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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/41 20060101AFI20221129BHJP
   B60R 22/343 20060101ALI20221129BHJP
   B60R 22/38 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60R22/41
B60R22/343
B60R22/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019173849
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049856
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松岡 千裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元規
(72)【発明者】
【氏名】大脇 知也
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101011(JP,A)
【文献】特開2014-177268(JP,A)
【文献】特開2014-34326(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1048536(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングが巻取られ、前記ウェビングが引出されることで引出方向へ回転されるスプールと、
前記スプールと一体回転可能に設けられ、引出方向への回転がロックされることで前記スプールの引出方向への回転がロックされる第1ギヤ体と、
前記スプールの回転周方向に回転可能に設けられた第2ギヤ体と、
前記第1ギヤ体と一体回転可能に設けられ、許容位置とロック位置との間で変位可能とされ、前記スプールの引出方向への回転速度が所定の速度を超えた際に前記許容位置から前記ロック位置へ変位されて前記第2ギヤ体に係合されることで、前記第2ギヤ体に対する引出方向への回転がロックされる慣性パウルと、
前記第1ギヤ体と離間されることで前記第1ギヤ体の引出方向への回転が許容され、前記第1ギヤ体に係合されることで前記第1ギヤ体の引出方向への回転がロックされ、前記第2ギヤ体と離間されることで前記第2ギヤ体の引出方向への回転が許容され、前記第2ギヤ体に係合されることで前記第2ギヤ体の引出方向への回転がロックされるパウルと、
前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体に係合された状態と、前記パウルが前記第1ギヤ体に係合された状態と、前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体と離間された状態と、の各状態に前記パウルを変位させるアクチュエータと、
を備えたウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記パウルは、
第1許容位置と第1ロック位置との間で変位可能とされ、前記第1許容位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体と離間され、前記第1ロック位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体に係合される第1パウルと、
第2許容位置と第2ロック位置との間で変位可能とされ、前記第2許容位置に配置されている状態では前記第2ギヤ体と離間され、前記第2ロック位置に配置されている状態では前記第2ギヤ体に係合される第2パウルと、
を含んで構成されている請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記第1パウルは、前記第1許容位置から前記第1ロック位置とは反対側の押圧位置に変位可能とされ、前記押圧位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体と離間され、
前記第2パウルは、付勢部材によって前記第2ロック位置側へ付勢され、前記第1許容位置から前記押圧位置へ変位される前記第1パウルに押圧されることで前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2許容位置に配置される請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、本体部と、前記パウルに係合されていると共に通電されることで変位される作動部と、を含んで構成され、
前記アクチュエータへ通電されることで、前記パウルが変位される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項5】
前記アクチュエータへの通電がなされていない状態では、前記作動部が中立位置に配置されて、前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体に係合された状態とされ、
前記アクチュエータへ通電がなされることで、前記作動部が前記中立位置から第1作動位置に配置され又は第2作動位置に配置されて、前記パウルが前記第1ギヤ体に係合された状態又は前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体と離間された状態とされる請求項4に記載のウェビング巻取装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記パウルに固定されたマグネットと、前記マグネットと対向して配置されたコイルと、を含んで構成され、
前記コイルへ通電されることで、前記パウルが変位される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記パウルが係合されていると共に回転変位するカムを含んで構成され、
