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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/22 20060101AFI20221129BHJP
   A44B 11/26 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60R22/22
A44B11/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018200205
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020066332
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】二村 祥太
(72)【発明者】
【氏名】堀山 智之
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222071(JP,A)
【文献】特開2010-036735(JP,A)
【文献】特開2016-137758(JP,A)
【文献】実開昭58-162847(JP,U)
【文献】実開昭59-016654(JP,U)
【文献】実開昭64-024653(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/22
B60R 22/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側に取付けられるアンカ部材と、
乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングが装着されるバックル本体と、
可撓性を有し、前記バックル本体と前記アンカ部材とを連結する連結部材と、
筒状にされ、前記アンカ部材、前記バックル本体及び前記連結部材が収容される支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記アンカ部材の一側部及び他側部に前記アンカ部材の厚さ方向において接触する状態で前記支持部材が前記アンカ部材に対し前記バックル本体を支持する接触部と、
を有し、前記接触部が前記アンカ部材の一側部及び他側部の少なくとも一方に複数個所で前記アンカ部材の厚さ方向において接触するバックル装置。
【請求項2】
車両側に取付けられるアンカ部材と、
乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングが装着されるバックル本体と、
可撓性を有し、前記バックル本体と前記アンカ部材とを連結する連結部材と、
筒状にされ、前記アンカ部材、前記バックル本体及び前記連結部材が収容される支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記アンカ部材の一側部及び他側部に前記アンカ部材の厚さ方向において接触する状態で前記支持部材が前記アンカ部材に対し前記バックル本体を支持する接触部と、
を有し、
前記接触部が前記アンカ部材に一側及び他側から接触するバックル装置。
【請求項3】
車両側に取付けられるアンカ部材と、
乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングが装着されるバックル本体と、
可撓性を有し、前記バックル本体と前記アンカ部材とを連結する連結部材と、
筒状にされ、前記アンカ部材、前記バックル本体及び前記連結部材が収容される支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記アンカ部材の一側部及び他側部に前記アンカ部材の厚さ方向において接触する状態で前記支持部材が前記アンカ部材に対し前記バックル本体を支持する接触部と、
を有し、
前記接触部が前記アンカ部材を弾性力によって締付けることで、前記アンカ部材に対して前記支持部材が自立するバックル装置。
【請求項4】
車両側に取付けられるアンカ部材と、
乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングが装着されるバックル本体と、
可撓性を有し、前記バックル本体と前記アンカ部材とを連結する連結部材と、
