(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】超低レイテンシ電気通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20221129BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20221129BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20221129BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20221129BHJP
H04W 40/20 20090101ALI20221129BHJP
H04W 40/12 20090101ALI20221129BHJP
【FI】
H04B7/185
H04W84/06
H04W40/02
H04W76/10
H04W40/20
H04W40/12 110
H04W40/12
(21)【出願番号】P 2019542496
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2018053109
(87)【国際公開番号】W WO2018146164
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-26
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リード、ジェイム
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/023621(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0094288(US,A1)
【文献】米国特許第04506383(US,A)
【文献】特表2013-541912(JP,A)
【文献】特表2003-504940(JP,A)
【文献】特開平10-098773(JP,A)
【文献】特開平06-097964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04W 84/06
H04W 40/02
H04W 76/10
H04W 40/20
H04W 40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアセットを備える通信コンステレーションを介した信号の送信を構成するための、処理モジュールによって実行される信号ルーティング方法であって、
前記処理モジュールに関連する送信機地上局から受信機地上局に前記通信コンステレーションを介して信号を送信する命令を受信する段階と、
前記通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する
、環境制約およびアセットの位置を定義する情報を含む接続データをネットワーク管理モジュールに要求して取得する段階と、
環境制約およびアセットの位置を定義する前記情報に基づいて、前記アセットが、中継器構成で動作可能であるか、再生構成で動作する必要があるかを判断する段階と、
取得された前記接続データを使用して、前記送信機地上局から前記受信機地上局への前記信号の送信
を可能にする前記通信コンステレーションを通る最適ルート
を決定する段階と、
前記最適ルートを表すアセットの
シーケンス
における最初のアセットへの送信のために、前記処理モジュールから前記送信機地上局へ前記信号を送信する段階と、を備え、
前記通信コンステレーションのアセットのタイプは、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォーム(HAP)で構成された衛星を含み、
前記中継器構成で動作する前記シーケンスのアセットの数が最大化され、前記再生構成で動作する前記シーケンスのアセットの数が最小化される、信号ルーティング方法。
【請求項2】
前記処理モジュールが、パケット化、フレーム化、および変調のオペレーションを実行して、前記通信コンステレーションを介した送信のために前記信号を準備する段階をさらに含む、請求項1に記載の信号ルーティング方法。
【請求項3】
前記処理モジュールから前記送信機地上局へ前記信号を送信する段階は、マイクロ波送信を使用する1つまたは複数の地上ネットワークノードを介した送信を含む、請求項1または請求項2に記載の信号ルーティング方法。
【請求項4】
前記接続データを取得する段階は、前記複数のアセットの位置を定義する位置データを取得し、前記複数のアセットの相対位置データに基づいて前記複数のアセット間の利用可能な接続を決定する段階を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項5】
前記位置データは、
所定の期間にわたる前記通信コンステレーションの前記構成を定義する所定の情報、および/または
前記複数のアセットのリアルタイム位置
から取得され、
最適ルートを前記決定する段階は、前記最適ルートがアセットの位置の変動に応答して切り替えられるように、時間の経過に伴う前記通信コンステレーションの構成の変動を考慮した方式で実行される、請求項4に記載の信号ルーティング方法。
【請求項6】
前記接続データを取得する段階は、アセット間の見通し接続性を定義する情報、および見通し接続性を有するアセット間に存在する信号送信特性を取得する段階を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項7】
前記信号送信特性は、干渉および/または気象の影響を表す、請求項6に記載の信号ルーティング方法。
【請求項8】
前記最適ルートは、
前記送信機地上局と前記受信機地上局との間の最短の経路長および/またはレイテンシ、
前記受信機地上局に提供できる最高の信号強度または信号対雑音比、
および
前記送信機地上局と前記受信機地上局との間の経路にある最小数の衛
星
のうちの1つまたは複数を
さらに表す、請求項1~7の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項9】
前記最適ルートにおける決定された前記複数のアセットのシーケンスにおける前記複数のアセットのタイプは、前記シーケンスにおける前記複数のアセット間の距離に応じて決定される、請求項8に記載の信号ルーティング方法。
【請求項10】
複数の周波数チャネルのそれぞれに関連付けられた信号の送信のための複数の最適ルートを決定する段階を備える、請求項1~9の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項11】
信号の送信のための複数の最適ルートを決定し、前記複数の最適ルートの各々にわたる通信に適用される信号の重み付けを決定する段階と、
前記通信コンステレーションの制御のために前記ネットワーク管理モジュールに前記重み付けを送信する段階と
を備える、請求項1~10の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項12】