前記カムが回転されて、前記パウルと前記カムとの接触位置が変わることで、前記パウルが変位される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の急減速時やウェビングがスプールから急激に引き出された際に、ウェビングのスプールからの引出しを制限するロック機構を備えたウェビング巻取装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に記載されたウェビング巻取装置では、ウェビングが乗員に装着されていないことが検出されている場合や車両の走行時にウェビングが使用されない場合にロック機構によるロック動作をキャンセルする機構を設けることで、スプールの回転の不要なロックを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-245827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、スプールの回転の不要なロックを抑制できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るウェビング巻取装置は、乗員に装着されるウェビングが巻取られ、前記ウェビングが引出されることで引出方向へ回転されるスプールと、前記スプールと一体回転可能に設けられ、引出方向への回転がロックされることで前記スプールの引出方向への回転がロックされる第1ギヤ体と、前記スプールの回転周方向に回転可能に設けられた第2ギヤ体と、前記第1ギヤ体と一体回転可能に設けられ、許容位置とロック位置との間で変位可能とされ、前記スプールの引出方向への回転速度が所定の速度を超えた際に前記許容位置から前記ロック位置へ変位されて前記第2ギヤ体に係合されることで、前記第2ギヤ体に対する引出方向への回転がロックされる慣性パウルと、前記第1ギヤ体と離間されることで前記第1ギヤ体の引出方向への回転が許容され、前記第1ギヤ体に係合されることで前記第1ギヤ体の引出方向への回転がロックされ、前記第2ギヤ体と離間されることで前記第2ギヤ体の引出方向への回転が許容され、前記第2ギヤ体に係合されることで前記第2ギヤ体の引出方向への回転がロックされるパウルと、前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体に係合された状態と、前記パウルが前記第1ギヤ体に係合された状態と、前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体と離間された状態と、の各状態に前記パウルを変位させるアクチュエータと、を備えている。
【0007】
第2の態様に係るウェビング巻取装置は、第1の態様のウェビング巻取装置において、前記パウルは、第1許容位置と第1ロック位置との間で変位可能とされ、前記第1許容位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体と離間され、前記第1ロック位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体に係合される第1パウルと、第2許容位置と第2ロック位置との間で変位可能とされ、前記第2許容位置に配置されている状態では前記第2ギヤ体と離間され、前記第2ロック位置に配置されている状態では前記第2ギヤ体に係合される第2パウルと、を含んで構成されている。
【0008】
第3の態様に係るウェビング巻取装置は、第2の態様のウェビング巻取装置において、前記第1パウルは、前記第1許容位置から前記第1ロック位置とは反対側の押圧位置に変位可能とされ、前記押圧位置に配置されている状態では前記第1ギヤ体と離間され、前記第2パウルは、付勢部材によって前記第2ロック位置側へ付勢され、前記第1許容位置から前記押圧位置へ変位される前記第1パウルに押圧されることで前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2許容位置に配置される。
【0009】
第4の態様に係るウェビング巻取装置は、第1の態様~第3の態様のいずれかの態様のウェビング巻取装置において、前記アクチュエータは、本体部と、前記パウルに係合されていると共に通電されることで変位される作動部と、を含んで構成され、前記アクチュエータへ通電されることで、前記パウルが変位される。
【0010】
第5の態様に係るウェビング巻取装置は、第4の態様のウェビング巻取装置において、前記アクチュエータへの通電がなされていない状態では、前記作動部が中立位置に配置されて、前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体に係合された状態とされ、前記アクチュエータへ通電がなされることで、前記作動部が前記中立位置から第1作動位置に配置され又は第2作動位置に配置されて、前記パウルが前記第1ギヤ体に係合された状態又は前記パウルが前記第1ギヤ体と離間されかつ前記第2ギヤ体と離間された状態とされる。
【0011】
第6の態様に係るウェビング巻取装置は、第1の態様~第3の態様のいずれかの態様のウェビング巻取装置において、前記アクチュエータは、前記パウルに固定されたマグネットと、前記マグネットと対向して配置されたコイルと、を含んで構成され、前記コイルへ通電されることで、前記パウルが変位される。
【0012】
第7の態様に係るウェビング巻取装置は、第1の態様~第3の態様のいずれかの態様のウェビング巻取装置において、前記アクチュエータは、前記パウルが係合されていると共に回転変位するカムを含んで構成され、前記カムが回転されて、前記パウルと前記カムとの接触位置が変わることで、前記パウルが変位される。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るウェビング巻取装置では、ウェビングがスプールから引出されて、スプールの引出方向へ回転速度が所定の速度を超えると、慣性パウルが許容位置からロック位置へ変位されて第2ギヤ体に係合される。ここで、アクチュエータの作動により、パウルが第1ギヤ体と離間されかつ第2ギヤ体に係合された状態では、第2ギヤ体の引出方向への回転がロックされる。これにより、慣性パウルを介して第2ギヤ体に係合した第1ギヤ体の引出方向への回転がロックされる。その結果、スプールの引出方向への回転がロックされる。また、アクチュエータの作動により、パウルが第1ギヤ体に係合された状態では、スプールの引出方向への回転がロックされる。さらに、アクチュエータの作動により、パウルが第1ギヤ体と離間されかつ第2ギヤ体と離間された状態では、第1ギヤ体が慣性パウルを介して第2ギヤ体に係合していたとしても、第2ギヤ体の引出方向への回転が許容されているため、第1ギヤ体の回転はロックされない。これにより、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる。
【0014】
第2の態様に係るウェビング巻取装置では、アクチュエータの作動により、第1パウルが第1許容位置に配置されかつ第2パウルが第2ロック位置に配置された状態では、第2ギヤ体の引出方向への回転がロックされる。これにより、慣性パウルを介して第2ギヤ体に係合した第1ギヤ体の引出方向への回転がロックされる。その結果、スプールの引出方向への回転がロックされる。また、アクチュエータの作動により、第1パウルが第1ロック位置に配置された状態では、スプールの引出方向への回転がロックされる。さらに、アクチュエータの作動により、第1パウルが第1許容位置に配置されかつ第2パウルが第2許容位置に配置された状態では、第1ギヤ体が慣性パウルを介して第2ギヤ体に係合していたとしても、第2ギヤ体の引出方向への回転が許容されているため、第1ギヤ体の回転はロックされない。これにより、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる。
