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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/06 20060101AFI20221129BHJP
   B66B 1/28 20060101ALI20221129BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20221129BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B66B5/06 Z
B66B1/28
B66B3/00 R
B66B5/02 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022078078
(22)【出願日】2022-05-11
【審査請求日】2022-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金森 俊貴
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157369(WO,A1)
【文献】特開2006-160439(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038681(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/078088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動するかごと、
前記かごを駆動する巻上機と、
前記巻上機に対するブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、
前記かごの直下に配置された緩衝器と、
前記かごの荷重を計測する秤装置と、
前記かごの速度を検出する速度検出部と、
前記かごの位置を検出する位置検出部と、
前記速度検出部によって検出された速度が、前記かごの位置に応じて設定された監視速度を超えると、前記ブレーキ装置にブレーキ力を発生させ、前記かごを強制的に減速させる減速部と、
前記減速部による減速が行われた際に前記かごが前記緩衝器に衝突するまでに前記緩衝器の許容速度まで減速できるか否かを示す検査結果が、検査時の前記かごの荷重に紐付けて記憶された記憶部と、
前記秤装置によって計測された荷重及び前記記憶部に記載された検査結果に基づいて、前記かごが移動する際に出し得る最高速度を決定する決定部と、
を備えたエレベーター装置。
【請求項2】
前記秤装置によって計測された荷重及び前記記憶部に記載された検査結果に基づいて、前記監視速度を設定する設定部を更に備えた請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記秤装置によって計測された荷重に対応する検査結果が否定的である場合に、前記かごが移動する際に出し得る最高速度を前記許容速度に決定する請求項1又は請求項2に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーター装置が記載されている。特許文献1に記載されたエレベーター装置は、かごの速度が過速度監視パターンに達するかどうかを監視するための装置を備える。検査モードにおいて、当該装置の検査が行われる。検査モードでは、ブレーキ装置による強制減速が行われ、ブレーキ装置の制動トルクが基準を満たしているか否かが判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2006/103769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキ装置の制動トルクが基準を満たしていない場合は、緊急時にかごが緩衝器に衝突する時の速度が緩衝器の許容速度より大きくなる恐れがある。従来のエレベーター装置では、ブレーキ装置の制動トルクが基準を満たしていないと判断されると、サービス提供時のかごの速度を一律に低下させていた。
【0005】
しかし、かごが緩衝器に衝突する時の速度が緩衝器の許容速度より大きくなるか否かは、かごの荷重によっても変わる。従来のエレベーター装置では、かごの荷重を考慮せずにサービス提供時のかごの速度を一律に低下させていたため、必要以上に運行効率が低下するといった問題があった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、かごを強制的に減速させる機能を備えたエレベーター装置において、必要以上に運行効率が低下することを防止できるエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーター装置は、昇降路を移動するかごと、かごを駆動する巻上機と、巻上機に対するブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、かごの直下に配置された緩衝器と、かごの荷重を計測する秤装置と、かごの速度を検出する速度検出部と、かごの位置を検出する位置検出