(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】保護フィルムの剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20221129BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B65H41/00 A
B65H20/02 Z
(21)【出願番号】P 2019045753
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390013457
【氏名又は名称】株式会社辰巳エヤーエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】濱地 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕功
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰廣
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-106560(JP,A)
【文献】特開2000-126746(JP,A)
【文献】特開2003-164813(JP,A)
【文献】特開2005-082348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00- 37/06
B65H 41/00
B65H 45/00- 47/00
B65H 20/00- 20/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一の面に貼付けられた保護フィルムと、を具備する積層体から、前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置であって、
回転軸を平行にする一対の回転ブラシを備え、前記一対の回転ブラシの間で前記積層体から前記保護フィルムを剥離する剥離部と、
回転軸を平行にする一対の搬送ローラを備え、前記一対の搬送ローラで前記積層体を挟みつつ前記剥離部に搬送する搬送部と、
回転軸を平行にする一対の搬出ローラを備え、前記一対の搬出ローラで前記保護フィルム剥離後の前記基材を挟みつつ前記剥離部から搬出する搬出部と、
前記剥離部で剥離した前記保護フィルムを吸引除去する吸引部と、
を具備
し、
前記一対の回転ブラシ、前記一対の搬送ローラ、及び前記一対の搬出ローラが、前記積層体又は前記基材の方向に押圧する力を加え、
前記一対の回転ブラシが加える押圧する力が、前記一対の搬送ローラ及び前記一対の搬出ローラが加える押圧する力と同等又は大きいこと、
を特徴とする保護フィルム剥離装置。
【請求項2】
前記一対の回転ブラシが、前記積層体の厚さに応じて回転軸間距離を調整可能であり、
前記一対の搬送ローラ及び前記一対の搬出ローラが、それぞれ前記積層体及び前記基材を定圧で挟持すること、
を特徴とする請求項1に記載の保護フィルム剥離装置。
【請求項3】
前記
回転ブラシと、前記搬送ローラ及び前記搬出ローラと、の回転軸間の水平距離が、100mm~350mmであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の保護フィルム剥離装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、該基材の少なくとも一の面に貼付けられた保護フィルムと、を具備する積層体から、保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運搬や加工を行う際に板材の面に傷、腐食又は汚れ等が付着することを防止するため、板材の面には保護フィルムを貼り付けることが多い。従来、このような構成の板材は、使用時又は再利用時に保護フィルムを剥離する必要があり、種々の剥離方法が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2002-46935号公報)には、「被貼付部材から粘着材の付着した貼付部材を剥離する貼付部材剥離装置において、第1の回転部材と、前記第1の回転部材に隣接して前記第1の回転部材と逆方向に回転する第2の回転部材と、前記第1の回転部材を回転させる駆動手段とを備え、前記第1の回転部材の回転により貼り付けられている前記貼付部材の端部をめくり起こし、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間に前記貼付部材を挟んで被貼付部材から剥離する構成にしたことを特徴とする貼付部材剥離装置。」が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2003-252526号公報)には、「保護フィルムが貼り付けられたワークと回転する回転ゴムローラーを有し、該ワーク又は回転ゴムローラー又は双方の移動により、該ワークのエッジ部保護フィルムと回転ゴムローラーを対向させて接触させ、該ワークから保護フィルムを剥離するきっかけを作ることを特徴とする保護フィルム剥離方法。」が開示されている。