筒状にされ、前記アンカ部材、前記バックル本体及び前記連結部材が収容される支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記アンカ部材の一側部及び他側部に前記アンカ部材の厚さ方向において接触する状態で前記支持部材が前記アンカ部材に対し前記バックル本体を支持する接触部と、
を有し、
前記接触部は、前記アンカ部材の厚さ方向において前記アンカ部材に接触される突起部を含むバックル装置。
【請求項5】
前記支持部材内に設けられ、前記バックル本体と前記アンカ部材との接近を制限する制限部を有する請求項1から請求項4の何れか1項に記載のバックル装置。
【請求項6】
前記支持部材に設けられると共に、前記バックル本体より前記アンカ部材側に配置され、前記支持部材の内部断面を狭める狭窄部を有する請求項1から請求項5の何れか1項に記載のバックル装置。
【請求項7】
前記狭窄部が前記支持部材の周方向長さを長くする請求項6に記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル本体にタングが装着されるバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のバックル装置では、ベルトがプレートアンカとバックル本体とを連結しており、プレートアンカ、バックル本体及びベルトがブーツに収容されて、ブーツがプレートアンカに対しバックル本体を支持する。
【0003】
ところで、このようなバックル装置では、プレートアンカの厚さ方向へのベルト及びバックル本体の傾倒を抑制できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-213200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を鑑みて成されたものであり、アンカ部材の厚さ方向への連結部材及びバックル本体の傾倒を抑制できるバックル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のバックル装置は、車両側に取付けられるアンカ部材と、乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングが装着されるバックル本体と、可撓性を有し、前記バックル本体と前記アンカ部材とを連結する連結部材と、筒状にされ、前記アンカ部材、前記バックル本体及び前記連結部材が収容される支持部材と、前記支持部材に設けられ、前記アンカ部材の一側部及び他側部に前記アンカ部材の厚さ方向において接触する状態で前記支持部材が前記アンカ部材に対し前記バックル本体を支持する接触部と、を有する。
【0007】
第2の態様のバックル装置は、第1の態様のバックル装置において、前記支持部材内に設けられ、前記バックル本体と前記アンカ部材との接近を制限する制限部を有する。
【0008】
第3の態様のバックル装置は、第1の態様又は第2の態様のバックル装置において、前記接触部が前記アンカ部材の一側部及び他側部の少なくとも一方に複数個所で前記アンカ部材の厚さ方向において接触する。
【0009】
第4の態様のバックル装置は、第1から第3の何れか1の態様のバックル装置において、前記接触部が前記アンカ部材に一側及び他側から接触する。
【0010】
第5の態様のバックル装置は、第1から第4の何れか1の態様のバックル装置において、前記支持部材に設けられると共に、前記バックル本体より前記アンカ部材側に配置され、前記支持部材の内部断面を狭める狭窄部を有する。
【0011】
第6の態様のバックル装置は、第5の態様のバックル装置において、前記狭窄部が前記支持部材の周方向長さを長くする。
【0012】
第7の態様のバックル装置は、第1から第6の何れか1の態様のバックル装置において、前記接触部が前記アンカ部材を弾性力によって締付けることで、前記アンカ部材に対して前記支持部材が自立する。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様のバックル装置では、乗員拘束用のウェビングに取付けられたタングがバックル本体に装着される。また、車両側にアンカ部材が取付けられると共に、連結部材がバックル本体とアンカ部材とを連結しており、連結部材が可撓性を有している。さらに、筒状の支持部材にアンカ部材、バックル本体及び連結部材が収容される。
【0014】
