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特許7184247フォトフェレーシスのための紫外光照射方法、フォトフェレーシス用マイクロデバイス、および、フォトフェレーシス用紫外光照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】フォトフェレーシスのための紫外光照射方法、フォトフェレーシス用マイクロデバイス、および、フォトフェレーシス用紫外光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61M1/36 171
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018078869
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019181054
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【氏名又は名称】大井 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】森田 明理
(72)【発明者】
【氏名】益田 秀之
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
(72)【発明者】
【氏名】影林 由郎
(72)【発明者】
【氏名】浜島 健爾
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-137784(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114720(WO,A1)
【文献】特開2004-202235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に流通路を備え、前記流通路内にフォトフェレーシス用液体試料が導入され、前記流通路内に導入された前記フォトフェレーシス用液体試料に対して前記壁部を透過して紫外光が照射されるフォトフェレーシス用マイクロデバイスであって、
前記流通路における、前記紫外光の照射方向の長さが70μm以上500μm以下であり、
前記フォトフェレーシス用マイクロデバイスが、円柱状の紫外光透過性を有するロッド体に、当該ロッド体の長手方向に伸びる貫通孔よりなる流通路が、複数、互いに独立して設けられたものよりなり、
前記流通路が幅広のスリットよりなり、互いに独立した2つの前記流通路が互いにスリットが伸びる面方向が互いに平行となるよう設けられたものであることを特徴とするフォトフェレーシス用マイクロデバイス。
【請求項2】
前記フォトフェレーシス用液体試料が血液であり、
前記壁部が、280nm以上320nm以下の波長域の光を含む紫外光を透過するものであることを特徴とする請求項1に記載のフォトフェレーシス用マイクロデバイス。
【請求項3】
前記流通路の長さが少なくとも50mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトフェレーシス用マイクロデバイス。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載のフォトフェレーシス用マイクロデバイスと、
当該フォトフェレーシス用マイクロデバイスの外部から、当該フォトフェレーシス用マイクロデバイスの前記壁部を透過して前記流通路に対して紫外光を照射する光源と、を備えることを特徴とするフォトフェレーシス用紫外光照射装置。
【請求項5】
前記光源が、280nm以上320nm以下の波長域の光を含む紫外光を放射するものであることを特徴とする請求項4に記載のフォトフェレーシス用紫外光照射装置。
【請求項6】
前記光源は、前記紫外光が前記流通路における前記フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と異なる方向に照射されるよう配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のフォトフェレーシス用紫外光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトフェレーシス用マイクロデバイスおよび当該マイクロデバイスを備える紫外光照射装置、並びに、当該紫外光照射装置を用いたフォトフェレーシスのための紫外光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体が持つ免疫は、人体を細菌・ウイルス、癌、寄生虫等の外敵(寄生体)から防御する役割を担っており、免疫は人間が生きていく上で不可欠な機構であると言える。しかしながら、一方で免疫反応は、アトピー性皮膚炎や乾癬等の皮膚病、関節リュウマチや全身性エリテマトーデス等の膠原病等の自己免疫疾患を引き起こす原因ともなる。自己免疫疾患とは、本来は細菌・ウイルスや腫瘍などの自己と異なる異物を認識し排除するための免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し、攻撃を加えることで発症する症状の総称である。
【0003】