【0015】
第3の態様に係るウェビング巻取装置では、第2パウルが、付勢部材の付勢力によって第2ロック位置へ変位される。また、第1パウルが、第1許容位置から押圧位置へ変位されると、第2パウルが第1パウルに押圧されて、第2パウルが第2許容位置に配置される。このように、第3の態様に係るウェビング巻取装置では、第1パウルのみをアクチュエータによって変位させることにより、第2パウルも変位させることができる。
【0016】
第4の態様に係るウェビング巻取装置では、アクチュエータに通電されて、作動部が本体部に対して変位されることにより、パウルを変位させることができる。
【0017】
第5の態様に係るウェビング巻取装置によれば、アクチュエータへの通電がなされていない状態では、作動部が中立位置に配置されて、パウルが第1ギヤ体と離間されかつ第2ギヤ体に係合された状態とされる。この状態では、第2ギヤ体の引出方向への回転がロックされる。この構成では、仮にアクチュエータへの通電ができなくなったとしても、慣性パウルを介して第2ギヤ体に係合した第1ギヤ体の引出方向への回転をロックすることができ、スプールの引出方向への回転速度が所定の速度を超えた際に当該スプールの引出方向への回転をロックすることができる。
【0018】
第6の態様に係るウェビング巻取装置では、コイルに通電されて、マグネットが変位されることにより、パウルを変位させることができる。
【0019】
第7の態様に係るウェビング巻取装置では、カムを回転させることにより、パウルを変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ウェビング巻取装置の一部を構成するフレーム、スプール及びメインロックを示す分解斜視図である。
図2】ウェビング巻取装置をスプールの回転軸方向に沿って切断した断面を示す断面図であり、ロック機構が設けられた部分を拡大して示している。
図3】ロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図4】ロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1ロック位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図5】ロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが押圧位置に配置され、第2パウルが第2許容位置に配置された状態を示している。
図6】第2のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図7】第2のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1ロック位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図8】第2のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが押圧位置に配置され、第2パウルが第2許容位置に配置された状態を示している。
図9】第3のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図10】第3のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1ロック位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図11】第3のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが押圧位置に配置され、第2パウルが第2許容位置に配置された状態を示している。
図12】第4のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図13】第5のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図14】第5のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1ロック位置に配置され、第2パウルが第2ロック位置に配置された状態を示している。
図15】第5のロック機構を模式的に示す側面図であり、第1パウルが第1許容位置に配置され、第2パウルが第2許容位置に配置された状態を示している。
図16】第6のロック機構を模式的に示す側面図であり、パウルが中立位置に配置された状態を示している。
図17】第6のロック機構を模式的に示す側面図であり、パウルが両歯係合位置に配置された状態を示している。
図18】第6のロック機構を模式的に示す側面図であり、パウルが両歯離間位置に配置された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図5を用いて本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置について説明する。
【0022】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のウェビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール14と、ウェビング16と、ロック機構18と、を備えている。なお、以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、スプール14の回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
【0023】
図1に示されるように、フレーム12は、車体に固定される板状の背板12Aを備えている。また、背板12Aの幅方向(軸方向)両端部からは脚片12B,12Cが略直角に延出されている。脚片12B側には、後述するロック機構18が設けられている。また、脚片12Bには、後述するロックベース22及びメインロック24が内周部に配置される開口12Dが形成されている。この開口12Dの内縁には、メインロック24が係合する複数のロック歯12Eが周方向に沿って形成されている。また、脚片12C側には、スプール14を巻取方向へ回転付勢する図示しない巻取付勢機構が設けられている。
【0024】
スプール14は、略円筒状に形成されており、フレーム12の脚片12Bと脚片12Bとの間において当該フレーム12に回転可能に支持されている。スプール14の内部には、フォースリミッタ機構を構成する公知のトーションシャフト20(図2参照)が配置されている。スプール14の軸方向一方側(矢印Z方向側)の端部には、トーションシャフト20(図2参照)を介してスプール14に結合されたロックベース22が設けられている。
【0025】