ここで、支持部材の接触部がアンカ部材の一側部及び他側部にアンカ部材の厚さ方向に接触する状態で、支持部材がアンカ部材に対しバックル本体を支持する。このため、アンカ部材の厚さ方向への連結部材及びバックル本体の傾倒を接触部によって抑制できる。
【0015】
第2の態様のバックル装置では、支持部材内の制限部がバックル本体とアンカ部材との接近を制限する。このため、支持部材がアンカ部材に対しバックル本体を適切に支持できる。
【0016】
第3の態様のバックル装置では、接触部がアンカ部材の一側部及び他側部の少なくとも一方に複数個所でアンカ部材の厚さ方向において接触する。このため、アンカ部材の厚さ方向への連結部材及びバックル本体の傾倒を効果的に抑制できる。
【0017】
第4の態様のバックル装置では、接触部がアンカ部材に一側及び他側から接触する。このため、一側及び他側への連結部材及びバックル本体の移動を抑制できる。
【0018】
第5の態様のバックル装置では、支持部材の狭窄部が、バックル本体よりアンカ部材側に配置されると共に、支持部材の内部断面を狭める。このため、狭窄部がバックル本体のアンカ部材への接近を制限できる。
【0019】
第6の態様のバックル装置では、狭窄部が支持部材の周方向長さを長くする。このため、狭窄部によって支持部材の内部断面を容易に広げることができる。
【0020】
第7の態様のバックル装置では、接触部がアンカ部材を弾性力によって締付けることで、アンカ部材に対して支持部材が自立する。このため、アンカ部材の厚さ方向への連結部材及びバックル本体の傾倒を接触部によって効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るバックル装置の概略構成を示す正面図である。
図2】アンカの平面図である。
図3】バックル装置の主要部の側面視の断面図である。
図4】(A)は、インナブーツの正面図、(B)は、インナブーツの背面図、(C)は、インナブーツの支持部の上下方向視の概略断面図である。
図5】(A)は、インナブーツの主要部の下方視の概略断面図、(B)は、インナブーツの主要部の正面視の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るバックル装置10は、車室内の座席(特に後席)に装備されている。図1には、本実施形態に係るバックル装置10が車幅方向内側から見た正面図にて示され、図3には、バックル装置10の主要部が側面視の断面図にて示されている。なお、図面では、装置正面方向が矢印FDにて示され、装置幅方向が矢印Wにて示され、上方が矢印UPにて示されている。
【0023】
図1及び図3に示すように、バックル装置10は、ブロック状のバックル本体12を備えている。バックル本体12は、車室内の座席の車幅方向内側に配置され、上部が座席(図示省略)から上方に露出するように配置される。バックル装置10(バックル本体12)は、幅方向が車両前後方向とされ、正面側が車幅方向において座席に着座する乗員とは反対側(車幅方向内側)とされ、正面側とは反対の背面側が乗員側(車幅方向外側)とされる。
【0024】
バックル本体12には、ケーシング12Aの上部に挿入口(タング挿入口)12Bが形成されており、図示しないタングが着脱(挿入及び抜出し)可能とされている。タングには、乗員拘束用の長尺帯状のシートベルト(ウェビング)が移動可能に挿通されており、座席に着座した乗員が、タングをバックル本体12に挿入(装着)することで、乗員がシートベルトを装着し、シートベルトが乗員を拘束可能になる。また、タングがバックル本体12から抜出される(離脱される)ことで、乗員のシートベルトの装着が解除される。
【0025】
車室のフロア(車体)の座席(図示省略)周辺又はフロアに設置された座席のフレームには、金属製板状のブラケット14が取付けられ、ブラケット14には、アンカ部材としての金属製のアンカ(アンカプレート)16が固定されている。図2には、アンカ16が正面視の平面図にて示されている。
【0026】
図2に示すように、アンカ16は、略矩形状に形成されており、長手方向の一側(上下方向の下側)が基部18とされ、長手方向の他側が連結部20とされている。基部18の基端部は、半円形状とされており、基部18には、中心が基端の半円の中心に重なる円形の固定孔18Aが貫通形成されている。アンカ16は、幅方向が略車両前後方向とされ、基部18の固定孔18Aに挿通されたボルト18B(図1参照)によってブラケット14に取付けられる。