昨今では、かかる免疫反応を適切に制御し、少ない副作用の下で過剰な免疫反応を抑制することが、現代の医学における最重要課題の一つとして挙げられている。臓器移植の分野においても、免疫反応の制御が最重要の課題であることはよく知られていることである。
従来、過剰免疫の抑制には、免疫抑制剤を投与する方法が一般的に利用されていたが、免疫抑制剤の投与による副作用が問題視されていた。
【0004】
このような背景の下、近年、免疫抑制の分野においてフォトフェレーシス(体外循環式光化学療法)が注目を集めている。フォトフェレーシスとは、一般的には、体外に取り出した血液にソラレン(psolaren)誘導体等の感光医薬を添加し、活性化したT細胞に吸収させた後、当該血液に紫外光を照射して感光医薬を活性化させて、当該T細胞をアポトーシスさせる、あるいはダメージを与えることにより免疫寛容に誘導し、これにより、過剰な免疫反応を抑制する方法である。
フォトフェレーシスにおいては、感光医薬の添加は必ずしも必要ではなく、また、仮に感光医薬を添加してフォトフェレーシスに係る紫外光の照射処理が行われ、患者の体内に戻された血液に感光医薬が含まれている場合であっても、紫外光の照射が終了すれば当該感光医薬の活性化状態は継続されないので、免疫抑制剤の投与による免疫抑制方法と比較して患者に副作用が生じるおそれが極めて低い。このため、フォトフェレーシスは、免疫抑制剤を投与する場合と比べて副作用の少ない免疫抑制法として注目を集めている。また、欧米各国では、ステロイド等の免疫抑制剤が効かない自己免疫疾患の治療や、骨髄移植等の移植治療時の免疫抑制に対するフォトフェレーシスの臨床応用が急速に増大している。
【0005】
フォトフェレーシスを実行するに際しては、上述のように血液中の白血球の一種であるT細胞に紫外光を照射する必要がある。しかしながら、血液中にはT細胞の他に赤血球が含まれており、赤血球に含まれるヘモグロビンは紫外光に対して大きな吸光度を示す性質を有する。しかも、血液に含まれる血球中、白血球が3%程度であるのに対して赤血球は96%程度と、白血球に比して多くの赤血球が含有されている。このため、赤血球を含んだ状態の血液に対して紫外光を照射した場合、赤血球中のヘモグロビンによって照射された紫外光が吸収される結果、真に紫外光を照射したい対象であるT細胞に対して効果的に紫外光を照射できない、という問題を有する。また、T細胞を免疫寛容に誘導するために必要なエネルギー量の紫外光を当該T細胞に照射するには、光源から高強度の紫外光を照射する必要があるが、このような高強度の紫外光が血液成分に照射されることによって赤血球の溶血や血漿蛋白の変成等の悪影響が生じてしまうおそれがある、という問題もある。
【0006】
このような問題を解決するために、従来のフォトフェレーシスを実行するに際しては、患者から採取した血液に感光医薬を添加後、当該血液を遠心分離して白血球のみを取り出し、この取り出した白血球を厚さ数mm程度の平たい紫外光透過性を有する容器内に入れ、当該容器の厚み方向に当該容器を介して紫外光を照射し、その後、赤血球や血漿と再混合し、再び患者の体内に戻すという手順を経ていた。
しかしながら、このような従来のフォトフェレーシスにおいては、複雑な手順が必要となることや、患者の体力的負担の増大、医療コストの高騰等の問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、特許文献1には、遠心分離のような複雑かつ高コストの処理を要することなく行うことができるフォトフェレーシス処理方法が開示されている。具体的には、血液を、多孔質体に形成された微細な貫通孔に導入し、この状態において多孔質体の外部から紫外光を照射する方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたフォトフェレーシス処理方法は、以下のような問題点がある。例えば、多孔質体に形成された複数の貫通孔は、その貫通方向が均一ではないので、各T細胞への紫外光の照射量が均一とはならず、従ってT細胞をアポトーシスさせる効果が十分に得られない、という問題がある。また、多孔質体に形成される貫通孔の直径は、例えば白血球の直径(15μm)よりもやや大きくする目的で15~50μmに設定されているが、一般的に、多孔質体における複数の貫通孔の直径を高い精度で均一化させることは難しいので、多孔質体に血液を導入するときに当該血液が詰まってしまうか、詰まらないにしても血液の導入に長時間を要してしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4468976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、遠心分離などの煩雑な処理を行う必要がないにも関わらず、高い確度でフォトフェレーシス用液体試料に含有される被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えることにより免疫寛容に誘導することができるフォトフェレーシスのための紫外光照射方法および当該紫外光照射方法に用いるマイクロデバイス、並びに、当該マイクロデバイスを備える紫外光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスは、壁部に流通路を備え、前記流通路内にフォトフェレーシス用液体試料が導入され、前記流通路内に導入された前記フォトフェレーシス用液体試料に対して前記壁部を透過して紫外光が照射されるものであって、