図2に示されるように、トーションシャフト20の軸方向一方側の端部には、後述するVギヤ26が支持されるVギヤ支持部20Aが形成されている。
【0026】
図1に示されるように、ウェビング16は、乗員の身体に装着されるものであり、その長手方向一端部である基端部がスプール14に係止されている。スプール14は、巻取付勢機構の一部を構成するゼンマイばねの付勢力によって、一方の回転方向である巻取方向(図1等の矢印Cの方向)へ回転付勢されている。そして、スプール14が、巻取方向へ回転されることで、ウェビング16が基端側からスプール14に巻取られるようになっている。また、ウェビング16がスプール14から引出されることで、スプール14が他方の回転方向である引出方向(図1等の矢印Cとは反対の方向)へ回転されるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の要部のロック機構18について説明する。
【0028】
図1に示されるように、ロック機構18は、ロックベース22に支持されたメインロック24を備えている。また、図2に示されるように、ロック機構18は、トーションシャフト20のVギヤ支持部20Aに回転可能に支持された第1ギヤ体としてのVギヤ26と、Vギヤ26に支持された慣性パウルとしてのWパウル28と、フレーム12に回転可能に支持された第2ギヤ体としてのホルダギヤ30と、を備えている。さらに、ロック機構18は、Vギヤ26の外周側及びホルダギヤ30の外周側にそれぞれ配置されたパウルとしての第1パウル32及び第2パウル34と、第2パウル34を付勢する付勢部材としてのコイルバネ36(図3参照)と、第1パウル32を変位させるアクチュエータ38の一部を構成するコイル40及びマグネット42と、を備えている。
【0029】
図1に示されるように、メインロック24は、略矩形ブロック状に形成されている。このメインロック24の基端側は、ロックベース22に設けられたメインロック支持部に傾動可能に支持されている。また、メインロック24の先端側における径方向外側には、フレーム12のロック歯12Eに係合するメインロック側係合歯24Aが形成されている。そして、メインロック24がメインロック支持部を支軸部として径方向外側へ傾動(変位)されることで、メインロック側係合歯24Aがフレーム12のロック歯12Eに係合するようになっている。また、メインロック24には、軸方向一方側へ向けて突出するVギヤ係合凸部24Bが設けられている。
【0030】
図2に示されるように、Vギヤ26は、円板状に形成された基板部26Aと、基板部26Aの径方向外側の端から軸方向一方側へ向けて突出する筒状に形成された接続壁部26Bと、接続壁部26Bの軸方向一方側の端部から径方向外側へ向けて突出すると共に軸方向視で環状に形成された環状部26Cと、を備えている。
【0031】
基板部26Aの径方向の中心には、トーションシャフト20のVギヤ支持部20Aが挿通される支持孔26Dが形成されている。この支持孔26DにVギヤ支持部20Aが挿通されることで、Vギヤ26がVギヤ支持部20Aを支軸部として回転可能となっている。また、図3に示されるように、基板部26Aにおいて支持孔26Dが形成された部分の径方向外側には、後述するWパウル28を支持するWパウル支持部26Eが軸方向一方側へ向けて立設されている。また、基板部26Aにおいて支持孔26Dが形成された部分の径方向外側かつWパウル支持部26Eに支持されたWパウル28と軸方向にオーバーラップしない部分には、メインロック24のVギヤ係合凸部24Bが内部に配置される長孔状の作動溝26Fが形成されている。なお、図3では、ロック機構18を構成する各部材を簡略化して示している。そのため、図3に示された部材の形状と図2に示された各部材の形状とが一致していない箇所がある。また、以上説明したVギヤ26は、当該Vギヤ26とロックベース22との間に設けられた図示しないコイルバネによってロックベース22に対して引出方向へ回転付勢されると共に、コイルバネによるロックベース22に対する引出方向への回転が係止されている。
【0032】
図2に示されるように、接続壁部26Bの一部分には、後述するWパウル28のWパウル側係合歯28Bが当該接続壁部26Bの径方向内側から径方向外側へ通過可能な通過孔26Gが形成されている。
【0033】
図2及び図3に示されるように、環状部26Cの外周部には、後述する第1パウル32が係合する複数のVギヤ外周側係合歯26Hが周方向に沿って形成されている。
【0034】
図3に示されるように、Wパウル28は、軸方向から見て略半月状とされたブロック状に形成されている。このWパウル28の周方向及び径方向の中間部には、Vギヤ26のWパウル支持部26Eが挿通される支持孔28Aが形成されている。この支持孔28AにWパウル支持部26Eが挿通されることで、Wパウル28がWパウル支持部26Eを支軸部として傾動(変位)可能となっている。
【0035】
また、Wパウル28の周方向一方側(矢印C方向側)には、当該Wパウル28を付勢するコイルバネ44が係合されている。なお、このコイルバネ44は、Wパウル28とVギヤ26に設けられたコイルバネ係止部26Iとの間で圧縮されている。
【0036】
また、Wパウル28の周方向他方側(矢印C方向とは反対側)の端部には、後述するホルダギヤ30に形成されたホルダ内周側係合歯30Cに係合する単一のWパウル側係合歯28Bが形成されている。そして、図3において二点鎖線で示されるように、Wパウル28がコイルバネ44の付勢力に抗してVギヤ26のWパウル支持部26Eを支軸部として一方側へ傾動(Wパウル側係合歯28B側が径方向外側へ変位するように傾動)されることで、Wパウル側係合歯28Bがホルダギヤ30のホルダ内周側係合歯30Cに係合するようになっている。なお、コイルバネ44の付勢力によってWパウル28の傾動が制限されている状態の当該Wパウル28の位置を「許容位置P1」とし、Wパウル側係合歯28Bがホルダギヤ30のホルダ内周側係合歯30Cに係合可能な状態のWパウル28の位置を「ロック位置P2」とする。ここで、本実施形態では、スプール14の引出方向への回転速度が所定の速度を超えた際に、Wパウル28に作用する遠心力がコイルバネ44の付勢力を上回ることで、Wパウル28が一方側へ傾動されるようになっている。
【0037】
図2に示されるように、ホルダギヤ30は、筒状に形成された筒状部30Aと、筒状部30Aの軸方向一方側の端部から径方向外側へ向けて突出すると共に軸方向視で環状に形成された環状部30Bと、を備えている。筒状部30Aの軸方向の中間部から他方側は、フレーム12の脚片12B側に設けられた筒状のホルダギヤ支持部12Fの径方向内側に配置されている。これにより、ホルダギヤ30がフレーム12に回転可能に支持されている。また、筒状部30Aの内周部には、Wパウル28のWパウル側係合歯28Bが係合する複数のホルダ内周側係合歯30Cが周方向に沿って形成されている。さらに、環状部30Bの外周部には、後述する第2パウル34が係合する複数のホルダ外周側係合歯30Dが周方向に沿って形成されている。なお、図3においては、ホルダ内周側係合歯30C及びホルダ外周側係合歯30Dを二点鎖線で模式的に描いている。
