかなように本発明の樹脂フィルムラミネート金属板を積層パネルの表皮材として用いた場合は、優れた積層パネル特性を発現することがわかる。
【0108】
表3A~3Dおよび4A~4Dの実験No.9、19、29、39、49、59は、フィルムの表面張力が本願発明の下限に近い36mN/mの熱可塑性無延伸変性PPフィルムを用いた場合の例であり、そのうちの実験No.9、29、49は積層パネルの表皮材に用いる樹脂フィルムラミネート金属板の金属板の厚みが本願発明の下限(鋼板厚み:0.08mm、アルミニウム板厚み:0.15mm)であり、積層パネルの座屈は発生しなかったものの、衝撃圧子が当たった部分で局所的に金属板が剥がれ表皮材が凹でいた。一方、表3B~3Dおよび4B~4Dの実験No.19、39、59は、積層パネルの表皮材に用いる樹脂フィルムラミネート金属板の金属板の厚みが厚いため、衝撃圧子が当たった部分での局所的な金属板の剥がれ、表皮材の凹みは見られなかった。
【0109】
表3Eおよび表4Eの実験No.65,69は、樹脂フィルムラミネート金属板は、ワックス浸漬処理なしのワックス付着量0mg/mの場合であり、積層パネルのウレタンコア層中の気泡の最大気泡径が500μmを超えており、積層パネルの耐衝撃性が劣っていた。
【0110】
また、表5A~5Cおよび表6A~表6Cから明らかなように容器用樹脂ラミネート金属板の連続製造設備で積層パネルの表皮材用の樹脂ラミネート金属板を製造する場合に、樹脂フィルムラミネート金属板製造前に無塗油鋼板をフィルムラミネートせずに空通板することにより、樹脂フィルムラミネート金属板連続製造設備からのワックスの転写が殆どなくなり、フィルムラミネート金属板製造時に極微量のワックスを安定して塗布することが可能となり、積層パネルとしたときの樹脂フィルムラミネート金属板の剥離強度低下を抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の積層パネル用樹脂フィルムラミネート金属板、および、その製造方法は、積層パネルのコア層との接着強度が高く、かつ、容器用樹脂フィルムラミネート金属板製造設備で製造できるので、廉価に積層パネルを製造することが可能であり、建材、船舶、車両の床および壁材用の積層軽量パネル用の表皮板として、極めて有用である。
図1
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