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特許7184260マイコバクテリウム・アビウム複合感染症に対する治療活性を有する新規化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】マイコバクテリウム・アビウム複合感染症に対する治療活性を有する新規化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/04 20060101AFI20221129BHJP
   C12P 17/16 20060101ALI20221129BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221129BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C07H17/04 CSP
C12P17/16
C12N1/20 A
A61K31/7068
A61P31/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019539601
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2018032048
(87)【国際公開番号】W WO2019044941
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017168404
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02510
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】509036274
【氏名又は名称】オーピーバイオファクトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】供田 洋
(72)【発明者】
【氏名】小山 信裕
(72)【発明者】
【氏名】金本 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 絢子
(72)【発明者】
【氏名】小曽根 郁子
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03308117(US,A)
【文献】国際公開第2013/144894(WO,A1)
【文献】立岡末雄他, 抗生物質の研究(第5報*)抗結核性物質 Allomycin の抽出 法と理化学的性質およびAmicetin との同定, 薬学雑誌, 1955, Vol,75, pp.1206 -1208
【文献】LICHTENTHALER, F. W. et al., Structural basis for inhibition of prot ein synthesis by the aminoacyl-aminohexosyl-cytosine group of antibiotic s, FEBS LETTERS, 1974, Vol.38, No.3, pp.237-242
【文献】立岡末雄他, 抗生物質の研究(第7報*)Amicetin と抗カビ,抗原虫物質との拮抗性について, 薬学雑誌, 1955, Vol,75, pp.1276-1281
【文献】BU, Ying-Yue et al., Anti-mycobacterial nucleoside antibiotics from a marine-derived Streptomyces sp. TPU1236A, marine drugs, 2014, Vol.12, pp.6102-6112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/00-99/00
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
A61K 31/33-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1は、2-メチルプロパン-1-エン-イル、4-(2-メチルプロピオニルアミノ)-フェニル、3-メチルペンタン-1-エン-イル、4-(4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)-フェニル、1-メチルプロパン-1-エン-イル、1-メチルプロピル、又は3-メチルブタン-1-エン-イルである。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
R1が、2-メチルプロパン-1-エン-イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)に対する治療剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
【請求項7】
マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)の予防又は治療に使用するための、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)の予防又は治療に使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(以下、「MAC症」とも記載する)に対する治療活性を有する新規化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MAC症は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)によって引き起こされる複合感染症である。マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレは、抗酸菌に属するが結核菌ではない、非結核性抗酸菌に属する。マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレは、土壌及び水等の周辺環境から宿主動物に伝播する。これらの細菌は、宿主動物の体内では、主に肺に感染して、呼吸困難のような、結核に類似する症状を引き起こすことが知られている。
【0003】
非結核性抗酸菌によって引き起こされる感染症(以下、「非結核性抗酸菌症」とも記載する)の発症者数は世界的に増加しているが、中でも、MAC症の発症者数は急増している。日本における2014年の年間発症者数は、人口10万人に対して、結核の発症者数は10.2人であったのに対し、MAC症の発症者数は14.7人であった。
【0004】
現在、MAC症に対する治療用の薬剤は限られている。これらの薬剤を用いる治療は、通常は数年間に亘る。また、MAC症を完治し得る薬剤は、現在のところ見出されていない。それ故、MAC症を治療し得る薬剤の開発が求められてきた。
【0005】
例えば、特許文献1は、ステフィスバーゲンシマイシン(steffisburgensimycin)を含む組成物を記載する。当該文献は、ステフィスバーゲンシマイシンが、マイコバクテリウム・アビウムを含む様々なグラム陽性細菌の生育を阻害し得ると記載する。
【0006】
特許文献2は、感染症の治療の必要のある患者に、特定の構造を有する化合物を含む製剤を有効量、注射又は輸液により投与することを有し、前記化合物および等張剤を水に溶解する、感染症の治療方法を記載する。当該文献は、前記感染症として、MAC症を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3,309,273号明細書
【文献】特表2010-535797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、特許文献1及び2のように、MAC症を治療し得ることが教示される薬剤が知られている。しかしながら、これらの文献では、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対する抗菌活性は具体的に示されていない。
【0009】
マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレは、グラム陽性細菌に分類される。しかしながら、グラム陽性細菌に対して抗菌活性を示す薬剤であっても、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対しては、単独で実質的に高い抗菌活性を示さない場合が多い。このため、MAC症の治療においては、長期間に亘って複数の薬剤が併用投与される。このような投与形態は、患者にとって大きな負担となり得る。
【0010】
また、MAC症のような細菌による感染症においては、薬剤耐性菌の出現が問題となり得る。それ故、より有効性の高い薬剤を開発するために、原因菌に対する抗菌活性を有し、且つ公知の薬剤とは異なる骨格構造を有する新規化合物が求められていた。
【0011】
それ故、本発明は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して抗菌活性を有し、且つ公知のMAC症の治療薬剤とは異なる骨格構造を有する新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、新規放線菌が、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して抗菌活性を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中の化合物が、公知のMAC症の治療薬剤とは異なる骨格構造を有する新規化合物であることを見出した。また、本発明者らは、当該菌を用いる培養的手段によって前記化合物を製造できることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 式(I):
【化1】
[式中、
R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシルオキシ、置換若しくは非置換のビフェニル、置換若しくは非置換のテルフェニル、置換若しくは非置換のナフチル、置換若しくは非置換のアントラセニル、又は
【化2】
であり、
*は、残部との結合位置を示し、
R2、R3、R5及びR6は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R4は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルである。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(2) R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、又は
【化3】
である、前記実施形態(1)に記載の化合物。
(3) R1が、2-メチルプロパン-1-エン-イルである、前記実施形態(1)に記載の化合物。
(4) 前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
(5) 前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物。