【0038】
図3に示されるように、第1パウル32は、ブロック状に形成されている。この第1パウル32の一方側の端部は、スプール14(図2参照)の軸方向と同じ方向を軸方向とする支軸部46を介して傾動(変位)可能となっている。また、第1パウル32の他方側の端部には、Vギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合する単一の第1パウル側係合歯32Aが形成されている。ここで、第1パウル側係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合可能な状態の当該第1パウル32の位置を「第1ロック位置P3(図4に示された位置)」とする。また、第1パウル32が第1ロック位置P3からVギヤ26とは反対側に傾動されて、第1パウル側係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと離間して当該Vギヤ外周側係合歯26Hと係合不能な状態の当該第1パウル32の位置を「第1許容位置P4(図3に示された位置)」とする。さらに、第1パウル32が第1許容位置P4からVギヤ26とは反対側にさらに傾動されて、第1パウル側係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hとさらに離間して当該Vギヤ外周側係合歯26Hと係合不能な状態の当該第1パウル32の位置を「押圧位置P5(図5に示された位置)」とする。
【0039】
第2パウル34は、第1パウル32と同様にブロック状に形成されている。この第2パウル34の一方側の端部は、スプール14(図2参照)の軸方向と同じ方向を軸方向とする支軸部48を介して傾動(変位)可能となっている。また、第2パウル34の他方側の端部には、ホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合する単一の第2パウル側係合歯34Aが形成されている。さらに、第2パウル34において第2パウル側係合歯34Aが形成された部分と支軸部48に支持されている部分との間の部位は、第1パウル32側が凸となるように屈曲されている。また、第2パウル34において凸となるように屈曲された部分と近接する部分には、第1パウル32側へ突出する被押圧突起34Bが形成されている。この被押圧突起34Bには、第1許容位置P4~押圧位置P5に配置された第1パウル32が当接するようになっている。ここで、第2パウル側係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合可能な状態の当該第2パウル34の位置を「第2ロック位置P6(図3及び図4に示された位置)」とする。また、第2パウル34が第2ロック位置P6からホルダギヤ30とは反対側に傾動されて、第2パウル側係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと離間して当該ホルダ外周側係合歯30Dと係合不能な状態の当該第2パウル34の位置を「第2許容位置P7(図5に示された位置)」とする。第2パウル34が第2ロック位置P6に配置された状態では、第2パウル34が荷重受部50に当接するようになっている。これにより、第2パウル34が、第2ロック位置P6から第2許容位置P7とは反対側へ傾動不能となっている。
【0040】
第2パウル34に対してホルダギヤ30とは反対側には、コイルバネ36が設けられている。このコイルバネ36が第2パウル34をホルダギヤ30側へ付勢することで、第1パウル32が第1許容位置P4~第1ロック位置P3に配置されている状態では、第2パウル34が常に第2ロック位置P6に配置されるようになっている。
【0041】
図2に示されるように、アクチュエータ38は、第1パウル32に固定されたマグネット42と、マグネット42と軸方向に近接して配置されたコイル40と、を含んで構成されている。また、本実施形態では、コイル40は、フレーム12に固定された土台部材52に固定されている。なお、土台部材52には、カバー54が取付けられている。これにより、ロック機構18を構成する各部材がカバー54に覆われるようになっている。そして、コイル40へ通電がなされると、マグネット42のまわりにコイル40の磁界が生じる。これにより、マグネット42が固定された第1パウル32が傾動されるようになっている。
【0042】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
図1に示されるように、本実施形態のウェビング巻取装置10によれば、ウェビング16がスプール14から引出されることで、ウェビング16が車両用シートに着座した乗員に装着される。また、車両用シートに着座した乗員がウェビング16の装着を解除すると、図示しない巻取付勢機構によってスプール14が巻取方向へ回転されて、ウェビング16がスプール14に巻取られる。
【0044】
ここで、車両へ乗員が乗り込んで、当該乗員が車両用シートに着座したことがセンサによって検出されると、図5に示されるように、第1パウル32が押圧位置P5に位置するようにコイル40への通電がなされる。これにより、第1パウル32が、第1許容位置P4から押圧位置P5に至るまで第2パウル34の被押圧突起34Bを押圧して、第2パウル34を第2ロック位置P6から第2許容位置P7へ傾動させる。この状態では、スプール14が引出方向へ所定の回転速度を超えて回転されてWパウル28がロック位置P2に位置していたとしても、すなわち、Vギヤ26がWパウル28介してホルダギヤ30に係合していたとしても、ホルダギヤ30の引出方向への回転が許容されているため、Vギヤ26の回転はロックされない。そのため、車両用シートに着座した乗員は、ウェビング16をスプール14から速やかに引出して当該ウェビング16を装着することができる。このように、本実施形態では、ウェビング16の装着時におけるスプール14の回転の不要なロックを防止又は抑制することができる。
【0045】
なお、車両用シートに着座した乗員へのウェビング16の装着が完了した状態では、コイル40への通電が停止される。この状態では、図3に示されるように、第1パウル32が第1許容位置P4に配置されるようになっている。又は、車両用シートに着座した乗員へのウェビング16の装着が完了した状態では、第1パウル32が第1許容位置P4に配置されるようにコイル40への通電がなされる。この状態は、車両の通常走行時に継続される。
【0046】
また、車両の減速加速度が所定の減速加速度を上回ったことが当該車両に設けられたセンサ等によって検出されると(車両の緊急時等には)、図4に示されるように、第1パウル32が第1ロック位置P3に配置されるようにコイル40への通電がなされる。これにより、第1パウル側係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hに係合されて、Vギヤ26の引出方向への回転が制限される。なお、この状態では、第2パウル34の第2パウル側係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dに係合している。