前記流通路における、前記紫外光の照射方向の長さが70μm以上500μm以下であり、
前記フォトフェレーシス用マイクロデバイスが、円柱状の紫外光透過性を有するロッド体に、当該ロッド体の長手方向に伸びる貫通孔よりなる流通路が、複数、互いに独立して設けられたものよりなり、
前記流通路が幅広のスリットよりなり、互いに独立した2つの前記流通路が互いにスリットが伸びる面方向が互いに平行となるよう設けられたものであることを特徴とする
【0016】
本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスにおいては、前記フォトフェレーシス用液体試料が血液であり、
前記壁部が、280nm以上320nm以下の波長域の光を含む紫外光を透過するものであることが好ましい。
【0020】
本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置は、上記のフォトフェレーシス用マイクロデバイスと、
当該フォトフェレーシス用マイクロデバイスの外部から、当該フォトフェレーシス用マイクロデバイスの前記壁部を透過して前記流通路に対して紫外光を照射する光源と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置においては、前記光源が、280nm以上320nm以下の波長域の光を含む紫外光を放射するものである構成とすることができる。
【0022】
本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置においては、前記光源は、前記紫外光が前記流通路における前記フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と異なる方向に照射されるよう配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフォトフェレーシスのための紫外光照射方法においては、紫外光の照射方向の長さが70μm以上500μm以下に規制された流通路に被処理細胞を含有するフォトフェレーシス用液体試料が導入される。これにより、流通路におけるフォトフェレーシス用液体試料の詰まりの発生を抑制することができるので、フォトフェレーシス用液体試料への紫外光の照射を迅速に行うことができながら、フォトフェレーシス用液体試料に含有される被処理細胞に高い均一性で紫外光を照射することができる。従って、遠心分離を行う必要がないにも関わらず、高い確度でフォトフェレーシス用液体試料に含有される被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えることにより免疫寛容に誘導することができる。その結果、フォトフェレーシスにおいて、フォトフェレーシス用液体試料の遠心分離などの煩雑な処理に要する時間を大幅に短縮することができると共に、患者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置の構成の一例における要部を模式的に示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向に沿った断面図である。
図2】本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスの構成の一例を示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と垂直な方向に沿った断面図である。
図3】本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスの別の構成例を示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と垂直な方向に沿った断面図である。
図4】本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスのさらに別の構成例を示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と垂直な方向に沿った断面図である。
図5】本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスのさらに別の構成例を示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と垂直な方向に沿った断面図である。
図6】本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスのさらに別の構成例を示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向と垂直な方向に沿った断面図である。
図7】実験例1の結果を示すグラフである。
図8】実験例2に用いた実験用フォトフェレーシス装置の概略を説明する概略図である。