(6) 前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)に対する治療剤。
(7) 前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
(8) マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(7)に記載の医薬。
(9) 前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(10) マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(9)に記載の医薬組成物。
(11) 1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療方法。
(12) 前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害が、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)及び結核からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害である、前記実施形態(11)に記載の方法。
(13) 1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物。
(14) 前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害が、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)及び結核からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害である、前記実施形態(13)に記載の化合物。
(15) 1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用。
(16) 前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害が、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)複合感染症(MAC症)及び結核からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害である、前記実施形態(15)に記載の使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して抗菌活性を有し、且つ公知のMAC症の治療薬剤とは異なる骨格構造を有する新規化合物を提供することが可能となる。
【0015】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【0016】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2017-168404号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<1. 新規化合物>
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C1~C5アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても5個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、「C1~C6アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても6個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキルは、限定するものではないが、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル及びn-ペンチル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C5アルキル、並びにこれらに加えてn-ヘキシル及びメチルペンチル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C6アルキルを挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、1-メチルエテニル(イソプロペニル)、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び1-ペンテニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C5アルケニル、並びにこれらに加えて1-ヘキセニル及びメチルペンテニル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C6アルケニルを挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル及び1-ペンチニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C5アルキニル、並びにこれらに加えて1-ヘキシニル及びメチルペンチニル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C6アルキニルを挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、脂環式アルキルを意味する。例えば、「C3~C6シクロアルキル」は、少なくとも3個且つ多くても6個の炭素原子を含む、環式の炭化水素基を意味する。好適なシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC3~C6シクロアルキルを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「シクロアルケニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルケニルは、限定するものではないが、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニル等のC4~C6シクロアルケニルを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「シクロアルキニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルキニルは、限定するものではないが、例えばシクロブチニル、シクロペンチニル及びシクロヘキシニル等のC4~C6シクロアルキニルを挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル等の3~6員のヘテロシクロアルキルを挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「シクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロヘキシルメチル及びシクロヘキセニルメチル等のC7~C11シクロアルキルアルキルを挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキルを挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「アルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルに置換された基を意味する。好適なアルコキシは、限定するものではないが、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びペントキシ等のC1~C5アルコキシを挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「シクロアルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシは、限定するものではないが、例えばシクロプロポキシ、シクロブトキシ及びシクロペントキシ等のC3~C6シクロアルコキシを挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「ヘテロシクロアルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルコキシを挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「アリール」は、芳香環基を意味する。好適なアリールは、限定するものではないが、例えばフェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル及びアントラセニル等のC6~C18アリールを挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、ビフェニルメチル、テルフェニルメチル及びスチリル等のC7~C20アリールアルキルを挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、前記アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立してN、S及びOから選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールは、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル(チオフェンイル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等の5~15員のヘテロアリールを挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばピリジルメチル等の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルを挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「アリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフチルオキシ及びアントリルオキシ(アントラセニルオキシ)等のC6~C15アリールオキシを挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「アリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールアルキルに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えばベンジルオキシ、1-フェネチルオキシ、2-フェネチルオキシ及びスチリルオキシ等のC7~C20アリールアルキルオキシを挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「ヘテロアリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフラニルオキシ、チエニルオキシ(チオフェンイルオキシ)、ピロリルオキシ、イミダゾリルオキシ、ピラゾリルオキシ、トリアゾリルオキシ、テトラゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、イソオキサゾリルオキシ、オキサジアゾリルオキシ、チアジアゾリルオキシ、イソチアゾリルオキシ、ピリジルオキシ、ピリダジニルオキシ、ピラジニルオキシ、ピリミジニルオキシ、キノリニルオキシ、イソキノリニルオキシ及びインドリルオキシ等の5~15員のヘテロアリールオキシを挙げることができる。