複数のアセットを備える通信コンステレーションを介した信号の送信を構成するための、処理モジュールによって実行される信号ルーティング方法であって、
前記処理モジュールに関連する送信機地上局から受信機地上局に前記通信コンステレーションを介して信号を送信する命令を受信する段階と、
前記通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する接続データをネットワーク管理モジュールに要求して取得する段階と、
取得された前記接続データを使用して、前記送信機地上局から前記受信機地上局への前記信号の送信のための前記通信コンステレーションを通る最適ルートを表す複数のアセットのシーケンスを決定する段階と、
前記複数のアセットの決定された前記シーケンスの最初のアセットへの送信のために、前記処理モジュールから前記送信機地上局へ前記信号を送信する段階と、を備え、
前記通信コンステレーションのアセットのタイプは、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォーム(HAP)で構成された衛星を含み、
アセット間リンクを介して通信する場合、前記複数のアセットはベントパイプモードで動作し、
前記接続データを取得する段階は、アセット間の見通し接続性を定義する情報、および見通し接続性を有するアセット間に存在する信号送信特性を取得する段階を含む、信号ルーティング方法。
【請求項13】
複数のアセットを備える通信コンステレーションを介した信号の送信を構成するための、処理モジュールによって実行される信号ルーティング方法であって、
前記処理モジュールに関連する送信機地上局から受信機地上局に前記通信コンステレーションを介して信号を送信する命令を受信する段階と、
前記通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する接続データをネットワーク管理モジュールに要求して取得する段階と、
取得された前記接続データを使用して、前記送信機地上局から前記受信機地上局への前記信号の送信のための前記通信コンステレーションを通る最適ルートを表す複数のアセットのシーケンスを決定する段階と、
前記複数のアセットの決定された前記シーケンスの最初のアセットへの送信のために、前記処理モジュールから前記送信機地上局へ前記信号を送信する段階と、
信号の送信のための複数の最適ルートを決定し、前記複数の最適ルートの各々にわたる通信に適用される信号の重み付けを決定する段階と、
前記通信コンステレーションの制御のために前記ネットワーク管理モジュールに前記重み付けを送信する段階と、を備え、
前記通信コンステレーションのアセットのタイプは、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォーム(HAP)で構成された衛星を含み、
アセット間リンクを介して通信する場合、前記複数のアセットはベントパイプモードで動作する、信号ルーティング方法。
【請求項14】
HAPは、送信機地上局上の2°~3°の仰角で動作するように構成され、および/または衛星は、送信機地上局上の5°の仰角で動作するように構成される、請求項1~
13の何れか一項に記載の信号ルーティング方法。
【請求項15】
処理モジュール
と、
送信機地上局に情報を送信する
ように構成される信号送信機と、
ネットワーク管理モジュールと通信するための手段と
を備え、
前記処理モジュールは、コンピュータ実装可能な命令を実行して、
電気通信モデムを制御し、請求項1~
14の何れか一項による信号ルーティング方法を実行するように構成される、電気通信モデム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超低レイテンシ電気通信システムに関し、特に、限定ではないが、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォームで構成される、中継器構成で動作可能な衛星を含む通信コンステレーションを介した信号のルーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
世界中での高速通信の必要性が高まっている。例えば、ロンドン、ニューヨークおよび東京の証券取引所間で長距離通信が必要な場合、特定の信号送信構成に関連するレイテンシは、各位置でのデータ処理アクティビティの同期が難しくなるため、問題になる可能性がある。例えば、アルゴリズムによる高頻度取引用途の場合、このようなレイテンシは、特定の株式取引で行われる取引プロセスの効率と決定の結果に大きな影響を与える可能性がある。
【0003】
従来、このような長距離通信は、銅ケーブルよりは高速であるが、特定の光ファイバケーブルを通る光の速度が自由空間での速度よりも遅いという欠点を伴う光ファイバリンクを使用して実行されてきた。通信速度の向上を追求するために、代わりにマイクロ波リンクネットワークが使用される通信システムが存在し、ポイントツーポイントのマイクロ波リンクがタワーなどの固定地上位置間に確立される。ただし、現在のところ、マイクロ波リンクは比較的短い距離、例えばロンドンとフランクフルトの間でしか実現できないため、光ファイバケーブルは長いリンクの唯一の選択肢である。
【0004】
したがって、従来のマイクロ波リンクの制限を克服しながら、光ファイバで見られるよりも低いレイテンシで遠隔地を接続する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、複数のアセットを備える通信コンステレーションを介した信号の送信を構成するための、処理モジュールによって実行される信号ルーティング方法が提供され、通信コンステレーションを介して、処理モジュールに関連付けられた送信機地上局から受信機地上局に信号を送信する命令を受信する段階と、通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する接続データをネットワーク管理モジュールに要求して取得する段階と、取得した接続データを使用して、送信機地上局から受信機地上局への信号の送信のための通信コンステレーションを通る最適ルートを表す複数のアセットのシーケンスを決定する段階と、複数のアセットの決定されたシーケンスの最初のアセットへの送信のために、処理モジュールから送信機地上局へ信号を送信する段階と、を備え、通信コンステレーションのアセットのタイプは、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォーム(HAP)で構成された衛星を含み、複数のアセットは中継器モードで動作するアセット間リンクを備える。
【0006】
この方法は、処理モジュールがパケット化、フレーム化、および変調のオペレーションを実行して、通信コンステレーションを介した送信のために信号を準備する段階と、をさらに含むことができる。
【0007】
処理モジュールから地上局へ信号を送信する段階は、マイクロ波送信または他の適切な手段を使用して、1つまたは複数の地上ネットワークノードを介して送信する段階を含み得る。これにより、処理モジュールの位置と同じである必要のない最適な地上位置で通信コンステレーションに信号を送信できる方式で、処理モジュールから信号を送信することができる。