図9】実験例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のフォトフェレーシス用マイクロデバイスおよび紫外光照射装置、並びに、フォトフェレーシスのための紫外光照射方法の実施の形態について説明する。
【0026】
〔紫外光照射装置〕
図1は、本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置の構成の一例における要部を模式的に示す、フォトフェレーシス用液体試料の流通方向に沿った断面図である。
本発明のフォトフェレーシス用紫外光照射装置(以下、単に「紫外光照射装置」という。)は、フォトフェレーシス(体外循環式光化学療法)において行われる一連のフォトフェレーシス処理において被処理細胞を含有するフォトフェレーシス用液体試料に紫外光を照射する装置である。紫外光照射装置は、具体的には、紫外光透過性を有する壁部11、および、当該壁部11を貫通する流通路12を備えるフォトフェレーシス用マイクロデバイス(以下、単に「マイクロデバイス」という。)10と、当該マイクロデバイス10の外部から、当該マイクロデバイス10の壁部11を透過して流通路12に導入されたフォトフェレーシス用液体試料Sに対して紫外光を照射する光源20とを備えるものである。
マイクロデバイス10は、フォトフェレーシス処理毎に交換可能なディスポーザブルのものとされる。
【0027】
〔フォトフェレーシス用液体試料〕
フォトフェレーシス用液体試料Sは、紫外光を照射することによりアポトーシスさせる目標となる細胞(以下、「被処理細胞」ともいう。)を含有する細胞含有液であり、具体的には、血液、髄液、リンパ液、およびこれらを生理食塩水等で希釈した液体などが挙げられ、特に、血液成分が分離されていない血液(全血)が挙げられる。
フォトフェレーシス用液体試料が血液である場合において、被処理細胞は例えば白血球、特にT細胞とされる。
【0028】
〔マイクロデバイス〕
本発明のマイクロデバイス10は、紫外光透過性を有する壁部11、および、当該壁部11を貫通して伸びる流通路12を備える。本発明のマイクロデバイス10は、この流通路12内に被処理細胞を含むフォトフェレーシス用液体試料Sが導入され、当該流通路12内に導入されたフォトフェレーシス用液体試料Sに対して壁部11を透過して光源20からの紫外光が照射されるものである。
具体的には、マイクロデバイス10は、図2に示されるように、円柱状の細管よりなるものとすることができる。この細管の管内部が流通路12とされ、管壁がマイクロデバイス10の壁部11とされる。このマイクロデバイス10において、流通路12とは、両端にフォトフェレーシス用液体試料Sの導入口および導出口を1つずつ有し、この導入口および導出口が単一の経路で連通されたものをいう。
【0029】
そして、本発明のマイクロデバイス10においては、流通路12における、光源20からの紫外光の照射方向の長さ(以下、「照射方向長さ」ともいう。)が70μm以上500μm以下とされ、100μm以上300μm以下であることが好ましく、200μm以上300μm以下であることが特に好ましい。
流通路12の照射方向長さが500μm以下であることにより、流通路12における紫外光の照射方向の底部(図1および図2において下部)まで光源20からの紫外光を到達させることができ、従って、被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えて免疫寛容に誘導することができる効果が高い確度で得られる。また、流通路12の紫外光の照射方向長さが70μm以上であることにより、フォトフェレーシス用液体試料Sに含有される成分にかかわらず、流通路12においてフォトフェレーシス用液体試料Sの成分の詰まりなどが発生して当該フォトフェレーシス用液体試料Sの流通が阻害されることがなく、特にフォトフェレーシス用液体試料Sが血液である場合に当該血液の血球成分が流通路12に詰まることを抑止することができる。
【0030】
流通路12における紫外光の照射方向の長さ(照射方向長さ)とは、流通路12に照射される紫外光の進行方向C(図2において上下方向)に沿った長さをいう。例えば、放電ランプのように斜め光成分を含む拡散光を照射する光源を用いる場合、図2に示す紫外光の進行方向Cが照射方向である。
図2に示す細管よりなるマイクロデバイス10においては、マイクロデバイス10の照射方向長さdは、例えばマイクロデバイス10に対してフォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向(流通路12を構成する細管の伸びる方向)に垂直な方向に紫外光が照射される場合、当該マイクロデバイス10を構成する細管の内径に相当する。
【0031】
また、流通路12の幅、すなわち紫外光の照射方向(図1のY方向))と、フォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向(図1のX方向)とにそれぞれ垂直な方向(図1における紙面と垂直な方向(Z方向))の幅(以下、「流通路幅」ともいう。)は、例えば70~500μmとされる。