【0037】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えば5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシを挙げることができる。
【0038】
本明細書において、「アシル」は、前記で説明した基から選択される1価基とカルボニルとが連結した基を意味する。好適なアシルは、限定するものではないが、例えばホルミル、アセチル及びプロピオニル等のC1~C5脂肪族アシル、並びにベンゾイル等のC7~C120芳香族アシルを包含するC1~C20アシルを挙げることができる。
【0039】
前記で説明した基は、それぞれ独立して、非置換であるか、或いは1個若しくは複数の前記で説明した1価基によってさらに置換することもできる。
【0040】
本明細書において、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味する。
【0041】
本発明の一態様は、式(I):
【化4】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0042】
本発明者らは、新規放線菌が、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して抗菌活性を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中から、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して抗菌活性を有する新規化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-Lを見出した。これらの新規化合物、特に化合物40551-Fは、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレに対して、エタンブトールのような従来技術の抗菌物質と同程度又はそれを超える抗菌活性を有する。また、本発明者らは、化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-Lが、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌だけでなく、ヒト型結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス(M. tuberculosis))とゲノム相同性の高いウシ型結核菌(マイコバクテリウム・ボビス(M. bovis))に対しても抗菌活性を有することを見出した。本態様の式(I)で表される化合物は、天然有機化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-L、並びにその類縁化合物を包含する。それ故、本態様の式(I)で表される化合物は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して高い抗菌活性を発現することができる。また、本態様の式(I)で表される化合物は、ヒト型結核菌及びウシ型結核菌のような結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。
【0043】
式(I)において、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシルオキシ、置換若しくは非置換のビフェニル、置換若しくは非置換のテルフェニル、置換若しくは非置換のナフチル、置換若しくは非置換のアントラセニル、又は
【化5】
である。ここで、*は、残部との結合位置を示す。R1は、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のビフェニル、置換若しくは非置換のテルフェニル、置換若しくは非置換のナフチル、置換若しくは非置換のアントラセニル、又は
【化6】
であることが好ましく、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、又は
【化7】
であることがより好ましく、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、4-(2-メチルプロピオニルアミノ)-フェニル、又は4-(4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)-フェニルであることがさらに好ましく、2-メチルプロパン-1-エン-イル、4-(2-メチルプロピオニルアミノ)-フェニル、3-メチルペンタン-1-エン-イル、4-(4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)-フェニル、1-メチルプロパン-1-エン-イル、1-メチルプロピル、又は3-メチルブタン-1-エン-イルであることがさらにより好ましく、2-メチルプロパン-1-エン-イルであることが特に好ましい。R1が前記で例示した基である場合、本態様の式(I)で表される化合物は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して特に高い抗菌活性を発現することができる。また、この場合、本態様の式(I)で表される化合物は、結核菌に対しても高い抗菌活性を発現することができる。
【0044】
式(I)において、R2、R3、R5及びR6は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R2、R3、R5及びR6は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル、又は置換若しくは非置換のアミノであることがより好ましく、いずれも水素であることがさらに好ましい。
【0045】
式(I)において、R4は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルである。R4は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルであることが好ましく、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルであることがより好ましく、水素であることがさらに好ましい。
【0046】
式(I)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが特に好ましい。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記1価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0047】
式(I)で表される化合物は、前記で例示されるR1、R2、R3、R4、R5及びR6の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0048】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のビフェニル、置換若しくは非置換のテルフェニル、置換若しくは非置換のナフチル、置換若しくは非置換のアントラセニル、又は
【化8】
であり、
R2、R3、R5及びR6が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R4が、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記1価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0049】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、又は
【化9】
であり、
R2、R3、R5及びR6が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R4が、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル、2-メチルプロピオニルアミノ、又は4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記1価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0050】
さらに好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、4-(2-メチルプロピオニルアミノ)-フェニル、又は4-(4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)-フェニルであり、
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、非置換のC1~C6アルコキシ、非置換のC3~C6シクロアルコキシ、非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、非置換のC6~C15アリールオキシ、非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、及び非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の1価基である。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記1価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0051】
さらにより好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、2-メチルプロパン-1-エン-イル、4-(2-メチルプロピオニルアミノ)-フェニル、3-メチルペンタン-1-エン-イル、4-(4-ヒドロキシメチル-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)-フェニル、1-メチルプロパン-1-エン-イル、1-メチルプロピル、又は3-メチルブタン-1-エン-イルである。
【0052】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1が、2-メチルプロパン-1-エン-イルである。
【0053】
特に好ましい式(I)で表される化合物は、以下:
N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-3-メチルブタ-2-エンアミド(40551-F);