【0008】
接続データを取得する段階は、複数のアセットの位置を定義する位置データを取得し、複数のアセットの相対位置データに基づいて複数のアセット間の利用可能な接続を決定する段階を含み得る。
【0009】
位置データは、所定の期間にわたる通信コンステレーションの構成、および/または複数のアセットのリアルタイム位置を定義する所定の情報から取得することができ、最適ルートの決定は、アセットの位置の変動に応答して最適ルートが切り替えられるように、通信コンステレーションの構成の時間による変動を考慮する方式で実行され得る。
【0010】
接続データを取得する段階は、アセット間の見通し接続性を定義する情報、および見通し接続性を有するアセット間に存在する信号送信特性を取得する段階を含んでもよい。
【0011】
信号送信特性は、干渉および/または気象の影響を表す場合があり、最適な送信が実行されることを保証するための変更または最適ルートあるいは周波数の切り替えを可能にする。
【0012】
最適ルートは、送信機地上局と受信機地上局との間の最短の経路長および/またはレイテンシ、受信機地上局に提供できる最高の信号強度または信号対雑音比、送信機地上局と受信機地上局との間の経路にある最小数の衛星、および複数のアセットのシーケンスの1つまたは複数を表すことができ、中継器構成で動作できるアセットの数が最大になり、再生構成で動作するのに必要なアセットの数が最小になる。
【0013】
最適ルート内の複数のアセットの決定されたシーケンス内のアセットのタイプは、シーケンスの複数のアセット間の距離に応じて決定され、コンステレーション内のさまざまなタイプのアセットのそれぞれの利点を利用する。
【0014】
この方法はさらに、複数の周波数チャネルのそれぞれに関連する信号の送信のための複数の最適ルートを決定する段階を含むことができる。
【0015】
この方法は、信号の送信のための複数の最適ルートを決定し、複数の最適ルートの各々にわたる通信に適用される信号の重み付けを決定し、通信コンステレーションの制御のためにネットワーク管理モジュールに重み付けを送信する段階をさらに含み得る。このソリューションは、異なる信号、またはそれらの信号の一部を複数の送り先に送信する場合に特に適しているかもしれない。
【0016】
本発明の別の態様によれば、処理モジュールを備える電気通信モデムが提供され、電気通信モデムは、情報を送信機地上局に送信する信号送信機と、ネットワーク管理モジュールと通信する手段とを含み、処理モジュールは、コンピュータ実装可能な命令を実行して電気通信モデムを制御し、上記の方法を実行するように構成されている。
【0017】
本発明の別の態様によれば、通信コンステレーションで使用するためのアセットが提供され、さらに先のアセットへの送信のために、受信した信号を中継する通信手段を備え、アセットは、低地球軌道で使用するように構成された衛星である。
【0018】
アセットは高高度プラットフォームであり、送信機地上局上の2°~3°の仰角で動作するように構成され、送信機および受信機地上局のカバレッジを最大化し、および/または衛星は、送信機地上局上の5°の仰角で動作するように構成されてもよい。
【0019】
本発明の別の態様によれば、複数のアセットを備える通信コンステレーションを制御するためのネットワーク管理モジュールが提供され、複数のアセットは、低地球軌道(LEO)、および/または高高度プラットフォーム(HAP)で構成された衛星を含み、ネットワーク管理モジュールは、処理モジュールからの前記接続データの要求に応答して、通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する接続データを処理モジュールに提供する手段と、通信コンステレーションの複数のアセットを制御して互いに情報を中継して転送する手段と、を含む。ネットワーク管理モジュールは、通信コンステレーションとの通信リンクの確立を可能にする適切な地上制御システムを介して、通信コンステレーションペイロードを任意の特定の必要な構成(例えば、任意の特定の時間にオンに切り替えるアンテナ)に命令することができる。
【0020】
本発明の技術を使用すると、最適ルートからの大きな迂回を回避するように構成された送受信機のネットワークを介して、真空内の光の速度(c0と呼ばれる)で自由空間において情報を送信することができる。その結果、既存の地上リンクと比較して、レイテンシを大幅に削減できる。さらに、トランスペアレントな構成、つまり信号が処理されるのではなく単純に中継されるベントパイプ構成で、アセット間リンクを備えた衛星および/または高高度プラットフォームを動作することにより、そうでなければ再生式のネットワークノードによってもたらされる処理遅延を回避でき、これにより、レイテンシがさらに短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、例のみにより以下に説明される。
【
図1】本発明の実施形態の方法で使用される通信システムの例を示す。
【
図2】本発明の実施形態による信号ルーティング方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態の方法で使用される通信システムの例を示している。通信は、点線で示すように、地球1上の任意の相対位置で送信機ネットワークノードと受信機ネットワークノードとの間で実行される。
図1の例では、地球の反対側に位置する送信機ネットワークノードと受信機ネットワークノードとを表すために、地球1の曲率が示されているが、これは単なる例であることが理解されるであろう。「送信機」および「受信機」という用語は、一方向の通信動作を定義するのに役立つことも意図しているが、送信機ネットワークノードおよび受信機のネットワークノードの各々は、受信機ネットワークノード機能を送信機ネットワークノードに取り入れる、およびその逆のことにより、双方向動作用の送受信機として構成され得ることが理解されるであろう。
【0023】
図1に示す構成では、送信機ネットワークノードおよび受信機ネットワークノードは各々、電気通信モデムもしくはルーターなどのそれぞれのデバイス4、5、またはゲートウェイもしくはネットワークインターフェースなどのデバイスにある処理モジュール2、3に関連付けられている。そのようなデバイス4、5は、本明細書では「ポイントオブプレゼンス」(PoP)と呼ばれ、例えば、証券取引所などの金融機関に関連する地上通信システムへのインターフェースを表す。
【0024】
処理モジュール2、3は、特定の通信プロトコルに従って、通信される情報を信号の送受信に適した形式に変換する信号処理を担当する。このような信号処理には、パケット化、フレーム化および変調、並びにルーティングが含まれ得る。処理モジュール2、3は、スタンドアロンシステムとして、またはそれぞれのPoP4、5の他の機能に関連する、より複雑なシステムに統合されるコンポーネントとして、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの形を取る。送信機処理モジュール2は、