また、流通路12における、紫外光が照射される領域(以下、「光照射領域」ともいう。)Rのフォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向の長さ(以下、「照射長さ」ともいう。)は、紫外光の種類や強度、当該流通路12におけるフォトフェレーシス用液体試料Sの流速などに基づいて適宜に決定することができる。
【0032】
壁部11の厚み、すなわち当該壁部11における紫外光の照射方向の厚みtは、当該壁部11を構成する材質、特に紫外光の透過率によっても異なるが、例えば1~5mm程度とされることが好ましい。
壁部11の厚みが過小である場合は、マイクロデバイス10が耐久性に劣るものとなるおそれがある。また、壁部11の厚みが過大である場合は、被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えることにより免疫寛容に誘導する効果が所期の確度で得られるだけのエネルギー量の紫外光を流通路12の底部まで到達させることができないおそれがある。
【0033】
このマイクロデバイス10を構成する細管は、例えば石英ガラス、アルカリガラス、硼珪酸ガラスなどのガラス;シリコーン樹脂、シクロオレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP)やシクロオレフィンコポリマー(COC)など)、アクリル樹脂などの合成樹脂などよりなるものとすることができる。
【0034】
〔光源〕
本発明の紫外光照射装置に備えられる光源20は、紫外光を放射するものであり、特に280nm以上320nm以下の波長域の光を含む紫外光を放射するものであることが好ましい。
280nm以上320nm以下の波長域の光は、いわゆるUVBと呼ばれる中波長紫外域の光である。このようなUVBをフォトフェレーシスに用いることにより、ソラレン誘導体等の感光医薬を用いなくとも、フォトフェレーシス用液体試料SにUVBを照射することのみで被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えて免疫寛容に誘導することができる。
なお、フォトフェレーシスにいわゆるUVAと呼ばれる長波長紫外域(320~400nm)の光を用いる場合には、UVAはUVBよりも長波長の光であるためにそのエネルギーが小さいので、被処理細胞をアポトーシスさせるためには、ソラレン誘導体等の感光医薬をフォトフェレーシス用液体試料Sに添加した状態でUVAを照射することが必要となる。
【0035】
このようなUVBを放射する光源20としては、例えばLED素子、XeClエキシマ放電ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、水銀ランプなどを用いることができる。
光源20には、LED素子やランプから放射される光のうち、280nm以上320nm以下の波長域のUVB以外の波長域の光を遮断する光学フィルタが備えられていてもよい。
【0036】
光源20としては、マイクロデバイス10における流通路12の全流通路幅にわたって、かつ、所期の長さ(光照射領域Rの照射長さ)にわたって紫外光を照射することができる形状の光を照射することができるものを用いることができる。具体的には、例えば1つの流通路12を有する細管からなるマイクロデバイス10に対しては、光源20として棒状光源を用いることが好ましい。また、後述するように複数の流通路が互いに平行に伸びるよう面状に並べられて配置されたマイクロデバイスにおいては、光源として面状光源を用いることが好ましい。
【0037】
光源20は、当該光源20から放射される紫外光がマイクロデバイス10の流通路12におけるフォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向と異なる方向に照射されるよう配置されることが好ましい。具体的には、フォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向に略垂直となる方向に照射されることが好ましい。
【0038】
〔紫外光照射方法〕
本発明のフォトフェレーシスのための紫外光照射方法は、フォトフェレーシス(体外循環式光化学療法)において行われる一連のフォトフェレーシス処理における被処理細胞に紫外光を照射する方法であって、マイクロデバイス10の流通路12内にフォトフェレーシス用液体試料Sを導入する工程と、この流通路12に導入されたフォトフェレーシス用液体試料Sに対して壁部11を透過して光源20から紫外光を照射する工程とを含む。
本発明に係る紫外光照射方法は、具体的には、上記のような紫外光照射装置を用いて以下のように行われる。以下においては、フォトフェレーシス用液体試料Sを血液として説明する。
【0039】
まず、患者から採取された血液を、フォトフェレーシス用液体試料Sとして例えば輸液ポンプなどによってマイクロデバイス10の流通路12に当該流通路12の一端の導入口から導入する。流通路12に導入された血液は、流通路12内を一定の流速で一方向(図1において右方向)に流通される。そして、光源20からの紫外光が、マイクロデバイス10の壁部11を透過して流通路12における光照射領域R内を流通される血液に照射される。