N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)イソブチラミド(40551-D);
(E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル-4-メチルヘクス-2-エナミド(40551-G);
1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-4-(4-(ヒドロキシメチル)-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)ピリミジン-2(1H)-オン(40551-H);
(E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-2-メチルブタ-2-エナミド(40551-I);
N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-3-メチルブタナミド(40551-K);及び
(E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-4-メチルペンタ-2-エナミド(40551-L);
である。
【0054】
とりわけ特に好ましい式(I)で表される化合物は、以下:
N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-3-メチルブタ-2-エンアミド(40551-F);
である。本態様の式(I)で表される化合物が前記化合物である場合、該化合物は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して特に高い抗菌活性を発現することができる。また、この場合、本態様の式(I)で表される化合物は、結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。
【0055】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩の形態である場合であっても、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して高い抗菌活性を発現することができる。また、この場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。
【0056】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。式(I)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合であっても、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して高い抗菌活性を発現することができる。また、この場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。
【0057】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数の官能基(例えばアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記各式で表される化合物の保護形態を、前記各式で表される化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、カルボン酸基の保護基の場合、アルキルエステル(例えばメチル、エチル若しくはイソプロピルエステル)、アリールアルキルエステル(例えばベンジルエステル)、又はアミド(例えばオキサゾリジノン類とのアミド)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのようなMAC症の原因菌である非結核性抗酸菌に対して、或いは結核菌に対して抗菌活性を発現することができる場合がある。
【0058】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1又は複数の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0059】
また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物が1又は複数の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0060】
前記特徴を有することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して高い抗菌活性を発現することができる。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。
【0061】
<2. 培養的手段による新規化合物の製造方法>
本発明者らは、新規放線菌が、本発明の一態様の式(I)で表される化合物に包含される化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-Lをその培養液中に産生することを見出した。それ故、本発明の別の一態様は、新規放線菌を用いる本発明の一態様の式(I)で表される化合物を製造する方法に関する。
【0062】
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程及び化合物精製工程を含む。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0063】
[2-1. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス(Streptomyces)属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程を含む。
【0064】
ストレプトマイセス属菌OPMA40551株は、日本国内より分離されたストレプトマイセス属に属する新規放線菌である。本菌株は、OPMA40551として、2017年7月18日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(受託番号NITE BP-02510)。
【0065】
本工程において、培養に使用される微生物は、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株又はその変異株であることが好ましく、ストレプトマイセス属菌OPMA40551株であることがより好ましい。本発明において、ストレプトマイセス属菌OPMA40551株の変異株は、ストレプトマイセス属菌OPMA40551株の自然変異株又は人工変異株を意味する。ストレプトマイセス属菌OPMA40551株の人工変異株は、当該技術分野で通常使用される任意の人工変異株の作出手段によって得ることができる。ストレプトマイセス属菌OPMA40551株自体だけでなく、ストレプトマイセス属菌OPMA40551株の変異株であっても、式(I)で表される化合物を産生する能力を有する微生物であれば、本工程において式(I)で表される化合物を培地中に蓄積することができる。それ故、前記微生物を使用することにより、式(I)で表される化合物を培地中に大量に蓄積させることができる。
【0066】
微生物の培養に使用される培地は、該微生物の性質に基づき適宜選択することができる。培地は、通常は、1個以上の炭素源及び1個以上の窒素源、並びに場合により1個以上の無機塩及び1個以上のビタミンを含有する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストリン及びデンプン等の糖類、並びに大豆油等の植物性油脂類を挙げることができる。窒素源としては、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆粉、綿実粉、コーン・スティーブ・リカー、カゼイン、アミノ酸、尿素、アンモニウム塩及び硝酸塩を挙げることができる。無機塩としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、コバルトイオン又は亜鉛イオン等のカチオンと、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸又はリン酸のような無機酸アニオンとの塩を挙げることができる。本工程において使用される培地は、例えば、海水調製ISP2寒天培地 (酵母エキス 0.20% (DIFCO)、麦芽エキス 0.50% (DIFCO)、グルコース 0.20% (和光純薬)、人工海水マリンアートSF-1 1.92% (富田製薬)、水道水 1.0 L、ナチュラルシーウォーター 1.0 L (ディープオーシャン)、寒天 1.0% (SSKセールス)、pH 7.3に調整)、又はSPY培地 (可溶性デンプン 1.0% (和光純薬)、ペプトン 0.50% (DIFCO)、酵母エキス 0.25% (DIFCO)、ナチュラルシーウォーター (ディープオーシャン)、pH無調整)が好ましい。前記培地中で、式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株又はその変異株である微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を該培地中に蓄積させることができる。
【0067】
微生物の培養は、固体培養又は液体培養のいずれであってもよい。大スケールで前記微生物を培養する場合には、液体培養であることが好ましい。この場合、培養容器の振盪若しくはプロペラ等による培地の攪拌、又はポンプ等による空気の吹き込みによって培地中に通気することが好ましい。培地中に導入される空気は、滅菌フィルター等の滅菌手段を用いて滅菌することが好ましい。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0068】
大スケールで前記微生物を培養する場合、予め少量の培地中で前記微生物を培養(以下、「種培養」とも記載する)し、その後、種培養で得られた培養物を大容量の培地に植菌して培養(以下、「生産培養」とも記載する)することが好ましい。この場合、種培養及び生産培養に使用される培地の成分は、同一であってもよく、異なっていてもよい。種培養及び生産培養を含む複数段階の培養によって本工程を実施することにより、微生物の生育の遅延を実質的に抑制することができる。
【0069】
本工程において、微生物を培養する条件は、該微生物の性質に基づき適宜設定することができる。培養温度は、通常は15~37℃の範囲であり、典型的には約25℃である。培地のpHは、通常はpH 6~8であり、典型的にはpH 7.3である。培養期間は、液体培地を振盪培養する場合、種培養及び生産培養の合計として、通常は3~12日間であり、典型的には5~10日間である。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0070】
[2-2. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程を含むことが必要である。
【0071】