【0005】
更にまた、特許文献3(特開2013-159094号公報)には、「溶融押出成形された基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させながら、該被膜に金属繊維製の毛を有する回転ブラシを接触させ、該被膜を除去するに際し、該回転ブラシと基材フィルムとの抱き角を20°以上とし、且つ回転ブラシの表面速度を走行フィルム速度の10~300倍とすることを特徴とするフィルム表面被膜の除去方法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-46935号公報
【文献】特開2003-252526号公報
【文献】特開2013-159094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の貼付部材剥離装置では、被貼付部材が柔らかいフィルムの場合、被貼付部材が第1の回転部材の押圧により皺やたるみ等が生じてしまい、これが回転部材に絡みついて回転を止めてしまうおそれがある。また、貼付部材が被貼付部材上で連続して貼り付けられていない場合、貼付部材が切り替わる度に端部を回転部材間に挟み込ませる必要があり非効率である。
【0008】
また、特許文献2の保護フィルム剥離方法、及び特許文献3のフィルム表面被膜の除去方法では、剥離するための回転機構にワークを密着させる固定機構を要し、用いる装置の構造が複雑化してしまい、また、表裏の保護フィルムを同時に剥離できないことから、非効率である。
【0009】
従来の保護フィルム剥離装置の構造に着目すると、ワークの固定機構、搬送機構、及び搬出機構が種々の保護フィルムに幅広く対応できるものではなかった。また剥離機構についても、一度の処理では片面の保護フィルムしか剥離することができないばかりか、剥離時のワークの位置決めを行うために別途押え機構を要する等、多数の点で未だ改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、表裏の保護フィルムを一度の処理で確実に剥離可能であり、また、種々の保護フィルムに対応可能であり、部品点数を抑えて簡素化された構造を有する保護フィルム剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
基材と、前記基材の少なくとも一の面に貼付けられた保護フィルムと、を具備する積層体から、前記保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離装置であって、
回転軸を平行にする一対の回転ブラシを備え、前記一対の回転ブラシの間で前記積層体から前記保護フィルムを剥離する剥離部と、
回転軸を平行にする一対の搬送ローラを備え、前記一対の搬送ローラで前記積層体を挟みつつ前記剥離部に搬送する搬送部と、
回転軸を平行にする一対の搬出ローラを備え、前記一対の搬出ローラで、前記保護フィルム剥離後の前記基材を挟みつつ前記剥離部から搬出する搬出部と、
前記剥離部で剥離した前記保護フィルムを吸引除去する吸引部と、
を具備し、
前記吸引部が、前記剥離部と前記搬送部の間に位置し、
前記回転ブラシが、前記積層体の搬送方向と逆方向に回転しつつ、前記積層体の前記保護フィルムが貼り付けられた面に当接すること、
を特徴とする保護フィルム剥離装置を提供する。
【0012】
このような構成を有する本発明の保護フィルム剥離装置では、柔らかく連続した薄手のフィルム状等、幅広い厚さの基材に対応し、剥離部が具備する一対の回転ブラシが積層体の表裏にほぼ同じタイミングで当接し、積層体が基材の両面に保護フィルムを貼り付けて構成されたものであっても双方の保護フィルムを一度の処理で同時に剥離できるため、処理の時間を大幅に短縮して高効率化できる。また、別途押え機構等がなくとも剥離中に積層体が一対の回転ブラシ、搬送ローラ及び搬出ローラに挟まれて(換言すると「挟持」されて)上下に反り返ることがないため、保護フィルムに皺が発生せず、回転ブラシの動作を妨げる絡みつき等を好適に防止することができる。
【0013】
また、上記の本発明の保護フィルム剥離装置においては、
前記一対の回転ブラシ、前記一対の搬送ローラ、及び前記一対の搬出ローラが、前記積層体又は前記基材の方向に押圧する力を加え、