流通路12においては、血液中に含まれる被処理細胞(白血球S1)が、赤血球S2と混ざり合いながら流通される。流通路12においては、紫外光の照射方向の長さが白血球よりも若干大きい70~500μmの範囲とされているので、流通路12の長手方向(流通方向)に沿って並列に白血球が整列されやすい環境が創出される。従って、マイクロデバイス10の壁部11を透過した紫外光の一部は、流通路12内を流通される血液中の赤血球S2によって吸収されることなく被処理細胞(白血球S1)に照射される。被処理細胞(白血球S1)は、流通路12における光照射領域の始端から終端に至るまでの間に、光源20からの紫外光を受ける。そして、白血球S1に紫外光が照射されることによって、当該白血球S1がアポトーシスする、またはダメージを受けて免疫寛容が誘導される。紫外光が照射された血液は、その後さらに流通路12内を流動後、導出口から排出され、再度患者の体内に戻される。
【0040】
フォトフェレーシス用液体試料Sの流通路12における流速は、フォトフェレーシス用液体試料Sの種類、光源20の種類や放射される紫外光の波長や照射量、流通路12における流通路幅や光照射領域の長さなどによっても異なるが、被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えて免疫寛容に誘導する効果が得られるだけのエネルギー量の紫外光(積算光量)が得られる速度であればよい。
【0041】
以上のような紫外光照射方法においては、紫外光の照射方向長さが70μm以上500μm以下に規制された流通路12に被処理細胞を含有するフォトフェレーシス用液体試料Sが導入される。これにより、流通路12におけるフォトフェレーシス用液体試料Sの詰まりの発生を抑制することができるので、フォトフェレーシス用液体試料Sへの紫外光の照射を迅速に行うことができ、しかも、フォトフェレーシス用液体試料Sに被処理細胞と共に被処理細胞以外の成分が含有されて流通路に流通されていても、フォトフェレーシス用液体試料Sに含有される被処理細胞に高い均一性で紫外光を照射することができる。従って、感光医薬を用いず、かつ、遠心分離を行う必要がないにも関わらず、高い確度でフォトフェレーシス用液体試料Sに含有される被処理細胞をアポトーシスさせる、またはダメージを与えることにより免疫寛容に誘導することができる。その結果、フォトフェレーシスにおいて、フォトフェレーシス用液体試料Sの遠心分離などの煩雑な処理に要する時間を大幅に短縮することができると共に、患者の負担を大幅に軽減することができる。
【0042】
以上、本発明のフォトフェレーシスのための紫外光照射方法、マイクロデバイスおよび紫外光照射装置の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、マイクロデバイスは、流通路が互いに独立して複数備えられたものであってもよい。
具体的には、図3に示されるように、マイクロデバイス30は、円柱状の紫外光透過性のロッド体31に、当該ロッド体31の長手方向に伸びる貫通孔よりなる流通路32が、複数、互いに独立して平行に設けられたものとすることができる。このロッド体31においては、当該ロッド体31の中心軸を含む面と略平行に離間した仮想面A上に、複数の流通路32が平行かつ等間隔に並んで配置されると共に、当該仮想面Aと、ロッド体31の中心軸を含む面を挟んで面対称となる仮想面B上に、複数の流通路32が平行かつ等間隔に並んで配置されている。
このマイクロデバイス30を備える紫外光照射装置においては、全ての流通路32について、他の流通路32を介さないで光源からの紫外光が照射されるよう、光源が配置される。具体的には、このマイクロデバイス30に対しては、仮想面A側(図3において上側)と、仮想面B側(図3において下側)とから、それぞれロッド体31を透過して紫外光を照射することが好ましい。さらに、紫外光を照射するための光源は、流通路32の配置幅に対応した幅を有する面状光源であることが好ましい。
このマイクロデバイス30においては、全ての流通路32の照射方向長さが、70μm以上500μm以下とされていることが好ましい。
【0043】
また、図4に示されるように、マイクロデバイス40は、円柱状の紫外光透過性のロッド体41に、当該ロッド体41を貫通して長手方向に伸びる幅広のスリットよりなる流通路42が2つ、互いに独立してスリットが伸びる面方向が互いに平行となるよう設けられたものとすることができる。このロッド体41においては、当該ロッド体41の中心軸を含む面を挟む状態に2つの流通路42が対称に配置されている。
このマイクロデバイス40を備える紫外光照射装置においては、2つの流通路42について、互いに他の流通路42を介さないで光源からの紫外光が照射されるよう、光源が配置される。具体的には、このマイクロデバイス40に対しては、ロッド体41の中心軸を含む面の上側(図4において上側)と、下側(図4において下側)とから、それぞれロッド体41を透過して紫外光を照射することが好ましい。さらに、紫外光を照射するための光源は、流通路42を構成するスリットの幅(図4において左右方向の幅)に対応した幅を有する面状光源であることが好ましい。
このマイクロデバイス40においては、2つの流通路42の照射方向長さが、それぞれ70μm以上500μm以下とされていることが好ましい。
【0044】