本工程において、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、当該技術分野で通常使用される有機化合物の分離法を使用することができる。式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、例えば、抽出、濾過、遠心分離、吸着、再結晶、蒸留、及び各種クロマトグラフィー等を挙げることができる。好ましくは、本工程は、化合物蓄積工程で得られた微生物の培養物から濾過又は遠心分離等によって菌体を分離する工程、分離した菌体を酢酸エチル等の有機溶媒で抽出する工程、及び有機溶媒で抽出した菌体抽出物を溶媒抽出又は分取クロマトグラフィー等の手段でさらに分離して、式(I)で表される化合物を得る工程を含む。前記分取クロマトグラフィーとしては、吸着、順相若しくは逆相分配、又はゲル濾過等の各種クロマトグラフィーを適用することができる。最終工程において、分取クロマトグラフィーで得られた画分を、例えば再結晶又は蒸留等の手段でさらに精製してもよい。前記各工程は、所望により同一又は異なる条件下で複数回繰り返してもよい。前記手段を用いることにより、式(I)で表される化合物を微生物の培養物から精製し単離することができる。
【0072】
本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1、R2、R3、R4、R5及びR6を有することが好ましい。この場合、式(I)で表される化合物は、ストレプトマイセス属菌OPMA40551株が産生する化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-Lである。本態様の方法を用いることにより、化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-L、特に化合物40551-Fに対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0073】
以上の特徴を有する本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法により、医薬の有効成分となり得る本発明の一態様の式(I)で表される化合物を、高純度且つ低コストで大量に提供することができる。
【0074】
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を産生する能力を有するストレプトマイセス属菌OPMA40551株(受託番号NITE BP-02510)又はその変異株である微生物に関する。本態様において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1、R2、R3、R4、R5及びR6を有することが好ましい。本態様の微生物を用いることにより、化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-L、特に化合物40551-Fに対応する式(I)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0075】
<3. 医薬用途>
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して高い抗菌活性を有する。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、ヒト型結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス)及びウシ型結核菌(マイコバクテリウム・ボビス)のような結核菌に対しても抗菌活性を発現することができる。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、マイコバクテリウム・アビウム複合感染症(MAC症)に対する治療剤に関する。本発明のさらに別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ヒト型結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス)及びウシ型結核菌(マイコバクテリウム・ボビス)のような結核菌に対する治療剤に関する。また、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む医薬に関する。
【0076】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性は、限定するものではないが、例えば、以下の手順に基づき、微量液体希釈法により最小発育阻止濃度(MIC)値を算出することによって、決定することができる。任意の検定用菌(例えば、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ又はマイコバクテリウム・ボビス等)の保存菌液より、接種用の菌液を調製する。96穴マイクロプレートに、予め調製した試験化合物試料の2段階希釈系列(例えば、終濃度 0.001~50 μg/mL)を各5 μL/ウェルずつ分注する。次に、接種用菌液を、95 μL/ウェルずつ加える。ウェル中の培養液を混合し、適切な条件下(例えば、37℃で30~120時間)で培養する。培養後、肉眼による観察、又はMTT(3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)試薬による生存細胞の染色により、生育阻害率を算出する。算出した生育阻害率に基づき、菌の生育阻害を示す最小濃度を、MIC値とする。このようにして決定される生育阻害率及びMIC値に基づき、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性を評価することができる。
【0077】
本態様において、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定されるMIC値が、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対して、例えば25 μg/mL以下、通常は1.0 μg/mL以下、典型的には0.5 μg/mL以下である。また、本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記手順により決定されるMIC値が、マイコバクテリウム・ツベルクロシス及びマイコバクテリウム・ボビスのような結核菌に対して、例えば25 μg/mL以下、通常は5.0 μg/mL以下、典型的には2.0 μg/mL以下である。前記範囲のMIC値を有する本発明の一態様の式(I)で表される化合物を対象に適用することにより、MAC症及び結核のような細菌による感染症を予防又は治療することができる。
【0078】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。本発明の一態様の式(I)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対する抗菌活性、並びに/又は結核菌に対する抗菌活性を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0079】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を挙げることができる。本発明の一態様の式(I)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である式(I)で表される化合物の、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対する抗菌活性、並びに/又は結核菌に対する抗菌活性を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0080】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本発明の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0081】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0082】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0083】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0084】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の、MAC症の原因菌であるマイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレのような非結核性抗酸菌に対する抗菌活性、並びに/又は結核菌に対する抗菌活性を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0085】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。この場合、本態様の医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0086】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、非結核性抗酸菌及び結核菌からなる群より選択される1種以上の細菌による感染症を、同様に予防又は治療することができる。前記1種以上の細菌としては、限定するものではないが、例えば、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ及びマイコバクテリウム・スメグマティス(M. smegmatis)のような非結核性抗酸菌、並びにヒト型結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクロシス)及びウシ型結核菌(マイコバクテリウム・ボビス)のような結核菌を挙げることができる。前記1種以上の細菌による感染症としては、限定するものではないが、例えば、非結核性抗酸菌症(例えば、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレによるMAC症等)及び結核等を挙げることができる。前記1種以上の細菌による感染症は、MAC症又は結核であることが好ましく、MAC症であることがより好ましい。