前記一対の回転ブラシが加える押圧する力が、前記一対の搬送ローラ及び前記一対の搬出ローラが加える押圧する力と同等又は大きいことが望ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明の保護フィルム剥離装置では、合成樹脂の基材及び保護フィルムで構成された積層体を、適切に挟持可能な搬送ローラ及び搬出ローラで搬送及び搬出するとともに、回転ブラシで保護フィルムに係止して確実に剥離することができる。
【0015】
また、上記の本発明の保護フィルム剥離装置においては、
前記一対の回転ブラシが、前記積層体の厚さに応じて回転軸間距離を調整可能であり、
前記一対の搬送ローラ及び前記一対の搬出ローラが、それぞれ前記積層体及び前記基材を定圧で挟持することが望ましい。
【0016】
このような構成を有する本発明の保護フィルム剥離装置では、適切に回転ブラシを保護フィルムに当接して剥離することができる。また、剥離開始から完了まで積層体を一定の圧力で確実に挟持して搬送及び搬出することができる。
【0017】
また、上記の本発明の保護フィルム剥離装置においては、
前記回転ブラシと前記搬送ローラ及び前記搬出ローラとにおける回転軸間の水平距離が、100mm~350mmであることが望ましい。
【0018】
このような構成を有する本発明の保護フィルム剥離装置では、一対の搬送ローラ及び搬出ローラと積層体との当接位置と、一対の回転ブラシと積層体との当接位置と、の距離が最適化され、短尺の積層体であっても確実に処理することができる。また、搬送部及び搬出部と剥離部間における積層体の撓みを抑制しつつ、確実に300mm以上の長さの積層体を剥離部まで搬送し、剥離部から搬出部まで搬出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品点数を抑えて構造を簡素化しつつ、表裏の保護フィルムを一度の処理で確実に剥離可能な保護フィルム剥離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1の概要を示す模式図である。
【
図2】回転ブラシ9の構造を示す図であって、(a)は回転ブラシ9の側面図であり、(b)は(a)における矢視Aの断面図である。
【
図4】搬送ローラ11及び搬出ローラ13の構造を示す図であって、(a)は搬送ローラ11及び搬出ローラ13の側面図であり、(b)は(a)における矢視Bの断面図である。
【
図5】搬送部5及び搬出部7の構造を示す模式図である。
【
図6】吸引部15の構造を示す図であって、(a)は吸引部15の側面図であり、(b)は(b)における矢視Cの断面図である。
【
図7】本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1を構成する各部の配置を示す模式図である。
【
図8】本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1を用いた保護フィルム51Bの剥離方法を示す図であって、(a)は搬送部5に積層体51を挿入した状態の模式図であり、(b)は基材51Aが第二センサ部25Bに到達した状態の模式図であり、(c)は基材51Aが搬出部7により搬出される状態を示す模式図である。
【
図9】剥離部3により積層体51から保護フィルム51Bを剥離する態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る保護フィルム剥離装置の代表的な実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0022】
1.保護フィルム剥離装置1の概要
図1を用いて、本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1の概要を示す模式図である。なお、本実施形態では、理解容易を図るため、保護フィルム剥離装置1の幅方向をX、保護フィルム剥離装置1の奥行方向をY、保護フィルム剥離装置1の高さ方向をZとして方向を定義する。また、積層体51の搬送方向はX1、逆方向はX2とする。
【0023】
図1に示すとおり、保護フィルム剥離装置1は、基材51Aと、該基材51Aの表面に貼り付けられた保護フィルム51Bと、によって構成された積層体51から保護フィルム51Bを剥離する装置である。また、基材51Aの表裏の両面に保護フィルム51Bを貼り付けて構成された積層体51であっても、双方の保護フィルム51Bを一度の処理で同時に剥離できるため、剥離処理が高効率化し、処理時間の大幅な短縮を可能とする。
【0024】