また、図5に示されるように、マイクロデバイス50は、円柱状の紫外光透過性を有するロッド体に、当該ロッド体の長手方向に伸びる貫通孔よりなる流通路が、複数、互いに独立して設けられたものとすることができる。このマイクロデバイス50のロッド体51には、ロッド体51を貫通して当該ロッド体51の長手方向に伸びる複数の空孔よりなる流通路52が、ロッド体51の中心軸Pを取り囲んで規則的に配置される状態に、互いに独立して形成されている。ロッド体51における流通路52は、中心軸Pから等距離であり、かつ、隣接する流通路52が互いに等間隔となるよう並んで配置されている。
このマイクロデバイス50を備える紫外光照射装置においては、全ての流通路52について、他の流通路52を介さないで光源からの紫外光が照射されるよう、光源が配置される。このマイクロデバイス50に対しては、異なる三方向からそれぞれロッド体51を透過して紫外光を照射することが好ましい。具体的には、3つの光源(図示せず)が、その光軸がいずれもマイクロデバイス50の流通路52におけるフォトフェレーシス用液体試料Sの流通方向(図5において紙面と垂直な方向)に略垂直となり、かつ、互いに120度の交差角で中心軸Pにおいて交差するよう、配置される。
このマイクロデバイス50においては、全ての流通路52の照射方向長さが、70μm以上500μm以下とされていることが好ましい。
【0045】
さらに、マイクロデバイスは、1つの流通路を有する細管が複数、組み合わせられて構成されたものであってもよい。
【0046】
以上のような複数の流通路を有するマイクロデバイスによれば、合計の流通路幅を増大させることができるために、フォトフェレーシス処理の速度を向上させることができる。
【0047】
また例えば、マイクロデバイスは、細管やロッド体などの円柱状のものに限定されず、図6に示されるように、ガラスまたは合成樹脂などの紫外光透過性を有する小さなマイクロチップ基板61A上に、微細加工技術によってマイクロ流路が形成された平板状のマイクロチップ60よりなるものであってもよい。
具体的には、マイクロチップ60は、一対のマイクロチップ基板61A,61Bよりなり、一方のマイクロチップ基板61Aの表面にマイクロ流路(流路形成部分)が形成された状態において当該一対のマイクロチップ基板61A,61Bが対向して接合されてマイクロ流路が閉塞されることにより、内部にフォトフェレーシス用液体試料Sが流れる流通路62が形成されたものとされる。このマイクロチップ60においては、マイクロ流路が形成された一方のマイクロチップ基板61Aがポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンゴムよりなり、他方のマイクロチップ基板61Bが石英ガラスよりなる。
マイクロチップ60において、流通路62は、1つまたは複数形成される。図6においては、6本の流通路62が形成されている。
このマイクロチップ60を備える紫外光照射装置においては、全ての流通路62について、他の流通路62を介さないで光源からの紫外光が照射されるよう、光源が配置される。具体的には、このマイクロチップ60に対しては、紫外光透過性の良好な材料による基板側から、すなわち他方のマイクロチップ基板61B側から当該他方のマイクロチップ基板61Bを透過して紫外光を照射することが好ましい。さらに、紫外光を照射するための光源は、流通路62の配置幅に対応した幅を有する面状光源であることが好ましい。
このマイクロチップ60においては、全ての流通路62の照射方向長さが、70μm以上500μm以下とされていることが好ましい。
【0048】
また、本発明のフォトフェレーシスのための紫外光照射方法は、処理速度の向上性の観点からフロー照射式すなわち連続的にフォトフェレーシス用液体試料をマイクロデバイスの流通路に循環させながら行うことが好ましいが、バッチ照射式で行うこともできる。
【0049】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0050】
〔実験例1〕
フォトフェレーシスの主なメカニズムとして、紫外光の照射によって、活性化しているT細胞がアポトーシスに陥り免疫抑制が働くことが挙げられる。以下において、本発明に基づく方法によってT細胞のアポトーシス誘導が可能か確認した。
未処理のJurkat細胞:ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(理研セルバンク製)に対して、細胞増殖アッセイ用試薬「CellTrace Far Red Cell Proliferation Kit」(Thermo Fisher Scientific 社製)を添加し、37℃5%CO2 の条件下にて10分間培養した後、培養液を加えて37℃5%CO2 の条件下にて5分間培養した。その後、遠心分離を行って上清を除去することによりラベル済みJurkat細胞を得た。得られたラベル済みJurkat細胞を、1×107 cells/mLになるようPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈してJurkat細胞懸濁液を調製した。Jurkat細胞懸濁液:血液が容量比で0%(100:0)、5%(95:5)、10%(90:10)、20%(80:20)、50%(50:50)、70%(30:70)濃度となるようそれぞれ混合液〔1〕~〔6〕を調製した。
