(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】鋼管径変換リング
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20221129BHJP
E02D 5/48 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E02D5/24 103
E02D5/48
(21)【出願番号】P 2019016920
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599123418
【氏名又は名称】富士商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510277154
【氏名又は名称】株式会社協伸建材興業
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】板垣 次男
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217107(JP,A)
【文献】特開2002-302940(JP,A)
【文献】特開2005-003029(JP,A)
【文献】特開2002-275888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/24
E02D 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管径変換リングであって、
相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、
第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出する
1つ又は複数のコマ部であって、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように
、水平面及び該水平面に対して垂直に延在する複数の側面を有する形状に構成された1つ又は複数のコマ部と、
を備える、鋼管径変換リング。
【請求項2】
鋼管径変換リングであって、
相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、
第1の鋼管受け端部及び第2の鋼管受け端部に設けられ、相対的に大きい内径を有する鋼管の中心軸と相対的に小さい内径を有する鋼管の中心軸とを同心状に位置決めすることができるように構成されたガイドリブと、
第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出する
1つ又は複数のコマ部であって、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように
、水平面及び該水平面に対して垂直に延在する複数の側面を有する形状に構成された1つ又は複数のコマ部と、
を備える、鋼管径変換リング。
【請求項3】
鋼管径変換リングであって、
相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、
第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出する
1つ又は複数のコマ部であって、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように
、水平面及び該水平面に対して垂直に延在する複数の側面を有する形状に構成された1つ又は複数のコマ部と、
を備え、
第1の鋼管受け端部は、上記相対的に小さい内径と相対的に大きい内径との間の大きさの内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第3の外径をさらに有することを特徴とする、鋼管径変換リング。
【請求項4】
鋼管径変換リングであって、
相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、
第1の鋼管受け端部及び第2の鋼管受け端部に設けられ、相対的に大きい内径を有する鋼管の中心軸と相対的に小さい内径を有する鋼管の中心軸とを同心状に位置決めすることができるように構成されたガイドリブと、
第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出する
1つ又は複数のコマ部であって、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように
、水平面及び該水平面に対して垂直に延在する複数の側面を有する形状に構成された1つ又は複数のコマ部と、
を備え、
第1の鋼管受け端部は、上記相対的に小さい内径と相対的に大きい内径との間の大きさの内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第3の外径をさらに有することを特徴とする、鋼管径変換リング。
【請求項5】
上記1つ又は複数のコマ部の表面にシリコーン樹脂加工が施されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の鋼管径変換リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭や杭状地盤補強体として使われる鋼管について、長手方向の途中で鋼管径を変更したいときに使用する鋼管径変換リングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を補強するため、鋼管杭や杭状地盤補強体として鋼管が使用されている。鋼管径が大きい程、杭の極限鉛直支持力や杭頭の限界水平抵抗力には有効であることは知られているが杭径を大きくすることで鋼管コストが高くなる。鋼管コストを抑えつつ極限鉛直支持力や限界水平抵抗力を高めることが重要な課題であった。
【0003】