ここで基材51Aは、合成樹脂を材料として形成された略板状部材であり、また保護フィルム51Bは、合成樹脂を材料として形成された薄い膜である。本実施形態の保護フィルム剥離装置1は、基材51Aの表面及び/又は裏面の一部又は全面に保護フィルム51Bを貼り付けて構成した種々の積層体51に使用することができる。なお、本発明者らは、特に、長さ300mm以上、幅50~500mm、厚み1.5~15mmの基材51Aを用いた場合に、本実施形態の保護フィルム剥離装置1によって保護フィルムをより確実に剥離できることを実験的に確認している。
【0025】
2.保護フィルム剥離装置1の構造
本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1は、回転軸を平行にし、積層体51を挟む一対の回転ブラシ9を備え、積層体51から保護フィルム51Bを剥離する剥離部3と、回転軸を平行にし、積層体51を挟持搬送する一対の搬送ローラ11を備え、積層体51を剥離部3に搬送する搬送部5と、回転軸を平行にし、積層体51を挟持搬出する一対の搬出ローラ13を備え、保護フィルム51剥離後の基材51Aを剥離部3から搬出する搬出部7と、剥離部3で剥離した保護フィルム51Bを吸引除去する吸引部15と、を具備する。そして、吸引部15が、剥離部3と搬送部5の間に位置し、回転ブラシ9のブラシ先端部が、積層体51の搬送方向X1とは逆方向X2に当接するように回転しつつ、積層体51の保護フィルム51Bが貼り付けられた面に当接する。
【0026】
<剥離部3>
図2及び
図3を用いて、剥離部3の構造について詳細に説明する。
図2は、回転ブラシ9の構造を示す図であって、
図2(a)は、回転ブラシ9の側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)における矢視Aの断面図である。
図3は、剥離部3の構造を示す模式図である。
【0027】
剥離部3は、二つの回転ブラシ9間で積層体51を挟み込むよう構成された部位である。回転ブラシ9について具体的には、種々の金属で形成された略円筒状の芯材17と、芯材17の表面に配設した多数の突起19によって構成されたものである。芯材17の直径は、50φ~200φの範囲、好ましくは80φ~180φの範囲、より好ましくは100φ~110φの範囲で設定することが望ましい。また、軸方向の寸法は、処理する積層体51のサイズに応じて適宜決定すればよい。
【0028】
突起19は、積層体51から保護フィルム51Bを剥離させるに足りる剛性を有するチャンネルブラシであり、例えば真鍮やステンレス等の所定の耐食性を有する金属や剛性を有する樹脂等で構成することができる。回転ブラシ9は、突起19を具備するベース材を芯材17に巻き付けて構成したチャンネルブラシロールであり、突起19が芯材17の表面から外側に向かって(表面の接線方向に略垂直な方向に)放射状に配設されている。突起19の線径は、使用する積層体51の構成及び保護フィルム51Bの厚さ寸法に応じて適宜決定すればよいが、強度を担保して保護フィルム51Bを確実に引っ掻いて剥離させるため、0.08φ~1.0φの範囲で設定することが望ましい。
【0029】
また、芯材17の表面に対する突起19の密度は、低いと保護フィルム51Bを引っ掻く突起17の数が不足し、高いと各突起19が屈曲できず保護フィルム51Bにかかる引っ掻き力が阻害されて剥離能力が低下するため、幅2.5mm~5.5mm、高さ2.5mm~5.5mmのチャンネルブラシを芯材17の表面に巻き付けることが望ましい。芯材17の表面に対する好ましい突起19の本数について具体的には、10mm2に対し6本~2000本とすることが望ましい。
【0030】
上記構成の回転ブラシ9を2本準備し、双方の回転軸を奥行方向Yに対して平行にしつつ、高さ方向Zに対して略直線上となるよう一方の回転ブラシ9を下方、他方の回転ブラシ9を上方に配置することによって剥離部3を構成する。双方の回転ブラシ9の回転軸間距離W1は後述するセンサ部25及び搬送部5と連動して自動に調整され、これにより使用する積層材51の厚さ寸法に応じて双方の回転ブラシ9が具備する突起19間の離隔距離W2を適宜調整可能な態様とすることが望ましい(特に
図3参照)。なお、本実施形態では一方及び他方の回転ブラシ9双方を上下に動作させることによって突起19間の離隔距離W2を調整する態様を代表して記載しているが、一方の又は他方の回転ブラシ9の内、どちらか一方のみを動作させる態様としてもよい。また、双方の回転ブラシ9は、別途モータ等の機構(図示せず)と接続することにより連動して回転させる。
【0031】
<搬送部5及び搬出部7>
次に、
図4及び
図5を用いて、搬送部5及び搬出部7の構造について詳細に説明する。
図4は、搬送ローラ11及び搬出ローラ13の構造を示す図であって、
図4(a)は、搬送ローラ11及び搬出ローラ13の側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)における矢視Bの断面図である。また