【0027】
アンカ16の連結部20は、先端部(上部)が矩形状とされている。連結部20の先端部は、幅方向両側の角部20Aが正面視及び側面視の各々において略直角(略丸みの無い状態)とされており、角部20Aの丸み(半径R)は、製造可能な丸みで最小となる丸み(半径Rが最小の丸み)とされている。また、連結部20には、長手方向がアンカ16の幅方向とされた長尺略楕円状の連結孔22が貫通形成されている。
【0028】
図3に示すように、バックル本体12には、ケーシング12A内にバックルボデー24(図3では、一部を図示)が取付けられており、バックルボデー24には、バックル本体12に装着されるタングが係止される。バックルボデー24には、装置幅方向に長尺とされた略楕円状の連結孔24Aが貫通形成されている。
【0029】
また、バックル装置10には、連結部材としての可撓性を有する長尺帯状のベルト26が設けられており、ベルト26は、化学繊維等によって形成されている。ベルト26は、幅方向が装置幅方向にされ、長手方向一側部26Aからアンカ16の連結孔22に挿通されて巻掛けられており、ベルト26は、アンカ16(連結孔22)への巻掛位置において折返され、長手方向一側部26Aと長手方向中間部26Bとが重合わせられている。また、ベルト26は、長手方向他側部26Cからバックルボデー24の連結孔24Aに挿通されて巻掛けられており、ベルト26は、バックルボデー24への巻掛位置において折返された長手方向他側部26Cが長手方向一側部26Aと長手方向中間部26Bとの間で重合わせられている。
【0030】
また、ベルト26は、長手方向一側部26Aと、長手方向中間部26Bと、長手方向他側部26Cとが重なり部分において縫製されている。これにより、バックル装置10では、バックル本体12とアンカ16とがベルト26によって連結され、バックル本体12がアンカ16を介して車体に設置されている。
【0031】
一方、バックル装置10は、支持部材としてのインナブーツ(ベルトインナブーツ)30を備えている。図4(A)には、インナブーツ30が正面側(車幅方向内側)から見た正面図にて示され、図4(B)には、インナブーツ30が背面側(車幅方向外側)から見た背面図にて示され、図4(C)には、インナブーツ30の主要部が上方視の断面図にて示されている。また、図5(A)には、インナブーツ30の主要部が、下方視の断面図にて示され、図5(B)には、インナブーツ30の主要部が正面視の断面図にて示されている。
【0032】
インナブーツ30には、軟質樹脂及び弾性樹脂(弾性材料)としてのエラストマーが用いられており、インナブーツ30は、可撓性及び弾性(ゴム弾性)を有している。図3図4(A)~図4(C)に示すように、インナブーツ30は、全体として断面略矩形の筒状に形成されており、インナブーツ30は、ベルト26を収容した状態でバックル本体12とアンカ16との間に掛渡されている。
【0033】
インナブーツ30は、長手方向の一側(上側)が収容部32とされ、長手方向の他側(下側)が支持部34とされており、インナブーツ30は、収容部32側の先端(上端)及び支持部34側の先端(下端)が開口され、内部が収容部32から支持部34に渡って連通されている。
【0034】
収容部32内は、バックル本体12の下側部分が挿入可能に開口され、支持部34内は、ベルト26を収容可能に開口されている。また、インナブーツ30は、支持部34の内部断面の大きさが、収容部32の内部断面より小さく(狭く)されている。インナブーツ30では、収容部32の下部が、正面視において支持部34側に向けて徐々に縮幅されていると共に、側面視において正面部30Aが支持部34側に向かうにしたがって背面部30Bに接近するように湾曲されている。
【0035】
収容部32の内周(長手方向と交差する方向に沿う断面における内周)は、バックル本体12の外周(長手方向と交差する方向に沿う断面における外周)よりも短くされており、収容部32の開口の大きさは、バックル本体12の外形よりも小さくされている。これにより、収容部32は、バックル本体12が収容されることで拡大され、バックル本体12は、弾性力によって締付けられた状態で収容部32内に収容される。
【0036】