部と、速度検出部によって検出された速度が、かごの位置に応じて設定された監視速度を超えると、ブレーキ装置にブレーキ力を発生させ、かごを強制的に減速させる減速部と、減速部による減速が行われた際にかごが緩衝器に衝突するまでに緩衝器の許容速度まで減速できるか否かを示す検査結果が、検査時のかごの荷重に紐付けて記憶された記憶部と、秤装置によって計測された荷重及び記憶部に記載された検査結果に基づいて、かごが移動する際に出し得る最高速度を決定する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、かごを強制的に減速させる機能を備えたエレベーター装置において、必要以上に運行効率が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。
図2図1に示すエレベーター装置の機能を説明するための図である。
図3】実施の形態1におけるエレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】制動トルクの検査方法の例を示すフローチャートである。
図5】制動トルクの検査方法を説明するための図である。
図6】エレベーター装置の他の動作例を示すフローチャートである。
図7】強制減速装置のハードウェア資源の例を示す図である。
図8】強制減速装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。図2は、図1に示すエレベーター装置の機能を説明するための図である。エレベーター装置は、かご1、及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。つり合いおもり2は、かご1が移動する方向とは逆の方向に昇降路3を上下に移動する。図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。
【0012】
ロープ4は、巻上機5に巻き掛けられる。巻上機5は、かご1を駆動する。具体的に、ロープ4は、巻上機5の駆動綱車に巻き掛けられる。かご1は、駆動綱車が回転する方向に応じて移動する。
【0013】
ブレーキ装置6は、駆動綱車が回転することを阻止するための力を発生させる。以下においては、当該力をブレーキ力ともいう。ブレーキ装置6として、ディスク型の装置、又はドラム型の装置が用いられる。ブレーキ装置6として、他のタイプの装置が用いられても良い。ブレーキ装置6は、巻上機5の一機能として備えられても良い。
【0014】
エレベーターの通常運転が行われている場合、ブレーキ装置6は、駆動綱車を静止保持する、即ちかご1を静止保持するために使用される。即ち、ブレーキ装置6は、駆動綱車の回転が停止してから巻上機5に対するブレーキ力を発生させる。ブレーキ装置6は、通常運転では、かご1を減速するために用いられない。通常運転は、利用者をかご1によって目的階に運ぶための運転である。
【0015】
一方、かご1を緊急停止させる場合、ブレーキ装置6は、かご1を減速するために用いられる。即ち、ブレーキ装置6は、駆動綱車が回転している時に巻上機5に対するブレーキ力を発生させる。例えば、ブレーキ装置6は、ブレーキ力を発生させるためのばねと、ばねの力に抗する力を発生させるためのコイルとを備える。かかる場合、コイルに対する電力供給が停止されることによって、ブレーキ力は発生する。
【0016】
巻上機5及びブレーキ装置6は、制御装置7によって制御される。一例として、巻上機5、ブレーキ装置6、及び制御装置7は、昇降路3の上方の機械室に設けられる。巻上機5、ブレーキ装置6、及び制御装置7は、昇降路3に設けられても良い。巻上機5は、昇降路3の頂部に設けられても良いし、昇降路3のピットに設けられても良い。
【0017】
昇降路3のピットに、緩衝器8が設けられる。緩衝器8は、かご1の直下に配置される。緩衝器8は、かご1が落下して昇降路3の底に衝突した場合にその衝撃を緩和するための装置である。緩衝器8には、かご1が衝突する際の許容速度が予め設定されている。即ち、かご1が緩衝器8に万一衝突するようなことがあったとしても、かご1が緩衝器8に衝突する時の速度は許容速度以下でなければならない。
【0018】
エレベーター装置は、かご1が昇降路3の終端部の特定の位置に存在することを検知するための終端検知器9を備える。昇降路3の終端部には、昇降路3の頂部とピットとが含まれる。図1に示す例では、終端検知器9として、かご1に設けられた第1機器9a、昇降路3のピットに設けられた第2機器9b、及び昇降路3の頂部に設けられた第3機器9cが備えられる。
【0019】
一例として、第1機器9aはカムであり、第2機器9b及び第3機器9cは、カムが接触することによって動作するスイッチである。第2機器9b或いは第3機器9cとして、複数のスイッチが備えられても良い。例えば、第2機器9bとして、昇降路3のピットの第1位置に合わせて配置された第1スイッチと、昇降路3のピットの第2位置に合わせて配置された第2スイッチとが備えられる。第2位置は、第1位置より低い位置である。かかる場合、終端検知器9は、かご1が第1位置に配置されたこと、及びかご1が第2位置に配置されたことを検出することができる。