図5は、搬送部5及び搬出部7の構造を示す模式図である。
【0032】
搬送部5は、二つの搬送ローラ11間で積層体51を挟持し、搬送ローラ11を回転させることで剥離部3に搬送する部位である。また、搬出部7は、二つの搬出ローラ13間で基材51Aを挟持し、搬出ローラ13を回転させることで剥離部3から基材51Aを搬出する部位である。搬送部5及び搬出部7は、剥離部3との相対位置によって互いの役割を異にしたものであって、構造は略同様である。
【0033】
搬送ローラ11(搬出ローラ13)としては、本発明の効果を損なわない範囲で種々の構造のものを用いることができ、例えば金属で形成した芯材21と樹脂製の表面材23とを具備する搬送ローラを用いることができる。芯材21は略円筒状の部品であり、表面材23は芯材21の表面を被覆する部品である。搬送ローラ11(搬出ローラ13)の軸方向の寸法は、処理する積層体51のサイズ及び回転ブラシ9のサイズに応じて適宜決定すればよい。また、芯材21の直径は、搬送ローラ11(搬出ローラ13)の剛性を担保可能な範囲とし、表面材23の厚さ寸法は経年劣化や継続使用による摩耗を考慮して決定すればよいが、後述する回転軸間の水平距離W5を考慮して決定することが望ましい(
図7参照)。
【0034】
上記構成の搬送ローラ11(搬出ローラ13)を2本準備し、双方の回転軸を奥行方向Yに対して平行にしつつ、高さ方向Zに対して略直線上となるよう一方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)を下方、他方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)を上方に配置することによって搬送部5(搬出部7)を構成する。双方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)の回転軸間距離W3は、後述するセンサ部25と連動して自動的に調整され、これにより使用する積層材51(基材51A)の厚さ寸法に応じて双方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)表面間の離隔距離W4を適宜調整可能な態様とすることが望ましい(特に
図5参照)。なお、本実施形態では一方及び他方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)双方を上下に動作させることによって、搬送ローラ11(搬出ローラ13)の回転軸間距離W3を調整する態様を代表して記載しているが、一方の又は他方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)の内、どちらか一方のみを動作させる態様としてもよい。また、双方の搬送ローラ11(搬出ローラ13)は、別途モータ等の機構(図示せず)と接続することにより連動して回転させればよい。
【0035】
また、搬送部5(搬出部7)は、積層体51(保護フィルム51Bを剥離した後の基材51A)に一定の圧力を加えて挟持する構造とすることが望ましい。加える圧力は、積層体51の上下位置を固定させつつ搬送及び搬出させることができるように適宜調整すればよく、例えば200N~1000Nの範囲とすることが望ましい。このような構造を採用することにより、剥離開始から完了まで積層体51(基材51A)を確実に挟持して固定し、剥離処理が完了するまで適切な搬送及び搬出を行うことができる。
【0036】
本実施形態では、剥離部3の前後に搬送部5及び搬出部7のみを配設した必要最小限の構成に代表させて本発明を説明しているが、積層体51を搬送又は搬出するその他のローラ等を追加してもよい。使用する積層体51のサイズによって上記構成を変更することによって、より確実に保護フィルム51Bの剥離を行うことができる。
【0037】
<吸引部15>
続いて、
図6を用い、吸引部15の構造について詳細に説明する。
図6は、吸引部15の構造を示す図であって、
図6(a)は、吸引部15の側面図であり、
図6(b)は、
図6(b)における矢視Cの断面図である。
図6(a)及び(b)に示すとおり、本実施形態で用いる吸引部15は、ノズル部27及び管部29と吸引装置(図示せず)を具備して構成されている。なお、吸引装置は、空気と共に剥離後の保護フィルム51Bを吸引できるものであれば特に仕様等を限定しないが、例えばインバータ制御等によって適宜吸引量の制御を可能とするものであればより好ましい。
【0038】
ノズル部27は、略扇状の部品であって、先端部と後端部に開口を有し、双方の開口を連通するように内部に吸引路31を具備している。また、ノズル部27は先端部に向けて厚さが細くなるように形成されており、吸引領域の形状を最適化しつつ、吸引力の向上が図られている(特に
図6(b)参照)。
【0039】