図3に示すように、収容部32の支持部34側には、正面部30A内面に制限部を構成する複数のリブ36が形成されており、複数のリブ36は、収容部32の装置幅方向(車両前後方向)に配列されている。また、リブ36の各々は、正面部30A内面から背面部30B側及び上側(上部開口側)に突出されており、リブ36の各々の上端は、バックル本体12のケーシング12Aの下端に対向されている。また、リブ36の背面部30B側端(端面)は、支持部34における正面部30A内面と略面一にされている。これにより、収容部32内に収容されたバックル本体12は、インナブーツ30に対して下側への移動が制限されている。
【0037】
インナブーツ30は、収容部32内にバックル本体12下部が収容された状態において支持部34の下端部にアンカ16の連結部20の先端部が収容される長さとされている。また、支持部34の下端部には、舌片部38A、38Bが形成されており、舌片部38Aは、正面部30Aから延設され、舌片部38Bは、背面部30Bから延設されている。これにより、舌片部38A、38Bは、支持部34とは反対側が互いの接離方向に弾性変形可能にされている。アンカ16は、連結部20において連結孔22及び連結孔22の周囲が一対の舌片部38A、38Bによって覆われている。
【0038】
一方、インナブーツ30の下部には、接触部としてのアンカ掴部40が形成されている。図5(A)及び図5(B)に示すように、アンカ掴部40は、略矩形のブロック状とされており、アンカ掴部40は、支持部34の下端部において装置幅方向(車両前後方向)の両側に突出されている。支持部34の背面部30B側には、アンカ掴部40との間にリブ42が形成されており、アンカ掴部40は、リブ42によって補強されて車幅方向の揺動が制限されている。
【0039】
アンカ掴部40の各々の内部には、中空のポケット部44が形成されており、ポケット部44は、支持部34内部及び下方に開口している。ポケット部44の各々では、上側の奥面46A、装置幅方向の側面46B、正面側の対面46C、及び背面側の対面46Dの各々が、略矩形状に形成されていると共に、互いに交差する角度を略直角にされている。また、奥面46Aと側面46Bとの間の角部内面には、内径Rが製造可能な最小となる丸みが形成されている
【0040】
一対のポケット部44における側面46Bの間隔D1は、アンカ16(連結部20)の幅寸法dよりも僅かに小さくされている(D1<d)。また、ポケット部44の各々における対面46Cと対面46Dとの間隔D2は、アンカ16の連結部20先端の厚さtよりも僅かに大きくされている(D2>t)。これにより、ポケット部44は、直方体状の空間とされており、一対のポケット部44の間には、アンカ16の先端部(連結部20先端部)が掛渡されて挿入配置可能となっている。また、一対のポケット部44の各々には、アンカ16の先端の角部20Aの各々が挿入可能となっている。
【0041】
アンカ掴部40における奥面46Aは、収容部32内のリブ36と共に制限部を構成しており、ポケット部44内に挿入されたアンカ16の先端(端面)が奥面46Aに当接することで、インナブーツ30に対してアンカ16が上方に移動するのを制限している。
【0042】
アンカ掴部40(ポケット部44)内には、複数対の突起部(本実施形態では、突起部48、50の二対)が設けられている。突起部48は、対面46C、46Dの各々の支持部34側においてポケット部44内(互いに接近する方向)に向けて突出されており、突起部50は、対面46C、46Dの各々の側面46B側端において互いに接近する方向に向けて突出されている。
【0043】
突起部48、50では、突出先端の間隔D3がアンカ16の先端部の厚さtよりも小さくされている(D3<t<D2)。これにより、アンカ16は、アンカ掴部40のポケット部44内に挿入配置されることで、アンカ16は、幅方向の両端面に側面46Bが接触されて、幅方向の両端面が側面46Bによって押圧され、インナブーツ30に対する装置幅方向への移動が制限される。また、アンカ16には、突起部48、50が幅方向の2箇所ずつで接触される。これにより、アンカ16は、突起部48、50によって幅方向の2箇所ずつで挟持されて支持部34に保持される。
【0044】
一方、インナブーツ30の支持部34には、狭窄部52が形成されており、狭窄部52は、支持部34の背面部30Bにおいて収容部32側から舌片部38Bに渡って形成されている。狭窄部52は、背面部30Bから支持部34内部に向けられた傾斜部52A及び傾斜部52Aの先端部を接続する平坦部52Bによって構成されている。
【0045】