図2に示される方法を実施するためにコンピュータ実装可能な命令を実行するように動作する。
【0025】
信号送信は、衛星通信コンステレーション8の衛星のサブセットを介して、送信機地上局6またはテレポートから受信機地上局7またはテレポートへ実行される。すべての衛星を送信に使用する必要はない。送信機地上局6は、送信機PoP4と同じ場所に配置することができ、処理モジュール2を備えるシステムに統合することができるが、
図1に示す構成では、送信機地上局6は送信機PoP4から離れた場所にあり、送信機PoP4と送信機地上局6との間の通信は、マイクロ波リンクなどの地上リンク9を介して実行される。受信機地上局7は、同様に、地上マイクロ波リンク10を介して受信機PoP5に接続されているように示されているが、受信機PoP5にローカルに配置されてもよい。
【0026】
通信コンステレーション8は、複数のアセットを備え、各アセットは、固定位置に配置されるか、地球1の周りの軌道上にあり得る。各アセットは、通信コンステレーション8の他のアセットとは無関係に自由に移動できる。複数のアセットはネットワーク管理モジュール11によって地上から調整および制御され、その制御リンクは破線で示されている。制御リンクは、送信/受信地上局を介して制御信号を通信コンステレーション8に中継する適切な地上制御システムを介して実装される。ネットワーク管理モジュール11は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成され、通信コンステレーションに関する情報を処理および保存するためのプロセッサおよび記憶手段を備え、そのような制御情報を通信コンステレーション8に送信し、通信コンステレーション8のアセットに関する状態情報または診断情報を受信する。ネットワーク管理モジュール11は、送信機処理モジュール2および受信機処理モジュール3の両方と通信するためのインターフェースを有し、それらのリンクが
図1に点線で示されている。処理モジュール2、3へのリンクは、インターネットリンクなどの地上波であってよく、通信コンステレーション8を通じてルーティングされる必要はないが、これらの実施形態の変更例では、ネットワーク管理はアンテナを介して通信コンステレーションを通じて情報を送受信できる。
【0027】
現在説明されている実施形態では、複数のアセットはLEO衛星によって表される。LEO衛星は、地上700~1,400kmの高度で周回している。アップリンク機能およびダウンリンク機能に加えて、衛星は、再生式の信号処理を伴わない中継器(ベントパイプ)モードで動作する衛星間無線周波数(RF)リンクを備え、衛星間リンクは、自由空間においてc0で信号送信を実行するため、光ファイバリンクよりも低いレイテンシが可能になる。本開示は、RF信号を説明しているが、レーザー信号送信にも等しく適用できることに留意されたい。具体的には、ベントパイプ方式の中継器は単純化されたペイロードアーキテクチャを表し、無線周波数(RF)信号の検出、RF信号のアップコンバートまたはダウンコンバートとその再送信を伴うが、例えば、増幅、再変調、エラー訂正を介して信号を再生することはない。アップ/ダウンコンバージョンは、特定の衛星の領域内の干渉源の周波数などの、環境条件および/または衛星の位置に基づいて特定のポイントツーポイント通信を促進することができる。したがって、データの符号化または変調を伴う信号処理が実行される再生構成とは対照的に、ベントパイプモードで動作する衛星は、トランスペアレントな構成で動作していると見なすことができる。
【0028】
衛星は、地上局と地上局との間、第1衛星と第2衛星の間、および地上局と衛星の間の1つまたは複数の中間ノードとして機能することができる。構成例では、すべての衛星が示されているわけではないが、低地球軌道のコンステレーションには100~150個のオーダーの衛星があり、地球の周りに分散しており、各々がカバレッジを最大化するために、低い仰角例えば、地上局に対して5°の低さ)で動作できる(。代替の実装例では、必要に応じて、より多くのまたはより少ない衛星が存在する場合がある。
【0029】
信号送信動作において、送信機PoP4の処理モジュール2は、例えば金融機関から、特定の情報を送信する要求を受信し、受信機PoP5への送信に適した信号への、送信される情報の処理を実行する。さらに、送信機PoP4の処理モジュール2は、ネットワークを通って送信機地上局6を受信機地上局7に接続するための最適ルートを決定するために、本発明の実施形態に従ってルーティング動作を実行する。
【0030】
最適ルートは、次の1つまたは複数を表す。
・最低レイテンシ、
・送信機地上局と受信機地上局と間の最短物理経路長、
・受信機地上局に提供できる最高の信号強度、
・受信機地上局に提供される信号の最高の信号対雑音比、
・送信機地上局と受信機地上局との間の経路にある最小数の衛星の、および
・中継器構成で動作できる衛星の数が最大化され、再生構成で動作するのに必要な衛星の数が最小化される一連の衛星。
【0031】
最適ルートは、以下に説明する複数の異なる理由により時間とともに変化する可能性があり、したがって、処理モジュール2は、動的に最適ルートを決定できるように構成されることが理解されよう。
【0032】
最適ルートを決定するために、処理モジュール2は、通信コンステレーション8の衛星間の接続性に関する情報を要求する。そのような情報は、通信コンステレーション8を調整するネットワーク管理モジュール11から入手できる。接続性情報は、特定の時点またはある期間に隣接する衛星に接続できる衛星を定義するスケジュールで表され得るか、またはネットワーク管理モジュール11によって提供される衛星の位置を定義する追跡情報から処理モジュール2により推測され得る。接続性は、2つの隣接する衛星間の見通し線の存在によって表され得るが、代替の実施形態では、最大送信範囲以下の距離で分離されている衛星に基づいて、または同じコンステレーションもしくは他のコンステレーションにある他の通信リンクを備える環境で通信する能力を決定することにより、接続性が決定され得る。
【0033】
ネットワーク管理モジュール11から接続性情報を受信すると、処理モジュール2は、特定の時点における衛星位置の3次元モデルを生成し、空間ルーティングアルゴリズムなどの最適化アルゴリズムをこのモデルに適用して、送信機地上局6から受信機地上局7への接続性を提供する衛星または一連の衛星に基づいて通信コンステレーション8を通る最適ルートをプロットする。送信機地上局6から受信機地上局7への信号送信は、最適化アルゴリズムの完了に応答して実行される。
【0034】
最適ルートは、特定の時間に利用可能な唯一のルートであってもよいし、あるいは複数の異なるルートから選択されてもよい。
【0035】
代替実施形態では、処理モジュール2は、ネットワーク管理モジュール11から受信した衛星の動きとそれらの衛星の軌道経路を定義する情報に基づいて、将来の特定の時点の衛星位置を予測し、送信は、将来の特定の時点まで延期される。
【0036】