前記1種以上の細菌による感染症の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、前記感染症である症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0087】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、MAC症又は結核)の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)、或いは爬虫類(例えば、カエル、ヘビ若しくはトカゲ等の変温動物)等の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象が有する1種以上の細菌による感染症である種々の症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0088】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0089】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、MAC症又は結核)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、MAC症及び結核からなる群より選択される1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬を前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0090】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、MAC症又は結核)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の本発明の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療方法である。前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害は、MAC症及び結核からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害であることが好ましい。前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、本発明の一態様の式(I)で表される化合物を投与することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0091】
本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、MAC症又は結核)の予防又は治療に使用するための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、MAC症又は結核)の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害は、MAC症及び結核からなる群より選択される1種以上の感染症である症状、疾患及び/又は障害であることが好ましい。本発明の一態様の式(I)で表される化合物又は医薬を、前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0092】
本発明の一態様の式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である式(I)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である式(I)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01~10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1~10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、本発明の一態様の式(I)で表される化合物の抗菌活性を介して、前記1種以上の細菌による感染症である症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例
【0093】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0094】
<I. 培養的手段による新規化合物の製造>
[OPMA40551株の分離]
OPMA40551株は、日本国内より分離された放線菌である。OPMA40551株の形態的特徴、培養性状及び生理的性状に基づき、公知菌種との比較を行った。その結果、本菌株は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する新規菌株であることが明らかとなった。本菌株を、OPMA40551株と命名した。本菌株は、OPMA40551として、2017年7月18日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(受託番号NITE BP-02510)。OPMA40551株の菌学的性質は、以下の通りである。
【0095】
1. 形態的特徴
OPMA40551株は、ISP2培地等の栄養寒天培地等の培地で良好に生育した。ISP2培地上で、25℃、好気的条件下で10日間生育させたコロニーを顕微鏡で観察したところ、基生菌糸は糸状であり、気菌糸をまばらに形成し、胞子形成は認められなかった。また、コロニーの上面及び裏面は、クリーム色であり、可溶性色素又はメラニン様色素による培地の着色は認められなかった。
【0096】
2. 培養性状
OPMA40551株は、ISP2培地等の栄養寒天培地等の培地で、25℃、5~10日間、好気的条件下で静置培養することにより、良好に生育した。
【0097】
3. 生理的性状
OPMA40551株の最適生育条件は、好気性条件、温度25℃であった。また、本菌株の生育可能条件は、好気性条件、静置培養、pH6~8の範囲、温度15~37℃の範囲、培養期間5~10日間の範囲であった。
【0098】
[製造例I-1:OPMA40551株の培養(1)]
海水調製ISP2寒天培地 (酵母エキス 0.20% (DIFCO)、麦芽エキス 0.50% (DIFCO)、グルコース 0.20% (和光純薬)、人工海水マリンアートSF-1 1.92% (富田製薬)、水道水 1.0 L、ナチュラルシーウォーター 1.0 L (ディープオーシャン)、寒天 1.0% (SSKセールス)、pH 7.3に調整) で培養したOPMA40551株の起菌寒天片3個を、SPY培地 (可溶性デンプン 1.0% (和光純薬)、ペプトン0.50% (DIFCO)、酵母エキス 0.25% (DIFCO)、ナチュラルシーウォーター (ディープオーシャン)、pH無調整) 100 mL を加えた500 mL容三角フラスコに植菌した。この菌株を、27℃で2日間、ロータリーシェーカー(180 rpm)で培養した。その後、得られた培養液を、SPY培地 3 Lを分注した500 mL容三角フラスコに、1体積%の量で植菌した。この菌株を、27℃で7日間、振盪培養を行った。
【0099】
[製造例I-2: OPMA40551株の培養液からの新規化合物の精製(1)]
製造例I-1で得られた培養液 (3 L) に、酢酸エチル (3 L) を加え、1時間超音波破砕処理をした。培養液を吸引濾過して菌体破砕物を除去した。得られた酢酸エチル層を、減圧下乾固して、粗抽出物 (297.8 mg) を得た。この粗抽出物を、ODSカラムクロマトグラフィー (センシュー科学、15 g) にて、20%、40%、60%、80%、及び100%メタノール水溶液(各100 mL)を展開溶媒として用いて分離した。溶出液を、100 mL に分画した。80%メタノール水溶液画分を濃縮して、黄色油状物質 (18.8 mg) を得た。これを、少量のメタノールに溶解し、分取HPLC (カラム:PEGASIL ODS SP100、20φ×250 mm、センシュー科学) によりさらに分離した。移動相には、20~45% アセトニトリル水溶液 (0.05% トリフルオロ酢酸を含む) を用いて、40分間のグラジエント条件下、6 mL/分の流速において、UV 210 nmの吸収をモニターした。保持時間 24 分に活性を示すピークを観察し、このピークを分取して分取液を凍結乾燥し、無色油状物質の化合物40551-Fを収量1.4 mg で単離した。化合物40551-F(N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-3-メチルブタ-2-エンアミド)の化学構造を以下に示す。
【化10】
【0100】
[化合物40551-F]
(1)性状:無色油状
(2)分子式:C23H36N4O7
HRESI-MS (m/z) [M+H]+ 計算値481.2662, 実測値481.2661
(3)分子量:480
ESI-MS(m/z) [M+H]+481, [M+Na]+ 503を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 209 nm(8215), 265 nm(13895), 300 nm(5960)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3414, 2934, 1680, 1640, 1489, 1205 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 24 +74.3°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、アジレント社製400 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は以下に示す通り:δH : 1.37 (3H), 1.45 (3H), 1.68 (2H), 1.96 (3H), 2.14 (1H), 2.22 (3H), 2.38 (1H), 3.00 (6H), 3.11 (1H), 3.43 (1H), 3.55 (1H), 3.75 (1H), 3.96 (1H), 4.09 (1H), 5.01 (1H), 5.76 (1H), 5.94 (1H), 7.54 (1H), 8.08 (1H) ppm
δC : 19.0, 19.2, 20.5, 27.8, 28.0, 30.9, 42.3, 42.3, 64.0, 67.9, 71.9, 73.9, 76.5, 78.2, 84.5, 96.6, 98.4, 118.8, 145.8, 157.5, 159.7, 164.8, 167.7 ppm。
【0101】
[製造例I-3:OPMA40551株の培養(2)]
海水調製ISP2寒天培地 (酵母エキス 0.20% (DIFCO)、麦芽エキス 0.50% (DIFCO)、グルコース 0.20% (和光純薬)、人工海水マリンアートSF-1 1.92% (富田製薬)、水道水 1.0 L、ナチュラルシーウォーター 1.0 L (ディープオーシャン)、寒天 1.0% (SSKセールス)、pH 7.3に調整) で培養したOPMA40551株の起菌寒天片3個を、SPY培地100 mL を加えた500 mL容三角フラスコに植菌した。この菌株を、27℃で2日間、ロータリーシェーカー (180 rpm)で培養した。その後、得られた培養液を、SPY培地 3 Lを100 mLずつ分注した30本の500 mL容三角フラスコに、それぞれ1体積%の量で植菌した。この菌株を、27℃で11日間、振盪培養を行った。
【0102】
[製造例I-4: OPMA40551株の培養液からの新規化合物の精製(2)]