これにより、狭窄部52は、インナブーツ30の背面部30B外側において溝状の陥没部分を形成し、インナブーツ30の背面部30B内側において筋状の凸部を形成している。また、インナブーツ30の支持部34は、内部が狭窄部52によって狭められ、狭窄部52が支持部34内に収容されたベルト26の揺動を制限する。また、支持部34は、狭窄部52が形成されることで、狭窄部52が形成されていない場合に比して、長手方向と交差する方向の断面における周囲の長さが長くされている。
【0046】
次に、本実施形態の作用を説明する。
上記構成のバックル装置10では、バックル本体12とアンカ16とがベルト26によって連結されており、バックル本体12は、アンカ16がブラケット14に取付けられることで、車体に配置される。また、バックル本体12とアンカ16との間には、ベルト26を収容したインナブーツ30が掛渡されており、ベルト26がインナブーツ30に収容されると共に、バックル本体12の下部及びアンカ16の先端部が、インナブーツ30に収容されている。
【0047】
ここで、インナブーツ30は、弾性を有しており、収容部32及び支持部34の内部断面が伸長可能となっている。このため、インナブーツ30は、支持部34の内部断面を容易に広げることができ、支持部34の内部断面を広げることで、バックル本体12が挿入可能となる。これにより、支持部34から収容部32にバックル本体12を挿入できるので、インナブーツ30をバックル本体12とアンカ16との間に掛渡して配置できる。したがって、バックル装置10では、インナブーツ30の組付けが容易となっており、インナブーツ30の組付け作業性が向上されている。
【0048】
また、インナブーツ30の支持部34には、一対のアンカ掴部40が一体形成されており、アンカ掴部40内のポケット部44にアンカ16の連結部20先端部が嵌合されている。アンカ掴部40の各々の内部には、アンカ16の幅方向に突起部48、50が形成されており、突起部48、50がアンカ16に厚さ方向において接触している。このため、インナブーツ30がアンカ16の厚さ方向に傾倒するのを抑制できる。しかも、アンカ掴部40の各々では、突起部48、50が弾性力によってアンカ16を厚さ方向に挟持して締付けている。これにより、アンカ16がアンカ掴部40の各々にアンカ16の厚さ方向において保持され、アンカ16がインナブーツ30を適切に自立させることができて、自立したインナブーツ30が、バックル本体12及びベルト26を適切に支持できる。
【0049】
さらに、突起部48、50は、アンカ16に幅方向の2箇所で厚さ方向に接触している。これにより、アンカ掴部40は、アンカ16の幅方向の端部を厚さ方向に効果的に締付けることができる。
【0050】
また、アンカ掴部40は、支持部34の装置幅方向の両側で、アンカ16を厚さ方向に挟持する。このため、インナブーツ30に対してアンカ掴部40が上下方向周りに撓むのが抑制される。これにより、インナブーツ30は、アンカ16によって上下方向周りに捩れるのが防止されるので、インナブーツ30は、自立性が向上され、バックル本体12及びベルト26を安定して支持できる。
【0051】
また、アンカ16は、一対のアンカ掴部40の側面46Bの間で幅方向に締付けられている(幅方向において接触されればよい)。このため、インナブーツ30は、アンカ16に対して装置幅方向に傾倒するのが抑制されるので、インナブーツ30は、適正に自立できて、バックル本体12及びベルト26を支持できる。
【0052】
さらに、アンカ掴部40内では、奥面46Aと側面46Bとが略直角に配置されている。このため、アンカ16の角部20Aが奥面46A及び側面46Bの各々に当接するので、インナブーツ30がアンカ16に対して装置幅方向に傾倒するのを効果的に抑制できる。しかも、連結部20の角部20Aが最小の丸みとされ、ポケット部44の奥面46Aと側面46Bとの間の角部内面が最小の丸みとされているので、ポケット部44は、奥面46A及び側面46Bの各々が連結部20の厚さ方向と交差する方向の面に緊密に接している。このため、インナブーツ30がアンカ16に対して装置幅方向に傾倒するのをより効果的に抑制できる。
【0053】
また、インナブーツ30は、支持部34の下端部から延設された舌片部38A、38Bが、アンカ16の連結部20の車幅方向両側を覆っている。このため、インナブーツ30がアンカ16に対して装置幅方向に傾倒した際、舌片部38A、38Bが連結部20に当接してインナブーツ30に復元力を生じさせるので、インナブーツ30の車幅方向への傾倒をより効果的に抑制できる。