【0020】
他の例として、第1機器9aは光電装置であり、第2機器9b及び第3機器9cは、光電装置によって検出可能なプレートである。終端検知器9として、他の検知方式を用いた機器が採用されても良い。
【0021】
エレベーター装置は、かご1の荷重を計測する秤装置10を備える。図1は、秤装置10がかご1の床の下に設けられる例を示す。秤装置10は、かご1の上に設けられても良い。秤装置10は、ロープ4の端部に設けられても良い。
【0022】
エレベーター装置は、かご1の速度超過を検出するための調速機11を備える。調速機11は、かご1の速度が特定の第1速度を超えると、かご1の位置に関わらず、電源を遮断することによってかご1を電気的に停止させる。調速機11は、かご1の速度が特定の第2速度を超えると、かご1の位置に関わらず、非常止め(図示せず)を動作させることによってかご1を機械的に停止させる。第2速度は、第1速度より速い速度である。第1速度は、定格速度より速い速度である。
【0023】
調速機11は、ロープ12、調速車13、及びエンコーダ14を備える。ロープ12は、調速車13に巻き掛けられる。図1は、調速車13が機械室又は昇降路3の頂部に回転可能に設けられる例を示す。ロープ12は、かご1に連結される。かご1が移動すると、ロープ12が移動する。ロープ12が移動すると、調速車13が回転する。エンコーダ14は、調速車13の回転方向及び回転角度に応じた回転信号を出力する。エンコーダ14から出力された回転信号は、強制減速装置15に入力される。
【0024】
強制減速装置15は、昇降路3の終端部におけるかご1の速度を監視するための装置である。強制減速装置15は、昇降路3の終端部においてかご1の速度が監視速度を超えると、かご1が緩衝器8に衝突する時の速度を許容速度以下にするためにブレーキ装置6を動作させる。即ち、ブレーキ装置6がブレーキ力を発生させることにより、かご1は強制的に減速される。
【0025】
強制減速装置15は、かご1の速度超過を検出する調速機11とは別の装置として備えられる。上述したように、第1速度は、第2速度より遅い速度である。監視速度は、第1速度より遅い速度に設定される。また、第1速度及び第2速度は、かご1の位置に関わらず一定の値である。監視速度は、かご1の位置に応じて多段階或いは無段階に変化するように設定される。監視速度は、少なくとも、昇降路3の終端部に対して設定される。監視速度は、昇降路3の全域に対して設定されても良い。
【0026】
強制減速装置15は、記憶部20、速度検出部21、位置検出部22、判定部23、減速部24、検査部25、決定部26、及び設定部27を備える。制御装置7は、移動制御部31、及びブレーキ制御部32を備える。移動制御部31は、巻上機5を制御する。ブレーキ制御部32は、ブレーキ装置6を制御する。
【0027】
強制減速装置15と制御装置7とは、双方向の通信が可能である。図2は、制御装置7が巻上機5とブレーキ装置6とを制御する機能のみを備える例を示す。他の例として、強制減速装置15が有する機能の一部は、制御装置7に備えられても良い。強制減速装置15は、制御装置7の一機能として備えられても良い。
【0028】
図3は、実施の形態1におけるエレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。具体的に、図3は、制御装置7によって通常運転が行われている時の強制減速装置15の動作フローを示す。通常運転では、制御装置7は、登録された呼びにかご1を順次応答させる。
【0029】
速度検出部21は、かご1の速度を検出する(S101)。速度検出部21は、エンコーダ14からの回転信号に基づいて速度の検出を行う。位置検出部22は、かご1の位置を検出する(S102)。位置検出部22は、速度検出部21によって検出された速度に基づいて、即ちエンコーダ14からの回転信号に基づいて位置の検出を行う。位置検出部22は、終端検知器9による検知結果にも基づいて、かご1の位置を検出しても良い。
【0030】
判定部23は、かご1の速度、即ち速度検出部21によって検出された速度が監視速度を超えたか否かを判定する(S103)。上述したように、監視速度はかご1の位置に応じてその値が変わるように設定されている。判定部23は、速度検出部21によって検出された速度を、位置検出部22によって検出された位置に応じて決まる監視速度と比較する。
【0031】
減速部24は、速度検出部21によって検出された速度が監視速度を超えたと判定部23によって判定されると(S103のYes)、ブレーキ装置6にブレーキ力を発生させ、かご1を強制的に減速させる(S104)。例えば、減速部24は、S103でYesと判定されると、ブレーキ装置6にブレーキ力を発生させるための指令を制御装置7に出力する。当該指令は、巻上機5及びブレーキ装置6に対する電源を遮断するための指令であっても良い。これにより、ブレーキ力による強制減速が開始され、かご1は最終的に停止する。
【0032】
上述したように、緩衝器8には、かご1が衝突する際の許容速度が予め設定されている。減速部24による減速が行われてかご1が緩衝器8に衝突するようなことがあったとしても、かご1が緩衝器8に衝突する時の速度は許容速度以下でなければならない。以下においては、かご1が緩衝器8に衝突する時の速度を衝突速度ともいう。