鋼管杭及び杭状地盤補強体の先端の極限支持力は、先端部の有効面積と先端部より下に1D、上に4Dの範囲のN値平均値の積によって求まる。(D:杭及び杭状地盤補強体鋼管の直径)また、限界水平抵抗力は、鋼管の断面係数が大きければ有利に作用することが知られている。
【0004】
しかし、鋼管杭や杭状地盤補強体として使われる鋼管径を変更できる方法は数例提案されているが、一つの部品で複数の杭径や肉厚を自由に選択ができ安価に結合する方法は、未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-73365号公報
【文献】特開2003-105755号公報
【文献】特開2008-25156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、鋼管杭や杭状地盤補強体として使われる鋼管を先端部や杭頭部近傍で、種々の鋼管径や肉厚から最適なものを選択可能とし、溶接による接続では、異径鋼管の中心軸を簡単に同心状に合わせる(センタリングする)ことのできる鋼管径変換リングを提供して、材料コストの削減を図り、コストミニマムな鋼管杭や杭状地盤補強体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鋼管径変換リングは、長手方向に使用する鋼管の外径や肉厚の異なる鋼管を溶接接続できる構造である。この鋼管径変換リングは、該鋼管径変換リングの両端に異径の鋼管を溶接することができる構造であり、長手方向に対して取付け向きを拘束していないため、相対的に大きい内径を有する鋼管(以下、単に「大径鋼管」という。)から、相対的に小さい内径を有する鋼管(以下、単に「小径鋼管」という。)への変化と、小径鋼管から大径鋼管への変化が容易に可能な構造となっている。また、鋼管変更においては単一の鋼管径変換リング上で複数の小径鋼管の選択を可能にしている上に鋼管肉厚の制約もない。鋼管径変換リングに、必要数のコマ部を取り付けることにより、小径鋼管の回転圧入作業から大径鋼管の回転圧入作業へ変化する際にも、掘削用ビットとして機能し得るように構成されたコマ部の土壌撹拌効果により圧入スピードを維持し作業効率の低下を回避することができる。
【0008】
本発明の一実施例においては、鋼管径変換リングであって、相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出するように設けられ、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように構成された1つ又は複数のコマ部(突状部)と、を備える、鋼管径変換リングを提示する。
【0009】
本発明の他の実施例においては、鋼管径変換リングであって、相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、第1の鋼管受け端部及び第2の鋼管受け端部に設けられ、相対的に大きい内径を有する鋼管の中心軸と相対的に小さい内径を有する鋼管の中心軸とを同心状に位置決めすることができるように構成されたガイドリブと、第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出するように設けられ、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように構成された1つ又は複数のコマ部と、を備える、鋼管径変換リングを提示する。
【0010】
本発明の他の実施例においては、鋼管径変換リングであって、相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出するように設けられ、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように構成された1つ又は複数のコマ部と、を備え、第1の鋼管受け端部は、相対的に小さい内径と相対的に大きい内径との間の大きさの内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第3の外径をさらに有する(すなわち、互いに外径の異なる段部が第1の鋼管受け端部に形成されている)ことを特徴とする、管接続用リングを提示する。
【0011】
本発明のさらに他の実施例においては、鋼管径変換リングであって、相対的に小さい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第1の外径を有する第1の鋼管受け端部、及び相対的に大きい内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第2の外径を有する第2の鋼管受け端部と、第1の鋼管受け端部及び第2の鋼管受け端部に設けられ、相対的に大きい内径を有する鋼管の中心軸と相対的に小さい内径を有する鋼管の中心軸とを同心状に位置決めすることができるように構成されたガイドリブと、第1の外径から第2の外径まで拡大する途中の外面から突出するように設けられ、該鋼管径変換リングが軸回転する場合において掘削用ビットとして機能し得るように構成された1つ又は複数のコマ部と、を備え、第1の鋼管受け端部は、相対的に小さい内径と相対的に大きい内径との間の大きさの内径を有する鋼管の内周側と係合可能に構成された第3の外径をさらに有する(すなわち、互いに外径の異なる段部が第1の鋼管受け端部に形成されている)ことを特徴とする、鋼管径変換リングを提示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋼管径変換リングは、長手方向に目的に合った外径や肉厚の異なる鋼管を溶接接続できる構造である。例えば
図2に示されるように、上部構造物から水平力や曲げモーメントの作用する杭頭近傍部分では、外径が大きく肉厚も厚い断面係数の大きい鋼管を使用し、杭先端部から4D(D:鋼管直径または先端刃先直径)以上までは、先端刃先径に適用した鋼管を使用し、その他の部分では、外径の小さな鋼管を使用する。また一つの鋼管径変換リング上で複数の小径鋼管の選択を可能にし、鋼管肉厚の制約もないことなどから、鋼管杭や杭状地盤補強体として使われる鋼管の材料コストの削減できる。また、掘削用ビットとして機能し得るように構成されたコマ部(以下、「掘削コマ」という。)の効果により作業時間のロスを抑えることができる。