製造例I-3で得られた培養液 (3 L) を、6本の500 mL容プラスチック遠心管に6等分して分注した。分注した培養液を、20分間、8,000 rpm、4℃の条件下で遠心分離して、上清を回収した。この時の上清のpHを測定した結果、pHは10であった。上清に、酢酸エチル (3 L) を加え、酢酸エチル層を得た。得られた酢酸エチル層を、減圧下乾固して、粗抽出物 (164.4 mg) を得た。この粗抽出物を、ODSカラムクロマトグラフィー (富士シリシア化学、8.2 g) にて、20%、40%、60%、70%、80%、及び100%メタノール水溶液を展開溶媒として用いて分離した。溶出液を、各条件で60 mL に分画した。70%メタノール水溶液画分及び80%メタノール水溶液画分を濃縮して、それぞれ黄色油状物質 (21.5 mg) 及び白色油状物質 (6.0 mg) を得た。これらを、少量のメタノールに溶解し、分取HPLC (カラム:PEGASIL ODS SP100、20φ×250 mm、センシュー科学) によりさらに分離した。70%メタノール水溶液画分の場合、移動相には、20~45% アセトニトリル水溶液(0.05% トリフルオロ酢酸を含む) を用いて、50分間のグラジエント条件下、6 mL/分の流速において、UV 210 nmの吸収をモニターした。保持時間26、29、32及び34分にそれぞれ活性を示すピークを観察し、このピークを分取して溶媒を留去後、分取液を凍結乾燥し、化合物40551-D、40551-I、40551-K及び40551-Lを収量1.65、1.61、2.06及び0.93 mgでそれぞれ単離した。80%メタノール水溶液画分の場合、移動相には、30~60% アセトニトリル水溶液 (0.05% トリフルオロ酢酸を含む) を用いて、40分間のグラジエント条件下、6 mL/分の流速において、UV 260 nmの吸収をモニターした。保持時間21分に活性を示すピークを観察し、このピークを分取して溶媒を留去後、分取液を凍結乾燥し、化合物40551-Gを収量 0.80 mgで単離した。
【0103】
化合物40551-D(N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)イソブチラミド)の化学構造を以下に示す。
【化11】
【0104】
[化合物40551-D]
(1)性状:無結晶
(2)分子式:C29H41N5O8
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値610.2853, 実測値610.2853
(3)分子量:587
ESI-MS(m/z) [M+H]+ 588, [M+Na]+ 610 を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 303 nm (15458)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3304, 2978, 2937, 1680, 1486, 1204 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 24 + 75.4°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、ブルカー社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 1.21 (6H), 1.39 (3H), 1.46 (3H), 1.70 (2H), 2.18 (1H), 2.39 (1H), 2.67 (1H), 3.00 (6H), 3.12 (1H), 3.43 (1H), 3.55 (1H), 3.76 (1H), 3.96 (1H), 4.09 (1H), 5.02 (1H), 5.78 (1H), 7.62 (1H), 7.77 (2H), 7.96 (2H), 8.17 (1H) ppm
δC : 19.0, 19.2, 19.8, 19.8, 28.3, 30.9, 37.2, 42.4, 42.4, 64.0, 67.9, 71.9, 73.9, 76.5, 78.2, 84.6, 96.6, 98.8, 120.3, 120.3, 129.2, 130.3, 130.3, 144.8, 146.2, 157.3, 164.8, 168.4, 178.9 ppm。
【0105】
化合物40551-G((E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル-4-メチルヘクス-2-エナミド)の化学構造を以下に示す。
【化12】
【0106】
[化合物40551-G]
(1)性状:無結晶
(2)分子式:C25H40N4O7
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値509.2975, 実測値509.2969
(3)分子量:508
ESI-MS(m/z) [M+H]+509, [M+Na]+ 531を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 261 nm (5913), 301 nm (2030)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3415, 2933, 1681, 1492, 1205 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 24 + 59.8°(c=0.08、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、ブルカー社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 0.92 (3H), 1.09 (3H), 1.38 (3H), 1.44 (3H), 1.46 (2H), 1.68 (2H), 2.15 (1H), 2.30 (1H), 2.39 (1H), 2.96 (6H), 3.03 (1H), 3.43 (1H), 3.54 (1H), 3.75 (1H), 3.95 (1H), 4.07 (1H), 5.00 (1H), 5.76 (1H), 6.14 (1H), 6.97 (1H), 7.55 (1H), 8.11 (1H) ppm
δC : 12.0, 19.1, 19.2, 19.3, 28.1, 29.9, 30.9, 39.5, 42.3, 42.3, 64.3, 68.1, 71.9, 73.9, 76.4, 78.2, 84.6, 96.6, 98.6, 122.9, 146.0, 155.9, 157.4, 164.7, 167.7 ppm。
【0107】
化合物40551-I((E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-2-メチルブタ-2-エナミド)の化学構造を以下に示す。
【化13】
【0108】
[化合物40551-I]
(1)性状:無結晶
(2)分子式:C23H36N4O7
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値503.2482, 実測値503.2467
(3)分子量:480
ESI-MS(m/z) [M+H]+481, [M+Na]+ 503を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 258 nm (4692), 301 nm (2538)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3381, 2935, 1681, 1486, 1204 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 25 + 47.6°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、ブルカー社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 1.38 (3H), 1.45 (3H), 1.68 (2H), 1.87 (3H), 1.89 (3H), 2.15 (1H), 2.38 (1H), 2.99 (6H), 3.10 (1H), 3.43 (1H), 3.55 (1H), 3.75 (1H), 3.95 (1H), 4.08 (1H), 5.00 (1H), 5.76 (1H), 6.65 (1H), 7.48 (1H), 8.11 (1H) ppm
δC : 12.2, 14.5, 19.0, 19.2, 28.0, 30.9, 42.4, 42.4, 64.1, 68.0, 71.9, 73.9, 76.4, 78.2, 84.6, 96.6, 98.4,133.5, 136.2, 146.0, 157.0, 164.8, 170.8 ppm。
【0109】
化合物40551-K(N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-3-メチルブタナミド)の化学構造を以下に示す。
【化14】
【0110】
[化合物40551-K]
(1)性状:無結晶
(2)分子式:C23H38N4O7
HRESI-MS (m/z) [M+H]+ 計算値483.2819, 実測値483.2819
(3)分子量:482
ESI-MS(m/z) [M+H]+483, [M+Na]+ 505を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 249 nm (5652), 295 nm (2986)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3422, 2963, 2937, 1678, 1491, 1203 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 25 +64.7°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、ブルカー社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 1.01 (6H), 1.39 (3H), 1.48 (3H), 1.70 (2H), 2.16 (1H), 2.17 (1H), 2.34 (2H), 2.40 (1H), 3.02 (6H), 3.13 (1H), 3.44 (1H), 3.57 (1H), 3.76 (1H), 3.98 (1H), 4.10 (1H), 5.03 (1H), 5.78 (1H), 7.51 (1H), 8.12 (1H) ppm
δC : 19.0, 19.2, 22.6, 22.6, 27.0, 28.0, 30.9, 42.3, 42.3, 47.2, 64.0, 67.9, 72.0, 73.8, 76.5, 78.2, 84.6, 96.6, 98.4, 146.2, 157.4, 164.3, 175.3 ppm。
【0111】
化合物40551-L((E)-N-(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-4-イル)-4-メチルペンタ-2-エナミド)の化学構造を以下に示す。
【化15】
【0112】
[化合物40551-L]
(1)性状:無結晶
(2)分子式:C24H38N4O7