【0047】
そして、図1図2及び図4に示されるように、車両の減速により、車両用シートに着座した乗員の身体がシート前方側へ移動して、ウェビング16がスプール14から引出されると、スプール14がメインロック24と共に引出方向へ回転される。これにより、メインロック24のVギヤ係合凸部24Bが、回転が制限されたVギヤ26の作動溝26Fに沿って移動され、メインロック24のメインロック側係合歯24Aがフレーム12のロック歯12E(図1参照)に係合する。その結果、スプール14の引出方向への回転が制限され、ウェビング16のスプール14からの引出しが制限される。これにより、車両用シートに着座した乗員の身体がウェビング16によって拘束される。
【0048】
なお、車両の緊急時から車両の通常走行に戻ると、コイル40への通電が停止される、又は、第1パウル32が第1許容位置P4に配置されるようにコイル40への通電がなされる。
【0049】
また、配線の断線等により、アクチュエータ38が作動されない状態(コイル40への通電ができない状態)では、図3に示されるように、第2パウル34はコイルバネ36の付勢力によって常に第2ロック位置P6に配置され、ホルダギヤ30の引出方向への回転がロックされる。図1図3に示されるように、この状態で、車両が急減速をして、車両用シートに着座した乗員の身体がシート前方側へ移動すると、ウェビング16がスプール14から急激に引出される。これにより、Vギヤ26がWパウル28と共に引出方向へ回転される。そして、スプール14の引出方向への回転速度が所定の速度を超えると、Wパウル28に作用する遠心力がコイルバネ36の付勢力を上回り、図3において二点鎖線で示されるように、Wパウル28が許容位置P1からロック位置P2に傾動されて、Wパウル28のWパウル側係合歯28Bがホルダギヤ30のホルダ内周側係合歯30Cに係合する。その結果、ホルダギヤ30のホルダ内周側係合歯30Cに係合したWパウル28及び当該Wパウル28を支持するVギヤ26の回転も制限される。そしてさらに、車両用シートに着座した乗員の身体がシート前方側へ移動して、ウェビング16がスプール14からさらに引出されると、スプール14がメインロック24と共に引出方向へ回転される。これにより、メインロック24のVギヤ係合凸部24Bが、回転が制限されたVギヤ26の作動溝26Fに沿って移動され、メインロック24のメインロック側係合歯24Aがフレーム12のロック歯12Eに係合する。その結果、スプール14の引出方向への回転が制限され、ウェビング16のスプール14からの引出しが制限される。これにより、車両用シートに着座した乗員の身体がウェビング16によって拘束される。このように、本実施形態では、アクチュエータ38が作動されない状態であっても、車両の急減速時に車両用シートに着座した乗員の身体をウェビング16によって拘束することができる。
【0050】
ここで、第2パウル34が第2ロック位置P6に配置され、ホルダギヤ30の引出方向への回転がロックされた状態では、スプール14側からの引出方向への回転力が第2パウル34に伝達される。そして、第2ロック位置P6に配置された第2パウル34が荷重受部50に当接している構成とすることで、スプール14側からの引出方向への回転力を荷重受部50によって受けることで、第2パウル側係合歯34Aのホルダ外周側係合歯30Dへの係合が解除されることを制限できる。また、本実施形態では、単一のアクチュエータ38で2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)を傾動させることができる。これにより、2つのアクチュエータで2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)をそれぞれ傾動させた構成と比べて、ウェビング巻取装置10の構成部品の増加及び体格の大型化を抑制することができる。
【0051】
(第2のロック機構)
次に、図6図8を用いて第2のロック機構56について説明する。なお、第2のロック機構56において前述のウェビング巻取装置10のロック機構18(図1図3参照)と対応する部材及び部分には、ロック機構18と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、当該部材及び部分の説明を省略する。また、第2のロック機構56において前述のロック機構18を構成する部材と対応する位置に配置された部材には、前述のロック機構18の説明で用いた位置を示す符号と同じ符号を付して、当該位置についての説明を省略する。
【0052】
図6図8に示されるように、第2のロック機構56は、長手方向の中間部が支軸部46及び支軸部48にそれぞれ支持された第1パウル32及び第2パウル34を含んで構成されていることに特徴がある。
【0053】
第1パウル32における第1パウル側係合歯32Aとは反対側の端部は、第2パウル34を押圧する第1パウル側押圧部32Bとされている。また、第2パウル34における第2パウル側係合歯34Aとは反対側の端部は、第1パウル32の第1パウル側押圧部32Bに押圧される第2パウル側被押圧部34Cとされている。なお、第1パウル32は、前述のロック機構18のアクチュエータ38と同じアクチュエータによって傾動されるようになっている。そして、図6図7及び図8に示されるように、第2のロック機構56では、前述のロック機構18(図3図4及び図5参照)と同様の機能を実現することができる。すなわち、アクチュエータ38が作動されない状態(コイル40への通電ができない状態)では、図6に示されるように、第2パウル34はコイルバネ36の付勢力によって常に第2ロック位置P6に配置され、ホルダギヤ30の引出方向への回転がロックされる。また、図7に示されるように、第1パウル32が第1ロック位置P3に配置されるようにコイル40への通電がなされと、第1パウル側係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hに係合されて、Vギヤ26の引出方向への回転が制限される。なお、この状態では、第2パウル34の第2パウル側係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dに係合している。さらに、図8に示されるように、第1パウル32が押圧位置P5に位置するようにコイル40への通電がなされると、第1パウル32の第1パウル側押圧部32Bが、第1許容位置P4から押圧位置P5に至るまで第2パウル34の第2パウル側被押圧部34Cを押圧して、第2パウル34を第2ロック位置P6から第2許容位置P7へ傾動させる。この状態では、スプール14が引出方向へ所定の回転速度を超えて回転されてWパウル28がロック位置P2に位置していたとしても、すなわち、Vギヤ26がWパウル28介してホルダギヤ30に係合していたとしても、ホルダギヤ30の引出方向への回転が許容されているため、Vギヤ26の回転はロックされない。