最適ルートが最低レイテンシに関連するルートである場合、レイテンシは、通信コンステレーション8を通る物理経路長とシステムを通る信号のスループット/遅延とに基づいて、数値計算を使用して予測できる。レイテンシの推定値は、再生式の衛星が最適ルートに含まれる場合、これらの再生式の衛星での処理に起因する遅延を許容するように修正されてよい。
【0037】
あるいは、最適ルートは、送信機地上局6から受信機地上局7へのルート内の衛星の数に基づいて選択されてもよい。特に、最適ルートは、最小数の衛星を含むルートであってよい。したがって、好ましいルートは、リンクに沿って実行される周波数変換および中継器動作の数を減らすことによる性能の向上に関連するルートになる可能性があるため、最適ルートが最低レイテンシに関連するルートである必要はなく、この場合、予想されるレイテンシは許容され得ることが理解されるであろう。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、処理モジュール2は、例えば、ネットワーク管理モジュール11または専用の気象情報サーバ(図示せず)から利用可能な気象情報を使用して、環境条件を考慮することができる。特定の通信ルートが最適であり得ることを衛星の物理的な位置と接続性とが示唆する場合、そのルートに存在する嵐が原因で信号損失または電磁干渉が発生する可能性があるため、実際には最適ルートではなくなる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、処理モジュール2は、通信コンステレーション8を通る特定のルートでの外部信号干渉の影響を考慮することができる。他の競合する衛星コンステレーションの存在に基づいて、異なるルートが異なるレベルの干渉を受ける可能性があり、干渉の重大度が異なる場合があることが理解されよう。特定の時間における特定の地理的エリアで予想されるトラフィックに基づいて干渉が高いと予測される場合、その地理的エリアを通過する通信コンステレーション8を通るルートが、最小経路長などの最適なパラメータに関連付けられ得る場合であっても、高い信号対雑音比、または絶対的な信号強度の観点から、必ずしも高性能につながるとは限らないことが理解されよう。したがって、最適ルートは、受信機地上局に最高の信号対雑音比、または最高の絶対信号レベルを提供することが期待され得るルートであると、処理モジュール2によって決定され得る。
【0040】
これらの実施形態において、ネットワーク管理モジュール11から提供される、通信コンステレーション8の外部の要因に関する情報を使用して干渉が予測され、その情報から信号損失を推定することができる。ネットワーク管理モジュール11は、干渉信号を回避するために、通信コンステレーション8内の衛星の周波数アップコンバージョンおよびダウンコンバージョン動作を適宜制御する。いくつかの実施形態では、干渉信号の検出は、各衛星によってリアルタイムでネットワーク管理モジュール11に報告され得るが、特定の時間における特定の地理的領域のアセットの数に基づいて干渉が予測されることも可能である。処理モジュール2は、ネットワーク管理モジュールからこの情報にアクセスし、最適な周波数切り替え方式をルーティングアルゴリズムに組み込むことができる。例えば、アルゴリズムは、干渉を回避するために周波数シフトが利用されている場合、最短の物理経路長を維持する物理送信ルートを維持できる可能性がある。それどころか、最適ルート上の多数の干渉源のために周波数シフトが不可能な場合、代替の送信ルートが選択されてもよい。
【0041】
上記のように干渉の影響を決定した後、実際には、そのような干渉を回避するために信号を再ルーティングする必要はなく、追加のエラー訂正コードや暗号化を含めるなどの、信号送信方式の変更によって、信号が干渉領域を通過するのに十分な堅牢性を持つことができ、これにより、追加の処理による計算されたネットワーク内の遅延を考慮して、他の最適ルートを維持できる。
【0042】
干渉および気象状態情報は、本明細書では、信号送信特性の例と呼ばれる場合がある。
【0043】
通信コンステレーション8のすべての衛星が中継器構成で動作することは必須ではない。一部の衛星は再生構成で動作することが可能であり、これは、例えば環境条件や特定の範囲内の隣接する衛星が一時的に利用できないなどの特定の制約により必要になる。再生式の衛星は、ルート切り替え動作を実行できるゲートウェイを表す場合がある。
【0044】
このような状況では、最適ルートは、中継器構成で信号をルーティングできる一連の衛星に含まれる衛星の数を最大化し、再生構成で動作する衛星の数を最小化するルートであり得る。この最適化により、全体的なレイテンシを削減できる。
【0045】
上記に示すように、レイテンシを短縮できるようにするために、中継器構成で動作する衛星の数を最大化することが望ましい。衛星が中継器構成で動作している場合、衛星自体は信号ルーティングの決定を行うためにオンボード処理を実行する機能を必要とせず、これにより、処理モジュール2によるこのような信号ルーティングの性能がこのコンテキストで有利になる。
【0046】
送信機地上局6から通信コンステレーション8を通る最適ルートを表す一連の衛星の第1衛星に信号を送信すると、第1衛星は、地球を周回する軌道により、第2衛星の軌道に応じて特定の時間に特定の第2衛星への接続性を有するように構成される。そのため、特に第1衛星が独自の信号ルーティング決定を行わないトランスペアレントな中継器構成で動作する場合に、第1衛星へ信号を送信するタイミングで、第1衛星が信号を中継する先の第2衛星が決定される。同様に、特に第2衛星が独自の信号ルーティング決定を行わないトランスペアレントな中継器構成で動作する場合に、第2衛星へ信号を送信するタイミングで、第2衛星が信号を中継する先の第3衛星が順に決定される。
【0047】
通信コンステレーション8を通るルート内の衛星の何れも信号ルーティングのためのオンボード処理を含まない場合、したがって、通信コンステレーション8を通る特定のルートは、一連の衛星のそれぞれの第1衛星に関連付けられ、最適ルートの決定の結果は、送信機地上局6による最適な第1衛星への信号の送信である。
【0048】
送信機PoP4が複数の異なる送信機地上局6と接続している状況では、処理モジュール2は、最適化アルゴリズムを拡張して、最適な第1衛星に基づいて、信号を通信コンステレーション8に送信するために使用されるべき最適な送信機地上局を考慮することができ、そのためPoP4からの送信自体は、信号ルートの最適化に基づいて制御されることが理解されるであろう。
【0049】
上記に示された例の修正例では、通信コンステレーションの構成は、通信コンステレーション8の衛星の軌道に応じて、特定の時間に第1衛星が複数の第2衛星との接続性を有するようなものかもしれない。第1衛星が中継器モードで動作している場合、第1衛星は、第2衛星の何れかが第1衛星から信号を受信するべきかについて決定または選択できる必要はないため、第1衛星は複数の第2衛星の各々に信号を送信する。同じ原則が、通信コンステレーション8の後続の衛星にも適用される。したがって、この構成では、受信機が複数の信号を受信するように、信号が複数の並列ルートを介して受信機地上局に到達できることが明らかである。この状況では、受信機PoP5に関連付けられた処理モジュール3は、複数の受信信号のうち、最適ルートを介して送信された信号を抽出するように構成される。