各混合液〔1〕~〔6〕について、長さ50mmの石英細管に充填し、分光照射器にて紫外光を照射した。照射する紫外光は、照射波長が290nmのものであり、照射量は10mJ/cm2 (放射照度:0.16mW/cm2 、照射時間:63秒間)である。石英細管の内径は200μm、300μm、600μm、900μmのものをそれぞれ使用した。石英細管の外径はすべて3mmである。
紫外光の照射後、混合液〔1〕~〔6〕を回収し、培養液を加えて37℃5%CO2 の条件下にて24時間培養した後、FACS(fluorescence activated cell sorting)解析により、ラベル済みJurkat細胞のAnnexinV陽性すなわちアポトーシスの誘導比率を調べた。結果を図7に示す。
【0051】
実験例1の結果から、石英細管の径が細いほどアポトーシスの誘導比率すなわちラベル済みJurkat細胞をアポトーシスさせる効果が高く得られることが確認された。図7のグラフ中の値はN=3の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。
【0052】
〔実験例2〕
未処理のJurkat細胞:ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株(理研セルバンク製)に対して、細胞増殖アッセイ用試薬「CellTrace Far Red Cell Proliferation Kit」(Thermo Fisher Scientific 社製)を添加し、37℃5%CO2 の条件下にて10分間培養した後、培養液を加えて37℃5%CO2 の条件下にて5分間培養した。その後、遠心分離を行って上清を除去することによりラベル済みJurkat細胞を得た。得られたラベル済みJurkat細胞を、1×107 cells/mLになるようPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈してJurkat細胞懸濁液を調製した。Jurkat細胞懸濁液:血液が容量比で20%(80:20)濃度となるよう混合液〔A〕を調製した。
一方、図8に示す実験用フォトフェレーシス装置を作製した。具体的には、長さ50mm、外径3mm、内径300μmである石英細管70の両端に各々シリコンチューブよりなる輸液チューブ73,74を取り付け、一方の輸液チューブ73にはペリスタリックポンプよりなる輸送ポンプ77を介在させた。石英細管70の上部には、当該石英細管70に紫外光が照射される状態にLED照射器80を設けた。
この実験用フォトフェレーシス装置を用いて、混合液〔A〕を石英細管に流通させながらLED照射器80にて照射波長が290nmの紫外光を照射する紫外光照射処理を行った。具体的には、供給用サンプルチューブ78に入れられた混合液〔A〕(図8において符号SAで示す。)を輸送ポンプ77によって輸液チューブ73を介して石英細管70に輸送し、当該石英細管70、および他方の輸液チューブ74を流通させながら回収用サンプルチューブ79において回収した。混合液〔A〕の流速は、石英細管の通過時間すなわち紫外光の照射時間が5.6秒間となる流速に設定した。
この紫外光照射処理を、紫外光の照射量が0mJ/cm2 、6mJ/cm2 、11mJ/cm2 、20mJ/cm2 、35mJ/cm2 、71mJ/cm2 となる条件でそれぞれ行った。紫外光の照射量は、表1に従って電流制御により放射照度を変化させることによって変更した。
紫外光の照射後、混合液〔A〕を回収し、培養液を加えて37℃5%CO2 の条件下にて24時間培養した後、FACS(fluorescence activated cell sorting)解析により、ラベル済みJurkat細胞のAnnexinV陽性すなわちアポトーシスの誘導比率を調べた。結果を図9に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実験例2の結果から、フロー照射式すなわち連続的に混合液〔A〕を石英細管に流通させながら紫外光を照射する方式においてもラベル済みJurkat細胞をアポトーシスさせる効果が得られ、紫外光の照射量に依存的にアポトーシス誘導比率が増加することが確認された。図9のグラフ中の値はN=3の平均値であり、エラーバーは標準偏差を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 マイクロデバイス
11 壁部
12 流通路
20 光源
30 マイクロデバイス
31 ロッド体
32 流通路
40 マイクロデバイス
41 ロッド体
42 流通路
50 マイクロデバイス
51 ロッド体
52 流通路
60 マイクロチップ
61A,61B マイクロチップ基板
62 流通路
70 石英細管
73,74 輸液チューブ
77 輸送ポンプ
78 供給用サンプルチューブ
79 回収用サンプルチューブ
80 LED照射器
C 進行方向
P 中心軸
R 光照射領域
S フォトフェレーシス用液体試料
S1 白血球
S2 赤血球



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9