【0054】
(第3のロック機構及び第4のロック機構)
次に、図9図12を用いて第3のロック機構58及び第4のロック機構60について説明する。なお、第3のロック機構58及び第4のロック機構60において前述のウェビング巻取装置10のロック機構18等(図1図8参照)と対応する部材及び部分には、ロック機構18等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、当該部材及び部分の説明を省略する。また、第3のロック機構58及び第4のロック機構60において前述のロック機構18等を構成する部材と対応する位置に配置された部材には、前述のロック機構18等の説明で用いた位置を示す符号と同じ符号を付して、当該位置についての説明を省略する。
【0055】
図9図11に示されるように、第3のロック機構58は、軸方向視でL字状に形成された第1パウル32と、第1パウル32を傾動させる3ポジションソレノイドであるアクチュエータ62と、を含んで構成されていることに特徴がある。
【0056】
第1パウル32は、長手方向の中間部であるL字状に屈曲された部分が支軸部46に支持されている。また、第1パウル32における第1パウル側係合歯32Aとは反対側の端部は、後述するアクチュエータ62の作動部62Bに揺動可能に係合されるアクチュエータ係合部32Cとされている。
【0057】
アクチュエータ62は、筒状に形成されていると共にその内部に図示しない引張側コイル及び押出側コイルがそれぞれ支持された本体部62Aと、本体部62Aに支持されていると共に図示しないプランジャが固定された棒状の作動部62Bと、を含んで構成されている。この作動部62Bは、本体部62Aに対して当該作動部62Bの長手方向の同一直線上の3つの位置に変位されるようになっている。
【0058】
そして、図9に示されるように、本体部62A内の引張側コイル及び押出側コイルへ通電がなされていない状態では、作動部62Bが中立位置P8(図9に示された位置)に配置されて、第1パウル32が第1許容位置P4に配置されるようになっている。
【0059】
また、図10に示されるように、本体部62A内の引張側コイルへ通電がなされることで、作動部62Bが中立位置P8から第1作動位置としての引張位置P9(図10に示された位置)に配置されて、第1パウル32が第1ロック位置P3に配置されるようになっている。
【0060】
さらに、図11に示されるように、本体部62A内の押出側コイルへ通電がなされることで、作動部62Bが中立位置P8から第2作動位置としての押出位置P10(図11に示された位置)に配置されて、第1パウル32が押圧位置P5に配置されるようになっている。
【0061】
なお、図12に示された第4のロック機構60の構成は、アクチュエータ62の向き及び第1パウル32が屈曲されていないブロック形状となっていることを除いては第3のロック機構58と同じ構成になっている。
【0062】
図9図12に示されるように、以上説明した第3のロック機構58及び第4のロック機構60によれば、前述のロック機構18等(図3図8参照)と同様の機能を実現することができる。また、3ポジションソレノイドであるアクチュエータ62を用いることにより、単一のアクチュエータ62で2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)を傾動させることができる。これにより、2ポジションソレノイドである2つのアクチュエータで2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)をそれぞれ傾動させた構成と比べて、ウェビング巻取装置の構成部品の増加及び体格の大型化を抑制することができる。また、2ポジションソレノイドである2つのアクチュエータで2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)をそれぞれ傾動させた構成と比べて、プランジャの数が少なくなり、ウェビング巻取装置の耐G性能が低下することを抑制することができる。
【0063】
また、第3のロック機構58及び第4のロック機構60では、配線の断線等により、アクチュエータ62が作動されない状態(引張側コイル及び押出側コイルへの通電ができない状態)では、当該アクチュエータ62の作動部62Bが中立位置P8に配置され、第1パウル32が第1許容位置P4に配置される。この状態であっても、第2パウル34はコイルバネ36の付勢力によって常に第2ロック位置P6に配置され、ホルダギヤ30の引出方向への回転がロックされる。これにより、アクチュエータ62が作動されない状態であっても、ウェビング16がスプール14から急激に引出された際にスプール14の引出方向への回転をロックすることができ、車両の急減速時に車両用シートに着座した乗員の身体をウェビング16によって拘束することができる。
【0064】
(第5のロック機構)
次に、図13図15を用いて第5のロック機構64について説明する。なお、第5のロック機構64において前述のウェビング巻取装置10のロック機構18等(図1図12参照)と対応する部材及び部分には、ロック機構18等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、当該部材及び部分の説明を省略する。また、第5のロック機構64において前述のロック機構18等を構成する部材と対応する位置に配置された部材には、前述のロック機構18等の説明で用いた位置を示す符号と同じ符号を付して、当該位置についての説明を省略する。
【0065】
図13に示されるように、第5のロック機構64は、同一の支軸部46にそれぞれ支持された第1パウル32及び第2パウル34と、第1パウル32及び第2パウル34が当接(係合)されていると共に回転変位するカム66を有するアクチュエータ68と、を含んで構成されていることに特徴がある。
【0066】
カム66は、軸方向の両端面が略楕円形状とされた楕円柱状に形成されている。このカム66の外周部には、当該カム66の回転径方向外側へ向けて突出すると共に回転周方向へ間隔をあけて配置された第1凸部66A及び第2凸部66Bがそれぞれ形成されている。また、カム66の外周部における第1凸部66Aと第2凸部66Bとの間には、カム66の回転径方向内側へ向けて窪んだ凹部66Cが形成されている。
【0067】
また、第1パウル32及び第2パウル34には、図示しないスプリングが係合している。これにより、第1パウル32及び第2パウル34が、カム66に常に当接(接触)するように回転付勢されている。
【0068】