管部29は、ノズル部27の後端部の開口と吸引機とを連通する略円筒状の部品である。吸引時に発生する内部の負圧に耐え得る剛性を有するものであれば特に素材を限定しない。また、配設や取り回しをより簡便にするため、蛇腹構造を採用してもよい。管部29の直径は、剥離後の保護フィルム51Bが内部に詰まることを防止するため、150mm~200mmの範囲とすることが望ましい。
【0040】
<各部の配置>
次に、
図7を用いて上述した各部の配置について詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1を構成する各部の配置を示す模式図である。
図7に示すとおり、方向Xにおいて、剥離部3の左側に搬送部5を配置し、剥離部3の右側に搬出部7を配置し、剥離部3と搬送部5の間に吸引部15を配置し、搬送部5の左側に第一センサ部25Aを配置し、搬出部7の右側に第二センサ部25Bを配置することで保護フィルム剥離装置1を構成することが望ましい。
【0041】
第一センサ部25A及び第二センサ部25Bは、例えば電子素子式の光検出器等により構成され、所定範囲内における検知対象物の有無や移動を感知する部品である。具体的には、赤外線センサ等を用いることができるが、積層体51及び保護フィルム51B剥離後の基材51Aを検出できるものであれば幅広く使用することができる。また、積層体51の厚みや保護フィルム51B剥離後の基材51Aの厚みも検知可能なセンサであれば、搬送部5及び搬出部7の離隔距離W4の調整をより簡便かつ確実に行うことができる(構成によっては、剥離部3の離隔距離W2の調整を行うことも可能。)。なお、第一センサ部25Aは搬送部5(構成によっては、剥離部3も含む。)の制御を担当し、第二センサ部25Bは搬出部7の制御を担当する。
【0042】
本実施形態では、第一センサ部25Aが積層体51を検知することで搬送部5の動作を開始し、第二センサ部25Bが保護フィルム51B剥離後の基材51Aを検知することで搬出部7の動作を開始するよう構成している。なお、剥離部3は第一センサ部25Aが積層体51を検知することで動作を開始してもよく、搬送部5の動作に連動して動作を開始してもよい。
【0043】
回転ブラシ9、搬送ローラ11、及び搬出ローラ13は、それぞれ方向Zに移動可能に配設されており、この移動によって上述した回転軸間距離W1(W3)及び離隔距離W2(W4)を状況に応じて調整することができる。各回転ブラシ9、搬送ローラ11、及び搬出ローラ13の移動可能幅W6は、方向Zに対して50mm~150mmとすることが望ましい。移動可能幅W6を上記範囲とすることで、幅広い厚さ寸法の積層体51に対応し、確実に保護フィルム51Bの剥離処理を行うことができる。
【0044】
回転ブラシ9と、搬送ローラ11及び搬出ローラ13と、の回転軸間の水平距離W5は、剥離処理する積層体51のサイズ等にも依存するが、100mm~350mmの範囲であることが望ましい。このような態様とすることにより、使用時に一対の搬送ローラ11と積層体51との当接位置と、一対の回転ブラシ9と積層体51との当接位置と、の距離が最適化され、短尺の積層体51であっても確実に処理することができる。また、搬送部5と剥離部3間における積層体51の撓みを抑制しつつ、確実に300mm以上の長さの積層体51を剥離部3まで確実に搬送することができる。剥離部3と搬出部7間においても上記と略同様である。
【0045】
なお、回転軸間の水平距離W5は、短いほどより短尺の積層体51を処理することができるが、一定以上回転軸間の水平距離W5を短くすると、回転ブラシ9や搬送ローラ11及び搬出ローラ13の直径もあわせて小さくする必要があるため、積層体51及び基材51Aに対する押圧面積が小さくなり、回転ブラシ9による積層体51を引っ掻く力や、搬送ローラ11及び搬出ローラ13による積層体51及び基材51Aを押圧する力が減少して装置内部に滞留してしまうおそれがある。よって回転軸間の水平距離W5と、回転ブラシ9、搬送ローラ11、及び搬出ローラ13の直径と、の寸法関係は処理する積層体51に応じて上記範囲から適宜調整することが望ましい。
【0046】
吸引部15は、方向Xにおいて剥離部3と搬送部5の間に位置させ、ノズル部27の先端部を2つの回転ブラシ9間に向けて配設する。なお、保護フィルム51Bをより好適に吸引するため、吸引部15と剥離部3との離隔距離は、吸引装置(図示せず)のスペックや剥離する保護フィルム51Bによって適宜調整可能に構成することが望ましい。
【0047】
回転ブラシ9は、積層体51を搬送する方向X1とは逆の方向X2に回転させることが望ましい。より具体的には、