【0013】
また、互いに肉厚の異なる複数の鋼管を同軸にするためのセンタリング用のガイドリブが形成されているため、異径鋼管を溶接するときに生ずることの多い、異径鋼管同士の中心軸ずれも生じにくく容易に溶接できるため施工時間の短縮を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】鋼管径変換リングに小径鋼管と大径鋼管を溶接したときを示す側面図。
【
図2】小径鋼管と大径鋼管が溶接された(a)鋼管径変換リングの断面、及び(b)掘削コマ付き鋼管径変換リングの断面を示す図。
【
図3】鋼管径変換リングの小径端部と大径端部に加工されたセンタリング用ガイドリブを示す側面図。
【
図4】掘削コマK1,K2が組み込まれた鋼管径変換リングを示す図。
【
図5】鋼管杭や杭状地盤補強体に鋼管径変換リングが適用された実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図5を参照しつつ、本発明の鋼管径変換リング1を使用した実施形態例を説明する。
【0016】
図1は、鋼管径変換リングR11に鋼管杭や杭状地盤補強体として使われる先端刃先に対応した鋼管径の鋼管P12を鋼管径変換リングの大端部に溶接し、小端部の最小径センタリング用のガイドリブ上に小径鋼管P11を溶接した場合を示す側面図である。
図2は、
図1の断面図である。Y21は小径鋼管の溶接断面を示し、Y22は大径鋼管の溶接断面を示す。一実施例においては、溶接する鋼管の外径及び肉厚に左右されない溶接開先を有している。
【0017】
図1及び
図2では、小径鋼管を上部に大径鋼管を下部に溶接した例であるが鋼管径変換リング1は上下反転して使用できる機能を有しているので、大径鋼管を上部に小径鋼管を下部に溶接して使用することも可能である。溶接は工場内での溶接を基本としているが、中心軸ずれを防止するセンタリング用ガイドリブが形成されているので、現場溶接も容易に可能である。また、鋼管径変換リング1は、使用する鋼管と同等の機械的性能を持つ鋳鋼部材である。
【0018】
図3は、鋼管径変換リング1の小径端部と大径端部に加工されたセンタリング用ガイドリブを示す。S1は最小径鋼管を受けて溶接する部位(鋼管受け端部)であり、使用する鋼管の肉厚毎にガイドリブが加工されている。S2は中径鋼管(上記相対的に小さい内径と相対的に大きい内径との間の大きさの内径を有する鋼管)を受けて溶接する部位(鋼管受け端部)であり、S3は大径鋼管を受けて溶接する部位(鋼管受け端部)であり、いずれも使用する鋼管肉厚に対応するガイドリブが加工されている。
【0019】
図4は、
図3に示した鋼管径変換リング1に2つの掘削コマK1,K2が組み込まれた鋼管径変換リングを示す。一実施例においては、掘削コマK1,K2は、掘削用ビットとして機能し得るように、鋭利な部分(鋭角ないし直角を有する部分)を有する角柱形の形状に形成されている。また一実施例においては、掘削コマK1,K2は、鋼管径変換リング1の他の部分と一体的に成形されたものであり、概ね角柱形の一部の形状に形成されている。他の実施例においては、掘削用ビットとして機能し得るように、掘削コマK1,K2は、金属やセラミック等の硬質な材料から形成されている。さらなる実施例においては、鋼管径変換リング1の表面特には掘削コマK1,K2の表面に付着する土壌を少なくして掘削能力を維持するために、掘削コマK1,K2の表面にシリコーン樹脂加工が施されている。
【0020】
図5は、鋼管杭や杭状地盤補強体の全体イメージL1を示す。上端部分L2の鋼管P41は、上部構造物からの水平力や曲げモーメントに対応するため十分な断面係数を有する鋼管が使用され鋼管径変換リングの大径端部を上にして(R41)、溶接Y41されている。なお、小径端部には小径鋼管P42が溶接Y42されている。
【0021】
下端部分L3部分は、鋼管杭や杭状地盤補強体の先端極限支持力に影響する部位であり、先端刃先には、先端刃先径に適用した鋼管P43が溶接Y45され、先端刃先外径の4倍以上の位置からは材料コスト低減のため鋼管径変換リングの大径端部を下にして(R42)、溶接Y44し、小径端部の最小径部位に小径鋼管P42を溶接Y43した実施例である。
【符号の説明】
【0022】
1…鋼管径変換リング
P11…鋼管径変換リング溶接された小径鋼管
R11…鋼管径変換リングの側面
P12…鋼管径変換リング溶接された大径鋼管
D1…小径鋼管の外径
D2…小径鋼管の内径
D3…大径鋼管の外径
D4…大径鋼管の内径
Y21…鋼管径変換リングと小径鋼管の溶接部
R21…鋼管径変換リングの断面
Y22…鋼管径変換リングと大径鋼管の溶接部
S1…鋼管径変換リングの小径端部側の最小径鋼管径変換センタリング用ガイドリブ側面
S2…鋼管径変換リングの小径端部側の中径鋼管径変換センタリング用ガイドリブ側面
S3…鋼管径変換リングの大径端部側の大径鋼管径変換センタリング用ガイドリブ側面
L1…鋼管杭や杭状地盤補強体の全体イメージ
L2…鋼管杭や杭状地盤補強体の杭頭近傍イメージ
L3…鋼管杭や杭状地盤補強体の先端刃先近傍イメージ
P41…鋼管杭や杭状地盤補強体の杭頭近傍での断面係数の大きい鋼管
P42…鋼管杭や杭状地盤補強体の小径鋼管
P43…鋼管杭や杭状地盤補強体の先端刃先の適用径鋼管
Y41…鋼管径変換リングの大径端部を上向きにして大径鋼管と溶接した溶接部
R41…鋼管径変換リングの大径端部を上向きに使用した実施例
Y42…鋼管径変換リングの大径端部を上向きにして小径鋼管と溶接した溶接部
Y43…鋼管径変換リングの大径端部を下向きにして小径鋼管と溶接した溶接部
R42…鋼管径変換リングの大径端部を下向きに使用した実施例
Y44…鋼管径変換リングの大径端部を下向きにして先端刃先の適用径鋼管と溶接した溶接部
Y45…先端刃先と先端刃先の適用径鋼管と溶接した溶接部
K1…掘削コマ
K2…掘削コマ