【0033】
減速部24による減速が行われた時の制動距離は、ブレーキ装置6の制動トルクに依存する。ブレーキ装置6の制動トルクは、種々の要因によって低下する。当該要因には、温度、湿度、酸化、及び錆の状態等が含まれる。このため、ブレーキ装置6の制動トルクは、衝突速度が許容速度以下になるように適切に管理される必要がある。エレベーター装置では、定期的或いは任意の時期に、ブレーキ装置6の制動トルクに対する検査が行われる。
【0034】
図4は、制動トルクの検査方法の例を示すフローチャートである。図5は、制動トルクの検査方法を説明するための図である。図5の横軸は、かご1の速度を表す。図5の縦軸は、かご1の位置を表す。図5の縦軸は、上方に向かうに従って昇降路3の終端に近づくことを示している。
【0035】
先ず、運転モードが、制動トルクの検査を行うための検査モードに設定される(S201)。検査モードでは、移動制御部31は、かご1を特定の検査速度で移動させる。検査速度は予め設定される。
【0036】
また、検査モードでは、先ず、かご1の荷重が、減速部24による減速が行われた場合にかご1の制動距離が最も長くなるような荷重に設定される。以下においては、当該荷重を荷重L1とも表記する。かご1が下方に移動する場合、荷重L1は最大となる荷重である。かご1が上方に移動する場合、荷重L1は最小となる荷重である。
【0037】
検査部25は、かご1が検査速度で移動しているか否かを判定する(S202)。S202の判定は、速度検出部21によって検出された速度に基づいて行われる。かご1が検査速度で移動していれば(S201のYes)、検査部25は、減速部24による減速が行われる時と同じように、ブレーキ装置6にブレーキ力を発生させ、かご1を強制的に減速させる(S203)。これにより、かご1は最終的に停止する。
【0038】
なお、制動トルクの検査は、昇降路3の終端部で行われなくても良い。制動トルクの検査は、昇降路3の終端部以外の部分で行うこともできる。即ち、検査モードにおいて、かご1を緩衝器に実際に衝突させる必要はない。
【0039】
かかる場合、ブレーキ力を発生させた位置P1が減速部24による減速が行われた位置であると仮定して、緩衝器8の仮想の位置P2を求めれば良い。位置P2は、位置P1が減速部24による減速が行われた位置と仮定した場合に、かご1が緩衝器8に衝突する位置に相当する位置である。
【0040】
例えば、検査部25は、監視速度が検査速度と等しくなる位置を求める。次に、検査部25は、求めた当該位置からかご1が緩衝器8に衝突する位置までの距離D1を求める。位置P2は、位置P1からかご1が距離D1だけ移動した位置である。検査部25は、位置検出部22によって検出された位置と速度検出部21によって検出された速度とに基づいて、位置P2におけるかご1の速度V1を求める(S204)。
【0041】
検査部25は、S204で求めた速度V1が緩衝器8の許容速度以下であるか否かを判定する(S205)。一例として、図5の曲線C1に示すような検査結果が得られた場合を考える。この時のかご1の荷重は荷重L1である。曲線C1に示す例では、位置P2におけるかご1の速度V1は許容速度以下である。これは、かご1の荷重が荷重L1である時に減速部24による減速が行われても、衝突速度が許容速度以下になることを意味する。
【0042】
曲線C1に示す例では、S205においてYesと判定される。S205でYesと判定されると、当該検査結果が検査時のかご1の荷重に紐付けて記憶部20に記憶される(S206)。S206で記憶される検査結果には、少なくとも、減速部24による減速が行われた際にかご1が緩衝器8に衝突するまでに許容速度まで減速できるか否かを示す結果が含まれる。曲線C1に示す例では、「荷重L1:減速可」を示す情報が記憶部20に記憶される。
【0043】
他の例として、図5の曲線C2に示すような検査結果が得られた場合を考える。この時のかご1の荷重は荷重L1である。曲線C2に示す例では、位置P2におけるかご1の速度V1は許容速度より大きい。これは、かご1の荷重が荷重L1である時に減速部24による減速が行われると、衝突速度が許容速度より大きくなることを意味する。
【0044】
曲線C2に示す例では、S205においてNoと判定される。S205でNoと判定されると、当該検査結果が検査時のかご1の荷重に紐付けて記憶部20に記憶される(S207)。S207で記憶される検査結果には、少なくとも、減速部24による減速が行われた際にかご1が緩衝器8に衝突するまでに許容速度まで減速できるか否かを示す結果が含まれる。曲線C2に示す例では、「荷重L1:減速不可」を示す情報が記憶部20に記憶される。
【0045】
また、S205でNoと判定されると、荷重条件を緩和することができるか否かが判定される(S208)。「荷重条件を緩和する」とは、強制減速が行われた場合にかご1の制動距離が短くなるような荷重に変更することを意味する。即ち、かご1が下方に移動する場合、S208では、かご1の荷重を更に小さくできるか否かが判定される。かご1が上方に移動する場合、S208では、かご1の荷重を更に大きくできるか否かが判定される。荷重条件を緩和することができれば(S208のYes)、荷重条件が緩和するようにかご1の荷重が再設定される(S209)。その後、S202からS205に示す一連の処理が行われる。