図7において上方に配設した搬送ローラ11及び搬出ローラ13を反時計回り、下方に配設した搬送ローラ11及び搬出ローラ13を時計回りに回転させることによって、搬送部5及び搬出部7で積層体51を方向X1に搬送するよう構成し、上方に配設した回転ブラシ9を時計回り、下方に配設した回転ブラシ9を反時計回りに回転させることによって、剥離部3で保護フィルム51Bを方向X2に剥離するよう構成する。これにより、積層体51を搬送しつつ回転ブラシ9を保護フィルム51Bに係止させて剥離することができる。
【0048】
3.保護フィルム剥離装置1を用いた保護フィルム51Bの剥離方法
次に、
図8及び
図9を用いて、保護フィルム剥離装置1を用いた保護フィルム51Bの剥離方法について詳細に説明する。
図8(a)(b)(c)は、本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1を用いた保護フィルム51Bの剥離方法を示す図であって、
図8(a)は、搬送部5に積層体51を挿入した状態の模式図であり、
図8(b)は、基材51Aが第二センサ部25Bに到達した状態の模式図であり、
図8(c)は、基材51Aが搬出部7により搬出される状態を示す模式図である。また、
図9は、剥離部3により積層体51から保護フィルム51Bを剥離する態様を示す模式図である。
【0049】
図8(a)に示すとおり、まず積層体51を方向X1に押して搬送部5に挿入する。第一センサ部25Aが積層体51を検知して一対の搬送ローラ11を所定方向に回転させつつ、回転軸間距離W3を徐々に減少させる。一対の搬送ローラ11の離隔距離W4が積層体51の厚さ寸法にまで減少すると、搬送部5が積層体51を挟持した状態になり、所定の圧力を加えながら一対の搬送ローラ11の回転によって積層体51を方向X1に搬送する。
【0050】
剥離部3を構成する一対の回転ブラシ9は、上記の動作を経た一対の搬送ローラ11の状態に合わせて連動し、回転軸間距離W1及び離隔距離W2を調整しつつ所定方向に回転する。搬送部5によって搬送された積層体51は剥離部3に到達し、一対の回転ブラシ9間に挿入される。
【0051】
上下の回転ブラシ9の突起19が積層体51の表裏の保護フィルム51Bに同じタイミングで当接して係止し、自身の回転及び搬送部5の搬送によって保護フィルム51Bを方向X2に引き上げ及び引き下げて剥離する(
図9参照)。従って、積層体51Aは搬送部5により継続して剥離部3に搬送されるため、積層体51の方向X2側の端縁が剥離部3を通過した時点で保護フィルム51Bの剥離が完了することになる。
【0052】
図8(b)に示すとおり、剥離部3に剥離された保護フィルム51Bの方向X1の端縁は、回転ブラシ9によって剥離部3と搬送部5の間に移動し、吸引部15に吸引される。また、剥離部3による保護フィルム51Bの剥離が一定量完了すると、基材51Aの方向X1側の端縁が搬出部7を通過し、第二センサ部25Bがこれを検知する。
【0053】
基材51Aを検知した第二センサ部25Bは、一対の搬出ローラ13を所定方向に回転させつつ、回転軸間距離W3を徐々に減少させる。一対の搬出ローラ13の離隔距離W4が基材51Aの厚さ寸法にまで減少すると、搬出部7が基材51Aを挟持した状態になり、所定の圧力を加えながら一対の搬出ローラ13の回転によって基材51Aを方向X1に搬送する。これにより、積層体51(一部は基材51A)は、搬送部5及び搬出部7に挟持された状態となり、双方の回転によって方向X1に搬送及び搬出される状態となる。
【0054】
図8(C)に示すとおり、積層体51の方向X2側の端縁が搬送部5を完全に通過した状態となっても、引き続き搬出部7が継続して基材51Aを方向X1側に搬出するため、保護フィルム51Bの剥離が完全に完了するまで適切に積層体51は剥離部3を通過することができる。
【0055】
剥離後の保護フィルム51Bは、剥離部3の剥離に応じて吸引部15に吸引され、所定場所に運搬される。吸引部15の構成によって運搬する場所は任意に決定できるが、保護フィルム51Bを簡便に処理できるように構成すれば、作業全体をより効率化することができる。基材51Aが完全に搬出部7を通過することで、本実施形態に係る保護フィルム剥離装置1を用いた保護フィルム51Bの剥離が完了する。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【符号の説明】
【0057】
1 保護フィルム剥離装置
3 剥離部
5 搬送部
7 搬出部
9 回転ブラシ
11 搬送ローラ
13 搬出ローラ
15 吸引部
17 芯材
19 突起
21 芯材
23 表面材
25 センサ部
25A 第一センサ部
25B 第二センサ部
27 ノズル部
29 管部
31 吸引路
51 積層体
51A 基材
51B 保護フィルム
W1 回転軸間距離
W2 離隔距離
W3 回転軸間距離
W4 離隔距離
W5 回転軸間の水平距離
W6 移動可能幅