HRESI-MS (m/z) [M+H]+ 計算値495.2819, 実測値495.2814
(3)分子量:494
ESI-MS(m/z) [M+H]+495, [M+Na]+ 517を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 260 nm (12391), 302 nm (5365)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3408, 2965, 2934, 1678, 1492, 1203 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 25 +65.5°(c=0.05、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、ブルカー社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 1.11 (6H), 1.37 (3H), 1.46 (3H), 1.69 (2H), 2.15 (1H), 2.39 (1H), 2.53 (1H), 3.00 (6H), 3.11 (1H), 3.43 (1H), 3.55 (1H), 3.75 (1H), 3.96 (1H), 4.09 (1H), 5.02 (1H), 5.77 (1H), 6.14 (1H), 7.05 (1H), 7.56 (1H), 8.12 (1H) ppm
δC : 19.0, 19.2, 21.6, 21.6, 28.0, 30.9, 32.3, 42.4, 42.4, 64.0, 67.9, 72.0, 73.9, 76.5, 78.2, 84.6, 96.6, 98.6, 121.8, 146.0, 156.9, 156.9, 164.7, 167.6 ppm。
【0113】
[製造例I-5:OPMA40551株の培養(3)]
海水調製ISP2寒天培地 (酵母エキス 0.20% (DIFCO)、麦芽エキス 0.50% (DIFCO)、グルコース 0.20% (和光純薬)、人工海水マリンアートSF-1 1.92% (富田製薬)、水道水 1.0 L、ナチュラルシーウォーター 1.0 L (ディープオーシャン)、寒天 1.0% (SSKセールス)、pH 7.3に調整) で培養したOPMA40551株の起菌寒天片3個を、SPY培地100 mL を加えた500 mL容三角フラスコに植菌した。この菌株を、27℃で2日間、ロータリーシェーカー (180 rpm)で培養した。その後、得られた培養液を、SPY培地 3 Lを100 mLずつ分注した30本の500 mL容三角フラスコに、それぞれ1体積%の量で植菌した。この菌株を、27℃で7日間、振盪培養を行った。
【0114】
[製造例I-6: OPMA40551株の培養液からの新規化合物の精製(3)]
製造例I-5で得られた (3L) に、Amberlite XAD7HP 樹脂 (SIGMA、150 mL) を加えた。混合物を、3時間、300 rpmの条件下でプロペラを用いて撹拌した。その後、吸引濾過により、菌体及び樹脂を回収した。菌体及び樹脂を、ステンレス管に移した後、アセトン (2L) を加えた。混合物を、3時間、300 rpmの条件下でプロペラを用いて撹拌した。その後、吸引濾過により菌体及び樹脂を除き、濾液を回収した。濾液を、減圧下乾固して、粗抽出物 (2.99 g) を得た。この粗抽出物を、ODS カラムクロマトグラフィー (富士シリシア化学、100 g) にて、20%、40%、60%、70%、80%、及び100% メタノール水溶液を展開溶媒として用いて分離した。溶出液を、各条件で 500 mL に分画した。70%メタノール水溶液を濃縮して、黄色油状物質 (248.4 mg) を得た。これを、少量のメタノールに溶解し、分取 HPLC (カラム:PEGASIL ODS SP100、20φ×250 mm、センシュー科学) によりさらに分離した。移動相には、20~45% アセトニトリル水溶液(0.05% トリフルオロ酢酸を含む) を用いて、50分間のグラジエント条件下、6 mL/分の流速において、UV 210 nmの吸収をモニターした。保持時間13分に活性を示すピークを観察し、このピークを分取して溶媒を留去後、分取液を凍結乾燥し、化合物40551-Hを収量13.7 mg で単離した。化合物40551-H(1-(5-((5-(ジメチルアミノ)-3,4-ジヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-4-(4-(ヒドロキシメチル)-2,2,4-トリメチル-5-オキソイミダゾリジン-1-イル)ピリミジン-2(1H)-オン)の化学構造を以下に示す。
【化16】
【0115】
[化合物40551-H]
(1)性状:白色無結晶
(2)分子式:C32H46N6O9
HRESI-MS (m/z) [M+H]+ 計算値659.3405, 実測値659.3385
(3)分子量:658
ESI-MS(m/z) [M+H]+659を観測
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定、λmax (MeOH,ε): 283 nm (13003)
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定、νmax 3283, 2984, 2935, 1679, 1487, 1202 cm-1
(6)比旋光度:[α]D 24 + 74.2°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重メタノール中で、アジレント社製400 MHz核磁気共鳴スペクトロメータで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:δH : 1.39 (3H), 1.48 (3H), 1.55 (3H), 1.68 (3H),1.70 (2H), 1.72 (3H), 2.18 (1H), 2.39 (1H), 3.00 (6H), 3.12 (1H), 3.43 (1H), 3.55 (1H),3.61 (1H), 3.78 (1H), 3.96 (1H), 3.98 (1H), 4.09 (1H), 5.02 (1H), 5.78 (1H), 7.49 (2H), 7.62 (1H), 8.10 (2H), 8.19 (1H) ppm
δC : 19.0, 19.2, 20.6, 27.8, 28.0, 29.1, 30.9, 42.4, 42.4, 64.0, 65.5, 66.8, 67.9, 71.9, 73.9, 76.5, 78.2, 79.2, 84.7, 96.6, 98.8, 130.6, 130.6, 130.9, 130.9, 135.4, 140.9, 146.4, 157.2, 164.7, 168.3, 173.7 ppm。
【0116】
<II. 新規化合物の薬理試験>
[試験II-1:マイコバクテリウム・アビウム複合体に対する抗菌活性評価試験]
細胞培養用フラスコT25 (コーニング) に、0.05% Tween80(和光純薬)含有7H9液体培地(ミドルブルック7H9ブロス 0.5% (DIFCO)、ウシ血清アルブミン 5.0% (SIGMA)、グルコース 2.0% (和光純薬)及び塩化ナトリウム 0.85% (関東化学))6 mL を入れた。このフラスコに、マイコバクテリウム・アビウム (JCM15430、理化学研究所微生物材料開発室より分与) 200 μL又はマイコバクテリウム・イントラセルラーレ (JCM6384、理化学研究所微生物材料開発室より分与) 120 μLのグリセロール保存菌液を添加し、マイコバクテリウム・アビウムは、37℃で96時間、マイコバクテリウム・イントラセルラーレは、37℃で72時間、それぞれ静置培養した。次いで、培養菌液を、前記培地を用いて、マイコバクテリウム・アビウムは200倍に、マイコバクテリウム・イントラセルラーレは600倍に、それぞれ希釈し、接種用の菌液(4×106 CFU/mL相当)を調製した。各菌液の最小発育阻止濃度(MIC)を、以下の手順で微量液体希釈法を実施することにより測定した。96穴マイクロプレートに、予め調製した試験化合物試料の2段階希釈系列(終濃度 0.001~50 μg/mL) を各5 μL/ウェルずつ分注した。次に、接種用菌液を、95 μL/ウェルずつ加えた。ウェル中の培養液を混合し、37℃で120時間培養した。培養後、MTT試薬(SIGMA) 5 μL/ウェルを加え、37℃で16時間培養した。その後、細胞溶解バッファー (ジメチルホルムアミド 40.0% (ナカライテスク)、酢酸 2.0% (関東化学)、ドデシル硫酸ナトリウム 20.0% (和光純薬)、塩酸0.03 N (関東化学))を95 μL/ウェルずつ加え、1時間振盪した。各ウェルの培養液について、570 nm の吸光度を測定後、生育阻害率を算出し、90%以上の菌の生育阻害を示す最小濃度を、MIC値とした。試験化合物には、化合物40551-F、-D、-G、-H、-I、-K、及び-L、並びに比較化合物として、MAC症の治療に使用される公知の薬剤であるエタンブトールを用いた。
【0117】
[試験II-2:他の非結核性抗酸菌及び結核菌に対する抗菌活性評価試験]
以下の手順で、他の非結核性抗酸菌であるマイコバクテリウム・スメグマティスに対する試験を実施した。細胞培養用フラスコT25 (コーニング) に、0.5% Tween80(和光純薬)含有7H9液体培地6 mL を入れた。このフラスコに、マイコバクテリウム・スメグマティス(MC2155、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手)のグリセロール保存菌液より一白金耳植菌して、37℃で30時間、静置培養した。次いで、培養菌液を、前記培地を用いて200倍に希釈し、接種用の菌液(8×106 CFU/mL相当)を調製した。菌液のMICを、試験II-1と同様の手順で微量液体希釈法を実施することにより測定した。但し、菌液の培養は、37℃で30時間の条件で行い、MIC値の判定は、肉眼で菌の生育を観察することにより行った。
【0118】
以下の手順で、ウシ型結核菌であるマイコバクテリウム・ボビスに対する試験を実施した。細胞培養用フラスコT25 (コーニング) に、0.05% Tween80(和光純薬)含有7H9液体培地6 mL を入れた。このフラスコに、マイコバクテリウム・ボビス(BCG Pasteur、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手)500 μLのグリセロール保存菌液を添加し、37℃で120時間、静置培養した。次いで、培養菌液を、前記培地を用いて500倍に希釈し、接種用の菌液(8×106 CFU/mL相当)を調製した。菌液のMICを、試験II-1と同様の手順で微量液体希釈法を実施することにより測定した。
【0119】
[薬理試験IIの結果]
各試験菌に対する試験化合物の抗菌活性を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
【0122】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。