【0054】
したがって、インナブーツ30にアンカ掴部40を設けることで、アンカ16に支持されたインナブーツ30が傾倒するのを効果的に抑制できて、インナブーツ30の自立性が効果的に向上される。しかも、対面46C、46Dによってアンカ16を挟んだ場合、摩擦力が大きくなってインナブーツ30の組付け性が損ねられるが、アンカ掴部40では、突起部48、50の各々でアンカ16を挟持するので、摩擦が小さくなって、組付け性が損ねられるのを抑制できる。
【0055】
一方、インナブーツ30には、収容部32内においてバックル本体12の下端に対向するリブ36が設けられており、リブ36がバックル本体12に当接することで、インナブーツ30内においてバックル本体12が下方に移動するのを制限している。また、アンカ16は、先端がアンカ掴部40内の奥面46Aに当接することで、インナブーツ30内において上方に移動するのが制限されている。
【0056】
このため、インナブーツ30内においてバックル本体12とアンカ16とが互いに接近するのが制限されて、バックル本体12とアンカ16とが接近することにより、インナブーツ30に弛みや撓みが生じるのが抑制される。これにより、インナブーツ30の自立性を効果的に確保できる。
【0057】
また、バックル本体12とアンカ16とがベルト26で連結されている。このため、バックル本体12のインナブーツ30から抜出す方向(上方)への移動をアンカ16によって制限できると共に、アンカ16のインナブーツ30から抜出す方向(下方)への移動をバックル本体12によって制限できる。これにより、インナブーツ30とバックル本体12及びアンカ16との間にずれが生じるのを抑制できる。
【0058】
しかも、リブ36とアンカ掴部40の奥面46Aとの間で、インナブーツ30にずれが生じるのが抑制されるので、リブ36の上側においてインナブーツ30(正面部30A)にずれやめくれが生じるのを抑制できる。これにより、バックル本体12に対して、インナブーツ30がずれ下がってしまうのを抑制できる。
【0059】
さらに、インナブーツ30では、バックル本体12の下側の支持部34に狭窄部52が設けられている。インナブーツ30の支持部34は、上下方向と交差する方向の内部断面が閉断面とされており、閉断面内に狭窄部52が突出されている。これにより、バックル本体12のアンカ16への接近を、狭窄部52によって効果的に制限できる。
【0060】
また、狭窄部52は、インナブーツ30の支持部34における上下方向周りの外周部の長さを長くしている。このため、支持部34は、周方向に伸長し易くなるので、弾性変形によって支持部34の内部断面を広げてバックル本体12を挿入するのがより容易になる。これにより、インナブーツ30の組付けがより容易になって、インナブーツ30の組付け性をより向上できる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るバックル装置10では、インナブーツ30に弾性材料を用いることで、インナブーツ30の組付け作業の作業性が向上される。また、インナブーツ30にアンカ掴部40を設けて、アンカ掴部40によってアンカ16の幅方向の両側を挟持しているので、アンカ16に支持されたインナブーツ30の自立性を確保できる。
【0062】
なお、本実施形態では、連結部材として長尺帯状のベルト26を用いたが、連結部材としては、ワイヤなどが用いられてもよい。また、本実施形態では、ブラケット14を介してアンカ16を車体に取り付けたが、アンカ部材は、車体等に直接取付けられてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、接触部としてのアンカ掴部40において突起部48、50の2箇所でアンカ16を厚さ方向に挟んで締付けた。しかしながら、接触部は、1箇所でアンカ部材を締付けてもよく、3箇所以上でアンカ部材を締付けてもよい。また、接触部は、アンカ部材に厚さ方向において接触するものであればよい。
【符号の説明】
【0064】
10・・・バックル装置、12・・・バックル本体、16・・・アンカ(アンカ部材)、26・・・ベルト(連結部材)、30・・・インナブーツ(支持部材)、36・・・リブ(制限部)、40・・・アンカ掴部(接触部、制限部)、52・・・狭窄部。
図1
図2
図3
図4
図5