【0050】
受信機処理モジュール3は、例えば、受信機地上局7によって受信された信号を、それぞれの送信ルートに沿った最終衛星、この場合、ルートの最終衛星を表す異なる衛星から区別し得、すなわち、受信機地上局7へのダウンリンクを提供する衛星は、特定の送信ルートを示している。
【0051】
衛星間リンクの順列に基づいて、より複雑な送信ルートが通信コンステレーション8に存在する場合、最終的な衛星の識別だけでは送信ルートを識別するのに十分ではない可能性があり、例えば、コンステレーションを通る複数の送信ルートは、ダウンリンクの前に収束する。衛星の衛星間リンクはベントパイプモードで動作するため、送信ルートを定義する送信信号に任意の情報を取り入れず、受信信号だけでは送信ルートを決定できないことを意味する。
【0052】
しかしながら、いくつかの実施形態では、以下に説明するように、ネットワーク管理モジュール11によって各衛星での信号送信に適用される特定の重み付け方式から送信ルートを識別することができる。
【0053】
通信コンステレーション8で衛星の軌道を制御および追跡することに加えて、ネットワーク管理11モジュールは、いくつかの実施形態では、衛星が、特定の時点に2つ以上の他の衛星への利用可能な接続性を有する状況で、衛星に特定のルーティング制約を課すことができる。例えば、ネットワーク管理モジュールは衛星を制御して、受信信号の75%を利用可能な送り先の衛星のうちの1つに再送信し、受信信号の25%のみを別の利用可能な送り先の衛星に再送信する。重み付けは、最適化アルゴリズムの一部として送信機PoP4の処理モジュール2によって決定され、ネットワーク管理モジュール11に提供される。そのような重み付けまたは制御信号は、帯域幅割り当ての使用に等しく適用できるため、最終的な信号分離は受信機でフィルタリングすることにより実行できることが理解されよう。
【0054】
このような重み付け方式では、信号の内容が振幅または周波数を除いて変化しないため、送信衛星により適用される信号処理の任意の追加レベルを必要とせず、その結果、衛星はベントパイプモードで動作中に着信信号を分割することができる。信号重み付け方式は、ネットワーク管理モジュール11によって、または送信機PoP4の処理モジュール2から直接受信機PoP5の処理モジュール3に提供され、受信信号の振幅/周波数に基づいて、信号送信ルートは、受信機処理モジュール2によって識別できる。それに対応して、最高の振幅を有する複数の受信信号の信号レベルは、例えば、重み付け係数の最高の積を有する経路を介して送信されたものとして識別でき、上記のように、これは、いくつかの実施形態では最適な送信ルートを表してもよい。
【0055】
上記の実施形態は、送信機地上局6から受信機地上局7への単一の信号の送信に関連して説明されているが、多重化方式を使用して複数の信号を送信することも可能であることを理解されよう。この構成では、送信機PoP4のプロセッサモジュール2は、例えば、時分割や周波数分割などのよく知られた多重化方式を使用する通信コンステレーション8を介した同じ最適ルートにわたり複数の信号を単一の送信に多重化することが適切か可能かを決定する。そのような多重化の選択肢が利用可能な場合、多重化方式を定義する情報が、送信ごとに、または将来のすべての送信の多重化方式の一度限りの確立として、信号送信の前に受信機地上局7に送信され、受信機処理モジュール3が必要な信号を抽出することを可能にする。そのような多重化方式が利用できないか適切でない場合、並列の通信コンステレーション8を介してそれぞれの複数のルートを介して複数の信号を同時に送信することが可能な場合がある。この場合、送信機処理モジュール2は、処理モジュール2によって最高の優先度であると決定された情報が、例えば、最低レイテンシを有するルートを介して送信されるように、優先方式に従って特定の送信ルートを選択するように動作し、優先度が低い情報は、別のルートを割り当てることができる。優先度は、送信機処理モジュール2への信号送信要求の提供にユーザーが含めることができ、または、他の場合、送信機処理モジュール2は、フラグやキーワードなどの情報、または送信される情報に含まれる特定のデータタイプの存在に基づいて独自の自動優先度決定を行うことができる。上記のように、特定の内容、通信条件、異なる周波数チャネルなどに必要な暗号化レベルに応じて、異なるルートで送信される信号は、異なる送信方式で送信され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、ネットワーク管理モジュール11による、例えば重み付け方式を使用した並列送信の制御により、
図1に示す単一の地上局7ではなく、複数の受信機地上局に信号を送信できるようになる。これは、例えば、ニューヨークの証券取引所からロンドンと東京の両方の証券取引所に信号を送信する必要がある場合に適しているかもしれない。この例では、上記と同じ手法を使用して、複数の最適ルート、例えば、ニューヨークからロンドンまでのルート、ニューヨークから東京までのルートを決定できるが、より複雑なルーティングも本発明の範囲に含まれる。例えば、大西洋上空を周回する通信コンステレーションのセクションに関して、2つのルートが重複している可能性があり、信号送信は、ヨーロッパ上空を周回する特定のトランスペアレントなまたは再生式のゲートウェイ衛星で、ロンドンのダウンリンクへのルート、東京のダウンリンクに到達するためのアジアの送信セクションへのルートに対して50%/50%基準、または他の比率で分割され得ることを理解されよう。再生式のゲートウェイ衛星の場合、例えばロンドンで受信した信号の一部のみが東京にも転送されるようにフィルタリングを実行することもできるが、多重化方式により、2つの独立した信号を2つの送り先に送信できる場合がある。あるいは、送信機PoP4の処理モジュール2から別個の地上リンクを介して2つの別個の送信機地上局に情報を送信することを必要とする2つの完全に別個の送信ルートが選択され得る。別の実施形態では、同じデータが両方の受信局に送信され、関連するデータのみが該当する受信機用に抽出される。
【0057】
上記の実施形態では、1つまたは複数の最適ルートを決定した送信機PoP4の処理モジュール2は、送信機地上局6と受信機地上局(複数可)7との間の信号送信の前に、1つまたは複数の受信機PoP5に、個々の信号のルーティングまたは多重化信号あるいは並列信号のルーティング方式にかかわらず、ルーティング情報を供給するため、受信機処理モジュール3が必要な復調または逆多重化を実行できるようにする。
【0058】
上述のように、ネットワーク管理モジュール11から受信した情報に基づいて通信コンステレーション8の瞬間的な構成を決定することが可能であり、これは短期間の送信に適し得、通信コンステレーション8の構成は、信号送信中に大幅に変更されることは予期されないため、必要な送信が完了するまで最適ルートが「最適」状態を保持することが保証される。ただし、特定の用途ではより長い期間の送信、または連続リンクの確立が必要であり、そのような場合、特定のルートの状態が最適であるのは、信号送信が行われる一部の時間のみにしか存在できないことを理解されよう。