【0046】
例えば、制動トルクの検査がかご1を下方に移動させることによって行われている時に、S205においてNoと判定された場合を考える。かかる場合、直前の検査における荷重が荷重L1であれば、S209において、かご1の荷重は荷重L1より小さい荷重L2に設定される。その後、かご1が検査速度で移動するように制御され、強制減速が行われる。
【0047】
荷重条件が緩和されることによってS205でYesと判定されると、その時の検査結果が検査時のかご1の荷重に紐付けて記憶部20に記憶される(S206)。上記例であれば、S206において「荷重L2:減速可」を示す情報が記憶部20に記憶される。
【0048】
一方、S205でNoと再び判定されると、その時の検査結果が検査時のかご1の荷重に紐付けて記憶部20に記憶される(S207)。上記例であれば、S207において「荷重L2:減速不可」を示す情報が記憶部20に記憶される。
【0049】
荷重条件を緩和した後にS205でNoと再び判定されると、荷重条件を更に緩和することができるか否かが判定される(S208)。上記例であれば、S209において、かご1の荷重が荷重L2より小さい荷重L3に設定される。その後、S205でYesと判定されるまで、或いはS208でNoと判定されるまで、上述した処理が繰り返し行われる。このような処理が行われることにより、記憶部20には、許容速度まで減速できるか否かを示す検査結果が、かご1の荷重別に紐付けて記憶される。
【0050】
図6は、エレベーター装置の他の動作例を示すフローチャートである。具体的に、図6は、制御装置7によって通常運転が行われている時の強制減速装置15の動作フローを示す。例えば、強制減速装置15は、かご1の移動が開始される際に図6に示す動作フローを行う。
【0051】
強制減速装置15では、かご1の荷重が検出される(S301)。決定部26は、秤装置10によって計測された荷重と記憶部20に記憶された検査結果とに基づいて、かご1が移動する際に出し得る最高速度を決定する(S302)。移動制御部31は、決定部26によって決定された最高速度に基づいて、かご1の移動を制御する。
【0052】
例えば、記憶部20に「荷重L1:減速可」を示す情報が記憶されている場合を考える。当該情報は、最も厳しい荷重条件でも減速部24による減速が適切に行われることを意味する。このため、当該情報が記憶部20に記憶されている場合、決定部26は、秤装置10によって計測された荷重に関わらず、予め設定された定格速度に基づく速度パターンでかご1が移動することを許可する。例えば、決定部26は、当該速度パターンにおける最高速度が速度Vmaxに設定されていれば、かご1が移動する際に出し得る最高速度を速度Vmaxに決定する。
【0053】
他の例として、記憶部20に「荷重L1:減速不可」を示す情報と「荷重L2:減速可」を示す情報とが記憶されている場合を考える。かかる場合、決定部26は、秤装置10によって計測された荷重における荷重条件が荷重L2における荷重条件より緩和されることになるのであれば、定格速度に基づく速度パターンでかご1が移動することを許可する。即ち、決定部26は、S302において最高速度を速度Vmaxに決定する。
【0054】
一方、秤装置10によって計測された荷重における荷重条件が荷重L2における荷重条件より緩和されることにならないのであれば、決定部26は、かご1が移動する際に出し得る最高速度を、速度Vmaxより遅い速度V2に決定する。即ち、上記例では、秤装置10によって計測された荷重が荷重L2から荷重L1の間の値であれば、当該荷重に対応する検査結果が否定的である、即ち「減速不可」であるとみなされる。かかる場合、決定部26は、S302において最高速度を速度V2に決定する。速度V2は、緩衝器8の許容速度でも良い。速度V2は、許容速度より小さくても良い。
【0055】
また、強制減速装置15では、設定部27による監視速度の再設定が行われても良い。設定部27は、秤装置10によって計測された荷重と記憶部20に記憶された検査結果とに基づいて、監視速度を設定する。秤装置10によって計測された荷重に対応する検査結果が肯定的である、即ち「減速可」であれば、設定部27は、監視速度を速度Vmaxに応じた速度に設定する。設定部27は、秤装置10によって計測された荷重に対応する検査結果が否定的であれば、監視速度を速度V2に応じた速度に設定する。一例として、速度V2が許容速度より小さければ、設定部27は、監視速度を許容速度に設定しても良い。
【0056】
本実施の形態に示す例では、かご1の速度が監視速度を超えると、ブレーキ装置6がブレーキ力を発生させ、かご1が強制的に減速される。また、かご1の衝突速度が許容速度より大きくなることを防止するためにかご1が移動する際に出し得る最高速度を制限する必要がある場合でも、一律に速度制限を行う訳ではなく、かご1の荷重に応じて速度制限が行われる。このため、エレベーター装置において、例えばブレーキ装置6の修理が行われるまでの間に、必要以上に運行効率が低下することを防止できる。