そして、図13に示されるように、アクチュエータ68へ通電がなされていない状態では、カム66が中立位置P11(図13に示された位置)に配置されて、第1パウル32がカム66の凹部66Cと対応する位置の外周面に当接し、第2パウル34がカム66の第1凸部66Aと対応する位置の外周面に当接している。この状態では、第1パウル32が第1許容位置P4に配置され、第2パウル34が第2ロック位置P6に配置される。
【0069】
また、図14に示されるように、アクチュエータ68へ通電がなされることにより、カム66が中立位置P11から回転周方向一方側(矢印C1方向側)へ所定の角度だけ回転されると、当該カム66が第1作動位置P12(図14に示された位置)に配置される。カム66が第1作動位置P12に配置された状態では、第1パウル32及び第2パウル34が、カム66において第1凸部66Aよりも周方向他方側(矢印C2方向側)の部分66Dの外周面に当接している。この状態では、第1パウル32が第1ロック位置P3に配置され、第2パウル34が第2ロック位置P6に配置される。
【0070】
さらに、図15に示されるように、アクチュエータ68へ通電がなされることにより、カム66が中立位置P11から回転周方向他方側(矢印C2方向側)へ所定の角度だけ回転されると、当該カム66が第2作動位置P13(図15に示された位置)に配置される。カム66が第2作動位置P13に配置された状態では、第1パウル32がカム66の第2凸部66Bと対応する位置の外周面に当接し、第2パウル34がカム66の凹部66Cと対応する位置の外周面に当接している。この状態では、第1パウル32が第1許容位置P4に配置され、第2パウル34が第2許容位置P7に配置される。
【0071】
図13図15に示されるように、以上説明した第5のロック機構64によれば、前述のロック機構18等(図3図12参照)と同様の機能を実現することができる。
【0072】
また、第5のロック機構64では、配線の断線等により、アクチュエータ68が作動されない状態では、当該アクチュエータ68のカム66が中立位置P11に配置され、第1パウル32が第1許容位置P4に配置される。この状態であっても、第2パウル34は第2ロック位置P6に配置され、ホルダギヤ30の引出方向への回転がロックされる。これにより、アクチュエータ68が作動されない状態であっても、ウェビング16がスプール14から急激に引出された際にスプール14の引出方向への回転をロックすることができ、車両の急減速時に車両用シートに着座した乗員の身体をウェビング16によって拘束することができる。
【0073】
(第6のロック機構)
図16図18を用いて第6のロック機構70について説明する。なお、第6のロック機構70において前述のウェビング巻取装置10のロック機構18等(図1図15参照)と対応する部材及び部分には、ロック機構18等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、当該部材及び部分の説明を省略する。
【0074】
図16に示されるように、第6のロック機構70は、支軸部72に支持された単一のパウル74と、パウル74を付勢する付勢部材としてのバネ76と、作動されることでパウル74を変位させる図示しないアクチュエータと、を含んで構成されていることに特徴がある。なお、第6のロック機構70の一部を構成するアクチュエータとしては、コイル40及びマグネット42を有するアクチュエータ38(図2参照)や3ポジションソレノイドであるアクチュエータ62(図9参照)等を用いればよい。
【0075】
単一のパウル74は、ブロック状に形成されている。このパウル74には、Vギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合する単一の係合歯32A及びホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合する単一の係合歯34Aが形成されている。ここで、係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合不能な状態でかつ係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合可能な状態のパウル74の位置を「中立位置P14(図16に示された位置)」と呼ぶ。また、アクチュエータの作動により、パウル74が中立位置P14から矢印C3方向へ傾倒されて、係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合可能な状態でかつ係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合可能な状態のパウル74の位置を「両歯係合位置P15(図17に示された位置)」と呼ぶ。さらに、アクチュエータの作動により、パウル74が中立位置P14から矢印C4方向へ傾倒されて、係合歯32AがVギヤ26のVギヤ外周側係合歯26Hと係合不能な状態でかつ係合歯34Aがホルダギヤ30のホルダ外周側係合歯30Dと係合不能な状態のパウル74の位置を「両歯離間位置P16(図18に示された位置)」と呼ぶ。
【0076】
また、パウル74には、一例として板バネ等のバネ76が係合されている。そして、アクチュエータが作動される前の状態でかつバネ76が変形されていない状態では、パウル74が中立位置P14(図16参照)に配置されるようになっている。
【0077】
図16図18に示されるように、以上説明した第6のロック機構70によれば、前述のロック機構18等(図3図15参照)と同様の機能を実現することができる。
【0078】
なお、以上説明した各ロック機構18、56、58、60、64、70では、2つのパウル(第1パウル32及び第2パウル34)や単一のパウル74によってVギヤ26の引出方向への回転の許容及びロック並びにホルダギヤ30の引出方向への回転の許容及びロックを切替えた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、3つ以上のパウルによって、Vギヤ26の引出方向への回転の許容及びロック並びにホルダギヤ30の引出方向への回転の許容及びロックを切替えてもよい。
【0079】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10…ウェビング巻取装置、14…スプール、16…ウェビング、26…Vギヤ(第1ギヤ体)、28…Wパウル(慣性パウル)、30…ホルダギヤ(第2ギヤ体)、32…第1パウル(パウル)、34…第2パウル(パウル)、36…コイルバネ(付勢部材)、38…アクチュエータ、40…コイル、42…マグネット、62…アクチュエータ、62A…本体部、62B…作動部、66…カム、68…アクチュエータ、74…パウル、P1…許容位置、P2…ロック位置、P3…第1ロック位置、P4…第1許容位置、P5…押圧位置、P6…第2ロック位置、P7…第2許容位置、P8…中立位置、P9…引張位置(第1作動位置)、P10…押出位置(第2作動位置)
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