【0059】
いくつかの実施形態では、通信コンステレーション8の状態に関する定期的な更新を得るために、処理モジュール2はネットワーク管理モジュール11と連続的または定期的に通信し、その結果、それに応じて最適化アルゴリズムを更新することができる。いくつかの実施形態では、そのような更新はリアルタイムで実行することができ、最適な性能を維持するために、信号送信ルートのリアルタイム切り替えにつながる。
【0060】
他の実施形態において、ネットワーク管理モジュール11は、通信コンステレーション8に関連する現在の位置および軌道情報を処理モジュールに提供し、その結果、処理モジュール2は、ネットワーク管理モジュール11からそのような情報にアクセスするのではなく、通信コンステレーション8構成の予測をローカルに実行できるが、ネットワーク管理モジュール11による検証は、処理モジュール2の予測が正しいことを確認するために定期的に実行できる。ネットワーク管理モジュール11との通信まで、通信コンステレーション8の構成が処理モジュール2にとって未知の方式で変更され得るように、特定の衛星がサービスを停止するか、故障するか、または他の衛星に置き換えられる場合がある。
【0061】
最適な信号送信ルートの決定は、送信機から受信機への信号送信が要求されたときに実行され得るが、本発明の実施形態の方法の同じ原理を、将来の時間にスケジュールされた信号送信のための通信リンクの識別および確立に適用することも可能である。このようにして、本発明の技術は、2つ以上のポイント間の連続通信リンクの維持を可能にすることができ、通信リンクの切り替えおよびリアルタイム更新により、リンクがコンステレーションの構成の変更に適応する、かつ/または干渉源、変動するレイテンシなどを考慮することを可能にする。
【0062】
さらに、最適な信号送信ルートの決定は、以前の通信が既に行われている間に実行され、通信のための将来のリンクの準備に遅延がないようにする。そのような実施形態では、処理モジュール2は、送信のための信号を準備することと、ルーティングアルゴリズムを実行することが同時に可能である。
【0063】
前述の実施形態は、衛星のコンステレーションのコンテキストで説明されている。代替実施形態では、衛星は完全にまたは部分的に高高度プラットフォーム(HAP)に置き換えられてもよい。HAPは、通常、地上20,000mの高度で動作する長期間の無人航空機(UAV)であり、地上の気象システムを超えるのに十分な高さである。一例として、エアバスディフェンスアンドスペースリミテッドが開発したゼファー車両があり、これは、太陽電池式のUAVである。ゼファーは、数日間自律的に太陽エネルギーのみで飛行できることにより、手頃な価格の広域で持続的な存在を提供でき、300kmの一般的な送信範囲を有する。
【0064】
図1の通信コンステレーション8でアセットとして使用する場合、HAPは上記の衛星と同じ方法でトランスペアレントな構成で動作できるが、衛星の場合と同様に、再生モードの通信コンステレーション8HAPの一部を動作することも可能である。
【0065】
通信コンステレーション8で使用される場合のHAPと衛星の主な違いは、HAPが動作する高度である。この高度は通常、衛星の高度よりも低いため、結果として、HAPは通常、地球表面に対する視野の減少によって、地球表面への投影として測定される距離が衛星より短い通信に適している。
【0066】
ただし、短距離通信の場合、HAP構成には十分な低レイテンシリンクを自由空間HAP間通信で確立できる十分な能力があり得、低高度は、アップリンクとダウンリンクに必要な距離の短縮による衛星リンクを介して達成されたリンクよりも少ない潜在的な全体的なレイテンシを表すことができる。ただし、地球や他の高高度通信システムにより近接しているため、より多くの干渉源を考慮することが潜在的に必要である。
【0067】
高度の低下の結果として、HAPの仰角は衛星の仰角よりも小さくなる可能性があり、例えば、特定の送信機または受信機地上局6、7のカバレッジを最大化する地上局に比べて2°~3°ほど小さくなる場合がある。さらに、HAPの位置は、衛星の軌道と比較して比較的静的であり、最適化アルゴリズムの基礎として使用されるジオメトリを安定させる。RFリンクまたは光(レーザー)リンクの何れか、または組み合わせを使用できる。
【0068】
したがって、HAPと衛星の両方に関連する利点があり、いくつかの実施形態では、HAPと衛星の両方を使用するハイブリッド通信コンステレーションを使用することが可能であることが理解されよう。この構成は、高高度衛星へのブリッジとしてHAPを使用することにより、アップリンクおよびダウンリンクステージを容易にすることができるが、さらなる実施形態では、送信機PoP4の処理モジュール2は、利用可能な、または必要な送信距離に応じて、送信ルート上のHAPまたは衛星から選択できることが理解されるであろう。
【0069】
例えば、使用される通信コンステレーション8には、関連するコストとコンステレーションの確立に関連する複雑さのために、比較的少数の衛星と比較的多数のHAPがあり得、HAPがない場合には、例えば、送信機地上局6範囲内に衛星が入るのを待つことに関連するいくつかの状況で遅延が発生する可能性がある。この状況は、通信コンステレーション8に十分な衛星がある場合は軽減できるが、地球上の特定の送信機地上局6の位置より上のエリアを含むサービスエリアを有するように制御され得、その後、信号をより高い軌道に中継するHAPを使用してこの状況を緩和することもできる。高度な軌道に乗ると、衛星リンクを長距離送信に使用できる。
【0070】
本発明の実施形態で使用するためのHAPベースの通信コンステレーション8は、3つのタイプのHAPペイロードを備え、2つのアンテナを備えたポイントツーポイントペイロード、ベントパイプアーキテクチャに従って動作するHAP間リンク、航空機間ペイロード(衛星間リンクに類似)、および航空機と地上間のリンクである。ペイロードは、地上ベースのネットワーク管理モジュール11への接続を介してステーションの維持を実行する。
【0071】
一実装例では、上記の3つのタイプの各々のHAPは、ニューヨーク市とシカゴ間の接続を維持しながら、昼夜を自律して飛行するように構成される。2つの都市間の測地線の長さが1132kmであるのに対し、総経路の長さの例は1158kmである。測地線経路の長さからの26kmの偏差は、衛星のコンステレーションで維持できるものよりも潜在的に小さくなる。
【0072】