【0057】
本実施の形態では、決定部26が、かご1が移動する際に出し得る最高速度を決定する例について説明した。他の例として、決定部26は、秤装置10によって計測された荷重と記憶部20に記憶された検査結果とに基づいて、かご1が移動する際に出し得る最高速度と共に最高減速度を決定しても良い。
【0058】
なお、減速部24による減速が行われた場合にかご1の制動距離が短くなる荷重は、かご1の移動方向によって異なる。このため、ブレーキ装置6の制動トルクに対する検査は、かご1を上方に移動させる場合とかご1を下方に移動させる場合との双方で実施しても良い。かかる場合、かご1を上方に移動させた場合とかご1を下方に移動させた場合との双方で検査結果が肯定的な荷重の条件、即ち荷重の範囲を求め、その条件に紐付けて検査結果「減速可」を記憶部20に記憶しても良い。
【0059】
図7は、強制減速装置15のハードウェア資源の例を示す図である。強制減速装置15は、ハードウェア資源として、プロセッサ41とメモリ42とを含む処理回路40を備える。処理回路40に複数のプロセッサ41が含まれても良い。処理回路40に複数のメモリ42が含まれても良い。
【0060】
本実施の形態において、符号20~27に示す各部は、強制減速装置15が有する機能を示す。記憶部20の機能は、メモリ42によって実現される。符号21~27に示す各部の機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ42に記憶される。強制減速装置15は、メモリ42に記憶されたプログラムをプロセッサ41(コンピュータ)によって実行することにより、符号21~26に示す各部の機能を実現する。
【0061】
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、或いはDSPともいわれる。メモリ42として、半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、或いはDVDを採用しても良い。採用可能な半導体メモリには、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、及びEEPROM等が含まれる。
【0062】
図8は、強制減速装置15のハードウェア資源の他の例を示す図である。図8に示す例では、強制減速装置15は、プロセッサ41、メモリ42、及び専用ハードウェア43を含む処理回路40を備える。図8は、強制減速装置15が有する機能の一部を専用ハードウェア43によって実現する例を示す。強制減速装置15が有する機能の全部を専用ハードウェア43によって実現しても良い。専用ハードウェア43として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0063】
制御装置7のハードウェア資源は、図7或いは図8に示す例と同様である。制御装置7は、ハードウェア資源として、プロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。制御装置7は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサ(コンピュータ)によって実行することにより、符号31~32に示す各部の機能を実現する。制御装置7は、ハードウェア資源として、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備えても良い。制御装置7が有する機能の一部或いは全部を専用ハードウェアによって実現しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 ロープ、 5 巻上機、 6 ブレーキ装置、 7 制御装置、 8 緩衝器、 9 終端検知器、 10 秤装置、 11 調速機、 12 ロープ、 13 調速車、 14 エンコーダ、 15 強制減速装置、 20 記憶部、 21 速度検出部、 22 位置検出部、 23 判定部、 24 減速部、 25 検査部、 26 決定部、 27 設定部、 31 移動制御部、 32 ブレーキ制御部、 40 処理回路、 41 プロセッサ、 42 メモリ、 43 専用ハードウェア
【要約】
【課題】かごを強制的に減速させる機能を備えたエレベーター装置において、必要以上に運行効率が低下することを防止する。
【解決手段】減速部24は、速度検出部21によって検出された速度が監視速度を超えると、ブレーキ装置6にブレーキ力を発生させ、かご1を強制的に減速させる。記憶部20に、減速部24による減速が行われた際にかご1が緩衝器8に衝突するまでに緩衝器8の許容速度まで減速できるか否かを示す検査結果が、検査時のかご1の荷重に紐付けて記憶される。決定部26は、秤装置10によって計測された荷重及び記憶部20に記載された検査結果に基づいて、かご1が移動する際に出し得る最高速度を決定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8