HAPは、送信機と受信機のPoP4、5とそれらのそれぞれの地上局6、7の間の地上リンクを置き換えるためにも使用できる。これにより、優れた柔軟性を実現でき、マイクロ波タワーのコストや複雑さを潜在的に回避する。HAPの位置はネットワーク管理モジュール11で制御できるため、HAPを使用して、必要に応じて1つまたは複数のHAPを移動することでネットワークを迅速に拡張し、例えばスケジュールされた通信を確実に提供できる。地上マイクロ波タワーを避けることは、信号がより短い経路長で地形の上に送信される可能性があるため、信号が複雑な地形に送信される場合に特に有利である。これらの実装例では、送信機および受信機のPoP4、5は、HAPとの間で直接送受信できる局所の送信機および受信機地上局6、7を備えてもよい。
【0073】
要約すると、HAPベースのシステムは、短距離の全衛星ソリューションよりも安価であり、容易にアップグレードもできる。対照的に、衛星は、より低いメンテナンスおよび運用コストを必要とする。どちらのシステムでも、必要に応じて接続を迅速(数分から数日)に確立できるが、従来のファイバ/マイクロ波タワーソリューションの構築には数年かかることがある。
【0074】
図2は、上述のタイプの送信機PoP内の処理モジュールによって実行される、本発明の実施形態による信号ルーティング方法を示している。
【0075】
ステップS1において、処理モジュールは、処理モジュールに関連する送信機地上局から1つまたは複数の受信機地上局に情報を送信する要求または命令を受信する。送信される情報とその意図された送り先を含むことに加えて、要求または命令は、送信のタイミング、周波数チャネルまたは必要なサービス品質などの好ましい送信方式、必要なセキュリティレベル、および情報を送信する際に通る好ましい通信コンステレーションなどの送信の詳細を指定することもできる。要求または命令にこの情報が含まれていない場合、処理モジュールによって自動的に決定され得る。
【0076】
ステップS2において、処理モジュールは、好ましい通信コンステレーションに関連する、または事前構成された設定に基づいて管理モジュールによって選択された通信コンステレーションに関連するネットワーク管理モジュールから接続データを要求する。処理モジュールは、既知のユニフォームリソースロケーターにアクセスすることに基づいて、ネットワーク管理モジュールと通信する。要求された接続データには、1つまたは複数の時点での通信コンステレーション内のアセット間で利用可能な接続を定義する情報が含まれ、処理モジュールによってネットワーク管理モジュールからダウンロードされる。
【0077】
ステップS3では、処理モジュールは、送信機地上局からの信号の送信のための通信コンステレーションを通る最適ルートを表す通信コンステレーション内のアセットのシーケンスを決定する。最適ルートは、上記に基づいて、また実行される特定の最適化に応じて決定されてよく、ステップS2で受信できる次の情報タイプ、すなわち、固定された時点での通信コンステレーション内のアセットの位置、通信コンステレーション内のアセットの推定される動き、気象情報および/または干渉情報を含む送信特性のうちの1つまたは複数を、ステップS1で受信した情報に加えて使用する。
【0078】
ステップS4では、最適化プロセスが完了すると、処理モジュールは、ステップS1で受信した送信の詳細に基づいて、1つまたは複数の受信機への要求された情報の送信を開始する。開始は、処理モジュールによって決定された送信フォーマットに処理された、要求された情報を含む適切な信号の送信、および送信機地上局がS3で特定された最適ルート上の複数のアセットの決定されたシーケンスの最初のアセットに信号を送信するために制御される送信機地上局への送信を含む。ステップS4では、受信機にも接続の詳細が送信されるため、関連する信号を受信および抽出する準備ができる。
【0079】
使用される送信プロトコルの要件に応じて、処理モジュールが受信機から確認応答メッセージを受信することで、送信の成功(レイテンシ測定を含む)を確認できる。確認応答は、最初の信号と同じルートを介して、または代替の低優先度ルートを介して送信され得る。確認応答成功の決定に応答して、または所定の期間の経過後に送信に成功したという仮定に応答して、処理モジュールは、さらなる送信がスケジュールされている場合、ステップS1、S2またはS3の何れかに戻る。さらなるスケジューリングは、将来のある時点で行われる新しい信号送信を表してもよく、または送信される元の情報に関連するデータを表してもよく、これは連続ストリームではなく一定の間隔で送信される。さらなる送信がスケジュールされていない場合、プロセスは終了する(S5-いいえ)。さらなる送信がスケジュールされているかどうかに関する決定は、ステップS1で受信された情報に基づいて、ステップS5で実行される。ステップS5(S5-はい)の肯定的な決定に続いて利用可能な選択肢は、点線で示されている。
【0080】
ステップS1に戻るために、処理モジュールは単一の送信動作を完了し、信号送信のためのさらなる命令を待っている。
【0081】
ステップS4からステップS2へ戻る場合、処理モジュールは、スケジュールされたグループに対する送信の命令を既に受信しており、最適ルートの決定の更新を実行して、例えばレイテンシ、コンステレーションの構成など変動を許容する。この決定は、ネットワーク管理モジュールから新たに要求された情報に対して実行される。
【0082】
ステップS4からステップS3に戻る場合、処理モジュールは、最適ルートの決定の更新を実行しているが、ネットワーク管理モジュールからの新しい接続性情報にではなく、ステップS2で以前に受信した情報に基づいている。このような情報は、コンステレーション内のアセットの動きの推定を表す場合がある。
【0083】
いくつかの実施形態では、ステップS3とS4の間、またはステップS3とS4の何れかの一部として追加のプロセスが行われ得、処理モジュールは最適ルートに関する情報をネットワーク管理モジュールに提供する。そのような情報には、重み付け情報、特定のスケジュールに従って通信コンステレーション内の再生式のアセットに適用される制御または切り替え情報、または多重化方式などの送信詳細に関連する受信機局への転送情報の1つまたは複数が含まれるが、これらの実施形態の修正では、受信機局に提供される情報は、ネットワーク管理モジュールを通過することなくプロセッサから提供されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、処理モジュールは、
図2に示される方法の複数のインスタンスを同時に実行するように動作可能である。例えば、ステップS4またはS5が実行されている間にステップS1、S2またはS3の何れかのステップを実行することが可能であるため、以前の信号送信が行われている間に新しいリンクを構成することができる。
【0085】
実行される特定のルーティングアルゴリズムは、予想される通信距離、信号が送信される通信コンステレーションの性質、環境条件、競合する通信コンステレーションの存在、送信される信号の数、受信機の送り先の数、および必要な最適化パラメータを含む複数の要因に依存し、ならびに本発明の実施形態は、それに応じて動作するように適合させることができることが理解されよう。上述の実施形態の互換性のある特徴を組み合わせて、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に入る構成および動作方法に到達することができる。